───馬鹿者降臨。三馬鹿+変態オカマホモコン───
【ケース17:閏璃凍弥/月詠街へ行こう!】 グァトゥァーングォトゥォーン…… 電車が揺れる。 滑り込みセーフで電車に乗り込んだ。 ふう、エキサイティン。 鷹志 「あー、冬にはもってこいの運動だ。ぬうううぉおおう、暖かい……」 鷹志が気を溜めている。 柿崎 「しっかしいい天気だよな。こんな陽光なんてこの季節には珍しいよな」 鷹志 「だなぁ。きっとこの日のために、     日頃の行いを見ている超人閻魔さまがこの陽光を授けてくれたのだ。     ムゥウウゥウウウンォオオオオオオオオオゥウッ!!」 鷹志が気を溜めている。 鷹志 「憶えておくがいいっ……!     わたしの身体の中には───神の力が宿っていることをォオオオオオゥッ!!」 柿崎 「なにぃ!?ぎゃああああ!!」 鷹志が力を解放した。 そして柿崎に三沢ばりのエルボーを極めた。 鷹志 「……暇だ」 柿崎 「お前は暇だったら友人に肘入れるんかい……」 鷹志 「偶然だ。まさかお前がこんなところに居るとは思わなかった」 柿崎 「お前なぁ……」 凍弥 「なぁ友よ」 柿崎 「なんだ友よ。むしろ悪友」 凍弥 「皮肉なら誉め言葉として受け取っておくが。     えーとさ、辿り着いたらどこ行く?」 柿崎 「俺は向こう側の世界は知らんぞ」 鷹志 「俺は知ってるぞ?     凍弥と世界味めぐりをしている時にな、     味をそっちのけで見つけた階段を駆け登って吐いた」 凍弥 「あれは利いたよなぁ。休む間もなく駆け上った結果がアレだ」 鷹志 「俺が勝ったっていうのも、吐くタイミングが遅かっただけだし」 凍弥 「まるでビッグバトルオーガストだ」 柿崎 「解る人の方が少なそうな名前を言うなよ」 凍弥 「友よ、お前が知っていれば十分だ」 柿崎 「よ、よせよおい……照れるじゃないか」 凍弥 「はっはっは、お前が照れるって顔か」 柿崎 「そうだよなー、はははは……ってコラァッ!」 鷹志 「あー!落ちつけ落ちつけ!車内で喧嘩はいかんぞ!」 柿崎 「だってさ鷹志!最近凍弥ってば俺にばっかり罵倒しやがってからに!」 鷹志 「……なんか最近のお前ってお笑い担当って雰囲気出してるし」 柿崎 「泣くぞちくしょう……」 柿崎が悲しそうでいて恨めしそうな顔で俺を見た。 そんなことを数回繰り返して、我らはやがて駅へと辿り着いた。 凍弥 「やってぇんきました月詠街!」 鷹志 「ああ、長い旅だったぜ友よ!」 柿崎 「グッジョブ!長かったぜ友よ!」 凍弥 「まったくだ。柿崎がホームへ飛び降りた時はどうなることかと思ったが」 柿崎 「あたかも現実であったかのように作り話を語るなよ!」 凍弥 「心臓が飛び出るかと思ったぞ。……柿崎の」 柿崎 「勝手に飛び出してろ!俺はもう知ら───俺の心臓!?」 鷹志 「凍弥、柿崎で遊ぶのもそのへんにして、適当に行動起こそう」 凍弥 「だな」 柿崎 「俺の存在ってオモチャかよ……」 凍弥 「過言ではない」 柿崎 「過言じゃあっ!」 怒り狂う柿崎をからかいながら駅から離れた。 さて、何処に行こうか。 凍弥 「何処行く?」 鷹志 「唐突だな。まあ当初の言葉通りに晦神社で筋肉番付でいいんじゃないか?」 凍弥 「今度こそはお前に勝ってやる!」 鷹志 「ふははは!返り討ちだ!精々足掻くがいい!」 柿崎 「僭越ながら、俺も参戦しよう」 凍弥 「ぬ……」 鷹志 「出たな体力馬鹿」 柿崎 「馬鹿をつけるなよ」 柿崎がチッと舌打ちをする。 凍弥 「出たな体力」 柿崎 「どんな生き物だよ俺!!」 凍弥 「お前が『馬鹿をつけるなよ』って言ったんじゃないか」 柿崎 「……お前ってどうしてそう細かいかね」 鷹志 「細かいところまで屁理屈を語り倒すのが凍弥だろ、今さらだって。     ん〜じゃあ晦神社まで直行だな」 鷹志がそう言って一歩踏み出す。 ───その時だった。 声  「───はっはっはっはぁーっ!!天知る地知るあなた知るーっ!!     貴様ら屠れと神……じゃなくて超人閻魔が呼ぶ!」 絶叫にも似た謎の声。 鷹志 「なんだ?」 突然聞こえてきた声に鷹志が空を見上げる。 駅から出たところで見えたのはステーションの入り口の上にある人影。 ……叫んだのあいつか? 声  「とーぅ!」 バァッ! 凍弥 「うわっ!跳んだぁーっ!」 鷹志 「高さ考えろよおい!死ぬぞおい!」 ゴーォオオオシュゥウウウンと空を飛ぶかのように降りてくる人影。 やがてそいつはドグシャア! 人影 「ギャア!」 ……地面に激突した。 柿崎 「うわぁ死んだぁーっ!!」 鷹志 「けっ、警察!あ、いやっ、救急車か!?」 凍弥 「誰でもいいから呼べ!電話!電話を!」 柿崎 「お、おう!」 柿崎が公衆電話へ駆け込む。 俺と鷹志もそれに習う。 柿崎 「えーとえーと」 かたかたかた……! ちゃーんちゃっかちゃーんちゃかちゃんちゃんちゃーんちゃちゃちゃーん♪ 音声 『ZTTがお贈りするテレフォン民話、キッチョム話』 柿崎 「ややっ!?いつから病院はキッチョムに!?」 ボゴォッ! 柿崎 「ぐほぉっ!!」 柿崎の脇腹に俺の拳が真っ赤に燃えた。 凍弥 「アホかてめぇ!こんな時にまでキッチョムに走るとは!このパーシモンが!」 鷹志 「あーもう貸せ!俺がかける!」 声  「いや俺がやろう」 鷹志 「なにぃ誰だ!今忙し───うわぁああああああっ!!」 凍弥 「なんだどした───っておわああああっ!!」 後ろを振り向くとさっきの人影の主。 バ、バケモノ!? 男  「ヨゥメェーン、貴様らに言っておくことがある」 鷹志 「そ、そんなことより電話!」 男  「そんなこととはなんだこの野郎!     てめぇアレか!?アタイの話が聞けないってのか!?おぉーっ!?」 柿崎 「……なんか凄い勢いでイチャモンつけてきてるぞ。お前同類だろ?行け」 凍弥 「いや……なんか俺以上の匂いがするぞ。これは変態の匂いだ」 柿崎 「どういう嗅覚だよ」 男  「フフフ、まあいいだろう。うぬら、この街は初めてじゃな?     今なら俺様が良心価格でガイドしてやろう」 柿崎 「結構です」 男  「ゲェ!?即答!?それならば言いたいことがある!聞け!」 鷹志 「……おい、どうする?」 柿崎 「聞いてさっさと逃げよう」 凍弥 「意義無し」 男  「汝ら、晦神社に行くつもりか?そうだな?     先ほど貴様らの言葉を偶然盗み聞きさせてもらった。     否定はさせんぞ。むしろ愛してやる」 鷹志 「うわ、おいどうする?勝手に話し始めたぞ?やばいな、凍弥以上の変態が居る」 凍弥 「そういうこと本人の目の前で言うか?」 男  「せつなくぅて〜目が醒めたァ〜ハァ〜ン」 柿崎 「歌ってるぞおい!しかも音痴だ!」 男  「バカとはなんだコノヤロウ!」 柿崎 「言ってねぇ!」 鷹志 「しかしどうするんだよ……!あんなヤツの話を聞いてていいのか……?     ってうわー!なんか次はポージングしてるー!」 男  「むーん、フンハァッ!フンハァッ!」 ビシビシバシビシィッ! 柿崎 「ヒィイ!構え取る度に鞭を弾いたみたいな音出してるーっ!」 鷹志 「お、俺達が悪かった!だから話せ!さっさと話してくれ!」 男  「む?せっかく男気溢るる構えを披露していたのに。     ……それで貴様ら、晦神社になんの用だ。     まさか……貴様アタイのダーリンに用が!?許せねぇ!」 凍弥 「……なんかダメそうだぞ」 鷹志 「……聞いても無駄だったな」 柿崎 「……もうこいつに用は無いな。逃げよう」 三人一斉に走り出す。 それぞれが散らばって逃げる中、彼は何故か這いつくばって四足歩行になった。 そのまま前進する姿に俺達は間違いなく恐怖を覚えた。 男  「オギョロギョギョーン!」 わしゃわしゃわしゃわしゃっ! 鷹志 「ひぃ!四足なのにすげぇ早ぇ!」 柿崎 「あ゙ーっ!気色悪ぃーっ!!」 凍弥 「と、とにかく走れぇぇええっ!!」 俺達は全力で逃げ出した。 来流美ほどじゃないにしろ、俺も勉強よりは足の方が自信がある。 踏みしめろ大地! 弾け跳べ身体! 振り向くな俺! 振り向いたらなんかとんでもない光景を目の当たりにする気がするっ! ああっ!でも気になる! 凍弥 「───……」 俺は走りながら、おそるおそる振りかえった。 その先には─── 柿崎 「ヒ、ヒィイイイイッ!!」 物凄いスピードで柿崎を追いかけてゆく男の姿が。 呆れて走り止まると、その行為とは逆にその景色から去ってゆく柿崎と男。 しばらくしてギャアアアアアア!!という柿崎の絶叫が聞こえてきたところで、 俺と鷹志は再び全力で逃走した。 ヤツが殺られたということは───次は俺達の番だ、よな!? 凍弥 「目一杯飛ばせぇええええええっ!!」 鷹志 「う、うおぉおおおおっ!!!」 半ば倒れるように走り逃げた。 その途中、なにか嫌な気配を感じた俺は後ろを向きギャアアア!! 凍弥 「来た!来た来た来た来た来た来たぁああっ!!!!」 鷹志 「言うなぁあっ!!怖くて後ろ向けねぇえっ!!」 相変わらず四足歩行で迫る男に、足が竦む。 な、なんだってこんなことに!? 俺達ってこんなことされるためにこの街に来たんだっけ!? ───否!断じて否! 凍弥 「逃げてばっかでいられるかぁっ!うらぁっ!」 男  「え?あ、ギャア!!」 ドゴォッ! 男  「ゲブボッ!」 ───ドシャア。 あ、死んだ。 鷹志 「………」 凍弥 「………」 弱ェ。 バオォオンッ!! 鷹志 「うおっ!?」 凍弥 「倒れた状態で跳んだぞ!?」 男  「憶えておくがいいっ……!     わたしの身体の中には───神の力が宿っていることをォオオオオオゥッ!!」 凍弥 「おお、鷹志が居る」 鷹志 「……一生のお願いだ、一緒にしないでくれ……」 男  「そうだそうだ!心外だぞこの耳毛が!」 凍弥 「耳毛!?」 鷹志 「恐ろしいほどに意味不明だけどキツイ罵り文句だな……」 凍弥 「き、貴様名を名乗れ!我が名は閏璃凍弥!貴様に文句を物申す!」 男  「だめだ」 凍弥 「むごっ!?」 鷹志 「おお、凍弥が居る」 凍弥 「一緒にするなっ!」 男  「そうだこのギャランドゥ」 鷹志 「ギャランドゥ!?」 男  「だがまあいいだろう、我が名を聞いて驚くがいい!そして愛して!     俺の名前はぁああっ!ゆぅーみぃーはぁーりぃー彰利ィーッ!!」 鷹志 「………」 凍弥 「………」 彰利 「オウ?どぎゃんしたとね」 凍弥 「…………?」 鷹志 「……、……」 アイコンタクトで話す。 まるっきり意味が解らない行動だが、言いたいことはきっと同じだと思う。 ……その名前のどこで驚けばいいのか。 凍弥 「あ、それじゃあ我らは用があるのでこれで」 彰利 「お待ちになってお侍さん」 凍弥 「誰がお侍だ」 彰利 「晦神社へ向かうんでしょう?それならアタイが知ってるわお侍さん。     道案内させてくださいまし。っていうかさせろ」 凍弥 「いえ結構です」 爽やかに語調を変える男を軽やかに流す。 が、効果はなかった。 彰利 「さあこっちだ付いてまいれ」 区切ることなく喋る彼は、せっかちなヤツなんだろうかとか思いながら、 俺と鷹志は顔を見合わせて大きな溜め息を吐いた。 ───……。 ……。 彰利 「るんるるんるンーフ〜ン♪るんるるんるウォーウォウォーゥ♪     おさかなくわえて街まで〜、出〜か〜けた〜ンが〜♪パ〜パラッパ〜♪     財布を〜忘れて〜……     な、なにぃサザエさんがノリスケに襲いかかって───ギャア恐喝!?     ……ゆっかっい〜な、サザ〜エさん♪」 サザエさん歌ってるよ……。 しかもアレンジしてるよ……。 柿崎 「あー、首痛ぇ」 凍弥 「生きててなによりだ柿崎……今ではお前も貴重な戦力だ……」 鷹志 「今までは違ったのか?」 彰利 「ところで」 鷹志 「うおっ!?」 ぎゃああ!なんか今、首が180度曲がらなかったか!? ……よし決定、こいつは人間じゃない。 夜叉だ。 馬鹿夜叉だ。 彰利 「右手に見えますのが───右手です♪」 柿崎 「当たり前じゃあ!右手は右手にしか見えないだろうが!」 彰利 「ギャア正論!よし次行こう」 凍弥 「………」 鷹志 (皮肉もなにも通じなさそうだな……) 凍弥 (俺も今そう思ってたところだ……) 彰利 「はい、左手をご覧ください。これが左手に見えて、実は右足なのです」 柿崎 「もういい、俺は殴るぞ」 鷹志 「なにぃ!?馬鹿やめろ!これ以上ヤツに手を出すな!」 柿崎 「止めてくれるな鷹志!武士の情けだ!くらえ柿崎パーンチ!」 ああっ!柿崎が荒れ狂うハートとビートを振りかざして馬鹿夜叉に襲いかかった! デシィッ! うお、直撃!? 彰利 「ブンッ……キミへの疑惑が確信へと変わった」 頬に柿崎の拳を受けたままの状態でこちらを見ながら、 ジョナサン・ジョースターの真似をする彼。 ……めげないヤツだな。 馬鹿とはここまでやって馬鹿なんだろう。 彰利 「んもう我慢の聞かない人は───48の殺人技のひとーつ!風林火山!!」 がしぃっ! 柿崎 「うおっ!?」 馬鹿夜叉が柿崎の首根っこに腕を回した。 彰利 「速きこと風の如くゥウウウウウウウッ!!」 そしてそのまま疾走。 柿崎 「ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………───」 ……やがて視界から消えた。 凍弥 「よし逃げよう」 鷹志 「意義無し」 俺と鷹志はそれはもう逃げ出した。 やっぱりあとで柿崎の断末魔の叫びが聞こえたが完全に無視した。 さらばグッジョブ、お前のことは忘れない……! ───……。 ……。 ───……で、目の前には気の遠くなるくらい長い石の階段。 かつてここを全力で駆け上り、膝が笑っても無視して登り、 呼吸困難に陥っても昇り、やがて吐いた。 ……うむ、嫌な思い出だ。 鷹志 「休んでから行くか……流石にもたん……」 凍弥 「同感……」 呼吸を整えようとして、まずは石段に座る。 立ってるだけでも疲れるわい……。 声  「───どいてください」 凍弥 「え?」 大きく息を吐こうとした途端、声をかけられた。 凍弥 「?」 顔をあげてみれば、女の子。 少しキツイ印象をどこかに持ったような女の子だった。 女の子「聞こえませんでしたか。どいてください」 凍弥 「へ?あ、ああこれは失礼」 俺と鷹志は一旦立ちあがると、女の子のための道をあけた。 女の子「………」 女の子は小さくお辞儀をすると石段に足をかける。 凍弥 「って……登るのか?」 女の子「それがなにか?」 凍弥 「いや、だって……」 鷹志 「ままま、いいじゃないか凍弥。そんなのは人の勝手だろ?」 凍弥 「それはそうだけどな……」 鷹志 「お前らしくもないな。あ、もしかして幼馴染以外の女と話すのは苦手とか」 凍弥 「あー、それはあるかもな。ってそうじゃなくて」 話している内にどんどん上ってゆく女の子。 凍弥 「……ふむ」 鷹志 「どした?」 凍弥 「彼女、どこらへんで休むかな」 鷹志 「耐久力番付に強制参加させる気か?やっぱりお前って甘くないのな」 凍弥 「俺は近所でも選りすぐりの甘党だと有名だぞ」 鷹志 「お前の味覚なんぞどうでもいい。で、行くのか?」 凍弥 「俺がお前にそれを訊いてた気がするんだけどな。じゃ、行くか」 鷹志 「おう」 体力も完全に回復したわけじゃないから普通に登るか。 トントントンと。 ……………… 凍弥 「…………ふ、ふふふ……鷹志……そろそろへばってきたんじゃないのか?」 鷹志 「馬鹿言え……お前がへばるまで弱音など吐くか……」 ……………… 凍弥 「はっ、はっ……」 鷹志 「……うーお……あの娘すげぇ……平然と登ってる……」 ………… 凍弥 「………………」 鷹志 「………………」 …… 凍弥 「……見えなくなったな、彼女……」 鷹志 「そだな……」 ………… 凍弥 「頼む鷹志……もうへばってくれ……」 鷹志 「断る……」 ………… 凍弥 「げほっ……うう……なんでこんなに長いんだよこの階段……」 鷹志 「カリン塔に登る悟空の気持ち……今なら解る……」 ─── 凍弥 「うう……もうだめだ……膝が大笑いしてる……」 鷹志 「ば、ばか……倒れたらあの世行きだぞ……」 凍弥 「それは後ろに倒れたらだろ……」 鷹志 「フッ……どちらにしろお前より先に倒れる気はないがな……」 凍弥 「同感だ……」 だからといって、見上げても先が見えるわけじゃない。 いや、見えてるんだけど先が長すぎ。 長いが……よし、ここは一か八かだ。 凍弥 「ラストスパート!」 鷹志 「なにぃ馬鹿な!」 鷹志を気にせずに駆け上る。 こうなったら先にあそこに着いてしまえばいいんだ。 吐くもどうのこうのもあるか! 鷹志 「負けるかぁああああああっ!!」 なっ───馬鹿な!やつの身体のどこにあんな力が!? 彰利 「それは僕の頭を食べたからだよ」 凍弥 「へ!?───ウギャア出たーっ!!」 ど、どこから出てきたんだこいつ! 彰利 「ふわははは!俺様降臨、超降臨!     さあこの手に掴まれ!俺が地獄浄土へ連れてってやる!」 凍弥 「そこまで言われて誰が掴まるか!ていうか柿崎は!?」 彰利 「………」 凍弥 「どうしてそこで目ぇ逸らす!」 鷹志 「真剣勝負に余所見は愚考ぞ!     さらば凍弥!この勝負、やはり俺が一歩先んじる!」 凍弥 「なにぃ!?しまった!」 油断した! チィイ!鷹志が二段抜かしくらいの勢いで石段を駆け登っていきおるわ! 凍弥 「させるかぁああああっ!!」 俺も負けじと加速する。 前回の雪辱、今晴らさずにいつ晴らす! 彰利 「メェ〜ン、無理はよくないぞ」 凍弥 「話し掛けるなっ!」 彰利 「マァ〜イロンリハ〜ツ」 凍弥 「歌うなっ!」 彰利 「つまるところこの公式はX=トゥエルブということで」 凍弥 「勉強するなっ!」 彰利 「どうしろっていうのさアータ!」 凍弥 「お、俺に構うなぁっ!寄るな来るな気が散るわ!」 彰利 「ある熱い夏の夜、ひとりの男女が廃屋に」 凍弥 「怪談もすんなぁああああああああああああっ!!!!!!」 ───……。 ……。 鷹志 「ふはー!ふはー!あー……疲れたー……」 凍弥 「くっそ……また負けた……!」 彰利 「だらしないのぅ。これしきのことで息切れなど」 凍弥 「ツッコミさせるようなことを散々耳の傍で語られたら誰でも疲れるわ!」 鷹志 「お前が言うなよ!」 凍弥 「なにぃ!?お前、俺はこの馬鹿夜叉ほどじゃないぞ!?     さっき実感したぞ本気で!冗談抜きで!」 彰利 「馬鹿夜叉!?ひでぇ!中傷された!キィイあな口惜しやぁーっ!」 凍弥 「なにぃ!?」 突如、馬鹿夜叉が襲いかかってきた。 が、ボグシャアという炸裂音と共に彼がキリモミで飛んでいった。 男  「昼間っからトチ狂ってるんじゃないよ馬鹿」 彰利 「はっはっは、ダーリンたら拳の威力に磨きがかかったんでないのかい?」 男  「ダーリンって言うなっていつも言ってるだろ」 彰利 「ええ!?じゃあハニー!?いやぁんそれはそれで新鮮でぶっほぉおっ!!」 ギュルギュルギュルギュルドシャアアアアッ!! 彰利 「がぼっがぼっ……」 鷹志 「うわっ、強烈……」 凍弥 「……殴られた人が宙に浮くのなんて、     柿崎が姉さんに殴られた時以来、見てないぞ……?」 鷹志 「……あれは強烈だったな」 凍弥 「だったなぁ……」 しかし今回。 ていうか今のやつは身体が浮いただけじゃなくて、数回の回転を伴うほどの威力だ。 あんなもんくらったらアゴが破壊することは否応でも覚悟させられるな……。 現に、彼は口から血を吐きながらスモーキーの真似をしてるし。 男  「……何か用なのか?」 男が訊ねてくる。 ずいぶんとぶっきらぼうな喋り方だった。 興味はないが立場上訊いているって、そんな感じだ。 凍弥 「その前にあんたは?」 彰利 「控えぃ!ここにおわすお方をどなたと心得る!」 凍弥 「それを今訊いてるんだが」 彰利 「うん……そうだよね……」 馬鹿夜叉は悲しそうな顔をすると、落ち込みだした。……と思ったら再び語り出した。 めげないやつだ。 彰利 「このお方こそ、この先の石段の先にある晦神社の神主!晦悠介さまぞ!!」 ───え? 鷹志 「か、神主ぃっ!?」 凍弥 「だっ……どう見たって同い年くらいだよな!?」 ボゴォッ! 彰利 「ゲボブ!」 悠介 「誰が神主だ。俺はただの居候だ」 彰利 「うお、まだ遠慮気分全開ですかダーリンたらもう……。     若葉ちゃん達も認めてるんだから吹っ切れちまやぁええのに」 悠介 「だーまーれ。あいつらは確かに妹として見てるけど神主がどうのは別問題だ。     大体どうしてお前がそのことに首を突っ込むんだ」 彰利 「ハッ!愚問!それはアタイがダーリンのラ・マンだからYO!激しくYO!」 凍弥 「………」 鷹志 「………」 悠介 「ばっ……人前で誤解しか招かないようなこと謳ってんじゃねぇぇええっ!!」 ばがぁああっ!! 彰利 「チャップリーン!!」 弧を描くように振られた拳が馬鹿夜叉の顎を的確に捉え、再び空の旅へと飛び立たせた。 彰利 「フライング愛のボディプレェエス!!」 しかし彼はめげなかった。 空に飛ばされたのを利用して、今度は奇襲をかけボゴォオッ!! 彰利 「ギャアア!!」 ドグシャッ!ゴシャッ!ドカッ!グシャッ!ゴロゴロゴロゴロズシャーアーッ!! …………落ちてきたところをチョップブローで吹っ飛ばされた。 あれ、死ぬぞ……? 鷹志 「ちょっ……今のはマズイんじゃないか……?」 悠介 「あいつはアレくらいで動じるほど弱い馬鹿じゃない。     神社に参拝しにきてくれたんなら上に登ってくれ」 彰利 「そしてお土産にこの超小型腕時計式サイクロトロンをどうぞ」 悠介 「お前も……当然のように横に立ってるなよ……。     今吹っ飛んでいったのは誰だよ……」 彰利 「俺の双子の『弦月 章ミ禾リ』だ」 悠介 「余計に誰だ」 彰利 「それよりダーリン、サイクロトロンはいかが?」 悠介 「いらん」 彰利 「じゃあこのシンクロトロンを」 悠介 「もっといらん」 ふたりは知り合いらしく、ギャアギャアと話し合っている。 って言っても、ギャアギャア言っているのは馬鹿夜叉の方なんだが。 鷹志 「どうする……?」 凍弥 「ここまで来たんだ、頂上を目指そう」 鷹志 「だな」 俺は鷹志と頷き合うと、再び石段に足を置いた。 ……うへー、また長いこと。 その気になれば空にだって届くんじゃないか?ここって……。 鷹志 「こうなりゃヤケだ、体力の温存なんてもういい!レッツハバナーウ!」 ズドドドドドド! 凍弥 「なに!?しまった!先を越された!」 俺もやはり負けじと追う。 そんな中で、ふと懐かしい声が聞こえた気がした。 柿崎 「へへっ……待たせたな友よ」 凍弥 「お、お前は……グッジョブ!」 柿崎 「柿崎だっ!」 まさか死んだとばっかり思っていた彼が生きてこうして現れるなんて……! 凍弥 「い、生きてたんだな友よ……!     てっきり豆腐の角に頭をぶつけて死んだものかと」 柿崎 「勝手に殺すな!しかもなんだよその屈辱的な死に方!」 凍弥 「しかし貴様、どうやってここまで!?」 柿崎 「あの男にさっきの中腹地点まで連れ去られてたみたいなんだ。     気づいたらお前らが石段に足をついてた」 凍弥 「なにぃ!?カリン塔を登る悟空よりも卑怯なことしやがって!     降りてやり直せ!卑怯だぞパーシモン!」 柿崎 「パーシモン言うな!」 凍弥 「グッジョブ!?」 柿崎 「グッジョブも違う!」 鷹志 「うおおっ!ゴォオルッ!」 凍弥 「なにぃ!?」 柿崎 「おお!グッジョブ友よ!」 凍弥 「くそぅなんてことだ。グッジョブの所為で負けた」 柿崎 「ぐっ……!い、いまのは弾みで」 凍弥 「黙れグッジョブ!」 柿崎 「柿崎だ!」 凍弥 「パーシモン!?」 柿崎 「柿崎だっ!」 凍弥 「柿!」 柿崎 「柿崎だぁっ!」 タンッ。 凍弥 「っと」 柿崎をからかっている内に頂上。 境内として広がるその場所は、思ったよりも広かった。 鷹志 「おー、心なし、空が近い気がする」 でもこんなんじゃまだまだ遠いか、と言って、鷹志が肩で息をする。 確かにな。 でもここまで登ればもう十分だって気もしてくるわい。 毎日上り下りしてればマッスルも夢じゃないぞこれは……。 柿崎 「お、あんなとこに販売店がある。破魔矢とかお守りだな。どうする?買うか?」 鷹志 「記念だ、俺は買う」 凍弥 「俺もだ」 だがすぐには向かわず、呼吸を整える。 柿崎 「行かないのか?」 凍弥 「やかましい、俺はお前と違ってデリケートなんじゃい……」 鷹志 「流石だな柿崎……よっ、鈴問高校の体力馬鹿」 柿崎 「嬉しくない異名はやめてくれ」 鷹志 「あー……だめだ、ちと座る」 ざしゃっ。 鷹志が尻餅をつくようにして段差に座る。 凍弥 「左に同じ……」 ざしゃっ。 俺もそれに習う。 柿崎 「なんだよ、だらしがないなぁ」 凍弥 「ズルしたお前に言われたくないな……」 鷹志 「同感だ……」 柿崎 「俺がやったわけじゃなくてあの男が───って!     お前らだって人のこと見捨ててさっさと逃げただろうが!」 凍弥 「ごらん、鷹志……オリオン座が輝いている……」 鷹志 「まあホント……」 柿崎 「無視すんなぁっ!」 鷹志 「まあそう熱くなるなって。見捨てたことは悪かったよ。     それよりもホレ、あれってどうやら勝負事のお守りらしいぞ。     確か今月末にテストあっただろ?迷信とはいえ、たまにはいいんじゃないか?」 凍弥 「む……そりゃ悪いとは思わんが」 柿崎 「ん、じゃあ俺先に買ってくるよ。回復まで時間かかるだろ?」 凍弥 「あと10秒だ。あと10秒で俺の中に反撃の準備が整う」 鷹志 「見え透いたハッタリは虚しいだけだぞ凍弥〜……」 凍弥 「だな……1分くらいの猶予をくれ……膝が爆笑してる」 鷹志 「そういう俺も爆笑中だ」 無茶させすぎたな。 あー、なんと親思いな筋肉よ。 とか思っている内に柿崎が売店へ。 俺と鷹志はそんな彼の様子を、段差に座って首を曲げながら見送っていた。 売店の中……まあつまるところの売り子の人は建物に隠れて見えないんだが。 ……お? なんか柿崎が驚いてる。 凍弥 「なにやってるんだあやつは」 鷹志 「なんか驚いてるみたいだけど」 凍弥 「あ、戻ってきた」 鷹志 「あ、滑った」 凍弥 「おお見事に転んだ」 鷹志 「キン肉マンだ」 なにやってんだかホントに。 それでも戻ってきた柿崎。 そんな彼の開口一番はこれだった。 柿崎 「……巫女さんが居た」 …………。 柿崎 「神社なんて来るの初めてだったけど……はー、神社ってこういう場所なんだ」 凍弥 「前に来たときって居たか?巫女さんなんて」 鷹志 「いや……売店はあったけどずっと閉まってたな。     それとも俺達が来たタイミングが悪かったのか」 凍弥 「んー……まあだからって何がどうってわけでもないが」 鷹志 「だな。よし、俺も買いにいくか」 凍弥 「そだな」 柿崎 「あー、俺も付き合うよ。結構キレイな人なんだ」 凍弥 「……なんの話をしてるんだおのれは」 柿崎の瞳がらんらんと輝く中、俺と鷹志は無視して売店へと歩いた。 そして辿り着いてみれば、確かにキレイな人が巫女装束を着て売り子をしていた。 女の子「ようこそ。なにを入り用でしょうか」 鷹志 「勝負事に効くお守りってあるんですか?」 女の子「はい、これですね」 鷹志の質問に対し、女の子が手前にあるお守りを手に取って見せる。 女の子「でも、他力本願はあまりオススメできませんよ?」 鷹志 「いーのいーの、ここまで登ってこれた記念みたいなものですし」 女の子「そうですか。こちらをお買い求めですか?」 鷹志 「はい」 女の子「はい、200円になります」 鷹志 「200ね……はいっと」 女の子「はい、確かに。ありがとうございました」 お守りを買った鷹志が一歩下がる。 俺に購入を促してるだけだが。 凍弥 「俺もそのお守り3つ」 鷹志 「3つ?多ければいいってものじゃないと思うぞ」 凍弥 「まあ、面倒だけど来流美と由未絵の分もな。     由未絵は必要ないかもしれないけど、ここ一番って時に緊張に弱いからな」 鷹志 「あ、そっか、霧波川と支左見谷か。お前ってこういうところで律儀だな」 女の子「───!」 がたっ。 凍弥 「ん?」 女の子「………」 凍弥 「あの?お守り……」 女の子「………」 売り子さんは困惑顔で何か俺の顔を見ている。 ……何かついてるのか? 凍弥 「柿崎、鏡」 柿崎 「持ってるわけないだろ」 凍弥 「根性で出せ」 柿崎 「出せるかっ!」 鷹志 「おいおい……売店の前で騒ぐなよ……ねぇ?」 女の子「あ、いえ……あの……その女の子、あなたの恋人ですか?」 凍弥 「オウ?どっち?」 女の子「えと……支左見谷って人です」 凍弥 「幼馴染ってだけだが」 柿崎 「キングオヴ愚鈍」 鷹志 「鈍感オヴザ鈍感」 凍弥 「なんか言ったか?」 柿崎 「なんでもない」 鷹志 「気にするな」 女の子「………」 凍弥 「参考までに。どうしてそんなこと訊くんだ?」 女の子「……なんでも……ないよ、うん。     それじゃあお守り3つと……     あ、実はお守り3つでひとつお守りがオマケされるんです。これをどうぞ」 3つのお守りの他に、もひとつオマケをもらった。 色とか模様が違ったから別の種類のお守りなんだろう。 女の子「その支左見谷さんに渡してあげたらどうですか?」 凍弥 「……まあ、いいけど」 3つ分の金を払ってその場を離れる。 が、何故か柿崎と鷹志が売り子さんに呼ばれ、何かを語り出した。 特に興味もなかったから、登ってきた石段に腰掛けてふたりを待った。 ……少し掛かって、ようやくふたりが戻ってくる。 鷹志 「……偶然ってあるのな」 柿崎 「凍弥、帰るとしようか、今すぐ」 凍弥 「え?ど、どうしたんだよふたりとも」 鷹志 「どーもせん!どーもせんから降りるぞ友よ!」 柿崎 「グッジョブ!」 凍弥 「この状況でグッジョブは関係ないだぉおゎあっ!押すな馬鹿!     落ちたらシャレにならんぞ!」 ───よく解らない内に、ふたりは凄まじいハイテンションを見せて走り出した。 その理由を訊いても誤魔化し、その真相を知ることは出来なかった。 ……さて、脱兎の如き勢いで石段を降りていって、 尚も走ってとっとと月詠街から脱出した俺達だったが。 ……翌日、凄まじいほどの筋肉痛に苦しむこととなる。 あー、ホントに無茶はするもんじゃない。 理不尽に鷹志と柿崎を逆恨みしつつ、 俺は苦痛を身に染みて感じながら生活を続けるハメになった。 Next Menu back