───慢心への処罰───
───……。 レオ 「ははははは!さっきまでの勢いはどうした!」 悠介 「くはっ……!」 レオの攻撃は続く。 確実に見下しながらの攻撃には本気の力は上乗せされていない。 こいつ……遊んでやがる……! 悠介 「イメージ───月醒力!!ガトリングブラスト!!」 ヒィン───ガガガガガガガッ!!! レオ 「……児戯」 ドドンッ!!ドガガガッ!! 悠介 「よし!全発命中!───あ」 全発命中───したが…… レオ 「……それが限界か?くすぐったいだけだぞ」 全然効いちゃいねぇ……。 悠介 「……イヤなやつだな、お前」 レオ 「もっと俺を楽しませてくれ。どこまでが全力なのかを知りたいのだ」 悠介 「だったら彰利の体から出てひとりでやってろ!」 レオ 「なにを言う?この体だからこそ、ここまでの力が出せるのだぞ。     こいつの体は底無しだ。我が宿主ながら、よくも極めたものだ」 悠介 「チッ……!自分の力じゃないものを使って嬉しいかよ……!」 レオ 「何を馬鹿な。月の家系の者が月操力を使えるのは、内に眠る死神が居てこそだ。     故に弦月彰利が使っていた能力の半分は俺の力だ。     神の力は開祖のものだが、死神の力は俺のものだ。その力を使ってなにが悪い」 悠介 「ふざけろ!その力は彰利が自分の未来のために高めていったものだ!     あいつ以外の誰にも、それを使う権利なんてねぇんだよ!!」 レオ 「……ふん。俺は宿主の中から生まれた、もうひとつの人格に近い状態でな。     その俺が宿主ではない確証がどこにある?     精神内のあのガキは俺のことを『魔人』と呼んでいたがな、     俺からしてみれば、あいつの存在こそ怪しいものだ」 悠介 「……どういうことだ」 レオ 「あいつこそ作られた存在なのではないかと言っているのだ。     だが───まあ答える必要は無い。お前はここで間違い無く消える」 悠介 「───そうかよ」 後ろに飛び、レオを睨む。 こいつ……絶対に許さねぇ。 レオ 「抗うな。敗北は当然なんだ、お前が俺に敵う道理なんて存在しない」 悠介 「人が先を描くのに道理なんて必要じゃないんだよ!お前こそ抗うんじゃねぇ!」 レオ 「抗う?何を勘違いしている。俺は遊んでやっているだけだ。     少し力を込めれば、お前など微塵に出来るぞ」 悠介 「……じゃあどうしてさっさとやらない」 レオ 「遊んでやっている、と言っただろう。     いつでも殺せるならいつ殺すのも俺の勝手だ」 ……ムカツク野郎だ。 こんなヤツに彰利が意識を奪われてるなんて……くそっ! レオ 「お前をジワジワと痛めつけるとな、俺の中の宿主が暴れるんだ。     約束がどうとかとな。だがそんなことは俺には関係ない。     鬱陶しいものは破壊して黙らせればいい」 悠介 「約束……」 俺はしていない、どこかで開けた未来の約束。 それはきっと、あの丘の、あの木の下での俺達の喧嘩。 悠介 「……ああ、そうだな……」 レオ 「なに?」 悠介 「俺とお前は……こんなところで喧嘩するべきじゃない……」 レオ 「何を言っている?気でもフレたか?」 ……まさか。 むしろハッキリしすぎたくらいだ。 悠介 「死神……」 レオ 「なんだ。遺言でも残すか?」 悠介 「……お前、死ぬぜ」 レオ 「───なに?」 悠介 「死ぬって言ったんだよ……。お前は絶対に、消える」 レオ 「……やはりさっさと死ね。俺は冗談が嫌いだ」 レオが腕を振り上げる。 それがどんな鈍器よりも、 どんな刃物よりも凶器としての機能を持っていることなんて知っている。 でも、だからこそ覚悟が決まった。 レオ 「───?観念したか!」 避けようともしない俺を見て、レオは叫んだ。 どこかつまらなそうなその言葉を聞き流し、ただその攻撃を甘んじて受けた。 ビチャッ、という肉の削げる音。 見れば俺の体は爪に裂かれ、血が溢れてきた。 レオ 「……貴様、本当にそのまま死ぬ気か?そこまで愚かな男か貴様は」 悠介 「言っただろ……『お前は死ぬ』って……。     俺はな、最後のチャンスをくれてやったんだ」 レオ 「なに……?」 悠介 「殺さなかったこと、後悔するぞ」 レオ 「馬鹿な。お前の命など、俺の手のうちにあるも同じ。何を強がる」 悠介 「───ハッ。     強がりかどうか、その目に脳裏にしっかりと焼きつけるんだな……」 ───ドクン。 悠介 「……お前が死ぬか、俺が枯渇するか……。この勝負はそんな単純なものだ」 ───ドクン。 レオ 「枯渇……?なにを」 ───ドクン。 悠介 「増幅しろ、俺のイメージ……」 ──────ドクンッッ……! レオ 「懲りずに創造の理力か。別の方法で来るかと思えば……くだらない」 ……レオは俺を見て笑った。 その時点でこいつは、二度目の機会を失った。 この時に……俺を殺さなかったことを……後悔……しや、がれ……! 悠介 「づっ……!」 眩暈なんて気にするな……! この創造が出来ないなら、どの道俺は死ぬんだ……! だったら……彰利の『約束』を果たしてやる……!! 染まれ、染まれ、染まれ、染まれ……! 赤く、紅く、朱く、緋く……!! 悠介 「弾けろ、イメージ……!“創造の理力(フォース オブ クリエイション)”!!」 バズッ!!ジ、ギジジ……!! レオ 「な……?空間が歪む……だと?」 レオの戸惑いは当然だ。 俺達が立っている神社の境内の景色が、 まるで世界が溶けてゆくように歪んでゆくのだから。 レオ 「貴様……なにを!」 なにかを感じ取ったのか、レオが俺に向かって疾走した。 だが、もう遅い。 レオ 「なにをしようと無駄だ!     貴様の創造の理力など体力の消費という枷がある限り、所詮は児戯だ!     それを理解せずに無駄な足掻きを見せるつもりならば、     その足掻きが無意味だと確信できるよう一瞬で貴様の命を絶ってくれる!!」 ───レオが何か叫んでいる。 でもどうでもいい。 イメージが纏まれば、どうでもいい。 レオ 「───!」 また叫んだ。 どうでもいい。 俺はただ、『あいつ』の言う約束を果たしてやるだけだ─── 悠介 「───出でよ。『俺達の約束の丘』───!」 レオ 「なっ───!?」 世界が溶けた。 春になろうとしていた景色は弾け、 一面がまるで黄昏に染まったかのような夕焼けの世界へと変異する。 レオ 「馬鹿な!空間を創造するだと!?そんなことをすれば貴様は……!」 その世界は懐かしい世界だった。 ふと見てみれば、俺と彰利が出会ったあの木が。 悠介 「……はっ。今更なに言ってやがる……。     お前はどうか知らねぇけど……これは命をかけた喧嘩だ……。     一方が命をかけてんだ……てめぇも命かけるのがスジだろうが……!」 レオ 「ッ……貴様……!」 視界は赤く染まっていた。 無茶な創造の代償か、その景色は治ることがなかった。 レオ 「……ふっ」 悠介 「……?」 レオ 「はっ……ふはははははは!!」 レオは笑う。 その意味なんて興味はないが、耳障りなことは確かな事実だった。 レオ 「それで?こんな空間を作ってどうするつもりなのだ?晦悠介よ。     まさかピクニックでもしようとか言う気じゃあるまいなぁ!」 悠介 「……お前を、殺す。それだけだ」 レオ 「……フン。その満足に動けない体でか?」 ……確かに俺の体は、この約束の丘を創造したことで動かなくなっていた。 だがこいつはなにか勘違いをしている。 俺は動く必要なんてない(・・・・・・・・・)のだから。 レオ 「もういい、死ね」 ただ、自身が思うようにイメージすればいい。 ここは、そういう『世界』なのだから。 ゾボォッ!! レオ 「───」 悠介 「───……」 血が流れた。 体を裂いた爪を見て、俺は息を吐く。 レオ 「な……に……?」 流れる血は死神のもの。 爪は空中から『創造』され、レオの肩を裂いた。 レオ 「ばかな……ばかなばかなばかな!この俺が……!?」 悠介 「お前に言っておくことがある。     死神としてじゃなく、彰利の体に居座り続けたのがお前の敗因だ。     人の体ってのはな、頑丈になんか出来ちゃいないんだよ……」 レオ 「なんだこれは……!どこから俺を……!」 悠介 「ぼやいてる暇なんて無いんじゃないか?どんどんいくぞ」 レオ 「───!」 イメージを弾けさせる。 俺の知る限りの強烈な『攻撃』のイメージを叩き込む。 ソレはレオの体を裂き、血を散らせ、彼から『勝利の確信』を削いでいった。 レオ 「こんな馬鹿な!貴様のどこにこれだけのものを創造する力が残っていると!」 だから、間違えてるっていうんだ。 この世界では、俺は体力なんて枷を気にする必要なんてない。 ここは『創造の世界』だ。 俺が創った、俺の中のイメージの世界。 だから体力なんて消費する必要もなければ、動く必要も無い。 俺はただイメージしていればいい。 そうなるように『創った』のだから。 レオ 「おのれ……!ならば貴様さえ殺せば!」 悠介 「───紡ぐは鎖。縛るは剣。彼の者を磔るは無数の刃───!弾けろ!」 ギィンッ! レオ 「なっ───!」 ゾブッ!ザガガガガガッ!! レオ 「ギィイッ!!?」 鎖のように連なった無数の剣が、レオに突き刺さる。 だが、それだけではレオは止まらなかった。 悠介 「導くは闇。伏せるは光。彼の者を刻むは未来を阻む敵───!」 ヒュッ───ザキィッ!! レオ 「ギィッ!?キ、キサマァアッ!!」 ゼノ 「ォオオオッ!!!」 空間からゼノが創造される。 だが一撃を止めた瞬間、返す破壊の腕で消される。 チッ……イメージが弱かった。 本物のゼノはあんなもんじゃないってのに……。 レオ 「ガアアッ!!」 悠介 「導くは光。屠るは神のみ。至高なる光に飲まれ、その生涯を悔やめ───!」 だが、足止めはその一瞬で十分。 俺は次のイメージを弾かせ終えていた。 次いで響く轟音。 レオ 「なにっ!?」 ギガァアアアアアォオオオオン!!!!!! レオ 「ぐああああああっ!!!!」 レオは逆上していたためか、横からくる光に気づかなかった。 結果、大きく吹き飛び、だが倒れることなく大地に足をついた。 悠介 「……サンキュ、姉さん」 春菜 「───」 創造した姉さんが消える。 俺は次の創造に備え、ゆっくりと構えた。 レオ 「おのれ……おのれおのれおのれ……!俺は強者なのだぞ……!     それが……ニンゲンごときに……!」 悠介 「……だから……ふざけろって言ってるんだ……。     お前が相手してるのは『晦悠介』ってゆうひとりの人間じゃない……。     俺が経験してきたその全て……俺の生涯そのものだ!」 レオ 「ッ───ほざけぇっ!!アルファレイドカタストロファーッ!!」 悠介 「チッ!」 飛び道具か! 大方そう来るんじゃないかって思ってたよ! 悠介 「我紡ぐは無二の友。     その光はなによりも輝き、他者の追随を否定する破壊の光!頼むぜ彰利!!」 彰利 「アルファレイドカタストロファーーーッ!!!!!」 レオ 「なにっ!?」 ガカッ───バガァアアアアアアアォオオオオオオン!!!!! レオ 「相殺!?───なっ……馬鹿な!俺の力が負け───!?」 創造した彰利が放つ光は、レオの光を消し去った。 だが、その勢いはレオの髪を撫でた。 つまり…… レオ 「俺が……!俺が宿主に劣るとでもいうのか……!」 ───そうさ……理解しろ。 俺の中の彰利は、あんなヤツになんか負けやしない……! レオ 「〜〜〜っ……!屈辱だ……!もういい!ならば望み通りに全力を見せてやる!」 悠介 「導くは雷光。汝は家系の敵であり、災いなり───!」 ビギッ───ドバシャアアアアアン!!!! レオ 「ぐぅうっ……!!?」 逝屠 「消えろよ……人形」 レオ 「チッ……!貴様が消えろ、幻影───!」 ズバァッ!! 逝屠 「ヒッ……ヒハハハハハ!!!」 切られた逝屠は消え、彰利もすぐに消えた。 だが創造はやまない。 悠介 「解っただろ……!     お前の生涯なんて、人ひとりの生涯でどうとでも出来るんだ……!」 レオ 「黙れ……!出でよ我が鎌、運命破壊せし漆黒の鎌(デスティニーブレイカー)!!」 キヒィンッ! 悠介 「───鎌か!───なっ!?」 っ……いつの間に背後に……! 月空力は死神ではなく、神側の力の筈……───しまった! 彰利がリヴァイアに貰った『転移の式』は空界の力───! そこに月操力なんてものは関係ない───! レオ 「死ね!貴様が創造で身を守るのならば、     その目で確認出来ぬ速さで貴様を殺せばいいだけだ!」 悠介 「───!我紡ぐは───」 レオ 「遅い!」 ───バシャアッ!! 悠介 「がっ───!ぎ、あ……!」 背中が裂けた。 それだけは、痛みが現れる前に理解した。 手を回せば、自分の背骨に触れることが出来る。 してみたわけでもないのに、それが確信できた。 悠介 「あ、……あ……!」 レオ 「……フン、梃子摺らせてくれたな。だがそれもここまでのようだ」 背中が熱い。 熱くて痛くて、吐き気さえもしてくる。 でも神経が『痛みを消したい』と動くためか、 吐くことになんて意識を分けていられなかった。 悠介 「ぎ、ぐ……う……」 少しでも動こうとすると、自分の中から『生きるためのなにか』が消えてゆくのが解る。 レオ 「やめておけ、鎌は心臓に達したのだぞ?動けば死が早まるだけだ。     お前には苦しんで死んでもらいたいのだからな」 悠介 「………」 血が逆流する。 喉から溢れる血が呼吸をすることを邪魔し、 余計に心臓の鼓動を促し、だが心臓は機能しない。 意識は朦朧として、自然に『ああ、これで終わりかな』と思考が決断を下そうとする。 確かに心臓を貫かれた時点で、体が生きられる筈も無い。 だけど……彰利は違った。 精神の世界でゼノと戦ったあいつは、心臓を鷲掴みされようとも……日常に執着した。 ───泣き言は許されない。 俺の命がここまでだっていうなら、今度は俺が…… レオ 「……動くな。死ぬぞ」 今度は俺が……。 レオ 「……つくづく馬鹿な男だ。満足に動かぬその体で何をしようというのだ」 今度は俺が……! レオ 「ハッ。そんな体で何が出来る。やめておけ、死に急ぐこともあるまい。     俺はお前の苦しむ顔をもっと見ていたいのだ」 悠介 「……、俺……が……!」 レオ 「うん?」 悠介 「今度は俺が───!お前に……未来を───!!」 死力を振り絞る。 血が吹き出し、意識が飛びかけたって知らない。 嘔吐したものの全てが血であったことだって、もう関係ない。 背中から裂かれた肋骨が剥き出しになったって───関係ない……!! レオ 「おいおい、俺にもたれかかってどうする気だ。     まさかそれで攻撃しているつもりか?」 悠介 「俺とレオを繋ぐ戒めの鎖よ……!」 レオ 「なに……?」 ジャッ───ギシィッ!! 悠介 「ぶっ……ぐ……!」 幾多もの光の鎖が俺とレオを縛り付ける。 そのために骨が軋み、血が溢れる。 レオ 「鎖……?こんなものを縛り付けてどうする気だ。     まさか宿主と同じように自爆でもする気か。     やめておけ、無駄死にだ。そんなものが俺に通用しないことくらい解るだろう」 悠介 「───、ア……」 意識は何度も途切れた。 だが消えてはいない。 だったら……俺の体は、意識が消えるのはやることをやった後だと確信しているのだ。 だから泣き言は許されない。 失敗なんて許さない。 悠介 「……言った……よな……。これ、は……命懸けの……戦いだって……」 レオ 「なに……?」 悠介 「チンケな命だが……お前にくれてやる───!」 鎖の光が爆発的に増す。 これが最後だと言うように、俺の思考はイメージを膨らませ、その創造を形作ってゆく。 レオ 「なにをする気だ。なにをしようが貴様の死は免れないぞ」 ───ああそうさ、俺は死ぬ。 だがな……死んじまうからこそ出来る覚悟ってのがあるんだよ!! 悠介 「我が肉体、魂、意識、記憶、経験の全てよ!     彰利の中の死神を滅ぼす光となれ!!───“創造の理力(フォース オブ クリエイション)”!!」 レオ 「なっ───!!馬鹿な!他人のために自分を消すだと!?     馬鹿な!馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な!!人は私利私欲の生き物だ!!     心の壊れた宿主以外にソンナことをする人間が居るわけが───!!!」 ───光になる。 体が崩れ、落ちた先から光の粒子に。 目の前には怯える死神。 『馬鹿な』が口癖だとと思うソイツは、鎖を引き千切ろうとするが─── レオ 「馬鹿な!切れぬだと───!?何故!何故だ!!」 馬鹿だな……『純粋な光』ってのはな、何者にも斬れやしないんだよ……。 ここは俺と彰利のみの暴力が許された世界だ。 そんな『思い出』ってゆうひとつの光の中では、 お前みたいな闇は存在を否定されてゆくだけだ……。 レオ 「やめろ!入ってくるな!!これは俺の体だ!ヤメロ!!」 『俺』がレオの体に溶けてゆく。 光の粒子はレオに付着し、初めから存在しなかったかのように……溶けるように消える。 レオ 「ガアアアアア!!!破壊サレル……!バカナ……!バカナ!!」 こいつは言った。 彰利の体だからこそ、そこまでの力が出せると。 それが真実なら『魔人』としてのレオではなくて、内側の─── 『死神』としてのレオ=フォルセティーを破壊してやればいい。 ……ジジッ……。 …………もう、意識が保ってられないな……。 意識が光になってゆく……。 記憶や『俺』を象っていた全てのものが───…… ジジッ……ジッ……─── でも……どうしてかな。 死を怖がってるくせに……ははっ、俺……笑ってやがる……。 …………。 目覚めは普通だった。 ただ、今まで感じていた体の軋みが無く、『傷』が無いってことを感じた。 それは……俺を助けてくれた馬鹿野郎のお蔭なんだって……確信した。 レオ 「ア゙……ギ……!!」 目の前には体を破壊されたレオ=フォルセティー。 俺の中の『死神』であったモノ。 彰利 「……消滅より生存を選んだか。生き汚いヤツだな」 レオ 「ダマレ……!!ニンゲンナドニ殺サレテナルモノカ……!!」 死を目の前にしたレオは、俺の体から逃げ出した。 つまり、目の前に居るのは魔人の要素などではなく、純粋な死神なのだ。 レオ 「オノレ……!ニンゲンナドガオレヲ……!!」 彰利 「……馬鹿が」 レオ 「ナニ……!?」 彰利 「馬鹿って言ったんだよ。お前は自分の力を信じるべきだったんだ。     解らないのか?お前の言う通り、悠介は『人間など』だったんだよ。     あいつが命を賭けたところで、     お前の体をしばらく蝕む程度にしかならなかった筈だ」 レオ 「ナンダト……?」 彰利 「お前は負けてんだよ。既に、晦悠介って男の『覚悟』にな」 レオ 「……グ……!」 彰利 「覚悟が足りない野郎がしゃしゃり出て、     他人の強さにすがって自分が強いって錯覚起こして。     それで見下してた人間に負けるってか?     ……ハッ、人を馬鹿にするのも大概しやがれ」 レオ 「ギ……ギギギ……!!」 苛立つ。 ひどく苛立っている。 こんな感情は久しぶりだ。 ……そう、感情が完全に蘇っている。 それはつまり───悠介が俺の『心』を解き放ってくれたってことだ。 レオが居なくなった今、俺の心が腐ってる理由もない。 そしてなにより、自分の中に親友を感じている。 レオ 「……ク、クハハハハ……!ソレデドウスルツモリダ……!!     貴様ノ体かラ出タ際、力の源デあル月操力は取り込んダのだぞ……!!     モハヤ貴様はただの人間デしかナイ……!!」 彰利 「………」 景色を見渡した。 そこには黄昏の世界の丘と、約束の木。 眩しいくらいの夕焼けの景色の中で、俺はただ、小さく笑った。 レオ 「……何がオカシイ」 彰利 「月操力を取り込んだ?ただの人間でしかない?───それがどうした。     俺が何かが可笑しくて笑うとしたら、お前の頭のめでたさくらいだ」 レオ 「ナンダト……!?」 彰利 「決着つけようぜ、死神。     あいつが託してくれた俺の未来───潰せるもんなら潰してみろ!!」 レオ 「ギッ───!!ガァアアアアアア!!!!」 死神が翔ぶ。 唸りをあげ、殺意を剥き出しにして。 だが俺は一歩も動かず、その一撃を身に受けた。 レオ 「馬鹿ガ!!なにをスルつもりダ!?     晦悠介のヨウに機会でも窺ってイルのか!?」 彰利 「ハッ……弱いヤツは口数が多いってゆうけど……ホントなんだな」 レオ 「───!」 彰利 「宣言しておく───お前、死ぬぜ」 腕を削り、俺の後方に跳躍したレオに向き直り、言ってやる。 レオ 「死ぬ……?馬鹿ナ!ここで死ぬのは貴様だけだ!!」 削いだ俺の血肉を食って糧としたのか、レオの言葉がハッキリしてくる。 が、それも無駄だ。 レオ 「死ね───!!」 二度目の跳躍。 間違い無く俺の首を狙い、ソイツは腕をバケモノみたいに変異させ、跳んできた。 ───こいつは間違えている。 勝利を確信したようなツラがむかついた。 ヘラヘラとしたその顔を潰してやりたくなる。 ───こいつは、俺がなにも出来ないと言った。    確かに俺の中の攻撃系の月操力はレオに持って行かれた。    なるほど、それはこいつの唱える『道理』ってやつには当てはまるだろう。 巨大な腕が振るわれる。 ───だが、やっぱりこいつは間違えている。    その道理が通用するのは、お前が俺の中に存在していた時までだというのに。    気づかないか?悠介が消えた今でも存在しているこの世界のことに。 俺の首を刎ねようと、鎌のように。 ───誰かが創り出したものは、その創造主が消えればやがて消滅する。    それはどんなものも変わらない。 また、その顔を見た。 ニヤケヅラが気にくわない。 ───だが、例外があるとしたら───? 彰利 「───“創造の理力(フォース オブ クリエイション)”」 レオ 「なっ───!?」 ゴギィンッ!! 目の前に創造された光の壁が音を鳴らした。 レオ 「ギィイッ……!!馬鹿な……!創造の理力だと……!?」 勢いよく振られた腕は光の壁に激突し、様々な個所が無様に裂けていた。 彰利 「知ってるか?創造主が居なくなったものってのはな、     その意思を継ぐヤツさえ居れば、いつまでだって在り続けるんだぜ?」 それが答えだ。 悠介が俺の中に入り、俺と同化したというのなら。 その経験や能力も、それと同じことなんだ。 だから俺は動かない。 動く必要がない。 俺はただ、イメージをするだけでいいのだから─── レオ 「馬鹿な!こんなことが!こんなぁあああああ!!!」 レオは逆上して真っ直ぐに飛んできた。 まるで弾丸のような勢いで。 彰利 「───これからお前が相手にするのは、     俺の300年に近い経験と───悠介が経験してきたその生涯だ。     お前なんかに耐えられるかな?死神───」 イメージが弾ける。 途端、レオを囲むように燃えあがる炎。 レオ 「ぐっ!?な、なんだこれは!!」 彰利 「悠介が子供の頃に味わった一家心中。そのイメージさ」 レオ 「───こざかしい!!」 レオは炎を払おうとしたが、その炎は消えなかった。 レオ 「!?な、なんだこれは!何故消えぬ!!」 彰利 「『レオには消せない』ってゆうイメージ付きだ。そして───」 ズバァッ!! レオ 「あぐっ!?」 何も無い空間から刀が現れ、レオの体を刻む。 彰利 「お前には俺や悠介、     そして俺達が見てきた全ての人の苦しみや痛みを味わってもらうぜ……。     打ち勝てるもんなら打ち勝ってみろ」 レオ 「な、な……!」 ヒィン!!ザコォッ!!バシャッ!! レオ 「ぐあっ!があっ!!」 打撃、斬撃、苦しみや痛みが、レオを襲う。 死神は見る間に衰えていき、だがその連撃は止まない。 彰利 「───まあ、俺は別にお前の苦しむ顔は見たいわけじゃないしな。     トドメにかかるぞ、死神」 レオ 「はぁっ……はぁっ……───!?」 彰利 「お前みたいなヤツが死神だってゆうなら、     これはそれを浄化する神、ってところだ。     いくぜ───アンリミテッドストリーム」 黄昏の世界が金色(こんじき)に染まる。 その色の全ては光であり、黄昏の明かりを受けた光が金色に見えるだけ。 だが、レオにとっての絶望は、その光の数だったに違いない。 落ち、貫き、削ぎ、弾ける光。 その数は、景色が埋め尽くされて尚、出現をやめない。 俺と悠介が見てきたその数だけ、光は死神を貫く。 レオ 「あぎっ───ぎ、───!!」 焼け、削がれ、消される死神の体。 だが光は消えない。 まだまだあるとでも言うように、光は創造される。 まるで、景色が光の壁になったかのように。 レオ 「グ───!アァアアアアアアアアッ!!!」 レオは最後の力を振り絞るかのように、力を放出して光を消した。 ───おかげで、よく見える。 彰利 「閃け、天の光───アルティメットブラスター」 光が散ったことで、よく見えるようになったレオへの巨大な光。 レオは驚愕したが、体に月操力の膜を張り、なんとか耐えてみせた───が。 彰利 「次弾。無名の波動」 ギガァッ───ズガァアアアアアアアアアッ!!!!! レオ 「ギッ!?」 再び襲いかかる光に、レオは膜を張る。 が、それは無駄に終わった。 膜はあっけなく破壊され、レオは光に飲まれた。 レオ 「───……!!」 光は地面にぶつかると消滅し、レオを介抱した。 彰利 「無駄だよ。今のは開祖である椛が俺に撃った波動だ。     お前ごときの盾なんて、なんの役にも立たない」 レオ 「ア……ア……!」 瀕死ながらも生きているレオ。 その姿には、散々偉そうにしていた自信もなにも存在しなかった。 レオ 「ギィイッ!!」 今度こそ、最後の力だったのだろうか。 レオは勢いよく起きあがり、俺に向かって拳を振るった。 今のレオでも俺の頭を破壊するくらいの力はあっただろう。 だが─── レオ 「ア……、ア……?」 最後に頼ったのが『拳』というのがこいつの敗因。 この黄昏の世界では俺と悠介以外の喧嘩は有り得ない。 それはつまり、拳を使った攻撃は俺と悠介以外は出来ないということ。 彰利 「簡単には殺さない……。お前は苦しんで死ね……!     悠介の分も、残されたルナっちの分も……!!お前が背負って死にやがれ!」 バチュンッ!! レオ 「ギッ!?」 レオの腕を吹き飛ばした。 もう……こいつは何も出来やしない。 だがまだだ。 もっと苦しめて……殺してやる! よくも、よくも……!! レオ 「フッ……クックック……!!」 彰利 「……?なにが可笑しい!」 レオ 「つくづく馬鹿なものだな、人間という存在は。     他人のために怒れる?誰かのために命を尽くす?     まったく呆れる。そんなことをしても、待っているのは消滅のみだ」 彰利 「なに言ってやがる……ここで消滅するのは───」 レオ 「お前だよ、弦月彰利」 彰利 「なに───!?」 レオ 「一気に消滅させようとすれば出来たものを……まったく。     貴様はたったひとつの勝機を逃した。そして───死ぬ」 彰利 「チッ───ほざくなよ死神……!そんな身体の前に何が……」 レオ 「……忘れたか?俺の体の中にはお前の月操力がある。     とてつもなく強い月操力がな。     お前はそれを忘れ、力に溺れて余裕を見せた。それが敗因だ」 彰利 「……?」 訳が解らない。 ただの時間稼ぎか───? レオ 「まったく、憐れむよ。晦悠介は友を間違った。     お前などに未来を託すとは───」 彰利 「ッ───ほざくなって言ってんだよ!!」 疾駆。 トドメを刺すために弾けさせた足で進み、レオに向けて力を放出する。 が───そんな景色を、どこかで見た気がした。 なにを焦っているんだろう。 俺は───どこでこんな景色を見たんだろう。 この嫌な予感は───何処で、誰が感じたものだったんだろう───? レオ 「悪くないぞ宿主よ!貴様を道連れに死にゆくことはな!」 彰利 「───!」 その時───頭の中の景色が弾けた。 見える場所は月面。 かつて、ゼノとともに転移して───全ての月操力を弾けさせて死した場所。 ───嫌な予感。 この嫌な予感はきっと───ゼノが感じたものなのでは─── レオ 「終わりだ。フルブレイクカタストロファー……───ッ!!」 ───……景色が爆ぜる。 視界も、黄昏の陽も、草木も……そして、創造の世界も。 その全てが爆ぜて……やがて。 俺の身体も、指の先からコワレていった。 そして俺は後悔するのだ。 復讐なんてことは考えず、トドメを刺すべきだったんだって。 なにもかもが裏目に出て…… 親友に申し訳なくて…… 謝ろうとしても声も出なくて…… ───やがて、俺の肉体はその場で消滅した……。 Next Menu back