───放浪精神『第十一章◆容赦のない人々』───
───……そうして見回りを続ける毎日が続く。 秋になる頃には浅美(子供)とも親友関係になっていた椛と聖は、 その時をそれなりに楽しく彩っていた。 しかし、秋が完全に訪れた時。 かつて椛が塞ぎ込んだ事件が起ころうとしていた。 小僧1「どうしてバケモノの友達になってんだ!!」 小僧2「バケモノの友達はバケモノだ!や〜いバケモノぉっ!!」 獄殺決定。 外壁の窓から覗いていた俺と彰利は窓をブチ破り、小僧どもに掴みかかった。 小僧1「うわっ!?な、なんだよお前らっ!」 悠介 「知りたいか───?ならば聞かせてやろう!俺の名は校務仮面1号!!」 彰利 「同じく2号!!よってたかってイジメをするカスどもに粛清を!     これもまた校務!覚悟はいいなカスどもが!!」 小僧2「う、うわ……」 悠介 「校務仮面パァーーンチ!!!」 ボゴシャア!! 小僧2「ふぎっ!」 彰利 「校務仮面アッパァーーッ!!」 ぱぐしゃあ!! 小僧1「ギャウッ!!」 悠介 「校務仮面ンンンン───往復ビンタァーーーッ!!」 ズパンズパンズパンズパンズパァアアアアン!!!! 小僧3「う、うわぁああああん!!!」 殴り、殴り、ビンタ。 その猛攻に、小僧どもは泣き出してしまった。 悠介 「2号!」 彰利 「オウヨ!」 ババッ! 悠介 「校務仮面1号!!」 彰利 「校務仮面2号!!」 ババッ!バッ! 悠介&彰利『ふたりそろって!ギニュー特戦隊!!』 ジャジャーーン!! 悠介 「……決まった……」 彰利 「文句のつけどころの無いスペシャルファイティングポーズ……」 彰利が鳴らす月奏力が、そのポーズの味を引き出してくれる。 なんだか解らんが……吹っ切れた人生ってのはこんなにも楽しいものだったのか……! 俺が愚かだった! 人にツッコミを入れるだけが人生じゃない! 馬鹿は心のゆとりに必要不可欠なものなのだ───!! 悠介   「いくぜ2号!」 彰利   「おうっ!!」 悠介&彰利『クロス・チェンジャーッ!!』 ギシャアア!! 子浅美  「………」 悠介&彰利『………』 小僧ども 『………』 その時、その教室の中の時間が止まった─── ───……。 彰利 「よいかね!!お子がよってたかってひとりを苛めてなんとするとよ!!     オメェだつ、ただで帰れっと思うでねぞ!!」 小僧1「うう……」 小僧2「卑怯だぞバケモノ!大人連れてくるなんて!」 彰利 「ゥウウウァアアアアーーーッ!!!」 バボキョォンッ!! 小僧3「うぶぁっ───……」 ドゥ……。 脇腹打ちが決まった途端、小僧3が糸の切れた操り人形のように倒れた。 流石は卸内(おろしうち)くんのリバーブローだ。 物真似だけでも破壊力抜群さね!  ◆卸内 三歩───おろしうち さんぽ  人気ボクシング漫画『ではじめ三歩』の主人公。  全戦全KO勝ちで知られるハードパンチャー。  『はじめの一歩』の幕之内一歩とは関係無い。  *神冥書房刊『神降の伝記-第一記第三章-』より 彰利 「神冥書房なんぞ実在せんので探しても無駄ですけどね」 悠介 「なにがだ?」 彰利 「こっちの話。それっぽく説明した方が面白いじゃん」 悠介 「そか。ところで1号……別に小僧3は何も言ってなかったが……」 彰利 「他人のフリして自分だけ逃げようって魂胆が気に食わなかったんで」 悠介 「災難だな……どう見たって、ただ怯えてたようにしか見えなかったが……」 彰利 「ままま、ええでないの」 さてと、まずは呆けてる……子浅っちを安心させねば。 子浅美「や、やっ……!触らないでください……!」 彰利 「なんとまあ……怯えられてますよ」 子浅美「顔も見せない人を信用出来ません……!」 彰利 「む?つまり校務仮面を取れと?……おいおい、こげなこと言っとるよ」 悠介 「しょうがないさ2号。子浅美はこの仮面の重要さを知らないんだ」 子浅美「……?」 コホン。 俺と1号は小さく咳払いをして眼を見開いた! ……が、穴が小さいために、見開いてもまず相手には見えやしない。 彰利&悠介『校務仮面の素顔は絶対に秘密なんだ!!』 けど叫びます。 だって、校務仮面は仮面が無ければ校務仮面じゃねぇもの。 子浅美「こ……む?」 彰利 「キャア違う!コムじゃなくて校務!!解ったら復唱!!サンハイ!」 子浅美「………」 彰利 「サンハイ!!」 子浅美「…………」(びくびく) 彰利 「なんで復唱しないの!」 子浅美「う、ううう……怖いよぅ……」 彰利 「怖くなんかねぇザマス!俺達ゃ正義の校務仮面ぞ!?     泣く子も黙る校務仮面ぞ!!解ったら復唱!怖くない!!」 子浅美「………っ」(びくびく) アカン……アカンでホンマ……! なんで怯えんねや……! 椛  「……あの。なにをしてるんですか……」 彰利 「むむっ!?誰だ!」 悠介 「───誰だ!」 椛  「……彰衛門に童心さまでしょう?」 彰利 「いや……」 悠介 「違うな……」 俺と悠介は不敵に笑い、威圧感を出しつつ椛を見下ろした。 彰利&悠介『遠き者は耳に聞け───近き者は目にも見よ!!       我が名は───校務仮面!!』 再びスペシャルファイティングポーズをとる。 決まった……決まりすぎてて怖いくらいだ……! ああ……ああ、もう……! 彰利 「俺、今とっても輝いてる!!」 ギシャアアアア!!! 椛  「ひゃああっ!?」 喜びのあまりに顔面をシャイニング!! その光が校務仮面の目の穴と首元から漏れて、 まるで起動を開始したロボットのような演出が為された!! 彰利 「安心するんだ若き娘よ!苛められていたおなごは我ら校務仮面が助けた!」 悠介 「これからも困った時は校務仮面の名を叫べ!さすればいつでも参上しよう!」 椛  「……来ないでいいですよ……」 悠介 「ひでっ!?」 彰利 「そげに溜め息混じりに言わんでも……」 どっちかっつーと悠介が『ひでっ!?』とか言う方が新鮮に感じられたんじゃけんど。 彰利 「呼ばないのなら我らが赴こう!せいぜい覚悟しているがいい!     我らはいつでも貴様らを監視しているぞ!     入浴中の時も風呂に入ってる時もシャワー浴びてる時も沐浴してる時も!」 悠介 「どれも変わらねぇうえに俺はそこまでやらねぇ!!」 彰利 「な、なんだと1号!貴様───貴様俺を裏切るのか!?」 悠介 「覗きなんぞはしねぇって言ってるんだよ馬鹿!!」 彰利 「馬鹿とはなんだコノヤロウ!!」 椛  「その言葉───やっぱり彰衛門じゃないですか」 彰利 「校務仮面だ」 悠介 「ああそうだ校務仮面だ」 椛  「だったらその紙袋、外してみてください」 彰利 「馬鹿な!校務仮面の素顔は絶対に秘密なんだぞ!?     そげなことしたら死ぬだろうが!」 悠介 「そうだこの馬鹿!」 彰利 「馬鹿とはなんだコノヤロウ!」 悠介 「お前に言ったんじゃねぇよ馬鹿!!」 彰利 「馬鹿とはなんだコノヤロウ!」 椛  「はぁ〜〜〜〜〜ぁぁぁぁ……」 盛大に溜め息を吐かれてしまった……。 彰利 「と、とにかく!困った時にはまたお会いしよう!見知らぬお嬢さん!!」 悠介 「さらばだ!」 俺と悠介は格好よくキメるため、破壊した窓からババッと大きく飛び出した。 そしていきなり後悔。 高い位置だったってこと忘れてた。 彰利 「ほ───ほぅわぁあああーーーーーーーーっ!!!!」 悠介 「うおっ!?お、おうわぁっ!!」 ああ……飛んでる……。 飛んでるよ、俺達……。 彰利 「───否!1号、俺の背中に乗れ!」 悠介 「───!こうかっ!?」 ───ギュッ。 俺の背に、なんとか小さな感触が届く。 それと同時に月空力を発動させ、宙に浮く。 彰利 「超人閻魔さま!技巧の神の力を!     ゼブラの芸術的テクニックを与えたまえぇーーーっ!!」 ドシューーーン!!! 彰利 「マッスルインフェル───」 メゴシャア!! 悠介 「ごぉっはぁっ!?」 彰利 「ややっ!?ゲェーーーッ!!!」 なんと!マッスルインフェルノの真似をして風を切っている最中に、 1号の顔面が木の枝と衝突!! 1号は不意を打たれたように力を無くし、俺の背から滑り落ちた───! 彰利 「い、1号ォオーーーッ!!!」 ───グシャッ やがて、鳥になって屋上から落ちた漂流教室の子供のように大地と熱いベーゼを交わす。 愛だ……!種族を超えた愛だぜこりゃあ……!! 彰利 「ブラボ〜〜〜……」 パチパチパチパチ…… 俺は感動のあまりに拍手をした! 感動ッ……!これが、感動の涙ッ……!! 素晴らしすぎるぜ……メゴキャア!! 彰利 「たわばっ!」 ───目の前に広がる星々が綺麗でした。 ああ、前方不注意はイカンよね……。 まいったなぁ……1号の方しか見てなかったから忘れてたよ……。 オイラ、飛んでたんだったよね……。 彰利 「ごめん、兄ちゃん……俺、ムーバーにはなれなかったよ……」 などと、プロジェクトリムーバー名物『根性幽体離脱』をしながら、俺は落下していった。 ───……。 あれからの俺達は、イジメッ子撲滅作戦を一週間実施した。 情を持たないクスガキャアどもに愛の鞭とは名ばかりの体罰を与えつつ。 彰利 「オラオラオラオラ!パンチだフックだボディだチンだ!!おまけに毒霧」 ブシィッ!! 小僧35「うわぁあああっ!!!目がぁあああっ!!」 出席番号35番、枢勝(からくり まさる)が悶絶する。 なんて素晴らしい名前と出席番号だ……(マサル)35じゃねぇか。 ……だからどうというわけでもないが。 そんなことを続けている内に、校務仮面に楯突く者と、椛を苛める者は居なくなった。 ───……そんなこんなで秋が過ぎて冬が過ぎ、春が過ぎたとある夏の日。 彰利 「暑中恒例!大肝試し大会〜〜〜っ!!」 ハワァーーッ!! 観衆が猛った!……うそです、猛ってません。 だってこの場に居るの、俺と悠介と聖と椛と子浅っちと夜華さんだけだもの。 夜華 「わ、わわわわたしは肝が坐ってるから、試すまでもない……」 彰利 「だめですよ夜華さん。     せっかく浅っちにチョークスリーパーかけてまで人格変えさせたんだから。     ここで肝ォ試さなきゃオメェ……アレだ、ウソだぜ?」 夜華 「だ、黙れ!とにかくわたしは、     こんな薄暗いうえに不気味な場所の徘徊など御免だ!!」 薄暗くて不気味な場所……そう、アタイ達は今、深夜の小学校に来ております。 なんでもこの学校、夜になると幽霊が出るとかでね? だから災狩するべきでしょうと、聖が名乗りをあげた。 聖は立派に災狩の子として成長していってくれているようですじゃ。 ……というか、俺に『いいところ』を見せたいらしい。 ようするに褒めてもらいたいのでしょう。 彰利 「……可愛いとこあるじゃねぇか」 夜華 「なっ───!?な、ななななにを言い出すんだ貴様っ!!     怖くないっ!わたしは本当に怖くないぞっ!?     ぶ、武士を捉まえて『可愛い』など……!!」 彰利 「へ?」 なにを盛大に勘違いしたのか、夜華さんが顔を真っ赤にしながら声を張り上げた。 ……まぁ、いいけど。 彰利 「さて、そんなわけで悠介に創造してもらったクジ引きで、     紳士的かつ公平にコンビを組みたいと思う」 悠介 「ほれ、とっとと引け」 悠介がスッと、夜華さんに向けてクジ引きを促す。 夜華 「だ、だからわたしは───!」 が、中々引こうとしない。 やれやれ、世話のかかるお子じゃわい……。 ───スッ。 夜華 「───?彰衛門……?」 夜華さんの耳に口を近づけて、囁くような小さな声で言う。 彰利 「……ほんとは怖ェんだろォ……」(ボソリ) 夜華 「なっ───ば、馬鹿を言うな!!」 彰利 「ば、馬鹿とはなんだコノヤロウ!!」 悠介 「お前さ、いい加減それやめない?」 彰利 「断わる!!マルボロはぼくらの英雄だ!だから断わる!!」 悠介 「マルボロって……あー、もういいからとっととクジを引け」 彰利 「御意。では───これじゃあ!!」 キャア!確かな手応え! こりゃあ大吉引いた時よりも最高の高揚感ぜよ! 彰利 「えーと……二番手だそうだ」 悠介 「そか、彰利が二番手、と……ほら、さっさと引け」 聖  「………」(こくっ) スッと聖が引く。 するとそこには『三番手』の文字。 聖  「………」 なにやらやたらと不満そうでした。 子浅美「それじゃあ次はわたしが」 スッ……。 子浅美「あ───一番手です」 椛  「それじゃ、次はわたしが」 スッ……。 椛  「……あはっ、一番手ですっ♪」 子浅美「一緒だね、椛ちゃんっ」 椛  「うんっ」 ほっほっほ、仲がよろしいことで……。 などと穏やかに笑っていると、悠介が夜華さんにクジ引きを促した。 悠介 「篠瀬、ほら」 夜華 「う、うぐぐぐ……!!」 悠介 「……んじゃ、俺が引いちまうぞ?───……お、ニ番手だ」 夜華 「───!!あ、そんな!悠介殿、それをお譲りください!」 悠介 「───」(OK?) 彰利 「───」(ダメです) 悠介 「だめだ」 夜華 「そ、そんなっ!」 アイコンタクト成立。 目が合うだけで、俺の目的を一瞬で理解してくれるとは……! てゆうか……うおう。 なにやらソワソワした感じで夜華さんに見られまくってんですけど……。 彰利 「なんじゃコラ!なにガンくれてんだオオ!?」 夜華 「が、がん……?あ、その……なんだ、彰衛門、     わたしと『こんび』とやらを組んでくれないかっ!?」 彰利 「やだ」(0.2秒) 夜華 「な、何故だ!?」 彰利 「公平にクジ引きでキメちまったからねィェ〜〜ィ。     それをいきなり変更なんて、出来るわきゃないでしょうがヨォオ〜」 夜華 「くぅ……!こ、これだけ頼んでもダメなのかっ!?」 彰利 「………」 これだけ頼んでくるとは……まさか闇に乗じて俺を殺そうってハラだったのか? そうじゃなけりゃあ辻褄が合わねぇぜ……? 彰利 「へっへっへ、狙い通りに行きたいところだったんだろうがなぁ……。     そうはいかねぇぜこの女豹がぁっ!!」 夜華 「狙い!?なんのことだ!た、ただわたしは貴様がどうしてもと言うから!」 彰利 「どうしても!?どうしてもなんと言ったのかね!?」 夜華 「うぐ───……な、なんでもないっ!     貴様なぞに期待したわたしが馬鹿だった!」 彰利 「馬鹿とはなんだコノヤロウ!!」 悠介 「落ちつけ……」 う、うむむ……まあ、なんにせよこれでメンバーが決まった。 一番手は椛と子浅っち。 二番手は俺と悠介。 三番手は聖と夜華さん。 結果的には幽霊が出てきても聖に災狩してもらうわけだから、 必然的にコンビである夜華さんも同行するということ。 こりゃあ……面白くなってきやがった。 そしてもちろん、俺の後に夜華さんが控えているなら脅かさない手はねぇ。 悠介 「んじゃ、各自4分ごとに出発。     道はこの下駄箱前廊下から、幽霊が出るってゆう理化室まで。     前もって理化室にはノートが置いてあるから、     それに好きなことを書いてくること。いいな?」 彰利 「ラジャッ!」 聖  「………」(こくこく) 椛  「解りました」 子浅美「はい」 夜華 「う、うぐぐ……しょ、承伏いたしました……!」 こうして、夏の最中の催し物が開催されたのでした。 ───……。 彰利 「さて……そろそろ4分か。そんじゃ、先に行ってるからな、聖」 聖  「うん、パパ」 夜華 「う、うー、うー……!」 夜華さんが心無し、震えながら俺を見る。 いやはやまいったね、まったく……。 居るんだよなー、こういうヤツ。 便所なんて我慢してても、なんの得にもならんのに。 彰利 「やれやれ……(かわや)ならそこ曲がって左ですよ?」 ザクシュウ!! 彰利 「ゴギャーーッ!!!」 夜華 「い、いきなり何を言い出すんだ貴様は!恥じを知れ!」 彰利 「なんだとてめぇ!俺は廁の場所が解らなくて震える夜華さんに、     廁の場所をそっと囁いてやったんじゃないですか!     感謝されこそすれ、脇腹斬られる覚えなんぞは皆無ですよ!?」 夜華 「今の貴様の発言のどこに感謝しろというのだ!!     いい加減なことを言うと斬るぞ!!」 彰利 「フッ……貴様に出来るかな?先に言っておく……俺はパ〜フェクトだぜ?」 ザクザクザクザク!!!! 彰利 「ギャアアアアアーーーッ!!!!!」 ───……。 彰利 「ちくしょ〜〜っ!覚えてろよてめぇ!ジャイアンに言いつけてやるからな!!」 夜華 「フン───『じゃいあん』とやらがどんな輩かは知らないが、     貴様が言いつける者など高が知れている───返り討ちだ!」 彰利 「大きくでたな……フフフ。     ならばジャイアンとの邂逅、楽しみにしてるがいい!     吠え面かかせてやるからなっ!吠え面かくんじゃねぇぞ!」 悠介 「どっちだよ。訳解らんぞお前」 彰利 「うっせうっせ!!」 ドタタタタ……!! ───……デゲデデッテデェーーン!! マキィーーーン!! 彰利 「闇を照らす霊訓!霊に会ってしまったら、なによりもまず『のんのん』だ!」 はい!吾郎さん! 彰利 「さて……そげなわけで、椛と子浅っちの後を追って来たわけでキョンスが……」 悠介 「キョンス言うな。……しっかし、こう暗いと参るな」 彰利 「ライトは聖グループと椛グループに渡しちまったからなぁ。     どれ───アルティメットアイ!!」 パワ〜〜…… 悠介 「おおっ!目から光が!……って、ほとほと人間じゃねぇよな、お前って」 彰利 「しみじみ言わんでください……」 目、疲れるからやめよ。 俺の目は闇に強いから平気だし。 彰利 「んじゃ、まずは椛達を驚かさねば。悠介、ジャック・オー・ランタンよろしく」 悠介 「ジャックって……あのカボチャの被り物か?」 彰利 「おう。あと黒マントもよろしく」 悠介 「……ま、面白そうだからいいか。───弾けろ」 ポムッ。 軽い音に次いで、その場に南瓜(カボチャ)と黒マントが現れる。 彰利 「それと、神・エネルの白頭巾と虎柄ズボンと腰布と黄金の棒を用意してくれ」 悠介 「注文多いなオイ……」 ブツクサ言いながらも創造してくれる悠介。 おうおう、ありがたいわねぇ。 ま、とにかくまずはランタンを被って、マントを装着して、と……。 彰利 「フェイスフラッシュ!」 ギシャア! フェイイスフラッシュを発動させて、そのままの状態を保つ。 彰利 「……どう?雰囲気出てるかね?」 悠介 「雰囲気どころか……なんて喩えたらいいのか。     ジャックの目と口から光が漏れるだけで、ここまで不気味だとはな……」 彰利 「おっしゃ。では悠介、キミもなにか着なされ。     俺だけじゃあ雰囲気出ないでしょ」 悠介 「十分だと思うが」 彰利 「そうかね……まあいいコテ。そんじゃあ俺の驚かし劇、とくと見ておけよ?」 悠介 「あー、見とく見とく」 少々疲れ気味(多分状況に)の悠介の言葉を聞いてから、アタイは疾駆した。 待っていろ!今すぐ脅かしてやっからな! ───……デゲデデッテデーーン!! マキィーーーン!! ランタン「闇を照らす霊訓!誰かを脅かす時は先手先手で行こう!」 はい!吾郎さん! というわけで理化室。 先回りをしてまで待っておるのだが……来ないねぇ。 ランタン「どっかで道草でも食ってるんかねぇ」 真っ暗な家庭科室に、ジャックフェイスから漏れる光が滲む。 こうやってこのまま待ってるってのも暇だな……なにかやるか? ランタン「お……」 ふと目に映る、理化室名物人体模型。 そして骨格標本。 それぞれには『佐藤晴男くん』と『鈴木人骨くん』という名札がついている。 ……そりゃね、こんなものがあれば幽霊が出るって噂も流れるわな。 それはそれとして、何か暇潰しを講じなければ。 ランタン「じ、人体模型さん!じ、実はぼくは、ずっと前からあなたのことが……!!」 何気なく告白をしてみる。 ははっ、なぁ〜んてネ♪ ガタッ。 ランタン「ウィ?」 椛   「あ、あああ……」 子浅美 「う、うわ……」 ランタン「ゲゲェエエーーーーッ!!!!!」 しまった見られた!! ウギャア恥ずかしい!こりゃとんでもねぇ生き恥じだぜ!? わ、忘れてもらうっきゃねぇ!! 椛   「か、かかかカボチャのおばけ……!光ってる……!!」 子浅美 「ほ、ほんとに居たんだ……!!      も、椛ちゃんっ!逃げよっ!?逃げようよぅっ!」 椛   「で、でもノートになにか書かないと……!」 子浅美 「それどころじゃないよっ!      悠介さまの童心さまか、彰衛門さんか篠瀬さんを呼んでこないと!!」 ランタン「なんと!?」 よ、呼んでくるって───説明するってことだよね!? 暴露!?この恥ずかしい瞬間を暴露ッスか!? ランタン「さっ───させるかぁあああああああああっ!!!!」 椛   「ひゃっ!?」 子浅美 「うわわっ!やっぱり逃げようよぅっ!!」 シュババッ!! 子浅美「わぁあっ!」 椛  「あうう……!回り込まれちゃった……!」 ニガサナイ……オレ、オマエラブッチギリ……。 ランタン「ォオオオオオオオオオオオオ!!!!!ダヴァイ(こい)ッッ!!」 マントを投げるわけにもいかず、俺はなにも投げずに叫んだ。 子浅美「うわぁ……いい(かお)になっちゃったよ……」 椛  「浅美ちゃん……あれ、カボチャのおばけだよ……?解るの……?」 子浅美「だめだよ椛ちゃん。知識の幅は広くて損をすることはないんだから。     あの叫び方はシコルスキーで、     多分あのカボチャさんは熱狂的なシコルスキーファンだったんだよ」 椛  「そ、そうなんだ……」 違いますけど……。 なにはともあれ、このおなごどもを逃がすわけにはいかぬ!断じてだ! ランタン 「キミたち……さっき、なにか聞いたかね?」 子浅美  「あ、あのっ……そのっ……べ、べつに……」 椛    「き、聞いてませんよっ!?       カボチャさんが人体模型さんに告白してたなんて───あっ……」 子浅美  「あ……」 ランタン 「……オレ、オマエラ、ブッチギリ……」 椛&子浅美『ひやっ───ひやああああああああああんっ!!!』 ランタン 「エェクスカリヴァーーーッ!!」 ギシャアアアアン!! 子浅美「あわっ……!あわわわ……!!」 アタイはFF7のナイツオブラウンドのトドメ、ジークフリードの如く目を輝かせた! やがて狼狽えるふたりに向かって─── ───……。 悠介 「ったく……見ておけなんて言って、あんなに速く走られちゃ追いつけるわけが」 声  「2億(ボルト)……“放電(ヴァーリー)”……!!」 悠介 「へ───?」 やっとこさ辿り着いた理科室から、嫌な予感しかしない声が響いた。 そしてその次の瞬間、その部屋から青白い閃光が溢れ出した。 バァッッッッシャアァアアアアアアアアアン!!!! 悠介 「くぅあぁああああっ!!!?」 窓ガラスはあっさりと割れ、まるで光に破壊されたかのように、砕けた。 悠介 「な、なんだぁっ!?」 ───……。 エネル「ふむ……ィヤッハッハァ……、少々やりすぎたか」 ランタンスーツをやめ、エネルスーツに取り替えたアタイは、 壊れた理科室の机に座りながらそう呟いた。 エネル「ィヤッハ……しかし、実に不可思議。     童心体であり、冥月刀を持たぬこの俺が何故、雷を自在に操れるのか……」 ふむ……。 エネル「なるほど?眠っている俺は冥月刀を掴んでいるのだろう。     つまり、望めば冥月刀の力が俺に流れてくるというわけだな?     だが月操力の回復までは面倒見れないというわけか……ィヤッハッハッハ」 さすが神の推測だ。 間違えているという気すらも皆無! これが神!これぞ神!ィヤァッハッハッハッハッハァッ!! 悠介 「ったく……おい!なにやって───うおっ!?」 エネル「おや……珍客だ。何用だ、青海人よ」 悠介 「……お前ってさ、どうしてエネルになると加減を知らないんだ?」 エネル「このエネル装備を装着し、下マツゲを伸ばした時点で我は神なり!     故に俺の秘密を暴露しようなどという不届きなる者には、     それなりの粛清が必要なのだよ……」 悠介 「に、したってだな……椛と浅美、気絶しちまってるぞ……?」 エネル「ィヤッハッハ、気絶以外に障害など無い。しばらくすれば目を覚ます」 悠介 「……はぁ。んじゃ、俺はノートに適当なこと書いてるから。     このボロボロの理科室、なんとかしとけよ?」 エネル「ィヤッハ……まあよい」 エネル棒を持ち上げ、クルクルと回転させた後に月癒力を発動させた。 するとみるみるうちに、壊れた理科室が修復されてゆく。 エネル「児戯なり……。神となった俺にかかれば、壊れたものの修繕など……む?」 足音がふたつ近づいてきているな。 ィヤッハッハァ、無駄だ無駄だ、何人でかかろうと、神の前では蟻にも満たぬ……。 ───ザザッ!! 夜華 「なんの音だ!───なにっ!?」 聖  「っ……!?」 エネル「ィヤッハッハ……何用だ青海人よ。俺は貴様らなど招いた覚えはないぞ」 夜華 「っ……!貴様か……!」 エネル「なに……?」 夜華 「貴様がやったのか!そこの子供たちを……!」 エネル「フフン?だとしたらどうだという?」 夜華 「斬る!!───言え!何をした!」 刀に手をかけ、抜刀の構えをとる夜華さん。 だが俺は慌てず騒がず、冷静に返した。 エネル「なに、悪巧みを講じようとしていたのでな。眠ってもらったまでだ」 夜華 「なに───!?」 エネル「……俺は打算的な女は好かん」 夜華 「貴様ァッ……!まだ子供だぞっ!!」 エネル「フン……?見れば解る」 夜華 「───!!」 夜華さんが迷わず抜刀した。 そしてすぐさまに間合いを詰めにかかる! 夜華 「正気か貴様ぁあああっ!!」 エネル「体に教えねばわからんのだろう…… “神の定義”……!!」 シュフィンッ!!バジィッ─── 夜華 「なっ……にっ……!?」 夜華さんが振り切った刀が俺の横腹を切り───そしてあっさりと抜けた。 いや、手応えを消した。 己の体を雷としたのだ。 雷に斬撃など通用するわけがない。 エネル「貴様らがどう足掻こうが太刀打ち出来ない圧倒的な力!     そして───そこで覚える絶望という名の恐怖!」 チキッ─── 実体化して、宙に逆さまの状態で夜華さんの刀を握る。 夜華 「っ!?は、離せ!」 エネル「……全ての希望が絶たれることは“死”に同じ」 バジィッ───バッシャアアァアアアアンッ!!!! 夜華 「うあっ───うあぁああああああああああっ!!!」 その刀に雷を流し込み、夜華さんをシビレさせる。 エネル「人にとって死は最大の“恐怖”!!」 やがて回転しながら着地し、倒れかけの夜華さんの頭を踏みつけ───ガツンッ!! 夜華 「ぐあぁっ!う、ああぁああ……っ!!」 その勢いとともに、床に叩きつけた。 エネル「だから人は地に顔をうずめ神に慈悲を乞う……仕方のない事さ。     生物は恐怖の前にひれ伏すようにできている。本能というものだ。     人は神を怖れるのではない……───恐怖こそが神なのだ」 必死に抵抗する夜華さんをギシギシと踏みつけ───やがて。 その体から力が失われるのを感じた。 悠介 「おーいエネル、ノートへの書き込み終わっ───おわぁーーーっ!!?」 エネル「うん……?なんだ、まだ居たのか青海人よ」 悠介 「ば、馬鹿っ!なにやってんだ!篠瀬が苦しそうだろうが!」 エネル「馬鹿とはなんだコノヤロウ!!───て、はうあ!?     な、なんで俺、夜華さん踏みつけてんのっ!?」 悠介 「……お前、これからエネル禁止な」 エネル「えぇっ!?そげな!!」 あ、で、でもエネルスーツ着てからというもの、あまり記憶がないっつーか……。 もしかして俺、なりきってた? 聖  「……パパ、なの……?」 エネル「ややっ!?キャーーッ!!」 聖  「パパ……?どこ……?」 エネル「───え?」 どこって……まさか! エネル「脱衣(クロスアウッ)!!」 シュババッ!スタム! 彰利 「聖!ちょいと目を見せてみなされ!」 聖  「え、う……?」 ガッシリと聖の顔を掴んで、その目を見る。 これは…… 彰利 「視力がないようだな……まったく見えてない……」 聖  「!!やっ!やぁーーーーっ!!!」 彰利 「毒によるものだな……っておわぁっ!?こ、これ!暴れるでない!!」 以前、この言葉のあとに死国(サバオリ)で気絶させられたのを思い出したらしい。 心配せんでもやるつもりなかったのに……。 彰利 「ベホイミ♪」 パァア……! 間近で見てしまった雷光でやられたであろう目に、月生力を流してやる。 すると、視点が合ってなかったその目が生命を取り戻したかのようにしっかりしてくる。 彰利 「ハフゥ〜……、どうかね?見れるかね?」 聖  「う、うん───っ!?パパッ!」 彰利 「ウィ?」 聖がアタイの後ろを見て驚愕する。 俺はババッと後ろを向いて、その驚愕の素を───見てしまった。 人体模型『………』 彰利  「が、がが……!!」 人体模型の佐藤晴男くんが動いているのだ……!! モノホンの心霊現象───……ミステリーだ!! ということで。 彰利 「ジャイアン聞いてくれ!夜華さんがヒドイんだ!やっつけちゃってよ!」 晴男 『ぼくは佐藤晴男だけど……』 彰利 「知っててやってた」 晴男 『………』 すげぇ、沈黙しちまった。 幽霊を沈黙させるなんて、なかなか出来る体験じゃねぇ。 晴男 『キミは……ここでなにをやってるんだい……?』 彰利 「肝試しでござる!」 晴男 『へぇ……面白そうだね。ぼくも混ぜてよ……いいだろう?』 彰利 「ダメでござる!」 晴男 『そんな……どうして……』 彰利 「何故なら!貴様の試すための肝は俺の手中にあるからだ!!」 アタイは、すかさずかっぱらっておいたゴツゴツ感のあるキモをズイと見せた。 晴男 『ぼくの……キモ……?』 彰利 「そう!そのがら空きのボディから盗みましたさね!」 晴男 『うそだ……!人の体から肝を取り出して、無事で済むわけがないよ……!』 彰利 「自覚せよ!貴様は人体模型のバケモノだ!」 晴男 『違う!ぼくは人間だ!そんな気味の悪い人体模型の人形なんかじゃない!     ウソだ……ウソだウソだウソだ……ウソだぁーーーーっ!!』 彰利 「はい鏡」 晴男 『!?』 がくっ、どさっ。 彰利 「ややっ!?」 鏡を見せた途端、佐藤晴男くんが床に膝をついた後に両手をついた。 晴男 『そんな……ぼくが人形……?     間違ってたのはみんなじゃない……間違ってたのは……ぼくの方……。     は……はははははは……』 悠介 「なんだこいつ鬱陶しい」 悠介、かなりの即断。 かなりひどい言い方だが、実は同意見だ。 聖  「もう、斬っていい?」 彰利 「いや……せめて喋りたいだけ喋らせといてやろ……」 晴男 『でもぼく……やっぱり人間になりたい……。人間に……なりたいよ……』 彰利 「……佐藤晴男くん……」 俺は座り込み、悲しげに落ち込む佐藤晴男くんの肩に手を置き、言ってやった。 彰利 「絶!対!無理!!」 晴男 『そ、そんな……!』 彰利 「聖ゴー!!」 聖  「はいパパッ!」 ズバシュウッ!! 聖の“不浄を滅する災狩の大鎌(ディザスティングヴァニッシャー)”が、佐藤晴男くんの体を切り裂く。 その途端、佐藤晴男くんの体にヒビが入り、そのヒビから光が溢れる。 晴男 『あ……あ、ああああ……!!あぁあああああ〜〜っ……!!     先ッ生ぇーーーっ!!みんッなぁーーーーっ!!!』 ゴシュウウーーーーン…………ゴシャッ、ゴタタッ……。 ……やがて光が治まり、人体模型がバラバラになる頃。 佐藤晴男くんからは……完全に霊体の気配は無くなっていた─── 彰利 「俺達人間はな……人と人とが助け合うことで生きている。     お前のように人を犠牲にしてまで人間になろうなんてヤツは、     絶対に人間になんてなれないんだよ……」 悠介 「……誰かを犠牲にするどころか、ただ歩いてただけじゃないか?」 彰利 「………」 悠介 「………」 聖  「……?」 彰利 「でも……あいつなんだか、可哀相なやつだったよな……」 悠介 「まあ……ある意味とんでもなく可哀相なヤツだってことは認めるけど」 彰利 「ただ人間になりたいって言ってただけだったのに……」 悠介 「言った途端に『絶対無理』って言われたな」 彰利 「……………」 悠介 「……………」 彰利 「……帰るか」 悠介 「……そだな」 聖  「……?……?」 こうして。 その日からというもの、小学校の中でのお化け話はなくなったそうな。 で……結局なにやりたかったんだ?佐藤晴男くんは。 Next Menu back