───陰謀(いんぼう)───
そんなこんなで夜。 死神さま、俺は今、生きてることに喜びを感じます。 嗚呼ありがとう。 神に感謝するというのもアレなので、とりあえずルナに向かって拍手(かしわで)を打った。 ルナ 「?」 ルナはにこにこ顔でそんな様子を見ていた。 悠介 「えー、それでは……いただきます!」 一同 『いただきまーす』 皆、それぞれが言葉を発して、箸を手に取る。 ルナ 「ネッキー、醤油」 すかさず醤油を要求するルナ。 セレス「水穂さんの方が近いでしょう」 そう言いつつ、しっかりと醤油を渡すセレス。 若葉 「ああ……ひさしぶりのおにいさまの料理……」 感涙する若葉。 木葉 「今まで生きてこれたのが奇跡に思えますよ……」 少し青ざめて、体を震えさせる木葉。 水穂 「………………………………………………」 チラチラと俺とルナを見て、その度にボッ!と赤くなる水穂ちゃん。 春菜 「ようやく……味見役から解放されるんだね……」 俺の料理を見てマジ泣きする先輩。 先輩は若葉と木葉が梃子摺りながら作った料理の味見を強制させられていたそうだ。 どうやったのかと言えば、月影力の影の印。 つまり……まあ、操って食させたんだろう。 先輩は俺の料理のひとつを震える箸で口に運び、噛み締める。 その度にぼろぼろと涙を流し、 『美味しいよぅ、美味しいよぅ……』と言って、幸せそうに泣いていた。 ちなみに先輩に言われた文句の大半が味見役(強制)による地獄についてだった。 ルナ 「ね、悠介悠介」 悠介 「ん?」 ルナ 「はい、あーん」 悠介 「あ、いいって、やめろよ、自分で食えるって」 ルナ 「えへへー、一度やってみたかったんだー。ほら、あーん」 悠介 「いや、だから」 バキィッ! 悠介 「ひっ!」 賑やかだった食卓に静寂が訪れた。 若葉 「……すいません、箸が古くなっていたようです。     取り替えてきますね、……オニイサマ……」 箸を指の力だけでヘシ折った若葉が言う。 気の所為か、その額にメキメキと青スジが───わぁ、気の所為じゃないや。 なんか若葉の肩越しの景色が殺気で歪んで見えるし。 ルナ 「そんな古いの使ってるからよ。ねー、悠介ー♪」 べきゃあっ! 悠介 「ひぃっ!?」 緊張が走っていた食卓に、冷気が迷い込んだ。 木葉 「……すいません、味噌椀が古くなっていたようです……」 ふ、古くなったってアータ! 今も尚、メキメキと歪んだり割れていったりしてるんですけどーっ!! ルナ 「ふーん、ここって古いもの使うの好きなんだ」 木葉 「───ルナさん?あなたの直し方に問題があったんじゃないですか?」 ルナ 「……なにそれ、喧嘩売ってるの?」 木葉 「そう聞こえたんなら売ったっていいんですよこの泥棒猫……!」 ゴハァアアアア……と、ルナと木葉の間の景色が歪む。 悠介 「こ、木葉っ、食事中だぞ落ち着」 ギシャァッ! 悠介 「───なんでもありません」 俺の言葉を聞くと、すぐさまルナに向き直る木葉。 こ、殺されるかと思った……。 もの凄い顔で睨むんだもんな……。 悠介 「………」 もくもくと料理を口に運ぶ。 あ〜、上出来。 やがて若葉を加えてルナと争いを始める彼女らを無視し、俺は料理を食べ続けた。 ……………… ………… …… 悠介 「それでは、ごちそうさまでした」 一同 『ごちそうさまでした』 ルナ 「ええっ!?」 若葉 「そんなっ!」 木葉 「あぁっ!」 喧嘩してたオナゴさん達が声を張り上げる。 若葉   「お、おにいさまっ!わたしの久しぶりの美味しいおにいさま料理!」 悠介   「俺が食った」 木葉   「わたしのお兄さま料理がっ!」 悠介   「先輩が食った」 ルナ   「悠介!悠介の愛のこもったわたしのごはんっ!」 悠介   「セレスが食った」 喧嘩屋一同『そんなぁっ!』 ルナ   「はうぅ……わたしの……わたしの大根おろし醤油がぁ……」 どうしてアレが好物になったかねぇ、この死神さんは。 若葉 「お、おにいさまっ!どうしてそんな勝手なことをっ!」 悠介 「家主として言う。食事中にそれをないがしろにする者に食させる料理は無い」 若葉 「あとで食べるつもりだったんです!」 悠介 「あ、それとな?」 若葉 「なんですか!」 悠介 「また食事時に喧嘩するようだったら」 若葉 「今はわたしの食事の話をしているんですよ!?喧嘩がどうしたと」 悠介 「家、出てってもらうからな?」 若葉 「努力しますっ!」 ビシィッ!と敬礼する若葉。 木葉もそれにならっていた。 ルナ 「あはははは〜、いい気味」 悠介 「ルナ、お前もだ」 ルナ 「………………?」 悠介 「ん」 無言で自分を指差すルナに向かい、ゆっくりハッキリ頷く。 ルナ 「で、でも先に喧嘩売ってきたのはこの妹達よ!?」 若葉 「口を慎みなさい!     あなたのような輩に、例える言葉であっても妹などと呼ばれたくありません!」 ルナ 「いーじゃん、いつかはそうなるんだし」 若葉 「───」 木葉 「───」 ぶちり。 なんだかとても嫌な音が聞こえた。 若葉 「いい度胸ですこの痴れ者が……ッ!」 木葉 「五体満足で生存出来ると思わないことです……ッ!」 若葉と木葉がゆらりと動く。 ルナ 「いくらわたしがハーフでも、あんたらに不覚なんてとらないわよ?」 ルナがクスッと笑う。 しかし───1分後。 ルナ 「あうぅう……離せー、はーなーせぇええ……」 ルナはあっさりと畳に押さえつけられていた。 若葉   「愚かですねぇ。わたしと木葉ちゃんの月影力を使えば、       あなたの速さも力も体力も吸い取れるのを忘れましたか?」 ルナ   「ゆーすけー、たすけてぇ〜……ブラコンしすたーずがいじめるよぅ〜」 若葉&木葉『誰がブラコンシスターズですかっ!』 若葉と木葉が吼える。 ルナ 「でも、詰めが甘いよ」 若葉 「なっ───」 ルナがにっこりと笑う。 それと同時に、ルナは押さえつけられていた畳に沈んでいき、そして消えた。 木葉 「ね、姉さん!」 木葉が若葉の後ろを見て叫ぶ。 若葉 「っ!」 トンッ! 若葉 「かふっ───」 トサッ。 若葉、当身により気絶。 木葉 「姉さん……」 ルナ 「うーふふふふふーう……さあ、どう料理してあげよっかなー。     力、ふたりじゃないと使えないんだったよねー?」 木葉 「あ……う……」 ルナ 「うふふふふふふふふふふ…………」 ジリジリと間合いを詰めるルナ。 ルナ 「やー!」 木葉 「い、いやぁああっ!」 ルナが木葉を襲い、押し倒した。 木葉 「きゃぁっ!ど、どこ触ってるんですかっ!」 ルナ 「よいではないかーよいではないかー、あははははは」 木葉 「い、いやぁっ!お兄さま!お兄さまぁっ!」 ……………… ………… …… ルナ 「はふぅ、疲れたー」 ぐったりとして倒れている木葉から離れ、額の汗を拭うルナ。 ルナ 「やっぱり拷問はくすぐり地獄に限るでしょ」 ルナは満足そうだった。 ルナ 「あ、悠介、麦茶ちょうだい」 悠介 「どうしてそこで麦茶なんだ」 ルナ 「なんでだろ」 悠介 「相変わらず訳解らん奴だな」 ルナ 「んー……なんかね、線の集合体っぽい丸顔糸目のヘンなヤツが頭に浮かんで」 悠介 「訳の解らんことはいいから。麦茶でいいんだな?」 ルナ 「うん」 ルナがにこにこと笑う。 ……なんか今日はやけに機嫌がいいよな。 セレス「悠介さん、わたしがやっておきます」 悠介 「え?いいの?」 セレス「はい、暇ですから」 悠介 「そっか、それじゃあ」 がしっ。 セレス「……なんの真似ですか、馬鹿死神……」 ルナ 「わたしは、悠介が淹れてくれた、麦茶を、飲みたいの」 区切るように言って、セレスを畳の中に沈めてゆくルナ。 セレス「あっ───こらちょっと!なにを考えてるんですか!離しなさい!」 ルナ 「あ、悠介。麦茶お願いねー。あ〜あ〜♪タマネギが目にシミタ〜♪」 セレス「なんですかその歌は!」 ルナ 「楽しいケーブルの歌・第一楽章:タマネギが目にシミタ(染みた)ー」 セレス「だからなんなんですかそれは!」 ルナ 「悠介に会う前にうろついてた地域で、     包丁構えて泣いてた男が歌ってた歌なんだけど。     まあ細かいことは気にしたらダメよネッキー。     それに、怒るとシワが増えるよ〜」 沈めながらクスクスと笑うルナ。 セレス「わたしは創造(うまれ)てからずっと、このままですよ!」 ルナ 「あーそ、あーそ」 セレス「てめぇちょっとツラ貸しやがれなさい!」 ルナ 「あ、怒った怒った。でも無駄よ。     壁抜けの最中はどう足掻いたって、どんな力を用いたって抜けれないし」 セレス「うきゃあああっ!抜け出れたら五体バラバラにしてくれますわこのバカデス!」 ルナ 「むっ、バカデス言うな!」 ごすっ! セレス「はうっ!」 残すは頭だけだったセレスを殴りつけて、その姿を強引に埋めた。 ルナ 「はふぅ……あ、悠介。麦茶は?」 悠介 「え?あ、ああ、ちょっと待ってろ」 ……うーむ、なんだか先行きが不安になってきたよ彰利。 水穂 「あ、先輩」 食堂(まあ適当な場所なんだが)を出た俺を見つけて小走りに寄ってくる水穂ちゃん。 水穂 「ごちそうさまでした」 改めて、ペコリと御辞儀をする水穂ちゃん。 悠介 「そんなに畏まらなくていいよ。それよりさ」 水穂 「はい?」 悠介 「帰らなくて大丈夫?」 水穂 「あ、それは大丈夫です。わたし、嫌われてますから」 悠介 「……そっか、まあゆっくりしていきな」 水穂 「はいっ」 水穂ちゃんは俺の言葉を聞くと、元気に小走りしていった。 悠介 「えーと……」 うおう、麦茶だったな。 ……………… ………… …… ルナ 「五臓六腑ってどのあたり?」 麦茶を一気に飲み干したルナが訊いてきた。 悠介 「五臓は腎臓、肝臓、心臓、肺臓、脾臓の五つ。     六腑は大腸、小腸、胆、胃、三焦、膀胱の六つ。     五臓六腑ってのは体のすみずみや、心のことを例えて言うらしい」 ルナ 「……はへー……」 ルナが驚いたような呆れたような顔で俺を見る。 ルナ 「真面目に答えてくれるなんて思わなかった」 悠介 「どうしてほしかったんだお前は……」 思わず呆れた。 ルナ 「んー……困った顔が見たいかなー、って」 悠介 「俺を困らせて楽しいか?」 ルナ 「うん、すっごく」 ぼかっ! ルナ 「はうっ!……ど、どうして殴」 悠介 「おだまりっ!」 ルナ 「ゔー……」 まったく、なんていうヤツだ。 ルナ 「あ、でもさ、『五臓六腑に染み渡る』って、     心に染み渡るって意味にもなるってことよね?」 ぼかっ! ルナ 「あきゃっ!……ゔー……」 悠介 「なにをいきなり話題変えてくださいますかお前は……」 ルナ 「だってあのままじゃ悠介、話とか進めてくれないと思ったから……」 悠介 「一理ある」 ルナ 「……どうして殴ったの〜……」 悠介 「お前が話題を変えた上に訳の解らんことを言うからだ」 ルナ 「解るわよぅ……だって言葉をそのまま置き換えただけだもの……」 悠介 「そうかもしれない」 ルナ 「……うー……ゆーすけがいじめる……」 ぼかっ! ルナ 「あうっ!」 悠介 「人聞きの悪いこと言うな」 ルナ 「悠介……そんなにぼかぼか殴らないでよ……」 悠介 「むう、別に殴るつもりは無いんだがな。     どうにもこう、トラブルムードメーカー兼、殴られ屋が居ないとなぁ」 ルナ 「なに、それ」 悠介 「ん?うん、魂結糸で覗いてみるといい。ほら」 俺はルナの額に自分の額をつけて、目を閉じた。 ルナ 「あ……」 悠介 「ん?」 ルナの声に、目を開ける。 見ると、ルナは視線をあちらこちらに泳がせながら赤くなってた。 俺はそんなルナにデコピンをしたあと、先を促した。 ルナ 「うー……」 ルナは渋々と額をつけて、目を閉じた。 …………………… ………… …… ルナ 「………………わたし、会ってるの?」 最初の言葉はそんな言葉だった。 俺はその言葉に黙って頷いた。 確かに彰利は居て、俺達と同じ時間を生きていた。 ルナはそんな俺の記憶を見て、驚いていた。 そして、ゼノとの戦い。 彰利が居なければ俺はおろか、ルナも確実に死んでいたという事実。 それに対して、ルナは驚愕するしかなかった。 ルナ 「どうしてわたし、憶えてないのかな」 悩みながら言った。 その言葉に対し、俺は彰利の手紙を渡すことで全てを伝えた。 ルナ 「………」 首を傾げていた。 その表情にはいろいろな影が見えた。 ルナ 「でも、ごめんね悠介。憶えてないものを『知ってる』って言えないよ」 だろうな。 解ってる。 悠介 「気にするな、俺が誰かに話したかっただけだ」 ルナ 「………」 ルナは難しそうな顔のままでその場に座っていた。 悠介 「……ふむ」 なんか気まずいなぁと思った。 いや、変な意味ではなく。 と、いうわけで。 悠介 「明日、遊びに行くか」 ルナ 「え?」 悠介 「嫌か?」 ルナ 「……い、行くっ!行きます!」 悠介 「……どうして敬語なんだ」 ルナ 「え?あ、うー……」 顔を真っ赤にして俯くルナ。 なんか、ホントに死神か?って疑いたくなるよな。 悠介 「じゃあ、俺もそろそろ寝るよ。おやすみ」 ルナ 「あ、う、うん、おやすみ」 明かりを消して、布団に潜る。 悠介 「ふう……」 天井を眺める。 悠介 「……で、どうしてお前まで一緒に潜るんだ」 ルナ 「……だめ?」 悠介 「だめ」 ルナ 「うるうる〜」 悠介 「目を潤ませてもだめ」 ルナ 「わたし、悠介にだったら……」 ガコンッ! ルナ 「んきゃぁっ!……な、殴ったぁ!本気で殴った今ーッ!」 悠介 「寝言は寝て言えって言ってるだろうが馬鹿!」 ルナ 「え?え?寝ていいの?」 悠介 「ここ以外だったらな」 ルナ 「けちー」 悠介 「ケチで結構。ほら、屋根裏でもなんでも使っていいから」 ルナ 「ぶー。いいですよーだ」 ルナが頬を膨らませて、布団を抜け、天井に消えていった。 悠介 「……はぁ」 大きく息をつき、俺は目を閉じた。 なぁ彰利……なんか、ルナがお前に似てきた気がするよ俺……。 言う冗談がお前級にお馬鹿になってきてるんだよ……。 ………………先行き、やっぱり不安だ……。 ………………。 …………。 ……その夜、水穂ちゃんの悲鳴が聞こえた気がしたが、俺は無視して寝ることにした。 …………。 ……。 …………チュン……チュン……チ……チチ……。 鳥の鳴き声が聞こえた。 それとともにうっすらと目を開ける。 悠介 「ん……」 目を開けた途端、視界を埋め尽くさんと突進してくるなにかに気づいた。 ルナ 「ゆーすけーっ!」 ドカァッ!! 悠介 「ッ───ぐっはぁ……───!!」 背骨が軋んだ。 再びルナの突進(ていうか落下)を受け、背骨がギシミシと鳴った。 悠介 「こォッんの───馬鹿たれぇええええええええええええぇっ!!」 その日の朝。 俺の部屋から青白い光が飛び漏れ、雷鳴が轟いた。 そんな出だしで今日は始まった。 彼女は元気だった。 ルナ 「あはは」 元気な顔で大根おろしに醤油をかけているルナ。 体が少し焦げてるが、気にもかけない様子で笑っている。 若葉 「……気持ち悪いですね、なんなんですか」 若葉がツッコむ。 ルナ 「えへへ……えへへへへへへ……」 その言葉にも笑顔で応えるルナ。 若葉 「……不愉快です」 若葉が視線を逸らす。 セレス「なにごとなんですか?一体」 セレスがルナに訊く。 ルナ 「んふふふふ……」 ルナが満面ににやける。 なんたる破顔。 俺はそんなルナを横目に味噌汁を口に含む。 ルナ 「実は今日、悠介と一緒にでかけるのだー」 若葉 「なっ!」 木葉 「───」 春菜 「えっ!?」 悠介 「ぶはぁっ!」 セレス「キャーッ!!」 悠介 「ゴホッ!ゲホッ!わ、悪いっ!」 水穂 「そ、それってデートってこ」 ドスッ! 水穂 「はうっ!」 ドシャア。 紅 水穂───死亡(若葉に当身をされ)。 いや、死んでないけど。 若葉 「……………………オニイサマ………………?」 木葉 「……ワタシタチトハ、タダノイチドモデカケルナンテコト……」 黒いオーラが、若葉と木葉を覆う。 しかも口調が完全に冷めてるのに一歩でも踏み込めば焼き殺されそうなくらい熱い! ていうか視線が痛い! 春菜 「……それで?誘ったのはフラットさんで、悠介くんは仕方なく?」 悠介 「ぐあっ……そ、それが……」 ルナ 「誘ってくれたのは悠介よ?」 春菜 「───」 べきゃべきゃぁっ! 悠介 「ひぃっ!」 先輩が手に持っていたご飯茶碗と箸が崩壊した。 ───死ねる。 そう覚悟したが、先輩や若葉と木葉が攻撃に転じることは無かった。 悠介 「……?」 若葉 「……おにいさまが誘ったのなら、仕方ありません……」 木葉 「………」 もくもくとご飯を食べる木葉。 春菜 「あーあ、茶碗も箸も古かったのかなぁ」 先輩が代えを探しにその場を去った。 ……た、助かった……のか? その後、また何か起きるかと思ったが、特になにも起こらず。 その場は解散の時を迎えた。 ルナ 「さー、ゆーすけー。いこいこいこー!」 悠介 「おぅわっ!こ、こらっ!引っ張るな!」 で、迎えた途端に俺はルナに引きずられ、取るものも取らずに家をあとにした。 ───その裏にある、恐ろしい陰謀があるとも知らずに。 ……………………。 ───陰謀VTR─── 若葉   「なんですか……!なんですかなんですかあの死神はぁあっ……!       わたしのおにいさまにベタベタして、あまつさえデートですって……!?」 木葉   「……わたしたちの、です」 春菜   「これは大問題だね……。早急に対処しなくちゃだよ……」 水穂   「あの、お茶飲みますか?」 若葉&春菜『それどころじゃないっ!』 水穂   「ひぃっ!」 若葉   「あの馬鹿死神のことです……!       おにいさまを外に連れ出して人気の無い所に誘い込み、       それでそれで、あげなことそげなこと……!!」 木葉   「……姉さん、落ち着いてください」 春菜   「それで、そのフラットさんは?」 水穂   「あ、あの、ルナさんなら今しがた、先輩を連れて外に……」 若葉&木葉『───そういうことはもっと早く言いなさいッッ!!』 水穂   「あぁあごめんなさいごめんなさい!でも言おうとしたんですよぅ〜!」 若葉   「木葉ちゃん、行きますよ!」 木葉   「はい、姉さん」 春菜   「今から追えば間に合うね!」 セレス  「何処に向かったのか、知ってるんですか?」 春菜   「う───」 木葉   「ご安心ください。お兄さまの服には発信機がとりつけてありますから」 若葉   「木葉ちゃんエライッ!」 がばしっ。 木葉 「姉さん、人が見てます」 水穂 「……どうして人間性を疑わずにすんなりと受け入れられるんでしょうか……」 セレス「それほど性根が腐ってるってことでしょう」 春菜 「これがレーダー?」 木葉 「イエス、ミス・ハルナ」 若葉 「……木葉ちゃん?」 木葉 「なんでもありません」 春菜 「えーと……公園に向かってるね」 木葉 「それでは参りましょう。姉さん、春菜先輩、お手を拝借します」 若葉 「え?え?」 春菜 「若葉ちゃん?」 木葉 「イグニッション」 ドシュン! 若葉&春菜『あぁあああああああああぁぁぁぁぁぁ─────────…………』 ……………………。 セレス「………」 水穂 「………」 セレス「……えっと、いつから木葉さんは空を飛べるように?」 水穂 「壁抜けもしていたように見えたんですが……」 セレス「………」 水穂 「………」 セレス「お茶、淹れましょうか。丁度良い羊羹が手に入ったんです」 水穂 「……そうですね……」 ───陰謀VTR・完─── ───……。 どかーん。 声  「ぐおぉ……っ」 なんか変な声が聞こえた頃。 ルナが妙な顔で立ち止まった。 ルナ 「………」 悠介 「ルナ?」 ルナ 「……悠介、今……飛べなかった」 悠介 「ん?なにが?」 ルナ 「わたしが」 悠介 「飛べなかった、って……そんなことはないだろ。もう一度やってみろよ」 ルナ 「ん、うん……」 フワ……。 悠介 「飛べるじゃないか」 ルナ 「……?おかしいなぁ」 悠介 「飛ぶことに集中出来ない理由でもあったんじゃないか?」 ルナ 「え?」 ルナが、ゆっくりと俺の手を見る。 ルナが手にとっている、俺の手。 ルナ 「あ、やっ……べ、別にこれは関係ないっていうかっ」 悠介 「なーに慌ててんだ馬鹿。お前らしくもない」 ルナ 「…………そうだね、なんだろ。わたしらしくない……」 悠介 「……ルナ?」 ルナ 「よーし!悠介、気晴らしに思いっきり遊ぼー!」 悠介 「うわっ!だ、だから引っ張るなって!」 ───……。 木葉 「危うかったです。あと一秒でも力の送信が遅れていたらバレていました」 若葉 「うう……腰打ったぁ……」 木葉 「……姉さん、それより『ぐおぉ……っ』はどうかと思います」 若葉 「痛かったんだからしょうがないでしょう……!?」 春菜 「それより、早く後を追おうよ!     悠介くんが人非道に走るのを黙って見てなんかいられないよ!」 木葉 「覗きたいのなら覗きたいと素直に仰るべきですが」 春菜 「そ、そんなんじゃないもん!     わたしは悠介くんを清い人の道に連れ戻したいだけだもん!!」 木葉 「お戯れを。それは嘘でしょう?」 春菜 「ほんとだよ!わたし嘘なんかついてないもん!     若葉ちゃんは信じてくれるよね!?」 バキバキメキャベキッ!! 目の前で、春菜先輩が掴んでいた太い木の枝が砕けた。(握力で) 木葉 「………」 若葉 「………」 春菜 「わたし嘘つきじゃないよね!?」 若葉 「そ───そ、そうですね、はい」 木葉 「妥当な判断だと思います」 若葉 「……あの、木葉ちゃん?頭打ったりした?」 木葉 「昨夜ルナさんにくすぐられた際、頭部を強打しましたが。それが何か?」 若葉 「……あー……それかなぁ、原因」 木葉 「姉さん、何がでしょうか」 若葉 「あ、気づいてないならいいの、あはは」 ───……。 公園の芝生に倒れ、俺とルナは空を見上げた。 ルナ 「ね、悠介。憶えてる?」 悠介 「うん?」 ルナ 「この場所」 悠介 「ああ、ここだよな。ルナと再会したのは」 ルナ 「あの時の悠介、ヒドかったけど面白かった」 悠介 「仕方ないだろ、ルナがきっかけで封印された記憶だったんだぞ」 ルナ 「でも約束なんて知らないって言われた時は、さすがにカチンときた」 悠介 「俺としてはいつまでも届かない本の行方が気になるんだがな」 ルナ 「え?ああ、あの宅配ってやつ?」 悠介 「そ。未だに届かんのだ」 俺は呆れながら言った。 悠介 「………」 息を吐き、体を伸ばす。 悠介 「今日もいい天気だ」 そして息を大きく吸い込んで、大きく伸ばしていた手をばたりと地につけた。 で、そのまま目を閉じた。 ルナ 「……ゆーすけ?寝ちゃうの?」 悠介 「お前もどうだ?日に当たりながら寝るのも悪くないぞ」 ルナ 「ん…………」 悠介 「………」 閉じた目の裏に明るさを感じながら、 それでも俺の意識はまどろみの中に溶けていった。 …………。 ……トサッ。 小さな重みを左腕に感じた。 悠介 「……?」 薄目で見ると、ルナが俺の腕を枕にして、俺の隣で目を閉じていた。 悠介 「………」 ……いいや、どかすのも面倒だ。 俺はそのまま目を閉じて、まどろみを受け入れて眠りについた。 なんだか理不尽な殺気をなんとなく感じながら。 ……………… ………… …… 若葉 「ごぉおお……!!お、おにいさまに腕枕をぉおお……!?」 ゴツッ!ゴツッ!ゴツッ! 春菜 「若葉ちゃん、大木を殴ったり蹴ったりするのはやめようね」 木葉 「そうですね、自然破壊は感心できません」 春菜 「だね。もっと言ってやってよもう」 木葉 「わたしは先輩に言ったのですが」 春菜 「え?なにそれ」 木葉 「いえなんでも。     ……姉さん、影で嫉妬するくらいなら当たって砕いて然るべきです」 春菜 「砕けるんじゃなくて、砕くんだ……」 木葉 「標的はルナさんしか居ません。しかしです。     お兄さまが寝ている最中に攻撃をすれば好感は持たれないでしょう」 春菜 「そうだろうね」 木葉 「理解していただけたなら話は早いですね」 春菜 「え?」 木葉 「失礼します」 春菜 「え?あ、あーっ!」 木葉 「気づくのが遅かったようですね。     春菜先輩の自由はもうわたし達のものです。     せいぜいお兄さまに嫌われてください」 春菜 「わー!ずるいずるいずるい!ちょ、ちょっと待って!     ていうかとっても腹黒いぃいっ!!」 木葉 「姉さん、姉さんも手伝ってください」 若葉 「………」 春菜 「あぁぅ!その笑みは!?その笑みはなんなの若葉ちゃ───やぁあっ!」 Next Menu back