───アマンドネフラガーメン24時/リアルタイムは関係無し───
【ケース11:弦月彰利/ラプサンスーチョン】 ……それは、夏休みの真っ只中に起こった。 八月一日から九月一日。 僕は連邦捜査官『ジャック・バウアー』……ではない。 弦月彰利だ。 ……物語はリアルタイムで進行しない。  ───というわけで現在四日目の八月四日。 僕は空界の空中大庭園、中井出宅のドアの前に立っておりました。 考えてみりゃあ空界に来るのも久しぶりです。 綾瀬も中井出も元気でやってるでしょうか。 そして娘の紀裡(きり)
さんは元気でしょうか。 彰利 「中井出ー?これ中井出やー」 ダムダムダムダム!! 彰利 「ノックしてもしもーし?居留守かー?」 コンコココンコココンコンココン。 彰利 「……さっさと出ないとかつての貴様の趣味を紀裡ちゃんにバラす」 どがらたたたたたバタァム!!! 中井出「なに考えてんだてめぇ!!」 彰利 「やぁ」 中井出「やぁじゃねぇ!ったく……あのなぁ、こっちにだって用意ってもんがあるんだよ。     人が準備してりゃあ邪魔しに来るのかお前は」 彰利 「準備っつーたって、約束の日はもう過ぎておりんすよ?     なして八月一日に地界に降臨せんかったとや?」 中井出「へ?……今日が一日じゃないのか?」 彰利 「いや、もう四日ですぞ提督」 中井出「なにぃ!?」 彼は大変驚いていた。 どうやらまた時間のズレの所為で混乱していたらしい。 彰利 「まあまだ原中の猛者どもも来てないから、そういう意味では丁度いいけど」 中井出「なんだまだなのか?あの原中の猛者どもともあろう者たちが」 彰利 「いろいろ忙しいんだろ。一ヶ月仕事を休むってのは大変なことだし」 中井出「まったくだ。みんなにも家庭ってもんがあるだろうしな」 彰利 「あいや、その点なら心配ナッスィン。     原中の皆様、原中の皆様同士で結婚済ませちゃったから。     ノリの解る奥様方だからなんの心配もナッスィン。     生活キツくなったら俺と悠介が援助するから。     ホレ、食物でも必要なものでもなんでも作れる超マンが居るし」 中井出「それは……流石としか言えないな。     あ、ところでさ。ヒヨッ子どもは全員が全員結婚してるのか?」 彰利 「まぁね、元々気の合う集団だったわけだし、     そんな彼ら彼女らが同じ職場で働いてりゃあいろいろあるわい。     そういう意味では、悠介以外は全員原中卒業生と結婚したわけだ」 中井出「へえ……清水は意外だな。     確か閏璃凍弥の妻の由未絵って子のことが高校時代の時好きだったんだろ?」 彰利 「そのことをいろいろとフォローしてもらってるうちに恋に目覚めたみたい」 中井出「なるほど。あいつが弱そうなシチュエーションだな」 彰利 「いや、いちいちもっとも」 ともあれ、中井出も元気にやっているようだ。 なんだか安心じゃよ。 彰利 「で、夜華さんは?」 中井出「まだ『さん』付けて呼んでるのか?斬られるぞ?」 彰利 「気をつけてるんだけどねぇ……     どうにも夜華って呼ぶより夜華さんの方がしっくり来るのよ」 中井出「ああ。気持ちは解る。     敬称がどうとかより『さん』を付けて呼びたい人だよな、あの人は」 彰利 「そうそう、夜華というより『夜華さん』ってのが名前みたいな……ねぇ?」 不思議だ夜華さん。 夫婦になったというのに、未だ謎だらけぞ。 彰利 「つーわけで俺は久しぶりに空界の様子を見に来たんだけど……」 キョロリキョロリとあたりを見渡し、最後に中井出を見た。 彰利 「キミ、変わってないね」 中井出「お前らと違って、地界に行く理由が無いからなぁ。     ほら、地界だと知り合いとかが居るから身体が成長しないと困るけど、     空界……というよりこの庭園だと人と会う確率が極端に少ないし」 彰利 「さながらふたりの楽園ってとこかね」 中井出「そうまでは言わんが。なんつーかここってお前と晦の場所って感じがするし」 彰利 「友人間でそんな遠慮めいたこと言うねぃ。     べつにあたしゃキミがここに居ても困るようなことはないし、     悠介にしたって同じじゃよ」 中井出「……つーかさ、お前なんで姿そのままなんだ?」 彰利 「ああ、宣言通りもう皆様の歳は若りし頃に戻したから。     あとはキミと綾瀬と猛者どもだけさね」 中井出「そうなのか。悪い、すぐに用意するわ。おーい麻衣香〜、準備終わったか〜?」 声  「あとちょっと〜!!」 提督が叫ぶと、それの返事として綾瀬麻衣香の声が聞こえてきた。 中井出「……あの頃となんら変わってないんだから、     今さらめかし込まなくても可愛いんだけどな」 彰利 「まったくで。俺、めかし込むおなごよりすっぴんおなごの方が好きですよ?」 中井出「俺もだ」 だから俺としてみれば、 武士であるが故に化粧など不要と断ずる夜華さんが心の壷にヒットなのです。 化粧なんぞしなくてもかなりのべっぴんさんだし。 と……そういやぁ…… 彰利 「これ提督や?結局夜華さんは何処?」 中井出「さあなぁ……一応集まりのことは知ってるから、     あの人が遅れるわけがないんだけど」 彰利 「規則ごとには五月蝿い人だからね、我が妻ながら」 でもそうでなくちゃ夜華さんじゃないのだ。 どらどら、ほいじゃあちょほいと死神の気配でも探知してみっかね。 彰利 「…………」 一度宙にスミ〜と浮いたのち、 ドラゴンサーチをするかのごとく辺りをキョロキョロと見渡した。 すると───ガカァンッ!! 彰利 「ミツケタ」 北東……どうやらチャイルドエデンに居る様子。 中井出「見つけたのはいいけど、見つけた瞬間に鳴った奇妙な音はなんだ?」 彰利 「ドラゴンボールZスパーキングの効果音。     ドラゴンサーチという索敵能力で相手を発見すると鳴るのです」 中井出「……地界から離れて久しいから、ゲームの話とかされるとさっぱりだ」 彰利 「まあまあそがあに気にすんなや。それより……紀裡ちゃんはどないする?」 中井出「チャイルドエデンに預けてある。これでも時々お邪魔させてもらってるんだ」 彰利 「なるほど、エデンで邪魔者扱いされてるのか」 中井出「じゃなくて!!お邪魔させてもらってるんだ!!」 彰利 「邪魔なんデショ?」 中井出「邪魔じゃない、お邪魔だ」 彰利 「………」 中井出「………」 彰利 「日本語って訳解らん」 中井出「まったくだ」 邪魔とお邪魔……なにが違うんだ? 『御邪魔します』と『邪魔だ』というのは同じと考えていいのだろうか。 えーと?つまり宅の可愛い学ちゃんの家に乗り込む際、 そこには学ちゃんの領域があるわけで。 そこに入るとするならばまず許可を得るべきであり、 ……じゃあお邪魔しますってちと違うんじゃないか? むしろ入ってよいですか?と訊くのが普通では? しかも大体の人がそれ訊いて許可が出ると、入る時に結局『お邪魔します』って言うし。 なに?なんなのあの言葉。許可は得てるんだからお邪魔もなにも無いじゃん。 彰利 「どうなってんだ地球は!!」 中井出「落ち着け!!」 申し合わせも無く即座に言葉を返してくれるとは……さすが提督。 腕はまだまだ衰えていないらしい。 中井出「あぁそれとはべつに話は変わるんだがさ」 彰利 「む?なんぞ?」 中井出「晦の子供……深冬ちゃん、って言ったか?     実際に会ったことが無いから解らんけど。     あの子の身体の弱さはもう治したのか?」 彰利 「フッ……それは全員が揃ってからだと十八年前に話したじゃないですか提督」 中井出「……聞いてないが」 彰利 「あれ?」 ……おお、そういやアレは悠介に話しただけで、そもそも中井出には話してなかった。 しかも十八年前じゃあなかったし。 彰利 「まあともかく。皆様が揃わん限りは深冬ちゃんに平穏は来ないのです。     だからさぁ来いすぐ来いさっさと来い!!」 中井出「待てって、俺はもう用意は済んでるんだよ。あとは麻衣香だけだ」 彰利 「ブフゥ、麻衣香だって所帯づきやがって提督てめぇ」 中井出「うるせぇ米野郎!!───じゃなくて!来て早々喧嘩売ってんのかてめぇ!!」 彰利 「サー・イェッサー!!」 中井出「そこで元気よく返事するなよ!!」 麻衣香「お待たせー、って……なに騒いでるの?」 彰利 「やぁ」 麻衣香「?、やぁ」 スチャリと挙げた手に、挙げた手で返される。 べつに弾き合わせたりはしません。 彰利 「やぁやぁ綾瀬もちっとも変わらんね。お肌ツルツルじゃん」 中井出「だよなぁ?普通のままで十分可愛いって言ってるのにすぐ化粧するんだよこいつ」 麻衣香「可愛いじゃなくて綺麗って呼ばれたいの、わたしは」 彰利 「厚化粧(ケバイノー)」 ズパァン!! 彰利 「ウベッ!!」 正直な感想を述べたらビンタが飛びました。 ちなみにケバイノーとケライノーは無関係……というわけでもありません。 麻衣香「いいじゃない、女の子として化粧で楽しみたいって心はあるんだから」 彰利 「でも臭ッせぇええええよ?」 麻衣香「臭いとか言わないっ!」 でも臭いし……。 中井出「俺も臭いって思うんだけどさ、やめてくれないんだ。     男と女って嗅覚だけは超絶に違ってるんじゃないかって思うほどだ。臭ぇ」 彰利 「ああまったく臭ぇ。化粧作った人って愚者?」 麻衣香「人の目の前で臭い臭いってよく何度も言えるわね……」 中井出「事実だし」 彰利 「原中だし」 麻衣香「はぁ……解ったわよ、落としてくるわよぅ……」 とぼとぼと綾瀬が戻ってゆく。 彰利&中井出『オラたちのパワーが勝ったぁああーーーーーっ!!!!』 麻衣香   「妙なところで勝利に酔わないの!!」 彰利&中井出『グ……グウムッ』 怒られてしまった……。 こんな感覚も懐かしいなぁ。 やはり原中はいい。まずノリがいいし。 中井出「さてと。あとは猛者どもに連絡するだけか」 彰利 「電話の一本でも入れりゃあ     『天海さまの命により』とか言って全員で来訪するっしょ」 中井出「そりゃまあ原中だし」 それで納得出来るところがスゴイが。 彰利 「それはそうとこちらの様子はどぎゃんね?     オラとしてはそれがここで解った方があちこち飛び回らんで済むんじゃけんど」 中井出「そうか?お前ってオリバと同じで経験主義者だと思ってた。     言われたからってハイそうザマスかって納得する性格じゃないだろお前」 彰利 「グ……グウウ〜〜〜ッ」 図星をつかれてしまったのだろうか。 確かにそうでなけりゃあ空界まで来たりはせんかったのだけど。 中井出「相変わらず困ったときとか唸る時はキン肉マン系なのな」 彰利 「不思議だね、もう染み付いて取れないよ。     なんかね?もうね?驚いた時には『ゲェーーッ!』って叫んでるし、     困った時には『グムー』とか『グウウ〜ッ』とか言ってるし」 中井出「ロビンマスクって呼んでいいか?」 彰利 「ノゥッ!!人の状態の時にそげな呼ばれ方したくねぇ!     ロビンと呼ぶなら俺がロビンの時にそう呼びなされ!!」 中井出「そりゃもちろんだが……じゃあせっかくだからみんな集まったら、     お前らの結婚式の時に着た衣装を着るか?」 彰利 「ああ……あの、終わったあとに悠介が衣装を変身ベルトにしてくれたヤツ?」 中井出「ベルトって言っても腕時計だけどな。一応俺はいつでも付けてるぞ」 彰利 「実は俺も。でもねぇ、一度やると大変なことになるんだよね」 中井出「大変なこと?」 彰利 「そう……それはもう大変なことに」 アレは本当に大変なことでした。 何故って、時計に向かって『変身!』と言うと体がムキムキマッスルになって服が破けて、 さらに時計からロビンパーツが出てくるんですよ。 しっかりとロビン的に装着しないと装着出来ない仕様で。 丁度試しに弦月屋敷で『変身』と言った時に粉雪が我が部屋に訪れ、 もう俺は本気で泣きました。 さっさとパンツだけでも穿きたいのに、 最初に出てくるのはやっぱり篭手と具足だけなんですもの。 しかもそれを身に着けようと手を伸ばしても逃げるし。 だから仕方なくロビン的装着をしたらちゃんと身に付けられてねぇ。 でもそのあとは、 パンツと鎧が出てくるまで粉雪にケツ見せながら横になった状態で浮いてました。 なんで宙に浮いてるとはいえ立った状態で篭手と具足を装備したのに、 パンツと鎧が出てくるのを待っている時は 横になってケツ見せてるんだろうか、ロビンの野郎は。 そんでまあ、それもさっさとパンツを穿きたいという一心で手を伸ばしたけどさ、 やっぱりパンツが逃げるのね。 だから仕方なくやったさ。 ヒョオオ〜〜〜ッ!!て叫びながら蟹股フルチン横回転したのちに穿いたさ。 もうね、新婚生活早々あんな恥ずかしい思いしたのは屈辱的だったね。 ……などという言葉を、提督に贈った。 中井出「……お前って結局、どこでも恥は曝すんだな……」 彰利 「ほっといてつかぁさい……」 でもまぁせっかくだし─── 彰利 「よし、じゃあ俺、向こうの建物の影でロビンになってくるから」 中井出「変身した状態で行くのか?     面白そうだな、じゃあ俺もカルガラになるか。───変ッ!身ッ!!」 マカァーーーン!! 中井出「……完……了……」 眩い光とともに、一瞬にしてワイルドな格好になる提督。 そこでこのDIOは考える。 彰利 「……どうして俺のロビンへの変身だけ、あんなに時間かかるんだろうね……」 中井出「ロビンだからだろ。     恨むならあんなステキな変身シーンを描いた『ゆでたまご』を恨め」 彰利 「グ……グウウ〜〜〜ッ」 勘弁してくださいゆでたまごさん。 俺、とてつもないほど恥曝してますよ……? まあいいや、とにかく変身してきましょう。 さすがにこれ以上人前で恥を曝すのは勘弁だし。 彰利 「ほいじゃあ用意が済んだら地界に行っておいておくれ?     今は悠介の部屋に繋がってるから」 中井出「あぁ、そういえば繋げる場所を変えたって言ってたな。解った」 彰利 「くれぐれも覗いたら殺しますよ?」 中井出「警告が殺人予告になってるって」 彰利 「くれぐれも覗いたらあきまへんえ?覗いたらブッコロがす」 中井出「笑えるけど目の毒だからな。遠慮しておくからさっさと行けヒヨッ子」 彰利 「サー・イェッサー!!」 こうして僕は、心を削る変身をしに建物の裏側へと走ったのでした。
【Side───中井出】 中井出「ほんと、相変わらずというかなんというか……」 麻衣香「終わったよ、博光───ってあれ?弦月くんは?」 中井出「向こうの方に変身しに行った。     相変わらずロビン的な変身シーンらしくて、誰にも見られたくないらしい」 麻衣香「そうなんだ。でも大丈夫かな」 中井出「んあ?なにがだ?」 麻衣香「いやね?さっき裏口の窓から外を覗いてみたらさ、     篠瀬さんが向こうの方に歩いていくのが見えてね。     多分、顔を洗いに行ったんだと思うんだけど……」 中井出「さっきまでチャイルドエデンに居た筈なんだけどな……。     いつもと同じで『風』を利用して高速移動してるのかな」 麻衣香「あの距離をこれだけの時間でならそうなんじゃないかな」 ハフゥと麻衣香が息を吐く。 そんな麻衣香を見るに…… 中井出「……ん、やっぱり素のままの方が可愛いぞ」 麻衣香「うう……嬉しいんだけどさ、たまには『綺麗だ』とか言ってみない?」 中井出「……同い年の女に、しかも幼馴染に『綺麗だ』は無いと思うんだが」 麻衣香「それでも女の子としては言ってほしいものなの!」 中井出「よく解らん拘りがあると。     でもなぁ、ここで綺麗だなんて言ったらとってつけたみたいに聞こ───」 声  「うわわわぁああああーーーーーーっ!!!!」 声  「キャーーーーーーッ!!!?」 中井出「………」 麻衣香「………」 それは突然の出来事だった。 どうこう言うものでもない会話をしていたら、 遠くの方から彰利の声と篠瀬さんの声が聞こえてきた。 ……どうやら目撃されてしまったらしい。 声  「貴様こんなところでなにをしている!!恥を知れ!!」 声  「恥なんてもう知りすぎて泣けてくるほどじゃわい!もう知りたいとも思わん!!     だからちょっ───こっち見ないで夜華さん!!オイラとっても恥ずかしい!!」 声  「なっ───『さん』を付けるなとあれほど言っただろう!!     貴様はわたしを伴侶として認めたんじゃなかったのか!?」 声  「ターーーッ!!今はそげなこと言ってる場合やおへん!!     いいからこっち見───見ないでったら!!     パンツを待ちながらケツ見せて浮いてる人見て何が楽しいの!?」 声  「言い直せ彰衛門!!     わたしを伴侶として見ているならば『夜華』と呼び捨てにしろ!!」 声  「呼ぶ!呼ぶから向こう行って!お願い!!     俺ここで『ヒョオオ〜〜〜ッ!!』って言って     蟹股フルチンで回転しなきゃパンツ穿けないの!     俺もう人の前でそがあなことしたくないよ!!」 声  「訂正が先だ!!」 声  「う、うう……うわーーーん夜華ちゃんがイジメるよーーーっ!!!     タスケテーーッ!!タスケテーーーーッ!!!誰か助けてぇえーーーっ!!!」 声  「うわっ!?わわわ解った泣くな!わたしが悪かった!     というより親にもなって人前で泣くとは何事だ!貴様それでも男か!」 声  「フッ……心を許した妻の前だからこそ泣けるんだよ夜華さん……」 声  「なっ……あ、あああ彰衛門……そ、そうかぁ……彰衛門……」 …………。 麻衣香「……なんかいい雰囲気っぽいんだけど」 中井出「でもなぁ、想像してみろよ。     あの会話、彰利がケツ見せながら宙に浮いた状態でしてるんだぞ?」 麻衣香「うあ……」 ……想像してみるとなんとも笑いたくなるような状況だった。 声  「よ、よし!解ったぞ彰衛門!思う存分泣け!全てわたしが受け止めてやる!!」 声  「え?い、いやあの……僕としてはその……どこかへ行ってほしいのですが……」 声  「今さらなにを遠慮することがある!     わたしは貴様の伴侶だ!貴様の悲しみは全て受け止めてやる!     わたしはいつだって貴様の傍に居るぞ!」 声  「いやあの、だから……ね?」 声  「泣け!さぁ泣け!!」 声  「…………うっうっうっ……助けて……誰か助けてよぉ……」 あ……本泣きした。 声  「ええいもうヤケじゃああーーーっ!!見せたるオイラの百万馬力!!」 彰利はやる気だ!!(女神転生の如く) そして実行するのだろう、 あの究極の恥たるロビン流最終奥義:『蟹股フルチン横回転パンツ穿き』を。 声  「ヒョオオ〜〜〜ッ!!」 というかやった。絶対やった。声だけで解る。 声  「なっ───うわっ!?きき貴様!!なんてものを見せる!!」 声  「ヒョッ!?」 しかもその回転の際、大事なところを見られたらしい。 俺と麻衣香はもうムズ痒さを堪えて、見えもしない方向から目を逸らすだけだ。 声  「貴様……!確かにわたしはなんでも受け止めるとは言ったが、     ととと、ととっ……突然そんなものを見せられて!受け入れられるとでもっ……!     思っているのかぁああああああああっ!!!!!」 声  「ヒョオオーーーーーーーーーッ!!!!?」 ズバラシャドシュグシャズバゴシャゴパァアアアアンッ!!!! 声  「ウヒョオォオオーーーーーーーッ!!!!!」 聞こえてくる騒音に、俺と麻衣香はただ静かに十字を切った。 友よ、やはり貴様は相変わらずだった。 【Side───End】
ロビン「うう……ひどいよ夜華ちゃんたら……。     せっかくこのロビンが恥を忍んでロビン流最終奥義を実行したのに……」 麻衣香「あれ、最終奥義なんだ……」 中井出「最終奥義の名が泣くな……」 ロビン「ハイそこうるせぇーーーっ!!!」 あれからしっかりとロビンとなったこのロビン。 もはや誰にも俺を止めることは出来ん。 とはいえ、心に負った傷は相当にデカいものでした。 ……ちなみに夜華さんに切り刻まれた箇所は超人パワーで治しました。最強。 麻衣香「で……あれ?篠瀬さんは?」 ロビン「ウム。夜華、出てきなさい」 促されたこのロビンは紳士的に夜華を呼びつけた。 すると、ソロリソロリと建物の影から顔……というよりクチバシを覗かせる夜華。 というかペンギン。 中井出「……篠瀬さんも変身したのか」 麻衣香「した、というよりは……させられたんだと思うなぁ」 ロビン「ウムムム〜〜〜ッ、な、何故解った〜〜〜っ」 中井出「解らいでか」 そうかも。 ロビン 「というわけで出てくるんだ夜華〜〜っ!!      貴様の目論見は全て敵にバレてるんだぜ〜〜っ!?」 ペンギン「ななななにがわたしの目論見だ!全ては貴様がやれと言ったことだろう!!」 怒りながらペタペタと歩いてくるペンギン。 口が閉じられてるから夜華さんだとは判断出来ないが、 どうもこうも夜華さんの衣装だから夜華さんだ。 まあ……口が開いてると 夜華さんがペンギンに飲まれかけている図が見れるのはきっと変わらないだろうけど。 ロビン 「しっかし夜華さんも変わってないね。若々しいままで安心したよ。      身体を象ってる時のヒモをほどいたらあっという間に若い状態に戻った」 ペンギン「貴様と一緒に居るためだ。悪いか」 ロビン 「いえいえ悪くねぇ。むしろ嬉しい」 中井出 「更待先輩と日余はどうなんだ?やっぱり成長過程を再現してるのか?」 ロビン 「一応。まさか妻の三人ともが寿命を受け入れてくれるなんて……。      俺ってとっても愛されてる」 中井出 (ただいつまでも若いままで居たいって願望もきっとあったんだろうなぁ……) ロビン 「ウィ?なんぞ言うたかや?」 中井出 「いや、思っただけ」 ロビン 「グゥ……」 なんだってんでしょ。というかやっぱり自然に『グゥ……』とか言ってるし。 いかんなぁ、ロビンの癖……というか『キン肉マン』にでも呪われたか? べつに嫌ってわけじゃないからいいんだけど、 ふと気づくとなんだか異様に言ってるなぁとか思うからヘンな感じだ。 まあね、ほんとにどうでもいいんだけど。 ロビン「つーかさ、キミたち。     先に地界に行ってろって行ったのになんでまだ空界に居るの?」 中井出「そりゃなぁ、あんな奇妙な絶叫が聞こえてくれば気になるだろ。原中生として」 グウウ……どこまでも原中なやつらめ……。 まあ、だからこそ付き合い甲斐があるわけだが。 そうして我らはフムリと頷くと、地界への扉を開けた。 蓋を開ければ2分でナオン……じゃなくて地界。 2分もかかってないけど、とりあえずあっと言う間に地界へは降り立ったわけでした。 【ケース12:霧波川柾樹/サワヤカモーニング】 おがらじゃりりりりりりりりり!!!! 柾樹 「ん……?」 目覚ましの音にゆっくりと目を開けた。 見える景色はいつもの通り、カーテンに遮られた光が弱々しいけど逞しいだろう光を、 食らい部屋に差し込ませている情景。 俺はゆっくりとした動作で目覚ましを止めて、うんと伸びをした。 柾樹 「くぁ……あ〜あっと……」 そうしてみて改めて上体を起こすと───ある違和感に気づいた。 紗弥香「すぅ……すぅ……」 柾樹 「……オウ」 何故か超万能型世話焼きお姉さんが俺の布団で寝てました。 ───マテ、これってどういう状況? ああいやいやいやそれこそマテ、えっと……あれ? 柾樹 「ぐあ……そうだった」 そう、そうだ。 そういえば昨日、紗弥香さんが俺に抱きついたまま眠ってしまったために、 そのままふたりで寝たんだっけ……。 柾樹 「………」 思い出してみるとなんてこともないものだった。 べつにやましい気持ちなんてこれっぽっちもなかったし、 昔は散々紗弥香さんに攫われて鈴訊庵の方で一緒に寝たものだ。 今さらこういう状況になったってべつになんとも感じない。 それは多分、他の人でも変わらないんだと思う。 柾樹 「豆村や刹那に言わせれば、感性がおかしいらしいけど」 そうなのかな。 自分じゃよく解らない。 でもべつに、人生の全てが女性との事柄で決まるわけじゃない。 他の人がしたから自分も結婚したい、じゃあ義務的な感情しか働いて無いことになる。 俺は……そんなのは嫌だ。 理想論になるけど、恋だの愛だのをするのならしっかりと自分の感情でしてみたい。 ……まあもっとも、その恋だの愛だの自体のことがまるで解らないわけだけど。 柾樹 「さてと」 俺は一度紗弥香さんの頭をやさしく撫でてから、ゆっくりと布団から出た。 さすがに横になっていれば寝返りも打つようで、 既に俺の体に紗弥香さんの腕は巻きついていなかった。 ───……。 いつものように顔を洗い、歯を磨いて一息ついた。 朝食は───さすがに出来ていない。 なにせ、作ってくれる人が眠っているのだから。 でも昨日のカレーがあるわけだし、今日はそれで乗り切れるだろう。 柾樹 「みさおさんは……居ないか。帰ったのかな」 などと言いながらフローリングの床を歩いている時、 リビングのソファーの方でゴソリと動く影を見つけた。 覗いてみればなんのことはない、刹那だった。 豆村は……居ない。 帰ったんだろうな、深冬ちゃんをひとりにしないために。 柾樹 「刹那?刹那」 刹那 「んぐぅうう……郭鷺……俺の愛を受け取って……」 柾樹 「………」 物凄い寝言が聞こえた。 寝言ならこうハッキリ言えるのに、悠季美の前では上手く舌が回らない男……刹那。 こいつとの付き合いも長いけど、 悠季美のことが好きだったということを知ったのはつい最近だった。 ……悠季美の何処がいいのか、なんて、 漫画でよくありそうな幼馴染文句は言ったりはしない。 実際に悠季美は気が利くし、家事も料理以外は上手だ。 料理だって味覚音痴なだけで、 悠季美が自分で作って普通だと感じたものは美味く、美味しいと感じたものは悉く不味い。 とはいってもきちんと美味しいものの判断は出来るから凄いんだけど……。 うん、俺はあいつの良いところも悪いところも知ってる分、 刹那の人を見る目は良かったんだと納得出来る。 柾樹 「でも……」 でも、実際どうなんだろう。 悠季美の口から色恋について出てきたことなんて無い、と思う。 少なくとも俺の記憶じゃあそんなことはなかった筈だ。 それに……刹那に告白されてたなんて、つい昨日知ったばかりだ。 確かに幼馴染だからってなんでも知ってなきゃいけないってわけでもないけど、 なんとも複雑な気分ではある。 それがかつて、親の手によって許婚にされようとしていただなんて、誰が信じるだろう。 柾樹 「とりあえず俺と悠季美は否定したわけだけど」 ちっこい頃から一緒に居て、馬鹿やって、その度に怒られてた。 仲が良かったのは確かだし、一緒に居た時間は下手をすれば紗弥香さんよりも長い。 それでも互いを恋だの愛だのの対象として考えたことなんて一度も無い。 悠季美はどうか知らないけど、俺は無い。 そんな自分だからこそ、誰かが色恋の渦中に触れたとなると気にはなる。 まして、それが幼馴染だというのなら余計だ。 それでも余計な詮索をしようと思わない分、 時々自分は冷めてるのだろうかと思ってしまう。 柾樹 「……けど、確かに色恋のために生きてるわけじゃないんだよな」 そう言ってしまえばおしまいなのだ。 だから周りが『あいつが好きなんだ』とか言っててもその感情とかが解らない。 ……好きってなんなんだろうな。 刹那 「ん……んお……おお?柾樹……?何故俺の家に……」 なんてことを考えていたら、刹那が目を開けて伸びた───拍子にドゴォンと落下した。 刹那 「おごっ!?あがががが……!!」 絨毯が敷いてある床に顔面から落下だ…… 恐らく自分がソファーで眠っていたことを忘れていたんだろう。 刹那 「なんだ……?いつの間に俺のベッドはこんなに小さく……ありゃ?ここ何処?」 柾樹 「霧波川家だけど」 刹那 「なにぃいい……いつの間に裕希家は霧波川に買い取られたんだ……」 柾樹 「……刹那、まだ寝惚けてるだろ」 刹那 「…………」 柾樹 「刹那?」 刹那 「……ぐー」 寝てる……。 どういう寝惚け方なんだろうか。 柾樹 「仕方ないな……刹那、ほら刹那」 絨毯で気持ち良さそうに眠っている刹那の身体を揺する。 けれど逆にそれが気持ちいいのか、穏やかな顔ですみすみと寝息を立てる刹那。 ……困ったな。 声  「やめたまえ!そんなやり方じゃダメだーーーっ!!」 柾樹 「え?───うわぁああっ!?」 聞こえた声に驚いてババッと振り向くと───そこに仮面の男が立っていた。 ???「オオ、これは失礼。紳士ともあろう者が土足で家に入るとは。     だが解ってほしい。我が祖国では家には土足で上がり込むものなのだ。     そして人の過去にも土足で入り込み、思い出を土足で踏みにじる。     それが私、ロビン王朝の仮面の貴公子ロビンマスクだ!!」 柾樹 「………」 ムキムキマッスルな仮面男が微笑んだ気がした。 もちろん顔は仮面に隠れてて見えない。 とりあえず名前はロビンマスクでいいらしい。 ロビン「それよりキミ、眠っている人に対するやり方というものが解っていない。     いいか、私が紳士的に見本を見せるから、次からはそうするんだぞ」 柾樹 「……それよりここに何しに?     あ、いや、それより勝手に入ってこられても困るんだけどさ」 ロビン「グ……グウウ〜〜〜ッ、いいから黙って見てろってのが解んねぇのか〜〜っ!!」 見知らぬ紳士はいきなり喧嘩腰になった。 他人の家でこの振る舞い……傍若無人な紳士も居たもんだ。 ロビン「いいか少年。まず───マジックを用意する」 柾樹 「帰ってくれ今すぐ」 ロビン「ゲェエーーーッ!!?な、何故だ少年!!     私はこれからキミに紳士的な起こし方を」 柾樹 「油性マジックと寝ている人であとのことは察しがつく!帰ってくれ!!」 ロビン「グ……グウウ〜〜〜ッ!!」 柾樹 「なにがグウウだ!唸ってる暇があるなら帰ってくれ!!」 ロビン「グ……グウウ〜〜〜ッ、こ、後悔することになるぜ〜〜〜っ!?」 柾樹 「しないから帰ってくれったら……     それになんなんだ、そのグウウ〜〜〜ッって」 ロビン「グ……グウウ〜〜〜ッ」 柾樹 「………」 よく解らないけど、グ……グウウ〜〜〜ッが口癖のようだった。 ロビン「フフフ、まあいい。では紳士として貴様に忠告してやろう」 いきなり呼び方が『キミ』から『貴様』に変わった。 なんていう紳士だ。 ロビン「今からこの町にひとつの集団が訪れる。もちろん、友の里への客人だ。     そして弦月彰利と晦悠介の知り合いでもある」 柾樹 「……いや、それよりあんたは悠介さんと知り合いなのか?」 ロビン「ロビンだからな」 答えになってない。 ロビン「まもなく友の里は我々超人軍団に占拠される!ボスはCP9」 柾樹 「シーピーナイン……?」 ロビン「まあとりあえずそれを言いに来ただけだからこのロビンはこれで失礼する」 柾樹 「え?な、なんなんだよ、なにがしたいんだ?」 ロビン「………」 ロビンマスクとやらは突然、刹那が使っていたらしい毛布を顔に被り、俺を見た。 ロビン「ねずみ男」 柾樹 「………」 ロビン「じゃあな」 柾樹 「お、おい待てよ!」 訳が解らなかったが、 やりたいことはやり終えたのか毛布を投げ捨てたロビンはさっさと走り去ってしまった。 ……真意は別として、なにをしたかったのかはまるで謎だった。 あ、じゃあそれが真意ってことか。 柾樹 「……朝だからな」 頭が上手く働いてくれない。 なんにせよ、早く食事とらないと。 Next Menu back