それは今の物語。

過去現在未来を丘の上から見下ろした、既望へ繋がる望月の日。

夢の終わりはいつだって隣にあって。

その夢が終わらないようにぼくらはいつだって走り続けた。

走って走って、涙が出るくらい走って。

ふと、誰かにバトンタッチをしたくなった時、周りを見渡しても誰も居なかった。

そして足が動かなくなって倒れた時、自分は目を覚ました。

孤独というくだらない宿命を背負って産まれたぼくらにはそれが辛くて。

だけどその隣には自分が心を許した友人が居てくれた。

彼は苦笑しながら冗談まがいに話し掛けてくれて、

それが現実だと知ると自分も嬉しかった。

もう孤独だなんて言葉はいらない。

いつか迎える終わりの時まで、俺はこいつと一緒に未来へと歩き続けよう。

───そしてその終着が見えた頃。

ぼくたちは子供に戻って、馬鹿みたいな喧嘩をする。

……だから。

どうかその時が来るまで、ぼくらの夢を奪わないでください───














───来客(らいきゃく)───
───朝が来た。 俺は例のごとく朝食を用意して、珍しく朝の散歩に出ていた。 見上げれば真っ青な空。 ああ、夏ももうすぐ終わりか───なんて思った瞬間だった。 ドカーン! 大きな音を立てて、神社の境内の一角にクレーターが出来た。 サイヤ人でも降ってきたのかとか思ってしまう迫りつつある自分が怖い。 もちろん俺の所為じゃない、周りの連中の所為だ。 しばらくすると咳き込む声とともに煙も晴れて来た。 そしてそこに居たのは───まだ幼さの残る少女だった。 少女 「う……いたた……」 少女はどこかから落下してきたのか、頻りに痛がっていた。 俺は呆れて……というより間違いなく厄介ごとであることを悟り、 敢えて話し掛けることはしなかった。 少女 「……あ」 少女は危うかった体勢を変えて赤くなった。 ……俺が何も喋らない所為か、少女もなにも喋らない。 仕方ないな、このままじゃなんか気まずい。 悠介 「……あのさ。どうやって落ちればこんなクレーター作れるんだ?」 少女 「……ご、ごめんなさい……」 そう言うと少女は突然ポロポロと涙した。 悠介 「うわっ!?こ、こらっ!いきなり泣くなっ!訳が解らないぞ!」 少女 「ごめんなさい、ごめんなさい……境内を壊すつもりなんかなかったんです……」 ……うお……何かしたわけじゃないのに……なんだこの罪悪感は……。 悠介 「いきなり謝らないでくれ……あー、キミ、名前は?」 話題を変えれば少しはマシに…… 少女 「……な、名前ですか……?」 悠介 「俺は晦悠介。キミは?」 少女 「え……?」 悠介 「え?」 少女 「あ、あの……もう一度お願いできますか?」 悠介 「え?名前か?」 少女 「はい、はい……」 こくこくと頷く少女。 悠介 「晦悠介……だけど」 少女 「……ということはここは晦神社……ですか?」 悠介 「そうだが」 少女 「…………どうしよう」 再び泣き出す少女。 ああ、やっぱり面倒事だった。 なんてことだ、面倒なのはあいつひとりで十分なのに。 って、こんなこと思ったら現れるな、控えよう。 悠介 「……あのさ。名前を訊いているんだが」 少女 「あ、あっ……ごめんなさい、ごめんなさい……」 悠介 「だ、だから謝るなって……名前を訊いてるだけだから。……ほら、泣きやめ」 少女 「あ……」 流れる涙を拭ってやる。 俺を見るその目は潤み、なにやら可愛いものだった。 少女 「………」 それ以降、ぽ〜……とした感じで俺を見る少女。 ……落ち着いたのかな? 悠介 「……キミ、名前は?」 少女 「……あの」 悠介 「うん?」 少女 「な、名前を訊いてどうするんでしょうか……」 悠介 「呼ぶだけだが。他にあるか?」 少女 「……そうですよね。それ以外なんて無いです。     わたしは……沙姫。弧月日 沙姫と……申します」 悠介 「こげつひ、さき……?変わった苗字だな」 沙姫 「……はい。あの……わたしの家がひとつの家元として確立される際、     お祖父さまが作った苗字だそうです……」 悠介 「確立?」 沙姫 「あ……忘れてください」 ……なんですかそりゃあ。 まあいいか。 悠介 「ほら、とりあえず立ちなさい」 俺は少女に手を貸し、立ち上がらせた。 そのままクレーターから出すと、俺はその削れた部分を創造して元通りにした。 記憶は彰利にでもいじってもらおう。 だが、少女は驚かなかった。 そのことに俺が驚いたくらいだ。 悠介 「………」 で。 よく観察すると恐ろしいことに気づく。 悠介 「……あの、さ。それ……」 彼女が腰周りに差しているもの。 それはどう見たって刀。 尚且つその柄の三日月の印は…… 沙姫 「あの、これは……勝手に持ち出してしまって……」 ───どっからどう見ても冥月刀でした。 悠介 「……ちょっと見せてもらっていいか?」 沙姫 「えっ、あ、だめですっ!抜いてしまったら───」 悠介 「え?」 キヒィイイン……。 ごめんなさい、手遅れでした。 透き通るようなキレイな音を出して冥月刀はその美しい刀身を空の下にさらした。 沙姫 「───……」 悠介 「……あら?」 なんか様子が変ですが? 沙姫 「……やれやれ、また抜いてしまわれたか。     沙姫さまはおてんばで在らせられるな」 悠介 「…………?」 はて?なんか口調が凄まじく変わっていらっしゃるんですが? 沙姫 「……ああっ、これは悠介さま。お懐かしい限りです」 悠介 「へ?」 沙姫 「お忘れですか?わたしです、冥月でございます」 悠介 「いや……聞いたこともないですが」 沙姫 「……?ああ、そうでございました。     ここではまだわたしの意識は生まれていませんでしたね。     それでは改めて挨拶を。わたしは冥月。     屠神 冥月でございます。冥月刀の具現体……とでも言っておきましょうか」 悠介 「と、とがみ……?めいげつ……?刀の具現って……」 ……なんですかそりゃあ。 冥月 「まあいずれ解ることでしょうし話してしまいましょう。     部分部分は掻い摘んでもよろしいか?」 悠介 「……好きにしてくれ」 冥月 「承知しました。言ってしまえばわたしと沙姫さまは未来からやってきました」 悠介 「掻い摘みすぎだっ!」 冥月 「はっ!?し、失礼しました!それではどう話せばいいやら……!」 悠介 「…………いや、いい……。冥月刀持ってるってことは月の家系なんだろ……?」 冥月 「その通りです。沙姫さまは才能に恵まれておられる。     さすが、悠介さまと彰利さまのご子孫なだけはある」 悠介 「マテ」 冥月 「は?ま、またなにか至らぬところが?」 悠介 「俺と彰利の子孫って……!?」 冥月 「はい、沙姫さまは悠介さまと彰利さまの子孫で在らせられます。     言わば……先ほど沙姫さまが仰られた『お祖父さま』が、     彰利さまのご子息……つまり、みずきさまに在らせられます」 悠介 「………」 冥月 「そして同じく生まれた深冬さまのお子さまとみずきさまのお子さまが結ばれ、     その娘として沙姫さまがご誕生になられた。     わたしは宝刀として家系に祭られていたのですが、     赤子の頃から沙姫さまとは波長が合いまして。     彼女がこの刀を抜く時、わたしの意識が現れるようになったのです。     つまり沙姫さまが危機の際、     沙姫さまが刀を抜けば……わたしが沙姫さまをお守り出来るわけです」 悠介 「なるほど……参考までに訊くけどさ。冥月、お前って男?」 冥月 「いえ、女性(にょしょう)にございますが。それがなにか?」 悠介 「……いや、なんでもない」 なんか最近、女と接触してロクな目に合ってない気がするからさぁ。 冥月 「ところで悠介さま……話は変わるのですが」 悠介 「うん?」 冥月 「沙姫さまは素質はあるのですがそれを引き出すことが出来ないでいるのです。     わたしは沙姫さまのその悲しみを受け止めて力を解放致しました。     その結果がこの時代への時間転移です。     沙姫さまは恐らく、     一代で家系の歴史を塗り替えた貴方さま方を慕っていたのでしょう。     わたしは沙姫さまの思いを力に変換しただけなのですから。     ですが知っての通り、わたしは家系の力を流し込まれて初めて機能する刀です。     言わば、力を引き出すための『鍵』でしかありません。     わたしが感じた限り、沙姫さまには秘めた素質がおありです。     その証拠に月空力である時間転移を成功させてしまいました」 悠介 「……ああ」 冥月 「お願いします悠介さま。どうか沙姫さまの不安を取り除いてさしあげてください。     力を開花させてくれと言うのではありません。     沙姫さまにどうか、笑顔をお与えください……。     わたしは沙姫さまが幼子の頃から傍に居るというのに、     未だ沙姫さまの真の笑顔に会っていない気がするのです……」 悠介 「……俺は俺なりのやり方しかできないぞ?」 冥月 「大丈夫でございましょう。     貴方さまはご自分が思っておられるよりもやさしい方だ。     きっと、沙姫さまも貴方さまが好きになるに違いありません」 悠介 「怖いこと言うなよ……。     俺はもうルナに刺されてセレスに噛まれて若葉に怒られ木葉に呪われ、     姉さんに撃たれて水穂に誤解されるのは御免だぞ……」 冥月 「ふふっ、変わっておりませんね」 悠介 「知るかっ」 冥月 「それでは、任せて大丈夫でしょうか」 悠介 「……笑わせるなら彰利が居る。俺じゃあ役不足だろ」 冥月 「…………過ぎた謙遜はやがて愚鈍と称されますよ。     貴方には人を惹きつける確かな『何か』がございます。……それでは」 冥月が刀を手にして、鞘に収めてゆく。 悠介 「え?あ、ちょっと!今のどういう意味───」 やがて刀身は鞘の中に消え、パチンッという音とともに完全に収まった。 冥月 「───……」 悠介 「おいー……?」 冥月 「…………?」 悠介 「め、冥月……?」 冥月 「ひあっ……!?あ、あなた誰ですかっ……!?」 悠介 「───ダメか。沙姫に戻ってしまった……」 沙姫 「あ……先祖さま……?」 悠介 「……間違いじゃないらしいけど、先祖さまはやめてくれ」 沙姫 「あ……ち、違うんです、先祖さまってそういう意味じゃ……」 悠介 「冥月から全部訊いたよ。隠さなくていい」 沙姫 「あ……そうだったんですか……」 悠介 「………」 しかし、何度思い返しても厄介者がやってきたとしか思えないんだよねぇ……。 よし、こういうのはアレだ、彰利に任せよう。 悠介 「彰利ー」 小さく呟いてみる。 するとゴバァアアン! 彰利 「イィヤッハァアアーッ!!呼んだかいブラザー!」 何故か埋めた筈のクレーターから彰利が現れた。 悠介 「どこから沸いて出てくるんだよお前は!ああもうせっかく直したのに!」 彰利 「まあまあまあまあそげんこつどうでもよかギン。して、なんば用っとや?」 悠介 「横着した言葉で物事を語るな。解るように喋れ」 彰利 「…………俺に標準語を話せと?」 悠介 「あーいい、お前に付き合うと時間がかかる。沙姫」 沙姫 「は、はいっ」 悠介 「えーと、紹介する。こいつが弦月彰利。彰利、この娘は───えっと」 ……なんて紹介したもんか。 いきなり未来からやってきたって言ってもイチャモンつけてきそうだし。 悠介 「……この娘は沙姫。えーと……俺の娘みたいなものだ」 彰利 「!?」 ……しまった。 どうやらタブーだったらしい。 って、普通考えれば解ることじゃん! うわぁやっちまった! 悠介 「いや、これは冗談で」 彰利 「アァアアアアアアアッ!!」 悠介 「うおっ!?」 彰利 「ダ、ダーリ……ダーリンに隠し子っ……!?」 彰利の目からホロホロと涙が溢れる。 やがて震えながらゆっくりと首を横に振り、後退りしてゆく。 ……こりゃ絶対誤解してるな。 彰利 「ひどっ……!ひどいや……ゆ……う、うわぁああああああああっ!!!!」 悠介 「あ、彰利っ!?」 彰利が涙を撒き散らしながら走っていった。 …………やばい。 なんかやばい。 嫌な予感が絶えない。 悠介 「えーと……逃げようか、沙姫」 沙姫 「え、あ、あの……何故ですか?」 悠介 「身の危険を感じるからだ。ここに居ると間違い無く屠られる」 あー……どうして俺ってこうかなぁ。 口が軽いっていうかなんていうか……言わなくていいことをべらべらと……。 沙姫 「これからここに来る者が先祖さまに危害を加えるのですか……?」 悠介 「そういうことになるかな……自業自得だけど。     それよりさ、その先祖さまっていうのやめてくれないかな……」 沙姫 「……先祖さま」 悠介 「名乗ったでしょうが。好きなように呼んでいいから」 沙姫 「……先祖さま」 悠介 「………」 沙姫 「………」 悠介 「えっとさ、彰利のことも先祖さまって呼ぶんだろ?ややこしいじゃないか」 沙姫 「いえ、あの……弦月の家系では、あの人には独特の呼び方があったとか……」 悠介 「へえ……あいつに?どんなのか聞いていいかな」 沙姫 「………」 悠介 「うん?」 沙姫 「…………ん」 悠介 「聞こえないんだけど……」 沙姫 「あの……一度しか言いません」 悠介 「ああ」 沙姫は顔を真っ赤にして視線を泳がす。 ……なんだ? そんなに言い辛いことなのか? 沙姫 「へ……」 悠介 「へ?」 沙姫 「変態オカマホモコン……」 悠介 「………」 沙姫 「………」 悠介 「………」 沙姫 「あの……泣いているんですか……」 悠介 「え?うわっ、ほんとだ……」 拭ってみると、指につく涙。 あ、あれ……?なんで俺、泣いてるんだろ……。 ていうか子孫にまでそう呼ばれてたのかあいつは……。 すまん彰利……一生モンの不名誉なあだ名つけちまって……。 沙姫 「す、すいませんっ!     呼ばれ名だからって、ご親友の悪口を言われたら傷つきますよね……!」 悠介 「へっ!?い、いや、これはそういうのじゃなくて」 ドガシャアアン!! 悠介 「はっ───し、しまったぁ!つい話し合ってしまったぁ!」 神社の境内から、空へと吹き飛ぶ玄関が見下ろせた。 く、来る!やつらが来る! 悠介 「10秒で消える、彰利の部屋へと続くブラックホールが出ます!」 ブラックホールを創造する。 もちろん退避用。 悠介 「沙姫、来いっ!」 沙姫 「は、はいっ」 沙姫が、差し伸べた俺の手を握る。 俺はそれを引くとブラックホールの中へ飛び込んだ。 ───……ブラックホールが閉じる瞬間、 最後に恐ろしいまでの怒号を聞いた気がしたが……まともに考えるのはよそうと誓った。 ───……ヴヴンッ! ブラックホールを介して彰利の部屋へ辿り着いた。 俺は先に着地して、沙姫の手を引き 彰利 「やあ」 悠介 「!?」 手を引いた先から彰利がズルゥリと出てボゴォッ!! 彰利 「おぶボッ!」 悠介 「ど、どうしてお前が出てくるんだよ!沙姫はどうした!」 彰利 「フフフ、こんなこともあろうかと冥月刀で異空間から直接あなたに会いに来たの。     ああ、ちなみにホレ、ダーリンの娘はここに」 彰利が手を引くと、その先から沙姫が現れた。 彰利 「でももういいの……ダーリンの娘ってこたぁアタイの嫁も同然……。     …………ん?娘……?     ……ダーリンてめぇいつナイトフィーバーしやがったのよ!     け、計算が合わねぇわよ!?     ま、まさかダーリンたら幼少の頃からそんなに手が早かったの……!?」 悠介 「それ以前にどうして沙姫がお前の嫁になるんだよ!」 彰利 「あっ、あーっ!誤魔化したーっ!この野郎ォーッ!!」 彰利が唸りをあげて襲いかかってきた! 悠介 「勘違いしてんじゃねぇ!この娘は」 彰利 「うっさいわい!ダーリンなんかもう知らん!     お前なんかもうハニーだ!このハニー!」 悠介 「落ち着け本気で!罵倒が確実におかしくなってるぞ!」 彰利 「ダーリンのアホー!ハゲー!」 悠介 「うわっ!?マジ泣きしてる!?」 彰利 「ばかー!ダーリンのばかー!おばかさぁあああああああん!!」 がしゃあああああんっ!! 彰利が窓ガラスをブチ破って外へと飛び出しドカアアアン!! 彰利 「ギャウッ!」 例の如く車に撥ねられた。 悠介 「……ごめん、馬鹿で……」 沙姫 「いえ……聞いていた通り……いえ、それ以上です……」 外では騒音とともにざわざわと野次馬が集っている。 悠介 「あの馬鹿、さっさと逃げないから───!」 騒ぎになるのは御免だ。 俺は沙姫にこの場に居るように言って、外へ飛び出した。 階段をカンコンカンコンと降りてその場へ。 うわ、ホントに野次だらけだ。 まったく暇人どもめ……! 悠介 「すいません!ちょっとすいません!」 人垣に潜り込んでゆく。 なんだよあいつ、とかいろいろ言われたが無視だ! ───そしてようやく人垣を抜けて、その景色の見える場所まで辿り着く。 そこには彰利を撥ねたと思われる車が止まっていて─── 彰利 「やーみんなー!今日は俺のライヴに来てくれてありがとー!」 彰利がその上で勝手にライヴを始めていた。 ……ホントにめげないヤツだ。 彰利 「それでは聞いてください!     俺様作曲、『赤毛のアンは鼻毛も赤いのか否か』!」 …………馬鹿なことをした。 あいつが車に撥ねられた程度でめげるわけがなかった。 戻ろう。 どこからともなく流れてくる曲とともに彰利が歌う。 恐らく音楽は月奏力で出しているのだろう。 彰利 「アンさん何者どこぞの娘!?真っ赤な髪の毛振り回スィーッ!     でも毛が赤いってこたぁアレでしょ!?     鼻毛も赤いんでしょ!?え?違う!?金返せこの野郎!!」 ……滅茶苦茶な歌詞に、俺は耳を塞いだ。 見れば、彰利は周りに居たギャラリーにモノを投げられている。 彰利 「ギャアア!お、お客様!モノは投げないでください!     投げていいのは投げキッスだけよー!あ、あと金!     未だにキャミソール姿のアタイにお恵みをー!」 ……あの馬鹿、せっかくツッコまないでいてやったのに……。 まあ、自分で言った通り、未だヤツはキャミソールである。 冥月刀で消滅したタンスには財布と通帳が入っていたそうで、すべて消滅。 今では我が晦家にしょっちゅうタカリに来ている。 ちゃりんちゃりーん! ……ん? 彰利 「キャア!そうよそう!金ヨー!もっとよこせー!もっとだー!もギャア!?     だ、誰だ今思いっきり投げたの!骨が砕けるかとゲブボッ!!     なにぃ!?10円を袋に詰めての投擲!?考えやがったなブッチャー!」 ……彰利が野次馬に金を投げられている。 そのほとんどは10円や五円だ。 1円は軽くて威力がないから投げていないのだろう。 気持ちは解る。 彰利 「ひぃふぅみぃよぉ……おお、100円たまブボォッ!!」 ドゴォッ!メゴォッ! ベキャッ!メシャア!! 彰利 「いたた!マジ痛い!やめれ!誰!?こんな勢いで投げてるの!」 悠介 「あそーれ!うぅりゃあ!おぉりゃあ!!」 彰利 「ダーリン!?ちょ、ちょっと待てコラ!てめぇなんばしブボッ!     いやシャレになってませんよ!ダブボッ!!     やめれと言っておますじゃねえの!!しかも5円ばっかり!     ダメージに見合ってないぞこれ!死ぬ!マジで死ぬ!」 俺は五円を袋に詰めて投擲した。 それが彰利の脇腹にゴシャアとめり込み、彰利がギャアと叫ぶ。 ああ、なんて気持ちがいいんだろう。 これが……これがスポーツ精神!? 彰利 「親友に金投げつけてなにサワヤカ少年気取ってんじゃい!     ダーリンたらヒドイわ!これが貴方の友情なの!?」 悠介 「友情だ!」 彰利 「うおブボッ!?言いきっちゃっブボッ!!フ……ならばブボッ!     俺もそれにブボッ!答えなけりゃブボッ!ならブボッ!喋らせろよこの野郎!」 おおキレた。 だが金の雨は止まない。 次第に彰利も怯んでくる。 と、その時だった。 ───トン、と。 沙姫が車の上に降り立った。 彰利 「ほぇ?」 沙姫 「───」 ガキキキキキキキキキキキキィインッ!! 沙姫は降り立つと同時に冥月刀で小銭を受け落とし、野次馬達を睨んだ。 沙姫 「失せるのだ群集よ。失せぬのであればこの冥月、お相手致す」 そう言って構える沙姫───いや、冥月。 その睨みだけで相当な迫力がある。 実力は相当だろう。 野次馬も蟻が散るように去っていった。 冥月 「───ご無事でしたか、彰利さま」 彰利 「………」 彰利が俺を見る。 珍しく、『説明してくれるよな?』って顔だった。 Next Menu back