───結糸(けつし)───
彰利 「えー、今日は俺の誕生日のために集まってくれてありがとう。     心から霊を贈るとともに、迸るほどの愛をあなたに贈りたい。     そしてこのロープをほどいてほしいアタイの恋心をここに打ち明けたい」 彼は吊るされていた。 天井からダラーリと。 『れい』の中に霊的なパワーを感じさせながら、彼は再び吊るされていた。 ……アフロのままで。 彰利 「いやぁ、これで何度目かね。     いったいどれだけ吊るされたら気が済むのか自分でも解らないよアンソニー」 若葉 「誰がアンソニーですか」 彰利 「いい加減、裁かれる前のアンコウの気持ちが解ってくる気がしませんかトニー」 春菜 「人の顔見てトニーって言わないで」 彰利 「大体だね、いくらアタイがワライダケ混入した張本人だからって、     この逆さ吊りは割りに合わないと思わないか?なぁマイコー」 木葉 「人をマイコー扱いしてんじゃねぇです」 彰利 「だってさ、このままじゃあ頭に血が降りてきて顔が紫色に変色しそうじゃない。     そんな状態になったら顔がシビレて気絶することもままならん地獄が来るぞ?     あんまりだと思うだろ?だから助けてくれよロドリゲス」 水穂 「ロドッ……!?」 彰利 「なぁ助けてくれないかジョン。頭がバターになりそうだぜ」 セレス「お断りします。そしてわたしはジョンじゃありません」 彰利 「キミなら言い分くらいは聞いてくれるよなジェニコ」 ルナ 「誰よジェニコって」 彰利 「……ネタが尽きた。マジで助けて誰か」 水穂 「なんでボクだけ郡を抜いて雄々しい名前なんですかっ!」 彰利 「はっはっは、偶然ですよ偶然。     故意にやってたら脳髄がいくらあっても足りん。     そして見下ろすアナタのホワイティンがぼくの荒んだハートを癒して」 水穂 「きゃああっ!?」 ドボォッ! 彰利 「おぐぅ!」 若葉 「この……女の敵ぃいっ!!」 彰利 「ゲボッ!ぐふっ!ゲハァッ!うっ……ぐふぁー!げほっ!」 殴られてゆく中であの馬鹿がシドの真似をしていた。 なんとも奇妙な状況の中で、俺はひとりで黙々とケーキをつついていた。 ……うん、実は結構ケーキは好きなのだ。 上出来だ。 彰利 「ゲゲェーブボッ!     ダダダーリンたら親友の危機になにトロケる顔でケーキ食ってゲブボッ!     ちょちょちょっと待ったぁあベッポ!喋ってる時くらい攻撃やめブボッ!     だ、だめだぁー!話すら聞いてもらえぶべぃ!やめっ!ブボッ!やブボッ!」 よかったな彰利。 モテモテじゃないか。 彰利 「てめぇコラダーリンこの野郎!聞こえましたわよ!?誰がアフロだって!?」 悠介 「言ってねぇ!でもアフロだろうが今のお前は!」 彰利 「……フフ、返す言葉もねぇやブボッ!?     ギャアア悲しむ時間すら惜しいのですか!?     やめてとめて殴らないでぶたないで!アタイの二枚目フェイスが崩れぶほっ!」 がくっ。 あ、死───もとい、オチた。 悠介 「そのへんにしてあげてくれ、彰利も悪気があったわけじゃないだろ」 木葉 「お言葉ですがお兄様。     悪気が無い者がワライダケを混入することはありえないと思われますが」 ……たしかに。 でもこいつの場合、悪気というよりは純粋に笑いに走ってただけなんだろうなぁ。 事実、みんな笑ってたし。 ルナ 「あー、馬鹿馬鹿しいわ。     どうしてこんなヤツに振りまわされなきゃならないのよ」 セレス「案外、赤い糸かなんかで結ばれてるんじゃないですか?」 ルナ 「うわっ、表現力が古い」 セレス「うるさいですねっ……!例えるものに古いも新しいもないんですよっ……!」 ルナ 「そう?まあいいけど。それじゃあくりすますの続きでもしよっか」 セレス「こ、このっ……!」 ……なんかルナとセレスの仲が以前より悪くなってる気が……気の所為か? ルナ 「……この飲み物はもういいわ。これ飲んでからだもんね。     じゃあちょっと早いけどメインディッシュに」 そう言いながら例の物体を手に取るルナ。 ……ルナ。 大根おろしはメインディッシュとはちょっと違うんじゃないかな……。 セレス「───?待ちなさいルナ」 ルナ 「むっ?なによ」 セレス「その大根おろし───」 ルナ 「あげないわよ?ネッキーはニンニクでも食べてればいいのよ」 セレス「くっ……ああそうですかっ!どうぞ心ゆくまで食べてなさいっ!」 うおう。 どうしたんだセレス。 ルナ 「……?なに怒ってるんだか」 ───もしゃっ。 モゴモゴ……ごくん。 ルナ 「うん、おいしー♪───ぷっ───ふ、あ、あれ……?く、ふふふ……!?」 ……大根おろし醤油を食べたルナが、突然変調を見せた。 ていうか───笑ってる。 ルナ 「ちょっ……うそ……!まさか大根おろしにまで……!?     くっ……ふ、あはははは!」 セレス「……だから言ったんです、まったく。それを頭ごなしに嫌味で返して。     ……自業自得ですね、しばらく苦しんでなさい」 ルナ 「あっ……あははははははっ!くひふっ……!ふ───あはははははははっ!」 やがて大声で笑い出すルナ。 確かにさっきのルナは自業自得だ。 放っておこうか。 ところで─── 悠介 「セレス?どうしてあの大根おろしが危険だって思ったんだ?」 セレス「匂いですね。嗅げば大体の異常は解ります。     ただし、ああいう多くの材料を使っていないものに限りますが」 悠介 「……なるほど」 若葉 「……あの、おにいさま?もしかしてこの料理、全てにワライダケが───?」 悠介 「ん、ケーキは大丈夫だったぞ?美味しかったし」 セレス「はい、ありがとうございます」 若葉 「むっ……!」 木葉 「姉さんこらえて」 若葉 「何もしませんっ!」 木葉 「……残念です」 春菜 「まあまあ、こうなっちゃったら仕方ないよ。ケーキだけ食べよう?」 若葉 「それしかないですよね。それじゃあ……」  《───フフフ、どこまで甘いヤツらよ───》 悠介 「な、なにぃ!?」 水穂 「大変ですおにいさん!吊るしてたホモさんが居ません!」 悠介 「!し、しまったぁ!完全に忘れてたぁ!」  《───それはそれで傷つく言い方するなよ泣くぞチクショウ!   だが……クォックォックォッ、あげなもんでこの俺を捕らえていたつもりか?   ちゃんちゃらおかしくて笑えてくるわ!さあ!後悔するなら今が旬!   貴様らには『行き倒れたお笑い芸人』の異名をもつ俺様が裁きを申し渡す!   うわぁっはっははっはっは───はげっほ!ごへほっ!ごほっ!!───》 悠介 「ああっ!行き倒れたお笑い芸人が咽てる!」 春菜 「うん、むせてるね」 セレス「格好つきませんねぇ」 ルナ 「あはははは!あははははははははは!!」  《───お、お黙り!本人に聞こえるように言っちゃあかわいそうでしょ!?   ていうか笑うなルナーっち!今はその笑いがかなり心に痛いです!───》 悠介 「自業自得だろ」  《───お黙り!……フフフ、さて───そのケーキだが。   実は切り分けられた8切れの中にひとつだけワライダケ入りが混じっている。   その名もロシアン……ワ、ワライダケ?───》 悠介 「どうして疑問系なんだよ……」  《───だってロシアンケーキじゃ格好つかんし───》 悠介 「どっちにしろ語呂も悪けりゃ名前もカッコつかんだろ。     諦めてさっさと出て来い行き倒れたお笑い芸人」  《───異名として呼んでないだろキミ!悪口みたいに言うなよ!───》 悠介 「しかしまいったな、俺が食った部分を考えると───残り7切れか。     ああ、もちろん俺はもう食ったからいいんだが……」 木葉 「簡単です」 悠介 「木葉?」 木葉 「……例えば一切れずつフォークで部分的に削ります」 悠介 「え?あ、ああ」 木葉 「それをこの死神に」 がぼっ! ゼノ 「ぐおっ!?」 悠介 「うおっ!?」 ギャア!まさかゼノに食わせるとは思わなかった! とか思っている内にどんどんと切れ端をゼノの口に突っ込んでいく木葉。 ───が、3切れ目でそれは止まった。 ゼノがなにやら痙攣し始めた。 木葉 「……ビンゴ、です」 木葉が痙攣の原因となったケーキをがぼっ。 ルナ 「!?」 ルナに食わせた。 いや、口に押し込んだ。 ルナ 「───!───!」 そして笑っていた彼女はより一層苦しむハメとなった。 そんな状況の中で、俺はやっぱり思うのだ。 悠介 「……これ、クリスマスじゃないだろ……」 とてもそんな雰囲気ではないパーティを目の前に、溜め息はとめどなく溢れ返っていた。 ………………。 静かな時間だったのを憶えている。 騒ぎが終着を迎えてから数時間後、俺は起き出して廊下を歩いていた。 足取りは軽い。 眠く、だるかった筈の頭はいつの間にか冴えていて。 やがて見えた台所に寄り、喉を潤し───……たかったのに、水が流れてこなかった。 仕方なく溜め息を吐いて外に出た。 悠介 「───」 見上げる空は闇だった。 薄く濁ったような空の先にある筈の月は、その光だけで己の存在を見せ付けていた。 ───さて。 悠介 「居るんだろ?出てこいよ」 何も無い虚空に話し掛けた。 すると空は歪み、そこから黒ずくめの存在が現れた。 死神 「やあ、会えて嬉しいよ悠介」 悠介 「人の夢に侵入してまで呼んだのはお前だろ?会えたもなにもないだろう」 死神 「そうでもないよ。来てくれるとは思わなかった。     来なかったら諦めるつもりだったし、深入りもしないつもりだった。     暇さえ潰せればなんでもやるけどね、スジは通しているつもりだよ」 悠介 「たしか、シェイド=エリウルヒド、だったか?」 死神 「そう。憶えていてくれて嬉しいよ。ただフルネームはちょっと面倒だろう?     ルヒドと呼んでくれると嬉しいな」 悠介 「……解った。それで?なにか用なのか?」 ルヒド「いやぁ、用ってほどのことでもないけどね。     いい加減、キミも解放されたいんじゃないかってね」 悠介 「解放?」 ルヒド「フレイアのことさ。ずっと魂結糸で縛られているのも辛いだろう?」 悠介 「……でも俺はそれに助けられてきた。それはそれでいいんじゃないか?」 ルヒド「それはそれでいい、だなんてキミらしくない言葉だなぁ。     キミがそれに助けられたのはひとえにキミが弱かったからだよ。     弱いなら強くなればいい。今日はそんな暇潰しがしたくて誘ったんだ」 悠介 「……暇潰しか」 ルヒド「そう、暇潰しさ。さあ、どうしたい?     キミがそうしたいと言うなら、僕も手を貸そう。     創造の理力はそのままで、糸だけを切ってあげてもいい」 悠介 「それは契約か?」 ルヒド「そう。二重契約になるけど───いいや、三重かな。     キミはもうルナと二回契約を結んでいるんだったよね?     それを知ったからこそゼノを送ったわけだし」 悠介 「ゼノを送った?……そうか、合点がいった。     黄泉を支配してるのはウィルヴスなんてやつじゃないな?」 ルヒド「残念。支配しているのはウィルヴス=ブラッドリアだよ。     僕はそれを後ろから手伝っているに過ぎない。     彼は確かに強くて頭のきれる存在だけど、それ故に無茶が多いんだ。     だから僕は───そうだね、昔で言う軍師みたいなものだよ」 悠介 「………」 ルヒド「ああ、ごめん。話が逸れてしまったね。     さあ、どうしたい?キミの考え次第で未来は変動することになる。     もともとキミ達家系の人間は、死神と契約することなんて平気な筈だよ?」 悠介 「随分なこと言ってくれるな。平気なわけないだろう」 ルヒド「───キミの血の中の魔が、死神だと知ってもかい?」 悠介 「───なに?」 ルヒド「キミ達の先祖は他ならぬ死神だよ。     神と死神が融合して産まれたのが月の家系というものだ。     まあ、まさかベヒーモスだなんて言うとは思わなかったけどね」 悠介 「ま、待て。頭の整理がおいつかない……」 ルヒド「───ああ、邪魔なものがあるね。     先死爆の法か。邪魔だから取ってしまおうか」 悠介 「え───?」 ルヒドが俺の頭に手をかざした。 すると頭の中で何かが消えた感じだけが残る。 ルヒド「これで大丈夫。春菜って娘が埋め込んだ能力は消しておいたよ」 悠介 「………」 ルヒド「そんなに驚かないで欲しいな。僕はこれでも家系の開祖に近い死神だよ?     これくらいのことは出来て当然さ」 悠介 「家系の開祖……!?」 ルヒド「に、近い存在。僕は開祖じゃない。神によって産み落とされた存在だよ」 悠介 「なっ、なんだって!?」 ルヒド「だから思考も感情もハッキリしている。     だけど、だからこそ退屈だけはどうしようもなくてね。     それを消すためならどんなことでもするよ」 悠介 「………」 ルヒド「沈黙の多い子だね、悠介は。もっと感情を出したらどうだい?」 悠介 「ほっとけ……」 ルヒド「ふふっ、まあいいかな。何か訊きたいことはないかい?     糸の切断の決心がつくまでお話でもしようか」 悠介 「───」 ルヒドはそう言うと、ひらりと地面に降り立った。 ルヒド「───うん、地面に降り立つのも何百年ぶりだろう」 子供のように微笑む。 それは確実に、俺の中の死神の像を打ち砕いた。 ルヒド「訊きたいことなんて無いかい?それなら本題入ってもいいんだけど」 悠介 「い、いや……聞かせてくれ。     まさかとは思うけど……家系の開祖ってのは」 ルヒド「それも残念。ウィルヴスは純粋な死神だよ。     半端な死神は僕とルナくらいさ」 悠介 「……それじゃあもうひとつ。どうしてフレイアは感情を持っているんだ?     彼女も純粋な死神だったんだろう?」 ルヒド「いいところに気がつくね、悠介は。キミがその質問をしてくれて嬉しいよ。     いいかい?フレイアは確かに純粋な死神だった。     だけどひとつだけおかしい部分があった。それがなんだか解るかい?」 悠介 「───女であること」 ルヒド「ふふ、正解だよ。そう、死神はずっと男として存在が確立されていった。     その中で何故、彼女が産まれたのか。     その原因は僕の暇潰しだったりしたわけだよ」 悠介 「───どうでもいいけどさ、あんたって言い辛そうなことキッパリ言うよな」 ルヒド「永い年月は遠慮を無くすものさ。僕はこれでいいと思うよ。     さて、暇潰しで死神の情報を遺伝子レベルで書き替えるようなことをして、     そして産まれたのがフレイア。もちろんいじったから感情も持っていた。     闇から生まれ出る存在の遺伝子を書き替えるのはある意味最高の暇潰しだった。     そういった意味から言えば、いわば僕は彼女の親みたいなものかな。     もっとも、孝行してくれなんて言ったら殺されかねないけどね」 悠介 「……殺せないだろ」 ルヒド「うん、僕の力はウィルヴスより強いからね。     彼を超えられない限りは相手にもならないと思うよ」 悠介 「ハッキリ言うなぁ」 ルヒド「先延ばしする意味もないからね。さあ、他に聞きたいことはないかい?」 悠介 「───結局、この月操力ってのはなんなんだ?」 ルヒド「神の神法力、死神の死法力が融合して出来た力を月操力って呼ぶ。     まあ、神の子と死神が融合した時の契約特典みたいなものさ。     ただ開祖の場合は融合ということだったから、     それなりに大きな特典がついてきたってことになるんだ」 悠介 「それが能力の開花とかってわけか……」 ルヒド「読みがいいね、その通りだよ」 悠介 「それじゃあ、アンタが得た特典ってのはなんだったんだ?」 ルヒド「僕の特典は言ってしまえば死神になれたことさ。     僕は人間という存在に見切りをつけていたからね。     僕にとって、これ以上の特典は無かった。     それで死神になったわけだけど、能力は大したものじゃなかった。     そこで死神というものを闇の深淵で研究して、こうして強くなったわけだよ」 悠介 「サッパリ言いすぎだ……」 ルヒド「そうかい?簡潔に述べた方がいいと思ったんだけどなぁ」 悠介 「ところでさっきから気になってたんだが───     その口調、昔っからそうなのか?」 ルヒド「ああ、これかい?これはね、ひとりの人間をベースにしているんだよ。     彼の行動、人生、言動の全てが僕の理想だったからね。     もっとも、人生の部分は『苦しみ』が大前提だけど」 悠介 「苦しむことが好きなのか?変わったヤツだな」 ルヒド「そこのところは僕も死神ってことだよ。限界を試してみたくなるんだ。     なまじ強くなると、どうしてもね」 悠介 「…………」 ルヒド「うん、質問はこんなところかな?」 悠介 「い、いやっ……その……た、例えばだぞ?」 ルヒド「恋路かい?」 悠介 「ハッキリ言うなってば!」 ルヒド「ははは、ごめんよ。さ、続けてくれないか」 悠介 「う〜……た、例えば、その……」 ルヒド「例えば、ルナと結ばれた時、自分は死ぬのか否か。かな?」 悠介 「察してるなら答えだけくれ……。恥ずかしいだろうが……」 ルヒド「ははは、いいじゃないか。さて、答えだけど死にはしないよ。     死神と交わったことで死んだとか言われていた望月恭介も、     事実上はゼノに狩られて命を落としただけなんだからね。ただ」 悠介 「ただ?」 ルヒド「子供が生まれるかは解らないかな」 悠介 「め、珍しく途切ったと思ったらそんなことかよ!」 ルヒド「ふふふふ、冗談だよ。多分子供も生まれるし母体ともに安全だよ。     しかし意外だったかな。そんなことを訊いてくるだなんて。     もしかして今一番気になっているのはルナなのかな?」 悠介 「殴るぞ」 ルヒド「やめておいた方がいいよ、手を出した時点で腕が飛ぶから」 悠介 「ツッコミも出来ないんかい……」 ルヒド「もう質問はないかな?」 悠介 「───ああ、こんなもんだと思う」 ルヒド「そうかい?それじゃあ話を元に戻そうか。     キミは解放されたいか、それともずっと糸で縛られて生きていくか」 悠介 「あのさ、その言い方は少し卑怯じゃないか?     ルナは善意で結んでくれたんだし、     この糸がなかったら彰利だってこの世界に居なかった。     それを解放とか縛られるとか、もうちょっと言い方を選んでくれよ」 ルヒド「これは性分だよ。気にしないでくれ、って言っても無理だね。     それでも一応似たようなものだし、言い替えても気分は収まらないだろう?     それなら返事をくれないか。そうした方がこの話も終わる」 悠介 「暇潰しがしたいんじゃなかったのか?」 ルヒド「僕も暗い空気は好きじゃない。そういうところは人間のままさ」 悠介 「───」 ルヒド「決まったかい?」 悠介 「俺の創造の理力を強めることは出来るか?」 ルヒド「それはキミの想像力に比例するよ。     完全に馴染ませることくらいは僕にでも出来るけど、     イメージの強化は無理だね」 悠介 「じゃあ、例えば俺が彰利にやったみたいに自分の魂を作れば───」 ルヒド「そうだね。魂結糸がなくても行動できるようになるよ。     ああ、そうか。そういう意味では解放がどうとかは関係ないね。     頭が回るんだなぁキミは」 悠介 「……あんた、人を馬鹿としか思ってなかっただろ」 ルヒド「そうだね」 悠介 「ハッキリ言うな!」 ルヒド「さて、話もまとまったことだし。キミの魂と理力を結合させるよ?」 悠介 「……フレイアの時みたいなのは勘弁だぞ」 ルヒド「そんなことしないよ。     ゼノはあのとき強くなることしか頭になかったから、     人を騙してでも人間の魂を吸収し続けていたんだ。     僕はもう強くなる必要なんてないからね。     これ以上限界の上をいったらそれこそ試してみたくなるよ」 悠介 「……試しにウィルヴスってヤツと戦ってみたらどうだ?」 ルヒド「悪いけど遠慮しておくよ。     それで勝ってしまったら僕が黄泉の面倒事を抱えることになるだろう?」 悠介 「……軍師か」 ルヒド「そう、軍師さ」 悠介 「解った、始めてくれ」 ルヒド「うん、少しの間だけ動かないでおいてくれるかい?」 悠介 「始めてくれって言っただろ?」 ルヒド「はははは、口が減らないなぁキミは」 ほっとけ。 ルヒド「───はい、終わり」 悠介 「早ッ!?」 ルヒド「え?遅くやってほしかったかい?」 悠介 「いや、そういう意味じゃなくて……もう終わったのか?」 ルヒド「うん、終わったよ。今ならもうなんでも創造出来るから」 悠介 「……じゃあ、人の魂とかも?」 ルヒド「もちろん。まあ、抜け殻みたいな魂だろうけど」 悠介 「人とかも?」 ルヒド「もちろん」 悠介 「げ、原始人とかも?」 ルヒド「それはキミのイメージにもよるけど」 悠介 「ま、まじか?」 ルヒド「やってみるといいよ。死神が出ます、でもいいし」 悠介 「あ、もしかしてその代わりに体力の消耗が激しいとか」 ルヒド「もちろん」 悠介 「やっぱりか……」 そんなこったろうと思ったよチクショイ……。 Next Menu back