それは昔の物語。

幼い頃。

ただただ平穏だったあの頃のことを思い出す。

空が蒼く綺麗に輝いていた。

時間が経つにつれ、うっすらと赤く、そして黒くなってゆく景色。

そんな景色を眺めながら、自分はボ〜っとしていた。

考えていることは少なかった。

だけど、子供だった自分には答えを見い出せない考えだった。

子供は子供なりにその答えを出していれば良かったのかもしれない。

そんな風なことを、最近になってよく思う。

……空は、ただただ綺麗だった。

雲がひとつも無いのは朝から夜にかけて、ずっと同じだったその日。

そんな夜に、月は輝いた。

隣には少年。

団子を食べたまま固まっている姿は今でも思い出せる。

そんなことを思い出す度に、自分は暖かい気持ちになっていた。

幸せとは何か。

そんなことは人それぞれだと言う人は少なくない。

だけど俺は……幸せっていうのは『人の心』なんだと思っている。

考えるのは脳であっても、それを広げるのは人の心。

理屈を並べるわけじゃないけど、心を無くした時点で人は幸せなんか掴めないんだと。

俺は幼い日に思った。

純粋であるが故に、その気持ちを大事にしたいと。

成長してから、ふと昔を思い出した時、俺はそう思えた。

……季節はめぐる。

何もしなくても時が流れ行くように。

いつか犯した大罪を枷に、俺の中の時間も続く。

その時間が嫌かと問われれば、俺は首を横に振れる。

その時には確かな意味があるから。

人の歴史は同じじゃない。

繰り返される時の中で、その違いを見つけられることが嬉しかった。

そして、俺を友達だと言ってくれたあいつのために何かが出来ることが嬉しかった。

───季節はその命の限りにめぐり続ける。

いつかすべてが終わり、新しい未来が開けた時。

その時こそ、俺はあの時流せなかった涙を……流せる気がするんだ……───













───死神(しにがみ)───
闇が、ゆっくりと蠢いた。 それとともに、その地面の血が形を変える。 こんな闇夜なのに、それが血であることが解った。 悠介 「ルナァッ!」 俺は、その血の中に倒れる形に向かい、叫んだ。 でも、動く気配は無かった。 悠介 「……はっ……」 鼓動が早まる。 心臓が落ち着くこともなくドクンドクンと音を出す。 その音がやけに大きく聞こえ、俺は怖くなった。 影  「…………晦悠介……だな?」 倒れているルナの傍に立っていた闇が、俺の名を口にする。 やがて影が動き、その姿を肉眼で確認出来るくらいに近づいた頃。 雲から満月が現れた。 悠介 「…………っ!!」 一目で。 そいつが人間ではないと感じた。 ヤバイ。 ヤバイヤバイ。 こいつはヤバイ。 意思とは関係なく、体が逃げようとする。 怖い。 こいつが怖い。 怖い……ッ!! 彰利 「悠介」 悠介 「うわぁあっ!!」 彰利 「うおっ!?」 突然声をかけてきた彰利に驚いた。 悠介 「な、なんだよ」 彰利 「いいか?死神さんはまだ生きてる。     俺がこいつを引き付けておくから、そっち頼むな」 悠介 「え?ま、待てよ!まだこいつが何かやったとか解ったわけじゃ」 彰利 「こいつがやった。俺には解る。     こいつの名前はゼノ=グランスルェイヴ。     ルナ=フラットゼファーと同じ、死神だ」 悠介 「!!」 彰利から視線を外し、影を見る。 人間じゃないことは解ってた。 でも死神だとは……思わなかった。 悠介 「彰利?お、お前」 彰利 「この話は後だ。全部終わったら話すよ。ほら!早く行け!」 彰利の言葉に驚いた。 だけどそれがきっかけに、震えていた足が動いてくれた。 悠介 「ルナッ!」 影  「ぬ……」 彰利 「おっと、あんたの相手は俺がしよう」 影  「…………どけ、邪魔だ」 彰利 「そうはいかない」 影  「愚か。貴様も死を選ぶか」 彰利 「いいや、俺が選ぶのはただひとつ!……未来さ!」 彰利とゼノとかいう男が話している間に、俺はルナの傍らに屈んだ。 悠介 「死神を回復させる陰気が出ます!」 イメージを弾かせ、ルナの反応を待つ。 俺は死神じゃないから、そこに陰気があるかどうかなんて解らない。 だからルナの反応がないと安心も出来やしない。 悠介 「ルナ……ルナッ!」 名前を呼んでみても、反応が無い。 ───不安。 それがまた、俺の鼓動を早める。 特別だとか言うんじゃない。 傍に居てくれた人が消えてしまうんじゃないかと思うと怖かった。 とても、怖かった。 悠介 「くそっ……くそぉっ……」 さっきまであんなに楽しそうに笑ってたのに。 どうしてこんなことに……!! 悠介 「───!」 そう思った時。 俺にはひとつの嫌な想像が浮かんだ。 ───そう、だよ……。 水穂ちゃん……水穂ちゃんはどうしたんだ……? 一緒……だったんだよな……なぁ?ルナ……。 心臓が、鳴った。 鼓動が落ち着いてくれない。 真実を知るということ。 それが、こんなにも───怖いなんて。 嫌だ。 嫌だ!嫌だ!! 必死になって、そのイメージを掻き消す。 だけど消えてくれない。 それが怖い。 自分が怖い。 呼吸が荒くなる。 創造に集中出来ない。 その場から逃げ出したくなるほどの不安。 それが押さえられなくなりそうだった時。 俺は───頬を撫でられた。 悠介 「あ……」 ひどく、安心した。 誰が撫でてくれたかなんてどうでも良かったのかもしれない。 ただ、今までずっとそうして欲しかった子供のように、俺は安心していた。 そしてようやくその手が誰のものかを確認した時。 ルナ 「……ごめんね、不安に……させちゃった……ね」 ルナが微笑んでくれた。 俺の頬を撫でながら。 視界が滲んでいたけど、そんな視界の中でも相手がルナだということが理解できた。 ルナ 「男の子が……そう簡単に泣いたら駄目だよ……」 知らぬ間に頬を伝う涙。 ただ、不安だった。 ただ、嬉しかった。 それだけだけど。 とても安心して、俺は泣いていた。 だけどそれだけじゃ足りなかった。 もっと安心したい。 だから言った。 怖かったけど、言った。 悠介 「ルナ……水穂ちゃんは……無事、なのか?」 声が上ずって、震えているのが自分でも解った。 でも訊かずになんかいられなかった。 そんな俺の不安を柔らかく包むように、ルナが笑った。 ルナ 「大丈夫……よ。下の家でぐっすりの筈だから……」 悠介 「───……!」 胸の奥にあった混沌が、ゆっくりと消えてゆくような気分だった。 俺は胸を撫で下ろし、深い安堵の溜め息を吐いた。 ルナ 「でも……聞いて、悠介」 悠介 「………」 ルナがゆっくりと喋る。 ルナ 「あいつ……ゼノは、     わたし達が足掻いたくらいでどうこうなる相手じゃない。だから……」 ……だから、逃げろ。 なんとなく、ルナが続けようとした言葉が理解出来た。 だけど、それがどんなに無駄なことか、ルナにも解っている筈だ。 相手は尋常じゃない。 逃げたところで逃げ切れないことは相手を見てもすぐ解った。 自由に動ける身でありながらも、復路のネズミ。 そんなことがすぐに理解できた。 人間の俺でさえ、だ。 ルナがそれに気づかない筈がない。 つまり……それほど、勝ち目の無い相手なんだ。 ルナが絶望するくらい。 でも……さ。 悠介 「………」 どうせ歯が立たないんだったら、逃げ切れないんだったら。 そう思えたら、もう取る行動はひとつだけなんじゃないかな。 悠介 「ルナにだけ効力のある、死神を回復させ続ける腕輪が出ます」 陰気から別のものに創造の理力を傾かせて、イメージを弾けさせた。 そして出来た腕輪をルナの腕にはめる。 ルナ 「ゆう……すけ?」 悠介 「悪い……友達が待ってるんだ」 ルナ 「!!だ、だめ!逃げて!勝てないよ!やめてよ!     わたし……わたし悠介を失いたくない!     悠介が消えたらわたし、今度こそ留まる場所が無くなっちゃうよぉっ!」 ルナの泣き声にも似た声が、俺を躊躇させた。 だけど、考えを消そうだなんて考え自体、湧き上がらなかった。 悠介 「……ルナ、どっちみち同じだって解ってるんだろ?」 ルナ 「───!……し、知らない」 悠介 「……ルナ」 ルナ 「………………だって、仕方ないじゃない……。     あいつが来るのはどうしようもなかったんだもの……。     あいつが来ないように努めてたら、悠介はこの世に居なかった……」 悠介 「………」 ルナ 「………」 悠介 「……話してくれないか、その原因」 ルナ 「………」 ルナは暫く黙って、だけどやがては口を動かした。 ルナ 「……魂結糸の二重契約。それが……原因」 悠介 「………」 ルナ 「わたしさ、ほら……出来損ないのハーフだからさ、     魂結糸に始まったことじゃなく、能力自体が中途半端なの……。     他の死神と比較して半分。     そして人間の魂がそれを弱らせて、半分以下の力しかない。     だから……魂結糸の糸が緩むなんて事態が起きた。     闇の世界での二重契約は絶対処刑級の大罪。     でも……そうだと解ってても……悠介には死んでほしくなかったんだもん……」 ルナが、自分の涙で頬を濡らした。 その原因が自分にあると解っていても、俺は少し嬉しかった。 やっぱりルナは死神より人間の血の方が濃い。 そんなことに対して、俺は何より喜びを感じていた。 だけどそもそも差別なんてする必要も無いんだ。 俺は俺、ルナはルナ。 他人が他人の性格をどうこう言うのは間違っているとはいえ、 俺はこういうルナだからこそ…… ルナ 「……え?」 俺はルナの頭を撫でてから笑った。 悠介 「ルナ、生き延びるぞ」 ルナ 「ゆうすけ……?」 悠介 「俺達の未来を、あんなヤツになんか奪われちゃいけない」 ルナ 「悠介……」 悠介 「だから、もし『駄目だ』とか思っても……     最後まで足掻かなきゃ、そいつは人形だ!」 ルナ 「───!」 悠介 「ルナ……立ちあがれるか?」 ルナ 「え?」 悠介 「俺はさ、手は貸すけど……立とうとする意思はお前に任せる」 ルナ 「………」 悠介 「………」 ルナは俺の手を見ると小さく笑って、俺の手を握り締めた。 ルナ 「立つよ、悠介と一緒に」 悠介 「よしっ」 俺はルナを引っ張り、その場に立たせた。 ルナ 「え───」 そしてそのまま……抱きしめた。 悠介 「……俺達……みんなここで死ぬかもしれないけど……。     でも、希望だけは捨てないでくれ……。     人間が生きるためには夢と希望が必要なんだからさ……」 ルナ 「悠介、それって……」 わたしを人間だって言ってくれるの?と、彼女の瞳が語りかけてきた。 彰利 「オウオウオウオウ!そこのおふたりさんっ!     イチャついてないでこっち助けて!助けてーっ!!」 そして彰利が叫んだ。 悠介 「今行く!ルナ、行───」 ルナに向き直ると、俺は腕を引っ張られて、そして黙った。 ……いや、喋れなかったんだ。 ルナ 「……絶対、生き延びようね」 ルナは顔を真っ赤に染め上げながら、そう言った。 そして彰利の元へと地面を這うように跳躍した。 悠介 「…………………………………………………………………………」 俺はというと、自分の口に触ってボ〜ッとしていた。 ………………え? なんですか? ルナが、俺に、キ、キキキキ…… 悠介 「……っ」 顔がボゥッ!と赤くなるのを体感した。 そのまま倒れそうになる自分をなんとか押さえ、俺もまた走った。 属に言うリンチだ。 でもこいつ相手ではそんな理屈も正当化される。 ゼノ 「3人同時か、面白い」 彰利 「あ、頬に何か付着してはりますえ」 ゼノ 「ぬ?」 彰利 「死ねーっ!!」 ボゴォッ! ゼノ 「ぐはっ!」 彰利が能力を込めた角材(長尺棒キレ)でゼノの側頭部を殴った。 しかもいきなり騙し討ち。 さすが彰利。 ゼノ 「ぐぅう……!」 閉じていた瞳が、怒りかなんかでバチィッ!と見開かれた。 悠介 「彰利っ」 彰利 「お、悠介。丁度良かった、話があるんだ」 悠介 「この状況で出来ると思うか?」 彰利 「大丈夫大丈夫。俺に考えがある」 そう言うと、彰利は素早くゼノの懐に飛び込み、 彰利 「ママレモンをくらえ!」 見開かれたゼノの瞳にマチュゥッ!と、ママレモンを噴射させた。 ゼノ 「ぐぉっ!ごぉおおお……!!」 若者っぽい割にゴツイ声を醸し出すゼノは、目を押さえながら唸った。 万物併用なのか、ママレモン。 彰利 「で、話だけど」 悠介 「なんだよ」 彰利 「悠介、別の月操力を試してみてくれ」 悠介 「え?」 彰利 「例えば……更待先輩殿の月醒力等を」 悠介 「……そりゃ無茶だろ……」 彰利 「いや、出来るんだな、これが。よーく見ておけ。     ん〜……アンリミテッドストリーム!」 彰利は五本の指先で器用に穴を作ると、そこから光弾を……ええっ!? どがぁあああああああああああん! ゼノ 「ぐおおおおっ!」 ゼノが爆風に飲まれた。 彰利 「とまあ、このように」 悠介 「………」 彰利 「俺のはまあ、家系の力で覚えたんだけどな。     でも悠介なら普通に出来ると思うし。なにせ、望月の力も使えたんだし」 悠介 「望月の?それって……」 彰利 「じゃなけりゃ、俺はこんな風に記憶を……」 悠介 「彰利?」 彰利 「うんにゃ、なんでもない」 悠介 「………」 やっぱりこいつにはまだいろいろと謎があるよな。 今はそんなこと言ってる場合じゃないけどな。 彰利 「いいからまぁ、やってみろって」 悠介 「………」 言われるがままに、イメージをしてみる。 先輩がやっているのと同じイメージ。 ……なんて、んなもん解るか。 俺は先輩じゃないんだぞこの野郎。 そんな瞳で彰利を見る。 しかし彼は『為せばなる』という表情。 ……やぶれかぶれだ。 生きるためならば人間、どうとでも出来る。 悠介 「……アンリミテッドストリーム!」 ボムッ。 悠介 「………」 彰利 「………」 ルナ 「?」 ……ちゃちぃ。 悠介 「……彰利」 彰利 「いい天気ぞ」 彰利は空を見上げてポツリと呟いた。 この野郎。 でもまあ普通そうだよな。 出なくて当然だ。 俺は先輩と同じ家に産まれたわけじゃないんだ。 それなのに……出たじゃないか。 小さくても。 それはつまり……出来る、のか? 彰利 「よし、お兄さんが素敵に無敵で不埒なアドバイスをしてやろう」 悠介 「不埒は余計だ」 彰利 「俺達の家系、月の家系はさ。     元々はひとつの個人から枝分かれしたわけだろう?     だったら、潜在的に全ての月操力を使えるってわけなんだ」 悠介 「………………」 一理ある。 彰利 「大体にして元はひとつしかなかった能力を、     いくつかに派生させることが出来た時点で気づくべきだったんだ」 悠介 「派生って?」 彰利 「ほら、例えば……先輩殿の能力。     月醒の矢(アンリミテッドストリーム)からブラスト、     ホーミング・レイ、ガトリングブラスト、ブラストイングラム。     とまあ、力の使いどころによって技が派生してるだろ?」 悠介 「まあ……」 彰利 「あっさり言うなら、先輩殿の能力は『光と破邪』だったよな?」 悠介 「そうだな」 彰利 「それは元々ひとつだったのが派生した結果なんだ」 悠介 「ってことは?」 彰利 「多分、最初は破邪か光しか無かったってわけだ。     それを俺らの先祖様がご丁寧に開花させてくださったんだろ。     それらを子孫に教え込むわけだ。力を主張するためかなんかに。     まあ俺の───弦月の能力の歴史は俺から始まったわけで、     しかも俺一代でいくつか残して、     本に書いてあった全ての能力開花させたわけだし」 悠介 「なっ!?」 彰利 「あ、嘘はついてないからな?でも晦の連結魂と影の力とか、     望月の転生と融合や十六夜の雷と退けはまだ駄目なんだ。     もっとも……晦の能力はふたつの魂があって初めて出来るからなぁ。     普通じゃどうやっても不可能だ」 悠介 「じゃあ、えっと……あれは?十三夜の確認されてない───」 彰利 「ああ、あれな。……あれはさ、確認出来なくて当たり前なんだ。     使いこなせないと歴史から自分が消えるようなものだから」 悠介 「……お前、それでもマスターしたのか?」 彰利 「当たり前だ」 悠介 「……どんなものなんだ?」 彰利 「秘密」 悠介 「お前なぁ……じゃあ、弦月の力は?」 彰利 「破壊の力。それと魔の力、かな。     弦月の家系は魔の血を色濃く継いでて、暴走するケースが大抵なんだ。     その度に……あの時の俺みたいに、小さい内に始末されるんだ」 悠介 「………」 あの時のことは、あまり思い出したくないんだけど……な。 彰利 「まあ派生させることが出来れば、いろんなことが出来るぞ。こんな感じに」 言って、手を輝かせる彰利。 その手の光が形を造り、やがて剣を象る。 そして手を軽く振った。 それだけで。 ドコンッ!という衝撃とともに、地面が割れた。 彰利 「俺が考案、開発、合成させた秘技、シャイニングブレイドだ。     月醒力と月切力の混合で完成させられる」 悠介 「お前らしいネーミングセンスだな」 彰利 「なに、更待先輩殿の先祖のネーミングセンスには負ける」 悠介 「だな。日本人にあるまじきセンスだ」 彰利 「古くからの家系なのになぁ」 俺と彰利はゴッファアァアアアと溜め息を吐いた。 ルナ 「あのさ、ほのぼのしてるとこ悪いんだけど……」 悠介 「なにかね?」 ルナ 「うしろ」 彰利 「うん?ぬおっ!」 彰利が叫び、俺の頭を掴んでゴシャアとブルドッキングヘッドロックをした。 その上をとんでもない突風が通りすぎた気がした。 見れば、ゼノがその場で手を振り回したような姿勢で立っていた。 その瞳は今も尚、ママレモン効果で見えないようだ。 悠介 「………」 彰利 「………」 俺と彰利は頷き合った。 悠介 「出来ないんじゃない!!やるのだ!     いっくぜぇええええええっ!!月醒力+月鳴力!」 俺は持ち得る限りの創造の理力とイメージを搾り出すように爆発させた。 彰利とは違い、先にほうきを用意しておいた。 そこから光球を発射した。 ていうか成功した。 が。 悠介 「あっ……」 彰利 「おわっ……」 ルナ 「ひえっ……」 大きな唸りをあげて石畳を破壊しながら飛んでゆく光雷球を見た途端。 明らかにヤバイと感じた。 威力は期待出来た。 とても出来た。 恐ろしいほどに出来た。 それ=巻き添え。 これだけ離れていても、それは免れないと。 俺達は瞬時に悟った。 彰利   「逃げろぉおおおっ!」 悠介&ルナ『散ッ!!』 ババッ!! 彰利の言葉に、俺とルナは一目散に走り出した。 彰利 「え?あ、イヤァアッ!!待ってぇえええええええええっ!!!!」 やがて光球が障害物……ゼノに当たった途端。 耳が感知を拒絶するほどの爆発音が轟いた。 石段まで逃げた俺達の上空の闇を、目がくらむほどの閃光が裂いた。 それと同時にここが壊れるかと思うほどの地震。 かすかに彰利の悲鳴が聞こえた気がしたが、あいつなら大丈夫だろう。 とかなんとか思ってたら光を裂いて彰利が石段に倒れてきた。 彰利 「あぁあ〜〜〜……目がぁあ〜〜……目がぁああ〜〜〜……ッ!!」 ムスカくん、キミは英雄だ。 ……というか目がくらんでいるようだ。 悠介 「彰利、なんとか目を開けてくれ」 彰利 「え?あ、ああ……」 悠介 「サミング!」 ドスッ! 彰利 「キャーッ!」 石段でゴロゴロと大回転する彰利。 その勢いで石段から落ちて行く。 彰利 「ギャッ!ギャアッ!ギャアアアアアアッ!」 ズゴッ!メキャアッ!ボスムッ! 妙な音を醸し出しながら転がって行く。 しかしなんとか体勢を立て直し、28段くらいで止まった。 彰利 「ゲフッ……」 しこたま痛そうだった。 彰利 「フフフ……肋骨が折れて肺に刺さっているようだ……」 嘘だな。 かなり余裕に見える。 彰利 「ていうか何すんのさ!」 悠介 「もう目はいいのか?」 彰利 「ああ、月生力で回復させた」 悠介 「なら最初っからそうしろ馬鹿」 彰利 「有無も言わさずサミングしたのは何処のどなたですか」 悠介 「いや、お前が俺なら絶対こうすると思ってだな」 彰利 「勘弁したれや……。ていうか、成功したじゃん」 悠介 「ああ、俺も驚いた」 ルナ 「多分、創造の理力も手伝って、爆発的なものが完成したんだと思うよ」 悠介 「いや、確かに思いっきり破天的なイメージ作ったけどさ。     まさかあそこまでとは思わなかった……」 ルナ 「破天?」 悠介 「天をも破壊するほどのイメージ」 ルナ 「悠介、それ十分すぎ……」 悠介 「おかげで一気に疲れたが」 彰利 「どれ、ミーが手取り足取り治療して」 ボゴシッ! 彰利 「ゲブボッ!」 悠介 「近寄るなボケ」 ナックル一閃。 彰利 「そ、そんな、俺はただお前のことを思って」 スパシィッ! 彰利 「キャーッ!」 さらにルナのビンタが炸裂した。 ルナ 「悠介に近寄らないで」 彰利 「な、なんですかいきなりビンタとは!嫉妬ですかこのヒス女!」 ギロッ! 彰利 「……あっしが悪ぅござんした……なんて言うと思って!?     ルナっち!あんたにゃアタイの悠介を渡したりしませんことよ!?     なにさ!俺が死闘を繰り広げてる時に悠介とぶっちゅなんぞしおってからに!」 ルナ 「あっ───」 悠介 「ブハッ!み、見てたのかお前っ!」 彰利 「オウヨ!思わず心のファインダー越しに、     美麗にカシャリと写真取っちゃったじゃないの!」 悠介 「いっ、今すぐ忘れろっ!」 彰利 「ムヒョヒョヒョヒョ、それは出来んな。     はぁ……赤くなって慌てふためくダーリンのカワユイことカワユイこと」 悠介 「カワユイって言うなっ!」 彰利 「『めんこい』で手を打とう」 悠介 「月醒力プラス、月鳴」 彰利 「待てっ!死ぬだろっ!?」 ルナ 「!……悠介!」 ───! またですかっ!? 俺はバッ!と身を伏せた。 しかし、今度は上空ではなく、 伏せた俺の横の石段がドガァッ!という音とともに破壊される。 悠介 「ひえっ!」 俺が小さな悲鳴を上げるのと同時に、薄れた光を裂いて、ゼノが現れた。 悠介 「うぅわっ!しぶてぇっ!」 彰利 「うっしゃあ!俺に任せろ!月奏力の印!技の変則派生!無伴奏ソナタァッ!」 謎のメロディを自身から醸し出す彰利。 しかしゼノには効果が無いような。 彰利 「これで心も体も穏やかに」 悠介 「役に立たんっ!」 彰利 「うおっ!?そうまでハッキリ言いますかいっ!」 ゼノ 「ルゥウォオオッ!」 悠介 「おぉわっ!元気だなくそっ!って彰利!石段じゃ足場が悪いぞっ!」 彰利 「うっしゃぁ任せろ!月然力の印、技の壱!月然の大樹!」 彰利が何かを唱えた途端、周囲に存在していた木々が伸びてきて、宙に足場を作った。 彰利 「よし!思う存分戦え!」 彰利、あんた神になれるよ。 彰利 「あ、そうそう。月醒力の多様は控えとけ。     破邪の派生が魔力の蝕みを早くさせるから」 悠介 「そういうことは早く言え!」 道理でなんか、胸の奥にジュクジュクした感触が残ってるわけだ。 ゼノ 「我に害を与える者……その存在を否定する……!」 ゼノが怒りの面持ちで唸った。 その途端。 ゴオォン!と、大地が轟いた。 悠介 「おっ……うわっ……!」 彰利 「はいはいはい、落ち着こう落ち着こう、ノープロブレムね。     月清力の印、技の壱!月清の静寂!」 彰利が唱え、手を振り上げ、そして地面に向かって振り下ろした。 ……途端。 悠介 「……オウ?」 ゼノが巻き起こした地震が治まった。 彰利 「静める力ってのは、こういう時こそ役に立つ。     あ、悠介!エリクサー造ってくれ!」 悠介 「え?あ、ああ」 失敗と副作用の修正をした後、魔力を回復するイメージも混ぜて、創造する。 悠介 「ほらっ」 彰利 「悪い、助かるっ!」 彰利がそれを受け取り、構えた。 彰利 「それと、ここ崩壊するかもしれん!ちょっと覚悟しといてくれ!」 悠介 「なにぃっ!?」 彰利 「祓いたまえ清めたまえ切り裂きたまえ破壊したまえっ!     月醒力+月聖力+月切力+月壊力!     俺様式月集奥義!アルファレイドカタストロファーッ!」 悠介 「ばっ───やめろぉおおっ!」 叫んでみたけど駄目でした。 で、聴覚が感知しない事態2。 俺達はその衝撃に思いっきり吹っ飛ばされて、空を飛んでいた。 目が潰れそうになるほどの青白い光の爆発と、崩壊してゆく石垣と景色。 光の中、石が宙に浮いては崩壊してゆく。 その破壊力。 予想はしてたけど、あっという間に神社は木っ端微塵になった。 上空にあった雲も焼け、雲の先にあった満月がその姿を再び見せた。 吹き飛ばされた俺と彰利はルナに抱えられ、事無きを得た。 彰利 「がはっ……!はぁっ!はぁっ……!!」 だが、彰利は物凄い汗を出し、苦しそうに息をしていた。 彰利 「ぐっ……ふぅぅ……!」 そんな状態のまま、エリクサーの栓をパキッと割り、飲み下した。 彰利 「はぁっ……はぁ……………………っ……はぁ……」 しばらくして、彰利は落ち着いた。 彰利 「はふぅ、流石に四つの月操力に加え、     その中のふたつが破邪系だったのはマズかった……」 月醒力と月聖力か。 ていうかこのふたつ、呼び方は同じだからややこしいな。 悠介 「でもまあ、いくらなんでもあれで倒せただろ……」 彰利 「いや、多分無理」 悠介 「……マジ?」 彰利 「マジ」 言うや否や、光の消えた砂塵からゼノが飛び出してきた。 悠介 「うわぁマジだ!」 怒りに充血させた目を見開かせ、咆哮しながらの跳躍。 彰利 「ママレモンをくらえ!」 悠介 「キレイキレイをくらえ!」 マチュウ!ブシィッ! ゼノ   「グァアアアアアアアアッ!」 彰利&悠介『ムヒョヒョヒョヒョ!このお馬鹿さん!       同じ手を二度も食うとは愚かなヤツぞ!       敬意を表して『愚かサルベージ』と呼んでやろう!』 彰利   「なにぃっ!?」 悠介   「おお、ビンゴ」 彰利   「ダーリンたら、アタイの真似をしてくれるなんて」 悠介   「ルナ、下に降りよう」 ルナ   「ん、わかった」 彰利   「無視ですか……」 空中でもがき苦しむゼノを完全無視し、崩壊した神社に降りた。 悠介 「…………すごいな」 彰利 「俺も驚いてる……」 試すのは初めてだったからと続ける彰利。 これ食らって生きてる方が恐ろしいっての。 ゼノを見上げながら思った。 彰利 「まあ多分、これであいつの魂の力も弱まっただろ」 悠介 「そうは見えないけどなぁ」 ルナ 「んー、そうでもないみたいよ。     ところどころに再生の痕跡があるし。大分弱ってるのは確かみたい」 まあ、そうじゃなけりゃ困るな。 家から神社までの石段全部や神社が無くなったってのに、 全然効いてないんじゃ泣けてくる。 悠介 「ルナ、今の内に水穂ちゃんを安全な……そうだな、     彰利の家にでも連れていっといてくれ」 ルナ 「らじゃーって、何処?」 悠介 「ここから彰利の家までの地図が出ます」 地図を創造して、ルナに渡す。 彰利   「あ、タンスの裏は見ないでって言っといて」 悠介   「ルナ、タンスの裏だ。是非見るように言っておいてくれ」 ルナ   「らじゃー」 彰利   「イヤァアアアア!!やめて!堪忍して!       アタイの『悠介、成長の記録・豪華写真付き♪』が!」 悠介   「だぁあっ!やっぱ言わんでいいっ!絶対に見るなっ!!」 ルナ   「あ、じゃあわたしがもらっていい?」 悠介&彰利『絶ッッッ対に駄目!!!!』 ルナ   「えー?なんでさー」 悠介   「いいから無事に送り届けてくれればいいんだ!       そんなもんの詮索なんて絶対にするんじゃないぞ!」 ルナ   「うー」 少しぶーたれてから、ルナは家の方に飛んでいった。 俺と彰利は無意味にぜーぜーと肩で息をしながら夜空を見上げた。 悠介&彰利『キャーッ!』 そして同時にブゥッ!と噴き出した。 悠介 「ゼ、ゼノが居ねぇっ!」 彰利 「まままさかっ!?」 俺と彰利は母屋の方を見て、そのまま駆け出した。 Next Menu back