───極凶(きょっきょう)───
もとい、なるわけがなかった。 若葉 「大体、どうして死神がおにいさまに憑依してるんですかっ」 ルナ 「どうしてもなにも、そうしないと悠介が死ぬんだってば」 若葉 「よ、呼び捨てぇっ!?許せません!     ちょっとあなた!どういう了見でおにいさまを呼び捨てにっ!」 ルナ 「人を呼ぶのに誰かの許可でも要るっていうの?」 若葉 「うぐっ……!そ、それでもおにいさまは……!」 ルナ 「おにいさまは、なに?ん?なんなのかなぁ?」 若葉 「う……う……うぅううう……っ!     あうぅううっ!悔しいですおにいさまぁあっ」 悠介 「ああもう、よしよし……。     ルナ、あまり意地悪くしないでくれ」 ルナ 「あ、なによ。わたしが悪いっていうの?     誰をどう呼ぼうとわたしの勝手じゃない」 悠介 「いや、なんかよう解らんけど、とりあえずお前が悪い」 ルナ 「うわっ、言いきった!ちょっと悠介、過保護すぎだよ〜?」 悠介 「そんなことは断じてない」 ルナ 「わ、また言いきった……って、あぁっ!」 悠介 「どうした?」 ルナ 「ちょっと悠介!その子いまわたしにべーって!     舌出して目の下指で伸ばして、べーって!」 悠介 「幻覚だ」 ルナ 「視力は人間の数十倍あるのよわたしっ。     この確信犯!悠介から離れなさいよ!」 若葉 「いやです。あなたの言うことなんて聞いてあげません」 ルナ 「むきーっ!!こ、この小娘ぇええっ!」 ……ああ、もうどうにでもなれってんだ……。 春菜 「悠介くん、瞬間現実逃避してるとこ悪いんだけどさ」 悠介 「ごめん、悪いと思えることなら、どうか言わないでやって」 春菜 「ごめんね、そういうわけにもいかないの」 悠介 「……なんデショ」 春菜 「ほら、アレ」 先輩の促す方向へ目を向ける。 もちろん嫌々なことは確実だ。 ルナと若葉がここに居る。 と、いうことは、だ。 木葉 「どうしてお兄様の血を吸ったのですか」 セレス「だから、生きるためですよ」 こうなるわけだ。 木葉 「どうしてお兄様に標的を合わせたのですか、と訊いているんです」 セレス「そこに彼しか居なかったからです」 悠介 「木葉、もういいからお前もこっちにこい」 木葉 「……はい」 しぶしぶ話をやめて、俺の隣にちょこんと座る木葉。 ルナ 「あっ、なに!?あなたまでわたしの悠介に近づくの!?」 木葉 「……わたしの?聞き捨てなりませんね」 若葉 「少し独占欲が過剰なのでは?」 ルナ 「い〜じゃない、悠介はわたしを幸せにしてくれるって」 ごすっ! ルナ 「あたぁっ!ど、どうして殴るの〜……」 悠介 「お前なっ!こういう状況でそれを言うかっ!?」 若葉 「……おにいさま」 木葉 「……お兄様……今の話……」 悠介 「子供の頃の話だっ!     まだお前達に会う前の、そんな小さな頃の話なんだって!」 ルナ 「言ったことに変わりはないけどね」 ごすっ! 悠介 「煽るな馬鹿っ!」 ルナ 「……痛い」 若葉 「おにいさま、ちょっとお話があります」 悠介 「あっ、洗濯物出しておかなきゃっ」 木葉 「お兄様っ」 がっ!と制服の袖を掴まれる。 悠介 「……はい」 それで折れた。 否、観念した。 木葉 「それで、どういう経緯で?」 悠介 「俺自身、約束のことはうろ覚えなんだけどな。     昔、俺の両親が俺を巻き込んで一家心中を図ったのは知ってるな?」 若葉 「……はい、お父様から聞かされてました」 悠介 「俺はその時に死にかけて、でもルナに助けてもらった。     だけど、当時の俺はまだ子供だ。     そんな事故に巻き込まれた所為か、身も心も、     そして魂までもが傷ついてしまったんだ」 木葉 「あ……」 若葉 「……お父様が原因、なんですよね……?」 悠介 「いいんだよ、もう気にしちゃいない。     俺にとって、康彦さんと奈津美さんは本当に親みたいなものだったんだ。     感謝はしても恨むようなことなんてありはしない」 木葉 「……そう、ですか……」 悠介 「……話、続けるぞ。     俺はその時、ルナに『このままでは生きていけない』って言われたんだ。     実際、その通りだと思う。     親が死ぬのを目の前で見て、しかも帰る家もない。     これだけ条件が揃っていれば、歩くことも出来ずに死ぬのがオチだ」 若葉 「そんな……」 悠介 「そこで俺はルナと契約をした。     記憶を消すという契約。それと、魂を繋げるという契約。     つまり、俺の魂は弱っていて、ルナからの魂の注入がなければ死ぬんだ。     その後は……まあ、寂しそうにしていた死神さんに、     子供だった俺の口からはその、幸せにするとか出たらしい」 木葉 「一発殴っていいですか?」 悠介 「やめてくれ」 若葉 「どうしてそんなこと言ってしまったんですか」 悠介 「俺が訊きたい」 木葉 「お兄様っ!     祓いの家系に生まれておきながら死神を幸せにするだなんて、     なんてことを言ってしまったんですかっ!」 悠介 「ま、待てっ!最初に言っておくが、俺自身そんなこと言った憶えがっ」 若葉 「おにいさまぁああああああああああああああっ!!!!」 悠介 「キャーッ!!」 ……その日、俺は妹達の説教を延々と聴くこととなる。 反論は許されなかったことを付け足しておきたい。 …………。 …… ……朝である。 小鳥のさえずりを耳に、俺は目を開けた。 そして何故か寝苦しかった眠りのことを思う。 そして、起きようとした途端にそれを理解する。 悠介 「……どうして、お前らがここで寝てるんだ」 まだ開ききらない瞼で妹ふたりを見つめる。 よく寝ている。 いいことだ。 でもな、人の腕にしがみついて寝るのは勘弁してくれ。 そりゃさ、大きい布団で、ベッドなんて反日本風のものなんて使ってないから、 姿勢を正せば3〜4人くらいは寝れるさ。 けどな、どうしてキミ達、俺の腕にしがみつきながら寝てるのさ。 ……起きれん。 悠介 「……まいったな」 ふたりとも、よく寝てる。 起こす、なんて出来ないよなぁ。 ……今日、日曜だったよな。 …………ま、たまにはいいか。 適当に納得すると、俺はもう一度目を閉じた。 障子を通して、穏やかな陽の光が畳を差す。 ああ、今日もいい天気だ……。 …………。 ……。 気づけば時刻は12時を回っていた。 ふたりはまだ寝ている。 ……ちなみに俺はもう眠気が無い。 よく寝られるな、ふたりとも……。 くあ……と、あくびを噛み締めて、逃走を図ることにした。 ようはこの腕をなんとかすりゃいいんだ。 ……簡単に言うことはできるが、実行は難しいのが世の摂理。 がっしりと捕まっているこの状態をどう逃げ出してくれよう。 悠介 「ふーむ……」 結論:無理。 寝よう。 根性があれば出来る筈だ。 ……いや待て。 このままではイカン。 起きよう。逃げよう。脱出しよう。 悠介 「若葉、木葉、起きろ」 とりあえず声をかけてみる。 が、反応無し。 まだるっこしいのは嫌いなので頭突きで起こすことにした。 ゴスンと衝撃が走り、若葉が目を覚ます。 それに次いで、木葉も目を開ける。 若葉 「……おにいさま、頭突きしましたね」 悠介 「幻聴だ」 若葉 「聴覚は関係ありません」 悠介 「それより離してくれ、動けない」 若葉 「え?あ、ごめんなさい」 木葉 「……痛みがわたしにも」 そんなこんなでようやく開放。 ぬおお、自由に動ける四肢のなんと素晴らしきことよ。 悠介 「さてと、着替えるから出てってくれな」 木葉 「丁度良い機会なので覗かせていただきます」 悠介 「出てけ!」 木葉 「冗談ですよ、冗談」 若葉 「それでは、失礼します」 ぺこりとおじぎをして出てゆくふたり。 悠介 「さてと、さっさと着替えて……」 パパッと私服に着替えて、家を出た。 石段を登っていき、神社に到達。 悠介 「ふう……。さて、始めるか」 竹ぼうき片手に気合を入れる。 なんのことはない。 境内の掃除だ。 ……ざっ、ざっ……。 ふう、いい朝……じゃなくて昼ぞ。 春菜 「悠介くん、こっち終わったよ」 悠介 「早ェ!というか居たの」 めしゃっ! 悠介 「ギャアアアアア!!」 春菜 「居たの、じゃないよ。さっきからずっと居たんだから」 ほうきで撫でられた。 ザリャァッ!と、俺の顔が痛かった。 悠介 「そういやさ、おみくじとかって売れてるの?     俺の中の素朴な疑問が、いまここに」 春菜 「立ち直り早いね……まあいいけど。     えっとね、お年寄り以外はここに人なんて来ないよ?     売れ行きは期待なんてしちゃダメだよ」 悠介 「だよな。場所が高すぎるんだよ第一」 春菜 「あ、ちなみにわたしはちゃんと買ってるからね?破魔矢」 悠介 「まあ、それはいいんだけど」 春菜 「……せっかくだし、引いてみる?」 言って、先輩がおみくじを差し出す。 悠介 「……そう、だな」 一応金を出して、一枚引く。 結果は『極凶』。 金運 :増えるどころか減る一方 恋愛運:死ねる 健康運:絶望的どころか絶望 死ぬまで女難の相が付き纏う。 その争いから、平穏な日々が訪れることはないだろう。 悠介 「…………なんかさ、こういう時って金返せって言いたくならない?」 春菜 「引いたんだからダメだよ」 悠介 「えーと、木に結べばいいんだっけ?」 春菜 「確かね」 とりあえずヘコんだご神木に登り、適当な枝に結ぶ。 悠介 「これでよし」 木から下りて、ほうきを手に持つ。 悠介 「さて、続き続き」 ……ざっ……ざっ……。 悠介 「あ、そういや水穂ちゃんは?」 春菜 「ああ、水穂ちゃんならまだ寝てるよ」 悠介 「随分寝る子なんだな」 春菜 「単に、寝る時間が遅かっただけだよ」 悠介 「ふーん……」 ざっ……ざっ……。 春菜 「悠介くん、ちょっといいかな」 悠介 「だめだ」 春菜 「……用件くらい聞いてから断ってよ」 悠介 「わかった、聞いてから断る」 春菜 「うーわー、断る気満々」 悠介 「それで?なにが起きると?」 春菜 「別になにも起こらないよ。ほうきにさ、月鳴力を込められる?」 悠介 「……難しい注文だね。あれって結構無意識なんだけどな」 春菜 「ちなみにわたしは……」 先輩が目を瞑る。 ……しばらくすると、ほうきが光を帯びてきた。 春菜 「こんな感じかな」 そう言った先輩は竹の柄の方を空に向けて、一言を呟いた。 春菜 「発射」 すると───ドチュウウウウウウウウン!! 花火とはとても言えない光線が雲を裂いた。 春菜 「これが月醒の矢。わたしが子供の頃に覚えさせられたものだよ」 悠介 「………」 開いた口が塞がらなかった。 まさか知り合いにビームを撃てる人が現れようとは。 悠介 「先輩、お願いしたいことがある」 春菜 「なにかな」 悠介 「是非とも、目から撃ってみてくれ」 春菜 「いやだよ」 悠介 「素晴らしく残念だ」 春菜 「あ、でも最近になって連発できるようになったんだよ」 悠介 「訊いてないけど。……神社、壊したりしないでくれよ」 春菜 「さすがにそこまでの威力はないよ」 ルナ 「あ、悠介〜!」 春菜 「アンリミテッドストリーム!」 ドチュンッ! ルナ 「え……」 ドッガァアアアアアアアアアアアアアアアアアン!! ルナ 「きゃぁああああああああああああああああああっ!!!!」 悠介 「………」 その時俺は、大型花火の炸裂を見た気がした。 春菜 「……ね?」 悠介 「いまのどこらへんを見て威力が無いと理解せよと?」 明かに一撃で神社が消し飛びそうだ。 ちなみに人間がくらったら一撃で死ねると思う。 悠介 「先輩、俺から言わせてもらえばさ」 春菜 「うん」 悠介 「それ、間違い無く破壊の力だよ」 春菜 「使い手によるよ」 悠介 「………」 有無も言わさずに月醒の矢とやらを撃つ人が良い使い手なのであれば、 俺も全然まったく問題は無いと頷けるけどさ。 春菜 「大丈夫だよ、相手死神だし」 悠介 「たしかに」 ルナ 「……ゲホッ!ゴホッ!……そこで納得しないでくれるかな……」 春菜 「あ、生きてたんだ」 ルナ 「あのねぇっ!いくらわたしが死神でもいきなり撃つのはどうかと思うよ!?     しかもなに!?『生きてたんだ』って!」 春菜 「うん、実は滅する気で撃ったんだよ」 ルナ 「なっ……」 春菜 「冗談だよ」 ルナ 「……悠介、わたしこの人苦手……」 悠介 「気にするな。気にしたら負けだ」 春菜 「あはははは」 先輩が元気に笑った。 無邪気……と言ってもいいんだろうか? と、そんな時。 声  「悠介さ〜ん、どこで」 石段の向こうからゆっくりと姿を現したセレスが俺の名を呼んで─── 春菜 「アンリミテッドストリーム!」 どがぁああああああああああああああっ!!!!! 悠介 「おわぁああーーーーーっ!!!!!」 先輩の能力の餌食となった……。 ルナ 「ああ……」 悠介 「ひでぇ……最後まで言い終わってもいないのに……」 ルナ 「さすがに同情するわ……」 セレス「誰ですかっ!いきなり人を爆発させてくれちゃった人はっ!」 春菜 「ハイこの人」 トンとルナの背中を押す先輩。 ルナ 「えぇっ!?ちょ、ちょっと!」 セレス「あんたですかぁああああっ!!」 ルナ 「なに怒ってるのよ!よく考えなさいよ!     わたしがあんな爆発するような攻撃、出来ると思うの!?」 セレス「……そうですね、死神に出来ることは鎌での攻撃や魂に関することですね」 春菜 「ごめんね、流れ弾が飛んでいったんだよ」 セレス「……はぁ、そういうことなら」 悠介 「確信犯……」 ルナ 「確信犯……」 春菜 「ところで、水穂ちゃんは?」 悠介 「先輩、それさっき俺が訊いた」 春菜 「うん、わたしはその後のことを聞きたいんだよ」 セレス「彼女なら、うなされていましたが」 ルナ 「ネッキーが吸血鬼の歴史なんて聞かせるからよ」 セレス「あなただって死神の歴史とか人の生死について語ってたじゃないですか」 悠介 「……怖い話、ダメそうだったからなぁ」 あれでよく『オカルトが好き』とか言えたものだ。 まったくついてないよ、彼女も。 その場しのぎで俺のこと好きだなんて言うからこんなことになるんだ。 まあこれで、願わなくても嫌う確率の方が高くなっただろうし。 悠介 「あ、そうそう。若葉と木葉はどうしてる?」 ルナ 「さあ、なんか部屋にこもっちゃってたけど」 悠介 「……そっか、ならいいけど」 春菜 「……いいの?それって」 悠介 「いいのいいの。じゃ、せっかくだからみんな手伝ってくれ」 ルナ 「なにを?」 悠介 「掃除を」 セレス「わたしは暇だから構いませんよ」 ルナ 「うん、別にいい」 春菜 「セレスウィルさん」 セレス「はい?」 春菜 「顔色悪そうだけど、平気?」 セレス「陽の光にはまだ慣れていないんです。     でももう大体は抵抗力が付きましたから、ご心配には及びません」 春菜 「ふーん……」 悠介 「さて、仕事仕事」 口を動かすよりほうきを動かさないとな。 ルナ 「ねぇ悠介」 悠介 「なんだ、いきなり」 ルナ 「うん、あのさ。あの波動娘の着てるヤツ、わたしも着てみたい」 悠介 「波動娘って……先輩のことか?」 ルナ 「ん、そうだけど」 悠介 「………」 まいった。 イメージによく似合ってる。 悠介 「着ているのって、あれだろ?巫女装束」 ルナ 「ふーん、そういう名前なんだ」 悠介 「まあ、黒髪なら似合うとは思うけどさ、     死神が巫女装束って……どうかと思うぞ」 ルナ 「いいじゃない、ハーフだし」 悠介 「お前、いっつもそれだな」 ルナ 「自分自身を悩んでも仕方ないじゃない。     自分のやりたいことに少しでも従順になるのって、     誰にでも大事なことだと思うのよ」 悠介 「……まあ、違いない」 ルナ 「そりゃまあ、いきすぎて犯罪犯すのもどうかと思うけど」 悠介 「なんていうかさ、お前って現実主義だよな」 ルナ 「だって現に現実に立ってるんだもの、当然でしょう?」 悠介 「俺はお前自身が現実じゃなければ、って今でも思ってるよ」 ルナ 「あ、それヒドイ」 悠介 「あぁ、あの頃は良かったなぁ」 ルナ 「人生疲れきった顔をするような年齢じゃないでしょ」 悠介 「いやいや、あの頃ならまだ、     こんな風に死神や吸血鬼と親しく話すなんてこと、     出来るような男じゃあなかったんだよ。     それが今じゃどうだ。相手の名前を気安く呼んだり、殴ったり、     果てには死ぬ思いすらしたりして、ピッコロさんの気持ちが解って……。     俺の人間だった頃の部分が泣いてるよ……」 まったくもって破天的だ。 本来討つべき側に生まれたというのに、その相手と親しくしてど〜すんだ。 はぁ……。 悠介 「巫女装束なら先輩に訊いてみろ。     そっちの方は男である俺には解らんことだ」 ルナ 「え……悠介が訊いてよ。わたし、波動娘苦手……」 悠介 「なにぃ、自分が苦手なものを人に押し付けるとは……。お前それでも男か!」 ルナ 「男じゃないわよ」 悠介 「まあ、それはどうでもいいことだ」 ルナ 「……あのねぇ」 悠介 「まあとりあえず自分が欲してるんだ、自分で行け」 ルナ 「ん……わかった」 浮きながら先輩を探して、視界から消えるルナ。 確か先輩は滝の方に行くって言ってたな。 悠介 「さぁ……て、続き続き……っと」 肩を回して調子を整える。 うん、いい感じだ。 どがぁあああああああああああああん!!!! 悠介 「………」 幻聴だろう。 滝の方で聞こえたが、幻聴に違いない。 無視だ。 無視に限る。 なんか叫び声も聞こえるけど、無視だ。 爆発音が増えている気がするけど、無視だ、無視なんだ。 ビシュンッ!! めきめきめきぃ……! 悠介 「ああっ!ご神木がっ!」 どっかから飛んできた光がご神木の枝を折る。 なんだか無視出来る状態じゃなくなってきた。 悠介 「先輩ストップ!このままじゃ周囲一辺吹き飛んじまうっ!」 慌てて神社の裏手に回り、滝を目指す。 が。 春菜 「あれ?どうしたの悠介くん」 ほうきからビームを連発しつつ、さわやかに語る先輩。 悠介 「どうしたの?って、そりゃぁこっちのセリフだっ!!何やってんだよ一体!!」 春菜 「うん、それがね?     死神さんが『巫女装束着たい』なんて罰当たりなこと言うからさ。     だからこうやって人誅を」 悠介 「今すぐヤメろ馬鹿者ッ!!」 春菜 「……むぅ、悠介くんがそう言うなら」 悠介 「まったく……普段大人しいのに、     どうしてあのふたりが相手だと攻撃的になるんだよ……」 春菜 「それはね、やっぱり祓う家系の血筋だからだよ。     なんか見てると熱くなるんだよね、こう……なんていうのかな」 悠介 「いや、いいから……。それで……ルナは?」 春菜 「え?滝壷に落ちてったけど」 悠介 「おぉわぁああっ!!平気な顔して話なんぞしとる場合かっ!!」 春菜 「……そっか、それもそうだね。     それにしても……そっか、うんうん、なるほどね」 悠介 「……なに、その『なるほど、春ちゃん納得ゥ!』って顔は」 春菜 「わぁ、なんかカワイイ表現されてるけど、そんなこと思ってないよ」 悠介 「いや、今の何を聞いてどこらへんをカワイイと思うのかな」 春菜 「ただね?     悠介くん、ちゃんとフラットさんとかを人間並の扱いで見てるんだなぁって」 悠介 「……フラットさん?」 春菜 「ルナ=フラットゼファー。だからフラットさん」 悠介 「ん……あ、なるほど。でも……ん〜……まあ、     あいつと人間との差なんて、ホントに微妙なんじゃないか?     ただ壁抜けできて力があって空飛べて無と一体化出来て、とか。     それだけの話だろ?」 春菜 「……それだけで十分だと思うけど、どこらへんを微妙だって思えるかな」 悠介 「だってここに、モノを創れる人間やビーム撃てる人間が」 春菜 「うぅ……それ言われると痛いな……」 悠介 「まああいつは死神だけどさ、一応ハーフらしいし」 春菜 「……ナルホドね。それで納得出来たんだ」 悠介 「いや、納得はしてない。思ってるだけ」 春菜 「あはは、悠介くんらしいね」 悠介 「そうかな」 春菜 「そうだよ」 ルナ 「……ちょっとぉぉおお……っ!!     人をこんな状態にしておいて、ほのぼのと談話ないでくれる……!?」 悠介 「うわっ、ひどいなこりゃ、水びたしじゃないか……」 ルナ 「悠介悠介、波動娘ったらヒドイんだよ?     ただ巫女装束着させてって言ったら有無も言わさず     『この罰当たりィイイイッ!!』ってビームぶっぱなすのよ〜っ!」 悠介 「先輩……」 春菜 「ぶっぱなしたけど『この罰当たりィイイイッ!!』に関しては無実だよ」 ルナ 「何も言わずに撃たないでよね、わたしにだって心の準備ってものが」 春菜 「撃つね」 ルナ 「えっ!?いや、そういう意味じゃっ!ちょっと待って!待っ」 ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!! 悠介 「おぉゎっ!!ちょ、ちょっと先輩っ!?」 春菜 「ん……あんまり使うのもあれだね。お腹空いてきちゃったよ」 ルナがゆっくりと滝壷に落ちていった。 悠介 「……梨が出ます」 春菜 「あ、ありがとね」 とりあえず俺は、持ち場に戻ることにした。 深くは関わるまい。 現実逃避とはこんな時にこそするべきだと思う。 ああ、お花畑万歳。 ………………。 悠介 「よっしゃーっ、掃除終了!」 腕をぐぅっと伸ばし、一息つく。 悠介 「さてと、あとは水穂ちゃんの肩のハトをなんとかしなくちゃな」 …………というか。 悠介 「水穂ちゃんの肩にとまってるハトだけを吸い込むブラックホールが出ます」 小さくイメージして、弾けさせた。 ズゴゴゴゴ……。 うん、多分すごい吸引力だ。 しばらく待っていると、石段の方面からハトが飛んできた。 その勢いのままに、きゅぽんと吸い込まれて消えた。 悠介 「……うあ……簡単すぎ……」 なんか納得いかなかった。 でもまあ良しとしよう。 さてと、メシ食してなかったから腹へった。 家帰ってなにか作るか。 悠介 「おーい!そろそろ終わりにしよう!!」 一応みんなに声をかけておく。 それぞれ適当な返事の後、わらわらと俺の視界に集合した。 約一名、水びたしだが。 ルナ 「……人間だったら絶対死んでるわよ……」 春菜 「死神だから大丈夫だよね」 ルナ 「……ゆ〜すけぇええ〜……っ!波動娘がいじめるの〜……」 悠介 「先輩……勘弁してくださいよ」 春菜 「う〜ん……努力はするよ」 セレス「ちなみにわたしは能力こもった竹箒(たけぼうき)で打たれました……」 悠介 「あ、たしかに」 セレスは砂……というか土まみれだった。 春菜 「青春の瞬間が訪れたんだよ」 悠介 「そりゃ、さぞかし大きいホームランだったんでしょうな」 春菜 「うん、今年はやったよ、わたし」 なんのこっちゃ。 悠介 「じゃあそれぞれ30分後くらいに着替えて広間に集合。     料理は俺が作っておくから、くれぐれも濡れたままで来ないように」 ルナ 「ゆぅすけぇえ……これは波動娘のせいだってばぁああ……」 悠介 「あぁもう……解ったから泣くな、冗談だよ」 ルナ 「………」 セレス「30分後ですね、解りました」 春菜 「じゃあ、先に行ってるね」 悠介 「ああ、おつかれさま」 それぞれが散り、俺もその場をあとにする。 さて、今日の朝昼兼用の献立は何にいたしましょうかのう。 Next Menu back