───暖かさを人の輪と唱えること───
───……サテ、各所への連絡実行開始。 俺は社長室の受話器を手に、かつての連絡網に目を通しながら電話をかけた。 ……ちなみに。 佐古田などの元同級生達の連絡網は二年の頃のもの。 風間などの悲しき同級生達の連絡網は卒業前のものである。 もちろん風間は既に独立してアパート暮らししてるから、電話番号は違うわけだが。 凍弥 「あ、風間か?霧波川だけど。元気してるかー?」 声  『あ……はぁ、お久しぶりです……』 凍弥 「………」 受話器からとんでもない絶望のオーラが溢れた。 ……なにごと? 凍弥 「あー……どした?元気ないみたいだけど」 声  『仕事……クビにされまして……』 凍弥 「ぐあ……」 のっけからいきなり破滅的な……。 声  『美雪もまだまだ小さいのに……俺、これからどうしたらいいか……。     職安行ってみても高校退学者が望めるものって少なくて……』 凍弥 「………」 ある意味で……好都合? でも人のクビを喜ぶのはよくないこと。 これは救いだ。 決してクビになってくれてありがとうとかゆうものじゃない。 凍弥 「なぁ風間。丁度仕事してくれる人を探してたんだが───やる気、あるか?」 声  『え───本当っすか!?本当に!?』 凍弥 「ど、怒鳴るなよ……耳が痛い」 声  『あ、す、すんません……でも、本当に?』 凍弥 「ああ。こっちでいろいろあってさ。     住む場所が固定されちまうけど、皆槻も美雪ちゃんも一緒に住めるぞ」 声  『ほんとっすか!?仕事も住む場所も提供してくれるのに、     またセンパイと一緒に居られるんすか!?』 凍弥 「……あのなぁ。何度も言ったけど俺はもう先輩じゃないだろうが。     その先輩ってのやめろ」 声  『いえ!センパイは俺の心のセンパイっすから!』 凍弥 「……はぁ」 そんな大層な人間、やってないんだけどね。 凍弥 「それで、よかったら他にもやる気のある知り合いに声かけてくれないか?     出来る限りでいいから。……あ、やる気優先な?やっぱり嫌だってのが一番困る。     って言っても、仕事が性に合わないってのは仕方ないからいいけど」 声  『あ、そっか。どういう仕事なんすか?俺はなんだってやりますけど』 凍弥 「主に掃除、整理、食事作り、などなど。OK?」 声  『ラジャーです!あ、静香も仕事していいかって訊いてきてるんすけど』 凍弥 「子供の面倒がなんとかなるならOK。こっちにベビーシッターなんて居ないから」 声  『はい!では風間雄輝、失礼します!!』 がちゃんっ!! 凍弥 「っ〜〜……」 耳痛ぇ……あの体育会系の元気はそうそう消えるもんじゃないか……。 まったく、勢いよく受話器叩きつけやがって……。 浩介 「どうだったのだ?」 凍弥 「ん?あー、風間はOK。知り合い連中にも声かけてくれるってさ。     さてと、あとは佐古田あたりにでも」 浩介 「……ある意味で争いが尽きなくなりそうだな」 凍弥 「仕方ないだろ、あれで顔が利くんだから」 浩介 「それでカンパニーが極道に染まるのだけは勘弁だぞ同志」 凍弥 「そりゃ御免だな、確かに」 クックッと笑いながら、俺は番号を打ち込んでいった。 しばらくして回線が繋がり、いかにもといったドスの利いた声が聞こえる。 声  『オウ牙王じゃあ!なんじゃあウラァ!!あぁ!?オウ!?』 凍弥 「霧波川ですけど。好恵さんは居ますかね」 声  『───あぁっ!こりゃあどうも!お嬢の友達さんでしたか!     お嬢!お嬢ーーーッ!!電話でっせーーーっ!!』 声  『お嬢ってゆうのやめなさいって言ってるでしょ!?もう……誰よ!』 凍弥 「よっ佐古田、俺だ俺」 声  『……あたしに【俺】なんて知り合いは居ないけど?』 凍弥 「お約束のボケはいい。で、今お前なにしてる?」 声  『なにって……なにがよ』 凍弥 「仕事だよ仕事。なにかやってるのか?」 声  『───はぁ。ねぇ、ちょっと愚痴っていい?やる度にクビにされてるのよ……。     ほら、お父さんって妙に過保護じゃない?』 凍弥 「初耳だが」 声  『それでさ、わたしが働くところがどういうところか下見しに行ってね?     少しでも厳しい場所だと脅し始めてクビ……。     こっそり働いても下っ端連中に見つかってクビ……。どうしろってのよ……』 凍弥 「……なかなか悲惨な青春送ってたんだな」 声  『悪かったわね……。で?霧波川こそどうなのよ。仕事してるの?』 凍弥 「ああ。大会社で働いてるぞ」 声  『……今度寝込み襲って喉掻っ切っていい?』 凍弥 「殺人罪で捕まりたいなら構わんぞ。もっとも、ただでは殺されんがな」 声  『───……ぷふっ、あははははは!!     くふふふ……か、変わってなさそうで安心したわ……』 凍弥 「お前もな。で、話は本題に入るわけだが」 声  『ああ、そういえばなんなの?事務所に電話までかけてくるなんて。     よっぽど勇気がなきゃ出来ないことよ?』 凍弥 「ああ。佐古田、お前仕事してみる気ない?」 声  『……なにそれ。新手の冗談?』 凍弥 「そうか。そう受け取るならもう用は全く完全無欠に絶無だ。     邪魔したな、立派に生きろ」 がちゃんっ。 凍弥 「ふう……」 浩介 「どうしたのだ?」 凍弥 「どうもこうもあるか。あいついきなり」 プルルルルルルル…… 凍弥 「……電話?」 浩介 「珍しいな。本社からか?」 凍弥 「そうかも。お前が出るか?」 浩介 「いや、本社からの対応は同志の方が慣れてるだろう?頼む」 凍弥 「お前なぁ……普通跡取りがやるもんだろうが、こういうことは……」 仕方なく受話器を取って耳に当てる。 凍弥 「もしもし。日本支部レイヴナスカンパニーです」 声  『ブッハァーーーッ!!?』 凍弥 「うわっ!?」 な、なんだ……!? 出た途端に吹き出しやがって…… 声  『む、ムナミー!?あんたそんな大会社で働いてたの!?』 凍弥 「って……佐古田!?お前……どうやってこっちの番号……」 声  『逆探知』 凍弥 「……………」 アノ……佐古田サン? 自宅に逆探知できる機材があるのって……どうかと思うんですよ、ぼく。 声  『しかも電話を任されるくらいの職務って……かなり上?』 凍弥 「まあ……カンパニーの家族として認められてるくらいの状態」 声  『な、ななな……じゃあ本当に正式な勧誘なの!?安定は約束されてるのね!?』 凍弥 「暴れたり人を陥れない限りは大丈夫だ」 声  『……あんた人をなんだと思ってるわけ?』 凍弥 「超獣……じゃあ立派すぎだな。野人あたりで」 声  『…………OK。その挑発、乗ってあげるわ。今そっち行くから待ってなさい!!』 凍弥 「組連中は連れてくるなよ〜」 声  『解ってるわよ!薙ぎ払ってでも行くわ!』 がちゃんっ!! 凍弥 「くあっ!」 ……また思いっきり切りやがった……。 俺の知り合い連中は俺に恨みでも……───あるんだろうなぁ、風間は別として。 凍弥 「佐古田もOKだそうだ」 浩介 「む、そうか。随分と簡単にいくものだな」 凍弥 「そうだなぁ。おかしなくらいに丁度仕事が無いって言って……」 こういうタイミングだけはいいのかな、俺。 ……あんまり嬉しくねぇ……なんて考えてる時だった。 ───ビジュンッ!! 南無 『ほねほねほね〜〜〜、ただいまほね!』 サクラ「ムーー!!!ムーーー!!!」 ルナ 「ふぐぐぅっ!!むぐぅううーーーーっ!!!!」 南無 『ええい黙るほね!!黙らんと入れ歯カミカミほねよ!?』 サクラ「んうっ!?んーーー!んーー!!」 ルナ 「むぐっ!!うぐぐーーっ!!」 …………突如、目の前にサクラとルナさんを担いだ骨が……現れた。 凍弥 「ってルナさんっ!?いったい今まで何処に───」 ルナ 「ふぐう!ふぐぐーー!!!」 浩介 「……ガムテープを剥がさねば喋れぬのではないか?」 骨を目の前にして、てんで気にもしていなさそうな浩介が言う。 俺は身を乗り出して、サクラとルナさんの口に貼られたガムテープをベリャアと剥がした。 ルナ 「いたぁっ!?」 サクラ「きゃあぅっ!!」 うわ……かなりの粘着力だった所為で、剥がした部分が赤くなってる……。 ルナ 「うぅう……!!ちょっと!なんで地界になんか連れてくるのよ!!     悠介が居ない世界になんか、居たってしょうがないじゃない!!」 南無 『ほねほねほね……俺はそんな貴様が見たくて和哉を預けたのではないほね!!』 サクラ「わ、わたしにはヨイチを育てるってゆう立派な使命が!!」 南無 『なにが立派ほねか!!     料理の腕と知識をあっさりと抜かれた者の言う言葉じゃねぇほね!     片骨が痛いほね!!あ、片腹が痛いじゃないのは、腹なんかねぇからほね』 ルナ 「そんなことはいいから降ろしなさいよ!!     わたしは和哉と一緒に居られればいいの!!」 サクラ「わたしだってヨイチが立派な大人になるまでは!!」 南無 『やかましいほね!!』 ゴチンッ!! ルナ&サクラ『いたぁっ!?』 ロッククラッシュ……ふたりの頭を向かい合わせて勢いよくぶつけた。 しかもかなりの速度……うわぁ〜、ありゃ痛いぞ……。 南無 『よいほね!?今から他のやつらも連れてくるほね!!     ここ動くんじゃねぇぞほね!?     動いたら───和哉とヨイチの命は無ェと思えほね!!』 ルナ 「なっ───人質なんて卑怯よ!?」 サクラ「そうですよ!!     大体わたしにはあなたの言うことを聞く理由なんて無いんですから!」 ルナ 「わたしだってそうよ!!和哉を返して!!返しなさい!!」 南無 『ほねほねほね……。     貴様らがここで働くというのなら……考えてやらんでもないほね!!』 ルナ 「嫌よ!」 即答だった。 かつてないほどに。 南無 『即答!?……ならば和哉の魂は俺のものになるほねね。     ほねほねほね、可哀相な和哉……ほね』 ルナ 「───!く、くぅう……!!お願い!わたしならどうなってもいいから!     和哉にだけは危害を加えないで!!お願い!」 南無 『ならば働げーーっ!!』 ルナ 「それは嫌!」 南無 『オイオイ、交換条件ノ意味、ワカッテル?』 ルナ 「わたしを殴るなりなんなりしたらいいわ!そうしたら冥界に帰らせてもらう!     わたしは───わたしはもう!     こんな悲しい思い出しかない場所には居たくないの!」 南無 『ノーノーユージロー、コレハフェアナ取リ引キヨ』 ルナ 「誰がユージローよ!!」 南無 『条件が呑めないってぇんなら和哉を骨にするほね!それでもいいほね!?』 ルナ 「───!くっ……」 いや、なんつーか…… 自分の姿を脅迫の条件に使って悲しくないのか?あの骨。 南無 『解ってるほねね?骨死神は交換条件に絶対の存在。     そしてこのナムは……やると言ったらやる骨ほね』 ルナ 「……本当に、和哉には手を出さないのね……?」 南無 『手を出さないどころか、きっちりとガードした状態でここに連れてきてやるほね』 ルナ 「ここで働きながら暮らせば……それでいいのね?」 南無 『うむほね』 ルナ 「───……解ったわ」 ……ルナさんが頷いた。 驚いたことに、あのルナさんがレイヴナスカンパニーで働くことに……。 南無 『さて天界の娘よ。貴様はどうするほね?     言う必要はないとは思うほねが、断ればヨイチの命は無ェほねよ?     この死神の鎌で一撃ほね。ほねほねほね!!』 サクラ「……条件があります。ヨイチも……ここに連れてきてください」 南無 『……あの。きさんらが最初っから頷いてりゃあ、     この骨は元々小僧どもを連れてくるつもりだったほねよ……?』 うん。 確かに一番最初に言ってた。 ルナ 「ウソつかないでよ!人に罪をなすりつける気!?」 南無 『ほねっ!?な、なんだとてめぇ!』 サクラ「最低ですね……。子供を人質にとった上に、ウソまでつくなんて……」 南無 『ほねねっ!?て、てめぇらよってたかって……!!     覚えてやがれほね!!てめぇらの母ちゃん百貫デヴーーーッ!!』 ビジュンッ!! ……骨が去った。 浩介 「……なんだったのだ?あの奇妙な特殊メイクをした骨は」 凍弥 「───へ?」 特殊メイクって……浩介? もしかしてずっと、あの骨がメイクだと思ってた……とか? ……どういうメイクをすれば骨だけの人間が完成するんだよ……。 ───………………。 南無 『ほねほねほねほねほね!!大漁大漁!ほね!!』 ───で。 あれからしばらくして集められた人は……みんながみんな、変わってるような人達だった。 もちろん見たこともない人も居るわけだが─── 天界からアルベルトさん、レイルさん、レインさん、サクラ、ヨイチ。 地界から風間、皆槻、美雪ちゃん、佐古田、佐野崎。 空界からリヴァイア、篠瀬、聖ちゃん。 冥界からルナさん、和哉。 そして何故か居る独眼鉄。 浩介 「……あの独眼鉄はなんなんだ?鬱陶しい」 凍弥 「さっきからず〜〜っとバク転してるな……」 骨が各世界からいろいろな人を連れてくる中、 何故かその中に『魁!男塾』の独眼鉄がひとり混ざっていた。 しかも現れた途端にバク転を始める始末……ほんと鬱陶しい。 南無 『あれは骨死神の固有能力のひとつ、固有時空【独眼鉄時空】に居る独眼鉄ほね』 凍弥 「ど、独眼鉄時空……?」 南無 『うむほね。独眼鉄が腐るほど居る時空ほね。     数々の固有時空を操れる骨死神の中でも、     特殊な時空を扱えるのは俺と出ュ浮だけほね』 凍弥 「……あんまり聞きたくないけど、その出ュ浮が作る時空に出てくるのは?」 南無 『爆拳ほね』 浩介 「爆拳……幽遊白書に出てきたあの……?」 南無 『そうほね。ボディブロゥ一発で【はひょーはひょー】な爆拳ほね。     そいつが絶えることなく増殖する時空ほね』 浩介 「どちらも絶対に行きたくない時空だな」 凍弥 「まったくだ」 あんな鬱陶しいやつらが腐るほど居る場所になんか、 誰が好き好んで行くっていうんだ……ゴキィッ!! 独眼鉄「ぐぎゃあああーーーっ!!!!」 レイル「ど、独眼鉄ーーーっ!!」 佐野崎「ど、独眼鉄の背中がお、折られたーーっ!!」 ……何気に詳しいのな、佐野崎。 ただのイジメっ子じゃなかったということか。 というか独眼鉄は自滅で背骨を折ってたから『折られた』わけじゃない。 独眼鉄「フフフッ、ド、ドジこいちまったぜ……」 凍弥 「じゃ、それぞれの役割を決めていこうか」 独眼鉄「お、俺にとって男塾は……」 浩介 「そうだな」 独眼鉄「いわば親も同然……」 佐古田「ラジャッス」 独眼鉄「こんなゴンダクレの俺に……」 風間 「どんな仕事なんすか?」 聖  「あの……独眼鉄さんの遺言くらい聞いてあげましょうよ……」 全員 『無視』 聖  「うわ……独眼鉄さんまで……」 自分のことなのに無視を希望している独眼鉄……なにがしたいんだこいつ。 リヴァ「凍弥、セキュリティ方面はわたしひとりで十分だ。     それはわたしに任せてくれ」 凍弥 「そっか。じゃあリヴァイアは警備班、と」 夜華 「待て鮠鷹。わたしにも警備をやらせろ。こんな女よりわたしの方が役立つぞ」 凍弥 「へ?し、篠瀬?」 リヴァ「……へぇ?空界で散々と差を見せてやったつもりだったがなぁ……」 夜華 「フン、魔導錬金術とやらが無ければ何も出来ない者が何をほざく」 リヴァ「刀が無ければ何も出来ない者に言われたくはないなぁ」 夜華 「貴様……!!」 リヴァ「なんだその目は……!やるか……!?」 うわ……なんなんだ? このふたり、どうしてこんなに仲悪いんだよ……。 聖  「気にしないで先に進んでください。空界じゃあいつものことでしたから」 凍弥 「そ、そうなのか?苦労するね、聖ちゃん」 聖  「……あんな喧嘩、ナムさんの所為で降りかかる面倒に比べたら、     遙かに可愛いものすぎますよ……」 凍弥 「………」 想像がつかないけど、あの殺気立った睨み合いが可愛いものらしい。 ……信じられん。 凍弥 「じゃ、えっと……」 アル 「空調と掃除は俺達に任せておけ」 レイル「エッグと清掃法術があれば苦労なんて無いからな」 ルナ 「荷物運びならわたしがやる。荷物の重さなんて死神には関係ないからね」 和哉 「俺も手伝うよ、かーさん」 ルナ 「ん〜〜♪和哉はいい子ね〜〜♪」 南無 『チッ、親ド馬鹿が……』 シュカッ─── 南無 『ほね?』 ゴトッ……。 南無 『ほねぇええええーーーっ!!?』 ルナさんの鎌が軌跡を描いた───と思ったら、骨の頭骨が落下。 地界人『ひえっ!?ひぇえぇやぁああああああああああっ!!!!!???』 ───結果、その場に居た地界人全員が絶叫した。 聖  「……ね?」 凍弥 「ああ……なんか解ってきたよ……」 俺と聖ちゃんは賑やかを通り越して騒がしくなってしまった社長室を眺めて、 長い長い溜め息を吐いた。 ───…………。 凍弥 「えーと……とんだハプニングがあったけど……」 風間 「ハ、ハプニングで済ませるっすか!?この状況!!」 皆槻 「首がゴトッて!ゴトッてぇええ!!!」 佐野崎「に、ににに人間じゃないなんて……!どうなってんのよ!!」 浩介 「どどど同志!我は本物の骨だなどとは聞いておらなんだぞ!?」 言ってないしねぇ。 佐古田「アチキ達、こんなところで働くッス……?」 凍弥 「辞めるなら止めんぞ」 佐古田「……誰も辞めるなんて言ってないッス」 諦めにも似た声と顔で返事をする佐古田。 今のお前の気持ちなら、少しは解る気がするよ……。 凍弥 「じゃ、骨のことは無視して先に進めよう。     えーと、厨房やりたいって人、居るかな」 ヨイチ「俺がやる」 凍弥 「え……でもまだ子供だろ?大丈夫か?」 ヨイチ「人の心配するのは自分の置かれてる状況に余裕が出来てからしろ、馬鹿者」 凍弥 「………」 なんだろ。 なんだかよく解らんけど、この子供の雰囲気がすっげぇ懐かしい。 初めて会うっていうのに、不思議なもんだ。 凍弥 「でもひとりは無謀だろ。他には?」 和哉 「ああ、俺がやる。任せてくれ」 凍弥 「……こりゃまたちっこいのが」 和哉 「外見で人を判断するな。言っておくけど料理には自信があるぞ」 凍弥 「へー……じゃ、勝負でもしてみるか?」 和哉 「寝言は寝て言え。お前なんかが相手になるか」 凍弥 「───……いや、なんつ−か……」 この口癖、まさしく……。 さすがルナさんが可愛がってるだけのことはある。 聖  「子供が料理班かぁ……あ、じゃあわたしも手伝います」 凍弥 「……別に子供だからって加わる必要ないんだぞ?」 聖  「あ。わたしの料理の腕を疑ってますね?     わたしの料理はパパ直伝だから、誰にも負けない自信がありますよ?」 凍弥 「……そ、そうか?……で、参考までにそのパパってのは……って、彰衛門か」 聖  「はい。納得出来ました?」 凍弥 「そりゃもう凄く……って、キミって彰衛門が死んでから産まれた子だろ?     直伝って……どうやって?」 聖  「企業秘密です」 凍弥 「企業なのか……」 よく解らん。 ああいや、ここで悩んでても仕方ない、次いこう次……。 凍弥 「じゃ、じゃあ次は……」 風間 「あー……俺達はどうしましょう」 凍弥 「そだな……大部分は決まってるし……」 浩介 「ふむ……」 菜苗 「では〜、わたしと浩之さんのゲームの相手をしてもらいましょう〜♪」 全員 『おわぁっ!!?』 な、菜苗さん……アータいつの間に……!? アル 「馬鹿な……気配どころか物音ひとつ聞こえなかった……!」 レイル「何者……!?」 サクラ「それっぽい演出して遊ばないでください……。     あの、凍弥さん?地界人メンバーの人たちに提案があるんですけど」 凍弥 「提案?」 はい、と軽く手を挙げるサクラ。 サクラ「あのですね?実はさっき、これからのことを骨さんと話し合ったんですよ。     わたしの家は養鶏牧場をしてるんです。     でもわたしやアルベルトさまやレイルさまが地界に来たら、     餌をあげる人が居ません。だから───」 凍弥 「だからその牧場に居る生き物をここに持ってきて、風間達にやらせよう、と?」 サクラ「はい。どうでしょうか」 凍弥 「ふむ……どうする?」 風間 「養鶏ってゆうと……ニワトリっすよね?     いいんすか?ニワトリの世話だけでお金もらっちゃって……」 皆槻 「うん……なんだか悪い気が……」 アル 「あー、その考えは捨てなさい。明日の金よりも今日の命だ」 風間 「え?」 レイル「そうそう。その考えは甘い。やってみれば、     『金が貰えなけりゃあやってられない』ってことが嫌になるほど解るぞ」 佐野崎「え……大変なんですか?」 レイン「一言で言えば───命懸け、といったところでしょうか」 佐古田「い、命ッス……ッ!?」 ……なんだかシャレにならん話になってきたような……。 風間 「い、いえ!やるっす!!小さな命を守っていくんす!     自分の命をかけないで、いったい何が守れるっつぅんすか!!」 レイル「おっ!?お前なかなか根性あるなぁ!よっし任せた!安心して行ってこい!!」 風間 「あ、恐縮っす!」 レイル「ところでキミ、身体のサイズいくつくらい?棺桶作りなら俺に任せておけ」 風間 「やる前から死ぬって決め付けないでくださいよ!!」 レイル「軽いジョークだ」 いや、相当に重いと思いますぞ……? あ、だけど……もしニワトリを風間達に任せるにしても、ほんとに大丈夫なんかな。 話を聞いてる限りじゃあ穏やかなニワトリの印象は一切無いし…… 浩介 「ちと質問、よいかな?」 アル 「うん?なんだ?」 浩介 「命の保障はされるのか?」 アル 「いきなり物騒だな……」 浩介 「当然の質問だと思うがな」 確かに。 あそこまで言われて、命の保障はないとか言われたらちょっと……否、かなり困る。 命が危険にさらされるような仕事を誰かに頼むのは心苦しすぎるし。 凍弥 「ああ、それは俺も気になってた。どうなんだろ」 アル 「救護班……ってゆうのも妙だが、傷の治療の面倒はレインにやってもらう。     天界は術系統がバランスで保たれているからな。     広く浅く、といった感じだ。破壊も再生も思いのまま。万能と考えてくれていい」 南無 『ウィルスは治せない万能様だけどなぁほね』 カペキャア! 南無 『ほねぇい!!』 ナックルが閃いた。 小気味の良い音とともに、再び宙に舞う骨の頭部……って、この骨って脆すぎ……。 和哉 「距離良し角度良し!秘技───オーバーヘッドキィーーック!!」 ババッ───ベゴシャア!!! 南無 『ほねぇええええーーーーっ!!!!』 おお!あれは大空翼くんのフィニッシュホールド!……て、プロレスじゃないって。 しっかしなんとも早い反射速度。 飛んでいった骨にあそこまで行動を合わせて蹴るとは……あの子供、出来る! 佐古田「なに全てを見抜いた男の顔してるッス」 凍弥 「そういうお前こそ、表情でなにもかも読み取る気でいる女の顔するなよ」 佐古田「意味不明ッス。そんな女、見たことも聞いたこともないッスね」 凍弥 「同感だ」 とまあそうゆわけで気を取り直して、と。 凍弥 「何人かは掛け持ちになるみたいだけど、それでいいのか?」 和哉 「構わない。大人に負けるようなヤワな体力してないし」 ヨイチ「料理には自信がある。へーきへーき」 聖  「はい。わたしも救護班に回ろうと思いますけど、     料理の方も任せてもらって構いません。ナムさんよりも役に立ってみせますよ♪」 南無 『そのあてつけがましい口ぶり……     ま〜だ置いてったの恨んでるほねか……しつけぇええええヤツほねねぇ〜〜』 聖  「ほっといてよ。ほんとにショックだったんだから」 南無 『だからって説明した途端に、     この骨を溶かすなんてどうかしてるって思わなかったん?』 聖  「当然の酬いだもん」 南無 『溶かされることが酬いって……トホホイ』 どこから溢れてるのかまったく解らん涙を流してる骨はこの際無視しよう。 そもそも付き合ってると疲れそうだ。 ───さて。 凍弥 「じゃあ纏めてみようか。まず警備はリヴァイアと篠瀬。     監視は主にリヴァイアにやってもらって、     排除は葉香さんとともに篠瀬にやってもらいたい」 リヴァ「解った」 夜華 「前線は望むところだ」 凍弥 「次に救護……仕事中でケガしたりとかそういう時の処理はレインさんと聖ちゃん」 レイン「ええ、任せてもらいましょう」 聖  「頑張ります」 凍弥 「厨房は和哉とヨイチと聖ちゃんに任せていいんだね?」 和哉 「子供をあやすような言い方はやめろ」 ヨイチ「『いいんだね』じゃなくて『いいんだな』で十分だ。子供扱いするな、馬鹿者」 凍弥 「は、はは……はぁ」 聖  「が、頑張ってくださいね」 凍弥 「あんがと……で、空調がエッグ……エッグってなに?」 南無 『これのことほね』 凍弥 「うおっと」 横からズズイと差し出される卵型の妙な機械。 ついついと突付いてみても、大きな卵にしか見えない。 アル 「どうして死神がそれを持ってるのかは知らんが……まあ、それだ」 レイル「ドサクサで盗んだのか?」 南無 『失礼な……これは歴史修正時に弦月彰利が天大神に貰ったものほねぞ』 アル 「知らん」 レイル「初耳だ」 南無 『……ま、歴史が違うしね……。     とにかく!ほね!このエッグを屋敷の部分部分に設置すれば、     この屋敷はもはやステキ空間となるほね!!心も身体もリフレッシュ!ほね!     その上で聖にこの敷地内を月聖力の聖域で囲ってもらえば、     空調漏れもなくいつでもリフレッシュ!ほね!というわけでスイッチオン!』 カチッ!───スフィーーーー……ム。 聖  「あ……確かに空気が綺麗になったような……」 南無 『そうほねだろう?こんなこともあろうかと、     弦月彰利の隠れ家からかっぱらっておいた甲斐があったほね』 夜華 「……おい。いい加減に他人顔するのはやめないか。お前は」 ババッ!ゴキュリ!! 夜華 「うきゅっ!?」 南無 『狼髏館回頭───ゲェエーーーーッ!!!!!またやっちまったぁーーーっ!!』 いつかのように狼髏館回頭閃骨殺(ろうろうかんかいとうせんこつさつ)を実行する骨……。 そして無残に折れる、篠瀬の首の骨……。 うおお、怖いなこりゃ…… 南無 『ご、GO!聖!』 聖  「ああもう!手間を増やさないでって何千回言わせれば気が済むの!?」 南無 『千では足りんほね』 聖  「無慈悲なことを普通に言わないでよ!」 篠瀬の首に月生力の波動が流されていく中、 俺を含めた複数の人たちは見なかったフリをして話を進めることにした。 凍弥 「え、えーと……掃除がアルベルトさんとレイルさん」 アル 「ああ」 レイル「アルひとりでも十分だろうけどな」 凍弥 「荷物運びがルナさんと和哉で、     運ばれた荷物の整理をメイさんとともにルナさんにやってもらいます」 ルナ 「んー……言っておくけど、整頓とかって苦手よ?」 凍弥 「そこで役立つのがサポートメカのタマである。     というわけで、ルナさんにはサポートとしてタマを付けます」 ルナ 「タマって?」 凍弥 「猫。随時指示してくれるから整理も楽だと思うよ」 ルナ 「ふーん……」 訊かれると思った『猫のくせに喋るの?』という言葉は来なかった。 ……意外だ。 凍弥 「養鶏はサクラの指示のもと、風間、皆槻、佐古田、佐野崎にやってもらう」 風間 「い、命懸けなんすよね……」 皆槻 「わたし……やっぱり美雪の面倒見てた方がいいかな……」 凍弥 「まだ小さな子供だしな、その方がいいと思う。     その分、佐古田と佐野崎に頑張ってもらうから」 佐古田「てめぇ鬼ッス!?」 佐野崎「なんなのよそのやさしさの差は!!」 サクラ「だ、大丈夫ですよ。慣れてしまえばなんとかなりますから……」 佐古田「な、なんだ……そうッス?それを先に言うッス、まったく」 サクラ(……向かう時の覚悟がヤケクソに変わるだけですけどね……) 佐野崎「なに?なんか言った?」 サクラ「いえなにも」 一瞬、サクラが黒い笑みを浮かべたような……ハハ、気の所為……だよな? では気を取り直して……って、俺───今日だけで何回気を取り直すんだろうなぁ。 なんだか心配になってきたよ……。 凍弥 「遊戯……娯楽かな。それはみんながみんな参加して構いません。     この社長室の隣のエレベーターに乗って地下に行けば、     そこに集中娯楽室があるから」 レイル「……集中……」 アル 「娯楽室……?」 凍弥 「はぁ、まあ……遊ぶことしか出来ない場所、といいますか」 佐古田「興味が尽きないッスね。相手も用意されてるッス?」 菜苗 「はい〜、僭越ながらこの南城菜苗がお相手させていただきます〜」 佐野崎「まだ居たんだ……でも、こんなポケポケした人が相手?馬鹿にしてない?」 凍弥 「あー、その考えは捨てなさい」 浩介 「そうだぞ佐野崎。     そのお方こそ我がレイヴナスカンパニー始まって以来、無敗の王者……     南城菜苗さんにあらせられるぞ!!」 佐古田「あんたらが弱すぎただけじゃねぇッス?」 凍弥 「5万戦以上戦っても未だ無敗の王者だが?     しかも対戦格闘ゲームでは大体がパーフェクト」 佐古田「───……」 ゴクリという音を聞いた。 佐古田が……あの佐古田が恐れてる。 浩介 「そういうことだ。貴様では勝てん」 佐古田「じょ、上等ッス……今度、いつか、気が向いたら相手してやるッス……」 凍弥 「とまあ逃げ腰風味の佐古田は置いといて。     事務の仕事は俺と志摩兄弟とラチェットさんとオチットさんでやる。     これはいつもと変わらないな」 浩介 「うむ」 佐野崎「えー?なんか一番楽そうじゃない?」 ───ム。 凍弥   「……お前、死ぬか?」 佐野崎  「え?な、なななによいきなり物騒ね……」 浩介   「貴様はあの書類の量や電話の量を知らぬからそんなことが言えるのだ……。       ひとりでやってみろ、5分もせずに泣けてくる……否。泣けるぞ……」 佐野崎  「…………本当、みたいね……」 凍弥&浩介『当たり前だ!出来ることなら代わって欲しいくらいだわ!!』 何処に行ってるのか解らん浩之の分まで、俺と浩介は高らかに叫んだ。 ほんと辛いんす、カンパニーの事務って。 荷物が届けばそれの確認と在庫の確認、 足りなければまた発注作業と在庫点検と不足報告書の提出と連絡。 使用人がドジを起こせばそれの報告書と修繕。 その修繕ってのも出費削減のために俺や志摩兄弟がやってる。 外国のカフェインさんにも定期連絡しなきゃいけないし、 使用人達の意見書にも目を通さなきゃいけないし、一日中座りっぱなしで腰も痛いし…… 徹夜や睡眠時間微量なんてこと、ざらにある。 それを『楽』と言われたのだ……怒らないヤツは聖人君子だ。 凍弥 「……まあ、いいや。とにかくこんなところでどうデショ」 全員 『私は一向に構わんッッッ!!!』 凍弥 「……どうしてみんなして烈海王風に返事するんだよ……」 ああもう、ほんとに大丈夫なのか、この人選……。 凍弥 「じゃあ、今日のところはひとまず解散ということで……。     各自、メイさんの案内で部屋を用意するからそこで寝泊りしてください……」 全員 『御意』 凍弥 「………」 もしかして俺、からかわれてる? ○○○「待ったれや」 凍弥 「───へ?」 レイル「な、なにーーーっ!!?」 佐野崎「お、お前はーーーっ!!!」 独眼鉄「ここは先輩の顔立ててもらうぜ」 レイル「ど、独眼鉄ーーーっ!!」 凍弥 「……お前さ、さっき背骨折ってなかったっけ?」 独眼鉄「へッ、口の減らねえ可愛気のねえガキだ。     てめぇみてぇなひねたガキにこの独眼鉄さまがキツイお仕置きをしてやるぜ。     ───フンッ!!」 バッバッバッバッ……ドガシャアアアアアン!!! 独眼鉄「ぐぎゃあああーーーっ!!!!」 凍弥 「おわぁあああああっ!!!棚に纏めておいた重要書類がぁーーーっ!!!!」 浩介 「な、なにぃいいいいいいっ!!!!?」 お、おわわわわ……!!く、苦労して完成させた書類が……!! 今まさに、独眼鉄の無意味なバク転の所為で……! 独眼鉄の汗と血に塗れて使い物にならなく……!! 独眼鉄「フフフッ、ド、ドジ」 ベゴシャア!!! 独眼鉄「こぶほぁっ!!」 凍弥 「てめぇえええええーーーっ!!!!!     死ぬ覚悟出来てんだろなぁあああああっ!!!!」 浩介 「貴様だけは死んでも許さねぇ!!     地獄で後悔しやがれクソジャリがぁあああああああっ!!!!!」 独眼鉄「ヒィ〜〜〜〜ッ!!!!」 ドカベキャゴシャメシャベキゴキボキッゴキンッ!! 独眼鉄「ぐぎゃあああーーーーっ!!!!」 ドゴベキゴキャベキャガンガンガン!! 菜苗 「……未来人類さんの助けを呼ぶ声を上げても〜……     誰も助けにいきませんでしたね〜……。     どうして独眼鉄さんが未来人類さんの声を真似たのかは解りませんが〜……」 風間 「キレた人たちに構うのって、相当勇気が要ると思うんすよ、俺……」 皆槻 「そうだよね……」 ぐしゃっ!べきゃっ!ごしゃっ!! 独眼鉄「ちょちょっとまてーーーっ!!お、俺は独眼鉄!     き、貴様ごときに負けてたまるかーーーーーーーっ!!」 ゴシャベキゴキベキ!! 独眼鉄「ヒ、ヒイ!た、助けて……!!うわああーーーっ!!ぎゃああーーーっ!!     ヒ、ヒイ!し、死にたくねえーーーっ!!」 菜苗 「あら〜、本当の叫びに変わってしまいましたね〜」 風間 「……俺達も部屋の案内してもらいましょうか。もうみんな出て行っちゃってるし」 皆槻 「そうだね。おいで、美雪」 美雪 「うん」 佐古田「はぁ〜あ、賑やかにはなりそうだけど前途多難ッスねぇ」 佐野崎「同感……」 ガンゴシャボゴドゴベゴシャボゴシャミゴシャア!! 独眼鉄「ぐぎゃあああーーーーっ!!!!」 ……その夜。 いつまでも続く独眼鉄の絶叫に眠りを妨げられた皆様は社長室へと舞い戻り、 全員が全員、独眼鉄ボコボコ祭りに参加を果たした。 やがて独眼鉄が完全に沈黙する頃、 ようやく皆様はほどよい疲労感の中で眠りにつくことができたのだった……。 Next Menu back