───ああっ稔さまっ/開かずの間って開くところばっかだねっ♪───
服屋での一件の後。 俺と悠季美はそのまま学校をサボった。 床に転がる刹那の遺体(ではないが)の横を通り抜け、家に戻る。 柾樹 「ただいま〜」 悠季美「……た、ただいま」 悠季美が遠慮がちに中に入る。 柾樹 「お前なぁ、なにを遠慮してるんだよ」 悠季美「だって……わたし、ここから出ていこうとしたのに……」 柾樹 「気にするな」 悠季美「それは無茶です……」 柾樹 「まあ、居辛い気持ちは解らなくもないが……。     とりあえず口調はそれでいいからな」 悠季美「う〜……」 今になってあの口調で話されると、かえって話難い。 柾樹 「ところでさ」 悠季美「はい?」 柾樹 「手、離してくれないか?正直歩き難い」 悠季美「嫌です」 柾樹 「腕がダルイんだが」 悠季美「嫌です」 柾樹 「耳は英語で?」 悠季美「イヤーです」 柾樹 「……………………」 悠季美「……………………」 柾樹 「ノリがいいな」 悠季美「気のせいです」 柾樹 「まあ、いいや……」 腕にしがみつく悠季美を無視し、そのまま歩く。 悠季美「わわっ!待ってください!まだ靴が……!!」 柾樹 「遅い!」 悠季美「あぅう……」 慌てて靴を脱ごうとする悠季美。 悠季美「……と、えっと……」 柾樹 「……なあ、悠季美さんよ」 悠季美「嫌です」 柾樹 「まだ何も言ってないだろう!」 悠季美「予想がつきましたから」 柾樹 「だったらこっちの苦労も理解してやってくれ」 悠季美「ヤです。離しません」 柾樹 「……お前、そんなにわがままだったか?」 悠季美「これがわたしです」 柾樹 「………」 悠季美「じゃあ、行きましょう」 柾樹 「何処にだ」 悠季美「リビングです。見たいテレビがありますから」 柾樹 「そうか、俺は自分の部屋に行く」 悠季美「駄目です」 柾樹 「………………キミねぇ」 悠季美「たいした用じゃないんでしょう?」 柾樹 「お前を探すために走ったからな、汗を流したいから着替えをってな」 悠季美「じゃあ、一緒に入ります」 柾樹 「たわけ!なにを涼しい顔でそげんこつ言いよらすばいばってん!」 悠季美「大丈夫ですよ」 柾樹 「なにがだ」 悠季美「柾樹さんなら、わたしは平気ですから」 柾樹 「ダメ!却下!肯定せんぞ父さんは!」 悠季美「……わたし、そんなに魅力がないですか……?」 柾樹 「馬鹿かお前は!そんなことは好きな人に言え!」 悠季美「言ってるじゃないですか」 柾樹 「ぬおお、ああ言えばこう言う!」 悠季美「じゃあ行きましょう」 柾樹 「待て!」 悠季美「さあ、早く」 柾樹 「待てと言っている!」 悠季美「もう……なんですか?」 柾樹 「お前、恥ずかしくないのか……?」 悠季美「平気です、柾樹さんなら」 柾樹 「俺は恥ずかしい。だから却下」 悠季美「嫌です」 ああもう……。 柾樹 「悠季美、お前やっぱり出ていくか?」 悠季美「あぅう……外道……」 柾樹 「嫌なら無茶言わないでくれ」 悠季美「うぅ……解りました」 柾樹 「じゃあな、お前はテレビ見るんだろ?」 悠季美「………」 柾樹 「そう見つめてくれるな。俺の顔に何かついてるか?」 悠季美「ついてます」 柾樹 「なにぃ、一体何が!?」 悠季美「クッキーのかけらです。取ってあげますから、動かないでください」 柾樹 「あ、ああ悪い、って!んなこと言ってキスでもする気じゃあるまいな!」 悠季美「…………チッ」 おい。 柾樹 「チッてなんだ!チッて!」 悠季美「存じません」 柾樹 「まったく、油断も隙も無い」 悠季美「もういいです。それでは、のちほど」 そう言って、リビングに消える悠季美。 柾樹 「はぁ……」 なにやらドッと疲れた。 柾樹 「さてと、シャワーでも浴びるか……」 階段を登り、部屋に入ると着替えを手にし、階下へ。 バスルームに続くドアを開け、中に入る。 ───が、先客が居た。 脱衣所に、バスルームから聴こえるシャワーの音が響く。 野郎……!!悠季美か……? どこまでも邪魔をしてくれるわ。 まあいいが。 脱衣所をあとにして、リビングに行く。 悠季美「あれ?入らないんですか?」 と、そこに悠季美が居た。 悠季美「それとも、やっぱりわたしと」 柾樹 「馬鹿も休み休みお言いなさい」 悠季美「馬鹿にしないでくださいよ」 柾樹 「ボケ者」 悠季美「夕ちゃんと一緒にしないでください」 柾樹 「まあそれはそれとして。まあその……なんだ。お前は家に何人居るんだ?」 悠季美「……はい?」 柾樹 「さっきまでシャワー浴びてなかったか?」 悠季美「朝っぱらから妄想」 ボカァッ!!! 悠季美「きゃっ!!」 柾樹 「いくら温厚な俺でも怒るぞ!」 悠季美「あぅぅ……いつも怒ってます……」 ボカッ!! 悠季美「えぐぅっ!」 柾樹 「……と、するとだ。今シャワー浴びてるのは誰なんだ?」 悠季美「アビゲイル」 柾樹 「誰だ」 悠季美「父の古本の」 柾樹 「解った、もういい」 悠季美「あぅう……これからがいいところなのに……」 柾樹 「説明事にいいも悪いもあるか馬鹿」 悠季美「馬鹿じゃないですってば」 柾樹 「悪い、呆人(ぼきゅうど)だった」 悠季美「なんですかそれは」 柾樹 「呆人:ぼけびと、ぼきゅうど。ぼけた人、その類型」 悠季美「……ボケじゃないです」 柾樹 「安心しろ。仮に悠季美がボケでも、夕のランクには追い付けないから」 悠季美「夕ちゃんのランク?なんですかそれ」 柾樹 「悠季美のランクが呆人なら、夕はハルマゲドン呆人だ」 悠季美「ハルマゲドンボキュウド……」 柾樹 「まあ冗談だが」 悠季美「………」 柾樹 「どうした?」 悠季美「そういう冗談は夕ちゃん限定にしてください」 柾樹 「そうか?そうすると、それはそれでいじけそうだが」 悠季美「その時は実力をもって夕ちゃんを排除します」 柾樹 「するな」 悠季美「ですけど、障害はブチノメーションと……」 柾樹 「間に受けるな」 悠季美「……でも、そうすることで変われる気がします」 柾樹 「そりゃぁ……変われるだろう。だけど危険だからやめろ」 悠季美「心配ですか?」 柾樹 「当たり前だ、ばか」 コツン。 悠季美「あ……」 柾樹 「お前はそんな乱暴な奴になるな。     お前はそのままで……その、魅力的……だから」 悠季美「…………」 顔を赤くして、目を潤ませる悠季美。 悠季美「じゃ、じゃあ一緒にお風呂入って───」 柾樹 「却下!!」 悠季美「え〜……?」 柾樹 「え〜?じゃないっ!どうしてそうなるんだ!!」 悠季美「う〜、仕方ないです。シャワーを浴びてる偽者の正体を暴いてきます」 柾樹 「いや……だからさぁ……どうしてそうなるんだ」 悠季美「それがわたしの心意気!!」 ズビシィッ!!と、決めポーズを取る悠季美。 柾樹 「ただののぞきじゃないのか?」 悠季美「あんな下衆な方達のそれと一緒にしないでください!」 柾樹 「いや、たいして変わらんと思うぞ」 悠季美「そんなことありません!」 どうしてこう、断言できるかなぁ……。 柾樹 「まあ待てって。案外夕かもしれないだろう?」 悠季美「夕ちゃんは学校じゃないんですか?サボったわけでもないんでしょう?」 柾樹 「あ……そうか。でも後から来る筈だったし……」 悠季美「それに、あのゴールドブレンドかもしれません」 柾樹 「……だとしたら、お前は危険だろう」 悠季美「それならへっちゃらです」 柾樹 「なぜかな?」 悠季美「見てください、これ」 柾樹 「ん……電動釘打ち機?」 悠季美「名札に●ーリーレイって書いてあります」 柾樹 「って、こんなもので立ち向かったら相手が死ぬだろう!?」 悠季美「彼には一度覗かれてるんですよ……?だから……ブチノメーション……!」 柾樹 「いいからやめとけって」 悠季美「あっ、返してくださいっ。護身道具がないと恐いですよっ」 柾樹 「落ち着けって、叔父さんかもしれないだろう?」 悠季美「でも……」 柾樹 「でもじゃない。俺が見てくるからここで待ってろ」 悠季美「……だ、駄目ですっ」 ガシッ!と腕を掴まれる。 柾樹 「なにが」 悠季美「だ……だって、もし夕ちゃんだったら……」 柾樹 「………」 確かに、それは嫌な状況だな。 悠季美「それとも……他の男みたいに……覗きたいんですか……?」 ボカァッ!! 悠季美「きゃっ……!!」 柾樹 「おぉ〜のぉ〜れぇ〜はぁぁああぁぁっ!!     まだそんなことを言うかぁぁああああっ!!」 悠季美「いたっ!たたたいた痛いたたた痛いですっ!!     コメカミグリグリしないでくださいぃぃいっ!」 柾樹 「俺がそういうのは嫌いだって知ってるだろ!?」 悠季美「で、でも……」 柾樹 「『でも』じゃないと言っているぅ〜……!!」 ゴリゴリゴリ……!! 悠季美「あうっ!!うぁぅううっ!!痛いぃいっ!」 柾樹 「もういい、お前行け」 悠季美「えぇっ!?」 柾樹 「ホレ、ホー●ーレイだ」 悠季美「あ……あぅぅ……」 柾樹 「どうした、さあ行け」 悠季美「……いじわるぅ……」 すねた表情を見せると、悠季美はリビングを出ていった。 ……俺と腕を組みながら。 柾樹 「……おい」 悠季美「い、嫌です……っ!」 震えた声で言葉を放つ悠季美。 そして俺と組んでいる腕に力を込める。 柾樹 「……やれやれ」 悠季美「なっ、なんですかっ?笑ったりして!」 柾樹 「ここはひとつ、協力するか」 悠季美「協力、ですか……?」 柾樹 「ああ、まずお前が斥候部隊として突入。     その隙に俺は逃走する。ぬおお、ナイスコンビネーションプレイ!!」 悠季美「どこがですかっ!     結局わたしに調べてこいって言ってるようなものじゃないですか!」 柾樹 「正当な意見だ。父さんは悲しいぞ」 悠季美「話からして、『嬉しいぞ』と言うべきです」 柾樹 「任せろ」 悠季美「どういう返事ですか」 柾樹 「いや、どうと言われても」 悠季美「……じゃあ、開けますよ……?」 柾樹 「うむ」 カチャ……。 悠季美が静かにドアノブを開ける。 柾樹 「……なあ」 ふと、気づいた点がある。 悠季美「……はい?」 悠季美が小声で返事をする。 柾樹 「思ったんだが……俺が行くのと、この状況。一体なにが違うんだ?」 悠季美「わたしが付いて来てます」 柾樹 「………………それで?」 悠季美「それだけです」 柾樹 「………」 悠季美「………」 一体どうなっているんだ?こいつの小宇宙(コスモ)は。 柾樹 「お前さ、俺が覗きになるのが嫌なんだろう?」 悠季美「当たり前じゃないですか」 柾樹 「……キミ、スーパーボケに昇格」 悠季美「なんですか、それは」 柾樹 「考えてもみろ」 悠季美「何をですか?」 柾樹 「俺が行って確認すること自体が覗きだとすると、     今の俺もそれに該当するんじゃないのか?」 悠季美「……あぅ」 柾樹 「というわけだから、頑張れよ」 悠季美「嫌ですっ」 がしぃっ! 柾樹 「なにぃっ!」 悠季美「こうなったら体裁など関係ないです」 柾樹 「おい待て!さっきと言ってることが違うぞ!」 悠季美「体裁についてなんて説いてませんよ」 柾樹 「そういう意味じゃなくてだなっ!」 悠季美「いいから、さぁ」 柾樹 「お前が脱衣してある着衣を調べればそれで済むことだろうが!」 悠季美「……それもそうですね」 柾樹 「くはっ……」 どうしてこう、切り替えが早いんだ……。 悠季美「えっと……」 ゴソゴソと着衣を調べる悠季美。 端から見れば、怪しい人以外の何者でもない。 ステキだよ悠季美。 キミは今、輝いていると言うより、究極の盗人(アルティメット・タオチェイ)風味さ。 シーフと呼ばないのがミソだ。 悠季美「あ、夕ちゃんですね」 柾樹 「なにぃいい!?俺が苦労している間、のんびりと家に居たと!」 悠季美「べつにそこまで苦労はしてないでしょう」 柾樹 「いや、苦労したんだよ」 悠季美「う〜……」 柾樹 「そっか……夕か……。じゃあ、俺は自室でのんびりしてるか」 悠季美「何故ですか?」 柾樹 「あのなぁ、乱入するわけにはいかないだろう?     だからシャワーが空くまで待つだけだ」 悠季美「お付き合いします」 柾樹 「結構です」 悠季美「即答することないじゃないですかぁ〜っ!」 柾樹 「いいからいいから」 声  「……あれ?」 ふと、バスルームから声が響く。 声  「誰か……居るの?」 柾樹 「誰も居ないぞ」 声  「わややっ!?柾樹くんっ!?」 ギャア!しまった! 悠季美「なに馬鹿正直に返事してるんですかっ!!」 柾樹 「馬鹿じゃない!理知的だ!しかも聡明!!」 悠季美「どこがですか!」 柾樹 「サランラップ!(訳:黙れ!)」 悠季美「せっかく順調に進んでたのに!外道!」 柾樹 「何を言う馬鹿者!問われて尚、答えずにいる者の何が紳士か!!」 悠季美「誰が紳士ですか!」 柾樹 「俺はこう見えてもジェントルメン志望だ!紳士業に背くことなど出来るか!」 悠季美「紳士ならまず怒ることを控えてください!」 柾樹 「たわけ!ジェントルメンだって人の子なんだよ!怒る時は怒る!」 悠季美「年中無休で怒ってるじゃないですか!」 柾樹 「そんなことは断じてない!」 声  「あ、あの……」 柾樹 「おだまり!!」 悠季美「これはわたし達の問題です!」 声  「ふえぇ……出られないよぅ……」 柾樹 「大体だな!俺の何処が紳士らしくないと言うのだ!」 悠季美「全部です」 柾樹 「な、なにぃいい!」 …………──────………… ───………… 声  「───つまり!ジェントルメンたる者!     常に相手を思いやるということこそがだな!」 声  「それは柾樹さんに当てはまりません!」 声  「な、なにぃいいいっ!!」 夕  「……ふぇえ……まだやってるよぉ……」 いい加減、出たいのに……。 夕  「っくしゅん!」 くしゃみが出た。 夕  「うぅ〜……」 諦めてシャワーの蛇口を捻る。 声  「なにぃいっ!?貴様、まだ浴びる気かっ!?」 声  「こっちは語らいで汗の嵐ですよっ!?」 夕  「ふぇええぇぇ〜……」 どうしろと言うのだろう。 夕  「じゃあ、出るから出てってよぅ……」 声  「んまぁっ!出ていけですって!?」 声  「ヒドイわっ!わたし達が何をしたと言うの!?」 夕  「ふぇぇえええぇぇぇ……」 泣きたくなってきた。 声  「まあ、冗談だが」 声  「じゃあ、着替えが済んだら呼んでくださいね」 声  「なにぃ、俺が先だぞ」 声  「レディーファーストです」 声  「俺は男女差別が嫌いなんだ」 声  「男の人とキスしたいですか?」 声  「絶対に嫌だ」 声  「差別です」 声  「お前なぁ……」 ───………… 夕  「着替え、終わったよ〜」 柾樹 「長かったな」 夕  「ふたりが退いてくれないからだもん」 悠季美「じゃあ、早速」 柾樹 「次は俺だと言っている」 悠季美「じゃあ、一緒に」 ボカッ!! 悠季美「きゃっ……!」 柾樹 「もういい、行け」 悠季美「あうぅ……」 頭を抑えながらリビングを出てゆく悠季美。 夕  「あ……」 柾樹 「ん?」 夕  「そういえば悠季美ちゃん、戻ったんだ」 柾樹 「……ああ、そのことか……」 夕  「家に戻っても誰も居なかったから、散々探し回ったんだよ……?」 柾樹 「なにぃ!?家に着くと同時に堕落したんじゃなかったのか!?」 夕  「違うよぅ……」 柾樹 「まあいいや」 夕  「そんな、あっさり言うなら訊かないで……」 柾樹 「駄目だ」 夕  「うぅ〜……」 柾樹 「しかし……あぁくそっ!服がまとわりつく!」 夕  「汗、すごいね」 柾樹 「ああ、走り回ったり長話で疲れたし、なにより歩き難い体勢で歩いたしな」 夕  「ふぇ?歩き難い体勢?」 柾樹 「悠季美にスコーピオンデスロックをされながらここまで歩いてきたんだ」 夕  「歩けないと思うよ」 柾樹 「任せろ」 夕  「うぅ〜……意味不明……」 さて、どうしたもんかな。 朝から家の中にこもりっぱなしというのもな。 ……悠季美が出るまで本でも見るか。 その結論に行き着いたので、ダイニングルームを出て、階段を登る。 自室に行き、ベランダを渡り、我が家のベランダに行き、 自室に入り、本を見る。 母さんが居なければ、ここほど平和な場所はない。 コンポでクラシックを流し、その時間に陶酔する。 しかし……あぁ暑い。 仕方なしに自分の家の階段を降りてリビングへ。 エアコンにスイッチを入れて涼む。 ……しばらくすると、汗が引く。 柾樹 「……くあ……」 眠くなってきた。 寝よう。 それがいい。 起きてから風呂に入っても遅くはないだろう。 ……っと、一応は家の鍵を全て閉めておこう。 誰にも邪魔されたくはないからな。 と言っても、俺の部屋の窓の鍵しか開いてないんだが。 おっと、床下の隠し通路も塞がないとな。 ───カチッ。 よし、ロック完了。 暑い自室に戻り、窓の鍵を閉める。 だぁあっ、暑いって……!! すぐさまにリビングに戻り、エアコンの風に当たる。 ぬおお、体が癒されてゆく気分ぞ。 ソファーに座り、ぐったりとする。 うむ、いい体勢だ。 ……でも風が届かないな、よし。 ガタガタと、ソファーを移動させる。 さてと、それでは安息のシエスタを……。 ……ぐぅ……。 ………んぐ? 突然の尿意に襲われ、目を覚ます。 柾樹 「む〜……」 トイレへ向かい、用をたす。 トイレの中は灼熱の如き暑さを誇っていた。 誇らないでくれ、そんなもん。 リビングに戻り、再びソファーに埋まる。 柾樹 「……ぐー」 まだまだ眠気があった。 ああ、なんて気持ちがいいんだ。 柾樹 「………」 俺はふと思い立ち、自室へ駆け登った。 コンポを持ち出して、リビングへ。 クラシックをつけながら、再び目を閉じる。 ぬおお、なんて最高の状況ぞ。 電気代キラーかもしれないが、この状況はオイシイ。 柾樹 「………………ぐぅ」 ほどなくして、静かな音楽と涼しい環境に包まれながら、俺は眠りについた。 ……ピンポーン。 インターホンが鳴る。 柾樹 「………」 誰だ、まったく……。 仕方なしに起きて、受話器を取る。 柾樹 「どなたですか?」 声  『わたしです』 柾樹 「俺の知り合いに『わたし』なんて人は居ない」 声  『悠季美です』 柾樹 「どちらの悠季美さんですか?」 声  『郭鷺家の悠季美さんです』 柾樹 「自分をさんづけで呼ぶなっ」 声  『どうしろって言うんですかっ!』 柾樹 「まあ冗談は程々にしてと、何用だ」 声  『何用だ、じゃないですよ。シャワー浴びてから出たら居ないんですもの』 柾樹 「出た所に居たら変態じゃないか」 声  『そうゆ意味じゃありませんっ』 柾樹 「そうか、じゃ俺は寝るから」 声  『シャワーは?』 柾樹 「ウチで浴びればいいことだ。気にするな」 声  『……ああ、言われてみればそうですね』 柾樹 「じゃあな」 声  『あ、待ってください』 柾樹 「ん?」 声  『中に入れてくれませんか?』 柾樹 「駄目だ。ここは俺の清域と静域を合わせた聖域ぞ」 我が家がこんなにも快適だったとは。 母さんが居た時は安息なんてなかったからな。 柾樹 「じゃあな」 カチャ。 受話器を置く。 ソファーに埋まり、もう一度目を閉じる。 ───が、なにやら視線を感じる。 辺りを伺うと、窓から悠季美が睨んでいた。 柾樹 「………」 悠季美「………」 視線だけが交差する。 が、無視して寝ることにした。 その様子を見て、悠季美が窓を叩く。 だんだんだんっ! 柾樹 「……むぐぅ、うるさい」 コンポのヘッドホンを耳に当て、目を閉じる。 ……ぐー。 柾樹 「……ハッ!」 なにやらただならぬ寒気を感じた。 見ると、悠季美が中庭に置いてある植木鉢を構え─── 柾樹 「バッ……やめろ!!」 俺は慌てて制止に入った。 鍵を開け、悠季美の頭を小突く。 ぽかっ! 悠季美「あぅっ!」 柾樹 「何考えてんだこの馬鹿ッ!!」 悠季美「だって、一方的に切るから……」 柾樹 「俺は眠いんだ」 悠季美「わたしは完全に覚醒してます」 柾樹 「そうか、おやすみ」 悠季美「ま、待ってくださいっ」 がしぃ! 柾樹 「なにぃ!?」 悠季美「わたし、お邪魔してもいいですか?」 柾樹 「駄目」 悠季美「静かにしますから」 柾樹 「信用できん」 悠季美「あぅう……」 夕  「わぅー、広いね〜」 柾樹 「そりゃ……って、何処から涌いて出たっ!」 夕  「堂々と、その窓から入ってきたけど」 柾樹 「なにぃいい、ネギをやるから帰れ!」 夕  「いらない」 柾樹 「なにぃ!?蕎麦(そば)と納豆が美味になるんだぞ!?」 夕  「人それぞれだよ」 悠季美「わあ、涼しいですね」 いつの間にか、悠季美までもが入っていた。 柾樹 「こらこらこらぁああああああっ!!」 夕と悠季美がソファーに座る。 柾樹 「そこは俺の指定席ぞ!」 夕  「う〜、眠くなってきたよ〜」 柾樹 「なにぃ!?自分の部屋で寝ろ!」 悠季美「暑いから嫌です」 柾樹 「ぬおお……」 くそっ、どうしたものか……。 柾樹 「………」 悠季美も、うとうととしてきた。 柾樹 「眠くなかったんじゃなかったのか?」 悠季美「人体には自身でも理解出来ないものが恐ろしいほどに多々あります」 柾樹 「だからって、ここで寝なくてもいいだろう」 悠季美「部屋が暑いんですってば」 柾樹 「………」 どうあがいても、ここで眠ることは確定しているらしい。 夕  「……すぅ……」 というか、既に寝ている。 悠季美「………」 柾樹 「はぁ、勝手にしろ……」 俺はとりあえず、悠季美が寝付くまで待った。 悠季美「………」 しばらくすると、悠季美の呼吸が一定のものに変わる。 柾樹 「……よし」 それを確認してから、俺は家を出た。 時間を見てみたところ、既に昼は過ぎていた。 家を出たところの路地を歩くと、見知った顔を発見した。 柾樹 「あ、叔父さん」 凍弥 「ん?おお、柾樹か」 柾樹 「いま帰宅で?」 凍弥 「まあ、そんなところだ。お前は?」 柾樹 「ハハ……またひと騒動ありまして……」 凍弥 「夕か?それとも悠季美か?」 柾樹 「……悠季美」 凍弥 「そうか、また些細なことからか?モテるな」 柾樹 「シャレになってませんよ。それに、今回ばかりは……」 凍弥 「……昔のことか?」 柾樹 「え?あ、よく解りましたね……」 凍弥 「まあ、深刻そうだったからな。そうだ、これから時間、空いてるか?」 柾樹 「ガラガラですな」 凍弥 「よし、ちょっと付き合え」 柾樹 「了解」 叔父さんが先立って道を歩く。 柾樹 「って、着替えなくていいんですか?」 凍弥 「まあ、なんとかなる」 柾樹 「………」 道を歩いて、学校の近くまで来た。 もう少し先に行けば、学校がある。 凍弥 「よし、ここにするか」 叔父さんは喫茶店のドアを開けた。 柾樹 「え?」 凍弥 「ゆっくり話をするなら喫茶店だろう」 あ……なるほど。 しかし、話とはなんだろう。 カランカラン……。 ドアを開けると、中の冷房の効いた空気が体を癒す。 声  「トォオオテムポールロマンスァアアアッ!!」 謎の奇声。 ドンガラガッシャンドカバキゴワシャァアアン!!! 後に騒音。 凍弥 「───やめよう」 バタン。 叔父さんがドアを閉める。 あの声、鷹志さんだな……。 柾樹 「……学校、忍び込みませぬか?」 凍弥 「学校?……おお、それは名案だ」 外に居ても騒音の響く喫茶店をあとにして、学校へ。 客人用のスリッパを着用して、コパーンコパーンと音を立てながら廊下を歩く。 ぬおお、いい音だ。 凍弥 「どこか空いてる教室はあるか?」 柾樹 「えっと……?」 空いてる教室……う〜ん……おお!! 柾樹 「かつて、開かずの間として知られた場所が」 凍弥 「おお、それはいい」 なにがいいのかは謎だ。 声  「すみませんが、もう少し静かにしてください」 声。 振り向くと、そこにはよく知った人が居た。 柿崎 「んあ?なんだ、お前か」 柿だった。 柿崎 「もう解決したのか?」 柾樹 「まあ……」 柿崎 「そうか、そりゃ良かった」 凍弥 「ぬおおおお!喧嘩ボンバァーッ!!」 柿崎 「なにぃ!?ぎゃあああああああ!!」 ドカァッ!! 柿崎 「ぐはぁっ!」 凍弥 「久しいな、赤点キング」 柿崎 「フフッ……いいラリアットだったぜ……」 何をやってるんだ、何を……。 凍弥 「しかし……お前が教師って……」 柿崎 「どうだ、驚いただろう。驚いたと言え」 凍弥 「似合わん」 柿崎 「ハッキリ言うなっ!」 凍弥 「気にするな」 柿崎 「相変わらず無茶言う奴だな、お前って……」 凍弥 「任せろ」 柿崎 「……な?お前によく似てるだろう」 俺に振り向き、そう言ってくる。 柾樹 「……いや、俺が叔父さんに似てるだけかと」 柿崎 「大差無いだろう」 柾樹 「いやいや、微妙に同じような違いがありそうでもありそうですが、     それに引き続くネギとレタスの切実なる愛を育む北極の大地にただただ感謝」 柿崎 「意味が解らんっ!!」 凍弥 「応用をきかせろ」 柿崎 「無茶言うな!」 柾樹 「なにぃ!?貴殿はそれでも教師であらせられるのか!!」 柿崎 「どういう言葉だ!」 凍弥 「トリケラトンプソン語」 柿崎 「トンプソン!?って、やめい!!」 息を荒くして、頭を整理している。 凍弥 「もう疲れたのか、歳には勝てんな」 柿崎 「同い年だっ!!」 ぬう、柿がこんなに愉快な奴だったとは。 柿崎 「で?ここに何の用だ」 凍弥 「お前を冷やかしに来た」 柿崎 「帰れ!」 凍弥 「断る」 柿崎 「お前なぁ……」 凍弥 「まあ、冗談は置いておくとして」 柿崎 「おいっ!」 凍弥 「じゃあ行くか、柾樹」 柾樹 「了解」 柿崎 「……はぁ……」 深い溜め息を吐かれる。 凍弥 「っと、そうだ。先に何か腹の中に入れておくか」 柾樹 「学食ですな?」 凍弥 「イエス」 廊下をコパンコパンと歩いてゆく。 柿崎 「静かに歩けって」 凍弥 「なんだ、連いて来たのか」 柾樹 「教師の風上にも置けん奴ぞ」 柿崎 「どうしてそうなるっ!」 凍弥 「不思議だ」 柾樹 「不思議ぞ」 柿崎 「……はぁ……」 二度目の溜め息。 凍弥 「おじいちゃん、お口臭い」 柿崎 「同い年だっ!!」 凍弥 「うそつけ」 柿崎 「即断するなっ」 柾樹 「さて、学食ザマス」 柿崎 「よし、A定だ」 凍弥 「流石だ」 柾樹 「流石」 柿崎 「そろいもそろって、何のことだ」 凍弥 「Aの刻印を持つ者と呼んでやろう」 柿崎 「いらん」 凍弥 「遠慮するな」 柿崎 「遠慮なんかしていない」 凍弥 「なら受け取れ」 柿崎 「いらん」 凍弥 「強情な奴だ」 柾樹 「じゃあ、俺は天婦羅うどんを」 凍弥 「俺は日替わり如月定食」 食券を購入する。 それを美希子さんに渡して、適当な席に着く。 美希子「あ、凍弥さん」 凍弥 「誰だ」 うあっ、率直! 美希子「あ、あの……美希子ですけど……」 凍弥 「……………………………………………………」 長い思考。 凍弥 「ああ!鷹志の親の家に居たあの子か!」 美希子「……はぅ」 ホッとしたように、胸をなで下ろす。 柾樹 「知り合いで?」 凍弥 「結構前に鷹志と海釣りに繰り出した時にな」 柾樹 「へぇ……」 凍弥 「釣りをしてたら美希子が身投げをしたんだ」 柾樹 「……えぇっ!?」 柿崎 「穏やかじゃないな」 美希子「本気にしないのっ」 凍弥 「まさかムーンサルトをしながら、あそこで捻るとは思わなかった」 柾樹 「大海に向かってオリンピック競技でもしてたんですか?」 美希子「してないしてないっ」 凍弥 「俺が審査員なら6点は堅いな」 柾樹 「……高いの?それって」 柿崎 「いや、並」 美希子「それがオチなの……」 凍弥 「だって着地が腹からだったじゃないか」 美希子「着水だと思うんだけど……」 凍弥 「気にするな」 柾樹 「それで、どうなったんで?」 凍弥 「ああ、助けに入ろうとした鷹志の体に、     気づかれないように魚の蒔き餌を塗り付けておいたんだがな」 柾樹 「ふむふむ」 凍弥 「助けに入った途端に魚の大群に襲われた」 柿崎 「お前、ヒドイことするなぁ」 凍弥 「流石にサメ以外の魚に襲われた人間を見たのは俺も初めてだったぞ」 柾樹 「サメも見たことないでしょう」 凍弥 「まあ、そうだが」 美希子「あの時以来、わたしは魚がダメになりました」 凍弥 「一緒に襲われてたからな。まあ気にするな」 気にするなってのは無理だと思う。 柿崎 「そういや凍弥」 凍弥 「ん?」 柿崎 「最近、鷹志見かけるか?」 凍弥 「鷹志ならさっき、喫茶店で暴れてたが」 柿崎 「そ、そうか……」 凍弥 「またパープルコーヒーでも飲んでたんだろ」 美希子「はぁ……お父さんったら……」 凍弥 「美希子はどうなんだ?アルコール入ると暴走するのか?」 美希子「わたしは精神構造がお母さん似だから」 柾樹 「じゃあ悠季美は精神構造父親似という訳ですな」 美希子「……え?」 柾樹 「いや、悠季美はアルコールで暴走出来るんで」 美希子「あ……そうなんだ……」 凍弥 「どうしてトーテムポールなんだか」 柾樹 「まったくですわ」 美希子「わたしも疑問に思ってたの。なんなんだろ、あの言葉」 凍弥 「トーテムポールロマンスか」 柿崎 「昔あった、何かがきっかけとか」 凍弥 「昔の遊びとかか。俺もよくやったもんだな」 美希子「トーテムポール?」 凍弥 「前方大回転ミサイルキックごっこ」 柾樹 「ごっこじゃ済みませんよそれ!」 凍弥 「そうか?それならデンジャラス・スープレックス・コンボ(DSC)ごっこだ」 柾樹 「子供がやるようなことじゃなさすぎです!」 凍弥 「あの頃は若かったからな、なんでもやったぞ」 柿崎 「もっともらしく頷くな!」 凍弥 「任せろ」 収拾がつかん。 苦笑いと共に立ち上がり、セルフサービスウォーターを4つ手にする。 それをそれぞれの人の前に置く。 美希子「あら、わたしにもくれるの?ありがとっ」 凍弥 「悪いな、助かる」 柿崎 「普段からこれくらい気を配ればなぁ」 柾樹 「いや、素直に受け取ってくださいよ」 柿崎 「ああ、悪い悪い」 笑いながら水を受け取る柿。 そうこうしてる間に出される料理。 凍弥 「喋っていた割に早いな」 美希子「あはは、別にわたしだけでやっているわけじゃないから」 そりゃそうだ。 頼んだ物によってバラつきはあるものの、大した差もなくそれぞれの食事が行き渡る。 一同 「いただきます」 恒例の挨拶を済ませ、さっそくとりかかる。 ずぞぞぞぞぞ……。 ぬおお、この天婦羅、出来たてぞ。 サクサク感がステキさ。 ジュッ!! 柿崎 「熱ィッ!!」 凍弥 「ひとりでも賑やかな奴だな」 柿崎 「いや、唐揚げが究極に熱いんだ……」 凍弥 「食えないわけでもないだろう」 柿崎 「それはそうだが、見てみろこの湯気」 言って、柿が手元の唐揚げを割ってみせる。 すると、凄まじい湯気が上がる。 凍弥 「………」 柾樹 「………」 とても唐揚げが出す湯気には見えない。 柿崎 「なんなら食してみるか?」 凍弥 「いや、ノルマは自分で清算するものぞ」 柾樹 「右の意見に賛同」 柿崎 「まあ、食さなきゃ解らん熱さだしな」 いや、見るに『いかにも』な熱さを感じる。 これは食せんわ。 柿崎 「よくうどんなんて食せるな、この暑い日に」 柾樹 「これぞ通ぞ」 柿崎 「ただのチャレンジャーだと思うぞ」 おのれ……刹那と同じことを言うてからに……! 柿崎 「そういや凍弥」 凍弥 「駄目だ」 柿崎 「まだなにも言ってない」 凍弥 「貴様のことだ、どうせこのレタスを───」 柿崎 「いらん」 凍弥 「なんだ、違うのか」 柿崎 「お前、嫌いな物とかないのか?」 凍弥 「………」 柾樹 「……それはどういう意味で?」 柿崎 「どういうって……そういう意味だが」 …………………………。 それはつまり、我らに勝手に想像を任せる、と? 柾樹 「………」 嫌いな物はないのか?⇒苦手な物は無いか?⇒ よくカップルなどが手作り弁当等の話題に出す言葉⇒それってつまり=ホ●!? 凍弥&柾樹『いっ……いやぁああああああああっ!!!』 絶叫。 どうやら叔父さんも同じ答えに達したようだ。 柿崎 「どうしたんだ、いきなり」 凍弥 「ギャア!寄るなこの●モ!!」 柿崎 「ホ●!?」 柾樹 「あの時もまさかとは思ったが、本当にまさかの●モリーナだったとは!     神聖職務教員の恥さらスィー!」 柿崎 「バッ……バカ!何を───」 美希子「なになに?なんの話?」 凍弥 「気をつけろ!彼奴はホ●ぞ!!」 美希子「ええっ!?●モ!?」 柾樹 「恥さらスィ――ッ!!」 柿崎 「誰がホ●だ!いい加減にしろ!」 凍弥 「ギャアア!居直った!居直り●モさん!」 柿崎 「妙な名前をつけるな!それに俺はホ●じゃない!!」 凍弥 「まあ、白昼堂々ホ●ホ●と連発しちゃって」 柿崎 「言わせてるのは誰じゃああああっ!!」 柾樹 「だって、貴殿が想像は任せると」 柿崎 「言ってないっ!」 柾樹 「なにぃい、たばかったな」 柿崎 「どこの学校に生徒をたばかる教師が居る!」 凍弥 「ここに」 柿崎 「さも当然のように俺を指差すな!」 柾樹 「怒るとシワが増えますぞ」 柿崎 「ぐくっ……!お前ら、俺で遊んでるだろ」 凍弥 「ご名答」 柿崎 「ぐああああ!仮にも俺は教師だぞ!」 凍弥 「安心しろ、仮だと自覚してるなら問題無い」 柿崎 「ぐおおお……!!」 適当に話しながらも食し終わるところは、 さすがふざけ合いに慣れている我等なことはある。 ……自分で言うのも変だが。 柿崎 「さてと、俺はこれで失礼するよ」 凍弥 「ん?もうか?」 柿崎 「俺の職をなんだと思っている」 凍弥 「セクハラオヤジ」 柾樹 「ホ●」 柿崎 「真面目に考える気あるのかお前らっ!!」 凍弥 「あると思うのか」 柿崎 「……そら、無いわな」 柾樹 「生徒を信じようともせんとは。貴様それでも教師か」 柿崎 「だったら元より、信用を損ねるようなことを言わないでくれ」 ごもっとも。 柿崎 「じゃあな、あまり騒いでくれるなよ」 凍弥 「安心しろ、盛大に騒いでやる」 柿崎 「やめろ馬鹿っ!!」 凍弥 「キングオヴ馬鹿に言われたくないぞ」 柿崎 「もういい、じゃあな」 苛立ち半分に話を打ち切り、柿が出ていった。 凍弥 「うむ、久しぶりながらも愉快な奴だ」 柾樹 「最後に会ったのはいつ頃で?」 凍弥 「一昨年くらいだ。不定期に勇士を募っては騒いでいる」 学生時代のクラスメートでな、と続ける叔父さん。 柾樹 「よく集まりますね」 凍弥 「ああ、全員が遊び人だからな」 どの時代もたいして変わらないな……。 凍弥 「ただ、流石に酒は用意しないがな」 柾樹 「トーテムですか」 凍弥 「ああ」 苦笑いにも似た溜め息を吐く。 凍弥 「じゃあ、そろそろ行くか」 柾樹 「そうですね」 トレーを返し、学食を後にする。 美希子さんの声を背に、開かずの間を目指して歩いた。 Next Menu back