───世界のピエロ/封印されしドナルディア(WAWエディション)───
【ケース16:霧波川柾樹/シコルスハンマーオリバ伝】 ───……。 豆村 「ふむふむ。つまり?」 柾樹 「ああ、ここはこの方程式にこれを当て嵌めて───」 刹那 「おおなるほどなるほど」 さて、豆村家というかアパートに訪れた俺と刹那と豆村。 我らは早速勉強道具を取り出すと、宿題をテキパキとこなしていった。 ……といっても、豆村と刹那はほとんどが俺のヤツを写す方向でやってるけど。 豆村 「む?ここは?」 柾樹 「今教えたやつと同じ要領だから頑張れ」 豆村 「おお、それは俺への挑戦だな?任せろ」 刹那 「フッ……俺はもう解いてるぜ」 柾樹 「刹那、それ間違ってる」 刹那 「なんと!?」 とまあこんな感じ。 それでも着々とこなしていって、とりあえずは三分の一を撃破。 豆村 「だはぁ……終わった……」 刹那 「合ってるかなんてもういいよ〜……ワシもう幻海……じゃなくて限界……」 柾樹 「?限界なんだろ?」 刹那 「幻海」 柾樹 「うん?限界」 刹那 「そう、幻海」 柾樹 「………」 刹那 「………」 豆村 「よし、こういう時のためにこそグッズだ。     宿題をこなせたんだから、次は俺達の番だぜ刹那」 刹那 「そだな。んじゃあまずはビデオあたりから行ってみますか」 豆村 「おお、名案ぞな情報屋。あ、お前ら今日帰らなくて大丈夫か?     大丈夫なら泊まってっていいぞ。     なんか深冬のやつ悠介さんに呼ばれてるからって言ってたから。     今日は悠介さんのところに泊まるんだとさ」 刹那 「そか。んじゃあひとり寝の夜が寂しいビーンと一緒に寝てやろう」 豆村 「やめろおぞましい!!」 刹那 「そういう意味じゃねぇ!!」 柾樹 「………」 なんか、いろいろ覚悟しておいた方がよさそうだった。 豆村 「あ、柾樹、テレビの電源入れといてくれ」 柾樹 「ん、了解」 刹那 「さ〜て……まずは何から見るかねぇ」 豆村 「キン肉マンあたりか?」 刹那 「男塾も捨て難い」 ともかく、カチリテレビの電源を入れた。 少ししてテレビは映り、その四角い画面の中に───……見覚えのある景色を映し出した。 柾樹 「うっ、あっ……ま、豆村、刹那、こ、これって……」 豆村 「んあ?どし───うおっ!?」 刹那 「?なんだよ。ビーンがエロビデオでも取り忘れ───うおっ!?」 揃いも揃って驚愕。 何故って、画面に映し出されているのは……カモノハシーワールドだったからだ。 アナ 《見てください!貸し切りにされたというカモノハシーワールド!     そこにはなんと、夥しいほどの猫の大群が居るのです!!》 豆村 「言われんでも一目瞭然だろうが」 まったくだった。 アナ   《しかも猫たちは全員後ろ足で立っていて、       楽しげに笑って───わら、わらぁっ!?え!?ね、猫が笑って!?》 カメラメン《ちょ、藤井さん!?なんか俺達囲まれてますよっ!?》 アナ   《え───わぁっ!?》 猫    《円の動き》 猫    《円の動き》 アナ   《た、大変ですスタジオの森川さん!       わたしたち猫に囲まれて───喋ったぁあっ!!》 カメラメン《あ、あっちいけっ!しっしっ!!》 猫    《あっち行け、だと?ここは猫の楽園ぞ!!出て行くのは貴様らの方だッ!!》 アナ   《だ、だったら出て行くから!通して!ねっ!?》 猫    《だめだ》 アナ   《なんでぇええっ!!?》 無情だった。 一応喋るの猫のことは豆村に聞いてはいたから心の準備は出来てたけど。 刹那 「驚いたな……まさかマジで居るとは」 豆村 「アナウンサーのねーちゃんとカメラマンが気の毒だな」 柾樹 「だねぇ……」 すっかり囲まれたカメラマンとアナウンサーさん。 パッと見た限り四十匹ほどの猫に囲まれたふたりは、 逃げ出そうにも逃げられないようだった。 と───そんなふたりの前に、 長靴を履いた猫のような姿の猫と真っ黒な服を着た猫が二足歩行で現れた。 もちろん猫の輪の一部分が割れ、そこからだ。 アナ 《な、ななななになになに……!?》 猫  《まずはようこそお嬢さん、猫の楽園へ。     私はここの一日支配人、悟り猫だ。部下が失礼したね》 猫  《そして俺は世界猫。この悟り猫の親友をしている》 アナ 《あ、ど、どうも……藤井、です……》 挨拶を返してる……なかなか根性の座ったアナウンサーだ藤井さん。 そして生放送でこんなことしてていいんですか? 悟り猫《さて早速だが藤井さん?この猫の楽園に如何なる用か》 アナ 《如何なる、って……猫が沢山居ると情報を受けて、はるばるこんな辺境まで……》 悟り猫《ほっ!?辺境!辺境とな!この猫の楽園を辺境と!そう言うのか!!     もう辛抱たまらん!!猫ども!彼らにショーを見せてあげましょう!!》 猫  《ゴニャーーーーーッ!!!!》 あ……なんだか物凄く嫌な予感。 豆村 「なぁ。なんだか物凄くこの先を見ちゃいけない気がするんだが」 刹那 「いや、見ても大丈夫なんだろうけど物凄く疲れそうな気が……」 モンシャンシャンシャンシャン!! デンテテンテンッ♪テンッテンッテンッテンッテ〜〜ンッ♪ デゲデデンテテンテン♪テンッテンッテンッテンッテ〜〜ンッ♪ 柾樹 「あー……でもなんだか始まっちゃったみたいだ」 豆村 「うおう……」 デゲデデンッ!テンッ!テ〜〜ン♪ 悟り猫《グランドパワァアーーーーーーーッ!!!!     ファイヤァアアアアアアーーーーーーーーーッ!!!!!》 デンテンテケテテンテンテンテ〜〜ン♪ 猫  《だっいっちぃい〜をリングに〜♪》 猫  《うっなっるぅう〜技〜♪》 デン!テン!テン!トンッ!! 猫  《決〜め〜ろ必殺パンチ〜♪》 猫  《エレクトリィッガ〜〜♪》 デテンッ♪ 猫  《勝利に〜〜♪》 デテンッ!テーテンッ! 猫  《轟くゥ!叫び未〜来の〜ち〜から〜♪》 デン!テン!テン!トンッ!! 猫  《む〜て〜きの〜ロボゥォットォ〜〜〜ッ♪》 総員猫《メータールッ♪ファ〜イ〜タァ〜〜〜♪》 アナ 《ヒィイ!!猫の歌とともにオリバが回転しながらマッスルポージングを!!》 豆村 「おお、この女人、オリバを知ってるとは中々」 刹那 「いや、それより先にツッコミいれるところがあるだろ」 うん、俺もそう思う。 カメラメン《ううっ……付き合ってられっかーーーっ!!とんずらぁーーーっ!!》 アナ   《あっ!ま、待ってぇーーっ!!》 ゴキ!ゴリリ!! 猫  《ゴニャアアアアアアアーーーーーーーーーーーッ!!!!!》 猫  《な、中村ぁあーーーーっ!!!》 猫  《な、中村が踏まれたぁあーーーーーっ!!!》 猫  《し、しっかりしろ中村!傷は深いぞ!》 猫  《ゲフッ……!ダ、ダメじゃんそれ……》 カメラが忙しなくグラグラと揺れる中、そんな会話が聞こえた。 ともあれこの揺れから察するにカメラマンは逃げている様子。 行き先は───どうやら、って 刹那 「あっちゃぁ……こりゃヤバイ」 柾樹 「うん、ヤバイな……」 豆村 「?なにがだ?」 豆村は知らないのだ。 今のカモノハで最も危険なのは“電話ボックスの中”だということを。 カメラマンとアナウンサーさんが目指した場所はまさにそこであり、 中に入ると素早く110番を───ドドドドドドドドド!!!! 柾樹 「………」 刹那 「南無……」 俺と刹那はせめて、と十字を切りました。エイメン。 カメラメン《な、なんだ……!?なにかが物凄い勢いで走ってきて……!!》 アナ   《ひぃいっ!!なんか妙に筋肉ゴリモリの人ふたりが、       あたかもオーガストリートに降り立ったジョナサン=ジョースターへと       向かって全力疾走するスピードワゴンさんのように走ってくるぅううっ!!》 豆村   「……詳しいなこのおなご」 刹那   「いや、いちいちごもっとも」 ドドドドドドド!!!!───ゴワシャァアアンッ!!! アナ    《ヒィイイッ!!?》 ジャック  《………》 シコルスキー《………》 カメラメン 《ちょッ……アンタら……」 シコルスキー《ここならサイズの差はハンデにならない。        むしろ……ハンデがあるのはそちら……》 カメラメン 《やめ……おわッッ!!》 あとは予想通り……まさに予想通りだった。 やっぱり電話ボックスの中で暴れだしたジャックとシコルスキーは 彼と彼女の都合も考えずに破壊の限りを尽くした。 もうカメラが吹き飛ぶ吹き飛ぶ。 カメラメン《助けッッ!!ごめ……ごめんなさいッッッ!!!!       ごめんなさいッ!ごめんなさいッ!!カンベンしてくれェェッ!!!       カンベンしてくれェッッ!!俺が悪かったァアッ!!!」 アナ   《うわぁあああんおかぁさぁあああああああん!!!》 そこまできてようやく画面が“しばらくお待ちください”の文字とともにお花畑を写した。 柾樹 「………」 刹那 「………」 豆村 「………」 俺達はしばらく呆然とするしかありませんでした。 だがその『しばらく』も長続きせず、 急に元の画面へと戻ったテレビは、あろうことか深冬ちゃんを映し出していた。 豆村 「うぇっ!?み、深冬!?なんで!?」 悟り猫《えーと、友の里の関係者の皆様ー、テレビ見てるー?》 豆村 「へ?」 世界猫《ちなみにこの映像は我らの知人にしか見えない仕様。     もちろん十八年前の結婚式に出た輩を基準にした、その家族にも見えるが》 深冬 《え、えっと、あの……ね、猫さん?なんでわたし、こんなところに……》 世界猫《それはな───“時操回帰(アフティアス)
”》 シポォンッ!! 悠介 《俺が世界猫だからだ》 三人 『なっ……なんだってぇえええーーーーっ!!!?』 驚愕ッッ!! ま、まさかあの猫の正体が悠介さん!? え、あ、ま、待て?じゃあその世界猫が『親友』って言った悟り猫は…… 彰利 《もちろんオイラが悟り猫。テレビの前のキミ、心の答えになったかい?》 ……そりゃあもう。 豆村 「………」 刹那 「………」 豆村と刹那は唖然としたまま動かない。 そりゃそうだ、こんなものを見せられたら……。 悠介 《さて、まあそんなわけで。今から深冬の身体の弱さを治そうと思う》 豆村 「なにぃっ!?」 深冬 《え……でも、わたしの体は治らない、って小さい頃に……》 悠介 《ウソだ》 柾樹 「むごっ!?」 悠介 《今までよく頑張ったな。お前は立派に芯の強い子に育ってくれた。     まあ外面は随分と弱いが……これからはそんなことも無くなるだろ。     というわけでハイ終了》 刹那 「速ッッ!!」 彰利 《みずき〜、見てるか〜?     とりあえず貴様の野望のうちのひとつは破壊しといたぞ〜》 豆村 「カッ……!コココ……!マ゙ーーーーーーーッ!!!!」 柾樹 「野望って?」 刹那 「医者になって深冬ちゃんを治すこと」 柾樹 「ああ……あれ本気だったのか」 てんで勉強しないからデタラメなのかと思ってた。 彰利 《さて、そんじゃまあ全員揃ったことだし───暴露、しちまいますか?》 猫達 《ニャーーーッ!!》 シポポポポポポポンッ!!!! 猫たちが声高らかに叫んだ。 すると猫たち全員が人の姿になり、その場に立つ。 彰利 《では俺はみずきに》 悠介 《俺は深冬にだな》 女性 《ま、ま、ま、その前に》 彰利 《む?真穂さん?     なんぞね……って、そういや重大発表がどうとか言ってたね。なに?》 真穂 《うん。わたしと結婚して》 彰利 《───……愛?》 真穂 《愛》 女性 《今ならわたしも付いてくるよ?》 彰利 《なんと!?キリュっちてめぇ!!》 …………なんだか大変なことになってきてる気がするんだけど。 豆村なんて、口からエクトプラズム出してるし。 悠介 《……桐生センセ、そりゃ一体なんの冗談で……》 桐生 《冗談じゃないよ?わたしと真穂、アキちゃんに結婚を申し込みに来たんだし》 彰利 《なんですってぇええーーーーーーっ!!!?     いやそうじゃない!真穂さんてめぇ!原中の誰かと結婚したんじゃないの!?》 真穂 《してないよ?わたしだけしてないの》 彰利 《なんとまあ……マジすか?》 真穂 《うんマジ》 桐生 《だからあの時、一緒に結婚しちゃえば、って言ったのに》 真穂 《うん、だからこうして若返ったからには仕切り直しを》 彰利 《ノ、ノゥッ!!ここは地界!重婚は犯罪です!!》 真穂 《あ、それは大丈夫。この祭りが終わったらわたし、空界に住むつもりだから》 桐生 《わたしもだけどね。あのね、アキちゃん。     わたしたちね、家が火事で焼けちゃった上に、     子供っぽくて教師に向かないって理由で辞職願い出されちゃった》 彰利 《OH……》 オリバ《ブルーマウンテン》 彰利 《違う!!》 ……なんだかもう、見てて苦笑するしかない状況が目の前にあった。
【Side───弦月彰利】 彰利 「で、でもですね!?さすがにマズイっしょ!親子で結婚なんて!!」 桐生 「わたしが許すよ?」 彰利 「許さんでください!!     あたしゃただでさえ重婚のことでどこぞの骨野郎に馬鹿にされとんのですよ!?」 真穂 「骨って……南無さん?」 彰利 「出ュ浮ですよ!あンのカルボーン野郎!人のこと根掘り葉掘り聞いてきやがって、     しかも聞くだけ聞いたら散々馬鹿にして去っていきおったわ!!     ひとりに愛を注げないとはダセェ骨ねぇ〜〜!!とか!!ギギギーーーッ!!!」 もう辛抱たまらん! いつか身体と顔を乖離して、顔をどっかに埋めてやる!! 真穂 「ふぅん……ねぇ、それで弦月くんはそれがダサイなんて思ってるの?」 彰利 「思ってませんよ!!     漢だった昔ならいざ知らず、男である俺は俺なりの幸せを見つけました!!     これは俺の勇者としての幸せだ!誰にも文句は言わせん!!     それに俺は本気で彼女たちを愛してる!!そこに偽りは無い!!」 中井出「胸張って言ってるけど、傍から聞けば外道発言だな」 彰利 「なんとでも言え。俺は本気だし、自分の気持ちに嘘はついてない。     だから間違ったことも言ってるつもりはまるで無い。     知ってる?日本では禁止されてる重婚も、     外国のどこぞの国では認められてるんだよ?     それを盾にとるつもりは微塵にもないけど、     俺はもうこれが自分の幸せだって認めてるし受け入れてる」 中井出「君が望む永遠って呼んでいいか?」 彰利 「そりゃお前失礼だぞこの野郎。俺達は互いが認め合った上でそれぞれと結婚した。     あんな、どこぞのおなごと寝ておいて、     寝たら急に冷たくなるような野郎と一緒にすんな」 粉雪 「わたしとしてはふたりっきりが良かったんだけどね……」 彰利 「……後悔しとる?」 粉雪 「してる。しないわけないじゃない。     好きな人とふたりっきりで居るのはとっても幸せなんだよ?」 んむ、そりゃ俺もひしひしと感じてる。 粉雪 「それが気づけば嫁が三人……頭痛かったよ」 彰利 「謝らんよ?」 粉雪 「謝ってたら刺してた。べつに今が幸せじゃないなんて、そんなことないんだから。     大体、虫が良かったのはこっちだって同じだしね。     一方的に拒絶して一方的に傷つけて。     それで彰利のことが解ったらいきなりヨリを戻そうなんて、     殴られたって許されるような最低行為じゃなかった」 彰利 「ああ……だから比較的簡単に一夫多妻を了承してくれたと?」 粉雪 「……わたしの方こそゴメンだったの。     謝るくらいで許してもらえるなんて思ってなかった。     もちろん彰利が、     他人の気持ちを利用して許しを乞うなんて行為が嫌いなのも知ってた。     でも仕方なかったの……だって好きになっちゃったんだもん……」 彰利 「粉雪……」 粉雪 「彰利、ごめんね……。謝っても足りないと思う。     でもこんなことしか出来ないから……」 彰利 「……いや、いいよ。     みんなから否定される中で、お前と悠介だけが味方で居てくれた。     お前が許してくれるなら、こんなに嬉しいことはないよ」 粉雪 「彰利……っ……彰利ぃっ……!」 彰利 「粉雪……」 涙に濡れる粉雪の瞳。 その雫を指でやさしく拭った。 そして、まるで長年離れていた恋人と再会を果たしたかのように、 自然に唇を寄せてゆき───まちゅり。 丘野 「おおーーーっ!!」 蒲田 「ぶっちゅだぶっちゅ!」 まちゅっ、まちゅり…… 岡田 「ナイスぶっちゅ!」 麻衣香「たはは……見せ付けてくれるよねぇ」 まちゅちゅ……まちゅ…… 中井出「はは……───……えーと」 中村 「ん……あぁ、なぁ?」 まちゅ……ちゅちゅり…… 悠介 「……いつまでやってんだよお前ら」 総員 『よくぞ言った晦!!』 彰利 「ムチュ?」 丘野 「ムチュじゃねぇ!お前らぶっちゅ長すぎ!告白してる女に恥かかすなよ!!」 や、そげなこと言われたかて……どう返事しろっての? 粉雪 「いいよ、わたしは」 彰利 「なんと!?」 真穂 「え───ほんとに?」 粉雪 「空界に住むなら文句なんて無い。わたし、真穂のこと嫌いじゃないし。     それに地界ではわたしだけが妻だし。でも───」 真穂 「でも?」 粉雪 「……好きになるからには半端はしないで。心から、彰利を愛して」 真穂 「───っ……うん!」 桐生 「望むところだよ!」 彰利 「ア、アノー……ボ、ボクの意見は……?」 粉雪 「知らない。大体、誰にでもやさしい素振りを見せる彰利が悪いんだからね?     少しは責任感じてるの?」 彰利 「せ、責任ったって……俺は有りの侭に男道を進んだだけなのですが……?     困ってる人が居たら助けたいじゃない?     あんなクズ親とは別の自分になりたいじゃない」 粉雪 「それは解ってる。ちっちゃい頃に彰利がわたしの家に来てからずっと、     彰利が辛い目に合ってることなんて解ってた。     だから出来るだけのことは受け止めてあげたいと思ってる。     夫の馬鹿な行為を許してあげるのも、妻の務めですから。     ……言っておくけど、浮気じゃないから許してるんだからね?     浮ついた気持ちで誰彼構わず手を出すんだったら……殺すから」 彰利 「ヒィッ!!イ、イェッサー!!」 怖い!怖いです妻が!!今殺すって言った!!言ったよね!? なんてことでしょう!妻が僕に保険金をかけて殺そうとしているンだッッ!! ……や、冗談ですけどね? 中井出「よし頷いたな?よかったなー桐生。これで、晴れて弦月ファミリーの仲間入りだ」 彰利 「ギャア!?い、いや違いますよ!?今のはつい恐怖で───」 粉雪 「……そうなんだ……。わたしに恐怖したんだ……彰利は……」 彰利 「ヒイ!?ギャアあのちょっと待って!!心に余裕をください!!     今の俺は正しい判断が出来やしねぇーーーーっ!!!……マズイですよ!?」 桐生 「ア〜キちゃんっ♪」 がばしっ! 彰利 「キャーーーッ!!?な、ななななんばしようとや!?」 桐生 「ん〜〜〜♪」 彰利 「!?ギャ、ギャーーーッ!!早まっちゃならねぇキリュっちぃーーーっ!!!」 なんということでしょう! 突如として抱きついてきたキリュっちが、僕に向けて唇を突き出してきたのです!!! ヤバイ……ちょっと、これシャレにならない。 だって、恩師だぞ?俺の小学生時代を暖かく包んでくれた人だぞ? そんな人が俺に───まちゅり。 彰利 「───!!!───…………」 その時、俺の中で何かが壊れた。 ……なんというか、恩師像、とでもいうのだろうか。 美化されていたなにかが崩れた気がした。 けど───それが逆に効果を現した。 像が壊れちまったなら仕方ない。 覚悟、決めよう。 誰がなんと言おうと関係ない……俺は真剣に、彼女達を愛することをここに誓う。 これは俺の意思だ。 既に、望んでないものなどではない。 それに、キリュっちってばきっとファーストチッスだよ? そげな純情ガールに恥をかかすわけにはいくめぇよ。 それにその……ねぇ? 今だから言えるけど、幼心に憧れてたというか、惹かれてたりもしたみたいだし。 でもこれだけは解ってね?出ュ浮。 俺には軽い気持ちなんて一切無いと。 宗次みたいに女にだらしなく生きたくないからってこうするんじゃない。 俺は築いてみたいんだ。 自分の手で、賑やかで幸せな“家族”ってやつを。 彰利 「……ここに誓いのチスを受け入れました。     拙者、弦月彰利……キリュっち……いや、     仁美を我が妻として娶ることを誓いましょう」 仁美 「!!」(グボンッ!!) 彰利 「あ」 真穂 「わっ、お母さん顔真っ赤……あ、じゃあわたしも。いいかな、キスしても」 彰利 「む。どんとこい」 真穂 「う、うん……じゃあ……」 彰利 「さあこい」 真穂 「……う……えっとその……目、閉じてもらえないかなぁ……」 彰利 「何故かね?」 真穂 「だ、だってそんな、初めてなのに目を開けたまま、なんて恥ずかしくて……」 彰利 「ぬお───」 なんとまあ……初めてだったんか? オラたまげただ……。 真穂 「な、なにっ!?悪いっ!?ずっと取っておいたんだからしょうがないでしょ!」 彰利 「いいえ、なんにも悪いことなど。けど───本気で俺でいいの?後悔しない?     ファーストなら尚更ですよ?」 真穂 「いいの。気持ちに変わりは無いよ。わたしは弦月くんを真剣に愛すし、     そうすれば弦月くんも愛してくれるって解っちゃうから。     だから自信持って言うよ。……わたしと、結婚してください」 彰利 「───……うん。身に余る光栄です」 コクリと頷くと、今度は真穂さんと誓いのぶっちゅをした。 その時、どうしてか俺の瞳から涙がこぼれ─── 彰利 「あ、あれ?……う……」 ただ、なんとなく確信した。 俺の体は、心は、もう二度と“漢”を目指せなくなってしまったのだ、と。 けど、それもいい。 俺は我が生涯を家族を幸せに導くと約束しよう。 そりゃねアンタ、こんなとっかえひっかえみたいにぶっちゅしてりゃあ、 自分が情けなくて泣きたくもなる。 でもそれは漢を捨て切れなかった部分が命とともに流れただけのことであり、 俺の身にはもう迷いなんて微塵にも残っていなかった。 彰利 「我極めたり……」 もう覚悟は決まった。 周りになんと言われようが、ピエロと呼ばれようが耐えてみせよう。 そして大切だと思う人を幸せに導きましょう。 もちろんこの姿のままで。 だってねぇ、我が家族たちってみずき以外は地界人に関連無いし。 そりゃあ閏璃さんや穂岸さんといった皆様は地界人だけど、理解者だから。 だからもう、俺若いままで生きます。 悠介もきっと頷いてくれることで───シュボンッ!! 彰利 「……ややっ!?」 心に強く、『ピエロになっても生きてゆこう』と刻み込んだ途端、 我が身体がピエロ=ボルネーゼに……? ピエロ「あ、あのー……悠介?」 悠介 「んあ?ああ、ピエロになっても構わないって心から願えば、     ロビンスーツがピエロスーツになるように書き換えといた」 ピエロ「な、なんでまた……?」 悠介 「はぁ……あのな、     俺は親友が何度も頼んできてることをあっさりと聞き流すほど外道じゃないぞ?     ……まあ、って言っても気まぐれみたいなものなんだが。     いっつもこうやって気まぐれが働いてくれれば、     周囲とも打ち解けやすいんだろうけどな。生憎とそう器用じゃないんだよ」 感情の方は特にな、と胸を握り拳の親指と人差し指で叩く親友。 ぶっきらぼうな対応だが───その顔は真っ赤でした。 ィヤッハ、純情ですなぁ。 では俺───否、ボクもピエロとして立派に責務を果たしましょう!! 【Side───End】
柾樹 「豆村!?豆村ぁああーーーーーーっ!!!!」 刹那 「しっかりしろビーン!!傷は───だ、ダメだ!フォローしきれん!!」 豆村 「エルマナコメモノハパポペマム……フィブリル!」 刹那 「ヒィイ!!なんかインチキメルニクス語喋ってる!!!     帰ってこい!帰ってくるんだビーーーーーン!!!」 テレビの中で父親の重婚を知った豆村が気絶というか失神というか。 ともかく口からエクトプラズムとともに謎の言葉を吐き出していた。 しかも当の彰利さんときたら、さらに重婚を重ねるつもりらしい……。 豆村 「───待てよ?」 刹那 「オッ……ビーン!?正気に戻ったのか!?     あ、いや、普段からどっちが正気なのか     解ったもんじゃない性格ではあるわけだが、ともかく良かった」 豆村 「いいのか?それ。いやまあともかく俺は確信したね」 柾樹 「確信って……なにをさ」 豆村 「こと“恋愛”に限り!!     俺は親父にとやかく言われる覚えはねぇってことだ!!     だってそうだろ!?重婚だぞ重婚!ひとりだけに愛情注ぐことが出来ねぇんだ!     なんだよそれおかしいだろ!?俺ゃあんな男には絶対ならねぇ!!」 刹那 「……ビーンよ。ならば問うが、キサマが持っている感情は愛情か?」 豆村 「?愛情だろ。俺は深冬のことが大事だぞ?」 刹那 「大事?愛してるんじゃなくて?」 豆村 「……刹那。何が言いたいのかキッパリ言ってくれ」 刹那 「俺さ、お前が言うほど彰利さんに嫌悪感抱かなかった。     むしろ感心さえしたよ。だってそうだろ?     あの人は浮ついた気持ちで女性を受け入れるんじゃなくて、     きちんと幸せにしようって意思のもとで受け入れてた。     浮気なんかじゃないんだよ。自分が最低かもしれないって解った上で、     それでも幸せにしようって意思を持ってる。お前とは違うよ」 豆村 「ぬっ……違って当然だっつの!俺は深冬だけを守り続けるんだ!     あんな風に多人数を相手になんて出来るか!正気じゃねぇよ!!」 刹那 「だったらそれが答えだろ?     あの人はそんな“正気じゃないこと”をやろうとしてる。     実際お前にこうして嫌われてるわけだけどさ、嫌ってるのお前だけだぞ?     こういうことが起きて、親父さんとお袋さん、なにか変わったか?」 豆村 「───う……」 微妙に変わった気がしないでもないけど。 ピエロだし。 ピエロ《ハイハイ会場のみなさぁ〜〜ん?     今日はピエロのために集まってくれてありがとねぇ〜♪》 鷹志 《いや、お前のためじゃないが》 中井出《大体なんでいきなり指揮をとってるんだ?》 ピエロ《ピエロだからさぁーーーっ!!?》 凍弥 《晦……大変な姿にしてくれたなぁ》 悠介 《言うな……早速後悔してる》 ピエロ《後悔する必要なんてないさ?そんな苦悩なんてピエロが吹き飛ばしてあげるさ!     なんてったってボクは世界レベ〜ルのピエロだからね!!》 悠介 《世界レベルって、どのへんが》 ピエロ《世界レベ〜ルのピエロともなれば、様々な国の言葉も話せるさ?》 中井出《じゃあなにか話してみてくれ。日本語以外で》 ピエロ《ぼくドラーモンです》 総員 《日本語じゃねぇか!!》 ピエロ《ゲッ……!ピ、ピエロにだって間違いはあるさ!?》 凍弥 《世界レベール失格!!今すぐそれ脱げエセピエロ!!》 ピエロ《なんてこと言うさトーヤ!!これはボクの制服なんだよ!?》 悠介 《制服っていうか、ただの道化師の服だろ》 ピエロ《ノゥッ!!これは制服さ!ていうか創造者自身がそげなこと言わないでよ!!》  ざわ…… 中井出《いや……どう考えてもただの道化服だろ》 鷹志 《制服……ではないよなぁ》 悠介 《満場一致でピエロ剥奪。ドナルドにでもなってろ》 ピエロ《イヤァアアアアーーーーーーーッ!!!!》 シポォンッ!! ピエロの姿が煙に包まれた。 でもその煙もあっという間に晴れ───現れたのはご存知、白顔のアフロメン。 柾樹 「……ドナルドだ」 刹那 「ドナルド……だな」 豆村 「ざまぁないなぁ……」 マリュリュリュン♪ ドナ様《ハッピー、セェット♪》(訳:お前ら表へ出ろ) 中井出《いや……少しは動揺とかしろよ》 ドナ様《ハイそこうるせぇーーーっ!!でも悪い気分じゃないね。いいね、ドナ様》 オリバ《イイネェ〜〜ハンドポケット。気ニ入ッタヨ》 ドナ様《話の腰折ンなやオリバッッ!!》 丘野 《ド、ドナ様は構えてすらいないッ……!対してオリバはハンドポケットッッ!!》 中村 《オモシロイッッ!!ドナ様がおちょくられてるッッ!!》 ……どうでもいいんだけどさ。 柾樹 「えっと……なんでわざわざ誰かが喋る度に、     喋ってる人の名前が画面下に出てくるのかな。     お陰で初対面なのに名前がわかっちゃったよ……」 刹那 「解りやすくするためだろ」 柾樹 「………」 そうかも。 【ケース17:ドナ様/I'm lovin'It】  ざわ……           ざわ…… ジャリッ…… 丘野 「!!ドナ様が構えたッッ!!」 中村 「やる気だッッ!!オリバと真っ向からぶつかる気ッッ!!」 オリバ「───……オヤオヤ、フフ……相手ガ構エテイルノデ自分モ構エル……     意外トミミッチイト言ウカ……」 真穂 「えっと。それ、普通だと思うんだけど」 ズパァン!! オリバ「ウベッ!!」 総員 『ワッ!!』 無防備なオリバの頬にビンタを進呈。 でも格好がドナ様なためにイマイチどころか全然格好つきません。 ドナ様「何故抜かぬ」 オリバ「………」 ドナ様「反撃できぬまでもポケットから手を抜くことくらいはできるだろう」 オリバ「………」 ドナ様「速すぎたのかな?ならば……」 ゆっくりと拳を挙げて振るう。 するとオリバがポケット(つーかパンツ)から手を抜き取ろうとしてゴッ!! オリバ「………」 オリバの頬にドナルドナックルがキマった。 ドナ様「どうした。抜いたら反撃だろう」 オリバ「………」 ズボッ!! 丘野 「ドナ様もハンドポケットをッ……!!」 中村 「オモシロイッ!オリバがおちょくられてるッッ!!」 鷹志 「……からかえればどっちでもいいわけな」 原中だし。 ドナ様「さァ、打ってみろ」 丘野 「馬鹿なッッ!!零距離でオリバに攻撃を許すなどッッ!!」 柿崎 「楽しそうだな」 中村 「どんな時でも楽しめる時は楽しむのが原中魂」 ドナ様「この距離なら腹を打つもよし、金的を蹴り上げるもよし。     一瞬でカタがつくだろう」 ざわ…… 中井出「世話がねェぜ。Mr.アンチェインが縛られてやがる」 オリバ「………」 グ……グ……グ…… オリバ「ヤラセテモラウゼ遠慮ナク」 オリバの腕が天高く持ち上げられる。 血管ムキムキです。殴られたら一発で死ねそうです。 オリバ「俺ハ経験主義者ナンダ。アメリカ人ダカラナ」 凍弥 「インドじゃないのか?」 丘野 「バカッ!死にたいのか!!」 凍弥 「冗談だって!」 オリバ「ポケットニ手ヲ入レタママデモ先ニ当テチマウ。     ソンナ神秘ハ───信ジネェ」 ヴオッ!!───オリバの両腕が一気に振り下ろされるッッ!! つーかちょっと待て!ヴオとか鳴った!ヴオとか!! だがここまで引っ張ったからには怪力無双の一撃を避けてビンタと貫手を─── ズボッ───パァンッ!! オリバ「ッ……!!」 なんとか避け、なんとかポケットから素早く手を抜いて攻撃することに成功した。 良かった……本当に良かった……!ドナ様のポケットがデカくて良かった……!! あとちょっと抜くのが遅かったら潰れてたよ俺……!! ドナ様「───!!」 あとはこの貫手をオリバの喉に突き刺せば───私がチャンピオンだ!! ボリュッ───ベキョリャァッ!! ドナ様「……アレ?ギャアアアアアアアアアアアッ!!!!!」 丘野 「うお……」 中村 「うわぁ……」 信じられねぇ!!この怪力無双、喉で人の貫手を粉砕しやがった!! つーかどういう喉の硬さしてんのこの人!! いやそれより痛い!とんでもなく痛い!!折れた指の骨が皮突き破って刺さってる!! ドナ様「刺さったぁあああっ!!刺さったぁああああっ!!」 丘野 「ヒデさん!!ヒデさァんっ!!!」 ドナ様「やかましゃあっ!!!!」 おぉおお痛い!!あぁあああ痛い!! 驚愕的事実です!このオリバ身体硬すぎ!! まさか腹筋でもないところで貫手が折られるなんて!! ドウイウ肉体ダ……!?コレ以上ハナイト言イ切レルインパクトデ刺シ込ンダハズ……! 常人ナラ悪クスルト即死……最低デモ昏倒(ダウン)
ハ免レヌタイミングダッタ……!! ドナ様「───アレカ!アノブッ()(クビ)ガショックヲ吸収シテシマウ!!」 丘野 「や、アレかもなにもないだろ。あの首に指折られたんだから」 ドナ様「グ、グムーーーッ!!!」 オリバ「戦力分析は終わったかね。ならば逆立ちしても勝てぬことは解」 ズパァン!! オリバ「ウベッ!!」 ドナ様「何故抜かぬ」 丘野 「いや抜いてるだろ───って、い、いやっ!!これはッッ!!」 中井出「ハ、ハンドポケットッッ!!」 岡田 「いつの間にッッ!!つーかおい!     ドナ様が骨折した方の手で叩いたみたいで悶絶してる!!」 悠介 「よし無視だ。いい加減テレビの前のみんなが呆れてる頃だぞ」 ドナ様「ひでぇ!!つーかそんなもん、ここの画面が映った時点で呆れてたっしょ!」 悠介 「いーから早く手を治せって。深冬が怯えてる」 ドナ様「む、そりゃいかん。ベホイミ♪」 パァアア…… ドナ様「THE・完治!」 深冬 「……はふ、良かったです……」 ドナ様「ィヤッハ、ナンノナンノ!     つーかさ、オリバに手ェ出すと絶対無事じゃ済まないよね」 丘野 「手を出そうと考える弦月も弦月だと思う」 いやはやまったくで。 ドナ様「ではそろそろ暴露の時間といきましょう!!     テレビの前の小僧や小娘ども!覚悟はいいかぁ!?荊棘を踏んだぞぉ!!」 中井出「さっきまで踏みまくってたお前に言われてもなぁ」 ドナ様「おだまり!!ともかく!     じっくりと彼ら彼女らの中の常識をブチ壊してあげましょう!     我らがドナ様の名の下に!」 中井出「パラッパッパッパァ〜♪」 総員 『I'm lovin'It!!』 こうして僕らの暴露話が始まりました。 さて……まずはどげなことから話したものか。 Next Menu back