───腹黒幼馴染/八百万(やおよろず)の誤解たち───
街の路地を歩く。 昼の町並みのなんと平和なことよ。 八百屋「よお、柾樹くん!今日も暑いねぇっ!」 夏ですから。 八百屋「ん?おや?……なにィッ!?」 突如、八百屋のオヤジが絶叫した。 八百屋「まままさか……!?柾樹くんに彼女が!?」 柾樹 「………」 ステキな誤解だ。 八百屋「いやいや、おめでとう!あ、これお祝いね?代金いらんから」 ドスッ!と野菜とスイカが渡される。 柾樹 「ぬおっ!?い、いや!待ってくれ!こいつは……!!」 八百屋「大事にしてやれよォッ!?」 バシィッ!! 柾樹 「いてッ!!」 背中を叩かれた。 夕  「?」 当の夕はキョトンとしている。 柾樹 「待ってくれって!こいつは……」 肉屋 「なにぃ!?ホントだ!女連れて歩いてる!!」 柾樹 「いや、だから……」 肉屋 「はぐらかそうとするなんて男らしくねぇぞ!ほらっ、持ってけ柾樹!!」 ドスッ!!と肉と唐揚げ等が乗せられる。 柾樹 「ぐわッ!?」 酒屋 「若いってなァいいねぇ!よし!俺からも選別だ!持ってきな!!」 ズシィッ!!と『大吟醸(だいぎんじょう) 紬薙羅(つむぎなぎら)』が渡される。 柾樹 「おお!ツムギナギラ!!」 酒屋 「来流美のアネさんが好きだったろ?」 柾樹 「ええ確かに……って重いっス!!」 酒屋 「気にすんな気にすんなァッ!!他ならぬ姐さんの息子さんへの祝いだ!!     景気よく行こうやァッ!!ガァーハハハハハハハハハ!!!!」 相変わらず豪快な笑いっぷりだ。 柾樹 「くはッ……!!重いぞ……」 夕  「大変だね」 柾樹 「まったくだよ……」 魚屋 「あ!来た来た!!お〜!!本当に彼女連れだよ!!」 柾樹 「………」 何故こうも情報が早いんだ? 魚屋 「いや〜、八百屋の言う通りだった!」 なるほど。 魚屋 「ほれ!祝い品だ!」 ヌオッと、マグロが顔を出す。 柾樹 「結構です」 魚屋 「さすがにデカすぎるか。なら大トロだ」 柾樹 「いいですってば!」 俺の言葉を無視して、持たされるクーラーボックス。 しかも重い。 なんか、さっきから重い物ばかり貰っている気がする。 声  「あらあら、大変ね」 声が聴こえた。 柾樹 「!!」 とっさに身構えてしまう。 柾樹 「……あ……真由美さん」 真由美「ずいぶんと沢山、貰いましたね」 のんびりと微笑むこの人は、悠季美の母親の真由美さん。 真由美「折角だから、わたしからも何か……」 ポン、と謎の物体(包み)が乗せられる。 柾樹 「……なんですか?これ」 真由美「鷹志の……主人の好きな物ですよ」 柾樹 「鷹志さんの?」 ……予想はついた。 柾樹 「ありがとうございます」 真由美「それじゃあね、柾樹くん」 静かに手を振りながら歩いてゆく真由美さん。 柾樹 「………」 夕  「………」 もしかして、このままコロネを買いに行くのでしょうか? 柾樹 「なぁ、夕……」 夕  「うん、戻ろう」 どうやら察してくれたらしい。 来た道を通らず、回り道して帰る。 服屋 「あんらっ!柾樹ちゃんが彼女連れてるワッ!」 しかし服屋に見つかった。 柾樹 「アハハハハハハハハ……さよならぁっ!!」 柾樹は逃げ出した。 夕  「わきゃぁあっ!!」 しかし夕が捕まった。 服屋 「ンマーッ!!カ〜ワイイわぁ〜ん!!」 夕が頬擦りされている。 夕  「ゎやぁあああああっ!!!髭が!柾樹くん!この人髭がぁあああっ!!」 服屋はオカマで有名だ。 服屋 「うぅ〜ん、いいお肌してるわ〜!!     そうだわっ!お祝い品として、いい服あげるわ!」 ジョリジョリジョリ。 夕  「きゃぅううううう!!!髭がっ!髭が痛いぃいいいいいいっ!!     助けて柾樹くぅううううん!!!!」 柾樹 「ぬおお……太陽が眩しい」 夕  「爽やかに無視しないでぇええええっ!!!!」 覚悟を決めるしかないらしい。 仕方無く、俺は服屋へと歩を進めた。 服屋 「うぅ〜ん♪久しぶりネ、柾樹ッちゃ〜ん!!」 服屋が唇を寄せてくる。 柾樹 「ギャァアアアアアアアアアアァァァッ!!!!」 ジョリジョリ。 夕  「キャァアアアアアアアアアアァァァッ!!!!」 服屋 「ん〜もう、こんなに喜んじゃって!カ〜ワイイんだからぁ〜ん!!」 助けて神様ぁあああああああああっ!!!! 服屋 「でもごめんなさいネ?今日はこれからお得意様が来るのヨ。     だ・か・ら、似合いそうな服だけあげるワ♪」 だぁあああああっ!!!! ウィンクしないでくれぇええええええっ!!! 服屋 「ハイ♪代金はいらないワ!」 ドサッ!と何着もの服が夕に渡される。 夕  「わわっ……!?」 ちなみに、確実に俺の背を軽く越す程の量だ。 夕  「重いよ……」 夕が悲しそうな声を出す。 柾樹 「前、見えるか?」 夕  「う、うん。丁度いい所に厚紙が挟んであるよ」 見ると、折り曲げられた厚紙が空間を作っている。 柾樹 「よ、よし。帰るか」 夕  「う、うん……」 ヨロヨロと道を歩く。 ここまで家が遠いなんて思ったのは初めてだ。 暫く歩くと、家が見えてくる。 ここまで家を見て喜んだのは初めてだ。 家に入ると同時に、俺と夕は大きな溜め息を吐いた。 柾樹 「はぁ……疲れた」 悠季美「早かったですね」 悠季美が玄関で俺と夕を迎える。 柾樹 「いや、途中で戻ってきた」 悠季美「何故?」 柾樹 「これを見ろ」 俺は玄関前に置いておいた物を見せた。 悠季美「わ……」 悠季美が絶句した。 悠季美「盗品ですか?」 柾樹 「盗むかっ!!」 悠季美「冗談です」 柾樹 「……」 ちなみに夕は廊下でグッタリしている。 悠季美「五千円で、こんなに買えるものですか?」 柾樹 「無理だ」 悠季美「やっぱり盗品」 柾樹 「貰い物だっ!!」 悠季美「そうなんですか……あ、これは……」 悠季美が包みを手に取る。 柾樹 「ああ、それは真由美さんに貰った物だ」 悠季美が包みを解くと、中から予想通りの物が現れる。 柾樹 「やっぱりか……」 悠季美「なんて見事な……」 ちなみに小さなトーテムポールだ。 柾樹 「見事なのか?」 悠季美「マニアに売れば五万は軽いです」 柾樹 「マジかっ!?」 素敵に驚いた。 というか、トーテムマニアなんて居るのか? 悠季美「!?これはっ!!」 悠季美が紬薙羅を見て叫んだ。 悠季美「幻の名酒、紬薙羅!?」 柾樹 「名酒?だってそれ、貰い物だぞ?」 悠季美「これはもう極一部の、     それも代々に受け継いだ酒蔵家でしか製造が禁止された逸品ですよ!?」 熱く語る悠季美。 悠季美「酒マニアなら喉から手が出る程に求める物!     その値段は破格で知られ、本当に一部の人しか飲むことは許されない!」 柾樹 「………」 じゃあ、これを飲む母さんは何々だ? 言うと悠季美が荒れ狂いそうなので、やめておく。 こんな物、貰って良かったのだろうか? 考えると怖かった。 柾樹 「よし、夕!行くぞ!」 夕  「う、うん……任せて〜……」 言葉とは裏腹に、物事を任せられる様子は皆無。 柾樹 「さあ、コロネを目指して出陣!!」 俺と夕は再び輝く路地へと歩を進めた。 ───8分後。 柾樹 「た、ただいま……」 夕  「ふぇえ……重いぃ〜……」 再び帰宅。 また見つかって、色々と持たされた。 柾樹 「八百屋のオヤジめ……」 何故か色々な人に捕まり、コロネどころではなかった。 それもこれも、八百屋のオヤジが言い触らしたからだ。 おかげで家の中が骨董品の倉庫になってしまった。 部屋の隅では悠季美が放心状態になっている。 ある所にはあるものだな、骨董品。 夕  「うぅ〜、コロネ〜……」 夕がコロネを求めていた。 柾樹 「夕」 夕  「え……?なに?柾樹くん……」 柾樹 「コロネは夜、買いに行こう」 夕  「ヤ」 柾樹 「一言で、しかも即答で打ち切るな!!」 夕  「今買ってくれないなら許してあげない」 柾樹 「……夕。脅迫って知ってるか?」 夕  「そんなんじゃないもん」 柾樹 「解ったよ、行こう。確か、もう1つ道があった筈だ」 夕  「うんっ!」 俺と夕は三度目の出陣を行うこととなった。 同じ景色を歩く。 同じ目的のために道をゆく。 しかし、同じなのはここまでだ。 柾樹 「夕、こっちだ」 曲がり角を指差しながら夕に言う。 夕  「ふぇ?こっち?」 柾樹 「ちょっと遠いけど、こっちには店は無いから」 夕  「じゃあもう重い物持たされないでいいんだね?」 柾樹 「そういうこと」 店並びのある路地に比べ、ひっそりとした道をゆく。 柾樹 「あの信号を渡ったら、もう少しだ」 暫く歩いた先に見えた信号を指さす。 そして再び歩き出した。 しかし。 柾樹 「おわっ!?」 夕に腕を掴まれた。 柾樹 「ど、どうした?」 振り向くと顔を伏せている夕の姿があった。 夕  「………」 柾樹 「……夕?」 俺は黙ったままの夕の顔を覗いてみた。 そして俺は驚いた。 柾樹 「ど、どうしたんだよ!真っ青だぞお前!!」 夕の顔は真っ青だった。 夕  「……だめ……だめ……!!」 俺の腕を引っ張りながら、ただそれだけを繰り返す夕。 柾樹 「駄目って……何が?」 夕  「行っちゃ駄目……!!」 柾樹 「……行くと何かあるのか?」 俺は夕の手を解き、歩いた。 夕  「ダメェッ!!!!」 しかし、夕がさっきより強い力で俺を止める。 柾樹 「夕……」 夕  「駄目……だめぇ……!!」 夕の脅え様は尋常じゃない。 柾樹 「ここで何かあったのか?」 夕  「解らない……解らないけど……」 夕は道ではなく、信号に脅えているように見えた。 柾樹 「お前、信号恐怖症か?」 ボカァッ!! 柾樹 「いてっ!?」 夕  「そんなのじゃないんだよ!!」 柾樹 「口で言えって言っただろ!?」 夕  「あ……ごめんなさい……」 柾樹 「暗くなるな。明るく行こう。とりあえずこの道が駄目となると……」 夕  「……雪……」 柾樹 「え?」 俺が考えていると、夕が呟いた。 夕  「雪が降ってるよ……」 柾樹 「雪なんて……降ってないぞ?」 空を見上げても、夏の青空が広がっている。 雪の一粒も無い。 夕  「女の人が倒れてる……。誰……?誰なの……?」 柾樹 「おい……夕?」 夕  「あれは……あ……れは……!!」 ドサッ!! 次の瞬間、夕が倒れた。 柾樹 「夕ッ!?」 俺は訳も解らず、夕を抱き起こした。 柾樹 「おいっ!?夕!夕っ!!」 抱き起こした夕は、力無くぐったりと気を失っていた。 ───……。 柾樹 「なんなんだ?コイツは」 叔父さんの家の自分の部屋。 そして俺のベッドで寝ている夕を見る。 柾樹 「毎度毎度わけの解らんこと言って、その後は必ず気絶だもんなぁ……」 考えてみれば、俺は夕のことを何も知らない。 もしかしたら何処かの研究所から逃げ出して、 俺と劇的な出会いとドラマを繰り広げるために……。 柾樹 「……って、んな訳あるか!!」 真面目に考えよう。 柾樹 「夕は森から来たって言ってたな」 つまりこいつは…… 柾樹 「……密林の帝王?」 って、これじゃあ前と変わらん!! 落ち着け俺! 知っていることは…… 1:森から来た。 2:コロネが好き。 3:仕草などが叔父さんの知人に似ているらしい。 4:あの道の信号が怖いらしい。 ……このくらいだろうか。 柾樹 「あ、あと料理は下手だったな」 こんなとこか。 柾樹 「………」 とは言うものの、よく解らん。 夕  「ん……」 俺が密林の帝王について考えていると、夕が目を覚ました。 柾樹 「よお。目、覚めたか?」 夕  「………」 柾樹 「夕?」 夕  「……うや?」 柾樹 「うや?じゃない!」 夕  「………?」 柾樹 「お前、寝ぼけてるだろう」 夕  「そんなことないよられるら〜……」 うむ、見事に寝ぼけとる。 丁度良い、色々聞いてみよう。 柾樹 「それなら聞くが、生年月日は?」 夕  「1月、18日……」 柾樹 「血液型は?」 夕  「O……」 柾樹 「好きな物は?」 夕  「ハムサンド〜……」 ……あれ? コロネじゃないのか? 柾樹 「嫌いな物は?」 夕  「冷えたコロッケパン……」 柾樹 「……」 どこかで聞いたことある特徴だな……。 柾樹 「好きな人は?」 夕  「えと……わぁっ!?」 柾樹 「うおっ!?」 突然、夕が叫んだ。 柾樹 「脅かすなバカッ!!」 スパァーン!! 俺はスリッパで夕を叩いた。 夕  「きゃぅうっ!?」 その反動で、ゆっくりと倒れる夕。 柾樹 「あらっ!?」 そんなに強く叩いたつもりは無いぞ!? 柾樹 「おい!?夕!」 俺は夕を抱き起こし、その顔をベシベシと…… 夕  「叩かないで……!!」 柾樹 「冗談だ」 夕  「うぅ〜……」 柾樹 「もう一度聞くぞ?生年月日は?」 夕  「え?6月22日だよ?」 スパァーン!! 夕  「きゃぅうっ!?」 柾樹 「さっきと違うじゃないか!!」 夕  「ふぇえ……さっきって何……?」 柾樹 「1日において、少し前のことだ!!」 夕  「知ってるよそんなこと」 柾樹 「なら訊くな!」 夕  「そ、そうじゃなくて……。そういえば、もう一度って何のこと?」 柾樹 「………」 叩き所が悪かったか? 柾樹 「ちょっと頭見せてみろ」 夕  「?」 柾樹 「いいから」 俺は夕を引き寄せ、コブでも無いかと頭を見た。 柾樹 「あ、枝毛」 ボカァッ!! 柾樹 「いてぇッ!?」 夕  「そんなこと調べるために人の頭見たの!?」 柾樹 「いや、俺はだな?コブでも出来てるのではと……」 夕  「叩いたのは柾樹くんだよ」 柾樹 「ぬおお、言われてみれば!!ありがとう夕!胸のつかえが取れた気分さ!!     さあ!モーニングケロッグを……」 夕  「もう夕方だよ……」 柾樹 「な、なにぃいっ!?     見たかったドラマが終わってるじゃないか!!どうしてくれる!!」 夕  「そんなこと言われても解らないよ……」 柾樹 「ハァ……」 思わず溜め息が出た。 柾樹 「で?コロネはどうする?」 夕  「……うー……」 柾樹 「お前、また倒れかねないからな」 夕  「這ってでも行くよ」 柾樹 「やめろボケ!」 夕  「ボケじゃないもん!」 柾樹 「い〜やボケだ!少し休んで治るものなら、治るまで休んでろ!!」 夕  「………」 柾樹 「いいな?」 夕  「えと……もしかして、心配してくれてるの?」 柾樹 「もしかしなくても心配している。あまり無茶はするな」 夕  「………」 柾樹 「言っておくが深い意味は無いぞ?     お前が倒れたりすると、睨まれるのは俺なんだ」 夕  「……うん、それもそうだね」 柾樹 「じゃ、ちょっと行って買ってくるよ」 夕  「うん」 夕の返事を聞いてから、俺は自室を後にした。 階下に降りて、そのまま玄関に向かう。 玄関で靴を履いていると、後ろから声をかけられた。 悠季美「?……また出るんですか?」 振り向くと、そこに悠季美が居た。 柾樹 「ああ、なんだかんだ言ってもコロネ買えなかったからな」 悠季美「そうですか」 柾樹 「ああ、そうですよ」 悠季美「……なんとなく思うんですけど……」 柾樹 「うん?」 悠季美「色々、文句を言ってる割には結局やってあげるんですね」 柾樹 「やってやる……って……何がだ?」 悠季美「気づいてないんですね。     いじわるしていても柾樹くんは最後は夕ちゃんが望んだことをやってますよ」 柾樹 「……そうか?」 悠季美「確実に、と言い切れないのは当然ですが」 柾樹 「……やっぱり俺のこと嫌いだろ」 悠季美「面白い馬鹿は好きです」 柾樹 「馬鹿って言う方が馬鹿だと、太古の英雄アイガットサーンが言ってたぞ」 悠季美「馬鹿という言葉に心当たりがあるのなら、それだけで十分でしょう」 柾樹 「うぐっ……」 悠季美「まあ話していても始まりませんね。行きましょう」 柾樹 「……え?」 悠季美「どうかしました?」 柾樹 「……来るの?」 悠季美「退屈ですから」 柾樹 「……そうですか」 確かに話していても始まりませんな。 俺はややこしい考えは振り切り、コロネを求めて歩いた。 コロネを求めて暗くなってゆく路地を歩く。 しかし、ひとつの考えがよぎり、足を止める。 悠季美「どうかしたんですか?」 柾樹 「やっぱり、ひとりでいい。だから帰っててくれ」 悠季美「お断りします」 柾樹 「何故!?」 悠季美「それはわたしの台詞です」 柾樹 「よし説明致そう。女と歩いていると、また骨董品押し付けられる」 悠季美「……どうしてですか?」 柾樹 「八百屋が『彼女が出来た』って言いだして、     祝い品だとかを押し付けてくるんだ」 悠季美「わたしなら大丈夫ですよ」 柾樹 「どうして言い切れる」 悠季美「行ってみれば解りますよ」 柾樹 「………」 まあ、大丈夫って言うんなら……。 そんな考えをしている内に見えてくる店の立ち並び。 八百屋「お!柾樹くん!また来たね!」 柾樹 「ハハ……どうも……」 八百屋「おや?今度は違う子を連れて……おお、誰かと思えば悠季美ちゃん!!」 悠季美「お久しぶりです、おじさん」 八百屋「なんだ?柾樹くんとはどんな仲なんだい?もしかして三角関係かい?」 柾樹 「なっ!?なに言うんですか!!なあ悠季美?俺達はただの……」 悠季美「ただの同居人です」 柾樹 「そうそう!って、ぬおお!?」 八百屋「なぁんだ、恋人じゃな───同居!?い、今同居って……!?」 柾樹 「うわいやあのそのつまりですね!?これはえぇと……!!」 八百屋「つまり……同棲ってことかい?」 悠季美「言い替えれば、そういうことになりますね」 柾樹 「ぬおお!やめろ悠季美!俺の平穏を尽(ことごと)く破壊する気か!?」 悠季美「退屈ですから」 柾樹 「やめんかぁあああああああっ!!!!」 悠季美「お断りします。それに嘘は言ってませんよ」 柾樹 「そんな問題じゃないだろう!?     俺はともかく、お前も変な目で見られるんだぞ!?」 悠季美「心配してくれるんですか?」 柾樹 「仮にも女だからな」 悠季美「どこからどう見ても正真証明の女ですよ」 八百屋「やるねぇ柾樹くん!二股とは恐れいった!!」 柾樹 「恐れいらないでください!!」 八百屋「……うむ、それもそうだな」 柾樹 「そうですよ、勘弁してくださいよ……」 八百屋「立派になったなぁ、柾樹くん」 柾樹 「感心もしないでくださいっ!!」 八百屋「どうしろと?ああ、粗品か」 柾樹 「いらんわぁあああああっ!!」 悠季美「落ち着いてください」 柾樹 「俺はお前に落ち着いて欲しかったよ!!」 悠季美「でも事実です」 柾樹 「お前なぁっ!!」 八百屋「尻に敷かれるタイプだな柾樹くんは」 柾樹 「そんなんじゃないんですってばさぁっ!!」 悠季美「恋人に思われなければ良かったんでしょう?」 柾樹 「ムッハァーッ!!最初はそうだったさ!!」 悠季美「それなら大団円です」 柾樹 「こんな大団円なんて嫌だ!!」 悠季美「それでは、この辺で失礼します」 八百屋「おう、幸せにな」 柾樹 「………」 なんか泣けてきました。 ていうかもう涙が止まらない。 いっそ逃げ出したいとか、穴があったら入りたいとか、そんな気分です俺…… Next Menu back