───秋間(ときま)───
───結局。 水穂は『べつにいいです』とか言って、南瓜グッズを見せてくれた。 厳密に言えばダンボールを開けて見せてくれたわけだ。 その中にはセレスの嗅覚通り、南瓜グッズが梱包されていた。 水穂が興味深々にその南瓜をダンボールから出した。 水穂 「あう……結構重いです」 水穂が力を込めると、それに従ってその全貌を見せる南瓜。 ……見るに、もう内側は刳り抜いてあるようだ。 目、口という穴を持つ南瓜は、 なにかで見たジャック・オー・ランタンの風貌そのものだった。 水穂 「オカルト好きだったボクも、ナマのジャックを見るのは初めてです……」 水穂の感嘆の言葉に『オカルトなのだろうか』と疑問を持ちつつ、 その意見には一応同意した。 水穂 「ちょっと被ってみますね」 ツインテールである髪を梳いて、ぐいっと持ち上げた南瓜を装着する。 そうすると南瓜の内側は影で遮られ、中の顔などは見えなかった。 へぇ、よく出来てるんだな。 悠介 「ほら水穂、黒マント。服の上からでいいから着てみろ」 水穂 「あ、そうですね」 水穂が南瓜をぐらぐらと揺らしながら黒マントを装備した。 一口に『マント』といってもしっかりと前でとめていて、 どちらかと言うと、ひらひらしたコートのようなものだ。 水穂 「わぁ、これ結構暖かいです」 語調で喜んでいるのはなんとなく解った。 イヤな確認だが、表情が見えないのだから仕方がない。 水穂 「似合いますか?お兄さん」 ───南瓜を外せば、多分……。 そう言いそうになる自分が愛しくて仕方ない。 むしろ言ったところで別に(いさか)いは無いだろうから言ってしまえばよかった。 ていうか言おう。 悠介 「南瓜装着してなければその服も似合うだろうけど」 水穂 「いえいえ、そういうことじゃないですよぅ。     ほら、ちゃんとジャックランタンぽいですか?って」 ああ、そういうことか。 悠介 「そうだな、中々だと思うぞ」 小学生くらいの体格ならもっと似合っただろうなぁという言葉は飲み込んだ。 まあ実際、水穂は他の同年代の女子よりは背が低い方だ。 どちらかと考えるまでもなく、無理は感じない。 だが、体躯の線が細いジャックも何か妙なモノだ。 きゅぽんっ。 水穂 「はふぅ……この南瓜、結構暑いです……」 南瓜を外す水穂。 というか外す時にいい音が鳴った。 悠介 「……そういえば……」 水穂 「はう?」 はう?じゃないって。 悠介 「水穂がツインテールじゃないのって、なんか初めて見た気がするんだが」 水穂 「あ、そうかもしれないですね。     お兄さん眠るの早いからボクがお風呂上がったあたりじゃもう眠ってるし、     朝の頃にはボクも髪整えてきますし」 悠介 「そうだな」 水穂 「それで……えーと、どうですか?新鮮ですか?」 悠介 「まあそうだな。なかなか新鮮だ」 当然のような気もするが。 水穂 「………」 悠介 「うん?どうした?」 見れば、水穂はなにやらクスクスと微笑っている。 水穂 「それじゃあ、週に何日かはこの髪型でいますね」 悠介 「え?あ、いや……そういう意味で言ったわけじゃなくてだな……」 俺は弁解しようとしたが、我が家のオナゴ達はこうなると人の話など聞かんのだ。 水穂 「あ、話は戻りますけど……お兄さん」 それでもって、切り替えが異様に早い。 悠介 「ど、どうした?」 水穂 「このカボチャ、やっぱりボクには無理そうです」 悠介 「うん?何かあったのか?」 水穂 「結構重いんですよ。これを被って町内回ったら倒れちゃいますよぅ……」 悠介 「………」 水穂は昔、病弱だったらしい。 その所為か、他の人と比べて持久力などの平均が低い。 確かに毎日学校に行くたびに石段で鍛えられているかもしれないが、 その過程で水穂が倒れたことは何回かあった。 水穂は自分が倒れて危険にさらされるより、俺達に迷惑かけるのが嫌らしい。 そうなると、それまでの彼女とは違って頑固になってしまう。 ……だから、こうなったらもう俺が何を言っても無駄だろう。 悠介 「そうか。それじゃあ誰かに権利譲るか?」 水穂 「はいっ」 水穂は察してくれたのが嬉しかったのか、弾けるような笑顔で返事をした。 そして、俺に南瓜を渡してくる。 悠介 「……水穂?」 水穂 「はい、譲ります」 悠介 「ま、待て。俺は見たかっただけであって、被りたいわけじゃ……」 水穂 「解ってます解ってます♪記念に写真でもどうですか?」 悠介 「……記念か」 ……うん。 いいかもしれない。 悠介 「よし、頼む」 水穂 「はい。あ、でも……カメラとかってありますかね」 悠介 「大丈夫だ。そこに居るバカが持ってる。持ってなくても出すだろう」 水穂 「え?え?」 彰利 「フッ……バレていたんじゃあ仕方ねぇ……。弦月彰利ィ!推ッ参ッ!!」 ズビシィッ! 決めポーズをとりながら押し入れから這い出てくる彰利。 せっかくの決めポーズも怪奇特集っぽい。 彰利 「で、カメラね?持っとるよ、うん。持っとる」 例のごとくカメラをズォオと出す彰利。 彰利 「それじゃあ脱いでくれ悠介」 悠介 「脱ぐかっ!」 彰利 「なにぃ、脱げ!」 悠介 「俺はそんなもん撮りたくてお前を呼んだんじゃない!」 彰利 「チィイ……流れに任せれば脱いでくれると思ったのに」 悠介 「アホゥ……」 彰利 「まあいいや、さあダーリン。早くランタソを装着するんだ!早くッ!」 悠介 「いきなり急かすな!ていうかランタソって言うな!」 彰利 「だめね!断る!」 水穂 「お兄さん、相手にしてると日が暮れますよ」 悠介 「解ってはいるんだが……」 水穂 「それならもう着替えちゃってください」 彰利 「そうだそうだ着替えろー!カメラなら俺に任せろ!     その艶めかしい姿をバッチリ撮って投稿してやらー!」 悠介 「脱がんと言っている!投稿もするな!」 彰利 「えー?」 悠介 「まったく……」 どうしてこういうことに関しては一生懸命なんだコイツは。 まったくもって呆れる。 俺はそんな彰利を横目に、水穂が差し出したジャックマントを受け取って身に着けた。 ……おお、ほんとに暖かい。 彰利 「脱げー!」 悠介 「脱がんっ!」 彰利 「ぶーぶー!金返せー!」 ドゴォッ! 彰利 「ぱぺいっ!?」 悠介 「少し眠ってろお前は……!」 彰利が畳みに沈んだ隙に、南瓜を被った。 悠介 「おお、確かに少し重いな」 水穂 「ですよね」 悠介 「うーん、てっきり少しは匂うと思ったんだがな」 水穂 「だったら奨めませんよ」 悠介 「だな」 彰利 「ハーイ!準備ハヨロシオマスネーィェ?」 悠介 「……起きてたのか」 彰利 「フフフ、俺という人間を侮るな。さ、いくぞー?」 悠介 「よしこい」 彰利 「準備オッケー!?じゃあ激しくニヤケろ!1+1!」 悠介 「……恥ずかしいぞ、それは」 彰利 「馬鹿野郎てめぇこらダーリン!こういうのはノリだろうがダーリン!」 悠介 「わ、わかったわかった。わかったからキレるな」 彰利 「んもう!ダーリンがツッコミ好きなのは身に染みて解ってるけどね?     そんなこっちゃあ嫌われるわよ?よーしいくぞ!1+1!」 悠介 「待て」 彰利 「なんじゃいコラダーリン!また鼻折るようなことしやがってダーリン!」 悠介 「どうせ顔見えないんだからその合図は意味ないだろ」 彰利 「気分の問題YO!いいから合わせるのよダーリン!     さっさとアタイから逃れたいんでしょ!?だったらそうするのよダーリン!」 悠介 「自分で言うなよ……」 彰利 「ホレ今度こそ!1+1!」 悠介 「に、2……」 彰利 「馬鹿野郎ダーリン!『1+1』っつったら『41』だろうが!」 悠介 「馬鹿野郎!そんな懐かしいナゾナゾもどきなんていまさらやるんじゃねぇ!     答えた俺が馬鹿みてぇじゃねぇか!」 彰利 「いやん、お顔真っ赤」 悠介 「ジャーックヘッドバットォッ!」 バガァアッ!! 彰利 「もぎゃあっ!」 悠介 「ジャーックナックル!」 ドボォッ! 彰利 「はぐぅっ……!」 悠介 「ジャーックエルボーッ!」 ゴスゥッ! 彰利 「いぎゃあっ!」 悠介 「ジャーックサミング!」 トチュッ! 彰利 「ギャア!」 悠介 「ジャーックぶちかましぃいいっ!!」 ドカァアアアアアンッ!! 彰利 「ギャーッ!」 悠介 「ジャーック人間ロケットォオオッ!!」 ガゴシャァアアアッ!! 彰利 「ごっ!」 ……どしゃあ。 弦月彰利は力尽きた! 晦悠介は経験値6を手に入れた! が、そのままドブ川に捨てた! 悠介 「ふう……なんという破壊力だ、ジャックランタン」 頭突きだけで武器になる。 でもなぁ。 きゅぽんっ。 悠介 「で……だ。やっぱり俺にも合わないよ、コレ」 水穂 「……の割には、随分大暴れしたみたいですけど」 悠介 「それはこの馬鹿が馬鹿だったからだ」 水穂 「言葉は謎ですけど説得力だけはありますね」 悠介 「だろ?」 南瓜装備を外した俺は、それを畳みの上に置いた。 水穂 「それじゃあボクはセレスさんとお話でもしてきますね」 悠介 「そうか?……初対面の時に比べれば、もう随分慣れたみたいだな」 水穂 「あ、あはは……お恥ずかしい限りですね。でも結構話が合ったりするんです」 悠介 「そかそか。いいことだ」 水穂 「はい。それでは失礼しまーす」 悠介 「ああ、それじゃあな」 水穂がペコリとお辞儀して部屋をあとにする。 ……ここが自分の部屋だってこと、忘れてるなあれは。 悠介 「さて……これをどうするか……。     捨てるわけにもいかないし、使わないわけにもいかないし……」 彰利 「じゃあアタイが頂くーっ!」 ガバッ! 悠介 「なっ!?」 彰利 「フフフ、とうとう手に入れたぞ、この伝説の武具を」 伝説でも武具でもないが。 彰利 「これさえ装着すりゃあ俺ってば最強!さあ!レッツドレッシングタイム!     パパレポパパパレポ・ドミミンパー!」 彰利が回転しながら光に包まれてゆく。 彰利 「フェイスフラァアアアッシュ!」 ギシャア! 悠介 「ぐあああっ!」 と思ったら、自分で光を放った。 ───やがて目が慣れてきた時。 彰利は既にジャックランタンになっていた。 彰利 「俺、今とっても輝いてる!」 両手を上げて喜んでいる。 言葉通りに輝いているのか、 南瓜に刻まれた目やギザギザっぽい口から光がギシャアと漏れていた。 うわぁ怖ェ。 彰利 「ぬおお、この装着してから溢れんばかりの力……!     これが……これがジャックの力なのか!?」 気のせいだ。 彰利 「みんな見てー!この美しい造形のアタイを見てー!」 彰利が歓喜乱舞しながら廊下へ飛び出しドカァアアアアアアン!! 声  「キャーッ!?」 ……飛び出した途端、炸裂音とともに彰利の悲鳴が轟いた。 何事かと廊下に駆け出ると、その先に姉さんが居た。 春菜 「あ、ゆ、悠介くん!いきなり南瓜が!顔から光出してる南瓜が!     いきなりだったからつい撃っちゃって……!」 ……弁解の余地も無いな。 あれは誰が見ても怖い。 誰でも撃つだろう。 訴えられても罪にもならん。 悠介 「………」 見下ろすと、南瓜がうつ伏せになりながら顔の穴から煙を出していた。 が、次の瞬間! 彰利 「フフフ、残念ながら今の攻撃は致命傷にはならなかった」 目から光を放ちながら、彼は起き上がった。 しかも南瓜の所為で声がくぐもってるため、姉さんは彰利だと気づいていない。 いや、気づいていて敢えて攻撃しているというものもアリか。 春菜 「アンリミテッドストリーム!」 ドチュゥウン! 彰利 「フフ……ぬるいわ!ジャーーック・口から爆裂魔光砲!」 コォァアアアアア───ドチュゥウウウウウウン!! 春菜 「ひえっ!?」 彰利……いや、ジャックが口から波動砲のようなものを放った。 それがアンリミテッドストリームとぶつかり合い、消滅した。 春菜 「そ、そんな……相殺された!?」 姉さんが驚いてる。 そりゃそうだろう。 春菜 「くぅっ!ホーミング・レイ!」 ヒィイイイイ───ガカァッ! 姉さんが構えたほうきから光が放たれ、それが幾つもの光となって彰利を襲う! 彰利 「無駄ぞ。今の俺は無敵。うぬに力の使い方を教えてやろう」 ジャックがホーミング・レイに向かって歩いてゆく。 そして自分に当たりそうになったその瞬───ドガァッ!ズガガガァアアアッ! 悠介 「───え?」 突然、ホーミング・レイが廊下を破壊した。 ……あれ? 当たりそうになって、それで…… 彰利 「フフフ、今や我が力はキングクリムゾンにも匹敵する。     小手調べに時間を2秒ほど吹ッ飛ばした」 ギャア! もうヤツは人間じゃねぇ! 彰利 「あーもう月空力万歳。これさえあればもう先輩殿など……!」 春菜 「ゆ、ゆゆ悠介くん!?なんなのこの南瓜!」 悠介 「………」 返事は出来なかった。 いや、したくなかった。 あまりに呆れた。 彰利 「さあ、どうしたのかね。もう終わりかね?」 悠介 「………」 ボゴッ! 彰利 「ギャア!」 悠介 「いつまで馬鹿やってる気だ。遊ぶのはそれくらいにしとけ」 彰利 「ぬう」 春菜 「悠介くん……?」 悠介 「ていうか姉さんも気づけよな……。どう考えたって彰利だろうが……」 きゅぽんっ。 彰利 「いやーん!いきなり脱がすなんて何考えてるのよダーリンの助平!」 春菜 「ブラスト」 彰利 「え?あ、ギャア!」 ボカァアン!! 春菜 「………」 悠介 「………」 彰利 「……ひどいや」 どしゃあ。 ……不意を突かれたのか。 彰利はまともに光弾をその身(ていうか顔面)に受け、そのまま倒れた。 悠介 「……これはどこかに仕舞おうか」 春菜 「……賛成。って、やっぱり南瓜グッズだったんだ」 悠介 「ああ、水穂は参加するのは無理そうだからって、俺にな。     だけど俺にもこういう行事は似合わん。そもそも見たかっただけなんだ。     これを着て歩くなんてとてもじゃないが無理だ。     そのうえ持て成しを望むなんて、それこそもってのほかだよ」 春菜 「うーん……やってみてもいいと思うんだけどなぁ、悠介くんの場合」 悠介 「大却下」 春菜 「むう……」 彰利 「彼女がダメと言い、彼もダメと言った。     そうなったら、俺がやるしかねぇだろう?」 悠介 「お前はもう寝てろ。起きるな」 彰利 「なにぃ!?そしたらダーリンが一生介護してくれるとでも言うのかねッ!?」 悠介 「誰がするか。アホかお前は」 彰利 「ギャアもう!なんかもうギャアよギャア!     ダーリンたらどんどん冷たくギスギスしていくんですもの!     そのくせ女にばっか甘い顔しちゃって!なんなのよ一体全体腐っても鯛!!     あんまり冷たいと無言電話と生爪同封の手紙贈りつけるわよ!?     そして爪を剥がした指先にそっとマニキュアつけて絶叫するわよ!?     ネイルアートなんぞ視界に留まる範疇に存在してねぇぜ!?     今の世は肉そのものを飾るミートアートぞ!?爪にオシャレなどぬるいわ!     ただしあまりの激痛に泣き叫び苦しみもがく人が続出で、     歴史に埋没するのも時間の問題だろうが」 悠介 「それ以前に流行らんだろ」 彰利 「普及したら俺が撲滅する。安心して俺の愛を受け取れ」 悠介 「話に脈絡を持て」 彰利 「まあまあまあ」 バッ! 悠介 「あ、こらっ!」 彰利 「そう目くじら立てんと。いいじゃない南瓜のひとつやふたつ」 悠介 「………」 すぽっ。 彰利 「ふう、なんていい着心地。これがレタスだったら完璧だったのに。     あ、でもバ・ソリー(ナメクジ)には気をつけようね?     前に飲食店でバ・ソリー(ナメクジ)が標準装備だったレタスが出てさ。     危うく食すところだったのよ。危ないったらないね。     これだからレタスの洗い方も知らん素人は」 悠介 「洗い方なんてあるのか」 彰利 「傷つけない程度にサッと水で洗う。どちらかというと冷水がいい。     ここで洗いすぎても仕方ないからさ、満遍なくサッと洗うのよ?」 悠介 「すまん、訊いておいてなんだが、もういい」 彰利 「えー?これからが感動超大作なところなのに」 悠介 「いらん」 彰利 「ぬう。しゃーない、レタスのレクチャーは今度、ふたりきりの時に」 悠介 「それも御免だ」 彰利 「どうしろってのダーリン!アタイを困らせて気を引きたいのは解るが、     それはあまりに会話断滅っぷりがありすぎるってものじゃないかね!?     アタイこと弦月彰利っていうかむしろジャックランタソでもいつしか涙が」 悠介 「いいから。衣装を返せ」 彰利 「それはだめだ。できない。俺の貞操なら譲ってもいいが、これだけは」 悠介 「いらんっ!命懸けでいらんっ!」 彰利 「ゲェーッ!?命懸けとまでいきますか!?」 悠介 「馬鹿言ってないで外せ。ハロウィンまでにはまだまだ時間があるんだから。     ここでお前が暴れて破壊でもされたら、     当選を夢見てたのにハズレた人が可哀相だろ?」 彰利 「な、なにぃ!?俺はどうなる!可哀相とは思わないのか!?」 悠介 「思わない。断言する」 彰利 「だ、だだだだ……ダーリンの馬鹿ーっ!」 彰利がダッ!と駆け出した。 内股で。 だが、無理な走り方をした所為か、足を滑らドゴォッ! 彰利 「ごっ!」 しこたま頭を打ったようだ。 南瓜に守られているとはいえ、首は無事には済まない。 もんどりを打っていた彼だったが、しばらくすると痙攣しつつ動かなくなった。 が、次の瞬間には再び目と口から光を放って起き上がった。 彰利 「ま゙!」 それはまるでどこかの機械的な風貌だった。 ……冗談だが。 彰利 「うう、ちょっと首をやっちまったみてぇだ……。     さすりたいんだが分厚い外郭に覆われて、手出しすることも出来ん」 悠介 「だったら外せ」 彰利 「キャア!グッドゥアイディーア!     それでは俺の本体のハンサム顔をお見せしようか」 また妙なことを言い放ちつつ、南瓜に手をかける彰利。 そして力を 彰利 「……あれ?」 …………。 彰利 「……ふんっ!」 ……手を南瓜にかけたまま、デンプシーロールにも似たウェービングをする彰利。 彰利 「ゲェーッ!?」 何故か地団太踏みながら暴れもがく彰利。 どうやら南瓜が外れなくなったらしい。 彰利 「………」 悠介 「………」 春菜 「………」 そして沈黙。 彰利 「……いやーん!!」 あれだけ騒いでた喜びもどこへやら。 彰利は必死に外そうと暴れ出した。 彰利 「うわぁヤバイじゃん!これじゃあお肌のケアも脂取り紙も使えないじゃない!     髪も洗えないじゃない!せっかく買ったモイスチャーミルクが無駄になるぜ!?     あれの賞味期限っていつまでだったっけ!?」 悠介 「……この際だ、永久的にそのままで居ろ。ていうか食うな」 彰利 「ええっ!?ミルクっていうくらいだから飲み物じゃなかったの!?」 悠介 「お前さっき自分で髪が洗えないとか言ってただろうが!」 彰利 「やぁねぇ、それはそれで別の話よ」 悠介 「そうなのか……?」 真面目に話をするだけ無駄だ。 そう悟った。 遅すぎたくらいだ。 馬鹿か俺は。 彰利 「ていうかもうギャア!取れない!珍しく真剣に語るけど取れない!     こういう時ってどうすりゃいいの!?知識を分けて年長者さん!」 春菜 「え?わ、わたし?」 彰利 「貴様じゃなくければ誰が居るか!この年長者!     さあ!アタイのためにおばあちゃんのごとく知恵袋を披露するがいい!」 春菜 「……ここ、怒っていいところだよね?」 悠介 「訊くまでもないだろ」 春菜 「だね」 彰利 「な、なにぃ!?はやまっちゃならねぇー!     いきなりホウキを構えるなんて武力を過信しすぎですぞ!?自重せい!」 春菜 「ブラスト」 ドチュンッ! 彰利 「イヤァアアア!!」 ドカァアアアアアアアアンッ! 彰利が煙に巻かれながら廊下を吹き飛んでいった。 が、身体を捻って着地をすると、煙を裂いて襲いかかってきた。 彰利 「なにしやがんじゃいコラァーッ!南瓜コワレたらどうする気じゃい!」 春菜 「大丈夫大丈夫、ちゃんと首から下を狙ったから」 彰利 「そういう問題じゃねィェーッ!!」 春菜 「じゃあどういう問題?」 彰利 「ふっ、俺が高校卒業出来るか否かの瀬戸際だ。     詳しく言えば俺の人生の問題ぞ?だが安心してくれ、悠介は俺が娶(めと)る」 春菜 「殴っていい?」 彰利 「な、何をおっしゃるか!何故いきなり先輩殿に殴られなきゃならんとね!」 春菜 「姉として、ホモさんに大事な弟はあげません」 彰利 「ハッ!これだからアタイとダーリンの愛を知らん愚姉は。     なんの事情も知らんと首を突っ込みたがるのは、     典型的なオバサマ根性が異常発達している証拠ザマスよ?」 春菜 「……殺していい?」 彰利 「ま、待て!図星突かれたからって早まっちゃならねぇ!     アタイとダーリンの愛を認めたくねぇからってヒス丸出しはよろしくな」 春菜 「ブラストォオオッ!」 彰利 「ギャア!?」 ドガァアアン!! 彰利 「グッファアアッ!!」 どがっ!ごしゃっ!ごろごろ……ばたっ。 吹き飛ばされた彰利が廊下を転がり、その先で仰向けに倒れた。 なんにせよ、頭がデカすぎて倒れたその姿も寝苦しそうだ。 彰利 「うう……寝苦しい……」 やっぱりだ。 彰利 「オチオチ寝ていることも出来んとは。神め、俺様に対してなんたる試練を」 ムクリと起きる彰利。 例の如く、目と口からは光が漏れていた。 彰利 「あの……そろそろ真剣にこれの外し方を考えてくれませんか?     このままじゃアタイ、安眠も叶わない夜なべ男になっちゃうよ」 悠介 「……珍しいな、お前が下手に出るなんて」 彰利 「それほど困ってるのYO。だからヘルプ」 春菜 「前言撤回してくれるなら協力するけど」 彰利 「だれがヒス女に頼むか。俺っちは愛しのダーリソに頼んだのYO!」 春菜 「アンリミテッドォオオ……ッ!」 彰利 「ギャア冗談です!もう最高!先輩殿最高!アタイが悪かった!」 春菜 「………」 じと目で彰利を睨む姉さんをよそに、彰利が俺に耳打ちをする。 彰利 「んもうダーリン……?なんであんな人を姉に迎えちゃったのよ……!     これじゃあダーリンの寝込みを襲うことも寝顔を見つめることも、     入浴を覗くことすらも心置きなく出来ないじゃないのさ」 悠介 「そういうことを人の耳元で告白するなよな……」 友人として、ちょっと考えさせられる瞬間だった。 どうしてこいつはこう堂々とこういうことを言えるんだろうか。 悠介 「それより、あんまり顔近づけるな。怖い」 彰利 「なにぃ!?美しいと謡い唱えろ!」 叫ぶと同時に目と口から光がギシャアと溢れる。 悠介 「怖いわ!」 彰利 「ぬぅう……仕方無い。みんな真面目に俺を助ける気が無いんだな。     彰利ショック、超ショック。ハルマゲドンショック。落ち込むぞ?くそう」 悠介 「光放たれながら言われても怖いだけだって」 彰利 「もういいわよダーリソの薄情者。     でも一筋縄ではいかないのが恋だからいいの。     最終的にアタイがあなたをオトせばいいんだから。ドラゴンスリーパーで」 悠介 「オトすの意味を履き違えるな馬鹿」 春菜 「……真面目に話してても疲れるだけだよ」 まったくだ。 悠介 「それじゃあ昼の用意でもしようか。あと小一時間で昼だし」 彰利 「あれ?そうなん?」 悠介 「なんとなくだが、そう思う」 彰利 「よっしゃあそんな時はアタイにお任せ!ダーリン、日時計だ!」 悠介 「やらん!」 彰利 「ぬう、ダーリンたらノリが悪い」 悠介 「騒ぐな。……そうだ、どうせなら手伝うか?」 彰利 「アタイ?」 悠介 「ああ。調理の腕だけは認めているから」 彰利 「フフフ、床の業にも自信があるぜ?」 悠介 「やっぱいらん。帰れ」 彰利 「冗談よ冗談!手伝うから冷たくしないで!」 言葉のノリで足にしがみつこうとする彰利の顔にヒザを決めると、俺は台所を目指した。 Next Menu back