───冥月(めいげつ)───
───さて。 彰利 「へー、未来からねぇ。     俺も過去からならダーリンのもとへ遊びに行ったことがあったけど」 悠介 「あるのか」 彰利 「うむ、平気で殴られた」 悠介 「……お前の扱いはどこも同じってわけだな」 彰利 「イエス、ちょっぴりアタイもセンチメンタル。     あ、ところで質問。この冥月刀にはまだ冥月の意識は無いんザマスか?」 冥月 「いえ、あるにはありますが……開放できる資質がないのです。     わたしの意識の波長と同調するか、     月壊力と月蝕力を使えなければなりません」 彰利 「ぬう……月壊力だけじゃダメなのね」 冥月 「はい。月壊力で開けるリミットはせいぜい月操力の強化です」 彰利 「むう……って、あら?     それだったら月蝕力でもリミット開くことは出来るってことザマスか?」 冥月 「はい。引き金にするだけですので、冥月刀が消飲されるようなことはありません」 悠介 「そうなのか……」 彰利 「ふむふむほほー。ところでさ」 冥月 「なんでしょう」 彰利 「この冥月刀に意識があるとしたら、このあとのことも知ってるんザマスね?」 冥月 「はい、同じことを質問していたのを憶えています」 彰利 「ぬお……」 冥月 「未来を変えようとしているのですね。     この時、今この場に居る未来のわたしは黙っていましたが、     わたしも同じ歴史の繰り返しを好まないので、先のことを変えてみましょうか」 彰利 「賛成!で、アタイはこのあと何したん?」 冥月 「未来を変えようとしたんですが、悠介さまに止められて断念しました」 彰利 「……なんかよく解る気がする」 悠介 「そう睨むな……」 彰利が少々疲れた表情で俺を見た。 彰利 「そんじゃあ止められなきゃいいってわけね。えーと、じゃあどうするか」 悠介 「いいよ、俺も変えてみたい」 冥月 「この話をしている時点でもう変わっております。     ですが……そうですね、     悠介さまと彰利さまで冥月刀を呼び起こすのはどうでしょう」 彰利 「ウィ?出来るの?」 悠介 「───あ、そっか。月壊力と月蝕力が鍵なら、俺とお前でやればいいんだ」 彰利 「───ああ!」 彰利が早速冥月刀を引き抜く。 相変わらず透き通るような音を鳴らして、その刀身は姿を見せた。 俺と彰利はその柄を片手ずつで持って構えた。 彰利 「いくぞ悠介っ」 悠介 「おうっ」 集中し、印を解放する。 途端、冥月刀が輝いた。 彰利 「ゲェーッ!?いきなり太陽拳!?なんて洗礼だ!」 悠介 「違うだろこれはっ!」 ギキィンッ! やがて光は治まり、冥月刀の唸りは治まった。 冥月 「……やはり、意識を同調出来る者でなければ真の解放は無理ですね」 悠介 「沙姫にはその資質があるんだよな?」 冥月 「はい。かつて死神と融合を果たした月操力の開祖さまより、     いろいろな意味で強力な素質の持ち主です」 彰利 「おお、それなら俺様新発見」 悠介 「え?」 彰利が沙姫の手を取り、自分の冥月刀を持たせた。 彰利 「二刀流ー!」 悠介 「………」 冥月 「なるほど、それは面白そうですね。───むっ……!」 冥月が両手に持った冥月刀を構えた。 ……が、なにやら冥月刀がギチギチと唸りを挙げ始める。 彰利 「………」 悠介 「なにやらヤバそうなんだが」 彰利 「俺っち知らないっす」 彰利がハマーの真似をしている内にもどんどんと音は大きくなる。 彰利 「いやーん!なんか爆発しそうな雰囲気!」 悠介 「い、いやっ……さすがにそれはないんじゃ───」 ガギギギッ!ギキィイイインッ!! 悠介 「……あるかも」 彰利 「とんずらーっ!」 彰利が先ほど破壊した窓から逃げ出した。 悠介 「ああっ!?て、てめぇーっ!!」 ドバァン! 彰利 「ギャーォオオウ!!」 しかし再び車に撥ねられた。 って、それどころじゃない! 今も尚、ふたつの冥月刀は唸りをあげている。 これは相当ヤバイ───! どうする───!? 1:俺も逃げる 2:電磁場で防御 3:……逃げられるわけないだろう 結論:3 悠介 「逃げられるわけないだろう……!」 見れば、力の強さの所為でふたりの冥月は刀へ引っ込み、それを制御しようとしている。 だが問題は彼女───沙姫だった。 震えながら涙目で俺を見ている。 それは間違いなく───助けを懇願している目だった。 そんな目を見て逃げられるほど、俺は人嫌いじゃない───! 悠介 「待ってろ!今助けてやる!」 俺は沙姫に駆け寄るとその冥月刀に手をかけた。 バチィッ! 悠介 「ぐうっ!?」 が、その途端に手に激痛が走って血が出た。 相当な力が暴走している。 家系の開祖か……厄介な力だなまったく! ガシィッ! 悠介 「ぐぅあっ!───く、あああああああっ!!」 それでも掴む。 肉が鳥肌が立つほど膨張と収縮を繰り返し、ところどころで破裂を始める。 血が出たが───構わない。 こんなものは後でどうにでもなる。 今はこの俺の目の前で泣いてる娘を助けなければ───男じゃねぇ! 悠介 「沙姫!冥月刀を離せ!俺がなんとかする!」 沙姫 「だめ……だめです……!そんなことしたら先祖さまの体が持ちません……!     片方の鍵しか持っていないのに、     ふたつの鍵が必要な大きな扉は開けられません……!」 悠介 「いいからっ!腕が飛ぼうがどうしようが構わない!守りたいんだよお前を!」 沙姫 「え───?」 一瞬の間、沙姫の力が抜けた。 俺はその隙を見逃さず、唸りを上げる冥月刀を奪った。 悠介 「───っ……!!まったく、開祖ってのはバケモノだな……!     こんな力を制御できるだけの力があるなんて……!」 喋る内に手の皮は剥げ、どんどんと血が出るのだが───その血まで消滅してゆく。 悠介 「でも甘い。開祖にも無い力が俺にはあるんでね───!」 俺は溜め込んでいた理力の全てを解放した。 それは冥月刀に吸い込まれていき、次の瞬間には冥月刀の唸りは止まっていた。 悠介 「……やれやれ」 剥け爛れた手の部分を創造し、一息つく。 ……なんか、開祖がどうのより……俺が一番バケモノかもしれないな。 今、ピッコロさんを超えたような気がした。 ……いや、冗談だぞ? バケモノって部分はさて置き。 悠介 「よっと……ほい、封印」 パチン。 冥月刀を鞘に収めると、俺は息をついた。 沙姫 「あの……何を?」 悠介 「うん?ああ、これ?」 冥月刀を少し掲げる。 沙姫は頷くと、俺をじっと見た。 悠介 「なんのことはないよ。     冥月の制御を手助けする力が出ますって感じの理力を溜めておいてな?     それを冥月刀に流し込んだわけだ。     それで冥月もさっさと制御に集中出来るし、唸りも治まる。一石二鳥だ」 沙姫 「創造の理力……あれがそうですか」 悠介 「ブラックホール作って見せただろ?」 沙姫 「いえ……あれはてっきり月空力かと……」 悠介 「俺が使えるのは月蝕力と月鳴力だけだよ。     あとの力は創造の理力で『もどき』を作ってるだけだ」 沙姫 「………」 悠介 「それより、そっちは大丈夫か?」 沙姫 「あ、はい。全力で頑張ったので唸りももう治まりました」 悠介 「馬鹿、手の方だよ。見せてみろ」 沙姫 「え?あ……」 沙姫の手をとって、傷は無いか調べる。 悠介 「ひどいな……擦り切れてるじゃないか」 沙姫 「平気です。慣れてますから……」 悠介 「そういう問題じゃないだろ。えーと……月生力もどき」 彰利がやっていたことをイメージとして想像し、それを創造に変えて弾けさせた。 悠介 「……ほい治療完了。女の子なんだから無茶するなよ?」 俺的に、この娘にまであいつらのような性格になってほしくない。 沙姫 「………」 悠介 「ん?顔赤いぞ?大丈夫か?」 沙姫 「………」 ……こくこく。 ああ、頷いてる。 大丈夫らしい。 俺はぼ〜っとしている沙姫の頭を撫でてやると、それを反動にするように立ち上がった。 さて……これからどうするか。 彰利 「やあキミたち」 悠介 「なっ───てめぇ騒ぎが治まったと思ったら戻って来やがって!!」 彰利 「馬鹿野郎!あんな面倒なことに巻き込まれてたまるか!」 悠介 「いっつも自分から面倒事起こしてる馬鹿野郎が、     なぁにえらそうなことぬかしとんじゃあーっ!!」 彰利 「偉いから全て免除!最強!」 悠介 「免除されるわけないだろうが!オマケに偉くもない!」 彰利 「じゃあエロい?」 悠介 「それは認める」 彰利 「ダーリンのばかーっ!」 彰利が走り去っていった。 今度は飛ばなかった。 悠介 「しかしどうしたものかな。しばらく帰らないのか?」 沙姫 「………」 悠介 「沙姫?」 沙姫 「………」 ……こくこく。 頷いてる。 帰らないらしい。 悠介 「ここで何かしいたいことでもあるのか?」 沙姫 「………」 悠介 「………………沙姫?」 沙姫 「………」 ……こくこく。 頷いてる。 ……ホントだろうか。 さっきから俺の方ず〜っと見て呆けてるんだが。 ……ていうか、抜刀したままだな。 もしかして冥月? 悠介 「あの……冥月?」 冥月 「はい……そうですが」 悠介 「…………どしたの、さっきからぼ〜っとして」 冥月 「……いえ」 悠介 「………」 シャッキリしないなぁ。 なんだろなぁ。 悠介 「そういえばさ、この歴史に残るにしても、どこか行く宛てあるのか?」 彰利 「ダーリンの心の中……♪」 悠介 「よし、今すぐ心の人にしてやるからそこを動くな」 彰利 「ギャアーッ!!どうしてここに居るのかとかそういう疑問より先に始末!?」 悠介 「フンッ!」 べきゃっ! 彰利 「ギャウッ!」 彰利の脇腹に良いトーキックがメリ込む。 悠介 「やあ彰利、どうしてこんなところに居るんだ」 彰利 「蹴る意味がねぇーっ!なんてことすんのさダリーソ!     アタイの脇腹が泣き虫サクラの目みたいにボッカリと空いちゃったじゃない!」 悠介 「怖いこと言うなよ!全然普通じゃないか!」 彰利 「あ、待って、今空けるから。むーん!」 メコメコ……ボコォッ! 彰利 「ほれ見ろー!こんなにデカイ穴が」 悠介 「で、どこか行く宛てはあるのか?」 彰利 「例の如く無視かよぅ!     ダーリンたら最近ちっともアタイにかまってくれねぇじゃねぇの!     いい加減アタイも切なさ炸裂ですよ!?無言電話ですよ!?」 悠介 「だぁってろこのボケ!」 彰利 「ひぃいっ!?」 オガー!と咆哮を放つと彰利が怯んだ。 彰利 「うう……っ!新米女郎がボクの居場所を奪ってゆくーっ!!」 彰利が泣き叫びながら走っていった。 今度は窓から飛び出していったが、車は来ないで着地は出来たようだ。 が、足が痺れたようで、その横からソバ屋の配達自転車に熱烈なアタックをされていた。 悠介 「ソバまみれになってるあの馬鹿は放っておくとして」 冥月 「はい……出来れば晦神社に置かせていただけないでしょうか。     ───この屠神冥月。     この刀に懸けて、必ずや悠介さまをお守りする側近となりましょう」 悠介 「目的が変わってるぞ、沙姫を一人前にするんじゃなかったのか」 冥月 「は、は───!そうでございました……!」 ギリ、と自分の間違いを悔いるように歯を食い縛る冥月。 悠介 「まあ冗談で場を和ませようとしてくれた心遣いは頂いておくよ。ありがとう」 冥月 「はっ───?い、いえ、わたしは冗談など───」 悠介 「彰利ー!さっさと昇ってこーい!ルナ達を説得に行くぞー!」 窓から外を見下ろすと、そこには 彰利 「うぅうううまぁああああいぃいいいぞぉおおおおっ!!!!」 ゾボボボボォオッ!と、そばを食い散らす彰利が居た。 男  「ああぁあっ!それは出前で───!」 彰利 「黙れこのわらしゃあ!てめぇ人様の一張羅にそばつゆつけてくれやがって……!     俺ゃあよ?それをこのソバで許してやろうって言ってんのよ?     それともなんだ?あ〜ん?クリーニング代払ってくれるのか?ンン?     それなら100万置いてけボケェッ!ついでにアタイの服も買え!」 ひでぇ。 あんなところに着地したあいつが確実に悪いのに。 しかもその一張羅がキャミソールであることに、出前男が恐怖している。 違った意味で迫力があるが、変態以外のナニモノでもない。 彰利 「むーん!!この雷門にも勝るとも劣らぬ味!貴様どこの手の者だ!」 男  「ひぃい!」 彰利 「訊ね人にヒィとはなんだこの野郎!ちゃんとアタイの目ェ見て話せ!」 ……このままじゃ話が進む前に日が暮れそうだな……。 悠介 「彰利を神社へ強制転移させるブラックホールが出ます」 イメージを弾かせると、彰利が闇に覆われていきながらウギャアー!と叫んだ。 どんな時でも演出は忘れないらしい。 悠介 「よし、俺達も行こうか。冥月」 冥月 「は、はっ!仰せのままに!」 悠介 「…………あの、冥月?なんか言葉遣いが武士から騎士になってない?」 冥月 「気の所為でありましょう。さあ悠介さま、わたしにお掴まりください。     月空力で神社まで飛びます」 悠介 「……まあ、体力消耗しないで済むなら楽でいいけど」 俺は冥月の肩に手を置き、転移を待つ。 冥月 「いえ、あの……もう少し密着してくださいますか」 悠介 「もう少し?」 冥月 「はい。取り残されるということはありませんが、万一腕だけが転移されたら」 悠介 「切れても生やす」 冥月 「……と、とにかく!もう少しこう……だ、抱きつくような形で……」 悠介 「そうしないとダメなのか?」 冥月 「……わ、わたしは何分、人とともに翔んだことがないもので……」 悠介 「そっか、不安なんだな。解った」 俺は納得して、抱き締めるように密着した。 冥月 「───っ!!」 悠介 「冥月?」 冥月の息を飲むような声が聞こえたと思ったら、肩越しに見る冥月の顔が異様に赤い。 冥月 「い、いいいいきますっ!め、冥月刀よ!     沙姫さまの力を糧とし、我らを転移させたまえ!!」 ガカァアッ───キィインッ!! ─── で、気づけば神社。 小さく息を吐いて───ギロッ! 悠介 「うおっ!?」 たまげた。 その場にはまだルナや若葉達が居て、 某アクティブモンスターのように目ざとく俺を発見した。 ルナ 「悠───なっ!」 で、俺を最初に見つけたルナが開口とともに押し黙る。 ルナが口をパクパクさせている中、若葉が俺を見て唖然とする。 若葉 「お、おにいさま……!?」 やがて誰もがガタガタと……いや、わなわなと震え出す。 俺は何がなにやら謎すぎて、とりあえず抱き締めていた冥月を───うぁあっ!! ああっ!いきなり原因がわかった! いつまで抱き締めてたんだ俺! 見れば冥月は顔から耳にかけてまで真っ赤で、 蚊の鳴くような小さな声で『はな、離して、くだ、くだだ……』とか言ってる。 ───死ねる。 瞬時にそう悟った俺はサワヤカに会話を切り出すことにした。 ドサクサ紛れで受け入れてもらえるかもしれない。 悠介 「あ、あのさ……こちら、弧月日沙姫さん……訳あって、ウチに泊まることに……」 彰利 「ガァアアアアアアアッ!!!!!」 悠介 「なにぃ!?」 突如、神社の屋根から彰利が襲ってきた。 それと同時にルナ達まで唸りをあげて襲いかかる。 悠介 「うわっ!ちょ、ちょっと待ってくれ!これには事情が!」 彰利 「うるへー!事情もトッポジージョも関係ねィエーッ!!     今日という今日は呆れたぜ悠介!     まさかテイクアウトしてくるとは思わなかったぜスケコマシ!」 悠介 「お前にそういうこと言われたく───トッポジージョ!?」 彰利 「トッポジ〜ジョ〜ゥ♪だ〜いす〜きトッポジ〜ジョ〜ゥ♪死ねぇぇえーっ!!」 悠介 「話に繋がりをもって話せぇええっ!」 俺は俺を攻撃する拳やら鎌やらをかわし続ける。 これでも足の動きには自信がある。が─── この人数じゃ無理だろぉおっ!! 彰利 「殺ったぁーっ!!」 悠介 「で、電磁場───!」 ───プスン。 悠介 「うわぁ出ない!?なんで!?」 彰利 「オホホホホ!こんなこともあろうかと、     今朝のダーリンの食事に霊酒・鬼神を混ぜておいたのよー!」 悠介 「は、謀ったなブッチャー!」 彰利 「最強の誉め言葉ぞ!うらぁっ!」 彰利の拳が落とされガキィン! 彰利 「ややっ!?」 冥月 「……悠介さまを傷つける者は、     たとえ開祖の軌道である弦月の子であろうと容赦しません」 彰利 「そ、そんな……アタイと夜の相手をしてくれるだなんて」 言ってねぇ。 ルナ 「な、なによー!悠介から離れなさいよばかー!」 若葉 「そうです!汚らわしい!」 木葉 「姉さん、調子いい」 若葉 「黙りなさい……!」 木葉 「姉さん、仲間が居れば強気になれるのは事実です。     この際、あの女を屠るために共同戦線を組みましょう」 ルナ 「───のるわ」 彰利 「その話、とっても理想的な提案ですわよ木葉ちゃん」 木葉 「うるせぇ黙ってろ堕とすぞコラ」 彰利 「かつてないひでぇ言われ様!」 ……早くも亀裂が入った共同戦線に溜め息が出た。 彰利 「くそったれ!俺は俺のやり方でやらせてもらうぜ!」 木葉 「別に誘ってねぇのに勘違いしてんじぇねぇです」 彰利 「う、うわーん中傷されたー!ダーリーン!」 彰利が泣きながら俺のもとへ唸りを上げて走ってくる。 彰利 「と見せかけドロップキィーック!」 冥月 「はぁっ!」 バチィンッ! 彰利 「キャーッ!?」 彰利が電磁場に吹き飛ばされる。 彰利 「ゲゲェーッ!?月鳴力まで引き出せるの!?     こ、このガキャー!羨ましくなんかないぞー!」 冥月 「───来るというのなら、手抜きは出来ませんよ」 彰利 「なにぃ!?しろ!」 悠介 「無茶言うな!」 彰利 「なんだいなんだいダーリンまで!     カップルみたいに連れ合いやがって許せねぇ!」 悠介 「事情知ってるのにややこしくするなよ!少し黙ってろ!」 彰利 「やだいやだい!アタイも騒ぐんだい!     ……生来、普通通りに話が運ぶのが嫌いでね」 悠介 「いきなり冷静になるなよ……」 ルナ 「……悠介。あくまでその女から離れないわけね?」 悠介 「離れたら殺されるだろうし」 若葉 「おにいさま……信じていたのに……」 悠介 「人を信じてたらいきなり襲いかかるのかお前はっ!」 若葉 「話題を摩り替えないでください!」 悠介 「どっちがじゃあっ!!」 なんか泣きたくなってきた。 ルナ 「悠介。一度しか言わないわよ。何もしないからその娘から離れて」 悠介 「その前に俺の話を聞いてくれ」 ルナ 「やだ」 悠介 「話をする気があるんかお前はぁっ!」 くそ、泣けてきた。 どうしてこう話を聞いてくれないヤツばっかりなんだか……。 冥月 「……無駄です悠介さま。所詮死神には人の気持ちなど」 ルナ 「むかぁっ!ちょっとあなたねぇ!」 冥月 「悪口だけは聞く気があるんですね」 ルナ 「う、ぐ……」 ドチュウンッ!! ギィンッ! 悠介 「とわっ!?」 突然、後ろから飛んできた光を冥月が払う。 春菜 「……強い、ね。相当圧縮して撃ったんだけど」 悠介 「姉さん……って、ちょっと待った!話を訊いてくれ!」 春菜 「どこからでも女の子を拾ってくる弟の話なんて聞きたくありません」 うわ!何気にヒドイこと言ってる! 冥月 「…………話し合いで解ってくれるのなら、     こんなこと自体起こりませんよ、悠介さま」 悠介 「うう……」 冥月 「一度叩きのめせば話を聞くくらいは出来ることでしょう。     ───屠神冥月。参らせていただきます」 ヒィンッ───! 冥月が刀を回転させると、その刀が空を裂いて涼しい音を出した。 悠介 「無茶するなよ!?俺の家族なんだ!」 冥月 「心得ております───はぁっ!!」 冥月が一瞬、力をためるように構えて、すぐに刀を振る。 するとそこから月醒の矢が放たれた。 ルナ 「月醒の矢!?」 春菜 「任せて!どういうものかはよく知ってるから!」 姉さんが構え、それを散らそうとした。 冥月 「───散ッ!」 だが、冥月が目を変異させると同時にバァッ!と光が分散する。 春菜 「そんなっ!拡散したっ!?」 ドチュチュチュチュチュゥウンッ!! 春菜 「きゃああっ!!」 ルナ 「きゃーっ!ちょ、ちょっと波動娘ー!?任せてって言ったじゃないのー!」 春菜 「こんな筈じゃ……!」 若葉 「任せてください!木葉、バックアップ!」 木葉 「姉さん、了解です」 若葉の影が冥月の影に伸びてゆく。 冥月 「月醒力よ、その光にて影を消したまえ───月醒光!」 ガカァッ!! 悠介 「うわっ!?」 冥月を中心に、まばゆい光が放たれる。 彰利 「負けるかぁあっ!フェイスフラァッシュ!!」 ギシャアア! ……妙な対抗心を燃やしている馬鹿は放っておくとして。 若葉 「そんな……通じないなんて……」 木葉 「姉さん、こうなると役立たず」 若葉 「あなたもでしょうがっ!」 ギャースカ騒ぐ若葉も冷静に返す木葉も放っておこう。 問題は─── ルナ 「───悠介。ルナちゃんを悲しませるとは……いい度胸だわ」 ……フレイアだ。 ルナ 「ねぇあなた。大人しく悠介を渡してくれないかしら。     邪魔するって言うならそれなりに体の保証はしないわよ」 冥月 「……必要ありません。ここで戦ったとして、この場から去るのはあなたですから」 ルナ 「へえ───やってみてよ」 フレイアの目が変異する。 それとともに一瞬にして間合いを詰め─── ルナ 「───え……!?」 冥月 「……残念でしたね。あなたの人格がどうであろうと、     その体自体に望月の魂がある限りは退魔の壁は崩せません」 ルナ 「むっ……!なぁによこんなものぉっ!!」 ドッ───ガシャアアアアアアンッ!! 冥月 「なっ───!?」 ルナ 「あははははは!チェックメイトォッ!!」 目を変異させたままのフレイアが冥月に向かって手を振り上げる。 だが。 ルナ 「───……ッ」 フレイアがその手を冥月の喉下寸前で止める。 冥月 「……残念ですが、退魔の壁も時間稼ぎにすぎません。     あなたのその力は確かに強い。     ですが、だからこそ些細なことに目が届かなくなりえることもあるのです」 ルナ 「くっ……!わたしとしたことが……!」 気づかなかったが、段々と解ってきた。 フレイアの周りに黒い円球のようなものがだんだんと狭まってくる。 冥月 「……空狭転移。     発動までに時間がかかりますが、捉えた者を好きなところへ飛ばせます。     そうですね、あなたには……」 彰利 「エロマンガ島へ飛ばせ!文部省推薦!」 冥月 「では、エロマンガ島へ」 ルナ 「なっ───ちょっと!や、やめてー!なんか屈辱的ーっ!!いやーっ!!」 ギキィンッ!! ──────……。 彰利 「……立派に育つのですよ、ママっち」 悠介 「当然のように横に居られても困るんだが」 彰利 「俺は勝ち目の無い戦いはしない性質なんだ」 悠介 「へぇ、そんなことをお前が言うなんてな」 彰利 「だってさ、オイラってばオナゴに手をあげることなんて出来ないもの。     どう足掻いても勝てないじゃない。負けもしないけど」 悠介 「そうかもな」 彰利 「そうかも、じゃなくて負けねぇのよ。だって俺様最強だし」 悠介 「そういうことは自分で言うことじゃないな」 彰利 「よし言えダーリン。言わないとダーリンの専属ストーカーになるぞ」 チャキッ……。 彰利 「はああ……っ!」 冥月 「……彰利さま。     悠介さまの迷惑になるようなことをするのであれば、この場で屠りますよ」 彰利 「フッ……残念だがお嬢さん。     オイラはオメエなんぞに……アレだ、負けるような男じゃあねえぞ」 冥月 「試してみますか?」 彰利 「───……兆発的な娘ッ子って大好きよ♪」 タンッ───! 彰利が大きくバックステップをして構える。 そしていきなり 彰利 「霊丸ーーッ!!」 指先から月醒の矢を撃つ。 だがあっさりと打ち落とされる。 彰利 「やるじゃない」 アインばりのスマイルをして大きく構える。 背中に手を回して取った冥月刀を引き抜いて、再び 彰利 「霊丸ーーッ!!」 ドチュウウウン!!と指先から光を放つ。 が、やはりあっさりと落とされる。 彰利 「………」 冥月 「……遠慮をして勝てるとは思わないでください。     あなたの力を甘く見るわけではありませんが、     アルファレイドカタストロファーでもわたしは消せません」 彰利 「そりゃどうかな。     先輩殿の神屠る閃光の矢からヒントを得た完成形のアルファレイド!     打てるものなら打ってみやがれぇええええっ!!!」 彰利が刀先に光を収縮させ、 やがて耳が潰れるかと思うような轟音とともにアルファレイドカタストロファーを放つ。 それは今までのような広範囲を破壊するようなものではなく、 圧縮されて『ただ一点のみ』の破壊のために撃たれた。 彰利 「ふはははは!止められぬよ!さっさと避けて降参するがよかー!」 冥月 「アルファレイドカタストロファー」 ギガァッ!!ガォオオオオオンッ!!! 冥月が刀から放つ光が彰利の光と衝突して、大きな音を立てると……消えた。 彰利 「………」 冥月 「……もう、終わりですか?」 彰利 「いやぁああああ!アタイの必殺技がパクられたぁああっ!!     ちょ、著作の侵害ぞ!金よこせ!新しい服買えるくらいの!」 冥月 「残念ですがお金など持ち合わせておりません」 彰利 「ううっ……アルファレイドは俺が……     俺がゼノに殺され続けながら……ようやく開発した奥義だったのに……!     う───うゎあああああんちくしょおおおっ!覚えてろよおたんちーん!     山篭りして強くなってきてやるぅうううっ!!     くっ……ふっ……!うわぁああああああああああああ!!!!!!」 彰利が本気で泣きながら走り去っていった。 よっぽど自信があったんだろうな。 今はそっとしておいてやろう……。 悠介 「で、若葉」 若葉 「はっ、はいっ!」 悠介 「簡潔に話すぞ?この娘、未来から来た俺の子孫なんだ。     帰る頃まで家で面倒見させてくれ」 若葉 「…………ッ!!」 こくこくこくっ! もの凄いスピードで頷かれた。 若葉 「あ、でも……」 悠介 「ん?」 若葉 「……おにいさまの子孫、ということは……いったい誰の誰の誰の娘なんでしょう」 悠介 「………」 冥月 「それはもごっ!?」 悠介 「言うな……嫌な予感がする」 冥月 「…………」 冥月は顔を赤くしながらこくこくと頷いた。 ……そう。 考えないようにしたい。 なんでって、その質問の先に確かな地獄を見た気がしたから。 ああ、結局……俺の平穏はどこにあるんだろうか。 そんなことを考えながら、一時的(であると思いたい)ではあるが、家族が増えたのだった。 Next Menu back