───転生体への疑問へ───
───……とある日の朝。 凍弥 「ガッコ行くぞっ!」 浩介 「グーヴ……」 浩介の部屋のドアを開け放ち、ベッドに沈んでる浩介のシーツを引っぺがす。 が、唸る浩介に逸る気持ち(?)を押さえきれず、往復ビンタをかました!! ズパァンゴパァンスパァン!!! 浩介 「べぼぶぼべばぁーーーっ!!?」 凍弥 「起きやがれ!このままじゃサボリーマンになっちまうだろうが!     ここらでガッコ行かんと悪循環になっちまうぞ!!」 浩介 「う、うぐぐ……しょ、承知……」 凍弥 「んじゃ、俺は浩之起こしてくるから!さっさと用意しろよ!」 浩介 「うむ……う、うむ……うーむ……」 ふらふらとした返事をする浩介をほっぽって、今度は浩之の部屋へと駆け込む。 ───で、案の定爆睡してる浩之を発見するに至り─── 凍弥 「デストロォオーーーイッ!!!」 ダイビングニープレスで起こしにかかった。 ドグシャア!! 浩之 「ぶぎゃああーーーーっ!!!!」 クワッと見開かれる目! そしてその目が俺を見る! そんな瞳にサワヤカな一言を。 凍弥 「さわやかな目覚めをあなたに」 浩之 「死ぬわっ!!」 軽く手を挙げて挨拶してみたが、怒鳴られてしまった。 が、これだけ喋れりゃ目ェ覚ましただろ。 凍弥 「とっとと着替えろ。ガッコ行くぞ」 浩之 「ガッコ……?何故だ。我らには書類整理という大義が……」 凍弥 「そんなもんガッコから帰ってからやりゃいい!     このまま行けば悪循環で、ガッコ行かなくてもいいって感じになっちまう!」 浩之 「……そうか?」 凍弥 「そうなんだよ!だから起きろ!起きるんだ!ガッコ行くんだよ!」 浩之 「……ぬう、同志がここまでガッコ好きだったとは……」 凍弥 「べつに好きじゃないが。     ただ、日常的なものをこなさないと落ち着かないというか」 浩之 「……そうか。そういえば貴様は……」 凍弥 「ま、そういうこと。頼むよ」 浩之 「うむ、ならば断る理由は無いな。楽しい一日にしよう」 凍弥 「今日で終わるみたいな言い方するなよ……」 浩之 「違うのか?」 凍弥 「違わいっ!!」 仕返しとばかりに意地の悪いことを言う浩之に言葉を返して苦笑した。 やっぱ、友達……いや、盟友ってのは心が休まる。 居るだけで十分だ。 浩之 「ではとっとと仕度をするとしよう。同志は準備はよいのか?」 凍弥 「あー。浩介の様子見てくるよ」 浩之 「そうか。それではあとでな」 浩之の部屋をあとにする。 ───のちに再び浩介の部屋に立ち寄ったわけだが…… 浩介 「すかー……」 ……寝てやがった。 こりゃ……極刑だな。 凍弥 「よっこらせい!」 早くも熟睡しているらしい浩介の首根っこをロックし、天空に掲げる。 そこからベッドへ向け─── 凍弥 「スタイナー……スクリュー───ドライバァーーーッ!!!」 ドフッシャアアアアンッ!!!! 浩介 「ぶぎゃぁあああーーーーっ!!!」 ベッドに浩介の頭が突き刺さる! その体がゆっくりと傾き、どしゃっと倒れる。 凍弥 「……起きたか?」 浩介 「グビグビ……」 うお、泡吹いとる……。 凍弥 「仕方ないな……携帯用キンカンを目下に……」 ヌゥリヌゥリ〜♪かんた〜ん♪ ズリュッ。 浩介 「ほぎゃあああああああああああああああああっ!!!!!!」 あ、やべぇ。 誤って眼球に…… 浩介 「な、なにをするのだ同志!貴様、我を失明させる気か!」 凍弥 「いや、なんつぅかスゥッとサワヤカな目覚めをプレゼントしたくて」 浩介 「スゥっとしてるのは確かだがそれを上回る激痛に襲われたわ!!」 凍弥 「それは残念だ。それはそれとして、いい加減目ェ覚めたろ?     だったら登校準備をせよ!」 浩介 「鬼か貴様……」 凍弥 「俺が鬼なら葉香さんはどうなる」 浩介 「鬼神だな」 凍弥 「正論だ」 実に的を射ていると思う。 まあそれはそれとして、俺は鞄を肩に引っ掛けるように手に持ち、浩介を促した。 そろそろいい時間だ。 メシを食うことを想定すると、もう遅れてはいる。 浩介 「すぐ用意する。食堂で待っていてくれ」 凍弥 「りょーかい。三度寝するなよー、したらキンカンじゃ済まないから」 浩介 「……肝に銘じておこう」 凍弥 「鼻の穴にタバスコ一滴ってのはどうだろう」 浩介 「死ぬわっ!!」 死にはせんと思うが……まあ、死ぬらしい。 ……考えてても仕方ない、行くか。 ───……。 食事をとってレイヴナス屋敷を出る。 ガッコに辿り着くと、俺と志摩兄弟はその学び舎へと歩を進める。 凍弥 「フフフ……懐かしい限りだな……」 浩介 「サボリにサボって一週間……」 浩之 「おそらく我らは教師どもに目をつけられているに違いないだろう……」 そう、一週間。 一週間だ。 俺達は正月を越しても、ずっと書類整理に追われて登校する暇もなかった。 凍弥 「んじゃ、行くか」 志摩 『うむ』 やがて三人でガッコへ。 昇降口を抜けて階段を昇り、自分らの教室へ入るに至り─── 浩介 「うむ……誰もおらんな」 浩之 「まだ相当に早いからな……。こんな時間に行動する同志の気が知れん」 凍弥 「あのなぁ、早起きは三文の得って言ってな……」 浩介 「小難しいことは知らん。     ところで同志……ちと気になったことがあったんだが……いいか?」 凍弥 「うん?なんだよ、改まって」 浩介 「ああ……」 改まる浩介を見ても、またくだらないことだろうと思う自分が、なんてゆうか……はぁ。 馴れって怖わいなぁ。 浩介 「シルフィーから聞いたのだがな。     昨日の晩、とある場所で大喧嘩があったらしい」 凍弥 「喧嘩?……それがどうかしたのか?」 大喧嘩があったとしても俺達に関係があるとは思えない。 が、浩介は神妙な顔で俺を見る。 浩介 「その喧嘩をした者、場所が『牙王』でもか?」 凍弥 「牙王……?牙王って───!」 佐古田の家……じゃないか。 浩介 「ヤクザ同志の縄張り争い……と、聞くだけなら軽いものだがな。     相手側は全員病院送り。もちろん牙王の者どももただでは済まなかった。     佐古田親父がな、相当重傷らしい」 凍弥 「重郎さんが……?」 浩介 「だが、それより問題なのが……」 凍弥 「───佐古田、か」 ヤクザ同志の喧嘩。 おそらく、急なものだったに違いない。 果たして、佐古田はどうなったのか。 凍弥 「どうなったのか……解らないのか?」 浩介 「ああ。双方ともに病院送りだということを聞いたくらいだ。     佐古田のことは一切聞いていないが、病院には女は担ぎ込まれなかったらしい。     だがな、同志。『双方ともに』というのはどういうことだ?     病院送りにするというのは、どちらかに余裕が無ければ出来ないことだろう?     だが、結果は双方ともに同時に病院送り。ひとり残らずだ。     これは……どういうことだ?」 凍弥 「ひとり残らず……?」 おかしい。 確かにそれはおかしい。 相打ちなんて、そうそうあるものか? 全員で、そんな偶然が起こったってゆうのか? 浩之 「我も考えてみたのだがな。もしやその場に第三者が居たのではないか?」 凍弥 「第……三者?」 浩之 「うむ。その場に居たヤクザどもを鬱陶しく思ったその者が、     そいつらを病院送りにしたのでは……?」 凍弥 「………」 断定なんて出来ない。 けど……だとしたら佐古田はどうなった? 重郎さんの娘である佐古田は─── 凍弥 「……悪い、浩介、浩之。学校に来ようって言っておいてなんだが……」 浩介 「解っている。何年貴様の同志をしていると思っている」 浩之 「うむ。これから牙王に、だな」 凍弥 「……サンキュ。勝手ばっか言って悪い」 志摩 『構わぬ。我も気になるところだ』 どちらとも、誰ともなく頷いて───俺達は走り出した。 ───……。 牙王事務所前。 その場に辿り着いて……その『喧嘩』とやらがどれだけのものだったのかを思い知った。 凍弥 「ひでぇ……なんだよこれ……」 浩介 「うぐ……!」 『牙王』と書かれたその場所には血飛沫が飛び散ったような血痕があり、 壁には、見るだけで気持ち悪くなるくらいに血が付着していた。 もう固まってはいるが……間違い無い。 あれは血だ。 浩之 「ひどいな、これは……」 浩之の言葉に、俺と浩介は頷くしかなかった。 それだけの喧嘩があったんだ。 死者が出ていないのが不思議なくらいだ。 そして……もしかしたら、この血痕の中に佐古田のものも混じっているかもしれない。 そう考えると、余計に心が安心してくれなかった。 凍弥 「佐古田……どうなったんだろうな」 浩介 「うむ……」 浩之 「解らぬ、な……」 佐古田はその事務所には居ないようだった。 牙王の事務所は立ち入り禁止のテープが貼られていた。 俺はひとまずガッコに戻ろうと思ったが─── 凍弥 「……まいったな。今からガッコ行っても遅刻扱いだ」 浩介 「それに、ガッコという気分ではないな」 浩之 「うむ……どうしたものか」 凍弥 「けどさ、もしかしたら佐古田、ガッコに来てるかもしれないし……」 浩介 「……そう、思うか?」 凍弥 「可能性問題だよ……。何処に居るのか解らないなら、探すしかないだろ……」 浩之 「……そうだな。だが、宛てがない」 凍弥 「………」 そう。 俺達は佐古田が行きそうな場所なんて知らない。 普段は気軽に話してはいたが───事実、俺達はあいつのことを特に知りもしなかった。 ヤクザの娘。 知っているのはそれくらいだ。 凍弥 「………」 佐古田、か。 何処に居るのかな…… ───……。 遅刻と解っていながらも、俺達はガッコに向かった。 その先で教師に説教されながらも、俺は佐古田のことを訊いてみた。 ───が、返ってくる言葉は『捜索願いが出ている』ということくらいだった。 凍弥 「なんだかな……」 それとともに訊かれたことが、『朧月はどうしている』ということだった。 つまり……椛もずっと、学校に来ていないのだ。 まだ問題とやらが解決していないのかどうか。 連絡のひとつくらい、よこしてくれてもいいのにな……。 浩介 「で、結局こうなるわけだな」 浩之 「当然だ」 結局、俺達は屋上でサボっていた。 やっぱり授業なんて受けていられる気分じゃない。 凍弥 「さて……どうしたもんかな」 浩之 「うむ……」 ガチャッ……キィ……。 浩介 「む?」 浩之 「来客か?授業中の筈だが……」 風間 「……あ……」 屋上のドアを開けて現れたのは風間だった。 って……随分と痩せてないか? 風間 「どうも……明けまして……おめでとうございます……」 浩介 「ちっともおめでとうには見えんが……」 浩之 「どうしたのだ貴様。幽霊の方が、まだ顔色がよく見えるぞ」 風間 「はあ、あの……仕事が忙しくて……。     授業サボって寝に来たんですよ……」 そう言って、よろよろと給水塔の段差に腰掛けて目を閉じる風間。 ……土木工事、続けてるんだろうな。 結構タフだ。 風間 「すんません……ちょっと……寝ます……」 浩介 「……ふむ。見たところ、寝不足、疲労、その他もろもろに付き纏われているな」 浩之 「ここまで目にクマを作った者など、初めて見たぞ」 凍弥 「俺もだ……」 大した間もなく、風間の居る場所から寝息が聞こえ始める。 ……邪魔しない方がいいな。 凍弥 「にしたって、冬だってのに屋上で寝るとは……。     浩介、浩之、手伝ってくれ。こいつ空き教室に運ぶ」 志摩 『心得た』 結局風間をほっとけなかった俺は、 志摩兄弟に手伝ってもらって風間を担ぎ、屋上を後にしたのだった。 ───……。 空き教室に辿り着く。 その途端、浩之が一言。 浩之 「なぁ同志よ……。     確かに屋上よりはいいかもしれんが……温度差はさほど無いように感じるぞ?」 凍弥 「そういう時のためのコレだ」 俺は、既に使われなくなって久しい用具入れを開け、その用具入れの天井を外した。 そこから引きずり出しましたるは……野宿用の寝袋。 浩之 「ど、同志……貴様そんなものまで持ち込んでいたのか……!」 凍弥 「ほら、冬とかにここで寝ると風邪引きそうだろ?     だからこうして、寝袋をここに隠しておいてだな」 浩介 「同志。校則というものを知っているか?」 凍弥 「サボリ魔がいまさらそんなこと言ってどうするよ」 志摩 『然り』 頷く志摩兄弟を余所に、風間を寝袋に詰めてゆく。 ……なにやら表現が適切じゃないように聞こえるが、意味は間違ってはいないと思う。 凍弥 「さてと、風間はここに放置しておくとして、と。どうするか」 浩介 「いまさら屋上に戻るのも気が引けるな」 浩之 「なにより寒い。これは如何(いかん)ともしがたいな」 凍弥 「ふむ……」 俺も志摩兄弟も、恐らくは佐古田のことが気になっているんだと思う。 会えば言い合いばっかりのヤツだったけど、言い合えるってのは遠慮がないってことだ。 盟友だのなんだのを除けば、あいつは間違いなく友達だった。 ……いいヤツだったかは別として。 浩介 「しかし……こやつも男の顔になったな」 浩之 「うむ……なにかを仕出かそうとしている最中の男の顔だ」 凍弥 「『仕出かそう』じゃなくて『成し遂げよう』の間違いじゃないか?」 浩介 「そうだぞブラザー、馬鹿か貴様」 浩之 「ここぞとばかりに罵るなブラザー」 浩介 「どれ……激励として、顔に落書きをしてくれよう」 浩之 「おお、それはいい考えだブラザー。我も全力で協力しよう」 凍弥 「そんなんで全力になるなよ……とか言いつつ、俺も協力しよう」 俺は懐を探って、マッジックペン(今度こそ水生)を取り出した。 蘇る記憶……。 かつて、水生だと思っていたペンで顔にステキなアートを描いて、後悔したものだ。 凍弥 「ま、ヒゲはセオリーだよな」 浩介 「無論、アオズジもだ」 浩之 「アゴケツも基本であろう」 それぞれが思い思いにペンを滑らせる中、どんどんと風間がダンディになってゆく。 凍弥 「マユゲを太くして……」 浩介 「瞼の上に瞳を描いて……」 浩之 「鼻に仮面ノリダーばりの鼻の穴のようなものを描いて……」 が、あっという間にダンディではなくなった。 そして俺達は─── 凍弥 「うわはははははははは!!あはははははははは!!!!」 浩介 「ぶはぁーーーはっはっは!はははははは!!」 浩之 「うははははは!!くふふはははははは!!」 ……不謹慎にも、散々に笑いまくった。 腹を抱え、その場で転がり回った。 ───そして……笑いが途切れた時。 自分の中に溜まっていた嫌なものが流れていった気がした。 ───……。 リヴァ「───ああ、居たな凍弥。ちょっといいか」 凍弥 「っと、リヴァイア?」 志摩 『む?』 志摩兄弟とメシを食らっていると、その場にリヴァイアが現れた。 で、現れたと思ったら問答無用で俺の腕を掴んだ。 リヴァ「付いて来い。悠介が精神から戻ってきた」 凍弥 「っととと!ちょ、ちょっと待て!なんだよ急に!わけ解らんっ!」 リヴァ「悠介がお前に話があるらしい。ただそれだけだ。わたしだって知るもんか」 凍弥 「ちょ───ちゃんとした説明くらい───!」 志摩 『同志!?』 ヴヴンッ!! ───……。 凍弥 「……あーのー?なんでいきなり引きずりこまれたんでしょうねぇ」 悠介 「俺が頼んだからだが?」 凍弥 「ソウデスネ……」 気がつけば、薄暗い場所だった。 いつか来たリヴァイアの工房だ。 視界には悠介さんと篠瀬、そして……寝たままの彰衛門が居た。 悠介 「さて……と。連れて来てもらって、なんだが……どうしたもんかな」 凍弥 「悠介さん?」 悠介 「ああ、ちょっと待ってくれ。     彰利に釘は刺されちゃいるが……お前には話しておいた方がいいと思ってな」 凍弥 「俺に……?何を……」 悠介 「───……」 悠介さんはしきりに『どうしたものか』と言うばっかりだ。 悠介 「あー……はぁ。悪い、お前が決めてくれ。俺の話を聞くか、聞かないか。     それによって、俺は自分の行動を決める」 凍弥 「なんですかそれ……」 突然の結論に、少しポカンとした。 けど、悠介さんの目は真剣だった。 俺は─── ───話を聞く ───話を聞かない Menu back