───後夜(こうや)───
───。 彰利 「シラけたよぅダーリン」 競技が終わった後、彰利がそうぼやいた。 わざと負けた方がよかったかもしれんなぁ。 悠介 「悪い、適当に負けておけばよかったなぁ」 彰利 「それもそうかもしれんが、八百長なんてアタイにゃ無理よ」 悠介 「……だろうな」 ルナ 「むぅ、なにあれ。怒っていいとこだよね、悠介」 悠介 「いや、怒るところじゃない」 ルナ 「えぇ?なんでさ」 悠介 「家系の事情なんてそんなもんだろ」 ルナ 「むー」 彰利 「家系のことが絡むと結構つまらんなぁ。力自体は使いようで面白くなるんだが」 ルナ 「今日は気が合うじゃない、ホモっち」 彰利 「ふふふ、ツナっち、お手前こそ」 ルナ 「ルナだってば」 彰利 「お気にめさるな」 悠介 「まあ最後の最後でハズレクジ引いてイマイチ盛り上がらんかったけど、     一応我がクラスの圧勝ってことでいいんじゃないか?」 彰利 「俺は称号よりトロフィーが欲しい」 悠介 「そりゃ無理だ」 彰利 「まあいいか、それよりまたすぐに文化祭があるわけだし。     よっしゃあ、またメイド服に磨きをかけねば!」 悠介 「またやる気かお前は……」 彰利 「もちろんダーリンも手伝ってくれるんでしょ?」 悠介 「冗談じゃない」 彰利 「えー?」 セレス「あんな行事はもうたくさんですね。わたしとしては普通に見て回りたいです」 ルナ 「賛成」 若葉 「賛成です」 彰利 「そ、そんなー!こ、木葉ちゃん!?キミは……キミは頷いてくれるよね!?」 木葉 「一昨日来やがれです」 彰利 「裏モード!?」 水穂 「去年の文化祭は大変でしたよね……」 粉雪 「………」 会話に入れないのか、日余が俯く。 と思ったら彰利の手を掴む。 彰利 「おう?」 粉雪 「───」 そして目を閉じて─── 粉雪 「ん、そういうことか」 何かを納得したようだ。 彰利 「………」 粉雪 「………」 そしてなにやら話をしていたが、俺には聞き取れなかった。 彰利 「それじゃあ帰ろうか、マイホームへ」 彰利が歩き出す。 木葉 「ドントムーブです」 彰利 「え?」 若葉 「わたしと木葉は役柄、後始末が残ってるので帰れません」 彰利 「それって、待ってろって意味かいレィディ」 木葉 「寝惚けたこと口走ってんじゃねぇです」 彰利 「うわヒドイ!」 若葉 「レィディの云々は捨て去るとして、おにいさま」 悠介 「ああ、気にするな。待っててやるからさっさと終わらせてこい」 若葉 「はい、おにいさま。いくわよ木葉」 木葉 「はい、姉さん」 俺達はふたりが走ってゆく姿を見送った。 彰利 「フフフ、やはりスパッツよりブルマだな」 悠介 「お前は黙ってろ」 彰利 「正当な疑問だと思うが」 悠介 「日余はどこに住んでるんだ?」 彰利 「無視!?」 粉雪 「ここからそう遠くないところ、かな」 彰利 「ひとり暮らしか〜い?」 ギロッ! 彰利 「───なんでもありません」 粉雪 「ん、でもひとり暮らしだね。     お父さんがもうしばらく向こうでやることがあるとかでさ。     だから、しばらくはひとり暮らしをエンジョイ出来るわけです」 彰利 「女のひとり暮らしは危険だとか言うけど、キミなら大丈夫で」 ギロッ! 彰利 「……ああ、心配だなぁ」 んー……。 悠介 「彰利?どうしたんだ、お前が女性にどうのこうのと言うなんて」 彰利 「ノー、アタイ、トッテモイツモドオリネー」 怪しい。 彰利 「だってアタイが『寂しいのならアタイの部屋へカムヒアー?』とか言ったら、     ダーリン絶対ヤキモチしてアタイを殴るでしょ?」 悠介 「ヤキモチはないが……殴るな、間違いなく」 彰利 「アタイだって日々学習しとんのよダーリン」 悠介 「まあまあ、ところでセレス……顔色が優れないようだが」 セレス「……ちょっと太陽に当たりすぎたようです……」 ルナ 「ネッキーったら面白いのよ?     木陰で観戦してたんだけどさ、     日が傾くにつれて、一緒になって移動してるんだもん」 セレス「気分が悪くなるよりはマシです……」 正論だな。 悠介 「ところで水穂は行かなくて良かったのか?」 水穂 「あ、ボクはもともと姉さん達の手伝いだったから大丈夫です。     片づけって言っても、さほどは無いと思いますよ。     多くても、姉さん達の馬鹿力があれば」 ワシィッ! 水穂 「───ッ!!」 頭をワシ掴みにされた水穂がカタカタと震える。 若葉 「馬鹿力、ねぇ?」 木葉 「楽には死なせません」 いきなり死刑宣告だ。 大胆になったなぁ木葉。 若葉 「帰ったら、どうなるかが楽しみじゃない?水穂」 水穂 「あ、あああぅ……」 木葉 「宣言しましょう。あなたは日記朗読の刑に処します」 水穂 「ええ!?」 若葉 「おにいさま、それでは早く帰りましょう」 悠介 「ほどほどにしておけよ……」 若葉 「甘いっ!おにいさまは水穂に甘いんです!」 木葉 「姉さん、嫉妬深い」 若葉 「木葉!ツッコミ入れない!」 木葉 「失態でした。この借りは水穂を精神的に血祭りにあげることで返しましょう」 水穂 「お、穏やかに頼みます……」 木葉 「だめです」 水穂 「即答ですかぁっ!?ヒドイですよぅっ!」 うん、もっともだ。 彰利 「まあまあ、ヒドイお叱りを受けて寂しくなったら、アタイのとこに来なさい」 水穂 「いやです」 彰利 「わあ即答。アタイってばこれで通算何回くらい即答で断られたんでしょうか。     まあいいや、それでは帰りましょうぜ」 悠介 「そだな」 彰利 「あ、そうだ。なぁ悠介、これからお前のとこ寄っていいか?」 悠介 「ああ、俺は別に」 若葉 「だめです」 木葉 「大人しく失せろです」 ルナ 「大人しく帰りなさい」 セレス「どうでもいいです」 水穂 「ボクは別に構わな」 ワシィッ! 水穂 「ご、ごめんなさい……来ないでくださいぃ……」 彰利 「……ヒドイやみんな」 若葉 「男でしょう、めそめそしないでください。     それと───日余さんを送ってあげたらどうですか?     そっちの方がよっぽど危ないですが、最近、殺人事件とかがあるらしいですし」 悠介 「殺人?穏やかじゃないな。しかも初耳だ」 若葉 「おにいさまはニュースとか見ませんから」 彰利 「いやぁん!アタイみたいな、か弱い子が狙われるんだわきっと!     てわけで今晩泊めてダーリン!」 悠介 「お前が殺人鬼なんぞに殺されてたまるか」 彰利 「俺だって不意をつかれたら死ぬって!」 悠介 「……はぁ。それなら日余を送ってから来い」 若葉 「……おにいさまはホモさんにも甘いです」 悠介 「まあ、大目に見てやってくれ」 若葉 「……わかりました。日余さん、あなたも泊まっていってください。     いろいろ訊いてみたいこともあります」 粉雪 「え……それは迷惑かけるんじゃ……」 彰利 「そうか!行くか!うっしゃあ善は急げだ!さっそく帰ろう!」 粉雪 「ちょっ、彰───弦月くん!勝手に───」 悠介 「ああ、いいからいいから。若葉から誘うなんて珍しいんだ。     いっちょ甘えてみてやってくれ」 粉雪 「でも───」 彰利 「なんじゃいぬしゃあ、エスコートするのがアタイじゃ不満かコラ」 粉雪 「………」 彰利の言葉に反応して彰利を見て、そして顔を逸らす日余。 粉雪 「べ、べつに、不満なんて……ないけど」 彰利 「よっしゃよく言った!それじゃあ泊まらせていただきやす!」 粉雪 「あ、でも着替えとかは……」 若葉 「わたしのでも木葉のでも、着替えはあります。いいから頷いてください」 粉雪 「……強引な妹さんだね」 悠介 「まあ、な」 若葉 「あ、でも部屋はどうしましょうか」 彰利 「ハイハイハーイ!アタイったらダーリンと一緒の部屋が」 若葉 「却下!」 彰利 「ギャア!力一杯否定された!」 悠介 「あ、そうか。水穂や姉さんが部屋使ってるから、     空いてる部屋がひとつしか無いんだったな」 彰利 「え?そうなん?」 悠介 「ああ」 若葉 「この変態オカマホモコンと一緒の部屋にするわけにもいかないし……」 粉雪 「あ、わたしならそれでも平気だけど」 若葉 「だめです。もしもコトが起こってしまったら、許したわたしの責任になります」 彰利 「うわあ俺って信用ないね」 そりゃそうだ。 人の布団の中に潜り込むやつのどこを信用しろって言うんだ。 そんなことを考えてふと、頭によぎる思考。 悠介 「あれ?そういや姉さんは?」 帰り支度をした辺りでは既に居なかった。 若葉 「先に帰りましたよ。荷物を担いで雄々しく」 悠介 「………」 あの荷物をひとりで、ですか。 家系の血の所為とはいえ、なんか嫌な映像だよな。 悠介 「まあいいか。って、雪子さんは」 若葉 「麻野先生なら電話がかかってきて、さっさと帰りました」 悠介 「そっか。じゃあ帰るか」 彰利 「おうともさ」 そんなこんなで俺達は晦神社を目指して歩き出した。 荷物は姉さんが持っていったそうだが、あの石段はこたえるに違いない。 ───ギャア。 その場に居た全員が呆然とした。 石段の中腹。 そんな場所で、姉さんがノビていた。 悠介 「姉さん……」 春菜 「が、がんばったんだよ、これでも……」 はふーはふーと息を吐いてぐったりな姉さん。 悠介 「こんな荷物、ひとりで持っていくからだよ。     ルナに持ってもらえば一発じゃないか」 ルナ 「荷物持ち?やだ」 きっぱりと断られた。 悠介 「彰利だって居るんだし」 彰利 「いやぁん!アタイったら箸より重いモノ持ったことないのにぃ!」 悠介 「去年の文化祭でメイド喫茶の看板振り回して叫んでたのは何処のどいつだ」 彰利 「返す言葉もねぇや……」 俺はそんな彰利を横目に荷物の半分を持ち、他の半分を彰利に投げた。 彰利 「おわっと!……荷物持ちですか?」 悠介 「安心しろ、俺も持つから」 春菜 「え?あ、きゃっ!」 彰利 「おお、それは一目瞭然だけど。……キャア!アタイってばダーリンとお揃い!」 悠介 「寝言言ってないでさっさと行くぞー」 彰利 「あん、待ってダーリン」 荷物と姉さんを担いで、家へと向かった。 春菜 「ちょっ……悠介くんっ?恥ずかしいんだけど……!」 悠介 「動けなかったくせに贅沢言うな」 春菜 「うう……ごもっとも……」 若葉 「───……」 木葉 「姉さん、抑えて」 若葉 「何も言ってませんっ!」 木葉 「そんなドス黒いオーラを発していれば誰にでも解ります」 若葉 「幻覚です。ええ、そうですとも」 木葉 「姉さん、素直じゃない」 若葉 「だまりなさい」 ボソボソと話し合っている若葉と木葉。 なにやら段々と殺気が立ち込めていっている気がするのは俺の気の所為はじゃない。 悠介 「ルナ、玄関開けてくれ」 ルナ 「ん、おーらい」 カラカラカラ。 玄関が開けられる。 悠介 「よい……せっ、と」 荷物を置く。 それに続いて彰利も荷物を置き、靴を脱いで先に上がった。 そして正座して三つ指をついて 彰利 「お帰りなさいませ。お風呂になさいますか?お食事になさいますか?     それとも……」 そこまで言うと彰利が立ち上がり、体をメコモコとマッスルに変形させて 彰利 「リターンマッチといこうか……!?」 そう言った。 怖いって。 悠介 「若葉、木葉。着替えたら居間に集合。ルナは好き勝手やっててくれ。     セレスは……あとでアレ渡すから待っててくれ。     あ、日余も上がって上がって」 彰利 「ギャアア無視しないでぇ!     すまなんだ!王道で行かなかったアタイが悪ぅござんした!     お風呂になさいます!?お食事になさいます!?それともアタイィイッ!?     聞け!聞いてぇええっ!白々しく無視して行かないでーッ!!」 春菜 「……あ、の、悠介くん?いい加減、降ろしてくれないかなぁ……」 悠介 「部屋まで送ってく。そういうことは足動かして抵抗出来てから言え」 春菜 「あう……言葉もありません……」 どうやら足が全然動かないらしい。 頑張りすぎだ、まったく。 彰利 「………」 ヒタヒタヒタ。 背後の方で彰利の足音が聞こえる。 といっても玄関に残ってるのが彰利なだけなんだが。 悠介 「?」 まあいいか、無視だ無視。 彰利 「……………………OH!ホワイティ」 ゴスゥッ!! 彰利 「オブォッ!」 春菜 「んきゃぁっ!」 悠介 「……なにやってやがるこの野郎……」 彰利 「うおっ!?すげぇ殺気!ま、待て悠介!     お前が先輩殿をそんな風に担いでるから、つい」 悠介 「つい、スカートを覗いたってわけか……いい度胸だ」 彰利 「はっ……はぁあ……!!」 春菜 「ゆ、悠介く……頭突きさせるなんてヒドイ……」 悠介 「……姉さん?ちょ〜っと、ここで待っててくれな?」 春菜 「!は、はいぃっ!」 トサッ。 姉さんを廊下に降ろす。 彰利 「ギャッ……ギャーッ!な、なんで!?     いつものダーリンだったらそこまで殺気出したりしないじゃない!」 悠介 「俺の家族に手ェ出すヤツは何人たりとも許さん……」 彰利 「あ───そうでしたーっ!俺様ったら平和ボケの迂闊が!     謝ります!だから待って!裁きは!裁きはイヤァアーッ!     アタイって血が濃いから効き過ぎるのYOーッ!     待って!待ってーッ!待ギャアアアアアーッ!」 ───その瞬間。 晦家の玄関前廊下に凄まじい閃光が走った。 雷鳴の如く高鳴る轟音は、それだけで聴覚にダメージを(以下略) ───……。 彼はピクピクと蠢いていた。 悠介 「よっ、と」 俺は姉さんを担いで姉さんの部屋を目指した。 春菜 「あのさ、悠介くん?なにか回復用のものを創造してくれれば」 悠介 「こっちの方が疲労感が少ないんだ、諦めてくれ」 春菜 「……あう」 悠介 「大体、まだ以前のように使えるわけじゃないんだ。     回復系のものを創造するまでには馴染んでない」 春菜 「そうなの?」 悠介 「軽いものなら作れる。でも無理に作ろうとするとヒドイ副作用が付いてくる」 春菜 「うわ……」 悠介 「そんなわけだから。ああ、別にハゲになったりイエティになってもいいなら」 春菜 「ひぇっ……!?ご、ごめんなさい……」 悠介 「……べつに謝ることはないだろう」 少し呆れながら廊下を歩く。 やがて見えてきた襖の前に立ち、襖を 春菜 「あぁあっ、待って!」 悠介 「え?」 襖に延ばした手を止める。 春菜 「あ、はは……ここでいいから」 悠介 「遠慮なんて珍しいな。どうかしたのか?」 春菜 「………」 悠介 「?」 春菜 「……女の子の部屋」 悠介 「うん?」 春菜 「……もうっ、いいから戻ってっ。ここでいいから……」 悠介 「……そうか?」 どうにも釈然としない状況の中、俺はひとまずその場から─── 悠介 「………」 春菜 「……?」 悠介 「いや、どうやって入るのかな、って」 春菜 「大きなお世話っ!」 悠介 「うわっと、わかったわかった、失せるから怒るなって」 春菜 「あ、待った」 悠介 「……どうしてほしいんだよ」 春菜 「う……えっとさ、べつに迷惑とか、そういうことじゃないからね?     心遣いには、ありがとうだから」 悠介 「………」 よく解らんが、まあいいか。 悠介 「じゃ、頑張ってな」 春菜 「言われなくても頑張るよ」 悠介 「その意気その意気」 春菜 「ぶー」 姉さんをからかいつつ、俺は自分の部屋を目指した。 はぁ、やれやれ。 苦笑しながら歩く。 途中、なんとなく玄関前を覗いてみたが、彰利はまだ蠢いていた。 悠介 「……やりすぎた、かな」 少し反省。 頭を掻きながらとたとたと歩き、見えてきた自分の部屋の襖。 それをザッと開け、─── 彰利 「ふふ、待っていたよハニー。ベッドの用意は」 ぴしゃん。 閉めた。 悠介 「………」 だっ! どたたたたたたたっ! 廊下を駆け抜ける。 そして玄関前に辿り着く。 で、そこで彰利は蠢いていた。 悠介 「………?」 なんなんだ? こいつはこの家に何人居るんだ。 まあアレだ。 幻覚でも見たんだろう。 そう割り切り、首を傾げつつも部屋へ戻った。 彰利 「どうしたんだいスウィ〜ティン。さぁ、ベッドはぼくが暖めて」 ぴしゃん。 閉めた。 悠介 「………」 急ぐ足音がここから玄関前まで疾走するように出ます。 弾けろ。 ───どたたたたたたっ。 どがしゃんっ!がたがたっ! イメージを弾かせた途端、部屋の中から騒音が轟き、やがて離れてゆく。 その隙に襖を開け、中に入った。 悠介 「………」 案の定、そこには彰利は居なかった。 悠介 「忙しいやつだな……」 溜め息が止まらない。 彰利 「て、てめぇダーリン!騙しやがったなこの野郎ダーリン!」 気が動転してるのか、戻ってきた彰利は口調が……いや別にいつも通りか。 こいつがヘンなのはいつものことだ。 悠介 「着替えるから出ていけ」 彰利 「旦那様、お召し物のお取り替えを手伝わせていただきます」 悠介 「いらん、失せろ」 彰利 「そげな!そんなハッキリ言うことないじゃない!」 悠介 「やかましい、失せろ」 彰利 「覗くぞこの野郎」 悠介 「そんなことしたら全力で叩きのめす」 彰利 「ぬおっ……うう、ダーリンたら昔はやさしかったのに」 悠介 「泣いてないで出ていけって」 彰利 「わかったよぅ、出ていくよぅ」 悠介 「あ、そうそう。だからって他の部屋を覗こうなんて魂胆を抱くなよ」 彰利 「まっ───任せろ」 悠介 「───」 彰利 「はっ……わはははははっ、そ、それじゃあねダーリン!」 ずどどどどどどどどっ……。 彰利が去った。 どがしゃぁああんっ! 声  「ギャアいたぁ〜い!誰だこんな所に信楽焼なんぞ置きやがったのは!     思わずシャイニングウィザードを決めちまったじゃないの!」 ……いや、何も言うまい。 さてと、着替えを─── 悠介 「……おい」 あからさまにビデオカメラが置いてある。 しかも起動してる。 悠介 「……うりゃっ」 ごしゃぁっ! 声  「ギャーッ!」 ズドドドドドドドドッ! 彰利 「ダダダーリン!なんてことすんの!それいくらかかったと」 悠介 「………」 彰利 「……いや、俺はバードウォッチングをしたかっただけなんだぞ。     決して、ダーリンの部屋を覗いてたわけじゃ」 悠介 「覚悟は出来てるらしいな。面倒だから今のを遺言にしておこうか」 彰利 「キャーッ!」 ずどどどどどっ! 彰利は逃げ出した。 悠介 「……ったく、何考えてるんだアイツは……」 頭が痛い。 溜め息を吐いたのち、着替えを─── 悠介 「……盗聴器とカメラ系を探知する機械が出ます」 ポムッ。 悠介 「………」 ガガガーッ! ガーッ!ガリガリガリーッ! スイッチを押した途端、音がけたたましく鳴る。 ……わぁ、盗聴器とかいっぱいありそうだぁ。 こうして、俺の部屋の探査活動は始まった。 ……………………………… …………………… ………… で、言ってみれば─── カメラ3台に盗聴器10個。 いつの間にこんなに仕掛けやがったんだあいつは……。 悠介 「……壊すか」 彰利 「イヤァ待ってーっ!」 彰利が現れた。 しかもなにやら耳にイヤホンとか付けてる。 彰利 「壊すのはあんまりじゃない!もうやめて!アタイの夢を壊さないで!」 悠介 「……カメラは返してやる。だが盗聴器は壊す」 彰利 「ぐっ……し、仕方あるめぇ……」 悠介 「ほら、カメラ」 彰利 「お、おう。慈悲をありがとう、強き友よ」 そう言って、彰利は走り去っていった。 ああ、ちなみにテープは抜き取ってある。 ぬかりはない。 悠介 「……ブラックホールが出ます」 都合良くイメージをまとめ、吸い込んで欲しいものを放り投げた。 そして閉じる。 作業が済んだのち、大きな溜め息が出たのは間違いない。 ……居間に集まった。 セレスがお茶と羊羹を用意してくれて、水穂と一緒に運んでくる。 なんかこのふたりって仲が良い。 彰利 「あの……ダ、ダーリン……?」 悠介 「なんだ」 彰利 「その……」 叱られるのを恐れる子供のように声を濁す彰利。 彰利 「ビデオカメラの中身……」 悠介 「捨てた」 彰利 「やっぱりぃーっ!!」 彼は顔を両手で覆って泣いた。 やがて、しくしくという鬱陶しい声が 悠介 「泣くな。元はと言えばお前が悪い」 若葉 「なにか、されたんですか?」 悠介 「こいつ、人の部屋にビデオカメラと盗聴器を設置してやがったんだ」 若葉 「な───」 ギロリ。 彰利 「ああっ、堪忍してーっ!ほんの出来心やったんやーっ!」 若葉が彰利の傍に近づき、その腕を引っ張って廊下に出ていった。 悠介 「……?」 俺はまあ、そんなふたりを見送った。 ───廊下。 彰利 「悪気はなかったんですごめんなさい!ただ悠介・成長の記録が欲しくて!」 若葉 「……か」 彰利 「え……え?」 若葉 「……は、……ですか」 彰利 「な、なに?」 若葉 「………」 彰利 「顔、赤いですぞ?」 若葉 「ダ、ダビングは……っ!いくら、です、か……!」 彰利 「……オウ!オ−ウオウオウ!ソウデスカー!ソウユウコトデスカー!     ボクタチ同盟トカ結ベソウネー!」 若葉 「結ぶ必要は皆無です……!いくらか、と聞いてるんです……!」 彰利 「フフ、悪よのぅ越後屋」 若葉 「誰が越後屋ですか」 彰利 「でも残念ながらテープはダーリンに捨てられたのYO。     だが安心してくれ若葉ちゃん。     小学校から高校2年に至るまでのデータなら完備だ」 若葉 「………」 ゴクリ。 喉が鳴った。 ルナ 「買ったぁっ!」 彰利 「うおっ!?」 ルナ 「で!?どこにあるのそれ!早く出しなさいよ!」 若葉 「な……なんですかあなたは!横から割り込んできたくせに図々しい!」 彰利 「だぁあっ!静かにっ!ダーリンにバレたらそれこそ全部消されるわYO!?」 若葉 「う……」 ルナ 「むー」 彰利 「だがしかしな、あれはオイラの大切なメモリーだ。     価格で表したら天文学的な数字が割り出されること請け合いで……」 悠介 「なんの話だ?」 彰利 「そんなのダーリギャアアアアアアアアッ!!」 若葉 「!!」 彰利 「だ、だだだーりん!?どうしてここに!?」 悠介 「ここは俺の家だが」 若葉 「あ、そ、そうでしたっ!木葉に用があったんですっ!それではっ!」 とたたたたたた…… 彰利 「ギャア待ってーっ!アタイをひとりにしないでーっ!」 悠介 「……まさかお前、若葉によからぬことを吹き込んでたんじゃ……」 彰利 「しません!しませんとも!神に誓うどころか惨殺して!     見て!この純粋で汚れのない目を!これが嘘をついてるように見える!?」 悠介 「………」 彰利の目を見る。 と、その途端になにやら目眩がドゴォッ! 彰利 「ギャース!」 悠介 「───っ……この……野郎……!洗脳しようとするとはいい度胸だ……!」 彰利 「バ、バレてるーっ!堪忍やーっ!出来心だったんやーっ!     や、やめギャアアアアアアアアアアアアアッ!!」 晦家の居間前の廊下に凄まじい閃光が走った。 雷鳴の如く高鳴る轟(以下略) …………。 結局、集まってから適当なことを話して、その場は解散となった。 若葉は日余に話があると言い、自分の部屋へ去って行き、木葉もそれに続いた。 ルナは『羊羹より大根おろしがいい』とか言って、セレスと喧嘩。 水穂は後片づけをテキパキとこなし、姉さんはやはり現れなかった。 どうせ、まだ足が動かないんだろう。 そんなわけで俺は姉さんの分のお茶と羊羹を手に持って、姉さんの部屋を目指した。 ……で、だ。 予想通りにさっきの状態から全然動いていない姉さんが部屋の前に居た。 春菜 「……フローリングの床がひんやりして気持ちいいの」 俺と目が合った途端、姉さんはそんなことを言った。 一般的に言う、負け惜しみというやつだ。 悠介 「ほら、お茶。疲労回復成分も創造して入れておいたから」 春菜 「……ごめんなさい」 悠介 「謝らない。いいから飲みなさい」 春菜 「うん……。あのさ、疲労回復成分って、なにをベースにして創造したの?」 悠介 「梨」 春菜 「……悠介くんには迷惑かけてばっかりだね、ありがと」 悠介 「姉弟でなに遠慮してるんだよ」 春菜 「……姉弟、か」 悠介 「不満か?なんなら家政婦に戻ってもいいんだが」 春菜 「だ、誰もそんなこと言ってないってば」 悠介 「ああ、もちろん冗談だ」 春菜 「……いじわる」 悠介 「まあまあ」 少し寂しそうな顔をすると、姉さんはお茶を飲んだ。 そして羊羹も摘み、流し込む。 春菜 「ごちそうさま」 悠介 「おそまつさまでした。って、淹れたのはセレスだけどな」 春菜 「……あの吸血鬼さん、家事が上手だよね」 悠介 「そうだな」 春菜 「わたしにもあれだけの能力があればなぁ」 悠介 「まったくだ。もしそうだったらちゃんと家政婦さんやってただろうに」 春菜 「ひとこと多いよ、悠介くん。もう少しお姉さんを敬いなさい」 悠介 「これは、失礼しました」 言って、笑い合う。 春菜 「……うん、足ももう動くね。それでさ、話ってなんだったの?」 悠介 「ああ、べつに話があるから集合してくれって頼んだわけじゃないんだ。     みんなでお茶でも飲めば少しは気が紛れるだろうと思ってさ」 春菜 「日余さん?」 悠介 「そゆこと」 春菜 「なんかやさしいよね。     わたし、悠介くんと仲良くなるの、けっこう苦労したんだけど」 悠介 「んー……俺さ、中学の時までは普通だったんだよね。     あ、普通ってのはさ、人を避けてなかったってことね。     そんな頃の知り合いだからさ、いまさら避けるのも変だろ?」 春菜 「なんか納得いかない……」 悠介 「しなさい」 春菜 「むー……あ、じゃあさ。     日余さんのことだけど、その頃から呼び方は同じだったの?」 悠介 「あ、いや……その頃は『さん』付けだった……けど」 春菜 「たわけ」 悠介 「たわっ!?」 春菜 「もう、いつからそんなに大胆になったの悠介くんは」 悠介 「いや、会った時に咄嗟に出たらしっくりきたというか……。     それにしたってっさ、たわけはないんじゃない……?」 春菜 「悠介くんが男子ホモ生徒によく使ってた言葉じゃない。     たわけをたわけと言わずに何がたわけだ、って言ってたし」 悠介 「うぐっ……返す言葉もない……」 少しだけ、彰利の気持ちが解った気がした。 が、それでも懲りずに騒がしい彼の根性は、一生かかっても解らない気がした。 すげぇ、ヤツは本物だ。 悠介 「───と、こんなことは忘れるとして。湯飲みを貸してくれ。     もう飲み終わっただろ?」 春菜 「間接キッスじゃ〜!とか言って、そのまま使っちゃだめだよ?」 悠介 「安心しろ、頼まれても使わん」 春菜 「あう、ひどい……」 口を尖らせながらも湯飲みを差し出す姉さんに苦笑する。 悠介 「じゃあ、壮健で。足動くんだったら部屋に入った方がいいと思うぞ」 春菜 「余計なお世話。でも……うん、ありがと」 素直にお礼を言う姉さんに手を軽く挙げて返し、俺はその場をあとにした。 悠介 「……ふう」 小さく息を吐くと、俺は台所に向かった。 湯飲みと皿を戻すためだ。 台所に着くと、そこには水穂が居た。 水穂 「あ、おにいさん。こっちは大体片づきましたよ」 言って微笑む。 悠介 「悪い、これも頼めるか?」 俺はそんな水穂に悪いと思いながら、湯飲みと皿を出す。 水穂 「べつに構いませんよ。お安い御用です」 それを受け取って、洗い始めた。 ……うん、いい娘じゃぁ。 若葉達もこれくらい気が利けばいいのになぁ。 頭の中で妹達の差を考え、ちょっと悲しくなった。 セレス「あ、悠介さん。アレ、お願いします」 そこにセレスが現れた。 その手にはセレスのマイグラス。 悠介 「あ、悪い忘れてた。すぐ出すな?」 それを受け取り、意識を集中させ、イメージを纏める。 悠介 「俺の鮮血がこのグラスに満たされる程度に出ます」 あっさりと創造して、セレスに渡す。 セレス「助かります」 それをこくこくと飲んでしばらくすると、彼女の顔に赤みが差してゆく。 従来の吸血鬼伝説を考えると、違和感を憶える瞬間だった。 セレス「ごちそうさまです。あ、水穂さん。     あとはわたしがやりますから、休んでいてください」 水穂 「ボクのことなら心配しないでください。これでも家事には自信があるんです」 セレス「そういうことではなくて……」 水穂 「?」 セレス「……血の付着したグラス、洗いたいですか?」 水穂 「……お願いします」 あっさり引き下がった。 セレス「それでは悠介さん、わたしは洗い場の方に手を回しますので、これで」 悠介 「ああ、助かる」 セレス「助かっているのはわたしも同じです。     これでおあいこということで、手を打ちましょう」 悠介 「そうだな」 水穂 「えーと、タオルタオル……」 とたとたと小走りに駆け、タオルで手を拭く水穂。 水穂 「お庭の掃除に行ってきまーす」 悠介 「暖かくしていけよー」 水穂 「はいですー」 ……水穂たちが家に養女に来てから半年くらいで、当番は大体決まった。 家の周りの庭掃除は周に二度、水穂がやっている。 家事はセレスと水穂。 といっても、料理はもっぱら俺が作っている。 買い物はセレス。 なるべく安い店を選んで節約してくれるありがたい存在だ。 若葉と木葉は家の掃除。 各部屋はもちろん個人で掃除するが、それ以外は大体、ふたりが掃除している。 境内の掃除は俺と姉さん。 姉さんは巫女さんも勤めているため、掃除をしながら破魔矢やらおみくじを売っている。 まあ大体にして神社に辿り着ける人が少ないため、売れゆきは良いとは言えないが。 ……そして。 なにを思ったのか、家の裏っかわの方には大根畑がある。 言うまでもなく、何故かルナが作り出したものだ。 作り出したと言っても、自分で一から耕して、現在に至るのだが。 手塩をかけて大切に作っているので、勝手に掘り起こしたりしようものなら本気で怒る。 以前、サイフを落として餓死寸前だった彰利が畑を勝手に掘り起こして、 しかも食っているところを見つかって半殺しにされたのは記憶に新しい。 さすがに彰利が血ダルマになって助けを求めてきた時はなにごとかと思った。 食い物の恨みは恐ろしい。 しかもそれが自分の作ったものなら尚更だったようで。 悠介 「セレス、ルナは?」 セレス「畑で猿が来ないように見張ってましたけど」 悠介 「猿か」 去年の終わり頃、この神社の周りの山付近に猿が現れるようになった。 誰かが離したのか、それともどこかからやってきたのか。 それは謎だが、猿のくせに大根を食うのだ。 ルナが丹精込めて作った大根が猿によって掘り起こされ、 朝になって畑に行ったら畑は荒れ放題。 ルナはキレ、犯人の心当たりを思い浮かべ、 たまたま『ヘロゥ、ダーリン』とか言って現れた彰利に襲いかかり、半殺しにした。 ルナがふるふると悔しがっていたその時、セレスが大根をかじっている猿を発見。 彰利の誤解が晴れたが、半殺しの目に遭ってピクピクと痙攣している彼を見ると、 お世辞にも『良かったな』とは言えなかった。 悠介 「じゃあ今のルナには近づかない方がいいな」 セレス「はい。いくら悠介さんといえど、襲われるかもしれません」 悠介 「だな。じゃあ俺は部屋に戻ってるから」 セレス「はい。今日はお疲れさまでした」 悠介 「ありがとう。それじゃあ一応、おやすみ」 セレス「はい、おやすみなさい、悠介さん」 台所を出て、自分の部屋へ戻った。 眠気はそんなにあるわけじゃないが、そのまま眠るかもしれないので挨拶は忘れない。 悠介 「……ふう」 襖を閉めて、布団に寝転がった。 なんかこれといって疲れるようなことはしなかったものの、なにやら疲れた。 そりゃあ走ったりして疲れたことは疲れたが。 ……あ、そっか。 姉さんに回復系の梨エキス創造したり、セレスに血を創造したりしたんだっけ。 ……一度使えなくなるまで消費すると、馴染むまで時間かかるなぁ。 馴染んでないと作れないし、無理に作ると副作用があるしで大変だ。 おまけに回復も遅いとくる。 まいったもんだなぁ……。 ………………。 …………。 ───話が終わってから、わたしは部屋に案内された。 彰利 「……で、結局お前と一緒の部屋なわけね」 隣には彰利。 粉雪 「何か不満でもあるの?」 彰利 「不満っつーかさ、なんか新鮮味に欠ける」 粉雪 「そう?わたしは子供頃以来だから懐かしいといえば懐かしいけど」 彰利 「なるほど、一理ある。昔は一緒の布団で寝たもんじゃて」 粉雪 「そうね」 彰利 「一緒に風呂にも入ったし」 粉雪 「そうね」 彰利 「おそらく、貴様の体で知らない部分なぞ」 バシン! 彰利 「ギャアッ!」 粉雪 「いい加減にしなさい」 彰利 「ぬうう、でも事実じゃよ?」 子供の頃の話だ。 わたしと彰利は、よく一緒にお風呂にも入ったし、一緒に寝ていたりもした。 粉雪 「子供の頃の話でしょ?今のわたしのことなんか何も知らないじゃない」 彰利 「そらそうだ。     俺が実家に戻った時、お前とはさよならしたからその後など知らんかったし」 粉雪 「次に会ったのが、わたしがこっちに越してきた中学の時だったわね」 彰利 「……ところでさ、お前って俺以外の人と話す時って猫被ってるの?」 粉雪 「別に猫被ってるわけじゃないわ。くだけて話す必要がないだけよ」 彰利 「寂しいやっちゃなぁ」 粉雪 「べつにいいじゃない」 彰利 「まあ、悪いとは言わんけど」 粉雪 「………」 彰利 「どした?」 粉雪 「んーん、なんでもない。寝ましょ、彰利」 彰利 「って言っても、布団がひとつしかないが」 粉雪 「べつにいいんじゃない?昔は一緒の布団で寝てたんだし」 彰利 「いやだめだ」 粉雪 「え?ど、どうして?」 彰利 「俺が……」 粉雪 「俺が……?」 彰利 「俺が悠介に誤解されちまうからYO!」 バシィッ! 彰利 「ギャーッ!」 粉雪 「いーから寝るのっ!」 彰利 「ギャーイヤーッ!犯されるーッ!助けてダーリーン!!」 ドボォッ! 彰利 「ギャウッ!ギャアア暴力反対ですじゃーっ!     昔はあんなにおしとやかでやさしくてカワイイ娘ッコだったのにーっ!」 粉雪 「───」 ……え? 粉雪 「ね、ねえ……彰利?     まさかあなた……わたしに言ったこと、忘れたわけじゃ……」 彰利 「え?俺、なんか言ったっけ」 粉雪 「………………っの……ばかぁあああああっ!!」 ボギャアッ! 彰利 「ダニーッ!?」 ガクリ。 当たり所が悪かったのか、彰利は気を失ってしまった。 粉雪 「……はぁ」 我ながら……とんでもない人を好きになったものだ。 頭が痛くなるほど呆れる人だが、 子供の頃の恋というのは、思うよりも遙かに心の深淵あたりに根付いてしまうらしい。 こんな相手でも、本当に好きなのだと自分でも気づいている自分が情けない。 自分で言のは悔しいから。 だからいつか、絶対この馬鹿の口から言わせてやるんだ。 粉雪 「……絶対、言ってあげないから」 そう言って、頬をつついた。 すると気絶していたにも関わらず、お得でっせ……と唸る彰利。 …………ほんと、なんて馬鹿。 まあ、わたしも馬鹿なんだろうけど。 溜め息を吐いて、わたしは電気を消して、眠ることにした。 Next Menu back