それは昔の物語。
 
いまはもう亡き自分の創造主を思う。
 
わたしはずっと結晶の中でそれを見ていた。
 
記憶にある光景はそれの誇張だろう。
 
わたしは高台にある大きな屋敷……研究所の奥で造られた。
 
目を開けたのは、ほんの小さな子供の時。
 
男の亡骸を通り過ぎ、わたしは保存用の血で喉を潤した。
 
……べつに、美味しくもなんともなかった。
 
だから飲まずにいたら、わたしの体は成長していった。
 
……馬鹿げている。
 
そう、笑うしかなかった
 
………………。
 
……時々、子供が屋敷の前で泣いていることがあった。
 
道に迷ったんだろうか、などと思いながら、扉を開けて迎えてあげた。
 
不思議に思うことがある。
 
会話というものはこんなにも楽しいものなのかと。
 
泣きじゃくっていた子供も、今では元気に笑っている。
 
でもわたしは笑顔というものが解らなかった。
 
どうしてそんな顔が出来るのか。
 
どうして笑っていられるのか。
 
そんな疑問ばかりが、わたしの中で渦巻いた。
 
「おねえちゃん、どうしたの?」
 
子供が問い掛ける。
 
わたしはなんでもないと答えた。
 
……彼はなんのためにわたしを造ったのか。
 
わたしがここに居る理由はなんなのか。
 
そんなことを、いつでも考える。
 
その答えに至ることこそ、わたしの生きる糧なんだと、そう思う。
 
……そう、思ってた。
 
…………。
 
子供が話したのか、屋敷には人が訪れるようになった。
 
別に人の来訪が嫌だったわけじゃない。
 
だからわたしも拒むようなことはしなかった。
 
だけど、わたしは人と関わるべきじゃなかったのかもしれない。
 
……子供と一緒に居て、わたしは『感情』というものが無いことが解った。
 
それは子供……フェイトに言われて解ったことだ。
 
どうして笑わないの?と……訊ねられたときに理解した。
 
フェイトは必死で『笑顔』の仕方を教えてくれた。
 
顔を指で伸ばし、こう笑うんだよ、と言ってはしゃいでいた。
 
でも、どうしても笑うことの出来ないわたしは、
 
どうしたらいいのかも解らず、その様を見ていることしか出来なかった。
 
いま思えばなんて楽しい時間だったんだろう。
 
あの時はまだあそこにはぬくもりがあって、今のわたしならきっと笑っていられたのに。
 
………………。
 
……『後悔』、という言葉を知っている。
 
わたしにはその言葉を知る日があった。
 
───ある、強い雨の日のことだ。
 
その日もわたしは屋敷の書斎にあった本を読んでいて、
 
周囲の音なんて気にしないで過ごしていた。
 
それがいけなかった。
 
油断。
 
雨が窓を叩く音が大きすぎて、音を気にしないようにするしかなかった。
 
それが、油断。
 
すぐ近くまで来ていた男に気づくことすらできなかった。
 
男はナイフを手に、わたしの腕を浅く切った。
 
そして言う。
 
『変だと思ったんだ』、と。
 
わたしの意思とは関係なく傷が消えてゆく腕を見ながら。
 
男は言う。
 
バケモノめ、と。
 
ナイフを振りかざし、襲ってきた。
 
ナイフで刺された程度で死なないことは自分が一番知っていた。
 
でもわたしは刺されるつもりはなかった。
 
死なない、といっても痛い。
 
それは誰だってイヤなことだ。
 
───それなのに。
 
「あっ……」
 
……声が、聞こえた。
 
男のものでもわたしのものでもない若い声。
 
見れば、フェイトがわたしの目の前で背中を刺されていた。
 
───違う、かばったんだ。
 
どうして?
 
わたしは感情の無い声で話し掛ける。
 
それとは対照的に、フェイトは笑ってみせた。
 
「ほ……ら、こうや……って……」
 
弱々しく笑いながら、指で自分の顔を笑顔にする。
 
痛い筈なのに。
 
苦しい筈なのに。
 
わたしに、笑ってと……。
 
だけどわたしは笑ってあげられなくて、表情を変えることも出来なくて……。
 
やがて冷たくなってゆくフェイトを抱きしめながら、
 
わたしは初めて……大声で泣いた。
 
………………。
 
くだらない昔話。
 
男は『自分の息子』を殺したことで精神が壊れ、
 
その罪においても罰せられ、命を落とした。
 
あれ以来、わたしには『感情』というものが現れた。
 
だけど喜べるわけもなかった。
 
どうして間に合わなかったのだろう。
 
どうして、笑ってあげられなかったのだろう。
 
つまり、これが……わたしが知った後悔だった。
 
だから、誰かに罰して欲しかった。
 
どんな殺され方でもいい。
 
死の先に世界があるのなら、その場所でフェイトに謝って……
 
そして微笑んであげたかった。
 
………………。

わたしは屋敷に訪れる人に、自分が吸血鬼であることを教えた。
 
自分がこの場所で造られたことも。
 
そして、血を吸わなければ生きていけないことも。
 
こうすることで、わたしをきっと憎んでくれると思った。
 
でも、街の人は『……そうか』と言って、普段と変わり無い微笑を返すだけだった。
 
バケモノだろうとなんだろうと関係無い。
 
あの子が好きだった人だ、悪い人じゃない、と。
 
そう、言ってくれた。
 
長い間傍に居たあの子が大丈夫だったんだから、
 
俺達だって大丈夫さ、と言う青年。
 
その言葉で、周囲の人達はみんなで笑い合った。
 
そして言ってくれた。
 
あいつのおかげで笑えるようになったんだろう?
 
だったらあいつの分まで笑わなくちゃな、と。
 
……嬉しい。
 
これが、嬉しいという感情。
 
凍っていた感情が、本当に柔らかくなってゆくのを感じた。
 
もう迷わない。
 
どれだけ時間が経っても。
 
どれだけ人との別れがあっても。
 
いつか罰せられ、少年の待つ世界に辿り着くまで、わたしはこの感情を大事にしよう。
 
───……さぁ、どこに旅立とう。
 
わたしは何を目指して、これからの道を歩いてゆこう。
 
いつかフェイトに会うことがあったら、
 
それまでの自分を誇れるように、わたしはわたしとして生きてゆこう。
 
この広く大きい、蒼空の下で……───
 





 




 
───疑問(ぎもん)───
───血だまりの中に居る。 この中には自分の血だったものも混ざっているのかと思うとゾッとする。 若葉 「おにいさま……」 若葉が不安げに声を漏らす。 俺の心境としては、呆れてモノも言えないというところだ。 そりゃあさ、いずれはバレてたかもしれないよ。 でもこんなカタチでバレるとは悪夢にも思わなかった。 はぁ〜あ、まいったねまったく。 話さなくちゃ状況進まないよなぁ。 若葉と木葉の様子を見るに、 なんとなくだけどこいつらの邪気の類を感じとってるだろうし。 一方は吸血鬼で一方は死神。 どうしても微量の邪気は出ているみたいだ。 木葉 「お兄様、待ってください」 悠介 「うん?」 木葉 「そのふたり……人間じゃありません」 悠介 「………」 ほら。 さてどうする。 いっそシラを切るか? な、なにぃい!?マジか!?って。 ……いや、なんか即効でバレそうだ。 仕方ない、じっくりと説明するか。 ……後でだが。 悠介 「ははは、大丈夫だろ」 若葉 「おにいさま、冗談なんかじゃないんですよっ!?」 悠介 「……大丈夫だって」 とりあえずニンニク取り除かないとな。 春菜 「……どうなっても知らないよ〜……」 先輩の小声が耳に届いた。 悠介 「これ以上血が流れるよりゃマシデショ」 セレスを抱き起こし、口からニンニクを吐かせる。 ルナも同様に、ニンニクを吐かせる。 そしてルナの頭を若葉達に見えないように軽くこづく。 ルナ 「……ん」 で、起きた。 ルナ 「わぁ血の海」 大層な感想だよ、まったく。 やがて俺を見て、声をかけようとするルナ。 ……が、俺の後ろに居る若葉と木葉を見た途端に固まる。 ルナ 「っ……!……っ!」 口をパクパクさせる。 ルナ 「せ、せせせ、せ……せい、せいす……聖水が……」 そんな言葉に俺はニッコリと微笑んでみせた。 ルナ 「ひぃゃああああああああああああああああああああっ!!!!」 凄まじい速さで消え失せるルナ。 悠介 「………」 あとはセレスか。 セレス「んぐ……?」 あ、起きた。 セレス「……う、血が」 目の前に広がる血の海を見て慌てたあと、やっぱり妹ふたりを見て硬直。 セレス「ご、ごきげんよう!」 セレスは玄関に広がった血を足元から綺麗に吸収して、霧になって消えた。 悠介 「…………………………」 若葉 「……………………」 木葉 「………………」 水穂 「…………」 春菜 「……」 唖然とするしかなかった。 ………………。 …………。 ……。 若葉 「なんだったんでしょう、あの物の怪」 悠介 「なんだったんでしょう、と言われてもな」 とりあえず家にあがった俺達は、客間でお茶を飲みながら話し合っていた。 木葉 「お兄様、あのふたりに心当たりは?」 悠介 「……はぁ。冷静に聞いてくれよ」 若葉 「はい?」 木葉 「なんでしょう」 悠介 「実は……さっきのふたりは俺の知人だ」 木葉 「………」 若葉 「……冗談」 悠介 「悪いが事実だ」 木葉 「………」 若葉 「………」 悠介 「ルナ、セレス、出てきていいぞ」 諦めにも似た口調で、俺は空気に向かって言い放った。 すると霧が集合してきて、やがて人の形をとる。 悠介 「彼女が吸血鬼のセレスウィル=シュトゥルムハーツ」 セレス「さきほどは失礼しました」 ペコリとお辞儀をする。 悠介 「そして……」 水穂 「みぎゃぉぇぃゃああああああっ!!」 突如、水穂ちゃんが叫んだ。 ルナ 「あはは、驚いた?」 足元からルナが壁抜けの要領で出てくる。 悠介 「彼女が自称死神のルナ=フラットゼファー」 ルナ 「これで聖水の心配は無くなったわけよね?」 悠介 「さあな」 ルナ 「うう……」 悠介 「ちなみに先輩はこのことを知っていて、     尚且つルナとセレスと先輩、     その内の誰かが死ねば俺も死ぬようになってしまっている」 若葉 「なっ!ど、どうしてっ!」 悠介 「そんなの俺が訊きたい」 木葉 「他のふたりは悪魔的な亜種族ですから理屈は解ります。     ですが、何故春菜先輩まで?」 悠介 「……言っていいかな、俺の悲しい境遇」 春菜 「なんだかんだで恨んでるね」 悠介 「あたりまえだ」 春菜 「じゃあわたしから話すよ。     わたしが月の家系の一族なのは知ってたよね?」 木葉 「はい、伺っておりましたが」 春菜 「うん。わたしはね、     その家系の中の『月醒力』っていう能力を持って生まれた者なの。     あ、『印』っていうんだけどね?持って産まれるのは稀なの。     で、昨日ふたりが学校行ってる時にそこの吸血鬼さんが暴走してね?     それで丁度帰ってきたわたしがピンチだった悠介くんを助けて、     しばらくして決着ついて、悠介くんの体内にヴァンパイアウィルスが……」 悠介 「先輩……手短にお願い」 春菜 「えー、これからがいいところなのに」 悠介 「いいから」 春菜 「……えっと、とりあえずそこのふたりにとって、     わたしの能力は邪魔でしかないだろうから、     いつかは消しにかかるんじゃないかなって思ったの。     そういうことで、わたしの霊力を悠介くんの頭に埋め込んで、     わたしが死んでしまったら爆発するようにしたの」 悠介 「ちなみに言うと、俺はルナに魂の補助をしてもらっていて、     彼女が死ぬと俺も死ぬ。     そして、セレスにはもう噛まれてしまっててね。     彼女が死ぬと、俺の中に送り込まれたヴァンパイアウィルスが溶けて、     俺もヴァンパイアになってしまうんだ、これが」 お手上げポースをとってみせる。 若葉 「………」 ぱたり。 木葉 「………」 ぱたり。 悠介 「ああッ!!」 ふたりが気絶した。 悠介 「うーむ、現実離れしずぎていたか」 春菜 「それに慣れてるんだからスゴイよ悠介くん」 悠介 「なにごとも経験、とはよく言ったもんだ」 水穂 「あう、あうあうあうあう……」 悠介 「ん?ああ、別に怖がらなくていいって。     人畜無害だから。かっこ俺はその範疇から度外視される、かっことじ」 ルナ 「わたしは別に悠介を傷つけてないじゃない」 セレス「わたしだって直接的には何もやってませんよ」 悠介 「俺が言いたいのはだな。お前らふたりが合わさると、     絶対に俺がヒドイ目に遭うって……そういうことを言いたいんだよ」 ルナ 「だってこのクサレ馬鹿吸血鬼が」 セレス「この知能指数がアオミドロなボケ死神が」 ルナ 「なによアオミドロって!」 セレス「誰がクサレ馬鹿吸血鬼ですかっ!」 悠介 「万物併用、純度100%の聖水が───」 指で輪を作り、イメージを…… ルナ 「喧嘩してる場合じゃなかったわね」 セレス「そうですね、ここは平和的な解決を」 イメージを弾けさせる前に、ふたりがテシンと手を合わせた。 水穂 「だ、大丈夫って言えるんですか?これって……」 悠介 「言える。だからノープロブレムでドンと構えよ」 水穂 「あうぅ……」 悠介 「さて、今日は泊まってゆくんだったね。     遠慮せず、どの部屋でも使うと……待たれよ」 水穂 「……あう」 悠介 「何処へおでかけですかなミス紅」 水穂 「あ、その、もう帰ろうかと……」 悠介 「ははは、馬鹿言っちゃいけない。     ただでさえ石段で疲れているというのに、     降りる行為なんてしてみろ。それこそ明日、動けないぞ」 水穂 「でもでもここに居るよりはっ」 悠介 「安全だと言ってるんだけどな。     なんも恐怖なんてないから安心していいよ」 水穂 「そんなこと言われても……っ!」 ふたりの人外なる者を見る水穂ちゃん。 ルナ 「無害無害」 にこにこと笑って応えるルナ。 セレス「悠介さん以外の血は吸いませんから」 クスッと笑って、口元を隠すセレス。 春菜 「別に『壊す』力じゃないから、安心していいよ」 にぱっ、と笑う先輩。 悠介 「俺の力も『壊す』力じゃないから。     俺のはただの創造の力。輪や穴があるところからいろいろ出せるだけだ」 ルナ 「……騙されちゃダメだよ〜」 悠介 「別に騙してないだろ」 ルナ 「ん〜ん、悠介ったら自分に能力があること黙ってるから」 悠介 「……お前さ。ついこのあいだ、無いって言ってなかったか?」 ルナ 「よくよく考えたらさ、     お札だけでわたしを退けられるわけなかったのよ」 悠介 「ああ、あれか」 セレス「何の話ですか?」 ルナ 「あ、じゃあネッキーで実践してみよっか。     えーと、そこの村娘さん。そこのお札とって」 水穂 「村娘……」 なにやら納得いかなさそうな顔をしながらも、お札を手に取る水穂ちゃん。 ルナ 「じゃ、それをネッキーに渡して」 水穂 「はい」 セレス「ネッキーと呼ばれて、どうして真っ先にわたしだと解るんですか」 水穂 「あ、なんとなくで」 セレス「……なんか納得できません」 ルナ 「ん、なにも起きないでしょ?じゃあ次は悠介にお札を渡して、村娘」 水穂 「……わたし、紅水穂っていいます」 ルナ 「そうなんだ、わたしはルナ=フラットゼファー。……えっと、ベニーでいいかな」 水穂 「…………かんべんしてください」 ルナ 「じゃあよろしくね、村娘」 水穂 「はうぅ……」 泣き顔の水穂ちゃんからお札を受け取る。 ルナ 「悠介、わたしから逃げてた時の感覚、思い出して」 悠介 「あの時の感覚?難しいな……」 …………。 悠介 「……いいぞ」 ルナ 「じゃあお札をネッキーに渡して」 悠介 「んじゃ、ほい」 セレス「はい…………っ!?ぁぁああああああああああああっ!!」 ガカァアアアアアアッ!!! 鋭い閃光が部屋の中に炸裂する。 青白い電撃のようなものが唸り、セレスの体を襲った。 セレス「あ……っ、ぐ……く……ぅ」 見れば、セレスの体からは電気で感電したかのように煙が出ている。 ルナ 「ね?こういうものなのよ」 セレス「……こ、この馬鹿クサレ死神……!わたしで実験しましたね……!!」 ルナ 「だって痛いのイヤだもの」 春菜 「綺麗だったね〜」 水穂 「どうしてそんなに余裕でいられるんですか〜!」 春菜 「多分……十六夜の力……かな。月鳴力系統の能力。     十六夜に宿る力。うん、間違い無いと思うよ」 悠介 「先輩、なにその物騒な本」 春菜 「物騒とは失礼だよ悠介くん。     これはね、更待に伝わる能力の系統図なんだから」 悠介 「何処から出したか訊きたい」 春菜 「ん、鞄から。大切なものだからね、いつも携帯してるんだよ」 悠介 「ふつうさ、丁寧にしまっておくだとかさぁ……」 春菜 「盗まれたら笑いとばしてハイ終わり、だなんていかないんだよ?」 悠介 「………」 春菜 「ほら、まあ見てよ」 朔月 :誕生の印。   月生力=『癒す』力 三日月:分割の印。   月切力=『割る』力 十日夜:十字の印。   月聖力=『清める』力 十三夜:確認されていない。 望月 :再生、融合の印。月療力=『転生、融合』の力 十六夜:雷の印。    月鳴力=『雷、退け』の力 弦月 :確認されていない。 立待 :静寂の印。   月清力=『静める』力 居待 :緑の印。    月然力=『活かす』力 臥待 :風の印。    月奏力=『奏でる』力 更待 :光の印。    月醒力=『光、破邪』の力 晦  :影の印。    月影力=『影、連結魂』の力 悠介 「意義アリ!」 春菜 「わっ!ゆ、悠介くん!いきなり大声出しちゃダメでしょ!」 悠介 「これ!晦のところ!連結魂(れんけつこん)
ってコレ!」 春菜 「……うん、それはわたしも考えたんだけど……」 悠介 「もしかして、こいつらも印背負ってるの?」 春菜 「……まあ、長い歴史、こういうこともあるよ」 悠介 「笑ってる場合かっ!」 春菜 「ごめんなさい」 悠介 「なんてこった……     こいつらだけは普通の暮らしをさせてやりたかったのに……。     ああっ!誰だよ能力者は稀に生まれるだなんて言ったのはっ!」 春菜 「ごめん、わたし……」 はい、と手を挙げる先輩。 悠介 「……なんてーかさ、この能力、結局どう使えとおっしゃるの」 春菜 「なににも使えないんじゃないの?     だって使うべき状況も訪れないだろうし」 悠介 「……じゃあ、使わなけりゃあいいわけだ」 春菜 「そだね」 悠介 「……よし、夕飯の仕度でもするか」 とりあえず安心……なのか? まあいい。 メシでも食して頭を落ち着かせよう。 春菜 「あ、手伝おっか?」 悠介 「結構!ゆっくり待っていてくれ」 春菜 「うー……」 …………。 ルナ 「死神のことを教えちゃおう」 セレス「そんなふざけたことより、吸血鬼のことを」 水穂 「あの、その、えっと……」 ルナ 「どっちが知りたいっ!?」 セレス「吸血鬼ですよねっ!?」 水穂 「いやぁあっ、ボクを、ボクを帰してくださぃいいっ!!」 春菜 「……今日もいい月夜になりそうだなぁ」 ………………。 悠介 「出来たぞ〜」 ルナ 「わたし、陰気以外はちょっと……」 セレス「わたし、血液以外はちょっと……」 悠介 「彰利の料理を我先にと口につけてたのは誰だ」 ルナ 「うぐ……」 セレス「フフッ、いじきたないこと……」 ルナ 「うるさいわね」 悠介 「先輩、ふたりを起こしてやってくれ」 春菜 「了解。水穂ちゃん、手伝って」 水穂 「は、はい」 ふたりがかりで、若葉と木葉を起こしにかかる先輩と水穂ちゃん。 が、数分後……起きない、ダメでしたの言葉を残して撃沈。 仕方なくそのまま食すことにした。 もぐもぐ……。 悠介 「なんだかんだ言って、食うんだな」 ルナ 「まあまあ、いいじゃないの。ヤボはおよし」 悠介 「時々思うんだけど、お前って死神のイメージ完全に破壊してるよな」 セレス「この漬物、なかなかの味ですね」 悠介 「だろ?自信あったんだよ」 春菜 「……女として」 悠介 「うん?」 春菜 「……ナンデモナイヨ……」 悠介 「………」 水穂 「ほんと、美味しいです〜っ!     もうもう、お婿さんに欲しいくらいですよ〜っ!」 姉妹 『100年早いっ!!』 水穂 「ひえっ!?」 悠介 「よう。目、覚めたか?」 木葉 「いえ、なんかその、聞き捨てしちゃいけない言葉が聞こえたもので」 若葉 「片腹痛いです」 悠介 「まあほら、立ってないで座れ。メシが冷める」 木葉 「あ、それはもったいないですね」 若葉 「いただきます」 若葉と木葉も加わり、今日の夕飯は穏やかなものとなった。 Next Menu back