───はるかぜのうた───
───時間の流れってのは(せわ)しない。 のんびりしたい時ほどのんびりさせてくれず、 まったくこの世界はどうしてこうなんだって溜め息ばかりが、吐かれては消えてゆく。 リヴァ    「侵入者反応……いつものヤツだ」 夜華     「またか……」 以下略    「今日こそはレプリキュートヒューマンの秘密を───!」 葉香     「くどいな……」 ○○○    「まったれや」 レイル    「な、なにーーーっ!?」 佐野崎    「お、お前はーーーっ!!」 独眼鉄    「ここは先輩の顔たててもらうぜ」 レイル&佐野崎『ど、独眼鉄ーーーっ!!』 葉香     「っ……はぁっ……!!吹き飛べぇええーーっ!!!」 独眼鉄    「ぐぎゃあーーーーっ!!!」 以下略    「ひえっ!?ちょっ───こっち飛んで来ない───         ひにゃああああああああーーーっ!!!」 そういう時間に揺られながら、ふと気がつくとみんな笑っていて。 そんな時節を気兼ねなく歩いたり走ったり出来るのは……うん、悪くないって思える。 菜苗 「またわたしの勝ちですね〜」 レイル「ひゃ、百戦零勝百敗……!?」 アル 「フッ……誰が来ようと三分で決着だ」 レイル「人が負ける度に言うなよ!!」 佐野崎「まいったわ……この人強すぎ……」 アル 「んじゃ、そろそろ俺とレイルは掃除にでも」 レイル「あ、あと一戦!あと一戦してからな!?」 アル 「……お前、そう言って50試合連続パーフェクト負けしてるんだろうが……。     いーから、行くぞ」 ○○○「まったれや」 アル 「な、なにーーーっ!?」 レイル「お、お前はーーーっ!!」 独眼鉄「ここは先輩の顔たててもらうぜ」 レイル「独眼───ってしつけぇよお前!!」 独眼鉄「許せねえ。自分の子分にまで手をかける血も涙もねえあのひねたガキに、     この独眼鉄さまがキツイお仕置きをしてやるぜ」 菜苗 「あの〜……?わたしはべつに子分さんを手になんかかけてませんが〜……?」 独眼鉄「ヘッ、口の減らねぇ可愛気のねえガキだぜ。フンッ!!」 レイル「……で、やっぱバク転なわけね」 アル 「ブラスト、撃っていいか?」 レイル「ブラスターでいけ。アルティメットだ」 アル 「OK」 雨の日も風の日も、みんなでいろいろなことをした。 仕事が早く終われば騒いだり、怒られたり。 まだまだ子供だなって思える自分がなんだか恥ずかしくもあり、嬉しくもあった。 独眼鉄「フフフッ、ド、ドジこいちまったぜ……」 レイン「またあなたですか……。あのですね、バク転は控えるようにと何度言えば……」 独眼鉄「お、俺にとって男塾はいわば親も同然……     親を馬鹿にされて下を向いてるぐらいなら、俺はいつでも男をやめてやるぜ……」 聖  「聞いてませんね……相変わらず」 独眼鉄「あ、あとを、た、たのんだ……」 レイン「はぁ……。聖さん、そこの湿布を取ってください」 聖  「あ、はい」 ○○○「まったれや」 レイン「な、なにーーーっ!?」 聖  「お、お前はーーーっ!!」 独眼鉄「ここは先輩の顔たててもらうぜ」 レイン「ど、独眼───って、なにを言わせるのですか!!     だいたいあなたは今までそこのベッドで寝ていた筈では───!!」 独眼鉄「ヘッ、口の減らねぇ可愛気のねえガキだぜ」 聖  「……アンリミテッドストリーム、撃っていいですか?」 レイン「……いいと思いますよ。というかお願いします」 聖  「はーい♪───最大出力ぅうーーーっ!!!!」 見上げれば質素な空。 いつか見上げた空はもっと蒼くなかっただろうか、 なんてことを思いながら……日々をその空の下で過ごしてゆく。 天鶏   「コェエエエエエエエッ!!!!」 風間   「うわひゃあああああああっ!!!?」 皆槻   「きゃああああっ!!!」 サクラ  「あぁっ!?卵取ろうとしましたね!?あれほどダメって言ったのに!!」 風間   「ち、ちがっ……道具が卵の上に落ちそうだったから───」 佐古田  「だからカミソリパスしたッス!!」 佐野崎  「そしたらコパキャアって割れて!!」 サクラ  「天鶏は卵に触れる者は例外なく襲い掛かるって言ったじゃないですか!!」 風間   「咄嗟にそんなこと思い出せるわけないっしょおおーーーっ!!」 天鶏×24『コェエエエエエエエエエエッ!!!!!』 全員   『わひゃあああああああああっ!!!!!』 ○○○  「まったれや」 佐古田  「な、なにーーーっ!?」 佐野崎  「お、お前はーーーっ!!」 独眼鉄  「ここは先輩の顔」 天鶏×56『コエェエエエエエエエエエエエエッ!!!!!』 独眼鉄  「ぐぎゃあーーーっ!!!」 皆槻   「ああっ!わたしたちを追ってた天鶏さんが独眼鉄さんに向かって!!」 風間   「しかも今まで我関せずだった天鶏まで……」 サクラ  「……このまま独眼鉄さんにトドメさしてしまってもいいですか?」 全員   『いい。てゆうか手伝う』 喧騒はいつも身近にある。 そんな生活を続ける中で、その喧騒の渦中に混ざっていられる時間が楽しかった。 聖  「ごはんですよ〜っ」 ヨイチ「ちなみに某海苔食品ではない」 和哉 「お前さ、何処でそういう知識拾ってくるんだ?」 ヨイチ「さぁなぁ」 ルナ 「あぁ和哉!ちょっと来て!この猫、融通が利かないの!手伝って!」 タマ 「融通が利かないとは心外である。     我輩はタマであるが故、貴殿の頭の上に乗って指示しているというのに。     理解力の乏しさを我輩に押し付けるとは何事であるか」 ルナ 「あなた重いのよ!!頭の上に乗っかられてちゃ思うように動けないでしょ!?」 タマ 「だがしかし、死神であるが故に重力など関係ないと言ったのは貴殿であり」 メイ 「ええ、確かにルナさまはそう仰られました。ですから早急にお戻りください」 ルナ 「ねっ!?解るでしょ!?融通が利かないんだってば!手伝って和哉!」 和哉 「やれやれ……じゃ、料理運ぶの任せていいか?」 ヨイチ「任せておけ」 聖  「だいじょぶじょぶ〜♪」 和哉 「サンキュ。じゃ……てゆうか、あの骨はどうしたんだ?」 聖  「同じ場所に留まるのは好きじゃないから空界に戻るって」 和哉 「そっか……じゃ、俺行くから」 ○○○「まったれや」 和哉 「じゃあなー」 聖  「またねー」 ○○○「ま、まったれや!」 ヨイチ「がんばれよー」 ○○○「………」 ああもっとも、書類は増えたのか減ったのか微妙なところで。 だけど、減った書類と増えた書類の数は解りやすい。 意見書は無くなり、代わりに被害届けが多数。 生傷が絶えない生活を送り続けている。 ……もちろん、笑顔で。 凍弥 「違う!それはそうじゃなくて───ああもう!あんたじゃ話にならない!     そっちの社長出してくれ!───もしもし!?かぁっ!切りやがった!     人の話をまともに聞かずに金儲けのことしか考えねぇヤツに誰が協力するか!     この会社との契約は無し!一切の援助を断絶!OK!?」 浩介 「構わぬ!───同志!書類の判を押し終えたぞ!チェックも完璧だ!」 凍弥 「ああっ!オチットさん、よろしく!」 チット「はいはい、ふふふ、とうとう旦那さまの速度をお超えになりましたね」 浩之 「おのれ親父……いったいひとりでどれほどの速度を……!?」 凍弥 「それだけ立派な父親だってことだろ!?少しは胸張れ!」 浩介 「甘いな───胸を張るのはヤツを超越した時!つまり!我らのみだ!」 浩之 「当然だブラザー!」 シルフ「コーヒーをお持ちしました」 聖  「お茶請け……じゃないけど、クッキーも焼いてきたよ」 浩介 「ほほう、これはこれは……」 浩之 「同志、今日の分はこれで終わりだ。休憩にしよう」 凍弥 「ああ。っと、すまん、俺ちょっと───」 浩介 「む?───ああ、そうだな。気がつかずにすまん」 浩之 「そうだぞブラザー。貴様は気が利かなすぎる」 浩介 「なんだとブラザー貴様この!」 浩之 「やるかブラザー貴様この!」 ○○○「まったれや」 志摩 『───おお!いいところに来た!!』 独眼鉄「ここはせ───」 志摩 『死ねぇええーーーっ!!!』 独眼鉄「ぐぎゃああーーーっ!!」 凍弥 「じゃ、行ってくる」 聖  「はい。メイさんももう行ってると思います。わたしもすぐに向かいますから」 凍弥 「そか。ありがと」 ……でも。 そんな笑顔の中で、俺だけは心の底から笑えてなかったのかもしれない。 ───今日、椛に陣痛がきた。 ただそれだけを聞いて、俺は───喜ぶべきかどうかを悩んでいたんだ─── ───……。 自室のドアを静かに開け、中の様子を伺いながら入る。 凍弥 「あ……メイさん」 メイ 「凍弥さまでしたか。どうぞこちらへ」 凍弥 「はい……」 メイさんに促されるまま、布団に横になっている椛の傍に座る。 凍弥 「椛……」 椛  「………」 椛は俺の顔を見てにこりと笑った。 ……とても、弱々しく。 体はもう随分痩せこけてしまっていて、 あの日───初めて会った時の椛の面影は、あまりにも薄れすぎてしまっていた。 そんな椛に誰もが言った。 『子供を産むのは危険だ』と。 だっていうのに……椛は産むと言って聞かなかった。 俺が笑ってられなかった理由は、そんなところにある。 産んで欲しい。 けど、そうしたら椛の体が危ない。 ……そんな板ばさみのような状況で、俺は苦しんでいた。 ───コン、コン。 ドアがノックされる。 俺はそれに返事をして、ドアをノックした人物───聖ちゃんに入室してもらった。 凍弥 「聖ちゃん……」 聖  「……正直、不安でいっぱいです。だから最初に言っておきます。     この取り上げは……とても危険なものです。     体力の消耗が激しい上に、椛さんにはそれだけの体力が残されていません。     いくらわたしが月生力を流しても、カバーしきれないと思います。     ……これが最後です。子供を産みたいですか?それとも……」 凍弥 「……椛」 俺は椛の顔を伺った。 弱りきって、もう言葉も満足に喋れない椛を。 椛  「………」 その目は───揺ぎ無い決心を秘めた目だった。 初めて会った日の……あの暗い絶望を秘めた目からは想像も出来ないくらいに。 だから……だから俺は…… 凍弥 「……頼む。産ませてやってくれ……俺達の子を」 ……自然にそう呟いていた。 その言葉に聖ちゃんの表情が険しくなったけど…… 聖ちゃんは俺の目をじっと見つめ、俺はその目から自分の目を逸らすことなく見つめた。 聖  「それで……いいんですね?凍弥さん」 凍弥 「ああ……頼む」 聖  「………」 小さな溜め息。 その後───聖ちゃんは椛に月生力と月聖力を流し始めた。 聖  「メイさん、始めてください」 メイ 「……はい」 ……赤子の取り上げが始まる。 俺は緊張のためか、それとも先にある不安のためか─── 震えたまま止まらない体を強く押さえつけていた。 凍弥 (たぶん……どっちもだ) 不安と緊張、そして恐怖。 いつか感じた『椛が居なくなってしまう』という恐怖が、今になって現実味を帯びてきた。 その不安が事実となるのか───それとも取り越し苦労で終わってくれるのか。 願いたいのは当然ひとつ。 だけど───もし…… 聖  「椛さん、頑張ってくださいっ……!」 椛  「っ……!!は、───!!」 もし…… メイ 「基本体力を大幅に下回っています……これ以上は───」 聖  「っ───椛さんっ!」 椛  「……!」 もし───子供が無事に産まれても。 椛の中の呪いが消えない限り、椛は弱ったままで─── 聖  「しっかりしてください……!きっと、きっと大丈夫ですから!     ───メイさん!まだですか!?」 メイ 「だめです……まだ頭も出ていません……」 聖  「そんな───このままじゃ椛さんが……」 落ち着け……!悪い方に考えるな……! 幸せになるんだ……! たとえ……たとえ───…… メイ 「───!出てきました!頑張ってください、椛さま!」 聖  「やったっ!椛さん、頑張って!がん……───!?」 …………───息が詰まった。 嫌な気配がその場に立ち込める。 その気配は─── 聖  「そんな……まさか!」 その気配は───いままさに産まれようとしている赤子から流れ出ていた。 つまり…… 聖  「う、そ……じゃあ、呪われてたのは椛さんなんかじゃなくて……」 つまり─── 椛  「───ぶ……げほっ!か、かはっ!」 聖  「───!?も、椛さんっ!?しっかり!」 ───吐き出される血液。 血に染まる布団。 そして……身体を黒い何かに覆われて、息苦しそうに動かない赤子。 凍弥 (───……あの時……) あの時。 そうだ……喜兵衛に操られた佐古田が椛を切り伏せていた時…… 傷があったのは何処だった……? 呪いを送られた場所は……? それは、もしかしたら…… メイ 「赤子の生命反応微弱……!これでは……」 聖  「そんな……そんなのってないよ!お願い月生力!癒して!い……癒してぇっ!!」 弱ってゆく母と子。 そして……それを見つめながら何も出来ない……情けない父親。 俺は───…… ───……奇跡の魔法を使う ───……っ……俺はっ……! 凍弥 「椛っ……俺は───」 椛  「………」 決心を固めて、俺は椛に奇跡の魔法を使おうとした。 椛と子供を助けてくれ、と。 けどその前に……俺の手を握る椛の手があった。 椛  「………」 椛はただ、ゆっくりと首を横に振った。 力ない笑顔で。 ……訳が解らない。 どうしてほしいのか言ってほしい。 なんでもする。 なんでもするから。 だから……そんな……! そんな……さよならを言うような目をしないでくれ……!! 椛  「……ありがとう、ございました……凍弥さん……」 凍弥 「椛っ!?」 椛は笑った。 ろくに声も出ないだろうに、枯れたような声を振り絞って。 そして───その体が光に包まれてゆく。 凍弥 「これは……───!?椛!やめろっ!椛っ!!」 これは……この光は奇跡の魔法! 波動で解る……自分にとって身近なものだ! 解らない方がおかしい! 椛  「……どうか……お幸せ、に……」 凍弥 「待て……やめろ……!俺がっ……俺が使うから!!     俺は嫌だぞ!お前が消えてなくなるなんてっ……!!」 椛  「……だめ、ですよ……。     わたしはもう……二回も置いていかれてるん……ですから。     今度は……凍弥さんが……」 凍弥 「回数なんて関係ないっ!ようやくここまで来れたんじゃないか!!     それなのに───お前が居なくなったらなんにもならないだろ!?     どうして消えるんだよ!!」 椛  「……この子の……ためですよ……。     わたしの奇跡の魔法で……この子の呪いを……」 光が溢れ出すように輝く。 聖もメイさんもあまりの眩しさに目を覆って、なにも出来ないでいた。 そして……俺も。 椛  「ねぇ……凍弥さん。この子の名前……教えてもらえ……ますか……」 凍弥 「椛……椛ぃ……」 握っていた手が消える。 続いて、腕が。 椛  「お願い、します……。わたしが……わたしで居られる内……に……」 凍弥 「っ……───こ……紅花(このか)……!     『くれない』の紅に、お花の花……で……」 椛  「……紅花、ちゃん……───ですか。     ああ…………。……いい……名前です…………───」 消える……消えてしまう。 その光の全てが、産まれたばかりの赤子に流れてゆき……─── ……やがて、光の全てが無くなる頃。 赤子を残して消えてしまった母親を思い……俺は大声で涙した。 Next Menu back