───卵酒(たまござけ)───
悠介 「……何処だ!?何処に行ったんだっ!」 先輩を追って、俺は神社の境内を踏みしめた。 けれど、視界内に先輩の姿は無い。 悠介 「滝壷の方か……?」 ドガァアアアアアアアアアアアアン!!!! 声  「ギャヤヤァアアアアアア!!」 走り出そうとしたら、爆発音と叫び声が聞こえた。 ……というか、彰利だよな、今の。 悠介 「なにやらかしたんだ?あいつ……」 登った石段を再び降りた。 ああもう面倒なっ! ───……。 悠介 「あきと───しっ!?」 彰利 「キャアアア!!た、助けて悠介ーっ!!」 家の前に辿り着いた俺が見たものは、先輩に襲われてる彰利の姿だった。 ていうか、あれ!?上に登っていったじゃない先輩! 何故に下に!? 春菜 「アンリミテッドストリームッ!!」 ゴチュチュチュチュチュチュチュゥウウウン!!! 彰利 「ギャァアア!!ひえっ!ひぃっ!」 彰利は必死だ。 悠介 「先輩!ちょっと、やめてくれっ!」 春菜 「あ、もう戻って来ちゃった?」 悠介 「へ!?」 彰利 「ゆうすけぇえええっ!か、彼女、泣き真似で我らを謀ったのYO!!」 悠介 「泣き真似ぇっ!?」 春菜 「あはは、流石に悠介くんにアレコレ言われながらだと殺り辛いじゃん。     だから、上に行ったと見せかけて茂みに隠れて、男子ホモ生徒を襲撃。     大丈夫大丈夫。あれくらいじゃ泣かないよ、あはははははっ」 ドンッ!ガガガガガガガガギシャァアアアアアアアッ!! 彰利 「ヒィイイ!!笑ってるけど一撃で死ねるぅうう!!     ていうか疲れないの!?バケモンですかアンタ!!」 悠介 「と、とにかくやめてくれ!彰利は文化祭の用を教えに来ただけなんだ!」 春菜 「あ、悠介くんにも関連してるならしょうがないか」 ピタっと、ほうきが静まる。 と共に、先輩が倒れた。 悠介 「先輩!?」 春菜 「うぅにゅぅううぅぅぅ……ちょ、調子に乗りすぎちゃったぁ……。     ち、力が出ないよぅ……な、梨……」 彰利 「力が出ないだって?それは大変だ……!」 悠介 「彰利?」 彰利が先輩の傍に屈み、そして…… 彰利 「ボクの頭をお食べよ!」 その例の言葉を放つ。 春菜 「いらない」 即答だった。 が、その言葉を最後に、先輩は眠ってしまった。 彰利 「アイヤーーーッ!?し、死んでもうた!?」 悠介 「寝てるだけだって。それより彰利、握手しよう」 彰利 「握手?……俺との愛の再確認かい?     まったくもう、しょうがないなぁ」 ギュッ。 悠介 「月鳴の裁き、レベル3」 バチィッ!! 彰利 「ギャーッ!!」 ドサッ。 彰利は倒れた。 悠介 「……やれやれ……」 先輩を抱え、彰利を引きずり、俺は家の中に入った。 まったくもって疲れる。 …………。 ……。 ……煙が舞っている。 部屋が真っ白になるかと思うほどの煙。 そんな光景を見て、俺は『しまった』と思った。 セレス「ル、ルナ……そこはそうじゃなくて……」 ルナ 「は、ハッキリしなさ」 ガカァアアアッ!! ルナ 「ああぁあああああああああああっ!!!!」 ドサッ。 セレス「ああもう!ちゃんと人の話を聞き」 ガカアアアアアアアアアアアアッ!! セレス「あぁああああああああああああっ!!!!」 ドサッ。 悠介 「………」 煙が上がる。 結論:無理なものは強制するべきじゃない。 悠介 「すまん……俺が悪かった……」 ふたりが回復した時点で、環を取った。 ルナ 「ゆ、ゆ〜すけ……た、助かったぁ……」 セレス「物理的ダメージは回復してくれるんですけど……。     精神ダメージは回復してくれないんですよこれ……。     あと少し遅ければ危なかったです……」 ぐったりとした顔で言うふたり。 いや、まさかこんなことになるとは思わなかった。 軽はずみなことは少し控えよう……。 セレス「えっと……悠介さん、それでどうかしたんですか?」 悠介 「ああ、ちょっと水をね」 手に持った水を少し掲げる。 彰利と先輩に飲ますためのものだ。 いろいろあって、喉が渇いてるだろうからな。 セレス「……悠介さん、ものは相談ですが」 悠介 「ん?」 セレス「血をください」 悠介 「………」 直球勝負だった。 しかも目がマジだ。 悠介 「落ち着け」 セレス「いえですね?先ほど行ったスパークリング茶道のお蔭で、     体が随分と疲れているんですよ。     ここはやはり新鮮な血を吸って回復をですね」 うわぁ、解説始めちゃってるよこの吸血鬼さん! しかもジリジリと詰め寄って来てるし! 悠介 「ま、待て!今日は創造しすぎて疲れてるんだ!     今吸われたら確実に死ねる!回復するまで待て!!」 セレス「それだとわたしが死ねます」 悠介 「なにぃっ!?」 ど、どうする!?じゃなくて!どうもしなくてもどちらかが死ねる! ルナ 「ねー、悠介」 悠介 「な、なんだ」 ルナ 「暗い気持ちになって?」 にこやかな顔で何か言っております死神さん。 つまり、彼女の狙いは陰気だ。 悠介 「こんな切羽詰まった状態でそんなこと出来るかっ!」 ルナ 「じゃあ解決したらいいんだね?」 悠介 「……するのか?」 半信半疑。 いや、疑惑が大半である。 ルナ 「確かにネッキーは血を吸わないと死ねるけど、     悠介は創造したら気絶するだけだもの」 悠介 「……それはつまり、俺に気絶しろと?」 ルナ 「そ」 悠介 「………」 ルナ 「そしたらわたしが手厚い看病を」 悠介 「そっちの方が死ねる気がするんだが」 ルナ 「どういう意味?それ」 セレス「はぅう、眩暈が〜」 悠介 「わざとらしく振らつかないでくれ」 セレス「あ、解ります?」 悠介 「……はぁ、解ったよ。元はと言えば俺が原因だからな……」 ルナ 「あ、陰気が出てきた」 悠介 「おだまれいっ!」 ルナ 「ぶー……」 悠介 「えぇと……これでいいか」 水と一緒に持っていたコップを構え、そしてイメージする。 えーと?俺の血液がコップから溢れない程度に出ます、と。 よし、弾けろ! イメージを弾けさせると、何も入っていなかったコップに鮮血が満たされる。 ……何度見ても、あまりいいものではない。 悠介 「……はい」 セレスにコップを渡し、ずるずると部屋を出ようとする。 ……まいった。 『自分に必要』というイメージを付け加えるのを忘れてた……。 ぐはっ……!体力の消耗が激しかったみたいだ……! ああくそう!どうしてこんなことに! ルナ 「フレー、フレー、ゆ・う・す・け!」 というか、俺の後ろで満面の笑みで応援しているこいつはなんなの? ルナ 「その調子で暗く暗〜くいってみよう!」 陰気かい! お、おのれ……!人が苦しんでおるという時に! 悠介 「こうなったら陰気でもなんでもくれてやるから……。     だから、この水を俺の部屋に届けてくれ……」 ルナ 「? 誰か居るの?」 悠介 「せ、先輩……と」 わぁ、世界が回る。 バタリ。 ルナ 「あ、ちょっと悠介!?」 薄れゆく意識の中、ルナの奇声だけが耳に残った。 ルナ 「なによ奇声って!」 ギャア、口に出てたみたい。 ……その後、カッとなったらしい死神さんのナックルで、俺は完全に沈黙した。 ああ、まったくなにがなにやら解らなくなってきたよここ最近……。 ……。 …………。 声  「ギャーッ!」 声が聞こえた。 その声で目が醒めたのは事実だ。 だが意識がはっきりとしないどころか、体が思うように動かない。 となると、気絶してからそう時間は経っていないらしい。 悠介 「ぐ、うう……」 モゾモゾと動いてみせる。 いや、別に誰かに見せようってわけじゃないんだが。 悠介 「布団……?」 今更気付いたが、自分は布団で寝ていた。 誰が運んでくれたかは解らないが、とりあえず感謝。 というか…… 悠介 「ぐぁっ!」 頭が痛い。 ボーッとして、思考も上手く働かない。 しかしながら、先ほどの声が誰のものかくらい解る。 というかここで『ギャーッ』とか叫ぶのはひとりしか居ない。 彰利だ。 となると、相手はまた先輩か。 くそっ……。 何度言わせれば気が済むんだ……。 声  「あ、起きた?」 へっ? 聞こえた声に顔を上げる。 で、そこに居たのは先輩。 えーと、それはつまり、彰利ノックダウン? ……いや、そうでもないらしい。 叫び声はまだ聞こえる。 いや、それよりもだ。 悠介 「先輩……どうやって回復を……?」 気になっていたことを訊いてみる。 すると先輩は、よく冷えた梨を俺の額にあてる。 春菜 「ふっふっふ、こんなこともあろうかと、     自分用クーラーボックスに梨を入れておいたのだぁ」 幸せそうな顔で、梨の皮を剥いてゆく。 悠介 「……先輩、彰利は……?」 ぴしゃんっ。 悠介 「いてっ……」 春菜 「悠介くん?今のキミの体力は十分の一なんだから、     何も気にせず寝なさい。否定は許さないよ」 威圧感。 先輩はマジだ。 悠介 「デコを叩かないでくれ……頭、痛いんだ……」 でも、それでも気になる。 寝ている場合じゃないな。 悠介 「彰利と争ってるのは誰?」 春菜 「……フラットさん」 悠介 「───ルナ!?あの馬鹿っ!」 俺は布団を蹴るようにして走った。 が、眩暈が俺を襲う。 平行感覚がまるでない。 歩くために必要なアンテナを無くしてしまったかのように、俺は倒れた。 春菜 「悠介くんっ!?」 悠介 「あ、れ……?」 先輩が慌てて駆け寄る。 そして額に手を当てて…… 春菜 「た、大変!すごい熱……!」 ね、熱……? ああ……だからボーッとするのか……。 …………そういや、雨で濡れたあと、風呂とか入らなかったしなぁ……。 うぅ……。 ルナ 「悠介っ!?」 ルナの声。 って、なんでお前ここに居るのさ……。 彰利追ってたんじゃなかったの……? ……あ……魂結糸のせいかな……。 春菜 「お呼びじゃないよ、下がってて」 ルナ 「そういう場合じゃないでしょ!     悠介の体力が著しく低下してるの!このままじゃ……!」 春菜 「だから、解ってるの。いいからそこで大人しくしてて」 ルナ 「子供でいいからわたしが看病する!」 春菜 「必要ないよ」 ルナ 「だってホントに危険なんだってば!」 春菜 「静かに!悠介くん風邪ひいて熱があるの!     叫んだりしたら悪いのよ!」 ルナ 「だったらまずあなたが黙りなさいよ!」 春菜 「聞きなさい!体力はどんどん低下してるから、     早めに治さないといけないの!     それにはまず、風邪を治さなきゃ……!」 ルナ 「……に、人間の治療法なんて解らないわよ、わたし……」 春菜 「だから言ったの。下がっててって」 ルナ 「う……」 春菜 「さて……妥当にいって、風邪といえば玉子酒だけど……」 ルナ 「たまござけ?」 春菜 「風邪の時に飲むと、結構薬的効果を発揮するみたいだよ」 ルナ 「じゃあ作らなきゃ」 春菜 「うん」 先輩が部屋を出て行く。 い、いかん……!なんとしても止めなければ……! 悠介 「る、るな……!」 ルナ 「え?なになに悠介」 悠介 「せ、せんぱいを……と、とめ……止めてくれ……!     死ねる……!先輩に……なにかを作らせちゃ……なら……」 ルナ 「よく解らないけど……止めればいいの?     でもさ、悠介を治すための薬的なもの作るって……」 悠介 「確かに薬的な物だけど……!     せ、先輩が作るって時点で、ど、毒……なんだ……」 ルナ 「え……う、うん、解った。止めてくる」 スゥッ、とルナが壁抜けをして消える。 …………。 ……。 ドカァアアアアアアアアアアアアアアン!! 声  「きゃぁあああああああっ!!」 …………。 悲鳴が聞こえた。 しかもルナの。 メッセンジャーは独断と偏見と実力行使で黙らされたらしい。 …………。 春菜 「おまたせー、玉子酒だよ」 しばらくして、先輩が現れた。 悠介 「先輩……ルナは?」 春菜 「うん?ああ、あの馬鹿フラットさんね。     なんかいきなり『悠介が死ぬから作るのやめて』とか言うから、     ちょっと黙らせてきたよ」 悠介 「………」 やっぱり。 春菜 「そんなことよりほら、玉子酒」 うう……終わった……。 我が人生よ、さらば……。 春菜 「なんで胸の前で十字を切るの?」 悠介 「いや、今すぐ風邪が治りますようにと」 春菜 「どういう意味かな、それ」 悠介 「な、なんでもない」 仕方なく、玉子酒を手に 悠介 「なにコレ……」 そう呟いた。 春菜 「なにって……玉子酒」 グラスにあけた酒に、割った玉子が浮いているのか沈んでいるのか。 ベタだ。 ベタすぎる。 悠介 「先輩……風邪薬を持ってきてくれ」 春菜 「それはダメだよ。     確かに風邪には効くかもしれないけど、     それ以前に悠介くんには体力が無いから。     飲んだら余計に悪くなるよ。だから、ハイ」 スッ、と差し出される玉子酒?。 こんな、意識的に疑問系になってしまう玉子酒なんて飲めるわけがない。 大体にして熱してないからアルコールも飛んでないし、 これじゃあ逆に頭痛が悪化するわい。 悠介 「気持ちだけ貰っておくよ。それと、それは玉子酒じゃない」 春菜 「……え!?」 本当に驚く先輩。 大丈夫なんかナ、こんな人に体預けて。 とはいえ、動けないんだからどうしようもない。 悠介 「……やっぱり知らなかったのか……」 意味合いはもちろん、作り方のことだ。 春菜 「あ、あははっ、や、やだなー、冗談だよ。     い、今作ってくるから待っててね」 ドタバタと騒音を撒き散らしつつ、先輩が出て行く。 ……死ねる。 このままここに居たら間違い無く死ねる。 に、逃げなければ! セレス「悠介さん?熱があるんですって?」 悠介 「ぎゃあああっ!」 聞こえた声に飛び跳ねる。 と、その場におわすはセレスさん。 悠介 「セ、セレス……」 安堵の溜め息。 嗚呼、死ぬかと思った……。 セレス「急に声かけてすいません。     まあ、でもアレです。これで機嫌直してください」 スッと差し出される物。 それは…… 悠介 「お……おぉお……!た、玉子酒!」 ま、待ってました! 悠介 「へぇ……玉子酒の作り方を知ってるなんてな……」 セレス「先ほども言いましたけど、長生きしていると自然に。     これでも自信作です。どうぞ、食べてみたください」 悠介 「あ、ああ、それではさっそ」 ボスンッ! 悠介 「───え?」 手に持っていた玉子酒が消えた。 というか消し炭になった。 セレス「な、なんてことしやがりますかっ!」 春菜 「お待たせー、玉子酒作ってきたよー」 セレス「無視しないでください!」 ……月醒の矢か……。 くそう、なんてこった……。 セレス「頷きたくなるほどに良い出来だったんですよ!?     それをいきなり」 ドチュン! セレス「え───」 ドガァアアアアアアアアアアアアン!!!! 悠介 「セレスッ!?」 問答無用で、セレスが吹っ飛ばされた。 悠介 「うわぁああっ!部屋がぁあっ!」 そこに残ったのは、形を変えた俺の部屋だった。 春菜 「さささ、悠介くん。玉子酒だよ♪」 悠介 「………」 頭の痛みが倍増した。 しかも差し出されたものは、 熱い酒の中にゆで卵が浮いているというボケチックなものだった。 悠介 「先輩……風邪薬取って……。もういいから……お願い……」 春菜 「それはダメだよ。     確かに風邪には効くかもしれないけど、     それ以前に悠介くんには体力が無いから。     飲んだら余計に悪くなるよ。だから、ハイ」 それはさっきも聞いた。 悠介 「先輩、これ玉子酒違う……」 春菜 「ええっ!?それじゃあどうやって調理しろって……あ───」 悠介 「……はぁ……」 やっぱり作り方知らないんじゃないか……。 春菜 「だ、大丈夫!今度こそは作ってくるから!」 走り去る先輩。 いよいよ動けなくなった俺は、その後にヒドイ目にあった。 第三ラウンド。 戻って来た先輩の手にはスクランブルエッグがあった。 隠し味に酒を使っているらしい。 というか隠すどころか、これでもかと言えるほどに入れてあるようだ。 しかも焦げてるから余計に性質が悪い。 もちろん作り直しを命じた。 第四ラウンド。 戻って来た先輩の手にはオムレツがあった。 進化してねェ。 ちなみにやっぱり焦げてる。 作り直しを命じたいところだが、これ以上は材料の無駄。 というか人の話を聞いてくれ。 さっきから必死になって作り方を教えようとしているのだが、 さっさと去ってしまうので困っている。 そして強制的に第五ラウンドが訪れた。 戻って来た先輩の手には、酒かけ目玉焼きがあった。 酒と玉子使えばいいってもんじゃないんだってば先輩……。 ここにきてようやく、玉子酒のなんたるかを説くことが出来た。 玉子酒とは。 酒、玉子、砂糖を鍋でゆっくりと温めたものである。 その際、玉子が固まってはいけないということ。 それだけ伝えて満足になった俺は、とりあえずぐったりと倒れた。 そして第六ラウンド。 満足であった俺の心は蜃気楼だったらしい。 激しく後悔。 作り手が『この』先輩であることを思慮に収めるべきだった。 やはりこれは玉子酒?だ。 死ねる。 大方砂糖と塩を間違えたりとか、 なんとなく調味料を加えてみたりと、大雑把にやったのだろう。 しかもだ。 やっぱり焦げてる。 固まるを通り越して世界一周出来るほどに焦げてる。 先輩は玉子を焦がすのがお好きらしい。 ……堪忍して……。 …………。 その後、味見と称して毒見をさせると、先輩は気絶した。 どうやら得体の知れないブツが入っていたらしい。 ……体内に取り入れなくて良かった……。 悠介 「結局、自分で作るんだよな……」 重い体を引きずり、台所へ行く。 するとそこには彰利が居た。 彰利 「お帰りなさい♪お風呂になさいます?お風呂になさいます?     それとも……お・風・呂?」 どうあっても風呂に入れと? 大体沸いてないっての。 彰利 「ほれ、玉子酒。作っておいたから飲めよ」 悠介 「……悪い、気が利くな」 彰利 「まあな、伊達に長い付き合いしちゃいないよ。     それ飲んだらゆっくり寝て……それからだな、看板は」 悠介 「……悪い」 彰利 「気にするなって。人間、助け合いが肝心」 悠介 「サンキュ……それより、大丈夫だったか?」 彰利 「ん?ああ、彼女等ね。余裕だったね、うん」 悠介 「随分と叫び声が聞こえたけど」 彰利 「気のせいだろ。んじゃ、俺は屋根で寝てるから。     もし体調良くなったら教えてくれ……って言っても、     大事をとって明日からの方がいいか、看板は」 悠介 「そうしてくれると助かる」 彰利 「んじゃな、よい一日を」 悠介 「ああ」 ……彰利は去っていった。 …………。 しかしだ。 あいつ、ルナになにかしたンかナ。 ルナがあいつを狙ったりすることは今まで無かったよなぁ。 …………ま、いいか。 さてと、じゃあ寝るかな。 玉子酒を飲み干し、月並みだが熱冷まシートを張り、部屋に戻った。 所々崩壊した部屋の布団に寝そべり、溜め息混じりに目を閉じた。 悠介 「……おやすみ」 頭痛やら体の熱さと戦いながら、俺はやがて眠りについた。 そんなこんなで、今日という日は過ぎ去った。 Next Menu back