───糊助(ノリスケ)───
彰利 「ッチャ〜ンチャッ、チャッチャッチャラッ、ッチャッチャラッチャ〜♪     ノリスケです。先刻、先輩殿にシュートヒムされましたが、     弾は貫通していたので応急処置が簡単でした。     そもそもアンリミテッドストリームに弾は存在しねぇだろうが。     でも痛かったので泣きました。     泣きながら吸血鬼さんの作るケーキに爆薬を仕掛けておいたんです。     いやぁ、実験は大成功でしたよ。     見事、アタイの悠介を誘惑してたセレっちは爆発。     真っ黒クロ助になって台所から出てきたズラ。     そこで言ってやったんですよ。わぁ、黒人だー、って。そしたら」 …………そしたら……─── 木葉 「何をブツブツくっちゃべってやがるんですか……」 彰利 「裏モード!?」 若葉 「誰の所為でケーキが台無しになったと思ってるんです……」 彰利 「だって、悲しかったんですもの……!」 春菜 「自業自得でしょ」 彰利 「いや、アナタには言われたくないなぁ」 春菜 「───なに?」 彰利 「ごめんなさい、撃たないで。そして脅迫もしないで」 セレス「……せっかく作っていたケーキ……。     性懲りもなくしゃしゃり出て、よくもまあ破壊してくれたものです……」 彰利 「びっくりしたでしょ?ぼくもびっくりしたんだ。     まさかみんなに囲まれて天井に吊るされるとは思ってもみなかったから」 水穂 「破壊されたおにいさんの部屋の修繕、誰がやったと思ってるんですか……!     無意味に人を挑発するのはやめてくださいよ……!」 彰利 「こればっかりはやめられん。もはや趣味の一環だ。     そしてキミもどうだい?ぼくと一緒にヨガの犠牲者気分を」 水穂 「結構ですっ!」 彰利 「キャアア!み、みなっちが怒った!」 SO。 アタイは今、ハーレム状態の中で天井に吊るされていた。 これからどんなプレイが待っているのかを思うと涙と鼻水と耳汁が止まらねぇ。 彰利 「そうこうしている間にも、ごらん。俺の耳から耳汁が」 水穂 「みみじる!?いやーっ!耳から何か出てきてます!」 彰利 「一部で超神水として崇められている霊酒『彰利の耳汁』さ。     これを呑めばたちまち力が当社比で2.5倍に!     ピッコロ大魔王に勝つのも夢じゃねぇ!というわけでグイッ一杯!最強!」 春菜 「自分で飲みなさい」 彰利 「ギャーャヤァアッッ!冗談ですごめんなさい!ウソついてました!     勝てません!むしろ負けます!でもアルコール度が70%入り。     だって霊酒だもの、俺の耳汁に酔いしれるがいい」 水穂 「70%って……ええっ!?ウォッカ並みじゃないですか!」 彰利 「そう、火種があればいつでもファイヤー!     俺の耳汁はいつだって熱いのよ!ぬおお!燃える燃える!     熱く燃え───ギャアアア燃えてるーっ!熱い!これは熱い!     だあれ!?こんなヒドイことを平気でする子は!手を挙げなさい!     いやその前に火ィ消してーっ!熱いー!グレースのように焼き焦げちゃうー!」 春菜 「ああごめん。こんなところに火打石があったから」 彰利 「うそだーっ!それ絶対ウソだぁーっ!     てめぇハルっち!おのれハルっち!よくもアタイに火を!     ていうか熱ッ!火ィ消してってば!     冗談で言ったのにどうして燃えるのよこの耳汁!」 セレス「信じる者は救われるそうですよ。よかったじゃないですか」 彰利 「イヤァ救い様がねィェーッ!!熱ッ!耳がッ!回路が焼けるッ!熱ッ!」 水穂 「はい、お水です」 彰利 「オーウ!ありがと水穂ちゃーん!丁度いま、喉が渇いてたのよーぅ!     んぐっ、むぐっ……プッハァーッ!美味よねーっ!って呑んでどうするーっ!」 春菜 「耳汁止めたらいいんじゃない?」 彰利 「おお名案!梵(ハン)ッ!」 ボチュン! ───……おお、消えた。 き、奇跡ぞ!奇跡が起きたんじゃーっ! 神様ありがとう!これから毎日崇めます! そしてあなたの傍へ行けたなら必ずチェンソーで惨殺します! よくもこのハンサムボーイのアタイにこのような試練を! 彰利 「FUUUM、しかし一時はどうなることかと……。     ───あ、あら?なんでみんな笑ってるの?」 水穂 「っ……ぷっ……くふふふ……!」 木葉 「自分の髪の毛に聞いてみやがれです」 彰利 「裏モード!?て、髪?髪って、いつものサラサラヘヤーがどうかし」 サクッ。 彰利 「…………愛?」 なに?このサクッて音。 しかもどっかで触ったようなこの感触……そして連想されるイムホテップ……。 彰利 「うわぁアフロじゃん!どうして!?」 春菜 「きっ……気付かなかったの……?さっき、耳汁と一緒に燃え……あはははは!」 彰利 「わ、笑うなーっ!くそうくそう!みんなでぼくを笑おうっていうんだなー!?     そういうことなら遠慮はしないぜこの女郎どもが!ぬぅうん!爆肉鋼体!」 メコッ!モココ……! 彰利 「ぬぉおおおおおおおおっ!!!」 ぶちぃっ!メキメキィ! 彰利 「───さぁ、覚悟しろ貴様ら……!」 春菜 「あ、悠介くん」 彰利 「なにぃ!?ダーリン聞いてよ!この女郎どもがなにぃ!?居ねぇ!?」 若葉 「月影力───」 彰利 「なっ───謀ったなブッチャーッ!」 若葉 「誰がブッチャーですか!その頭を冷やしてきなさい!」 彰利 「ぬおっ!?ば、馬鹿な!体が勝手に!?って、冷やすってまさか!?」 若葉 「安心してください、ちゃんと滝壷に落ちるように操作しますから」 彰利 「イヤァやっぱりーっ!」 ままま待て!走るな俺の体よ!雪は寒い!裸足じゃ寒い! そして水はもっと───イヤァ走ってるーっ! 彰利 「アーァアアアアレェエエエエエエエエッ!!!助けて誰かーっ!」 ズドドドドドドドド……ドバガシャァアアアアアアアン!!!! 彰利 「ギャア!」 若葉 「今度、窓の請求書渡しますからー」 彰利 「うわっ!自分で操っといて無慈悲な!ていうか冷たッ!     せめて靴くらい履かせてく」 木葉 「甘っちょろいことぬかしてんじゃねぇです」 彰利 「うわぁ今ほど裏モードが身に染みる日って無いのでは!?     冷たい!痛い!冷たさがやがて痛覚として襲ってくる!ていうかもう痛い!     助けて悠介ー!ブラコンシスターズ+ONEがぼくをいじめるんだーっ!     聞こえてたら助けてーっ!お願いヨー!」 ズボズボズボズボッ! 彰利 「ギャアア!そんなこと言ってる間に走ってるーっ!     助けっ!いやっ!やめっ!ギャアッ!ギャアアアッ!!」 バッ! 彰利 「ギャア!」 滝壷の前で何故か体操競技のようにバク転バク宙を華麗にこなし、 フィニッシュに伸身ムーンサルトダイブを決めた。 おお、操られながらもなんと華麗なことよ。 さすが俺。 俺が審査員だったら10点満点あげちゃうね。 藤巻クンも目じゃねぇ。 だって崖に落ちてるんですもの。 普通の競技と同等に見てもらっちゃあアタイの魂も浮かばれボシャアン! しくしくしくしく……。 アフロな彼がすすり泣く。 鬱陶しさが倍増した瞬間だった。 悠介 「泣くな、鬱陶しい」 彰利 「だってよぅ……俺が何したっていうのよぅ……。     どうして俺ばっかりこんな目に合わなきゃならないんだ〜いだ〜いだ〜い?     わたしゃもう悲しゅうて悲しゅうて……!」 悠介 「俺としては生きてる方がスゴイと思うが」 彰利 「もはや俺という存在が奇跡の一部として君臨してる錯覚すら覚える……。     ああちくしょう寒い……寒いぜ……オバンのギャグより寒いぜ……!」 ゼノ 「ときに小僧、くりすますとはなんなのだ?」 悠介 「小僧言うな。んー……ああ、そこにある本に書いてあるだろ。     自分で調べてみてくれ」 ゼノ 「ぬう……」 ぱらぱらぱら……。 ゼノ 「クリスマス……ふむ、なるほど。死者の誕生日を祝う日か」 悠介 「……あながち間違いではないが」 せめて死者って呼ぶのやめようよ……。 ゼノ 「しかしおかしなものだな。他国の者の誕生日であろう?     何故、他国の民の誕生を他国が祝う?」 悠介 「んー……その人はさ、自分の教えのために苦難の死を自分に課したんだよ。     その甲斐あってか、その人の教えは世界中に広まった。     多分、今こうやって祝い事をするのはその人が素晴らしい人だからとか、     そういう意味合いってことなんじゃないかな」 ゼノ 「ふむ……」 彰利 「ああ、あの十字架にかかって死ぬってやつか?腕痛そうだったよなぁアレ」 悠介 「磔ってのは何処かしら重力に引っ張られて痛むもんだからなぁ。     常識で考えればあれは絶対痛いよ」 ゼノ 「では訊くが、貴様らはその人物を尊敬しているのか?」 悠介 「核心だなぁ。でも……そうだな、ハッキリ言えば俺は解らないよ。     どちらかといえば尊敬はしてないの部類だな。     だってどんなことをしたのかとか、その人がどんな人なのかも知らないんだ。     それで『尊敬してる』なんて言ったらそれこそ侮辱じゃないか」 彰利 「そうそう。そういう人に限って『どんなところを?』って訊かれて黙るし」 悠介 「それそれ、それだよ。先人が居なけりゃ現在は無いって言うけど、     俺達は先人が何をしたのかまで解ってないんだ。     それなのに『ありがとう』とか言うのって変じゃないか?」 ゼノ 「然り。だがそれならば何故このクリスマスとやらで騒ぐ?」 彰利 「そりゃ簡単。単に騒ぐ場所が欲しいのよ俺達人間ってやつは」 悠介 「言ってしまったらそれだけだな。人のために祝うとかそんなんじゃないんだ」 ゼノ 「むう……ならばこの祝い事はカタチだけのものだということか」 悠介 「ハッキリ言うなぁ……。でもそういうことなんだろうな。     否定する人が入るなら是非、その説教を聞いてみたいもんだよ」 彰利 「そうだな。果たしてどんなありがたい言葉が聞けるのか」 悠介 「そういう人は否定論の塊だからな。     なにがなんでもこっちの言い分は認めないだろ」 彰利 「悠介みたいに?」 悠介 「やかましい」 そこでツッコみますか? 彰利 「悠介って否定論多いからねぇ〜ィェ。     是非、何故否定論が多いのかを問いたい」 悠介 「それはお前がホモだからだ」 彰利 「関係ないでしょそれは!」 ゼノ 「時に───気になっていたのだが、そのホモとはなんなのだ?」 悠介 「え?な、なにって───」 説明しろというのか……!? 彰利 「クォックォックォッ、当然の報いぞ……!     人のことを毎度毎度ホモホモというからバチが当たったんじゃ……!     さあ、説明してみせるがいいわダーリンこの野郎……!」 ゼノ 「貴様でも構わぬが」 彰利 「ゲェーッ!?」 悠介 「じっ……実はこの話は彰利の方が詳しいんだ!てことで話せ!」 彰利 「なにぃ!?貴様体良く逃げやがったな!?」 ゼノ 「さあ」 彰利 「ぬ、ぬおお……!───い、いいだろう!貴様に熱弁してやらぁ!     ───そこ!逃げるな!」 悠介 「くおっ!」 彰利 「うっふっふ……俺が恥を偲んでモーホーのノウハウを聞かせてやろう……」 ゼノ 「御託はいい。早く言え」 悠介 「……キミさ、自分がとんでもないことを聞き出そうとしてるってこと、     絶対に確実にどうしようもないほどに気付いてないだろ……」 ゼノ 「む?」 ───こうして、彼の語りは始まった。
───間───  〜しばらくおまちください〜
彰利 「と、いうわ」 ゼノ 「恥を知れ貴様ァーッ!」 ボグシャア!! 彰利 「パセリ!」 ゼノ 「な、なにを言うかと思えば……!ええい腹立たしい!     貴様それでも強者か!そんなことだから怠慢するのだ!恥を知れ!」 彰利 「な、殴ったァーッ!ゼノが殴ったァーッ!珍しすぎてすっげぇ驚いたァーッ!」 ゼノ 「黙れこの痴れ者が!歯を食いしばれ!殴り殺しても収まらぬ!」 彰利 「ゲェーッ!殺る気満々だぁーっ!     ややややめブボッ!ゲボブボガブボッ!ブッファアボッファア!     ギャアヤヤヤ!助けてダブフォア!!」 ゼノ 「逃げるな!このような時でこそ立ち向かわずに何が男か!     その腐りきった魂、我が叩き直してくれる!」 彰利 「うわぁー!タタタンマーッ!」 悠介 「………」 合掌。 彰利 「───……ごらん、空が綺麗だ」 ゼノにボコボコに殴られ、しかも滝壷に放り投げられた彰利が言う。 ああ、ちなみに言うとちゃんと上がってきてからのお話でございます。 彰利 「あー……真剣に怒り心頭のゼノの面白いこと面白いこと」 悠介 「殴り返してもことごとくかわされてたな」 彰利 「うむ、凄まじいウェービングだった。世界狙えるよ」 悠介 「お前のフェイス見ると、それも頷けるな」 彰利 「だが間違うな。これは俺だからこそ耐えられたのだ。     普通の人が殴られたら首ごと吹ッ飛んでましたよ」 悠介 「だな」 彰利 「は〜ンぁ、しっかしまいったね。足腰が動かん」 悠介 「1日に何回滝壷に落ちれば気が済む」 彰利 「全部誰かの所為だと言いきれるのは俺だけですか?」 悠介 「そうだ」 彰利 「うわ冷たっ!もうちょっと暖かくあってよダーリソ!」 悠介 「やかましい。人様に迷惑かければ報復があるのは当然だろうが」 彰利 「……その報復がどれも致死に値するって解ってて言ってる?」 悠介 「知らん」 彰利 「ギャアもう!そう言うと思ったわダーリンの馬鹿!!でも大好き!」 悠介 「寝言言いたいなら寝てからにしてくれ。付き合いきれん」 彰利 「実はぼく、常時寝ているんだ」 悠介 「よしよしそうか。なら永眠の手伝いをしてやろう」 彰利 「ダダダダメヨー!ソッタラコトシタラアタイ死ンジマウアルネィェーッ!」 何故エセ中国語……? 悠介 「エセ中国語はいいからいい加減起きろ。     雪の上で寝転がってても風邪引くだけだぞ」 彰利 「うむ。そうはなりたくないもんじゃが、まだ足腰がのぅ」 悠介 「……また放り込まれたいか?」 彰利 「前向きに遠慮します。善処なんてしたくないっす」 悠介 「はぁ。お前ってさ、どうして」 じゃりりりりりりりんっ! 悠介 「……誰だ?こんな雪が邪魔でしかない日に電話し掛けてくるヤツは」 関係ないけどね。 さて。 彰利を雪原に放置して玄関へ向かう。 その間、彰利が『俺が死んでも孫呉の意思は……』とか言っていたが、無視した。 ───じゃりりりりり───りんっ…… 悠介 「はい、晦です」 律儀にきめてみた。 声  『………』 悠介 「あの?」 声  『………』 悠介 「……悪戯ならあの馬鹿ひとりで間に合いすぎてますんで、それじゃ」 声  『あ───』 がちゃん。 ……はふぅ、この家に悪戯電話とは根性あるというか世間知らずというか。 まあなにはともあれ彰利をあのままにしておくわけにもじゃりりりりりりんっ! 悠介 「………」 まあ、な。 同じヤツからって決まっているわけじゃないしなぁ。 じゃり───んっ。 悠介 「はい、晦です」 声  『…………』 悠介 「………………あのさ、名前くらい名乗ったらどうだ?」 声  『…………ぁ、……ゎ……』 悠介 「───……喋る気があるなら聞くから。落ち着いて」 声  『………』 ブツッ。 ツー、ツー…… 悠介 「うわっ、切られた」 何気にショック。 がちゃん。 あーもう、なんだってんだ? よし、こういうのは彰利に任せよう。 うん、それがいい。 悠介 「おーい彰」 じゃりりりりりりんっ! 悠介 「───……」 彰利だ。 彰利を連れてこよう。 ───。 彰利 「お、俺が死んでも孫呉の」 悠介 「いいから電話に出ろ」 彰利 「任せろ」 りんっ。 彰利 「あー、わたしだ。……なにぃ!?それは大変だ!じゃっ!」 がちゃん! 悠介 「だ、誰だったんだ?」 彰利 「キミのパンツ何色?だって」 悠介 「……やっぱ悪戯電話か……」 彰利 「冗談だが」 悠介 「……それじゃあ何か?適当に言って適当に切ったのか?」 彰利 「そんなところだ」 じゃりりりりりんっ。 彰利 「おお、懲りないな」 悠介 「ちゃんと聞いてみてくれ。俺こういうのダメだ、イライラする」 彰利 「よしよし、父さんに任せといで」 誰が父さんだ。 りんっ。 彰利 「もしもし?あたしリカちゃん。今貴様の背後に居るの。おっと動くなよ!?     少しでも動いたら───刺すぜ?キャッツカードで」 悠介 「キャッツカードかよ!」 彰利 「ダーリンがツッコミ入れてどうすんの!これは相手を誘う方法で───え?」 悠介 「どした?」 彰利 「いや待て───…………」 悠介 「?」 なんだ? 彰利のやつ、真剣に電話に耳を傾けて─── 彰利 「───……」 がちゃん。 悠介 「彰利?」 彰利 「わりぃ、俺一端帰るわ」 悠介 「誰からだったんだ?」 彰利 「粉雪。俺のめんこいハニーさ」 悠介 「日余?いや、そんな筈ないだろ。あいつならもっとこう……」 彰利 「はっはっは、ダーリンたら粉雪の本性知らないから。     あいつね、ホントは凄く寂しがり屋さんなのよ。     俺以外の男とはあんまり面識無かったし、     あったとしても無理矢理作った人格で話してたもんだから、     元の性格がもうかわいいのなんのって」 悠介 「人格って……あそこまで変わるもんかぁ?」 彰利 「ンマッ?アタイを思えばこその愛情表現ってやつよ。     そしてダーリンが電話に出たときには何も喋らなかった。     この差が解るかねッッ!?つまりキミには一片の信頼も」 スパァン! 彰利 「キャーッ!?」 悠介 「御託はいい、行ってやれ。     ここにお前が居るって信じて何度も電話してきたんだろ?     あんな不安そうな声聞いたら引き止められるかよ。     引き止める気なんて元から無いけど」 彰利 「一言多いよチミィ!でもサンキュ!夕飯までには帰ってくるわねー!」 悠介 「お決まりの言葉言ってないでさっさと行かんかーっ!」 彰利 「オウヨ!オンラブラトルドアンベルト・オンラブラトルドアンベルト……!     ラブリーどころかキリングハートでプレイスジャ〜ンプ♪」 ギキィインッ! 眩い光に包まれて、彼はその場から消えた。 悠介 「……行ったか」 ……よし、これでゆっくりクリスマスの用意が出来るな。 ぐぅっと伸びをして、俺はその場をあとにした。 ───……。 とっぷりと夜。 アフロだった彼は戻ってこなかったものの、パーティは賑やかなものだった。 男ふたりに女六人というのはちょっと勘弁だったが、彰利が居ないのでは仕方ない。 まあ、そんな中で─── ゼノ 「───」 ゼノが酒に弱いことが判明した。 一口飲んだだけでダウンだ。 ああ、唯一の男がこんなのではダメだったか。 ルナ 「あはは───あははははははははっ!」 若葉 「あははははははっ!お、おにいっ……あははははははは!」 セレス「くっ、くふっ……!ふ───ひゃっ……あはははっ……!」 水穂 「あははははははは!あはははははははははは!あははははっげほっげほっ!」 春菜 「あはははは!はは───あ、あははははははっ!     ら、らめっ……!おらはひはい……!あはははははははっ!!」 若葉 「こ、この───ひゃっ───木葉───!こっ……あはははははは!」 木葉 「姉さん、はしたない」 若葉 「あなたがわらっ───わたしに笑撃を流し込んで───あひゃひゃひゃひゃ!」 ……嫌な具合に賑やかだった。 つまりアレだ。 彰利が料理に何かを混ぜて行きやがったんだ。 その結果がこの状況だ。 そんな中で木葉だけが若葉に自分の笑いを押し付け、飄々としている。 その所為か、若葉は他の誰よりも笑っている。 こんなおかしい状況の中、俺は思うのだ。 悠介 「……クリスマスって、こんなパーティだったか……?」 ……と。 でもまあ、みんな滅多に笑わないんだからここらで笑わせてやるのもいいかもしれん。 うむ、最強。 彰利 「誰かが最強を唱える時!我がそこへと訪れる!弦月彰利ィー!推ッ参ッ!」 悠介 「唱えてないが」 彰利 「やぁねぇダーリンたら。キミの考えくらい解るよ。タイミングとかも」 悠介 「お前それ人間技じゃない」 彰利 「フフフ、それもその筈。俺はもう人間を超越したのよ」 悠介 「ていうか遅かったな。来ないのかと思った」 彰利 「ああ。粉雪の家でパーティやってた。親父さんに挨拶も兼ねて」 悠介 「へえ、親父さん外国から帰ってきてたんだ。で、返事は?」 彰利 「この殴痕を見よ」 悠介 「……なるほど」 彰利 「弦月の小僧にカワイイ娘をやれるかーっ!てな。     家系の所為で一筋縄ではいかないだろうとは思ってたけどまさか殴られるとは」 悠介 「もちろんただでは引き下がらなかったんだろ?」 彰利 「おっ、解ってるねぇ。もちろん取っ組み合いぞ?     でもさ、娘を持つ父親のパワーってすげぇぞ?     まさかあそこまで対抗してくるとは思わなかった」 悠介 「へぇ、お前を驚かせるとは」 彰利 「だって家系の知り合いっていったって、血は流れていないんですよ!?     それなのに強ぇのなんのって!     伊達に若い頃はボクシングやってたわけじゃないってことらしい」 悠介 「ボクサーだったのか」 彰利 「ああ。カウンター8発くらいくらったぞ」 悠介 「うお……」 彰利 「その中の2発がクロスだし」 悠介 「何者だよその人……」 彰利 「ああ、恐ろしかった。親とはかくも強き者かと感心しちまった。     俺達の親も力なんてものがなかったらあんな感じだったんかなぁってさ」 悠介 「そうだなぁ。俺はその人を直接見たわけじゃないから解らないけどな」 彰利 「いやぁもうハートブレイクショットされた時はどうなることかと」 悠介 「やられたんかい」 彰利 「うむ。そのあとのデンプシーは美しく無限を描いたぞ。     散々ボコボコにされてフラついたところにスマッシュが来た。     流石にそれでダウンしたよ。だが俺は立ったね!顔を光らせて!」 悠介 「お前それ、絶対引かれたぞ……」 彰利 「いやいや、そのあと殴り合ったんだけどさ。     あ、月奏力で『慈しみの調べ』ってのがあってな?     それを俺の腕にかけて殴り合ったわけだ。     触れた相手を回復させる力だから思う存分殴ったぞ」 悠介 「大丈夫だったのか?」 彰利 「うむ、流石に効果が切れた瞬間にクリティカルヒットした時は焦ったが」 悠介 「おいっ!」 彰利 「でもさ、そのあと彼奴はこう言ったのよ。     『ワシに勝てない奴が娘を守れるわけがない。よく全力で来てくれた』って」 悠介 「へぇ……物分りのいい人で良かったじゃないか」 彰利 「……それがさぁ。     交際条件として毎週何回かはスパーリングの相手をしろって……。     しかもワシが勝ったらその時点で交際は却下だ、だって……」 悠介 「……なんだかんだ言って悔しかったんだな」 彰利 「みたいねぇ……」 溜め息は同時に出た。 彰利 「まあいいさ。負けるわけにはいかねぇ」 悠介 「ていうか負ける要素がないだろ」 彰利 「馬鹿言っちゃいかんよ。戦ってみれば解るぜよ?     今度紹介するから慈しみの調べ装備して戦ってみ?     シベリアブリザードにも勝る格闘地獄と父親の強さを垣間見れるぞ」 悠介 「シベリアブリザードは関係ないだろ」 彰利 「……いや、言い方は大袈裟だったかもしれんけど関係が無いわけでもない。     だって俺とおやっさんが戦った場所、雪の上を裸足でだし……」 悠介 「………」 彰利 「そして今、吹雪いています……」 悠介 「な、なるほど……」 彰利 「そんでさぁ、サミングとウェスタンラリアット堪えるのが大変だったのよ。     気を抜くともう飛び掛りそうになってさあ」 悠介 「やってたら多分認められなかっただろうな」 彰利 「特にサミングはね。あ、ところでさぁ悠介」 悠介 「ん?」 彰利 「あの人達、どしたの?」 悠介 「…………ああ、そうだったそうだった」 向き直ると笑い転げる家族達。 もう涙まで流して相当に苦しそうだった。 うーむ、ああはなるまい。 彰利 「おお、そういやアタイが仕込んだワライダケ、堪能してくれたかい?」 悠介 「やっぱりお前か……」 彰利 「うむ、仕入れるの苦労しましたよ。闇市の人々に感謝」 悠介 「毎度思うんだけどさ、お前何者?」 彰利 「ちょっぴりおちゃめで普通じゃない人間」 悠介 「解毒剤はないのか?」 彰利 「うわ、自己紹介してる時に話題変えることないじゃない。でもいいコテ。     解毒剤は───無いね。うん無い。あるわけ無ぇ。オラの村にあるわけねぇ」 悠介 「まいったな、創造の理力は野望のために溜めておきたいんだけど」 彰利 「使えるようにはなってるのですか坊ちゃん」 悠介 「誰が坊ちゃんだ。……ああ、一応な」 彰利 「返事よりツッコミを優先するなんて流石だねぇダーリン。     むしろツッコミと『寝言は寝て言え』って口癖のある人が居れば区別出来んよ」 悠介 「俺の存在ってその程度か……?」 彰利 「泣くんじゃありません!お兄ちゃんでしょう!?」 悠介 「泣くかこのアフロ!」 彰利 「アフロ言うな!     この頭の所為でどれだけあやっさんに殴られたと思ってやがる!     俺の方が解毒剤欲しかったわ!」 悠介 「その頭で本気ギレするな!面白いわ!」 彰利 「ゲェーッ!?アタイがアフロってそんなにおかしい!?」 悠介 「おかしい」 彰利 「ギャア即答!し、しかしこんなおいしい状況を見逃す手はないよな!?     おーいみんなアタイのギャグを聞いてくれー!」 笑い転げている皆様に向かって彰利が回転しながら近づく。 彰利 「えー、コホン。     ……夜中のスリーエフに行ったら店員がザンギエフだったってね。     ハラショーロシア!?」 一同 『───』 あ、笑いが止まった。 彰利 「何故ッ!?」 しかも冷めた目で凝視される。 彰利 「い、いやーん!めっさ恥ずかしい!ごっさ恥ずかしい!     ウケないギャグほど寒いものってねぇよ絶対!     イヤァ見ないでー!そんな冷めた目で見ないでー!     ア、アタイもう穴があったら入りてぇだーっ!」 悠介 「ホレ、穴」 彰利 「ブラックホール!?しかもキン肉マンの超人の方の!?     ていうか理力蓄積させるんじゃなかったの!?」 悠介 「なにを言う。親友の悲しみを和らげようと思って創造したんじゃないか」 彰利 「ダ、ダーリンたら……そこまでオイラのことを……」 悠介 「というわけで逝け」 いい顔だった彰利の背中をズズイッと 彰利 「イヤァギャアアッ!!押さないで進めないで!     『いけ』って部分にどうしようもない殺意を感じさせないで!     アタイこんなペンタゴンと見分けるのが微妙なヤツに殺されたくない!     ていうかキモッ!間近で見るとすげぇリアル!イャアアアア!     感触までなんかエナメルって言葉が合うような全身タイツの感触!     悠介!やめて!押し付けないで!なんか見た目ですっげぇアブナイ!」 悠介 「遠慮するな」 彰利 「する!ていうかさせてください勘弁して!     イヤァア!エナメルが!エナメルがぁあっ!!」 ブラックホール(悪魔超人)に顔を押し付けられながら本気泣きをしている彰利。 さすがに気の毒だったので途中でやめた。 ……もともと途中でやめるつもりではあったけど。 彰利 「やぁよもう……今夜はあなたの夢を見てしまいそうでアタイの胸はドッキンコ」 ブラックホールを見てしこたま嫌そうな顔をする彰利。 悠介 「今夜は安眠だな」 彰利 「悪夢にうなされるって皮肉で言ったのYO!ヒドイわダーリソ!」 悠介 「怒るなって。ちょっとした冗談だ。     ところでみんなの苦しみも治まって来たところで、パーティを続行しますか」 彰利 「おー!って、体よく逃げなかったか?」 悠介 「そんなんじゃないよ。いつまでもブラックホール眺めてるよりはマシだろ?」 彰利 「そりゃそうだけどさダーリン。このブラックホールどうするの?」 悠介 「………」 彰利 「………」 悠介 「お前にやる」 彰利 「全力でいらねぇ!」 即答だった。 Next Menu back