───暖かさを思い出した骨と、その先にあるもの───
───……春。 南無 『風流よのぅぉ〜〜〜ほね』 この骨様は夜華さんに取り憑いて、それなりに楽しい骨生を楽しんでいた。 レオが逃げ出してから約二年。 な〜んの音沙汰もないその事実に少々嫌気も感じているが……ま、いいほね。 今現在、この未来は順調に流れていってるほね。 小僧も無事だし、悠介も消えてねぇ。 小僧が働いてるカンパニーも今は使用人全員が辞職して、 そこで天地空間中から掻き集めた知り合いが働いてる。 簡単に説明すれば─── セキュリティ全般────────リヴァイア 侵入者の排除──────────葉香 空調、掃除など─────────アルベルト、レイル 厨房、料理関連─────────聖、ヨイチ、和哉 天界から連れてきた天鶏飼育───サイファー、風間、皆槻、佐古田、佐野崎 救護班、治癒など────────レイン、聖 荷物整理など──────────和哉、メイ、タマ 事務、書類整理など───────凍弥、浩介、浩之、オチット、ラチェット 遊戯、娯楽室の管理───────菜苗、独眼鉄 言うまでもないとは思うが、 聖とヨイチと和哉は散々掻き集めた精子と卵子を融合させて孵らせた子。 弦月彰利と夜華さんの精子と卵子から生まれたのは『聖』。 もちろん、光も埋め込んだからちゃんと『あの』聖だ。 穂岸遥一郎とサファイア=クラッツ=ランティスの精子と卵子からは『ヨイチ』。 ヨシュア=イシュクス=チックフォールド。 料理製作の手際の良さと頭のキレが自慢の子供だ。 晦悠介とフレイア=フラットゼファーの精子と卵子から生まれたのは『和哉』。 この場合のみ、ルナっちではなく敢えてフレイアの卵子を使っております。 それ故、潜在能力がベラボウです。 それぞれの名前は考えるまでもなく既存であった名前を使っております。 聖はそのまんまだし、ヨイチは与一から。 和哉は悠介の本名の『朧月和哉』から。 風間雄輝、皆槻静香においては、俺が不幸を呼び寄せて風間を仕事からクビにして、 小僧にカンパニーで雇うように先導した。 メイさんとそのペットのミーア(本人?が言うにはタマ)は、 リヴァっちがちょちょいと治してしまって、現在は元気にしている。 天界の者どもは『穂岸に頼まれたからな』と言って、あっさりと地界に降りてきたし。 ……ちなみに『独眼鉄』は、俺の独眼鉄時空から漏れ出した独眼鉄だ。 まあ中々楽しそうで安心してる。 夜華さんにも奨めてみたんだが、 夜華さんは『貴様が大樹に居るならわたしもここでいい』と言って断った。 南無 『ィヤッハッハッハッハ!!絶景!!』 夜華 「彰衛門、姿を現すな。悠介殿に見つかったら事だぞ」 南無 『大丈夫大丈夫、【俺が無理矢理夜華さんに取り憑いたんだ】って言えば、     夜華さんはただの被害者になって、消されるのは俺だけ。理想的じゃないか』 夜華 「貴様……自分の命を軽んじていないか?」 南無 『軽んじてますよ?死なないし』 夜華 「だが痛みは感じるんだろう?わたしはそんなの……嫌だぞ」 あらら、夜華さんたら……。 う〜む、なんだかムズ痒い状況ですな。 南無 『しっかし夜華さんも物好きだよね。     よくこんな骨な俺に【傍に居てもいい】とか言えたもんだ』 夜華 「そんな姿になっても、貴様が彰衛門であることには変わりない。     欲を言えば……確かに骨なのは気持ち悪くはあるな。せめて幽霊の方がよかった」 南無 『む?ふふふっ。やあ、これは手痛い。     相変わらず歯に(きぬ)着せぬ言い様よのう、朝倉妹』 夜華 「……?誰だ」 南無 『こちらの話です』 でもね、不思議なことに夜華さんの傍って居心地いいのよね。 骨になって以来、こんなことは初めてじゃよ。 でも……まいったね。 人の暖かみを拒絶することで強くあった俺だ。 今レオと戦えば、死にはしないけど負け続けるだろうな。 かといって暖かさを思い出してしまった俺としては、夜華さんから離れるのは辛い。 とんでもねぇことになっちまった。 この広い天地空間の中で、心を許せるのが夜華さんだけとは…… いやまあ、それで十分なんですけどね? 夜華 「……な、なあ。ずっと訊きたかったことがあるんだ」 南無 『なにほね?』 夜華 「貴様はどうして、わたしにだけは正体を明かしたままにしようと思ったんだ?     その気になれば口封じくらいできただろう?」 『あれほど嫌がっていたのに、どうしてだ?』と続ける夜華さん。 俺はその言葉に少し思考を働かせてから答えた。 南無 『相手が夜華さんだったから、かな。多分懐かしかっただけなんだよ、俺』 夜華 「懐かしい?」 南無 『聖を泣かせて楓巫女を降臨させて───今日までぶらぶらと生きてきた。     何があるわけでもない。     生まれては死にゆく人々の生を眺めながら、俺はずっと生きてきた。     ……ほんとに何もなかったんだ。     生きて死んでを繰り返す人の歴史に疲れてたんだろうな。     この世界には【人であったからこそ出来ること】が多すぎたんだ』 夜華 「そう……なのか?わたしにはよく解らない」 夜華さんが掃っていた竹箒を止めて、宙に浮かぶ俺を見上げる。 俺はそんな夜華さんの目を見てゆっくりと頷いた。 南無 『うん、案外そういうもんなんだ、この世界ってのは。     だってさ、人が人の未来ために作りあげていってる世界なんだ。     バケモノ用になんか出来てるわけがない』 夜華 「そうか……」 南無 『人であるからこそ出来ることがある世界。     当然、人じゃない骨にそれが出来るわけもなくて、やっぱりぶらぶらと生きる。     そうした時間の中で、ふと【弦月彰利】だった頃のことを思い出すんだ。     ……楽しかったな、ってさ。でも後悔してるわけじゃない。     俺は確かに未来の果て……この時間軸とは違う歴史で悠介を死なせちまって、     自分までもがレオに殺された。あんなの、悠介が無駄死にしただけだ。     それが許せなくて、俺は【弦月彰利】であることを捨てた』 夜華 「……捨てるまでしなくてもよかったんじゃないのか?」 南無 『いや……俺はもう疲れてたんだ。月の家系の宿命とか束縛に。     みんなが普通に生きられる中、俺だけが【傷】の所為で解放されなかった。     それはとっても辛いことだ。     そうなるとさ、どうしても【どうして自分だけ】って思っちまう。     中途半端に浮上した感情が余計にそうさせた。     初めて自分の中にハッキリと浮かんだ嫉妬ってゆう感情に、     俺は自分が嫌なヤツだってことに気づいた。     ……感情から言えば、あの頃の俺はまだまだ小さな子供だったんだ。     なんでも無茶なままやって、全てを台無しにして泣きながら帰る子供だ。     それなのに帰る場所も行き着く場所もない。     ほら……そんな子供がどうやったらその現状で生きることを望める?』 夜華 「それは……───」 遠い昔───未来なのに昔ってゆう矛盾の中で、俺は人であることを放棄した。 ぬくもりも感じられず、ただただ冷たく染まってゆく心と体。 そんな体で今日まで歩いてきて……いつか。 人の暖かさを思い出させてくれた人が居た。 そういう人に取り憑くのもどうかとは思うが、まあそれはそれだ。 南無 『シェイドがこうして体を用意してくれて、俺はそれを受け入れた。     【弦月彰利】だった俺の体はもう微塵にも残ってない。     俺はもう、この姿のままで生きていくか未来を開かせるかするしかないんだ』 夜華 「未来を開かせる?なんだそれは」 南無 『シェイドとな、ある約束をしたんだ。……ああ、どっちかってゆうと契約かな。     俺がこの時代まで生きて、     もし【弦月彰利】が馬鹿な行動をせずに未来を変えることが出来たなら───     俺の中の【不死】の要素を消すって。     というよりは未来が開けることで消えるらしい。     そうしたら俺は……消えるつもりだ』 夜華 「……消える、のか?死ぬんだろう……?───怖くないのか……?」 南無 『おかしなもんでさ、恐怖って感情はとっくの昔に枯渇しちまったんだ。     あるのは残忍な心と破壊衝動。そして、夜華さんが思い出させてくれた暖かさ』 夜華 「彰衛門……」 南無 『俺さ、俺が俺であったことを知ってるのは夜華さんだけでいいと思う。     他の誰でもない、俺に暖かさを思い出させてくれた夜華さんだ、     俺はそれだけで十分だよ』 夜華 「な……ば、馬鹿、なにを言い出すんだお前は……」 南無 『馬鹿とはなんだコノヤロウ!!』 夜華 「───……」 南無 『ほねっ!?』 なんてゆうか……自然に出た言葉が凄く懐かしかった。 そっか……そうだよな。 俺が思いっきり自分そのままでぶつかってたのって、思えば夜華さんくらいなもんなんだ。 この時代の悠介は俺が知らない未来を歩んできた悠介でもあるわけで、 そんな悠介に対して俺は、どこかで遠慮をしていた気がする。 だって……いつしか悠介を『ダーリン』って呼ぶのをやめていた。 それは遠慮があったからじゃないだろうか。 けれども夜華さんとは初めて出会ったときから遠慮なくぶつかって─── やがてそれが自然になってくる頃には、夜華さんも俺に遠慮を考えなくなった。 ───自然体。 その頃の俺と夜華さんをそう呼べるとしたなら、 俺はきっと夜華さんにこそ心を許していた。 けど─── 南無 『フ……気づくのが遅すぎたほねな……』 俺は夜華さんの告白を拒んだし、体は既に骨だ。 それにもし人間だったとしても、俺は粉雪が好きだった。 だから…… 南無 『……このまま、夜華さんの式神になるのも悪くねぇかもしれねぇほねな……』 夜華 「うん?なにか言ったか?」 南無 『ごらん、オリオン座が輝いているほね』 夜華 「……その『ほね』というの、やめないか?」 南無 『これは俺の骨死神としての絶対条件だ』 夜華 「そ、そうなのか……」 南無 『ウムス』 ケショッ、と地面に降りて一呼吸する。 といっても骨だから酸素必要ないんだけど。 ……ふむ。 南無 『なぁ夜華さん。デスノートいらねぇほね?』 夜華 「……そういえばなんなのだ?その『ですのと』とかゆうのは」 南無 『デスノートほね。これに書いたことを現実化するのが俺と出ュ浮の遊びほね』 夜華 「『でゅーく』?誰だそれは」 南無 『究極の死神のひとり……いや、ひと骨ほね。     出ュ浮と俺はかつて、【技の出ュ浮】、【力の南無】と恐れられたものほね。     そういや神降街で別れて以来、ずっと会ってねぇ気がするほねな……』 夜華 「知り合いなのか。どんなヤツなんだ?」 南無 『骨ほね』 夜華 「………」 夜華さんがとんでもなく微妙な表情をして俺を見た。 なんなんですかねまったく。 夜華 「……まあいい。これに書いたことを貴様が現実にする、というんだな?」 南無 『そうほね。こういうのは出ュ浮の方が上手いんだが、まあ俺も少しは出来るほね』 夜華 「……た、たとえばだぞ?誰かに……───あ、た、たとえばだからなっ!?     勘違いするなっ!いいなっ!?」 南無 『なにほねか……いいから言ってみるほね』 夜華 「そ、その……だ、誰かにどこかに帰ってもらいたくないと書けば……その。     か、かかか叶うか……?」 南無 『ああ〜〜〜ん?』 夜華 「こっ……答えろっ!さもなくば斬る!!」 南無 『無茶苦茶ほねね……そうほねなぁ〜〜〜……。     どこかに帰ることを妨害すれば帰れなくすることは出来るわけだし、     大丈夫じゃねぇほねか?』 夜華 「そ、そうか…………そうかぁ……っ」 ポ〜と、どこかホウケたような顔でどこでもない虚空を見上げる夜華さん。 しかしそれもすぐに終わり、ドタドタと社の中に引っ込むと、筆を取り出した。 うあ……なんか目がギラギラしてるほね。 夜華 「くふふははは……!!なんとでも思うがいい……!     わたしはやはり、貴様が居ない時代など考えられんのだ!」 筆を使い、サラサラと器用に文字を連ねる夜華さん。 そんな夜華さんを横から覗き、一言。 南無 『……なに書いてるほね?』 夜華 「うるさいっ!静かに見てろ!」 南無 『グ……グウムッ!!』 な、なんという凄まじい気迫……ッ!思わずグウムッて言ってしまった! とまあそれはさておき、デスノートの1ページ目にはあっという間に文字が並べられた。 夜華 「さあ!実行しろ!」 バッ!とノートを見せてくる夜華さん。 だが…… 南無 『……なんて書いてあるほね?』 夜華 「なに?見れば解るだろう」 南無 『いえさっぱり……』 字が達筆すぎて読めん。 さすが昔の人……というか、夜華さんって字ぃ上手かったんだねぇ……。 無駄な墨も使ってないようで、下のページに滲んでないし。 南無 『しゃあねぇ、夜華さん。言葉で言ってくれ』 夜華 「な、なにっ!?ここに書けば実行すると言っただろう!     何故わたしが言わなければいけないんだ!」 南無 『読めねぇからに決まってるっしょ!さあ言え夜華さん!』 夜華 「う、うぐぐぐぐ……!」 南無 『さあどうした夜華さん!言えコラこの野郎!』 夜華 「こ、これはだな……その……」 南無 『なにかね!声が小さくてまったく聞こえんよ!     キミはなにかね!?このナムを馬鹿にしているのかね!?』 夜華 「だ、だからその……」 南無 『なにかね!ハッキリ言いたまえよ!』 夜華 「これは、……」 南無 『なにかね!!このナムはキミが何を言いたいのかまるで解らんよ!!』 夜華 「だったら喋らせろ!!なんなんださっきから!」 南無 『よし聞こう。話せほね』 夜華 「うゎぐっ!?あ、あぐぐ……」 挑発して引き付け、そこから一気に冷静に。 これぞ駆け引きの基礎中の基礎ぞ。 クォックォックォッ、やはり夜華さんのうろたえる姿は最高ぞ!! くぅああああ!久しく忘れていたこの気分がたまらねぇYO!! 夜華 「こ、これはっ……そのっ……!あ、ああああの、だな……っ!」 俺……決めたよ。 もう一生、夜華さんに取り憑いてやろうって思えましたよ。 こげに面白かおなご、ほっぽっとくのは惜しいべや? 南無 『まあまあ落ち着け夜華さん。     実はな、このデスノートは大したことは出来んのだ』 夜華 「な、なにっ!?何を言う!     貴様は先程、これに書いたことを現実化すると言っただろう!」 南無 『言ったほね。だがしかし、【全て】をとは言ってねぇほね』 夜華 「な……っ……そ、そうなのか……?」 うわ……すごく悲しそうな顔されましたよ? いってぇ何がしたかったのかは解らんが、こればっかりは仕方が無い。 夜華 「では……何が出来るというんだ、この『ですのと』で」 南無 『デスノートほね……。まあいいほね、そうほねねぇ……よし。     ではこう書いてみるほね。【篠瀬夜華の部屋に主婦が殴りこみに来る】と』 夜華 「な、なんだそれは……」 南無 『いいから書いてみるほね。どんなものか知りたいほねだろう?』 夜華 「あ、ああ……」 しぶしぶと筆を手に取る夜華さん。 そして再び書かれる達筆な昔文字。 実行出来る範囲の願いなら、文字が読めなくても実行出来るから構わんのですがね? 夜華 「書いたぞ」 夜華さんがそう言って俺に振り向いた時だった。 ───ガラァッ!! 夜華 「うん?───なぁっ!?」 主婦 「なめたらかんでぇ!!」 デ〜ゲデ〜デッテッテッテッデ〜ゲデ〜♪ デ〜ゲデ〜デッテッテ〜♪ スーパーファミコン『初代熱血硬派くにおくん』の喧嘩中のテーマを流しながら、 ひとりのデブ主婦が殴り込みに来た。 当然、夜華さんびっくり。 やっぱ人間(夜華さん)って……面白!! 夜華 「な、なんだお前は!ここは関係者以外の立ち入りは───」 主婦 「なめたらかんでぇ!」 シュバッ! 夜華 「うわっ!?な、なにをするっ!!」 主婦の拳を後退することで避けた夜華さんだったが、やはりびっくりしたまま。 俺はそんな夜華さんに声をかける。 南無 『解ったほね?これがデスノートの力ほね』 夜華 「なっ───それじゃあこの女性は!」 南無 『書いた通り、殴り込んできただけ』 夜華 「くはっ───」 主婦 「なめたらかんでぇ!!」 ブンッ!! 夜華 「うわぁっ!───く、くそ!しつこいぞ貴様!紅葉刀閃流───飛燕龍-凪-!!」 おお!主婦の拳を掻い潜っての夜華さんの刀技! 一瞬にして振られた刀が、鞘ごと主婦の脇腹に埋まった!! 主婦 「グヘッ!」 ドサッ。 主婦が倒れた。 南無 『……なんで倒れ方だけキン肉マンチックだったほね?』 謎だ。 まさか『グヘッ』とか言うとは思わんかったほね。 夜華 「……まったく……おい彰衛門。この女はどうすればいいんだ……」 南無 『知らんほね』 夜華 「なっ……貴様が書けと言ったから書いたんだぞ!?     そうしたらこの女性が来たんだ!貴様がどうにかするのが筋というものだろう!」 南無 『知らんほね。     デスノートを使って起きた出来事には一切関与しないのが掟なんだほね』 夜華 「くっ……くぅうう!!」 唸っていた夜華さんだったがしばらくして溜め息を吐いて、 デスノートになにかを書き込んだ。 すると社に駆け込んできた複数の村人が主婦を抱えて外に出て、 他の数人は何故か俺を囲んで構えた。 村人×5『なめたらかんでぇ!!』 デ〜ゲデ〜デッテッテッテッデ〜ゲデ〜♪ デ〜ゲデ〜デッテッテ〜♪ 南無 『……ほね?』 夜華さんと視線を合わせて、村人を指差しながら首をかしげて見せた。 するとコクリと頷く夜華さん。 ようするに───これは夜華さんがデスノートに書いたことなのだっ!! 南無  『ほ、ほねぇっ!?ちょ、ちょっと待つほね!話せば解るほねよ!?』 村人×5『なめたらかんでぇ!!』 南無  『キャーーーッ!!!』 ドカッ!グシャッ!!バキベキ!ボキッ!! 南無 『ウギャアアーーーーッ!!!!』 ───……かなりボコボコだった……。 集団にボコボコにされたの、どれくらいぶりかなぁ。 思わず怪虫に襲われた仲田くんの叫びを演出してしまったよ。 南無 『あんた人の皮を被った鬼だねほね……。     まさかデスノートをこう使ってくるとは思わんかったよほね……』 夜華 「わたしが斬ったところで、貴様は懲りることを知らないからな。     だが……その、すまない。あまり痛めつけるつもりはなかったんだが……」 南無 『ほね?』 ……まいったなぁ。 こうしてどっしりと腰を据えて話し合ってると、夜華さんってばカワイイのよね。 まさかこげな骨なアタイを気遣ってくれるとは……。 フッ……なんてゆうかこりゃあおめぇ、アレだ。 粉雪に出会う前に夜華さんに出会ってたとしたら、惚れてたかもしれねぇぜ? というかね、骨の俺が言うのもなんだが、今の俺は間違いなく夜華さんサイドだ。 月空力が無くなった今、そして骨になってしまった今……粉雪に合わせられる顔などない。 あの時代にも帰れなければ、もう二度と粉雪と出会うこともない。 ───もちろん、この時代に辿り着く前にこの時代の粉雪に会いに行った。 でも……ね。 その粉雪が誰かを好きになる過程をむざむざに見せ付けられれば、 惨めになるのは当然だったのだ。 『せめて傍に居られれば』なんて考えはあっさりと打ち砕かれて。 やがて子を身籠り、親となった粉雪を見ていたら…… いつしか自分の中からいろいろなものが消えていった気がした。 俺はどの道、この時代からは逃げられない。 未来を築き、『不死』を破壊して死を選ぶか生を選ぶか。 未来を築けず、『不死』のまま永遠の生を生きるか。 結局は死ぬか生きるか───そのどちらかだ。 ───もし『生きること』になったなら、 夜華さんに取り憑いたままで居るのもいいかもしれない。 でも……夜華さんもいつかは誰かを好きになって、俺のことなんか忘れてしまう。 あの日の粉雪がそうだったように……俺のことなんか忘れてしまう。 声  「……ん……?……い……あき……もん!」 そう、だよな……。 そんな先のことが解ってることに何かを望んで傷ついて…… これ以上なにをしろっていうんだよ。 夜華 「彰衛門!聞いているのか!!」 南無 『へ?ウ、ウィ?───なんぞね!!』 夜華 「なんぞねじゃない!なにをボ〜っとしているんだ!」 南無 『ん……あー、いや……』 言うのは簡単だけどね。 ま……いっか。 南無 『なぁ夜華さん。もし俺のことが邪魔になったら言ってくれな』 夜華 「……?いきなりなにを言い出す」 南無 『夜華さんがもし誰かを好きになってさ、そいつに夢中になれるとしたらさ。     ほら……俺は邪魔になるだろ?     だからさ、夢中になる前に【邪魔だから消えろ】とか言ってくれ。     ……うん。出来るだけ傷つく言い方がいいかな』 夜華 「おい、彰衛門」 南無 『ははっ、大丈夫大丈夫。俺、そう言われるの慣れてるし。     人から嫌われるのだって100年以上も続けてきたんだ。     いまさらひとりになったって、俺は永遠でもなんでも生き続けて』 ベゴキュッ!! 南無 『いたやぁあああああーーーーーーーーーっ!!!!!』 それは突然のことでした。 障子を開け、遠くの空を見上げながら語っていた俺の脛骨に凄まじい大激痛が走った!! 南無 『な、なにしやがる夜華さん!骨とはいえ痛ぇんだぞこの野郎!!』 夜華 「黙れっ!!急になにを言い出すのかと思えばそのようなくだらぬこと!!     わたしは───いいかっ!わたしはなっ!     生涯で一度好きになった者以外を好きになるつもりはないっ!!」 南無 『うそつけこの野郎!!』 夜華 「なっ───なんだと貴様!今なんと言った!」 南無 『うそつけこの野郎!!』 夜華 「貴様ぁっ!!わたしの勇気を頭から戯言だと決め付けるのか!!     根拠はなんだ!言ってみろ!返答によっては斬るぞ!!」 南無 『え?えーと……』 まいった。 後先考えずに即答で『うそつけ』などと言ってしまった。 根拠なんぞは微塵にもある筈もない。 どうしたものか。 ここはなんとか、夜華さんにバレる前に適当なことを言ってはぐらかさねば。 南無 『えーとですね、根拠は』 夜華 「……貴様まさか。勢いだけでわたしを嘘つき呼ばわりしたんじゃあるまいな……」 南無 『ゲゲッ!?何故それを───ってギャアしまった!!     つい本音が───ってギャア!バラしてどうする!!』 夜華 「…………呆れたヤツだっ……!!」 南無 『ギャアア!?』 シャアアと刀を抜く夜華さんを前に俺は叫んだ! いやはや……こんな状況なのになんとも懐かしいと感じれることでしょう。 夜華 「紅葉刀閃流最終奥義!」 南無 『いきなり最終奥義ですか!?ならば応えよう……それっぽい技で!!』 俺は左腕の骨をバゴキュッと外し、激痛に耐えながらもボーンソードとして構えた! 南無 『奥義!カルシウム満点-粉骨砕身剣-!!』 骨を散らせて身体を砕く! これぞ骨流剣技の極意よ〜〜〜っ!! ……ってダメじゃん!これじゃ俺が粉骨じゃん!! 夜華 「四聖刀覇-乱れ紅葉-!!」 南無 『ちょちょっと待てーーーっ!!お、俺は独眼鉄!     き、貴様ごときに負けてたまるかーーー───じゃなくておわぁーーーっ!!』 ジョゴォッ───ッパァアアアアアン!!!! 南無 『ほねぇえええーーーーーっ!!!!』 その空に、骨が削がれ、砕ける音とともに広い空へと飛ばされる俺が居た。 南無 『へへ……知らなかったぜ……。     空ってこんなにも物悲しいものだったんだな……。     ぬくもりもなにもねぇや……ってそっか。     空も風も、もう精霊野郎と一緒に消えたんだっけ……。     フッフフ、道理で悲しい風が吹いてるなとセ○ンのごとく思ったわけだ……』 などと天○伝説やってる場合ではなく。 嗚呼、骨が散り散りに飛んでゆく……。 夜華さん……アータ人間のくせに強すぎだよ……。 ───ごしゃっ!カラカラ……。 空の旅を終えた俺は、見事バラバラになりながら石畳と熱いベーゼを交わした。 つまり顔面から落ちた。 ひでぇ……普通こうも見事に顔面から落ちないだろ……。 夜華 「貴様はわたしの心を侮辱した……!     わたしが好いた者以外を惹かれるような軽い女に見えたというのか!」 南無 『見えんよ?』 夜華 「じゃあ何故だ!     考えも無しに嘘と決め付けたとしても言い訳くらいは出来るだろう!答えろ!」 物凄い剣幕で叫ぶ夜華さん。 だが、その剣幕も軽く突付けば泣き顔になってしまいそうなくらい弱々しい。 ……やれやれほね。 南無 『簡単ほねよ。もしも夜華さんがそいつをずっと好きだとしても、     そいつに関する記憶が夜華さんの中から消えたらどうなる?     姿も記憶も思い出もないヤツをずっと好きでいられるか?     好きだったってことすら忘れてるっていうのに』 夜華 「───っ……そ、それは……」 南無 『夜華さんもきっと粉雪と同じだよ。     自惚れてるわけじゃない。けどね、【弦月彰利】のことを忘れれば、     夜華さんだっていつかは別の誰かを愛す。     解るんだ。確信出来る。     俺は、俺が好きだった人が他の誰かを愛すなんて世界を見てきたんだから……』 夜華 「なっ……彰衛門、貴様……」 南無 『惨めだったよ。時代が違うとはいえ、俺はそいつのことが本当に好きだった。     ……解るか夜華さん。好きな人が俺じゃない誰かに抱かれ、結婚を約束して。     やがて妻となり親となり……老いてゆく者を見てきた俺の気持ちが……。     俺はこの手で……あいつを幸せにしてやれなかったんだ……』 夜華 「っ………!だ、だがっ!わたしは今の自分の心を否定されるのは嫌だ!     そんなことをされたままで黙ってなどいられるかっ!!     はっ……初めてだったんだ……!こんな気持ちになったのは……!     他の誰かにこんな気持ちを向けたいわけじゃないっ!!わたしは」 南無 『狼髏館回頭閃骨殺!!』 ババッ─── 夜華 「誤魔化すな!!」 ベゴキャゴシャア!! 南無 『ほねぇいっ!!?ウギャアーーーッ!!!』 バラバラになった骨手を飛ばして夜華さんを気絶へと導こうとしたのはいいが、 一瞬にして見切られて刀の鞘で叩き落とされてしまった。 南無 『いてぇよぉおお〜〜〜〜〜っ!!!』 夜華 「わたしは……わたしは、な……彰衛門……」 南無 『いてぇよぉお〜〜〜〜〜っ!!!!いてぇぇええええぇよぉおお〜〜〜っ!!』 ザゴドシュベキゴキゴシャゴシャゴシャ!!!! 南無 『いたやぁああああああああああーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!』 斬り、刻み、砕き、さらにストンピングの雨。 顔を真っ赤にして既に涙目の夜華さんが俺をギロリと睨んで叫んだ。 夜華 「どうして貴様はそうなんだ!!     人が真剣に話している時にはすぐに誤魔化そうとして!!     貴様はっ……貴様はそんなにわたしが……!嫌いっ……なのかぁっ……!!!」 南無 『ゲゲェエエエーーーーーーーーーッ!!!!!』 な、なんてこった!夜華さんを泣かせちまった!! ノゥッ!落ち着くんだ夜華さん!武士ともあろう者が泣いてどうするね!? などと考えてみたが、泣く夜華さんは貴重である。 今のうちに堪能しときましょう。 どうせザクザクに斬られるんだし。 夜華 「嫌いなら嫌いと言え!妙な期待を持たせるようなことはするな!     わたしにっ……わたしにやさしくするなぁっ!!」 夜華さん、涙を拭わずにシャフィンッと抜刀。 そして迷わず襲い掛かってきた。 南無 『やっぱりぃいいーーーーーっ!!!!!』 ベキゴキバキベキゴシャベキャゴキャ!!!!! 南無 『ウギャアアアアーーーーーーーッ!!!!!!!』 ───……またもやボロボロです。 だって夜華さんたら散り散りになった骨をひとつずつ確実に踏み砕くんですもの……。 これぞ粉骨砕身ってやつですよ……。 で、頭骨だけになった俺は、泣き崩れてる夜華さんの周りを浮遊してるわけですよ。 なんてゆうかこう……夜華さんを軸に、一定の距離をグルグルと。 さっきまで慰めの歌を歌ってたんですがね、殴られたのでやめました。 どうやら夜華さんはブルーダイヤのCMの歌が嫌いらしい。 南無 『なにが悲しいのセーラ……わたしに話してごらんなさいほね……』 夜華 「うぐっ……ひっく……っく……」 南無 『無視ですか……』 どうしてこういう状況だとみなさん平気で人を無視するんでしょうねぇ。 ……話は変わるが、『セーラ』に関しては自分で言っててなんのことだか解らなかった。 そんなもんだよね、場のノリでやることって。 南無 『なぁ〜泣き止めよ夜華さんよォ〜〜ほね。     大体俺はもう弦月彰利じゃねぇえええんだからよォ〜〜〜、     俺に八つ当たりしたってしょぉおおおがねぇええええだろうがよぉおお〜〜っ。     えぇ〜〜〜っ?ナランチャァアア〜〜〜〜ッ』 夜華 「黙れ……っ……わたしは『ならんちゃ』ではない……っ」 おお、反応アリ!? ここで畳み掛けるように夜華さんをナランチャと呼べば───ドゴシュンッ! 南無 『ほね?』 首が飛ぶ。 もちろん俺の。 景色が回り、空や石畳や社を写しながら、やがて地面に落ちる俺の頭。 やがて───落ちた果てに向いた景色の中に、ひとりの死神の存在を見た。 南無 『ほねっ!?い、いかん!逃げろ夜華さん!』 その場に居たのはレオ=フォルセティー。 どんな破壊器具よりも破壊的な腕を振り上げ、夜華さんを狙っていた。 南無 『夜華さんっ!───くそっ!』 夜華さんのヤツ、まだ泣いておるわ! いまから気づいたって遅い! こうなったら……! 南無 『蒙古!猛烈破砕弾ダスーーーッ!!!』 骨ボディを遠隔操作して夜華さんにブチかまし!! ───ドゴォンッ!! 夜華 「けふっ!?」 凄まじい手応えとともに夜華さんが宙を浮く。 やがて───ドゴシャバキベキゴロゴロズシャアアーーーーッ!!! 石畳を跳ね転がり、境内の端の方まで滑ってゆく夜華さん。 南無 『ふう〜〜〜、マッハ2のスピードで体当たりしたからよかったものを……。     あと1秒遅かったら時速300kmの豪腕に殺されるところじゃったわ……』 とはいっても本当にそんな速度でぶつかったら死にますけどね? 時速も適当だし。 レオ 「……不死身というのは真実らしいな。首を切断されて動けるとは」 南無 『不意打ちの趣味があったなんて初耳ほねな。いったい何の用ほね?』 レオ 「───貴様を殺す。それだけだ」 南無 『まあそう急くなほね。この2年間、なにやってたほね?』 レオ 「死ね」 あらら、せっかちさん。 でも俺が不死身ってこと知ってて『死ね』とはどういう了見ですかね。 などということを、腕を振り上げたレオを見上げながら思いました。 その次の瞬間です。 グシャアッ!って音とともに、確かな破壊を我が身……というか我が顔に感じたのは。 南無 『ゲハッ……!?な、なんだこれはほね……!か、体が崩れる……!?』 レオ 「……フッ───フフフハハハハハ!!やはり効果絶大のようだな!!     知りたがっていたようだから聞かせてやろう!     俺がこの2年間を費やした貴様を屠るためのことを!」 南無 『いえ、やっぱり言わなくていいです』 レオ 「言わせろ貴様!俺の2年間を侮辱する気か!!」 南無 『………』 いや、なんつーか……さすが俺の中の死神だとか思ってしまった。 覚醒してから時間経ってるし、俺の記憶と経験を吸収したわけだから、 『弦月彰利』に近づくのは当然っていえば当然なんだが……。 まあそんなこんながありまして、レオが思い出話を聞かせてくれました。 ───……。 レオ 「……というわけだ。ようするに俺は死神側の月操力だけではなく、     神側の月操力をも使えるようになったのだ!!」 南無 『ぐごーーー!ふんごーーーーっ!!』 レオ 「聞けぇええええええっ!!!!!」 ボゴシャメゴシャゴッシャベッキョ!! 南無 『ウギャアアアーーーーーッ!!!!!』 長ったらしい話に飽き飽きしたから寝たふりでもして遊んでいようとした矢先、 我が骨ボディがバキベキと踏み砕かれた。 レオ 「───!?貴様!何故体が元通りに!?」 南無 『話長ェんだものほね……。     あれだけの時間あれば誰だって再生を望むデショ……』 レオ 「くっ……迂闊!」 南無 『みんなー、ここに馬鹿が居るよー……』 レオ 「……フン、だが貴様が死ぬのは変わりない!     月聖力を浴びれば溶けるんだろう!」 南無 『うわー……かつての自分の馬鹿さ加減に呆れてる俺ってやっぱ馬鹿?』 レオ 「死ね!」 レオが月聖力を込めた手刀を振る。 南無 『死ぬのは貴様の方ぞね!“冥府誘う深淵の災い(ハデスディザスター)”!!』 動じずに鎌を出現させ、その攻撃を逸ら───って鎌が出ない!?なんで!? 南無 『ほねっ!!』 手刀を紙一重で避ける。 が───避けたにも関わらず、避けた軌道の部分が溶ける。 鎌は出ないし完全に避けないと溶けるし……くそ!どうなってやがる! 体の動きが鈍くてしょうがねぇ! 南無 『───!』 そっか……しまった。 俺は孤独と深淵を司る骨死神……。 どんな理由があろうと、暖かさを思い出しちまったり心を許しちまったりすれば……! くそ……恨むぜ夜華さん、俺に暖かさなんて思い出させやがって……。 南無 『こうなりゃ意地でも───夜華さんだけは守り抜く!!』 鎌が無いのは大いなるハンデだが……勝たなきゃなんねえ!! こんなヤツを野に放つわけにはいかねえ!! レオ 「フハハハ!宿主が能力を開花し、高めてくれたお陰で存分に利用できるぞ!     今の俺にはまさに敵が居ない!俺が秩序だ!     さて骨死神よ!再生の利かぬ月聖力の波動の中、     その全てを破壊されたらどうなるかな!?再生するか!?     それとも真に消え去るか!今ここで試してくれる!!」 むう……確かにこれはヤバイ。 戦いが激しくなる前に、なんとか夜華さんだけでも逃がさなけりゃ…… レオ 「……?なんだ、あの女が気になるのか?」 南無 『なりませんよ?』 レオ 「記憶によればあの女、『篠瀬夜華』といったか。     ……そうそう、宿主は散々とあいつに切られたんだったな」 ……あら嫌な予感。 レオ 「どれ、親愛なる宿主のために仕返しでもしてやろうか。     そうすれば貴様の気が散る原因も消えるだろう」 南無 『やっぱそう来るかっ!!気になりませんっちゅーに!!や、やめれ!!』 レオ 「───ブラスト」 ───ドチュンッ!! 南無 『や、夜華さぁあああああん!!!!』 夜華さんは『マッハ2カルボーンタックル』が相当効いてるようで、ピクリとも動かない。 そりゃあ確かに、本当にマッハ2じゃないとはいえ、 跳ね転がるくらいの衝突じゃあダメージはデカイよね、うん。 って冷静に頷いてる場合じゃねぇ!! このままでは夜華さんが死ぬ! レオ 「───む……」 南無 『ややっ!?』 ───だがしかし。 確実に当たると思っていたブラストは途中で消え、消滅した。 何故、と思った時には夜華さんが起き上がり、フラフラながらも立ち上がった。 夜華?「う、うう……もう……どうしてわたしが起きるといっつもこう……」 あ……なんとなく解った。 浅っちだ。 そっか、月清力でブラストを鎮めたんだな? なにはともあれよくやった!! 浅美 「あう……目がチカチカ……ってうわぁっ!?     な、ななななんで骨が!?しかもそっちの人からは死神の波動がっ!?」 大慌て浅っち。 今の状況についてこれていないらしい。 まあ、ね、そらそうだわな。 南無 『キミ!今すぐ逃げろ!ここはこの死神によって占拠されようとしている!     いいか!逃げるんだ!     悠介を連れてくるだなんて戯けたことしたらカミカミするぞ!?』 浅美 「骨が偉そうなこと言わないでください!     骨なんかに指図される覚えなんかありませんよ!?」 南無 『なんだとてめぇ!骨ナメんなよ!?     てめぇの体だって骨に支えられてるってこと忘れんじゃねぇぞ小娘が!!』 浅美 「こ、小娘ぇっ!?そりゃあわたしは小学生の頃に死んじゃったけど、     だからって今、小娘とか言われる筋合いありませんよ!?特に骨になんか!」 南無 『なんかとはなんだてめぇ!お前ほんと骨のありがたさを解ってねぇよ!     いいか!?骨は大事なんだぞ!?骨ってのはなぁ!!』 レオ 「ブラスト」 ドゴォオオオオオオン!!!!! 南無 『キャーーッ!!』 ブラスト一閃。 おかげで目ェ覚めました。 南無 『ああもう!つまり俺とこの死神は敵対関係にあるから!     悠介とルナっち連れて逃げろっつーとんのじゃあ!オーケー!?日本語解る!?』 浅美 「ばっ───馬鹿にしないでください!日本語くらい解ります!!」 南無 『そぉおおおじゃねぇっ!!とっとと逃げろって言ってんだボケ!!     巻き込まれて死にてぇのかこのハゲ!!』 浅美 「誰がハゲですか!」 南無 『ターーッ!!いいから逃げろ!一言多いのは仕様なんだよ!』 ボゴキャア!! 南無 『つぶつぶーーーっ!!!!』 浅っちに気を取られてた俺の頬骨をレオの拳が襲う! 南無 『うきっ!うきっ!!うきぃいーーーっ!!!』 そして久々に顎の骨が砕けた! 俺は石畳へと倒れて豪快にのた打ち回った!! 浅美 「あ……」 そんな俺の様子を見ても、浅っちは逃げようとしない。 南無 『さあ、行くんだ桃!     これでもまだ解らねえならてめえに男塾一号生筆頭としての資格はねえぜ!』 浅美 「で、でも……───え?男塾?」 南無 『忘れねえでくれ、俺の名は虎丸龍次。     今度生まれ変わってくる時も桜花咲く男塾の校庭で会おうぜ……!』 浅美 「あ、あの……?」 南無 『それでいい……さあ行け!もう決して後ろを振り向くんじゃねえ!!』 浅美 「………」 南無 『必ず勝てよ!驚邏第四凶殺ーーッ!!!ワッハハハーーーッ!!!!』 ゴワシャ! 南無 『ほねぃ!!』 顔面が潰された。 だめだ……顔が壊れて力が出ない……。 フフフッ、ド、ドジこいちまったぜ……。 だがよ……へへ、浅っちは一応逃げ出してくれたみてぇだぜ……? あとはこいつが追わないように捕まえておくだけだぜ……。 南無 (これが最後でいい……俺の鎌よ……力を貸してくれ……) 守りたいものがある。 あの日───骨となった時に捨てちまった思いを今、もう一度だけ───……この俺に! 南無 (……“冥府誘う深淵の災い(ハデスディザスター)”) ───鎌が出現する。 そんな状況を見て、俺は『気前がいいんだな』って笑ってしまった。 さあ───いこう。 未来を守るためへの消滅へ─── 南無 (一時でいい……どうせ最後だ……───!     くれてやる!この俺の命を!!発動せよ───“黄昏を抱く創造の世界(ラグナロク)”!!) その時───景色が揺れた。 それとともに俺の体は崩れてゆく。 『コピーできない鎌』をコピーした代償だ。 だが、微量の範囲に黄昏が創造され、その形を作る。 そこに創造の世界がある……それだけで十分だ。 そう思って俺は笑った。 風が吹くその創造の世界で。 風に飛ばされたタンポポの種が空に舞う中で─── 南無 (我創造せん───創造の世界よ、我を模れ!) 俺は意識を弾けさせる。 願え、望め、強く強く! 俺が俺であるために───!! レオ 「なに……!?な、なにっ!?貴様───まさか貴様は!?」 黄昏が模る。 『俺』の姿を。 永い時の中を孤独と戦ったひとりの少年へと。 レオ 「馬鹿なっ!!あの死神が貴様───!?究極の死神と謳われたあの骨死神が!?」 御託はいらない。 ただ願おう。 どうか、この創造が未来を作る光になるように─── 彰利 「受け取れ死神野郎!!これが───俺が生きてきた歴史の重みだ!!     俺の中にある全ての破壊のイメージよ!!創造の光を以って舞い降りろ!!」 借りを返すだけだ。 それが夜華さんを守ることに繋がるなら……俺は喜んで死を受け入れてやる!! 消えろ───運命破壊の死神!! レオ 「───!?」 イメージが弾ける。 その刹那、上空にバケモノみたいな巨大な光が出現し、この場に落ちてくる。 レオ 「な……なんだあの光は!馬鹿な!瀕死の貴様が放てるものとは思えん!!」 彰利 「づ……!ぐっ……はっ……!!」 頭が割れたかと思うほどの頭痛。 それに次いで眩暈と吐き気に襲われる。 見れば、人間を模っていた手が一瞬骨に見え、俺は『ああ……終わりかな』って思った。 彰利 「一緒に……ケシズミになってもらうぜ……」 レオ 「馬鹿な!死ぬ気か貴様!」 彰利 「……ああ。まったく……悪くないよ。お前と消えるのは……」 俺を殺したレオと同じことを言い返し、俺は笑ってやった。 その途端にレオの顔に焦りが浮かび─── レオ 「は、離せっ!!消滅したいのか!!」 彰利 「解ってねぇなぁ……。俺だって死ぬのは怖いよ……。     けどな……それでも……───守りたいものがあるんだ……。     だから死ぬことだって我慢できる……。お前も……俺なら解るだろ……。     『俺達』はずっとそうやって死んできたんだから───……」 レオ 「ほざけぇっ!!死ぬのは貴様だけだ!離せ!離せぇっ!!」 レオが暴れる。 だけど俺は残りカスみたいな力でそれを押さえ、霞む意識をなんとか繋ぎとめていた。 彰利 「グ───、……」 やがてその体が骨に戻る頃、俺は『死神』としての力でレオをさらに押さえつけた。 南無 『守りたい未来がある……。行かせるわけにはいかないんだ……』 けれど意識が薄れるのは変わらない。 レオ 「小癪!!月聖力、この骨を溶かしてしまえ!!」 放たれた月聖力に当てられ、手が溶ける───が! 南無 『……覚悟は決まった。我が存在意義、夜華さんのためにこそあり……。     ここで退くわけには───いかないんだぁああーーーーっ!!!!) ググッ……メキッ!! レオの首が軋む。 首を折ってでも先には進ませない。 お前は……俺と一緒に死ぬんだよ!! レオ 「グッ!?ば、かな……!溶けゆく手でこの力……!?バケモノか貴様……!」 南無 『くっ……ぅう───ぁああああああああっ!!!!』 グッ……ビキッ!! 南無 『───……ッ』 レオ 「ゲハッ!?き、貴様ぁあ……!は、離せ!離せえぇっ!!!」 ……切れた。 俺の中で、なにかが……。 決定的ななにかが……切れた。 繋ぎとめようとしても届かない。 真っ暗な景色の中、ただ……夜華さんの影へと手を伸ばした。 南無 (……しあわ、せに……夜華さん……) 伸ばした手は溶け、音もなく消え去る。 見えていた幻影も消え、次第に俺の体が崩れ去ってゆくのを感じた。 南無 (───俺達の想いは、今日まで……多くの友人に支えられ。     過去、現在、そしてさまざまな未来の先で、     友人達それぞれの想いを込めて……実を結んでゆく……。     俺達の蒔いた種はやがて木となり林となり、多くの人々を潤す森となる。     自然を育み慈しむ心さえあれば、自然は数多くのことを教えてくれるだろう。     だから……今一度思い出して欲しい。     約束されていない未来を歩くという不安な世界で、     ただひとつ希望を持つことのできたこの未来を。     この瞬間があるからこそ……今、こんなにも俺が未来を強く願えることを。     全ての物語は冒険から始まり……その冒険が物語を築いてゆくということを……) ……ははっ、こんな時になに考えてんのかな、俺……。 ふふ……もし生まれ変わったら……アフリカの大自然でのんびりと生きてみたいな……。 でも───ああ、くそ……。 また……未来を見れなかった……なぁ……。 レオ 「離せ……!ここで俺の首を折ってなにになる……!     死神はその程度では死なんぞ……!離せ……!」 ───…… レオ 「……っ!?な、なに……!?こいつ、既にこと切れて……───」 ───……ズズズ……!! レオ 「ハッ!?骨のことなどを考えている余裕はない!逃げねば───っ!?     な、なんだ……!?体が動かん……!馬鹿な……馬鹿な!     これは月聖力の固定聖域───う……うぉおおおおおおおおおっ!!!!!」 ───光が舞い降りた。 小さな黄昏の中を……その約束の世界を破壊するように。 小金色に揺れる草木がケシズミになり、残された骨死神の黒いマントをも消す。 やがてその場の全てが破壊される頃。 轟音を聞きつけてやってきた者たちがその場で見たものは…… 破壊し尽くされた境内と、 どこから辿り着いたのか解らない小さなタンポポの種だけだった。 Next Menu back