───ザ・グレイトバトル/ナックルアーチ───
【ケース234:弦月彰利/空を自由に飛びたいなぁ……ドラえもんに頼らず】 ───……。 彰利 「FUUUUM……」 今日の鍛錬終わり。 夜華さんも怒って弦月屋敷に戻っちゃったし、 俺は俺でそれからレヴァルグリードの力の解放をずっとやって、 今日はこれまで〜ィと判断したので終わり。 六枚以降はまだ増えない翼がもどかしい。 真穂 「弦月くーん、そろそろ夕飯だよー」 彰利 「ほいよー。って、ここで食って行くん?」 粉雪 「晦くんが“メシ用意したから、ここに居るヤツは食ってけ”って」 彰利 「おお、そりゃ気前がええやん」 自分の味に慣れてる分、俺は悠介の料理の味が好きだったりする。 まあ出てくるもの大半が和食なのは時々悲しいが。 でも和食だけはどうしても勝てん。 彼の倭に対する情熱……ありゃ普通に感情として判断していいと思うんだが。 ……まさか砕かれた感情の中で残ったのが“愛国心だけ”なんて言わないよな? まあいいや、ともかくメシだ。 彰利 「そういや櫻子さんはまだ戻ってないん?」 真穂 「うん。晦くんも呆れてたけどね。     たまの旅行か集いかなんかなら思いっきり遊んでくるべきだ〜って、     最後には笑ってた」 そかそか……櫻子さんはまだか。 あの人、あれで結構奔放だからな。 ここに居る時はこれでもかってくらい構ってくるけど、 そういう物事から解放された時の櫻子さんは本気でスゴイ。 ……ありゃ一昨年の秋だったかなぁ。 何気なくいろんな場所巡って、名所系の和菓子やらなにやらを買い漁って食ってた時。 ふと寄った旅館で鬼スピードで卓球やってる櫻子さんの姿を見た。 時々思うんだが、あの人は本当に老人なんだろうか。 あれじゃあむしろ強盗ごときに殺されたこと自体がウソに思えてくる。 彰利 「まあいいや。メシはどっち?庭?中?」 粉雪 「庭だって。夏だし、虫なんて一切寄ってこないから運ぶの手伝ってくれって」 彰利 「ほいりょーかい。夜に庭でメシなんて粋だねぇ。     寿司屋がお任せで握ってくれた時、一番最初にコハダが出されるくらい粋だ」 真穂 「その判断基準は?」 彰利 「クロマティー」 詳しくは“アニメ・魁クロマティー高校/ゴリラの寿司”をどうぞ。 などと思いつつ蒼空院邸に入り、 奥の立派なキッチン(一流レストランの厨房レベル)にまで通り、 悠介に一声かけてから料理を庭に運ぶ。 やはり和食中心だったが、それでもこの鼻腔を擽る香りは否が応にも腹を鳴らした。 ……つーかさ、量が異常じゃないかね?───あ、幻獣たちの分か。 “それが終わったらここに居るやつら全員集めてくれー”との言葉を受けつつ、 俺は作業を続行するのでした。 ───……。 ……。 ややあって…… 彰利 「イタダキマァ〜ッスェ」 全員 『いただきます』 彰利 「………」 みんなが復唱してくれなかった寂しさを噛み締めつつ、庭での食事は開始された。 彰利 「ところで悠介?外で食べるのに和食が中心ってスゲー違和感あるんだけど」 悠介 「そか?」 彰利 「ホレ、やっぱ庭で食うっつーたらヴァーヴェQとか」 悠介 「なんだ、肉が食いたいのか?     ミノタウロスの肉で良かったらいくらでも創造するが」 彰利 「や、そーゆーんじゃなくてさ。ほら、なんつーの?     夏の夜で庭。と来たら、河原でもないかぎりバーベキューでは?」 悠介 「よく解らんがそうなのか?まあいいや」 悠介はフムと頷くとパチンと指を弾く。 すると広い庭に設置されたテーブルの幾つかがバーベキュー用の大型土台に変わる。 皿や料理はそれぞれ備長炭や食材に変換され、ゴタタッと音を立てて収まる。 彰利 「うおう……って、こんな簡単に変換出来るなんて、     スッピーから力返してもらったん?」 悠介 「いーや?ヒロラインで手に入れた分程度しか力はないぞ」 彰利 「………」 なにかコツでも手に入れたんかね。 まあいいや、今は肉だ。 粉雪 「あっさりした晩御飯が一気にゴテゴテしくなった……」 彰利 「えーやんたまには」 真穂 「むむむ……わたし結構晦くんの和食好きなのに……」 彰利 「和食なら俺が作ってやる!他の男の料理なんか褒めんじゃねー!!」 悠介 「おお、いつになく独占欲が強いな」 彰利 「や、一度言ってみたかったんで」 悠介 「いや。お前はそれくらいでいいと思うぞ?     もっと自分の連れ合いに気ィかけてやれよ」 彰利 「いやぁ……キミにだけは言われたくないような」 悠介 「そうか?俺達は俺達で気はかけあってるぞ?」 ルナ 「そうなのよぅー。だからほっといてホモっち」 彰利 「いつまで人ンことホモっち呼ぶんかねこの空き缶は……」 ルナ 「そっちこそ空き缶言うのやめなさいよぅ!!」 悠介 「はーいはいはい、メシ時に賑やかなのも結構だが、熱くなりすぎるなよー?」 彰利 「大丈夫!俺めっさ冷えてる!!だから肉を食う!一心不乱に肉を!!     ヲヲヲヲヲヲ!!!我が血肉の黒も喜び蠢いておるわ!!」 最近で肉食ったのなんてハンバーガーくらいな気がするしね。 彰利 「悠介、ミノタウロスミートでもいいから創造してくれません?     肉ちょいと食ったら黒どもがさらにさらにと蠢いちゃって」 悠介 「体が黒ってのも問題だな。こんな時くらい死神化を解いたらどうだ」 彰利 「狙撃されたら死ぬでしょが!!」 悠介 「お前はこんな時に狙撃されるほど周りに恨まれることしたんか!?」 彰利 「うん。なんとなく夜華さんあたりに問答無用で切られそうな気がする」 弦月屋敷に帰ったものの、いつ寂しくてこっちに戻ってくるか解ったもんじゃ───あ。 柵の外でチラチラこちらを見るその姿はまさしく夜華さん。 自分で出て行った手前、中に入りづらくてうろうろしてる。 うーむ、叱られた子供みたいで面白いデスネ? 悠介 「……?篠瀬じゃないか。なにやってんだあんなところで。おーい、しの」 彰利 「ローテツ!!」 悠介 「《ベッチィッ!!》いっでぇえっ!!〜〜っ───なにしやがるっ!!」 彰利 「バカヤロウ!!     人がせっかく微笑ましい状況にあるんだから邪魔するんじゃおへん!!」 悠介 「お前はなにか!微笑ましかったら人の足にローテツかますのか!!」 彰利 「微笑ましい状況を邪魔されたらですコノヤロー!!」 悠介 「ええい貴様!人がせっかく食い扶持を増やそうって時に!!     そっちこそ邪魔すんなコノヤロー!!」 彰利 「お?なんだ?やンのかコラ」 悠介 「おお上等だ!こっち来ォ!!」 彰利 「オオなにやらノリ気!!キミのそういう思いっきりを待っていた!!     よっしゃああっちで勝負じゃあーーーーっ!!」 悠介 「漢じゃわしゃあーーーーーっ!!!」 こうして僕はなにやら異常なまでにテンションの高い悠介とともに、 庭の一角まで走るとヒロラインステータスでのガチンコバトルを開始したのでした。 や、もちろん危なくなったら問答無用で現世のブラックオーダー発動させるけどね? ───……。 ……。 彰利 『目覚めろ!食事の時間だ!!』 というわけで向き合った途端に黒を発動させた僕は、 悠介に向かって空腹の黒を向かわせたのです!! しかし悠介はミノタウロスミート(焼き済み)を創造するとそれを脇にドスンと置く。 黒  『!?』 彰利 『ややっ!?』 すると黒の皆様が肉の香りに釣られてそちらに突貫するではありませんか!! アイヤー!シマタヨー!!肉なんて滅多に食わせねぇから飢えきってるヨー!! だが甘い!!それしきの量、一瞬で喰らい尽くせるわ!! 我が内なる魔物は666!!そして内なる幻獣も666!! 名前も知らねーやつらばっかだしダブってるのも居るが、それでも666です!! そしてそれだけ居りゃあこげな肉!! 悠介 「はっはっはっはっは!!肉が出ます肉が出ます肉が出ます肉が出ます!!」 彰利 『ゲェエーーーーーーッ!!!!』 なんと!次から次へと肉が創造されてゆく!! 悠介のヤロウ、手の平に小さな黄昏創ってそっから肉を無尽蔵に出しまくってやがる!! 光の武具じゃねぇからってそりゃねぇだろオイ!! イカーーーン!これでは黒たちでの攻撃が出来やしねー!! (注:鎌も黒に収納されてるので行使が出来ない。    いっつも影や黒からルナカオスを引きずり出してるのはそのため) 彰利 (神様!僕いきなりピンチです!魔人冥黒結界使っていい!?) 脳内神(ゴートゥーヘルだ宿主よ) 彰利 (ありがとう神様!!脳内探偵“おうムル”の次に好きだよ!!) というわけで強引に黒に言うことを聞かせる方法発動!! や、普通に現世オーダーで十分なんだけどさ、やられっぱなしはイヤなの!! つーわけで魔人冥黒結界!! 悠介 「なっ───こらっ!こんなところで固有結界発動させる馬鹿があるかっ!!」 彰利 『馬鹿で結構!!つーかさっきもやったもんねィェーーーーッ!!!』 さあどうする悠介クン!! 言っておくが僕はやると言ったらやりそうだよ!? なにやらそんな雰囲気さ!! 今までだったらキミに黄昏創造されて逆にボッコリだったが、 今のキミはスッピーに力を預けたまま!! 今の俺に敗北は有り得ねー!! 連続で三回“今”って言うくらいに有り得ねー!! 悠介 「勝利を確信した時、そいつは既に敗北している」 彰利 『だが揺るぎ無いものだってきっとあるさー!!     俺の勝ちだっ!!ジョジョォーーーッ!!』 悠介 「はぁ……まったく、たわけが」 ゴギィンッ!!ギィッヂヂィイイイイイイインッ!!!! 彰利 『あ、あれ!?謎の壁によって拳が前に突き出せねー!!バリヤー!?』 悠介 『力を預けてようが今の俺は精霊で、ラインゲートも持ってる。     で、俺のラインゲートはどんな能力で、ここにはどれだけの精霊が居て、     しかもどんな樹が二つある、たわけ』 彰利 『あ』 アイヤーーーッ!!シマタァーーーーッ!!! で、でも既にここは冥界ですよ!?そりゃ精霊たちや食事中の皆さんは居るけどさ!! マナの樹は無いよ!?無いじゃない!! 悠介 『あ、じゃあ解りやすく言おう』 彰利 『あ、そうしてもらえます?』 悠介 『自然の精霊であるニンフたちにもラインゲード繋がってるわけだ。     で、彼女たちに協力してもらって、それぞれの大樹から力を吸い出してる』 彰利 『あ……ハイ、よく解りました』 それじゃあダメだよね……と普通なら諦めるところだろう!! だが知れ!民たちよ! 我の力はこげなものではない!! 彰利 『レヴァルグリード解放!!お出でなさい!!漆黒の六翼!!』 ゾフィィンッ!!ガッシャァアアアアアアアアアアアアアンッ!!!! 背中に六枚の飛翼を出した途端、力が数倍となり展開されていた障壁が崩壊する! ウヒョオ最強!! 悠介 『だっ───この馬鹿っ!!』 悠介が再び障壁を創造する! しかし遅い!遅いヨ!!  メゴッシャォオンッ!!! 悠介 『ぶっはぁああーーーーーーっ!!!?』 障壁で威力を軽減して尚、悠介が我が拳を頬にくらって吹き飛んだ。 結界の先の柵にゴシャーンと激突してようやく止まったが…… あら?ぐったりしてらっしゃる? ……イカン、調子に乗りすぎた? などと思った時でした。 ズ、ズズ……と悠介がゆっくりと起き上がったのです。 彰利 『オーウ悠介ダイジョブカー!?ゴメンヨー、オイラチョット有頂天───』 悠介 『ああ……いい……。クッ……クッフッフッフッフ……!!     お蔭で脳へのいい刺激になったよ……クフフハハハハ……!!     まったく……熱くなるなと言った矢先にこれだ……責任取れよテメェ……』 彰利 『エ?』 あの。今テメェとか言いました? あらら、もしかしてキレました? 悠介 『───、……ああいや、それこそ待てだ。落ち着こう。     あー、彰利ー?気ィ済んだらメシ食えー』 ……と思ったらいつもの悠介に。 感情のコントロール上手ェなコノヤロー。 だが……あれはむしろあそこで怒るべきだったのでは? 彰利 『ノー!我が気はまだまだ治まることを知らねー!!かかってこいオラァ!!』 だから言っちまった。 だって最近の悠介つまんねーんだもん。 俺としてはむしろ、モミアゲ馬鹿に馬鹿にされまくってた頃のほうがステキでよかった。 つーわけで言っちまった。 そう、言っちまったんだ。 これがのちの地獄になるとも知らずに。 悠介 『……じゃあ、お前の気が済むまで俺はお前とバトればいいのか?』 彰利 『オ、話早いじゃん。そういうアグレッシヴな悠介、好きよ?     まあもっとも!?今のアタイに勝てるかどうかなど解らんがねぇ!!     ヌッオォーーーッホホホホホホホ!!!』 力を持った男ってなぁ馬鹿になる。 それを抑えることをしようと努めることが出来て初めて、それは力と呼べるんでしょう。 俺のは見せびらかすための力だったんだと思う。 つーか思い知らされた。 悠介 『そっか……じゃあ、加減無しだ。手加減一切するなよ彰利。     本音を言うとな、お前とは一度本気でぶつかりたかった』 彰利 『え?』 本気って……え?マジ? 悠介 『じゃ、ちょ〜〜っと……奥、行こうか』 彰利 『ア、アゥワワワ……!!』 悠介が冥界の奥を指差して笑った。 その笑みは、暗雲を煮詰めたような黒い笑みでした。 ───……。 ……。 ややあって───ゴガガガギギギギガガギヂィンッ!!! 彰利 『だぁららららららぁあああーーーーーーっ!!!!』 銀髪灼眼の目の前の創造精霊からの嵐よりも性質の悪い双剣連撃を、 こちらもルナカオス二丁で弾く。 冥界の奥に丁度お誂えの広場があったからそこでバトル開始となったんだが─── 開始一秒後に冥黒結界はスピリッツオブラインゲートにて上書き破壊されました。 でも発動はさせてる分、俺も全力モードではあるから問題無い。 彰利 『フハハハハ!!どしたぁ悠介ぇ!!貴様の本気はその程度かぁ!!』 俺の気分は相当ハイだ。 強すぎる力を持つと相手に困るとはよく言うけど、 悠介には全力でぶつかってもおつりが来る。 いや、むしろ俺がおつりをやってんのかね?ホホホ。 などと心の中でくらい余裕かませる相手だったら良かったんだけどね。  フフォンゾギィンガギィンバギィンゴギィンガギィン!!! 彰利 『ずあぁあーーーっ!!!』 振るわれる剣が重過ぎるんですわ。 しかもその双剣はどっかで見た覚えがありすぎるあの剣だし。 キ、キミの瞳にトレース・オン!! 彰利 『ホレ隙ありぃーーーーーっ!!』 ホントは隙なぞ無かったのだが、無理矢理片手の剣を弾き飛ばした。 しかしその手にはすぐに新たな剣が創造される。 ……ああ、アレだねぇ。 よもや悠介が躊躇なく真似を見せてくれるとは。 ああいや、悠介だからか? 我が意思は擬似をも越える(イミテーション・サーパッシング)
。 スッピーが得意とする既存超越だ。 ようするにこうして創造するからには、 意識下ではイメージの超越などとっくにされてるのだろう。 そしてそれは、弾かれれば弾かれるほど磐石たるものに変わってゆく。 そらそうだ、弾かれるようなものをまた使おうと思うようなヤツは居ない。 彰利 『しっかし干将・莫耶ね……!     お前がそんなモンを平然と使ってくるあたり、本気っぽいじゃねぇの!!』 むしろエモノがラグだったらやばかったかもと内心で思っておく。 ……そうとも、本気で来いって言ってたんだ、 だったらこっちから先に全力で行っていい筈。 彰利 『一気にキメる!!“魔神天衝剣”(オメガレイドカタストロファー)×2!!』 キメたれ俺! 言った言葉に二言はねぇ!! 両手に、破壊の象徴を剣に変えた漆黒を持ち、 そこに六枚の飛翼から力をありったけ流し込む!! そんでもってこっから振り被って一気に─── 悠介 『ノートより力の送信終了を確認。全ての異なる魔獣を連ねて一と為す。     我が呼びかけに応え、産まれ出でよ───“翼竜王(バハムート)”』 コォッ───ヂギィンッ!! 彰利 『へ……!?』 黄昏の景色が暗転した。 何故ってそりゃ……とんでもなくデケェ竜が、黄昏の陽を遮ったからである。 バハムート『ギシャァアアォオオオオオンッ!!!!』 彰利   『〜〜〜っ……!!な、なにくそっ!俺を今までの俺だと思うなっつの!!       誰が今さら貴様なんぞにビビるか!!吹き飛びやがれぇええええっ!!!!』 戸惑いはしたが、それでも渾身を込めて魔人天衝剣×2を放つ!! 悠介   『バハムート、加減無しだ。遠慮無くやっちまえ』 バハムート『ルガァアアゥウウッ!!!ギガァッ───!! 彰利 『───!!』 目の前がスパークした。 放った黒の大砲は、放たれた巨大な極光を受け止める。 だがそれでもレヴァルグリードの力は伊達ではない。 僅かだがこっちが押している……!! 彰利 『ちっくしょ……!召喚獣とは卑怯な!!』 悠介 『いきなり決着を急いだお前に言われる筋合いねぇわ!!     ───回路を繋げてバハムートに力を流す!!連ねるは言、連言より───!!』 彰利 『負けるかよ!!闇よ、影よ、黒よ、全てを総じる静けさと荒々しさよ!!     冥界の王の名の下に命ずる……!!我が力となりて───!!』 己の力を増幅出来る言を唱え、体に闇、黒、影の力を集めては天衝剣に上乗せする。 それは悠介も同じようで、言を唱え、次々と力をバハムートに流し込む……!! 悠介 『砕け、砕け、砕け、砕け……!弾けろ、弾けろ、弾けろ、弾けろ……!!』 彰利 『無尽蔵たる闇の波動よ……!!     慟哭してなお死すらも許されぬ汝、我が力となりて敵を滅ぼせ……!!』 いわば力のぶつかり合い。 こんなもの、さっさと避けて攻撃に移ればいいのに─── お互い、意地を張って譲らない。 悠介 『重ねる(連ねる)重ねる(連ねる)重ねる(連ねる)重ねる(連ねる)……!!』 彰利 『滅ぼせ、滅ぼせ、滅ぼせ、滅ぼせ……!!』 だが生憎と変則的な行動が得意な俺は、こんなぶつかり合いをいつまでも続ける気はない。 何故なら力をどこまで引き出せるか、などのイメージ対決では圧倒的に俺が不利だからだ。 彰利 (───そこだ!) 揺れる草原の下をくぐらせ、悠介の後ろに伸ばした影から黒を出し、攻撃を仕掛ける!! 鋭利な刃物となった黒はまるで漆黒の鎌のように鈍く輝き、 無遠慮に悠介の背を切り刻んだ!! 彰利 『どうだぁっ!!』 悠介 『解放せよ汝……!創造せよ汝……!超越せよ汝……!凌駕せよ汝……!!』 彰利 『───!?ンな馬鹿な!!』 どういう集中力だよ! 背中割られても気にしないで集中を続けてやがる!! 悠介 『我が名を唱えるならばその意を創造の具現と知れ……!!     我が意は創造、我が身は思念、我が心は想像……!!     目に映るもの全てを越えてゆけ。     我が身がそれを越えられぬなら、思考のみで越え、それを身に変え具現せよ……!     故に越せぬ壁など我が身にあらず、我が意思こそが無限の自由───!!』 彰利 『っ……この!デタラメだお前!!』 こうなりゃ本気でツブシにかかる!! ヤツが本気で、自分でぶつかってくればこんなもんじゃない。 だったらこれに勝てなくてどうしてこの戦いに勝てようか───!! 彰利 『久しぶりに頭ン中がクリアされてくみたいだぜ……!!覚悟しろよ悠介!!     ゼノっていう運命に立ち向かってた頃の俺の意思、見せてやる!!』 バンッ!!と六枚の飛翼勢い良く開く。 そのそれぞれが黄昏の景色に上書きされてしまっている冥界から力を掻き集め、 俺に力を流し込む。 彰利 『いくぜ悠介───!!ビッグバンかめはめ波ァーーーーーッ!!!!』 ギガガチュゥウウウウンッ!!!! 悠介 『チッ───!!蓄積思考展開!!“無限を紡ぐ剣槍の瞬き(インフィニティ・バレット・アームズ)”!!』 悠介が蓄積したイメージを解放、虚空より光の武具を一気に創造する!! だが甘い!武器なんぞで受け止められるほどこの闇の極光は─── 悠介 『全砲門開け!!“神槍、是総てを無限と穿つ(グングニル)”!!』 キィンッ───ドガガガガガガォオオオンッ!!!! 彰利 『っ……!?そう来たか!!』 武器ではなく波動系の光の武具───しかもしっかりと超越してやがる!! だがそれでも─── 悠介 『無限と型成せ“皇竜剣(ラグナロク)”!!“伎装弓術(レンジ/アロー)”!“擬似雷神槍(ヴィジャヤ)”!!』 ヂガァッ!!ボォガガガガォオオンッ!!!! 彰利 『───!!』 もう次弾───しかも今度は凌駕だ!! けどこっちだってハイそうですかって負けられるほど男としてのレベルは低くねぇ!! 後のことなんか知ったことじゃねぇ!!今は───純粋に悠介に勝ちてぇ!! 彰利 『目覚めろ!気合いを入れる!!』 闇  『覚悟はいいかぁ!?荊棘を踏んだぞぉ!!』 影  『俗事の産物どもがぁ!!塵に帰せぇ!!』 左の三翼に闇を。 右の三翼に影を。 そして中心の俺が黒となって、力の全解放を───!! 彰利 『解放した全ての翼に“影鎌繰り殺ぐ闇黒の秩序(アンリミテッドブラックオーダー)”を埋め込む!!     臨界無視の限界突破!!やれないなんて戯言なんざ要らねぇ!!』 鎌の理は黒の中にある。 存在の下地を象るのが影ならば、光の裏に存在するものは闇。 黒はそれを紡ぐ色であり、我が身を型成す象徴。 読み込む鎌は全ての鎌を読み込んだ状態の“影鎌繰り殺ぐ闇黒の秩序(アンリミテッドブラックオーダー)”。 オリジナルから全ての情報を引き出し、それを全ての翼へとあてがってゆく……!!  ギヂヂッ……!! 彰利 『づっ……!!』 無茶な行動故か、コメカミあたりが電撃が走ったような激痛に襲われる。 だが続ける。 悠介は本気でぶつかってみたかったと言ったんだ。 だったらそれこそ限界の先を行くくらいの本気が必要───!!  ヴィヂィッ!! 彰利 『かっ───!!こ、のっ……!!』 迫りくるヴィジャヤと、放たれ続けるグングニル。 それを今はなんとか押さえてはいるが……!! くそっ!自分のラインゲート内だからって、なんて無茶しやがる!! だったらこっちもだ。 回路がイカレようが知ったことか!! 彰利 『これで……!《ビジジッ……!》くぁっ!あの世へ送ってやる───!!     ビッグバン───かめはめ波ァーーーーーーーッ!!!!』 脳の回路がイカレたのか、一瞬起こったスパークを無視して、 現時点で放てる最高の大砲を放つ。 ヴィジャヤの力で限界まで押されていた闇の極光はしかし、 今この時を以って一気に弾き返す!! 悠介 『かっ───!!つくづくどういう容量してんだお前の黒は!!』 再び悠介が手の中に雷神槍を創造する。 ───ンなもん、させっかよ!!  ドゴチュチュチュチュチュチュゥウウウウンッ!!!! 悠介 『───!?チィ!!』 放った闇の極光を操作して、そこから幾つもの黒い光の矢を放つ。 それは悠介の手にあった槍を弾き落とし、さらに悠介へと襲い掛かる。 悠介 『甘い!“鏡面にて弾く石眼の盾(イージス)”!!』 キュィイイ───ヂガガガガガガガガァンッ!!!! だがすぐさま創造したイージスで全てをこっちに───弾き返してきやがった!! だがそれこそ甘い。この矢は黒。俺にとっちゃ操る対象だ!! 悠介 『タダで返すかダァホ!!“弾けろ(ショック)”!!』 バパァン!パァンパァンパパァンッ!!! 彰利 『つっ……!?目眩ましか!?』 目の前で黒の矢が弾ける。 それはキラキラと光りながら散り───ヤバイ!! そう感じた俺は咄嗟に後ろにバックステップをした。 その瞬間、翻った黒衣が光る塵に触れた───途端、 その部分が凍てつき氷り、崩れ落ちた。 ダイヤモンドダストカーテンかよ……!! くそっ!ほんとなんでもアリだなあの野郎!! 悠介 『引いたのは命取りだ!“支力付加(エンチャント)”!!“極光滅竜閃”(ストライクブラスター)!!』 悠介が突如疾駆。 弓から剣に変えたラグを振るい、 悪魔的な威力が詰まった極光の塊をその剣にエンチャントする!! それは瞬時に悠介の腕を削り殺すほどの威力が篭っていただろうが、 悠介はすぐに支力解除を唱えるとそれを剣閃として放ってきやがった!! 彰利 『うわ汚ぇ!だったら───!!』 剣閃となった極光から黒を抜き取って吸収! それを翼に流して力と為す!! 彰利 『こうなりゃヘタな小細工無し───!!いくぜ悠介!!』 光のみとなった剣閃を避けると、猛然と悠介へと向かってゆく。 俺の手には武器もなにもない───つまり徒手空拳。 悠介はそれを確認すると小さく笑い、バハムートを退かせると目をより一層真紅にして、 跳躍というよりは前に飛び爆ぜる勢いで疾駆した。 彰利&悠介『おぉっ───らぁっ!!』  バァッッガァアンッ!!!! 彰利&悠介『っ……!!!』 やがて激突する闇と光。 なんの小細工も無しに無遠慮に放った拳は互いの頬を捉え、 のけぞりはしたが吹き飛びはせずに第ニ撃、第三撃と放ってゆく。  ドゴドゴォンッ!!バゴォッ!ドボォッ!ドゴォッ!! 一撃で岩くらい簡単に破壊出来る一撃。 それを何発も放ってなお、俺達は互いに一歩も退かない。 顔面を殴り、顔が遠退けば腹を。 腹を殴り、顔が戻れば顔を。 蹴ることも忘れ、ただ相手を殴り続けた。 俺は九頭竜の力を今出せる最大まで引き上げ、 悠介は己の力と精霊の力とマナの力を以って。 血を吐くことさえ厭わず、全ての行動が隙だと断じ、攻撃された状態でなお相手を殴る。 そこに避けるという意思など存在しない。 全てが隙なのだ。 相手の“攻撃”という動作も、仰け反るという動作も、全て。 “避ける”という動作を入れないだけで全ては隙となり、 だからこそ俺達は互いの隙全てを殴り穿つ。  ドガァン!バガァンッ!!バゴシャドゴォン!!ガゴォッ!! 彰利 『がっ!ぐっ!づっ……!くああっ!!』  グシャア!ドボォッ!!バゴォンッ!!ゴコドガァンッ!! 悠介 『はっ!げはっ!ぎっ!がぁっ……!!』 一撃一撃が重過ぎる。 殴られた反動で首が飛ぶんじゃないかと、 幾度も幾度も背中に冷たいものが差し込まれる感覚に襲われているというのに、 それでも殴るのを止めない二人は周りが見れば酷く滑稽だろう。 だがそれでも本気になると心に決めた。 あんな一発で決まるようなものではなく、自分の拳で打ち勝つと心に決めた。 だから退かない。 絶対に、意識がある限り前に進む───!! 【ケース235:スピリットオブノート/未来への思想】 ノート  『……ほう。いいツラをするようになったものだ』 シェイド 『驚きだ。本気になればあれだけの力が出せたのか。       何故今までヘラヘラとのらりくらりしていたのかが不思議でならない』 ノート  『いいや、不甲斐なさを唱えるならむしろマスターが問題だ。       悟り始めてはいるが、まだ足りん』 ノーム  『足りないって、なにがだー?』 ノート  『我々に対する容赦の無さ、それから枷への挑戦だ。       最近はなかなか集中が出来ているようだが、       このペースではいつまでかかるか』 ノーム  『遠慮の無さってなんだー?よくわからないぞムッチー』 ノート  『……汝な。ムッチーと呼ぶなと何度言えば解る』 セルシウス『いいですか、ノーム。マスターのゲート、万象担う創世の法鍵は、       マナとわたしたち精霊から力を受け取って戦うもの。       けれどマスターはわたしたちからの力を全力で吸収しようとしない。       それが、“わたしたちに向ける容赦の無さ”の答えです』 そうだ。 我がマスターながら呆れるが、 あいつはまだ“守りたいものを守る”だなんて理想を抱いている。 だからこそ私たちが力を取られる姿が癪に障るのか、最大まで受け取ろうとしない。 そんなだから周りに遅れを取る。 この調子では、無尽蔵である死神王には勝てないだろう。 加えて死神王には未だ可能性がある。 残りの三翼を発現させることが出来れば、 その強さはもはや手のつけようがなくなる位置にまで達するだろう。 “レヴァルグリード”とはそれほどのバケモノなのだ。 ノート『………』 だが……そうだな。 好きに暴れろ、マスター。 夢───そう、これは夢だ。 全てが虚ろであり、だが確かな現実。 誰が誰だと決めつけるわけでもなく、人が人としてそこにあること。 そんなことにのみに気を配り、いつしか年老いてゆく。 だが老いることも許されなくなった身になって初めて気づけることもある。 汝は汝のままであれ。 残念だが、私が汝にしてやれることはもう無いのだろう。 ……最後の最後、以外は、な。 だからせいぜい私も今を楽しむとしよう。 ノート  『……どれ。私もあの中に混じるとしようか』 精霊達  『えぇっ!?』 ノート  『なに、力は同等にセーブする。どれだけ殴ろうが殴り返してくれる』 セルシウス『邪魔をすると怒りませんか?』 ノート  『ハ、ならばその怒りまでもを隙と断じて殴るのみだ』 フワリと浮いて、一気に二人の袂まで飛翔する。 そして二人を分析、超越を済ませると徐に拳を振るった。  バガァッ!! 彰利 『ぐっ……!?挑戦と受け取る!!』  バゴォッ!! ノート『ぬぐっ───!ふっ、ふはははははは!!!!ふぅっ!!』  ドボォッ!! 悠介 『えは……っ!っ───このっ!!』  ドゴォンッ!! 彰利 『づっ!?隙ありってかこの野郎!!』  バガァッッ!! 悠介 『ぎっ───!らぁっ!!』  ガゴォッ!! ノート『ぬっ!!』 ……そうして、三竦みの出来上がりだ。 真実と違うのは三名とも竦みあがってなどいないことだろう。 まるで喜ぶかのように拳を振るい、それぞれがそれぞれを殴ってゆく。 そこにはやはり蹴りなどという無粋はなく、ただ拳のみが飛び交った。 殴り続け、そこに一切の遠慮が無いことを再確認すると、幾年振りか心が躍った。 それから存分に身体を振るい、それこそ全力で殴り続けた。 そこにはいつもの冷静な判断など必要なく。 ただ、拳を振るう余力と勢いさえあればそれでよかった。 【ケース236:霧波川柾樹/アッサーシーン(朝の一景の意。一景=シーン)】 ゴソゴソ……ゴゾォ……!! 刹那 「は〜ぁ、ったく、なんでせっかくの休みに登校日なんて日が設けられてっかねぇ」 それはいつもと変わらぬフツーの朝の出来事だった。 朝起きたら……刹那が俺の部屋で制服に着替えていた。 豆村 「まったくだ。かったるいことこの上ない」 豆村もだ。 二人は居心地がいいとか、 場所的に都合がいいとかでしょっちゅう俺の部屋に泊まっていく。 着替えや漫画本なんかも置いてあるところは流石と言っても差し支えはない気もする。 柾樹 「ひとつ訊いていいか?なんだって俺の部屋に鞄も勉強道具も置いてあるんだ?」 豆村 「え?便利じゃん。俺ひとりで勉強する趣味ねーし」 刹那 「家に居たってつまんねーだろ?ここってなんでか落ち着くんだよな」 豆村 「朝寝坊しそうになってもやさしーオネーサンが起こしてくれるし」 刹那 「そういう時は必ず料理作ってあるし。     まあ柾樹の分しかねーのは納得いかねぇけど、別に俺自分で作れるし。     そういうことに関してはお前、とっとと姉離れ出来る男になれよ」 柾樹 「あのね。紗弥香さんはべつに姉じゃないだろ」 刹那 「似たようなもんだって言ってんだ」 柾樹 「俺、普通に料理は出来るし起きれもするんだけど……。     目覚まし用意しとくと怒るんだよ、紗弥香さん」 豆村 「あー、子供っぽいあの人の顔が目に浮かぶな。     本人は大人ぶりたいみたいだけどさ。     年下の目から見ると、ガキっぽすぎる大人もどーなのかねって」 刹那 「いーやその意見には反対だ。人間、童心忘れたら終わりだろ。     大人になってもゲームの話題で話せる大人になりたいね、俺は」 豆村 「や、それはそれで賛成だけど。     喩えだけどさ、ゲームや漫画の話題に熱心な社長とかってどうよ」
【Side───愛】 忍者猫『ニャアックシッ!!』 蒲田猫『む……んあ……?な、なんだよ丘野……風邪か……?』 忍者猫『むにゃふ……い、いや……きっと誰かが噂して……グー……』 蒲田猫『おお……歩きながら寝た……すげぇぜ、見てみろよ提督……』 提督猫『……お得でっせ……』 内海猫『提督さんならこっちで魘されながらツッパリしてるんだけど……』 藤堂猫『無視だ無視……ともかく進もう……』 【Side───End】
───……。 刹那 「しかしアレだよな。     登校日って教師たちにとっても邪魔なものでしかないんじゃないかね」 柾樹 「言っても始まらないだろ、それって」 豆村 「いー感じにぶっきらぼうになってきてるよな、柾樹。     なに、ヒロラインでなにかあったか?」 柾樹 「……思い出したくない」 刹那 「そか?あそこ結構楽しい世界だと思うけどな。     現実世界としてこの……なんだっけ?地界っつったっけ?     それがあんのにさ、あそこにもうひとつ世界があるんだぜ?すげぇよ」 豆村 「ありゃ驚いたよな。世界創れるなんてナニモンだよ」 刹那 「精霊、だろ?     俺もう地界のニュース沙汰の出来事がモノスゲーちっぽけにしか見えない」 豆村 「あー同感」 言いつつ歩くのは通学路。 如月高等学校への道をトボトボと歩きつつ、 べつに寝起きが悪いわけでもない幼馴染を気にせず、悪友二人と並んで登校。 無駄に漫画やらアニメやらの知識がついた所為か少々頭が痛いけど、 まあそれでも俺はこれでいいと思ってる。 恋人だとかなんとかいう関係より、友達関係のほうがいいに決まってるのだから。 刹那 「で、毎年学校に来ねーヤツが多いのはお約束ってわけね」 豆村 「ズル休みするヤツとか外国行ってて今来れねーとか、     そんなお高くとまったヤツばっかだろチクショー」 柾樹 「羨ましいならそう言おうや」 豆村 「う、ううう羨ましくなんかねーぞコノヤロー!!     何故って俺らにゃ外国よりよっぽどハイソな世界があるんだからなー!!」 刹那 「あーそーかい?意味も解らず使う言葉って虚しいだけだと思うが」 豆村 「う、うるせー!大体ハイソってなんだよ!ハイソックス!?」 刹那 「いきなりそっちに行くからお前は豆なんだよ……」 豆村 「苗字関係ねぇっつってんだろが!!」 刹那 「親父がメイド好きで息子が巫女好きって救いねーだろ。     生まれた時点で属性持ってるのがそもそも異質なんだよ」 豆村 「生まれた頃から属性なんて持ってるかよ!!」 柾樹 「せーつーな、朝っぱらから通学路で     メイドだとか巫女だとか属性だとか言ってるほうがよっぽど怪しいぞ」 豆村 「それみたことかこのエロが!!」 柾樹 「胸を張るな巫女属性」 豆村 「うぐっ……!今日の柾樹はちと辛辣だぜ……!     で、漫画とかアニメ見てちったぁ感受性が多感になったと思われるキサマ。     オメーにゃ属性は芽生えなかったんか?」 柾樹 「属性ねぇ……悪い、興味が無い」 豆村 「うわー。言い切りやがりましたよこの偽善者が。どう思いますか解説の刹那さん」 刹那 「いや?俺も別に属性なんて無いし」 豆村 「イイコチャンぶってんじゃねーよ人類ども!!」 刹那 「落ち着け、それはいろんな意味でお前がイタすぎるぞ豆」 豆目豆科であることをヤケクソ承認した豆村が落ちていた空き缶を蹴りつつ先をゆく。 ああ、微妙に拗ねてるみたいだけどすぐに機嫌が直るだろう。 豆村 「んー……なぁ、飲み終えたジュースの缶とかけてルナさんと説く」 柾樹 「?その心は?」 豆村 「どっちも空きか《ドグシャア!!ぶっほぉっ!!」 たった今目の前で喋っていた筈の豆村が、 高速トラックに吹き飛ばされたかのように横にスッ飛んでいった。 刹那 「……ああ、ポピーザぱフォーマーだ。あの電磁力の回の」 柾樹 「ああなるほど。道理でどっかで見たことあると」 吹き飛んだ豆村の顔が、 電磁力を発しまくったために飛んできたトラックに轢かれたポピーに似てたのだ。 納得できたところで登校の続きといこう。 刹那 「柾樹、今日の昼はどうするよ」 柾樹 「どうせガッコも昼前には終わるし───鈴訊庵になるかな」 刹那 「料理作れるんだったら自炊しろ自炊。なんだったら俺が作ってやろうか?」 柾樹 「いきなりだな」 刹那 「いや。ヒロラインやってたらなんだか面倒見が良くなったっつーのか。     接客っていろいろあるなってな。     ま、べつにお前のこと嫌いじゃねーし、通い妻になってやってもいいぞ?」 柾樹 「ほぼ家に帰らず人ン家の部屋に泊まってるヤツがどっから通ってくるんだ」 刹那 「ん?ああそりゃたしかに。ははははは」 談笑をしながら歩いた。 やっぱり友達ってのはいいものだと思う。 特に、気心が知れてるなら尚更だ。 豆村 「無視ですか!?俺無視なンスか!?つーか今俺を襲ったあの淡い衝撃はなに!?     カッパーフィールド!?異次元の力!?     それとも“無の力”が民家を襲って物干し竿が天から舞い降りたのか!?」 ルナ 「へー、豆っちは物干し竿であんな飛び方が出来るんだ」 豆村 「人にビッグバンタックルしといて言う言葉がそれだけかよこの空き缶が!!」 ルナ 「空き缶言わない!!はあ、ちょっと散歩してたらこれだよ。     今すぐこの豆に納豆菌振りまきたい……」 豆村 「あの。俺納豆菌かけられても納豆への進化はしませんよ?     つーかおい刹那!柾樹!人のことほっぽって談笑しつつ登校すんなよー!!     行くんだ!俺も行く!行くんだよォォォォオオオーーーーーーッ!!!!!」 ルナ 「あ、ちょっと豆っち!?───あー、行っちゃったよ。     まあいいや、散歩の続きでもしようかな。悠介、まだ殴り合ってるし」 ルナさんが何かを呟いていた気がしたが、それは上手く聞き取れなかった。 【ケース237:中井出博光/昼】 ジャリッ……ジャリッ…… 蒲田猫『オ……オォオオオ……』 柴野猫『て……提督にご報告します……。     さすがに休み無しで走り回るのは辛すぎます……』 吾妻猫『ヒロラインと違ってここでは疲れるんですから……。     大体もう昼です……もう眠気が限界で……』 皆川猫『全員分回ったところで……休憩時間を願います……』 正直ここまでかかるとは思わなかった。 総員既に眠気の所為で足を引きずってるような状態である。 ……かくいう俺も、そんな状況である。 麻酔を痛みで紛らわしていたことに原因もあるのだろうが、ちとこの眠気は尋常じゃない。 かといって、もう痛みで眠気を吹き飛ばすのは金輪際したくない。 ならばどうするか!───寝よう。 さて……月詠街でこの猫である我らが安全に眠れる場所といえば─── ───……。 ……。 ざしゃっ……ざしゃっ…… 提督猫『ゴ……にゃ……ニャ……』 ここしか無いわけである。 根性で中腹までは辿り着いたものの、眠くてそろそろ限界─── ドゴゴシャバキベキガンゴンガン!! 永田猫『ギャアーーーーーーーッ!!!』 皆川猫『ああっ!眠気に負けた永田が落ちた!!』 佐野猫『永田!?永田ァーーーーーーッ!!』 いや、限界になるとヤバイ。死ねる。 ───というわけで周囲をごらんください。 ここは月詠街の名所、地獄石段こと晦神社前の石段中腹にてございます。 そして後方をごらんください。 今石段をゴロゴロと豪快に落ちていってる輝く猫が僕らの永田くんです。 あ───でもなんとか止まったあたりで輝きが消えた。 うむむ惜しい、珍妙ではあったけどかなりステキだったのに。 皆川猫『永田……今日のお前永田だよ……』 永田猫『え!?なにその当たり前の言葉!!』 佐野猫『輝かない永田なんて永田だよなぁ……』 永田猫『確認されるまでもなく俺最初から永田だよ!!』 みんなそろそろ本気でヤバイ。 訳の解らない言葉を発し始めてる。 眠気ってすげぇよな、ある意味最強のラリ要素さ。 ボーっとしてると怪我だけじゃ済まなくなりそうだ。 だがともかく石段は登る。 既に動きがゾンビっぽくなってきているが、それでも昇る。 一段一段がこんなに高いと感じるとは……ああ辛い。 ───……。 嗚呼だが神よ、我らは遣り遂げた。 見よ、この広い境内を。 昼だというのに誰も居ない境内を。 賽銭入れてる人なんて居るのかねここ。 まあそんなことより今は眠い。 俺達は神社の横にある社務所の縁側を陣取ると、布団を引くでもなく眠りに入った。 だってね、この季節───毛は暑いぜ? さて、寝て起きたら蒼空院邸に戻るかぁ……。 ───……。 ……。 提督猫『で……なんで日付が変わってるかね』 起きたら翌日だったのは驚きだぜベイベー。 もしかしなくても精神が物凄く疲れてたとか? あー、そりゃ解る気もする。 だってヒロライン自体が精神の旅だし。 体の疲れより精神の疲れのほうが性質が悪いって話も聞いたことがある気がする。 でも寝ればなんとかなるとかそういう次元の話でもねーべよ。 あ、でも嫌なことがあった時は寝るに限るし……合ってるのか? いや俺別に心に傷負ったわけじゃないしな、不思議だ。 ともかく俺達は猫化を解くと、ムフゥと溜め息を吐いてから伸びをした。 中井出「さて、これからどうすっか」 藍田 「まだヒロラインは再開されねぇかな」 柴野 「一端戻ってみる?ここに居たんじゃ解らないし」 佐東 「お、さんせー」 中井出「よし!ならばこれより昂風街蒼空院邸に帰還するものとする!!     恐らく家族の顔を見れるのはこれが最後……!心の整理は出来たか!!」 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「涙は可能な限り流したか!!」 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「ならばもう振り向くまい!……まあ遊びに来たりするかもしれないが、それでも!     我らはこれを旅立ちと唱えよう!!さあ行こうじゃないか!     素晴らしき冒険の世界が待つ“限りある大地”(フェアリー・ヴァース)
へ!!」 総員 『Sir(サー)!!YesSir(イェッサー)!!』 そう、これは旅立ちだ。 月詠街よ、我らはここから巣立ってゆく。 仕事場が近いからと建てたマイホームたちともオサラバだ、 と猛者どもがハンケチーフを揺らしている中、 俺は既に一度アディオスを唱えたその景色にもう一度アディオスを唱えた。 さあ戻ろう……我らの希望の園へ。 ───……。 ……。 ドガァンバガァンドゴォンパグシャアベギャアドゴォバゴォッ!! で……蒼空院邸の豪勢な柵門を開けてみれば、 景色が急に綺麗な自然世界に変わり─── その先では彰利と晦と無の精霊と黒竜王が殴り合いをしていた。 いつから、どれくらいやってるのかは知らんが、これはいったい……!? 藍田 「うーおすげ……!!アレ手加減一切してねぇぞ……!?」 丘野 「普通の人間が喰らったら殴られた瞬間に首が飛ぶ───いや、粉々だ……!」 拳を振るう間隔はやや速いといった感じだ。 なにせ渾身を込めているらしく、殴られたら体がもっていかれているのだ。 そこまで超神速で殴れるわけじゃない。 ないのだが……普通にあれやられたらまず無事でいられるヤツいねぇって。 藍田 「つーかどういう経緯であんなことになってんだか」 佐野 「大方晦が弦月と修行してる時にゼットが来て、     それを見た無の精霊が邪魔をするなー!とか言ってきたとか?」 それで殴り合いか? 有り得そうだけど、晦と彰利とスピリットオブノートが殴り合ってるのはどういうことだ。 しかも三人……ああ、黒竜王も混ぜると四人とも、 むしろ今の状況楽しんでるように見えるし。 でも頂上決戦は勘弁してくれよ、草原に炸裂音が響いて聞こえるなんて人間業じゃねぇ。 こんなのドラゴンボールの中だけのものだと思ってたのに。 真穂 「あれ、提督さんだ。やほー」 中井出「やほー。で、これってどんな状況なんだ桐生二等」 真穂 「サー、実は小さな蝶のはばたきが世界大戦を巻き起こしちゃったというか。     最初は些細なことだったんだけどね、ローテツからここまで暴走されると……」 中井出「よし訳が解らん。貴様の記憶を映像化していいか?」 真穂 「うん、まあ。プライバシーを守ってくれるなら。     時間は一昨日の夜ね。丁度夕飯時」 中井出「そか。じゃあ───」 集中して式を編む。 それから我らは桐生二等の記憶から二人がバトルを始め、それに無の精霊が混ざり、 バトルと聞いて黙ってられなかった黒竜王が混ざったことを知った。 ただし攻撃は全て拳で。 一撃でキメたいヤツは帰りなさいってな内容だった。 それを1晩半も続けているとくる。 でもそろそろ───バガォンッ!! 悠介 『───!!』 あ、晦が崩れドゴォンッ!! 彰利 『───!!』 あ、いや。 崩れ落ちる反動すら利用して、巻き添えナックルで彰利もブッ倒した。 これで残るはスピリットオブノートと黒竜王。 ───かと思いきや、彰利と晦がフラフラになりながら起き上がって再び死闘を開始…… 見てるだけで痛くて、思わず目を逸らしてしまう。 ドゴォンドガァンバガァボゴォドゴォガゴォンッ!!! 彰利 『ギッ───ぐっ!だぁっ!ガァッ!!オォッ!!』 悠介 『はぁっ……くぁっ!ぐあっ!シィッ!!おあぁっ!!』 殴り殴られの攻防……いや、攻撃のみを繰り返す。 信じられねぇ、あれがフラフラの状態で起き上がったヤツのする動きかよ。 殴られて仰け反った距離まで助走として利用してやがる。 藍田 「……ONEPIECEの“BRAND NEW WORLD”のOP……」 丘野 「あのフクロウとフランキーが殴り合ってるシーンな。俺も思い出した」 それでも殴るたびに大気が揺れ、 目に見えるほどの衝撃波が散っているのはどうなんでしょうか神様。 よく顔が吹き飛ばんもんだ。 丘野 「ではここで、俺がヒロラインで無駄に手に入れた鉄鉱石の出番である」 ズオオと硬そうな鉱石を出すのは我らが丘野くん。 それを持ち前の投擲力で、丁度双方の拳に重なるように投擲し───パァンッ!! 丘野 「ヒャーーーーーッ!!?」 一発で粉々だった。 あんなもん喰らったら脳髄が塵と化す。 中井出「……メシ、食うべ……」 総員 『んだ……』 戦っても無駄だと判断した我らは、図々しくも蒼空院へと空腹の満たしを─── 中井出  「……しまった。固有結界の所為で蒼空院邸が何処にあるか解らん。       お、おーい晦に彰利ー?」 彰利&悠介『うるせぇ!!ちっと黙ってろ!!』 中井出  「ヒイ!?な、なんだよー!いきなり怒鳴ることないだろー!?       て、提督だぞー!?ばかにすんなー!!」 などという俺の抗議も無視して殴り合いまくる二人。 既に黒竜王のこともスピリットオブノートのことも忘れ、 完全に二人の世界でバトりまくってる。 彰利 『力が足りねぇ!!もっとだ───もっと引き出せ!!』 悠介 『この馬鹿に勝てるなら今は全てがどうでもいい!!力を───寄越せぇ!!』 ウハー、ありゃキレてるな。 無遠慮に殴っては殴り返されを繰り返し続けてる。 しかし彰利の背に突如として七枚目の飛翼が出現すると立場は突然片方に立つ。 晦が殴り飛ばされ、 だがその体が輝いたかと思うと着地と同時に地面を砕くほどの力で疾駆。 まだ殴りのモーションが戻ってない彰利の顔面を、 車の衝突事故でも起こったような轟音とともに殴り飛ばした。 彰利 『ベッ!───ンのっ……!!』 悠介 『ォラァッ!!』 ドゴォン!バガァッ!!ドボォッ!パガァッ!!グシャアッ!! そして再び始まる殴打乱舞。 飛び散る鮮血はもう致死に至ってんじゃねぇかとツッコミ入れたくなるバトルだ。 ……強くなった気でいたけど、こいつらに比べりゃまだまだだよなぁ俺達。  ドゴォッ……!!! 彰利&悠介『ッ……〜〜……』 ……ゴッ、ドザッ…… 中井出「あ……」 やがて決着はついた。 いやむしろつけようやこれで、頼むから。 拳で相打ちなんてお前らじゃなけりゃ普通出来ないから。 悠介 「げ……っほ……!は、はぁっ、はぁっ……!!くそ……!体が動かねぇ……!!」 彰利 「はぁっ、はぁっ……!はぁっ……!!ちくしょ……!体が痛ェ……!!」 無尽蔵かと思われた二人のバトルも流石に限界が来たのか、 二人は仰向けに倒れたまま空を見上げて血反吐を吐きながら息を荒くしていた。 彰利 「くっそ……!お前がまさか……!ここまで熱くなれるとは思わなかった……!!」 悠介 「馬鹿に、すんな……!!俺だってやる時はやる……!!」 ノート『やりすぎだ……馬鹿者……』 ゼット「ぐ……っ……!!この俺がこうもボコボコに……!!」 悠介 「ハ……ははははっ……!!ひでぇ顔だなぁ、ノート……」 彰利 「麗しの黒竜王さまも……ハハ、なんだ、ボッコボコじゃねぇか」 ゼット「ぐく……っ……貴様らほどではない……!!」 全員満身創痍だった。 つーかスピリットオブノートのボロボロの姿って初めて見た。 いや、そもそもあの四人の顔面ボコボコ状態なんて、 今この時にしか見れないと声を大にして断言出来る。 おーおー、見物してたらしい小僧どもがもう呆然としてるわ。 まあそらそうか、映像で見るのとナマで見るのは迫力が全然違う。 いや、そりゃ記憶の映像だと視点が本人のものになるから迫力は十二分にあるのだが。 悠介 「げっほ…………はぁ。決着付かずかぁ……。どーするよ」 彰利 「あー……?ああ……老人になってからでいいだろ……。     約束を果たす時、どっちが上だかを競い合うんだ……」 悠介 「……、……そう……だな……ああくそ、歯が折れてやがる……」 そりゃ折れるわ。 むしろ頭蓋が砕けなかったのは一種の呪いなんじゃないか? などと思いつつ、やがて眠りにつく四人を眺め、 それと同時に元の姿に戻る景色に安堵しながら─── 我らは観客者たちとともに深い深い溜め息を吐いたのだった。 Next Menu back