───鎮守直廊万針房番人の世界(THE WORLD OF DOKUGANTETSU)───
───……バッバッバッバッバッバッバッバッ……!! 気づけばそこは、大きな広間と、その先にある長い長い通路だった。 そして俺は後悔した。 それはもう凄絶に。 悠介 「……ごめん……マジでごめん……」 ルヒド「解ってくれたかな、自分が犯してしまった罪の重さ……」 バッバッバッバッバッ……!!!! 悠介 「あ、あのさ……出る方法とか無いわけ?」 バッバッバッ……!! ルヒド「無理だね。固有時空ってゆうのは、     作り出した本人が出す課題をクリアしない限りは出られない仕組みになってる。     だけど僕らにその課題は解らない。お手上げじゃないかな」 悠介 「マジか……こんなところで一生過ごすのか……?」 バッバッバッバッ……!! くそっ……さっきから鬱陶しい……!! 悠介 「お前らいい加減にバク転やめろォーーーっ!!!」 叫んでみても聞き入れやしない独眼鉄×100。 それがバク転しながら、細い通路へと消えていった。 ───そう。 その固有時空とは『独眼鉄時空』だったのだ……。 独眼鉄「男とはなんぞや!?」 悠介 「あーうるさいうるさい!!」 独眼鉄「答えぃ!男とは!!」 悠介 「あーもううるせぇな!!男ってのは性別だろうが!これで満足かボケ!!」 独眼鉄「………」 悠介 「うお……」 答えた途端、オモチャを取られた子供のような悲しい顔をされてしまった。 独眼鉄「男とはなんぞや……!?命とはなんぞや……!?返答せい!!」 しかし同ずることもなく、今度は別の独眼鉄が問いかけてきた。 ……なんなんだよこの時空……。 独眼鉄「さあ答えんか!男とはなんぞ!!     “鎮守直廊万針房番人三号生独眼鉄”(ちんじゅちょくろうばんしんぼうばんにんさんごうせいどくがんてつ)、聞かせてもらおう!!」 悠介 「無視していいか?」 ルヒド「付け上がるよ?きっと」 悠介 「だろうな……」 独眼鉄「答えい!男とは!!」 ……はぁ。 もういい、片っ端から殴り倒していこう。 悠介 「答えればいいんだな?好きなように」 独眼鉄「よし聞かせてもらおう。     この答えにお前の生死がかかっておる。───答えい!男とは!」 悠介 「これが俺の答えだぁーーーっ!!」 拳に渾身の力を込め、独眼鉄目掛けて思いっきり振る!! 一撃でキメてやる!! 独眼鉄「フフフ、なるほどな。さあどんとこい!」 悠介 「うらぁっ!!」 バゴォンッ!! って……避けようともしねぇ。 こんなテレホンパンチを……。 ルヒド「へえ……まともに顔で受けた。大した自信だね」 だが───ダメージは相当な筈! 悠介 「どうだ!」 独眼鉄「なかなかの答えだ。しかしこれではまだ正解とは言えん!!」 悠介 「じゃあおまけだ!うらぁっ!!」 バッシィンッ!! 再び独眼鉄の頬に拳を振る。 確かな手ごたえだが─── 独眼鉄「フフフ、まあいい。正解としておいてやるか。     確かに筆頭がお呼びになるだけのことはあるようだがな」 効いてねぇ……!? マジか!? 悠介 「くっそ!だったらもっと殴って───」 独眼鉄「フッフフ、次に会う時まで貴様の命と答えは預けておく」 ガシャンッ!ガラガラガラ…… 独眼鉄が縄を引くと、閉まっていた通路の壁が開き、先に進む道が出来た。 独眼鉄「さあ通れ。鎮守直廊、次の房が貴様らを待っている」 悠介 「……どうするよ」 ルヒド「行くしかないんじゃないかな。案外この通路を攻略することが課題かもしれない」 悠介 「……そか。じゃ───」 俺とシェイドはその通路の先へと進むことにした。 ───……そして。 独眼鉄「男とはなんぞや!?命とはなんぞや!?」 悠介 「結局独眼鉄なのかよ!!」 進んだ先に独眼鉄。 独眼鉄「鎮守直廊万針房番人三号生独眼鉄、聞かせてもらおう!!」 悠介 「さっき答えただろうが……」 独眼鉄「答えい!男とはなんぞや!?」 悠介 「……黙るまで殴るか?」 ルヒド「ふふ、任せるよ」 悠介 「OK……」 独眼鉄「答えい!男とは!!」 シュゴッ!! 悠介 「おわっ!?」 突如、座っていた独眼鉄が円盤のようなものを投げてきた!! 佩舞大円盤(はくぶだいえんばん)……巨大な円盤に鎖を繋げたようなヨーヨーのバケモノか……!! 俺はそれをなんとか避けドゴシャッ!! 独眼鉄「ぐぎゃあーーーっ!!!」 ルヒド「あ……」 悠介 「あ……」 飛んでいった円盤が、さっき道を開けてくれた独眼鉄に刺さった。 独眼鉄「フフフッ、ド、ドジこいちまったぜ……」 悠介 「シェイド、トドメ頼む」 ルヒド「うん」 独眼鉄「お、男塾はいわば俺の親も同然……     親を馬鹿にされて下を向いてるくらいなら、俺はいつだって男をやめるぜ……」 ルヒド「うーん……じゃあキミを女にしてあげよう」 独眼鉄「な、なにっ!?や、やめろ!!ちょちょっと待てーーーっ!!お、俺は独眼鉄!!     貴様ごときに負けてたまるかーーーっ!!」 ルヒド「あはは、負けるんじゃないよ。キミは女になるんだ。それだけだから」 独眼鉄「ヒ、ヒイ!よ、よせーーーっ!!!!」 ……見なかったことにしよう。 独眼鉄「男とはなんぞや!命とはなんぞや!!」 俺はこいつをなんとかしなきゃいけないみたいだからな……。 悠介 「月鳴の裁き!!」 右手に月鳴力を溜め、創造した月醒力に混ぜ合わせて波動砲として放つ!! 耐えられるもんなら耐えてみやがれ!! ドッゴォオオオオオオオオオオン!!!! 悠介 「よっし!完全命中!!さすがに一溜まりもないだろ!……って」 独眼鉄「なかなかの答えだ。しかしこれではまだ正解とは言えん!!」 ……マジですか? 独眼鉄ってこんなに強かったっけ……。 ルヒド「うわー、男をやめることになったら自分で背骨折って死んでみせたよ……。     男気ってゆうか馬鹿じゃないかなぁ。     あぁ悠介、ここの独眼鉄は形式ぶってるだけみたいだから、     そこのところをよく考えてみて」 悠介 「へ?」 形式ぶってるって……あ、そうか! 悠介 「ふるぁっ!!」 ボゴシャッ! 独眼鉄「フフフ、まあいい。正解としておいてやるか。     確かに筆頭がお呼びになるだけのことはあるようだがな」 やっぱり……。 とにかく二回攻撃を当てれば答えにはなるらしい。 実に独眼鉄らしいというかなんというか……。 独眼鉄「フッフフ、次に会う時まで貴様の命と答えは預けておく。     さあ通れ。鎮守直廊、次の房が貴様らを待っている」 ガラガラガラ……。 悠介 「はぁ……いくぞー、シェイドー……」 ルヒド「うん、行こうか」 ───……。 独眼鉄「男とはなんぞや!! 悠介 「……またなんだ……」 進んだ先には独眼鉄。 なんか疲れてきた……。 ───……。 悠介 「ガトリングブラストォオオオオオ!!!!」 ドチュチュチュチュチュチュゥウウウウン!!!! 独眼鉄「フッフフ、次に会う時まで貴様の命と答えは預けておく。     さあ通れ。鎮守直廊、次の房が貴様らを待っている」 ドチュチュチュチュチュチュ!!!! 独眼鉄「お、おいこら!こ、この独眼鉄さまになにを」 ドチュチュチュチュチュチュチュチュチュ!!!! 独眼鉄「ぐぎゃああーーーーっ!!!!」 何を言おうが無視して撃ってたら、独眼鉄がぐったりと動かなくなった。 どうやら二回攻撃を当てたあとは実に打たれ弱くなるらしい。 ───……。 独眼鉄「鎮守直廊万針房番人三号生独眼鉄、聞かせてもらおう!!」 スパァンズパァン!! 独眼鉄「ぶべっ!ぶべらっ!」 面倒だったんで往復ビンタ。 すぐさまにバックステップしてから即席神屠る閃光の矢。 独眼鉄「ヒ、ヒイ!死にたくねぇーーーっ!!!」 悠介 「ブチ抜けぇええーーーっ!!!!」 ドォッガアアアアアアアアアアアアアッ!!!! ───……。 独眼鉄「男とはなんぞや!?命とはなんぞや!?」 悠介 「もうやだ……」 現在予想を覆しての95戦目。 どこまで続いてんだこの直廊……てゆうか出てくる相手全員が独眼鉄だとすげぇ疲れる。 悠介 「シェイド……交代してくれない……?もうやだよこいつら……」 ルヒド「だめだめ、ほら頑張って」 悠介 「ちくしょう……」 ───……。 そして迎えた100戦目の独眼鉄。 独眼鉄「鎮守直廊万針房番人三号生独眼鉄、聞かせてもらおう!!」 悠介 「………」 100戦目できっと変わってくれるって信じてたのに……。 独眼鉄「男とはなんぞや!?さあ答えてもらおう!!」 ○○○「まったれや」 悠介 「な、なにーーーっ!?」 独眼鉄「お、お前はーーーっ!!」 絶望を抱いた瞬間、独眼鉄の背後から現れる存在があった! その存在とは───!! 独眼鉄   「ここは先輩の顔たててもらうぜ」 悠介&独眼鉄『ど、独眼鉄ーーーっ!!』 そう!独眼鉄だった!! 悠介  「って心の底から意味ねぇええエーーーーーーーーーーっ!!!!!      結局独眼鉄かよ!!手抜きしてんじゃねぇよぉおおおっ!!!!!」 ルヒド 「……もしもし、スタッフサービスですか……?」 悠介  「ま、待てシェイド!ひとりで現実逃避すんな!      俺だってしたいのを我慢してるんだぞぉっ!?」 独眼鉄2「許せねえ。自分の子分にまで手にかける血も涙もねえあのひねたガキに、      この独眼鉄さまがきついお仕置きをしてやるぜ」 悠介  「誰が子分で誰が誰を手にかけたって……?」 独眼鉄2「ヘッ、口の減らねえ可愛気のねえガキだ」 悠介  「口が減らねえのはどっちだよ……」 独眼鉄2「………」 独眼鉄 「………」 独眼鉄2「こ、このガキャアーーーッ!!」 悠介  「いきなり逆ギレかよ!!」 佩舞大円盤を手に襲い掛かってくる独眼鉄を前に、俺の心労ゲージはマックスに近かった。 手加減は出来そうにないなぁ……。 悠介 「死ねぇーーっ!!」 メゴシャア!! 独眼鉄2「ぐへっ!このクソったれがーーーっ!!」 顔面を殴ってやった途端、独眼鉄が円盤を投げてくる。 俺はそれを両手で挟むようにして掴み、回転を殺して止める!! 独眼鉄2「な、なにーーーっ!?こ、こんなひねたガキごときに!!      こ、この独眼鉄さまの佩舞大円盤が受け止められただとーーっ!?」 悠介  「覚えとけ!人を見掛けだけで判断するとえらい目にあうことになる!      月鳴の裁き!!」 バジィッ!!ズバババババババ!!!!! 独眼鉄2「ぐぎゃああーーーーっ!!!!」 円盤に裁きを流し、円盤に繋がっている鎖を介して独眼鉄2を電撃地獄にご招待!! もちろんそう簡単に逃しはせん!! ズババババババ!!バリバリバリバリ!!!! 独眼鉄2「ぐぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃああああーーーーっ!!!      ちょちょっと待てーーーっ!!お、俺は独眼鉄!!      き、貴様ごときに負けてたまるかーーーっ!!!      ヒ、ヒイ!!し、死にたくねえーーーーーっ!!!!」 悠介  「やかましい!!お前叫びすぎ!ちったぁ黙れ!!」 独眼鉄2「ぐぎゃああーーーーっ!!!」 ああもう!中途半端にタフな所為でちっとも倒れねぇ!! やっぱり肉弾戦に持ち込むしかないか!! 悠介 「おあぁああああっ!!!」 裁きを流すのをやめ、一気に間合いを詰めて攻撃! 悠介 「渾身!!超絶破壊拳!!」 助走をつけ、拳を硬く握り、自分でも感心してしまうくらいの間接の加速を込めて。 俺は独眼鉄の腹を思い切り殴った! ───が。 独眼鉄2「フッフフ、その程度の力ではこのわしの鋼の筋肉は貫けはせん!」 悠介  「んなっ……」 こりゃショック……! あんな手応え、滅多にあるもんじゃないのに……! 独眼鉄2「ヌワッハハ!いいツラになったな!色男もカタなしだ!」 悠介  「こ、このやろ……!」 唖然とした顔を見られたのか、独眼鉄が得意そうな顔で笑う。 てゆうかほんとムカツク!! 絶対負かしてやるこいつ!! 独眼鉄2「んーーーっ!?なんだその目付きは!!      まだ自分が置かれた立場が解ってねぇようだな!!」 悠介  「お前を負かす!それが俺の立場だ!覚悟しろてめぇ!」 独眼鉄2「無理するな!怖い怖いと泣き叫んで命乞いをしてみせんかーっ!!」 悠介  「独眼鉄相手に誰が命乞いなんぞするか!!」 独眼鉄2「なにを寝言言ってやがる!頭かち割られて死ねいーーーっ!!」 独眼鉄2が妙な体勢で襲い掛かってくる。 その手にはいつの間にか握られた大きな鉄製の爪……鷹爪殺(ようかさつ)が。 悠介 「……寝言言ってるのはお前の方だろうが……。そして───」 その攻撃を軽く避ける。 風に揺らされた枝がしなるように。 そしてしなった枝が元に戻るように繊細に───反撃を。 悠介 「───寝言は寝て言え!!」 近距離での神屠る閃光の矢!! 耐えられるもんなら耐えてみやがれ!! 悠介  「ブチ抜けぇええーーーーっ!!」 独眼鉄2「ちょちょっと待てーーーっ!      お、俺は独眼鉄!き、貴様ごときに負けてたまるかーーーっ!!」 お決まりの台詞を吐く独眼鉄だが、一切の加減無し。 くたばれ独眼鉄!! 独眼鉄2「ヒ、ヒイ!た、助けて……!!」 バジュンッ!! やがて神屠る閃光の矢が、俺の手から放たれる!! 独眼鉄2「ヒ、ヒイ!し、死にたくねえーーーーっ!!!      ぐぎゃあーーーーーーっ!!!!!」 バガァッ!!ゴォッガァアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!! 凄まじく眩い光の中───独眼鉄2が光に飲まれて吹き飛んでいった。 ───……。 ……さて。 あれからしばらく進んでみると、開けた場所に辿り着いた。 独眼鉄2「フフフッ、ド、ドジこいちまったぜ……」 しかもまだ居る独眼鉄。というか生きてた。 信じられないくらいのタフさだ。 いや……タフさで片付けられる耐久力なのか? ここまでくると感心の域だよまったく……。 ルヒド「さて、そろそろ最後のようだね」 悠介 「……お前も少しは戦えよな……」 今まで後ろの方で遊んでたシェイドが穏やかに笑う。 まったく勘弁してほしい。 ……ま、もういい加減独眼鉄は出てこないだろう。 なんて思ってる時だった。 独眼鉄「男とはなんぞや!!」 悠介 「……出てきたぁ……」 もういやだよ俺……。 ルヒド「しつこいなぁ。仕方ない───“死すらも覆う深緋の鎌(デスクリムゾン)”」 独眼鉄「答えよ!男とは!」 ルヒド「ごめん、邪魔だから消えてくれ」 ザコォンッ!! 独眼鉄「ぐぎゃああーーーっ!!!」 深い緋色の鎌が独眼鉄を切った。 すると───その場の空間が断裂し、独眼鉄が瞬時に絶命した。 ルヒド「まったく……鬱陶しいね」 悠介 「な、ああ……!」 強ぇ……!圧倒的な強さだ……! 本当に強い……!強いけど……─── 悠介 「……おい」 ルヒド「え?なにかな」 悠介 「そんな鎌があるなら最初っから使えよ!!」 ルヒド「え……あ、そうだね、あははははは」 悠介 「笑い事かぁっ!!」 くっそ……考えてみれば独眼鉄ごとき、ブラックホールで飲み込めばよかったんだ。 あー……100回分馬鹿やった。 パパァアアア…… 悠介 「───ん?」 ルヒド「この光は……うん、どうやら課題が終わったようだね。     ようするにある一定の数の独眼鉄を屠ればよかったってことか」 悠介 「あー……おもいっきりくだらなさ感じてるぞ俺は……」 ルヒド「僕もだよ。出られたら眠るかなぁ」 悠介 「俺はあの骨を殴るぞ」 ルヒド「やめておいた方がいいよ。     確かにキミにだけは彼を殴る権利はあるけどね、それはとても悲しいことだ。     出来ればそっとしておいてあげてくれないかな」 悠介 「……あいつが何者かを教えてくれ。それで手を打つ」 ルヒド「そんなことすれば、それこそキミは悲しむことになるよ。     悪いことは言わない。     彼の正体については、骨死神だと認識するだけにしておいた方がいい」 悠介 「………」 ……訳わからん。 わからんけど、シェイドが俺のために言ってるってことくらい解った。 だから─── 悠介 「……解ったよ。これ以上はもう追求しない」 ルヒド「うん、賢明だよ」 俺はあの骨の正体について追求するのをやめた ───……。 南無 『ほねほねほね……ちったぁ反省したほね?』 ボゴシャア!! 南無 『ほねぇえーーーっ!!』 諦めたが、殴るという決定は曲がらなかった。 だってムカツクし。 南無 『いきなりグーほね!?てめぇ何様ほね!!』 悠介 「そう訊かれたならばこう答えるのが掟───『俺様』だ!!」 南無 『ほねっ!?な、なんという傍若無人な男よ……ほね!!』 悠介 「あのな、骨。俺はお前に干渉しないことにした。     お前が干渉しない限り、俺はお前に干渉しない。だからお前も」 南無 『【お前も俺に干渉するな】ほねか?     ほねほねほね、なにを言いだすのかと思えば。     言っただろう、俺は誰の味方でもないほね。俺が何をしようが俺の勝手ほねよ』 悠介 「……やっぱ俺、お前嫌いだわ」 南無 『俺も今の貴様は嫌いほね。他人のために死を選ぶ愚考、改めて然るべきほね』 悠介 「そんなことは俺より彰利に言えよ。     俺なんかよりよっぽど他人のために死んでる」 南無 『もちろん弦月彰利は救いようのない愚者ほねよ?     いまさらなにを言うほねか、そんなことは解りきったことの筈ほね』 悠介 「───……」 南無 『ほねほねほね!この骨にガン飛ばすとはいい度胸ほね!     だが生憎とこの骨も忙しい身。     いつまでも貴様の相手を出来るほど暇ではないほね』 ……ほんとムカツくヤツだ。 だってのに強いのがさらにムカツく。 南無 『いいほねか?今日のラーメンのことは忘れてやるほね。     本来ならば地獄の果てまででも追い掛け回して殺してるところほねが、     貴様は特別ほね。……賢明な判断を祈るほね。自殺まがいな行為はするなほねよ』 悠介 「どうして俺がお前の言うことをいちいち聞かなきゃなんないんだ」 南無 『……これは忠告ほね。自分の身を削るようなことをするなほね』 悠介 「だから、どうして俺が……」 南無 『……頑固ほねね。そうまでして自分の首絞めたいほね?』 悠介 「なにも自殺したいだなんて言ってるわけじゃない。     命も賭けられないで『親友』は名乗れないって言ってるんだよ」 南無 『───……馬鹿ほね、アンタ』 悠介 「なに───?」 それだけ言うと、骨はどこか物悲しそうに姿を消した。 悠介 「………」 俺は……あの骨になにを言いたかったんだろうか。 確かにあの骨は俺のために忠告をしてくれているんだろう。 あいつが何者であれ、それは確かだ。 けど─── 悠介 「彰利は……俺の掛け替えの無い親友なんだ。     子供の頃……意地張ってばっかりだった俺を理解し、     ただひとり付き合ってくれた馬鹿野郎だ。     自分の未来を俺に託してくれた馬鹿野郎なんだ……。     だから……あいつがそうしてくれた分、もしそんな瞬間が来たなら───     俺だってあいつに未来を託すくらいのことをしないと釣り合わないだろうが……」 あいつのためなら死んだって構わない。 そんなこと、こいつの過去を見た時から決心していたことだ。 ───命も賭けられないで『親友』は謳えない。 俺の中での『親友』ってのは、まさにそういう意味のものだった。 『気兼ね』なんて言葉は知らない。 『遠慮』なんて言葉も知らない。 互いが互いを信じることが出来て、互いのために無茶が出来る。 俺にとっての親友とはそんなものだ。 普通の人になんか出来やしない。 彰利だったからこそ出来たこと。 そして俺は───あいつが俺にしてくれたことに釣り合うだけのことが出来ていない。 ……俺はもう十分に生きた。 だから俺なんかの命の先にあいつの未来が開けるのだとしたなら、 その時こそ俺は───あいつに恩返しが出来るような気がする。 悠介 「……負けられないよな」 こうなれば骨の正体なんてどうでもいい。 俺は俺のやりたいように、あいつの未来を守ってやるだけだ。 俺なんかの力でそれが可能なら、なんだってやってやる。 それが俺の中の『親友』ってものだから。 ───……その日から、黄昏の創造に慣れようとする自分の姿があった。 骨の助言を受け入れるのは癪だったが、今の俺にはこんなことしか出来ないから。 声  『少し休憩しろ。頭がイカレるぞ』 悠介 「あ、ああっ……」 しかし黄昏の維持は中々に辛いもので、だが確かに維持できる時間が伸びてきている。 『槍』の創造も中々にサマになってきたし、槍を創造できる回数も増えた。 骨が言ったことがズバリ的中してるようで、そこがまた悔しかったが…… 悠介 「はあっ……」 黄昏が消えて、その場が元の部屋に戻る。 場所は空界───リヴァイアの工房にある個室。 リヴァイアに提供されたその場所は集中に適していて、 実に創造に没頭しやすい場所だった。 おまけに言えば、微量ずつだけど体力を回復してくれるらしく、 またすぐに創造の鍛錬が出来る。 出来るんだが……正直キツイ。 悠介 「あ、いでででで……!!」 黄昏を創造するたびに頭痛に襲われるのはなんとかならんだろうか。 これに邪魔されて、集中を途切れさせられる時があるのだ。 休んでれば治るが、創造をすればまた痛むのは事実。 原因は……リヴァイアが言うにはこうらしい。 『黄昏の創造は、お前の意識がルドラの意識とリンクすることで成功する。  お前は気づいてないだろうが、その時ルドラの意識が覚醒している。  そのためにお前の脳内は、  お前の思考とルドラの思考をいっぺんに担わなきゃいけなくなるんだ。  そうなればパンクを起こしそうになるのも無理はないだろう?』 ……とのこと。 ようするにこの頭痛は思考過多……つまりイメージの重複によるものなのだ。 一方が引っ込めばいいんだろうけど、俺は自分の意思で戦いたいし、 かといってルドラに引っ込んでもらったら黄昏の創造が出来ない。 ……は〜あ、悪循環……? いやそれ違うって……。 悠介 「あー……頭痛薬で治らないのは実験済みだし……」 この痛みが治まらない限り、再実行は見送りなわけだ。 どうしたもんか。 悠介 「リヴァイア〜、彰利の様子、どうだ〜?」 なんとはなしに言ってみる。 すると『特に変わった様子はない』という返事。 ちぃ、面白味に欠けるな。 ……やっぱ、どうしたもんかって思考に行き着く。 悠介 「創造の理力、かぁ……」 なんでも創造出来るが、その分体力を消耗する不思議な力。 必要性を第一とし、その存在力の高いものほど基準となる体力の消耗が激しい。 世界の理に背く能力。 子供の頃、この能力を嫌い続けたけど……今はこんなにも必要だと思えるのが不思議だ。 悠介 「……ハトが出ます」 ポムッ……パサササ……。 久しぶりに『輪』から創造したハトが、寝転がった俺の額に留まる。 悠介 「……忘れてたな」 そうだった。 最初は輪を作らないと創造出来なくて─── 一番最初の創造が、麦藁帽子を使ったハトの創造だった。 嫌った能力なのに、この能力が無ければ家族と馴染むことも出来なくて─── ……ほんと、変わった能力だよ。 悠介 「───……よし治った!!」 頭痛が引くのを感じた俺は、寝かせていた体をバッと起こして黄昏の創造にかかる。 あれから解ったことだが、黄昏の創造は『必要性』よりむしろ強い感情─── つまり、誰かを助けたいって強く思うこととか、あいつを屠ってやりたいとか…… そういう強い思いが成功させる力らしい。 言わせてもらえば特に標的も無しにそういう強い感情を抱くのは難しく。 さっきから最初の創造ばかりに梃子摺っている。 情けないことに、いざという時に瞬時に創造出来る自信がないのだ。 悠介 「なぁリヴァイア、ルドラとのリンクを容易にする道具とかってないか?」 声  『そんな都合のいいものがあるわけないだろ、ばか』 怒られてしまった……。 あってもいいと思うんだけどなぁ。 移植装置まであったくらいなんだし。 声  『楽をしようと逸れるのは勝手だけど、すぐに何かに頼るのは感心しない。     そもそも悠介、お前はどこかでルドラを拒絶している』 悠介 「へ?そうなのか?」 声  『ああ。ルドラに意識を奪われるんじゃないか、とかな。まあ無理もない話か。     相手は死神だ。注意しておいて、しすぎるということはない』 悠介 「……あまり実感ないけど」 そっか……リヴァイアが言うんなら間違いないんだろうな。 精神関連に詳しいリヴァイアが言うんだ、その通りだと思うし、 自分自身でもそういう感情は感じられる気がする。 悠介 「いやいや、今はそれよりも集中だ集中」 深く……より深くイメージしろ。 強く、強く、強く……─── 悠介 「───ッ!」 頭の中で見つけたとっかかりを掴み取る。 それを増幅するようなイメージをそれにぶつけ、さらにイメージ。 頭の中を緋く染めるが如く、強く念じてゆく。 染まれ、染まれと。 やがてそのイメージは何かに受け取られたかのように自然に増幅され、 言葉として頭の中を駆け巡る。 ───染まれ染まれ染まれ染まれ 頭の中が綺麗に掃除されてゆくかのように真っ白になり、やがて黄昏に染まってゆく。 ───赤く紅く朱く緋く より赤く、さらに紅く、なおも朱く、類無く緋く。 その景色が真紅に染まり、自分の見ている景色が赤く染まるのを感じる。 ようするに───これは魔人化の一歩手前のようなものなんだろう。 目が真紅から深紅に染まり、内なる死神の力を引き出す─── それはいつだったか彰利がやったってゆう無茶と同じものなのでは……? 悠介 「あ───」 そうか。 そういうことか。 だったら───イメージは簡単だ。 悠介 「月蝕力───」 仮説が正しければこれで上手くいく。 黄昏の創造……ラグナロクが死神としてのルドラの力を引き出すものなら、 その家系の魔人要素を引き出してやればいい。 そしてそれは、濃い能力の酷使により引き出されるもの。 だからこそ彰利は呑まれ、体の傷に負けた。 悠介 「つ……」 月蝕の集中行使。 体の中から力が放出され、頭痛が増してくる。 当然だ。 目的もないのに力を使えば、無駄な付加がかかるだけ。 だがやめない。 だって───頭を襲う鈍痛は、 確かに黄昏の創造を実行したときのものと同じ性質だと思えるから。 悠介 「……きた……」 景色が見えた。 俺はその景色を引っ掴むようにしてイメージを増大させてゆく。 どうやらビンゴだ。 月蝕力の無駄遣いの果てでも、黄昏のイメージを掴むことが出来る。 ただし───一度でも黄昏の解除をすれば、たちまち立っていられなくなるだろう。 体力の消耗にプラスして、月操力の酷使によるダメージ。 それを考えれば、この方法はオススメ出来ない。 やっぱり普通に創造出来るようにならなきゃな。 しかしここまでイメージしたからには、せっかくだから繋いでしまおう。 悠介 「“創造の理力”(フォースオブクリエイション)」 景色が染まる。 赤く紅く朱く緋く。 悠介 「……イメージの接続完了、っと……」 その世界は、何度見ても綺麗だった。 夕日に染まる草原と木。 風が吹く筈もないのに揺れる草花や、木の葉。 その全てが、何度見ても綺麗だった。 悠介 「よし……。黄昏の維持と、『槍』の創造を開始する」 頭に流れてきた槍のイメージは、今のところロンギヌスとブリューナク。 このまま慣れていけば、或いはもっと増えるかもしれない。 一番最初にやったような気がするゲイボルグは、あれ以来イメージが流れてこない。 流れてきたとしても一発で疲労困憊……あれはもっと慣れなきゃ無理だ。 悠介 「……はぁ。いつからこんな、     ドラゴンボールみたいなことする男になったんだ俺は」 ふと思い出した学生時代(家系の物事に首を突っ込む前)が、 ただただ懐かしい俺であった。 中井出、今なにやってんのかなぁ。 Next Menu back