───放浪精神『第三章◆ホテルケイヨー422号室の低松』───
───…………。 聖  「ひっく……うっく……パパは……わたしのことが……嫌いなの……?」 で、目覚めた聖は思いっきり泣いてくれました。 今はそれも引いて、必死になって慰めているところです。 彰利 「嫌いじゃありませんよ失礼な!聖が『ぎゅーってして』って言いおるから!」 聖  「首を絞めるんじゃなくて……抱き締めてほしかったのに……」 彰利 「ゲゲェエーーーッ!!?そ、そうなの!?」 な、なんてことだ……! さっきの言葉にこんな難解な秘密が隠されていたとはっ……!! 思いも寄らなかったっ……!まさに盲点っ……!! だがそれなら、慰める方法も想像できるというものよ〜〜〜っ!! 彰利 「初めてお目にかかる…………捕まえられようとする逃亡者……」 聖  「…………?」 そう、ようは抱き締めてやりゃあいいのよね? 彰利 「視力がないようだな……まったく見えてない」 聖  「パパ……?なに言ってるの……?」 ガッシィッ!! 聖  「きゃうっ!?」 彰利 「毒によるものだな……」 聖の顔を両手で掴み、その目をじっと見る。 そして体に腕を回し、一気にギュッ!と抱き締める!! 聖  「ぴやっ!?」 ……がくっ。 彰利 「しかも猛毒……って、アイヤァアアアアーーーーッ!!!!」 しもうた!またやっちまった! 抱き締めるって言葉で、どうしてビスケット=オリバを連想してんだ俺は!! あぁあらららら……!!勢いよく抱き締めすぎた所為で、聖さん気絶しちゃったよ……! ……こりゃあ……嫌われるな……。 ───……。 聖  「うわぁああああああん!!!うわぁああああああああん!!!」 彰利 「ウギャア耳痛ェエーーーッ!!!!」 あれからしばらくして目覚めた聖さんは、それはもう豪快に泣きました。 そりゃあね?泣くなってほうが無理かもしれませんしね? でも痛いんですよ耳が。 彰利 「俺の負けだッッ〜〜〜!!許してくれッッ〜〜〜!!!」 試しに両腕をクロスして敗北宣言をしてみました。 聖  「うわぁあああああああああん!!!!!」 てんでダメでした。 話すら聞いてなさそうです。 せっかくシコルスキーの真似したってのに……。 ……ところでさ、叫んだあとにどうやって言葉を伸ばすんだろうねぇ? シコルスキーの場合、『俺の負けだッッ〜〜〜』って言ってるけど、 語尾を伸ばすなら『俺の負けだ〜〜〜ッッ』にするべきじゃないのかね? 『ッ』のあとに『〜〜〜』と伸ばす意味がまるで解らん。 というか……どう読むんだ? わたしゃそれが不思議でなりませんよ? 聖  「うわぁあああああん!!!!」 彰利 「なんて考えてる場合じゃねィェーーーッ!!!     キャーーッ!耳痛ェーーッ!!」 滅多なことでは抱き締めはせんと思ってはいたが───やむを得ん! 彰利 「抱き締めっ!」 がばちょっ! 聖  「っ!?」 わんわんと泣く聖を抱き締めた。 そして、その体勢に流されるがままに『M11型デンジャラスアーチ』を───!! 彰利 「って!やったら死ぬって!」 ちなみにM11型(以下略)は、相手を正面から抱き締めた状態でブリッジをし、 相手を頭から地面に叩きつける荒業である! 腕ごと抱き締めてるから受身も取れずに頭から落ちるってぇ、恐ろしい技よ〜〜っ!! 聖  「パパ……?」 彰利 「いや、なんでもござらん!……それにしても、少し意地悪が過ぎたねぇ。     だがな、聖よ……。これも聖のためなんじゃよ……」 聖  「え……?どうして……?」 彰利 「じいやは聖に強い娘に育ってほしいのじゃよ……。     そのためには、じいやは聖に嫌われることさえ我慢しましょう……」 聖  「パパ……───そんなことないよっ!わたし、パパのこと好きだもん!」 彰利 「ほっほっほ、ほうかほうか───ほぉぉぉォオオーーーーッ!!!!?」 す、好き!? じいやのことが!? 彰利 「──────…………」 聖  「……パパ?」 きゅむ。 聖サンが、アタイの胸に抱きつきつつ、アタイの顔を見上げてくギャーーーッ!!! や、やべぇよトニー!トニィーーーッ!! 助けてトニー!この娘ッ子カワイイよ! このままじゃ俺、今日からタイガーじゃなくてウルフになっちまう!! 彰利 「ハルルル……!!」 って、これは『バキ』で烈海王を狙ってた犬じゃねぇか! ああもう何考えりゃあいいか解らん! いや落ち着け!まず落ち着け! 聖  「………」(じーーー……) 彰利 「………」(じーーー……) ……いやん、そげに見つめないで……。 そげに見つめられたらアタイ……! ぎゅむ。 聖  「わっ……」 彰利 「───はうあ!?」 ギャア!?なにを更に抱き締めておりますかアタイ!! で、でもよい匂いがしてちっこくて柔らこぅて……! も、もうちょいいいよね? ホラ、聖もアタイの胸に頬を摺り寄せて目ェ閉じたりしてるさ。 ここで動くのはおめぇ……アレだ。 可哀相ってもうだろ?えぇ? というわけで抱き締めます、狂おしいほどに。 かつて、楓巫女を抱き締められなかった分をここで晴らすが如く! ───なぁんて思いつつ、聖を抱き締め続けていた時でした。 夜華 「彰衛門、大樹の再生とやらは終わ───あ、がが……!?」 彰利 「ヒャーーーッ!!!?」 夜華さんが戻ってきたのだ!! しまった!入り口の草木、閉めておくの忘れてた!! 夜華 「き、ききき貴様ァアァァァァ……!!!!     わたしが真剣にこの時代とやらのことを調べようという時にッ……!!」 ババッ! 彰利 「ギャーッ!!?」 聖さんが取り上げられた! またもやしまった!これでは盾が居ねぇ!! 彰利 「ギャッ!!ギャーーーッ!!!」 アタイは『漂流教室』の、 ホテルケイヨー422号室に居た外国人宿泊者の顔をしてみせた! 夜華 「うわっ!?だ、だから!その顔はやめろと言っただろう!!」 彰利 「タ、タスケテクラサイ!!」 夜華 「やめろというのに!」 ───シュキィンッ!! 夜華さんが抜刀する! これはいかん!なんとか遣り過ごさねば! そう考えた時、アタイの頭の中に─── ホテルケイヨー422号室の外国人宿泊者の顔が思い浮かんだ! そうだ!電話をして助けを呼ぶのだ! ……って、電話なんてありませんよ? ───シュバァッ!! 彰利 「ヒイ!!」 夜華さんが繰り出した居合い抜きをなんとか避け、 大樹部屋の隅にあったツタを拾い上げ、それを耳に当てた! そう……電話がないんだったらあれっきゃない! ドッピオよ……アタイに力を貸してくれ! 彰利 「とぅ〜〜〜るるるる、とぅ〜〜〜るるるるるるん、るるん♪     ……すげぇ、さすが都会だ……。     こんなところに公衆電話があるなんて……。きっとボスからだ……」 夜華 「な、なにをしている貴様!」 ドッピオの真似です。 彰利 「ぴーっ、がちゃっ。───モシモシキテクラサイ!!ゴウトウデス!!」 夜華 「強盗だと!?おのれ貴様!」 バツンッ!! 彰利 「ギャッ!?」 手に持っていたツタが綺麗に斬られた! すげぇ切れ味だ!こりゃあ一溜りもねぇ〜〜〜っ!! 彰利 「ギャッ!ギャーーーッ!!タ、タスケテクラサイ!!」 夜華 「助かりたいならその顔をやめろ!!」 彰利 「タスケテクラサイ!タスケテ!」 夜華 「やめろというのに!」 ズバァッ───ドチャッ! 彰利 「ギャッ!!」 夜華 「なっ───う、うわぁっ!?」 彰利 「ぼ、ぼくの手!」 夜華さんが振った刀が、アタイの手を切り落としおった! い、いかん! せっかくホテルケイヨーの422号室に居た外国人宿泊者の真似をしてたのに! これでは怪物と勇敢に戦った防衛大臣の池垣くんだ! 彰利 「てゆうか痛ェエーーーッ!!!う、うおっ!!血が!血がァーーッ!!」 夜華 「うわっ!うわぁぁっ!!わざわざ見せるなぁっ!!」 彰利 「な、なんだと!?これは夜華さんが切り落としたのだぞ!?」 夜華 「うるさい!貴様は傷を治せるんだろう!?     それならさっさと治してしまえばいいだろう!」 彰利 「そ、そうか!私にはそれがあった!!飛べ、血管針!!」 ウジュルウジュル……ウジュルルル……ビッタァッ!! 彰利 「ストレイツォ、容赦せん」 血管針を伸ばしッ!切れた手をくっつけるッ! これこそ人間を超えた証なのだッ! 夜華 「……毎度思うんだが、貴様本当に人間か?」 彰利 「そこで冷静にツッコミ入れられると逆に虚しいんですけど……     そういう夜華さんこそ人の心を持ってんの?     ここまで問答無用で人を斬る人なんて、     今の世の中じゃあ殺人鬼くらいなもんですよ?」 夜華 「なっ……わ、わたしが殺人鬼だというのか!?」 彰利 「相手がアタイじゃなかったら50人以上は殺してんじゃない?」 夜華 「───……そ、そんなことはない!」 彰利 「あの……冗談で言ったんだけど……今の間、なに?マジで」 夜華 「知らん知らん!全てが貴様の気の所為だ!わたしは人殺しなどしない!!」 彰利 「死んでますって!アタイじゃなけりゃマジで死んでますよ!?」 夜華 「ふん……貴様は話を大袈裟にするのが好きだからな。     わたしはそんな戯言は信じないぞ」 なんと!?戯言を信じぬとな!? ならばその決意の量を計ってやるわ! 彰利 「実は夜華さんの顔に悪戯描きをしてあります」 夜華 「な、なにっ!?ほんとうかっ!?」 彰利 「ウソじゃ」 夜華 「ぐがっ───!!」 僅か3秒で撃沈。 なんとも儚い決意か……。 彰利 「クォーーーックォックォォーーッ!!簡単に騙されおって!!     なにが戯言は信じないじゃ!このカスめ!」 夜華 「くっ……ぐぐぐ……!!」 彰利 「いやいや、それが悪いとは言わぬよ!?それでいいのですよ夜華さん!     騙されてくれない夜華さんなんて、ただのカワイくないおなごじゃい!     解るかねッッ!!夜華さんはヘンに悟らないほうがいいのだよッッ!!」 夜華 「勝手なことを言うな馬鹿者が!!」 彰利 「バカとはなんだコノヤロウ!人がせっかく褒めてやっとんのになんじゃコラ!」 夜華 「今の言葉のどこに『褒める』という言葉が当てはまった!」 彰利 「全部!」 夜華 「こ、このバカ者がぁーーっ!!」 彰利 「ば、バカとはなんだコノヤ───キャーーーッ!!?」 アタイ目掛けて刀を振る夜華さんを前に、 アタイは漂流教室の怪虫に襲われそうになった仲田くんの真似をギャーーーッ!!!! ───……。 彰利 「ウ、ウウウ……!」 目を開けると、そこは大樹の部屋だった。 彰利 「グウウ……どうやら、     散々斬られている内に気を失ってしまっていたらしい……おや?」 はて、夜華さんが居ないぞ? 聖は……居るな。 アタイの横で寝てたようだ。 声  「…………、……?」 彰利 「おや?」 声が聞こえた。 しかも話し声だ。 ひとりは夜華さんで、相手の方の声は……ルナっち? 彰利 「おいおい……いってぇ何事でぇ」 ひとまず起き上がって、静かに気配を殺しつつ大樹の外を見てみる。 するとそこには、予想通りに夜華さんとルナっちが居た。 なにを話しておるのかは知らんが……なにやらいい状況じゃないようじゃぜ? ルナ 「ここでなにをしてるの、って訊いてるの。     あなたがどこの者だろうがわたしには関係ないわ」 夜華 「ですからわたしはっ!この神社の関係者だと……!」 ルナ 「その言葉を出されるたびに、わたしは『証拠は?』って訊いたわよね?     なにか証拠、見せてもらったかな」 夜華 「っ……!」 ルナ 「ほら、なにもない。あのね、ここはわたしと悠介の居場所なの。     他の誰にも汚されたくないわ。解ったら降りてって」 夜華 「………くっ」 反論できない夜華さんが、怒ったままの顔で踵を反す。 だがアタイは夜華さんが石段に足を下ろす前に飛び出していた! 彰利 「ちょっとお待ちーーっ!!」 ルナ 「───!誰……?まだ誰か居たの……?」 彰利 「居ちゃ悪いかタコ!」 ルナ 「タッ───!?あ、あれ……?ちょっと待ってよ……あなた、弦月彰利?」 彰利 「む?如何にも!てめぇルナっち!アタイのことが解らねぇってのか!?」 ルナ 「んーん、顔と名前だけなら知ってるわ。     悠介の記憶を覗かせてもらった時、見た覚えがある」 彰利 「なんと!?覗きとな!?このエロスが!」 ルナ 「……いきなり失礼なヤツね。こんなヤツが悠介の友達だったの……?」 彰利 「お前の方がよっぽど失礼だということに、何故気づかんかね……」 しかし解った。 このルナっち……いや、この時代のお方達はアタイのことを忘れた状態だ。 未来の方ではアタイが降臨したことで存在確定されたから、 みなさまがアタイのことを思い出した。 しかし、童心なんてゆう不安定な存在ではアタイの色濃い存在感は得られない、と。 きっとそげなところだろう。 この状態で悠介とは……いや、会ってもいいかな? ルナ 「そうだ、確かめたかったのよ。あなたはわたしを知ってるの?」 彰利 「うんむ。弱点だって知ってる仲ぞ?」 ルナ 「弱点?そんなものは───」 彰利 「ジュッティエェ〜〜ンム♪」 フゥッ♪ ルナ 「おきゃわぁああああーーーーーーーっ!!!!!」 ルナっち絶叫!! ただ耳にナマ温かい息を吹きかけただけでこれだ。 これが弱点じゃないならば、なんだというのかね? 彰利 「ね?弱点でしょ?」 ルナ 「う、うぐぐぐぐ……!!」 彰利 「他にも、悠介が好きなこととか大根おろし醤油が好きなところか、     まあいろいろなことを知っておりもうすよ?」 ルナ 「じゃ、じゃあ……本当にわたしはあなたのこと忘れてたってこと……?」 彰利 「オウヨ。歴間移動って言ってな。     その時代から消える時に、人の記憶から自分を消すことが出来るのである。     もちろん、消さずに消えることも出来る。すげぇだろ」 ルナ 「………」 彰利 「お?なんだ?お?やンのか?コラ」 シュッシュッと拳を前に突き出す。 いわゆる挑発だが、ルナっちは大きな大きな溜め息を吐き散らした。 彰利 「なんですかこの……。そこまで大袈裟な溜め息吐かれると辛いじゃねぇか」 ルナ 「神社から降りて。今更、用なんてないでしょ?」 彰利 「悠介に会わせて?」 ルナ 「だめ。降りて」 彰利 「何故かね?私にも解るように平明に答えてもらいたいものだね」 ルナ 「悠介はあなたのことなんて覚えてないんだから。     会ったってどうしようもないじゃない。解ったら降りてよ」 彰利 「解らんから嫌だ。     てゆうか何故アタイが、ルナっちの言うことに首を縦に振らねばならんのさ」 ルナ 「……そのルナっちってゆうの、やめてくれない?」 彰利 「だぁがらなんべん言わしょおっちょお?おォこんナラ?     おらがそげんこつ命令聞きさする理由、ンなんもねでがや?おォこんナラ?」 ルナ 「……嫌な男だってことがよく解ったわ。     あなたなんかに悠介の友達で居る資格なんてない」 彰利 「ブフーー!『悠介はあなたのことなんて覚えてない』とか言っといて、     友達で居る資格なんてないだってYO!     忘れられてんのに友達で居られるわけねーべよ!     バッッカでぇーーーっ!!クォックォックォックォッ!!!!」 ルナ 「ぐっ……うううぅ……!!むかつく!ここで死になさい!!」 ルナっちが爆ぜた! 一瞬にして間合いを詰め、鎌を振るってきおる! 彰利 「フッ……心に余裕のないわらしゃあに、人の道を教えてくれよう……。     轟天弦月流闘技!!バッスー・ピンコオ拳!!」 ドボゴォッ!!! ルナ 「けふっ───!?」 腹部に月操力上乗せの掌底一閃!! ルナっちは自分の突っ込んできた勢いとアタイの繰り出した技の勢いとで、大きく咽た。 ルナ 「げほっ!けほっ!……かはっ……!!」 彰利 「フフフ……思えば随分と切り刻んでくれたねぇルナっち。     さぁ、今が正に復讐が刻!!貴様はここで朽ち果てるのだ!!     本気になったアタイの力……とくと見よ!!」 全身の筋肉を沸騰させるかのように活性!! 重心を降ろし、腕から拳へと重力移動をする!! そして一気に拳を突き出し─── 彰利 「砂かけババァ〜♪」 バサァッ!と、ルナっちに砂をかけた。 ルナ 「っ!?うっ!あぁっ!!」 彰利 「そして秘技!どざえもんの術!!」 手に持った大樹のツタでルナっちをぐるぐる巻きにしてゆく!! そして最後にギュッと強く縛り、脱出不可能な状態にした!! ……でも、壁抜けの要領で抜けられるかもしれませんね。 これは気を付けましょう。 ということで…… 彰利 「よし夜華さん!切り刻め!」 夜華 「出来るか!」 夜華さんに突撃命令を出した途端、即答で断われた……。 ルナ 「う、うう……!!な、なにするのよぅ……!     わたしはただ……悠介を守りたいだけなのに……!」 彰利 「へ?───え、えぇっ!?」 ば、馬鹿なッッッ!!! ル、ルナっちが!あのルナっちが泣いてる!? もしかして動けない状態とかに弱いとか!? 彰利 「うわ……なんですかこの罪悪感……。     あの傍若無人なルナっちを泣かしたのがアタイ……?     たったそれだけのことなのに、なんだというのだ……この罪悪感は……!」 ルナ 「悠介……ゆうすけぇ……!!」 彰利 「むっ!?違うでしょルナっち!助けを呼ぶ時は『ヒィ〜〜〜ッ』だ!!」 ルナ 「ゆうすけぇ……」 彰利 「ノゥッ!違いますよ!?『ヒィ〜〜〜ッ』だっての!     未来人類がやってたんだから間違いねぇ!」 夜華 「お、おい彰衛門!」 彰利 「ほれ!ヒィ〜〜〜ッだ!サンハイ!!」 夜華 「彰衛門!!」 彰利 「お?お……あら?どうかしたの?夜華さん」 夜華 「あそこを見てみろ……!誰かがこっちへ来るぞ!」 彰利 「なんと!?」 ───ムウ!確かに人影が! だがここからじゃあどんなヤツか解らんな……! 彰利 「ピエロアイーーン!!」 グミミミミ……!! 眼球を伸ばし、その先の先を見る! ……と、こちらに向けて弓矢を構えているおっちゃんが居た!! 彰利 「やべっ!避けろ夜華さん!!」 夜華 「な、なに?いきなりなにを」 彰利 「チィイ!!」 むにゅっ。 夜華 「うわわぁあああーーーっ!!!?」 彰利 「ゲゲェエーーーーッ!!!!」 なんと!突き飛ばそうとしたら胸を触ってしまった! だがまあなんとか夜華さんは突き飛ばし───ドンッ!! 彰利 「ゲハッ!?」 脇腹に鋭い痛み。 突き飛ばされ、地面に倒れた夜華さんが、アタイの脇腹を見て驚愕した。 夜華 「あ、彰衛門!?」 彰利 「ぐ……!」 脇腹には矢が突き刺さっていた。 そして、その矢を射ったおっちゃんが、ゆっくりと近づいてきた。 男  「ルナになにをした……」 彰利 「あ、あのね?こっちのおなごがね?ルナっちに砂をかけて簀巻きにしたんだ!」 夜華 「な───な、ななななにぃいっ!!!?」 彰利 「ボク悪くないよ?極悪下郎なのはこっちの夜華さんだよ!」 夜華 「彰衛門貴様!いきなり人の所為にするやつがあるかぁっ!!」 彰利 「ありますじゃ!だから犯人夜華さん!これで最強!ね?」 夜華 「なにが『ね?』だ!わたしはそんなもの認めないぞ!」 彰利 「アタイが認めますじゃ!だからOK!!」 夜華 「き、貴様ぁああーーっ!!」 アタイと夜華さんは、それはもう叫びまくった。 脇腹の痛みや、おっちゃんのことを完全に無視して。 男  「───黙れ」 彰利 「む!?何故かね!アタイが貴様の言うことを聞く筋合いなど皆無!」 夜華 「そうだ!黙っていろ貴様!」 男  「……筋合いなら、人の妻をこんな目に合わせたってだけで十分だろう」 彰利 「なんと!?」 ツマ……刺身のツマ!? じゃなくてルナっちが妻!? するってぇと、このどっかで見た覚えがあるようなないような男ってば……悠介!? 彰利 「………」 変われば変わるものだな……。 あのダーリンが、ここまでハッキリと『妻』だとか言うなど……。 フッ……こいつぁいい土産話が手に入ったぜ? 彰利 「うっふっふ……」 男  「おいお前」 彰利 「え?」 悪巧みをしていたところへの声。 向き直ってみれば、悠介(おっちゃん)がアタイを睨みつけていた。 悠介 「どんな手でルナを捕らえたかは知らないが。     こいつを泣かせたならよっぽどのことをしたってことだ。     ……五体満足で帰れると思うなよ」 彰利 「思ってますが?」 悠介 「なに……?」 彰利 「夜華さん、大樹部屋に入ってなされ。ホレ、これあげるから」 夜華 「なに?あ、彰衛門?」 急造で『球』を作り出し、夜華さんへと放り投げる。 夜華さんがそれを受け取るのを確認してから悠介に向き直り、構えを取る。 悠介 「ほう……やる気か」 彰利 「ま、たまにはいいだろ。     散々殴られた鬱憤晴らし、今日ここでさせてもらうぜ〜〜〜っ!!」 コロキキキと指を鳴らしつつも前進! キャア!今からアタイの最強っぷりを見せつけてやりますわ!? 彰利 「名乗らせてもらおう……。     我が名はポルナレフ……ジャン=ピエール=ポルナレフだ!!」 悠介 「……JOJO?」 彰利 「ち、違う!えーと、ほ、本当の名は低松翔だ!」 悠介 「……まあ、いい。俺の名は朧月悠介。     ルナを泣かせやがった貴様は絶対に許さない」 低松 「愛ですな?」 悠介 「ほざけ!」 悠介が疾駆する!ズドベシャアッ!! 悠介 「ごはぁっ!?」 低松 「キャアア!!引っ掛かったァッ!!」 フフフ……こんなこともあろうかと仕掛けておいたバナナの皮が役に立ちましたよ! 夜華 「ど、どこから出したんだそんなもの!」 低松 「俺の溢れる愛エナジーから!」 夜華 「なんだそれは!訳が解らないぞ!」 低松 「えーがらえーがら!夜華さんは大樹に入ってなさいな!     その球があれば入れるから!」 夜華 「だ、だが……!貴様はわたしを庇った所為で矢に……」 低松 「へ?キャア!忘れてた!」 見れば、脇腹からチューと噴出してる血液という名の液体。 低松 「や、夜華さん夜華さん!!」 夜華 「な、なんだ!?わたしに出来ることがあったら言え!」 低松 「水芸」(ブシューー!!) 夜華 「バッ……バカなことを言ってないで止血しろッ!!」 低松 「バ、バカとはなんだコノヤロウ!!」 そう叫んだ途端、アタイの視界がグラついた。 低松 「出血多量……これほどの影響が……」 夜華 「血を吹き出させて遊べばそうなるのは当たり前だろう!     本当に救いようのないバカだな貴様!」 低松 「バカとはなんだコノヤロウ!!」 ざり……。 低松 「むっ!?」 背後で物音! アタイはババッと振り向くと同時に腕を組み、 脇腹の筋肉に力を込めて矢を弾き出し、血を止めた! それについて夜華さんがなにやらツッコミを叫んできたが、 聞こえなかったフリでやりすごす。 悠介 「っ……てめぇ……!」 低松 「フッ……忘れたとはいえ、貴様の口から憎しみの言葉を贈られるとはな。     だが、先ほどは失礼した!!提案があるんだ」 悠介 「提案だと……!?」 低松 「きみにこの神社をあげるから……あの大樹はぼくがもらう!!」 悠介 「───ふざけたことを言うな!」 低松 「もう、ぼくは決めたんだ!大樹周辺には、絶対に足を踏み入れるなっ!!」 悠介 「そんなこと知るか!」 低松 「きみが知らなくてもぼくはもう決めたんだ!     もしぼくの領地に入ったら、命を狙われると覚悟しておいたほうがいい!!     解ったな!ぼくはもう二度と、この線から中へは近づかない!!」 ガリガリと枝で線を作り、神社から大樹への領域を作る。 その線に月聖力で聖域を施して、アタイと夜華さんと聖以外を通れないようにする! そしてその中へと入った! 悠介 「待て貴様───ぐっ!?」 バジィッと、厚い壁となった聖域が悠介の侵入を拒んだ。 低松 「ふん、解らないのか!ここはぼくたちの領地だ!」 悠介 「ルナを返せ!」 ルナ 「ゆーすけ……」 低松 「ふん、こんなやつ返してやるよ!」 抱き上げたルナっちをやさしく放り投げ、踵を反した。 悠介 「……!誰だか知らないがな……このままで済むと思うなよ……!」 低松 「きみが知らなくてもぼくは知ってるんだ!     このままで済むなんて思っちゃいない!     だからこの線から中へは近づかない方がいい!」 夜華 「……なぁ彰衛門?何故、指差した腕ごとぐるぐると回しているんだ?」 低松 「漂流教室の大友くんの真似をしたかったのだ!」 夜華 「………」 黙られてしまいました。 ひでぇや夜華さんたら……。 Next Menu back