───提督バトル/ペテルギウス愛───
【ケース230:晦悠介/望む望まぬに関わらず、天災はいっつも空から来る】 ツ……コクン。 悠介 「はぁ……静かだなぁ……」 俺の部屋以外は。 今もドンパチやってるのは一体どういうカオス的状況故なのだろうか。 そもそもあのルシファーはいったいなんなんだろう。 誰かがヒロラインの時の回廊で契約して召喚でもしたのか?  メゴシャアーーーン!! 声  『ホギャーーーーリ!!』 などと離れた場所を眺めていると、ふと降ってくる黒いアイツ。 少し離れた場所に落下、バウンドして俺の足元まで転がってきたソイツは、 俺の良く知る黒いガイだった。 悠介 「よー。青春ブッ飛んでんな、相変わらず」 彰利 『どーいう意味かねそりゃあ!!あー、って、そんなことはどうでもいいんだ。     構えるのだ悠介!ヤツが来る!!』 悠介 「知らん。俺は戦わんぞ」 彰利 『うるせー!いいから構えろコノヤロー!!ヤツが───来たァーーーッ!!!』 悠介 「!?」 彰利の視線を追い、蒼空院邸を見上げると─── なんと割れた窓の先から中井出が降ってくるではないか!  ゴォッ───ドゴォオオオオンッ!!《ベキョリ》 中井出「ギャアーーーーーーーーッ!!!!!」 そしてどうやら足が折れたらしい。 馬鹿だなー、蒼空院邸は他で言う階層よりも一階の位置が高いから、 普通から言えば二階から飛び降りるだけで四階分の高さを味わえるってのに。 つーかなんで飛び降りてきたんだ?この男は。 中井出「アァア〜〜ッ……オヮァ〜ゥハハハァ〜ゥ……!!」 しかも折れた足を見ながら、ザ・グリードの足折れ外国人の真似して唸ってるし。 悠介 「……どうしたんだ?こいつ」 彰利 『ルシファーさんに魅了されました』 悠介 「魅了……」 中井出「アァ〜〜ゥハハァ〜ゥハァ〜〜〜……!!」 悠介 「………」 魅了されてるくせに、なんて中井出なんだお前は。 さすが中井出だ。 彰利 『……レベルは高いけど、なにもこんなところで人間っぷりを発揮せんでも……』 悠介 「あのさ。俺、茶飲み再開していいか?」 彰利 『あ、俺にもくれ。よっ……と。オーダー解除、と」 黒を解除した彰利にカップを創造して渡し、そこに紅茶を入れてやる。 イセリアによれば櫻子さんは外出中らしい。 なんでもお年寄りの会とやらに出かけているらしい。 そういえば時々、ひょいと居なくなる時ってあったよな。 ノート『正直どうでもいいのだがな、マスター。そこの男は放置するのか?』 悠介 「知人の苦しむ様を肴に飲む紅茶……結構じゃないか」 彰利 「お前って時々ひでぇこと言うよな……」 ノート『だがな。痛がっているのは今だけだぞ?弦月彰利が武装を解除した。     つまり戦闘条件が揃っていない。     それは相手に自動回復の機会を与えることに他ならない』 彰利 「あ」 中井出「クゥーーーーーガァーーーーーーッ!!!」 なんと中井出が起き上がり、仲間になりたそうにこちらを見ている!! あぁもちろん嘘だ。ありゃ思わず人をコロがしちゃいそうな危ない目だ。 しかも両手に煌く巨大剣があまりにも凶器じみてて性質が悪かった。 悠介 「彰利よぉ……お前またヘンなことしたんだろ」 彰利 「なんでそこで真っ先に俺を疑うかね!!違うっつーの!     さっきも言ったように中井出がルシファーに魅了されて暴走中なだけだ!!」 悠介 「へーほーそうかじゃあ頑張ってなー」 彰利 「ちょっとキミなに傍観者気取ってんの!今すぐ立って構えろコノヤロー!!」 悠介 「知らん。俺は俺の生きたいように生きるって決めた。     大人ンなってからの我が儘だ、笑って見逃せコノヤロー」 彰利 「むぅ、散々面倒ごとを押し付けてきた僕からすれば正当な意見。     だがダメだね!!面倒ごとはやっぱキミに任せる!枯渇するまで挑めよ少年!」 悠介 「それ、シャレになってないから勘弁してくれ」 彰利 「へ?」 中井出「ヘグレヴァアアーーーーーーッ!!!!」 ヴゥオバゴォッシャアアアンッ!!!! 彰利 「オワァーーーイ!!?」 振るわれた剣を、彰利が咄嗟に出したルナカオスで受ける!! つーか彰利の足が地面に沈んだ。 しかもブラックオーダーは秘奥義だからもう使えないらしい。 戦闘体勢解除したからってすぐ使えるわけじゃないのは辛いところだな、うん。 それに相手がヒロラインステータスで立ち向かってくるなら、 彰利自身もその範囲で戦わなけりゃ気が済まないらしい。 変わったもんだよな、こいつも。 彰利 「しまった!     そういや最初中井出がマグニファイ使ってから既に10分経過してる!」 うん?ということは───なんだ? 彰利 「ということはまたあのよく解らんが光り輝く、     しかも一撃目だけ威力がデタラメに強い攻撃をされることも───!?     あ、でも魅了されてんだし、マグニファイなんて使わな───」 ジャァッキィンッ!! 彰利 「使ったァーーーーーーッ!!!!」 中井出「シュガァーーーーーッ!!!」 彰利 「砂糖!?い、いやともかく!!」 彰利は俺の後ろに回り込み、俺を盾にした!! 悠介 「へっ!?いやおいっ!!ちょっと待てえぇえーーーーーーーーっ!!!!」 ギシャゴバァォオオオンッ!!!! 悠介 「ぐぅあぁああああああっ!!?」 彰利 「キャーーーーッ!!!こ、これが157レベルの力か!!     なるほど!この要素ならばカラーレンジャーの人々が強かったのも頷ける!!」 悠介 「冷静に分析してんじゃねぇえーーーーーっ!!」 咄嗟にセット唱えて、創造した武器で弾いたが───思い切り吹き飛ばされた。 もちろん後ろに居た彰利もだ。 どんな腕力だよ、まったく……。 中井出「キルキルキルキルキキルキル……!!     ボクハコノ世界ガ大好キデシタ……!!」 悠介 「誰に向けて言ってんだよそれ!!この世界滅ぶのか!?」 中井出「ハゴゲェエーーーーーーッ!!!!」 悠介 「チッ───話聞くほど正気が残されちゃいねぇか……!!よし行け彰利」 彰利 「えぇっ!?どうしてそこで俺なん!?普通こう来たらなし崩しにキミが!!」 悠介 「俺、自分が“必要だ”と思う時以外、バトルしないことにしたから」 彰利 「今必要だよ!!今こそ立ち上がるべきでしょ!!スタンダーーーップ!!」 悠介 「やだ」 彰利 「即答!?《ゾゴフィィン!!》ギャアーーーーーーーッ!!!!」 俺に気を取られていた彰利が、腕を容赦なく攻撃された。 だが咄嗟の体捌きが功を奏したのか、腕が切り落とされることはなく避けきった。 彰利 「あ、あぶっ……!!あぶねぇ……!!《ドクンッ……!!》ウグッ!?     こ、これはどうしたことだ……!?体が急に毒と麻痺に侵され……!?」 悠介 「ホーレ頑張った頑張ったぁ。     大体、力をノートに預けてある俺になにを期待してんだお前は」 彰利 「どうせヒロラインでも鬼のように強くなってんだろー!?ちったぁ助けろよー!」 悠介 「いや、弱いぞー。弱いから頑張れー」 彰利 「うわすっげぇ適当な言葉!!いーよいーよなんだよもう!!     だったらそこでせいぜい見とけやー!!     今からこの俺がこのエロマニア提督をボッコボコのギッタギタにしてやっから!」 悠介 「おー、頑張れー」 俺はルナのような能天気な返事を送り、 やがてのそのそと回復しだした精霊達とともにティータイムへと移行した。 はぁ、このそよ風のなんと気持ちのいいことよ……。 【ケース231:弦月彰利/フカヒレとカニの上下関係のコト】 とはいったものの……ゾギィン!!ガギィン!!ゴギィンッ!!バギィインッ!!! 彰利 「キャッ……キャーーーーーッ!!!!」 強ェエ!!鬼強ェよ中井出!! 毒と麻痺は獣人軟膏でとっとと治したけど───!!それでも普通に戦いづれぇ!! つーかあんなデッケェ武器を片手で、 しかもオモチャのエア木刀振るうように軽く振り回す彼は何者!? 一応獣人ナックル+96で弾いてはいるけど、その度に吹き飛ばされてるよ俺!! くそぅ、こんなことならもっと武器にもレベルにも気を使うんだった!! 彰利 「な、なんの!拳の方が突きなんだから速い筈さ!!     そんな巨剣を振り回す速度に、物理的に負けるわけが無い!!」 ならばこそ!防御を無視した力と速さの勝負!! 彰利 「オラオラオラオラオラオラァーーーーーッ!!!!」 ビュボボボボボボゴガギギギギギギギギギィイイインッ!!!! 彰利 「ギャア速ェエーーーーーーーーッ!!!!」 あ、ある日ゴリラは閃いたニャーーーーッ!! デカくて速くて強いこと!!これだけ揃えば負けは無いと!! これってまさにその通り!? しかも一撃一撃が重すぎて腕がイカレそうだよちくしょう!! さらに攻撃当てようにも拳を伸ばすと中井出を包んでる炎が俺を燃やすんですよ!! ───こいつマジで強ぇえ!!こんな馬鹿な!この俺が中井出に圧されるだとぅ!? 彰利 「み、認めねー!!俺は月の家系の重みを一身に背負い、     それでも尚運命に抗い続けてここに至った修羅!!     貴様なァアアアんぞにぃいいイイーーーーーッ!!!」 あ、ヤバイ。自分で言ってて、これって負けパターンだって思った。 だからせっかくだし、三流のザコのように跳躍しつつ、 彰利 「死ねぇーーーーーーっ!!!」 と叫び、軍曹さんの気持ちを噛み締めながら─── 僕はかつてのクラスメイツにボコボコにされた。 ───……。 ……。 中井出「……りゃっ!?お、俺はなにを!?」 ややあって、彼が正気に戻ったのはあと一息で俺の首が宙に舞う程度の境だった。 おお、首から血が出てる。 あと一センチで頚動脈いってたね、こりゃ。 中井出「おお彰利一等兵、貴様人の足元でなにやっとるか。五体投地?」 彰利 「ンなわけねーだろ!!いーからそのジークムントどかしんしゃい!!」 中井出「おお?これはいったい……つーかなんで俺庭に居るんだ?」 彰利 「覚えてないのね……」 くそ、これだから操られてたヤツは性質が悪いんだ。 操られてた時は外道だったくせに、 正気に戻ると“ボク知らない”って爽やかに言いやがる。 むかつくよなー、殴りたくなってくる。 うん、つーか殴ろう。 中井出「《ボゴシャア!》ウベルリ!!」 ふうスッキリ♪ 気も晴れたしとっととルシファーをブッコロがさねば!! 彰利 「しっかし壊れ放題だなぁ〜……スッピーの障壁なんの役にも立ってねぇじゃん」 ノート『外部からの知覚障害を障壁として張っただけだ。     この敷地内に入らない限り、家は壊れているように見えることは無い』 彰利 「ああ……そういうこったか」 それならば安心して暴れられるってことさね!! 俺と中井出はウムスと頷くと、 STRをマックスにしてドイルさんのように地面を蹴って一気に二階まで辿り着いた! 彰利    「みなさん無事かね!?この俺が来たからにはもう安心!!        ルシファーなんてボッコボコ───」 丘野×100『“龍虎ォッ───滅牙斬”!!』  ギギィッシャゴッバァアォオオオンッ!!! サタン『グッ……オォオオオオオッ!!!!』 彰利 「キャーーーーーッ!!?」 辿り着いた途端、眩いばかりの衝撃波が景色に散った。 つーかいつの間にか敵が魔王ルシファーじゃなくて大天使サタンになってる。 凍弥 「彰衛門!そっちは大丈夫だったのか!?」 彰利 「おや小僧。これどういう状況?」 凍弥 「いや……よく解らないんだけど、     攻撃力+10%の剣閃乱舞でなんとかルシファーを撃破したと思ったら、     いきなり九頭竜っていうのが出てきてさ」 彰利 「クズリュウ?」 藍田 「ああ。ルシファーに比べりゃ雑魚も雑魚、大雑魚だった。     状態異常魔法あっさり喰らうわ、混乱して自爆するわで。     まあ一応俺がトドメ刺したんだけど───次はいきなりサタンだ。     しかもこれが滅茶苦茶強くて───」 ゴギィイイインッ!!!! 丘野 「ヒギャアーーーーーーーッ!!!!」 ザムゥ〜〜……丘野が何かをされ、倒れ伏した! しかも分身が一斉に消えた! 藍田 「あっ……やべっ!!」 丘野 「《ピキーーーン♪》ふっかぁーーーーつ!!」 藍田 「あ……なんだ。如来像使ってあったのか」 彰利 「……何事?───って思い出した」 サタンの野郎はルシファーと違って、確か“神の裁き”って即死能力と、 “ムド”という女神転生名物の即死魔法を使ってくるんだった。 つまり丘野くんは先ほど即死に導かれ、 だが如来像を予め使っておくことでリレイズ効果を得られたということでしょう。 しかしそれも能力を解放しているから。 ヒロライン能力解放時じゃない時に如来像使っても、絶対に死ぬ。 彰利 「よっしゃ!バトルも終わって秘奥義がリセットされた俺の能力を見よ!!     “影鎌繰り殺ぐ闇黒の秩序(アンリミテッドブラックオーダー)
”!!」 中井出「よっしゃ俺も!ストック解除!武器はしっかり二刀流!!」 僕と中井出くんに力の奇跡が舞い降りる!! さあ潰そう!それはもう一気に!! 彰利 『悪いがとっとと終わらせる!!これであの世へ送ってやる……!!     ビッグバンッ……かめはめ波ァーーーーッ!!!』 中井出「だったら俺も!───吼えろ!黄竜の波動!!“極光吼竜閃(レイジング・ロア)”!!」 ギガァッ!!チュゥウウウウンッ!!! 俺の黒い掌から黒い極光が! 中井出の紅蓮蒼碧の両手剣から金色の極光が放たれる!! 彰利 『ゲゲェ!?中井出、貴様も!?』 中井出「ゴワァアアアアアア!!!!これやっぱマジでキツイ!!     HPが!!TPが削られてゆくぅううううっ!!!!」 ……?なにやらキッツイ使用条件があるらしく、みるみるうちに中井出が弱っていった。 ───だが! ギガガガガガガォオオオンッ!!!! サタン『ギッ……!!馬鹿な!!     この大天使サタンが……!!───あぁあああああっ!!!!』 ガォオオンッ!!───……シャァアアン…… 彰利 「ぷっは……!!は、はぁあ〜〜……」 ただ息を深く吐いた。 ヒロライン能力とはいえ、最大限まで全力で放つと流石に疲れる。 俺はサタンが吹き飛んだことを確認すると、ゆっくりとブラックオーダーを解除した。 そして隣を見てみると─── 中井出「おわがぁ〜〜〜〜〜……《ドシャア……》」 奇妙な声を発しつつ、ドシャアと倒れる中井出が確認できた。 彰利 「おお中井出が……。だが!!僕らはとうとうやったのだ!!     サタンを!あのルシファーを!姿を見れんかったが九頭竜とかいうやつを!!     見事に倒してみせたのだーーーっ!!!」 総員 『ハワァーーーーーッ!!!』 彰利 「あれ?でもサタン様って随分あっさり死んだね?」 藍田 「いや……あっさりじゃねぇって」 柴野 「そうよ?今ので倒せたのって、そりゃあ技の威力もあっただろうけど───     丘野くんがストックの許す限り、分身無月散水を使いまくったからだもん」 藍田 「アレの威力は俺もよ〜く知ってる。     けど何度喰らっても死ななかったのには本気で唖然としたよ───あ」 彰利 「へへーん、でも結局は倒しただろーがー!!     まあせっかくだしこの部屋を直すついでに墓でも作ってあげよっか!」 声  『───貴様らの墓をか?』 総員 『───ざわ……!!』 勝ったと確信し、気を緩めた瞬間に聞こえる声! 見上げてみれば、空に浮かんでちょっぴり焦げて今が食べ頃なサタンさんが。 いや、ちょっぴりどころじゃねぇな、かなり焦げてる。 しかも───あらら。 サタン『まったくやってくれる……!!だが貴様らの快進撃もここまでだ!!     受けよ、我が最大の───』 藍田 「“粗砕”(コンカッセ)!!」 バゴシャドッガァアアアアアンッ!!!! サタン『ゲハァアアッ!!?』 宙に浮いたサタンの、さらに上空に跳躍していた藍田が超速回転カカトをブチかました。 そういや俺との会話の時に空見上げながら“あ”とか言ってたな……。 もしかして俺達より先に気づいてた? などと思っていた時、サタンが憤怒の表情で血管ムキムキにさせながら起き上がろうと 藍田 「“串焼き(ブロシェット)ォオオーーーーッ”!!!!!」 ドォッゴォオオオオオオオンッ!!! バギョメギョバゴシャベゴシャドゴォオンッ!!!! ……ガラガラ……バキッ……ゴシャッ…… 彰利 「あー……」 サタンさんが起き上がろうとしたのは確かだった。 けどその無防備な背中に、藍田くんの錐揉み足落としが炸裂してしまった。 そこからはまるで、ルフィにやられたアーロンの如く床を突き破って階下まで落とされた。 しかも穴を覗いてみれば……塵となってゆくサタンさん。 彰利 「………執事?」 ヤバイよコレ……中井出パーティー強すぎだよ……。 蹴りだけでなんつー威力だよ……。 あんなん喰らったら死んでまう……!!  ピギギィイイイイピピピピピピピピンッ♪《レベルが上がった!!》 彰利 「おおっ!?」 やった!なんだかんだでバトルに参加してた甲斐があった!! レベルが───フオオ!!10も上がってる!! すげぇや!流石は天下の大天使と魔王様だ! あと九頭竜。 もうこんな嬉しいことはないね!! 彰利 「むう、こりゃ是非ともこんな事態を巻き起こしてくれて、     しかもトドメを刺してくれた彼に礼がしたい」 そう思ってアイテムでもトレードすっか……と開けてみたバックパックには、 イーヴィルバーグさんに貰った自称・宝の錆びた塊。 獣人鍛冶屋に頼んでみても、こんなもんはガラクタだと一蹴されたものである。 ……やっぱ皮肉だったんだよね、きっと。 よし。 彰利 「おーい藍田くんやーい!!これやるー!!」 俺は下に居る藍田くんに錆びた塊を放り投げると、満足気にムフゥと頷いた。 皮肉として受け取ってくれたでしょうか。 それとも僕のその心意気だけ受け取ってくれたでしょうか。 しかしどれも違うようで、藍田くんはマジで真剣にお礼を言っていた。 ……アレ? あー……まあいいや、とりあえずここ直さんと。 そんなわけでオイラは皆様を促し、庭へと降りてもらったのでした。
【Side───藍田くん】 錆びた塊を受け取った俺は、本気で弦月に感謝の言葉を贈っていた。 何故ならば、ヒロラインにおいてこういうブツは磨けば必ず光るものだからである。 それを知ってか知らずか、こうやってくれるというのだから。 お礼を言わないわけにはいかない。 いや……多分知らねぇんだろうなぁ。 まあそれはそれとして、他にも嬉しいことがあった。 サタンを倒した時、ガーディアンがパワーアップしたのだ。 同じ大天使族を倒したからなのか、はたまた別の理由があるからかは定かではないが…… あ、そういやどっかでサタンとメタトロンは同一視されてるって情報を見たような…… もしかしてその所為か? 藍田 「それから……これか」 バックパックを開き、もうひとつの“嬉しいこと”を見た。 “九頭竜の勾玉”───いわゆる戦利品ってやつである。 どんな効果があるかは謎と表示されているが、 所持していればきっといいことがあると書かれている。 手放すわけにゃあ……いかないだろ? だってしゃあないじゃんかよぅ。 具足……つーか防具に秘奥義なんて隠されてるわけねーし、 提督や丘野がビシバシ秘奥義使ってンの見てると寂しくなるんだよ。 俺だって男だしゲーム好きだし秘奥義好きないたいけな原中生徒ですよ? あんな、使ったあとに瀕死になるような秘奥義よりもっとステキなの欲しいじゃん。 だからこれが何かのきっかけになればいいと思うんですよ俺的には。 そりゃな、蹴りは素晴らしい。 かの有名な海賊コックさんやコンバットバトラーさんだって蹴りを愛してる。 口では言わないがきっと愛してる。 だが俺もいい加減、ブロシェット以外のキメ技が欲しいわけですよ。 あんな超自爆技な秘奥義じゃなくてさ。 あれホント死ぬよ?当たりどころ悪いと。 藍田 「……ま、いいさ」 ゲームの中でだけヒーローになれる、なんて夢物語はここだけの話だ。 それを使って地界人を馬鹿にしようだなんて腐っても思わないし、 そもそも俺達は健全に楽しいことを探求する猛者だ。 楽しいことを探し、それをみんなで分かち合うことを目的としている。 一人はみんなのために。みんなは一人のために。 時にやさしく時に厳しく、時に情に厚く時に軽薄に。 蹴落とす時は容赦なく蹴落とし、だがそれも猛者の内でだけだ。 そんなざっくばらんな情景が好きだからいつまでもつるんでいたいって思えるし、 ひどく居心地がいいから笑ってもいられる。 俺は、そんな原中が大好きである。 いや、そんな原中だからこそか。 藍田 「いつまで馬鹿やってられんのか、ねぇ」 気持ち、解るよ。晦。 これが夢だとしたら、目覚めてもまた同じ夢を見たいって思えるくらいだ。 さぁてと、敵も倒したことだし、まぁた馬鹿でもすっかねぇ。 ……その前にこの壊れた屋敷をなんとかしなきゃならんのだろうが。 精霊たちはグロッキー状態なんだよな。 誰が直すんだろ……やっぱ俺か?自慢じゃないが俺は大工仕事は壊滅的に苦手だぞ。 大工サークルに入ってたものの、腕の方はまるで不器用だったし。 【Side───End】
……ヒタリ。 彰利 「あー、えー、そんなわけでー!     皆様揃って庭に出たことだし!これより月癒力で建物を直します!!」 清水 「ははははは」 岡田 「そイでさー」 彰利 「キミらちったぁ感心持ちましょうよ!!」 くそう俺も爽やかに誰かを無視したかった! ……どういう羨ましがりかただ?まあいいコテ。 彰利 「祓いたまえ清めたまえそいや〜」 シャキィンッ!!───蒼空院邸が復活した!! 彰利 「ウフフ、やっぱり死神の鎌に頼りきりになってしまったボクでも、     まだまだ月操力は衰えてねィェ〜〜〜ッ!!」 中井出「ロン。ヒヒヒ……」 藍田 「これ孔明、少しは手加減せよ」 彰利 「ペーパー麻雀やってんじゃねィェーーーーッ!!!人の話聞けコノヤロー!!」 中井出「いやすまん、やっぱさ、ヒロライン内では会う機会も無かったし。     だからこうしてみんな集まると、まずはしゃぎたくなるだろ?」 彰利 「そーいうこと言ってんじゃない!俺を抜いて騒ぐなと言ってんだー!!」 藍田 「正直なやつだな……」 彰利 「ちなみに俺麻雀知らんから別のしよ?」 藍田 「そして我が儘だ……」 彰利 「ほっとけー、コノヤロー」 そんなわけで、またいつもの戯言劇場。 おお民よ、人よ。 今一時、願わくば永劫に虚言を謳う亡者となれ。 それが、俺が嫌うもの以外のなんであろうが退屈が去るならそれでいいや僕。 ───……。 ……。 そんなわけで僕らは適当な地界の日々の中に戻っていった。 俺は───遊びではなく、レヴァルグリードの解放を。 悠介は紅茶を飲みながら緩やかな風を受け、穏やかに笑っている。 あれで集中してるらしい。 時折手の平の上に黄昏を創造して、目を閉じて笑顔を作っている。 中井出たちはそれぞれの実家を見に行っているらしい。 実家っつーか、家庭っつーか。 “自分が死んだことになっている”猛者どもの家へ見物しに行ったのだ。 野次馬根性というか、まあやっぱり気になるよな。 自分の都合でとっとと死んだことにしたんだ。 残された子供はいい迷惑だ。 彰利 「まあ俺にゃあ関係ないことだけど」 宗次と母さんはなんだかんだで死んで当然の人達だった。 宗次はあんなヤツだったし、母さんはそんなあいつを愛した時点で終わってた。 産まれてこれてよかったと思えることは事実と唱えよう。 でも、母さんがあいつと出会ったことは間違いだと声を高くして言える。 あの人は馬鹿だ。 死んだ人を悪く言うのは罪か?そんなことはない。 そういう生き方をしてしまったなら、それはその人自身の後悔となるのだから。 彰利 「さーて、櫻子さんも居ないし……どうすっかね」 今は弦月屋敷に戻りたい気分じゃない。 かといってこのままここに居るのも退屈……ウーム。 ここはひとつ、悠介とくだらない会話でも───……無理だな。 “何人たりとも俺に近づくなオーラ”出してる。 なんだかんだ言って、悠介の微・人間嫌いなところとかってスッピーに似てんだよね。 スッピーの場合、素直に嫌いなんだが。 そういうところってルドラが体の中に居るうちにダウンロードでもしたんかね。 彰利 「あー、よし決まり。今まで避けてた分、妻たちとの時間を大切にしよう。     つーわけで───夜華さーん?」 ………………ドタタタタタタタタタズザァーーーーッ!!!! 夜華 「はっ、はぁっ……!!よ、呼んだか彰衛門!     仕方のないやつだなぁ!わたしが居ないとそんなに退屈か!!     よし!それじゃあ剣術の稽古をつけてやろう!     我流を目指すにしても型を知るのはあとあと役に立つぞ!!」 彰利 「え?え、あ、うん……そうかもね……?」 僕、いつ退屈だなんて言ったっけ? あれぇ……?記憶力衰えたかなぁ。 でも夜華さん物凄く嬉しそうな顔して言ってるし。 やっぱ俺が間違ってんのかな……あれぇ? でもまず。 彰利 「これ夜華さん?廊下は走るものじゃございませんよ?」 夜華 「なに?そんなもの知るもんか。     わたしにとってはその、ききき貴様の呼び出しのほうが……大事……」 彰利 「え?なに?」 夜華 「な、なんでもない!!いいから外に出ろ!ああ木刀はわたしのを使うといい!     少々使い古したものだから握る部分にわたしの手跡が出来ているが気にするな!     外は暑いからな、麦茶を用意してから出よう!     ああそういえば小腹も空いたな!     春菜が冷蔵庫に櫻子さん特製のおやつがあると言っていた!     それも持っていこう!多少行儀が悪いが、なに!     わたしも過去の時代では母上や鮠鷹、楓さまとよくやったものだ!」 彰利 「え?あの?」 い、いかん。なにやら夜華さんが異常にハイテンションだ。 こりゃ何事?あ、ああまあ、家族サービスを実行するならこれくらい笑顔で流すべきか。 彰利 「よっしゃあじゃあ剣術やろう!」 夜華 「よし!基礎から教えてやるぞ!あっははははははは!!」 彰利 「だっ───」 夜華 「だ?」 彰利 「だ、だだだだー……ダルセーニョって知ってる?」 夜華 「……?すまん、解らない」 彰利 「剣術で有名な国なんだけどね」 夜華 「そうなのか。それはいいことだな。剣術は心を尖らせてくれる。     精神を鍛えるなら剣術が一番だ」 キミのは刀術だけどね。 いやぁやべえやべえ、いきなり笑い出すもんだから『誰だてめぇ』って叫びそうになった。 夜華 「よし、麦茶もおやつも持った。庭ももう目と鼻の先。さあ彰衛門、木刀を持て」 彰利 「ほいほい」 木刀を持って、黒で取り込んでから黒木刀として取り出す。 もちろんオリジナルは夜華さんに返すが。 夜華 「……便利なものだな」 彰利 「一度取り込めば黒が覚えてくれるもんで」 無機物食っても美味くないし。 ……ってヤバイねこの発現。思考回路あたりからして既に悪魔的だ。 夜華 「よし庭だ。さあ基本の型から始めようか。     あぁほら彰衛門、早く構えるんだ、こう」 ヤバイDEATH先生。 この人すげぇ輝いた顔で指導しようとしてるよ。 二次元アイで見ると、夜華さんの周りに感激の星が輝いて見えそうだ。 そしてその輝きはきっと、彼女が満足するまで俺を逃がしはしねーのでしょう。 夜華 「これが飛燕龍の型だ。ここからそれぞれの刀技へと身を滑らせてゆく」 彰利 「ふむふむ……こう?」 夜華 「違う。身を滑らせろと言ったろう。     体の捻りを速度に変え、刀、または鞘を振るうんだ」 彰利 「ふむふむ……こう?」 夜華 「もっとだ。見せるためとはいえ、ゆっくりやる必要はない。     一度思いっきりやってみろ」 彰利 「オーラァイ!!滅びよ我とともに在り……!!“魔人冥黒結界”(ロードオブデスラインゲート)
!!」 影から全ての鎌を取り出し、レベルアップとともに六枚に至った漆黒の翼を生やす! もちろん景色は庭の風景から一転、冥界の姿に……!! 夜華 「なっ……う、うわわわわ……!?」 彰利 『ではいきましょう!!超思いっきり!!ビッグバン飛燕龍-凪-!!』 重心を低くし!鞘を腰にぴったりと付け!! 身体を渾身に捻ると同時にこれを加速と為す!! そしてその速度が一番ノったところで、腰から鞘を抜刀するかのように鞘を閃かせる!! キュオルヴォオンッ!!! すると捻り切れんほどに渦巻く大気!! 九頭竜(くとうりゅう)の力は次元さえも滅ぼしかねねーってことですか!? 彰利 『どう夜華さん!型きっちりして───キャーーーッ!!?』 なんと!マジで捻り切れた次元の狭間に夜華さんが飲み込まれていった!! 俺はすぐさま月空力を展開すると、時空を彷徨う夜華さんを救出してため息を吐いたとさ。 ……もちろんその日、俺は激怒した夜華さんにボコボコにされた。 Next Menu back