───冒険の書73/明かされぬ真相───
【ケース245:橘鷹志(再)/楽社員】 ゴコォンッ……!! 兵士 「こ、こらっ!今騎士団長と王が作戦会議中でっ……!!」 レオン「うん……?お前らは───いい、トリノ。彼らは私の知り合いだ」 兵士 「き、騎士団長の!?し、失礼しましたっ!!」 ……。さて。 提督軍が進む道を適当なまでに付いて来た俺達だったが─── 今現在立っている場所は、誰がどう見てもセントールの謁見の間だった。 レオン「藍田か。それに中井出、といったか。     しかも後ろに居るのはセントールから出ていった者たちじゃないか」 凍弥 「ヘロウ」 来流美「だからっ……!     なんであんたは謁見の間に来ると絶対にいつもより砕けるのよ……!」 凍弥 「ピンと張り詰めた空気が俺に、自らを破壊してくれと願ってくるからだ」 柿崎 「ああ気にせんでください、いつもの発作ですから」 レオン「いや、それは元より気にしていないが……どうした?     これから戦争が始まることを知らないわけではないだろう?」 藍田 「それなんだけどな、手伝いに来た」 レオン「手伝いに?……理由が解らないな。お前らには関係の無い戦だと思うが」 藍田 「こちとら相手勢力にデッケェ借りがあンのよ。     それを返さないと気が治まらん。     いや、むしろ奪われてるんだから返してもらわなきゃ気がすまんのか。     ともかく。そっちが付いてくるなって言っても俺達は行くぞ」 レオン「………」 レオンが小さく溜め息を吐く。 そしてレックナート王になにごとかを囁くと、一度頷いたのちにこちらに向き直った。 レオン「解った。協力はむしろありがたい。準備が出来ているならすぐにでも向かうが」 藍田 「それが、ちと準備には手間取ってるんだ。     鍛冶屋に武器鍛えてもらっててな」 レオン「それならばセントール御用達の鍛冶屋を紹介しよう。彼ならば───」 総員 『いいやそれはダメだ』 レオン「なに?何故だ?」 中井出「何故ってそりゃ……なあ?」 丘野 「で……ござるよねぇ?」 藍田 「頼んであるのは今や俺達御用達の鍛冶屋だ。     ヤツの腕じゃなければ納得いくものは出来ないんだよ、レオン」 レオン「む……信頼のおける者に武器を託すのは悪いことじゃない。     気にするな、そちらのほうがいいというのならそちらのほうがいいのだろう」 ……猫だけどな。 あんな猫が武器を鍛えられるのは物凄く異常だよな。 レオン「では私達は先に行くが。目的地は解っているか?」 藍田 「や、知らん」 レオン「そんなことだと思った。トイを案内人にしよう。───トイ」 トイ 「了解しました」 藍田 「場所教えてくれれば俺達勝手にいくぞ?」 レオン「……そうだな、お前らは冒険者だ。場所くらいは知っているだろう。     いいか、場所は───かつての呼び名で“オルクヴィレッジ”。     今の呼び名は“魔王殿ウォズトロヤ”。獣人たちの本拠地だ」 中井出「───獣人?」 藍田 「獣人……謎の勢力ってのは獣人勢力のことだったのか」 丘野 「……いい度胸でござるな」 麻衣香「そっかそっか……獣人勢力だったんだ」 夏子 「出来る限りの地獄を……」 殊戸瀬「身を以って思い知らせてあげるわ……」 中井出「解った、地図なら持ってるから俺達だけで勝手に行く。     お前らは先に行っててくれ」 レオン「───解った。だが、辿り着いたからといっていきなり乗り込むな。     これは戦争だ。一部の勝手な動きが全体に死を齎すものだ。     いいか、指令が出るまでは魔王殿の周りを囲むようにして待機だ」 藍田 「もちろんだ。俺達だってこの戦い、     確実に相手勢力を潰さなきゃいけない理由がある。     ただし、突撃が始まったら指令がどうとかなんて関係なくやらしてもらうぞ」 レオン「そこは好きにしろ。兵でもないお前らをそこまで押さえつけるわけにはいかない」 ───会話成立。 あとは魔王殿とやらに行って、指令が出るまで待機してればいいだけらしい。 しっかし……いくらレベルが90台になったからって、俺達が役に立つかね。 中井出「お前らはどうする?ここからは付いてくるか来ないかは任せることになるけど」 凍弥 「行く。行って、外回りの雑魚どもを食い止めてよう」 来流美「珍しくカッコイイこと言う……と思ったら雑魚相手なわけね」 凍弥 「俺ゃ無理はしない男だ自分の力量を弁えてるからな」 鷹志 「まあもちろん、譲れないもののためなら無謀でも突っ込むが」 柿崎 「それこそ男が歩む道……漢道!!」 相手を掴んで自爆しそうな名前だった。 藍田 「よっしゃ決定だ」 丘野 「それでは武器が完成してるかどうかを調べにいくでござるよ」 中井出「出来上がった順にとっととウォズトロヤに向かうとしよう」 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「もう少しだ……もう少しだぞナギー、シード……!!     絶対に助けてやるからな……!」 その言葉がいよいよ迫る戦争への序曲を奏でていた。 さあ……数時間後の俺達はいったい、どうしてるんだろうか───。 【ケース246:弦月彰利/ビーストキングダム】 ザッ…… 彰利 『んで?剣術修行をしてた我らをわざわざ呼び戻していったいどういうつもりだ?』 獣人王『ウム。実ハ人間ドモガコノ魔王殿ヲ狙ッテイルラシイノダ』 飯田 『なに?そうなん?』 獣人王『アア。確カナ情報ガアル。ソウダナ?ノイ』 ノイ 「へへ……ああ、間違いないですぜ。トイ兄ぃからの情報だ。     セントールとエトノワールがここを狙ってるって聞いたぜ」 彰利 『へー。んで、キミ誰?』 ノイ 「へへっ、俺ゃセントールの元兵士ですわ。     大罪の濡れ衣を被せられて死刑にされそうになったところを逃げ出してきたんだ」 飯田 『濡れ衣?なんだそりゃ』 ノイ 「悪いがこれ以上は教えられねぇ。     ただセントール王レックナートは俺にデケェ借りがある。     もしこの情報を流したのが俺だと知っても知らなくても、     俺が生きているって知っただけで殺しにくるだろうな」 彰利 『トゥシューズに画鋲でも入れたんか?いかんよ?そんな乙女チックなイジメ』 ノイ 「なにそれ!?」 どうやらヒロラインにはトゥシューズが存在しないらしい。 うーむ、初めて知った。 でも流石に画鋲だけで殺すほど非道じゃねぇよね、うん。 ノイ 「ま、まあいい。     とにかく、俺は俺しか知らないレックナートの秘密を知ってるのさ。     けど噂を流してみたけど、誰も信じなかった。だから俺はいつか───」 彰利 『秘密話のくせにベラベラ喋んなコノヤロー』 ノイ 「おっ───と、っとと、あ、危ねぇ……。今の話は忘れてくれ」 獣人王『トモカク、ソウユウコトダ。     恐ラク少シモシナイウチニ、コノ城ハ囲マレルダロウ』 彰利 『言われた通り他の獣人勢力にもtell飛ばしたけどね。来るか解らんよ?』 悠介 『いや、もう来てる』 彰利 『オワッ!?ゆ、悠介!?キミ戦う必要が無い時以外戦わないんじゃ───』 悠介 『こういうイベントに首を突っ込まないヤツは男じゃねぇ』 飯田 『よっしゃよく言った晦!!』 蒲田 『一緒に暴れようぜ!!』 皆川 『よし、じゃあ敵勢力が来る前に武器を鍛えてもらってくるぜ〜〜〜っ!!』 永田 『お、俺もだ〜〜っ!!』 佐東 『お、俺も〜〜〜っ!!』 ……せやね。 ジタバタしててもしょうがなかろうもん、きっちり迎え撃ってやろうじゃねぇの。 獣人王『出来立テホヤホヤノコノ城ヲ狙ウトハイイ度胸ダ……!!殲滅シテクレル!!』 王様もノリ気みたいだし、そりゃもう全力で返り討ちにしてくれよう。 おお……そう身構えると不思議と楽しくなってくる。 これも原ソウル?───うん、実際ワクワクしてるし、もうどうでも構わん!! 凍弥 『戻ったぞ〜。って、彰衛門ももう来てたのか』 彰利 『オウ小僧。それに双子にサコタヨーシェ』 佐古田『アイシャルリターンッス』 浩介 『いや、佐古田好恵の斧は本気でバケモノ並の強さである。我はつくづく驚いた』 浩之 『然り。もはや人間用武器にあらず。     攻撃する際に隙だらけになるものだから、     何度佐古田好恵が戦闘不能になったことか』 浩介 『つくづく然り。武器が強くても当たらなければ意味がないのである』 志摩 『この持ち腐れ女めが』 佐古田『いちいちうるせーッスてめぇら!!激黙ってるッス!!』 彰利 『うるせーーーっ!いちいち叫ぶなヨーシェ!!』 佐古田『ヨーシェじゃねぇッス!!』 獣人王『騒グナ。ソレヨリモ準備ヲシテオクノダ』 彰利 『りょーかい。まず城に続く橋を引き上げとくわ。     こうしときゃあわざわざ急な坂下りて川を歩いて、     さらに急な坂を上ってこなくちゃならなくなる。     で、戦略から言えば下に居るより上に居るほうが有利であるからして───』 悠介 『登って来たところを攻撃か。その他にも予防策があったほうがいいな』 獣人王『ナラバ“ゴリアテ”ヲ呼ボウ』 彰利 『ゴリアテ?』 ラピュタあたりでそれっぽい名前の戦艦がなかったっけ? ……忘れた。 獣人王『“ゴリアテ”ハ巨人ノ里ヲ追放サレタ巨人ノ戦士ダ。     行キ場ノナカッタ彼ヲ、我ラガ住ム場所ヲ提供スルコトデ協力関係トナッタ』 悠介 『巨人か。それはいいな』 彰利 『オウヨ、相当な守りになりそうだ』 獣人王『アトハ───我ラガ勢力ヲ魔王トドリアードニ強化シテモラウ。     ソウスルダケデモ我ラノ勝利ガ磐石ノモノトナルダロウ』 彰利 『オウヨオウヨ。誰が来ても注意して騙されんようにって言ってあるし。     敵が来たと知れば全力で協力するだろうよ、クォックォックォッ……!!』 悠介 『邪悪だなぁお前』 彰利 『死神ですからネ!!あぁ悠介?     オイラ真性の死神になったから、そこんとこヨロシク』 悠介 『そうなのか?』 彰利 『イエス。回路の全てを死神の回路で埋めた。     そんでもって鎌をさらに昇華させました。最強!《ビッシィ!!》』 おおビューテホー。 死神って素晴らしい。 悠介 『卍解を越えたのか。───まあ、漫画の中での話だしな、あれは。     それに先入観を抱いてた所為で越えられなかっただけだろうな』 彰利 『あら?そんな簡単に納得……ってそうか。     それだけ越えられないものなんてないって常に思ってるってわけか』 悠介 『厳密には“そうありたい”って意識してるだけだ。     思ってすぐに超越できれば苦労しないよ』 そりゃそうだろうね。 簡単に超越できるんだったら、悠介ってばそれこそ敵無しになるし。 そして、この世界はそう簡単に敵無しになれるほど甘くはないのだ。 悠介 『鎌の能力は?』 彰利 『黒の増幅と汲々のみ。     ロードオブデスラインゲートは死神皇としての能力で普通に発動可能だ。     ……あ、もちろんヒロラインじゃ使えんがね。     レヴァルグリードの力もあと少しで完全にモノに出来るし』 悠介 『黒の増幅と汲々か……能力だけ聞くと地味に聞こえるな』 彰利 『そんなもんさね。ただし、発動させるとレベルが二倍に膨れ上がりますよ?』 じゃなきゃギガノタウロスの攻撃なんぞ受け止められるもんかネ。 効果時間は短いもんだけど。 悠介 『二倍か。中井出の鬼人化を思い出すな。それとどう違うんだ?』 彰利 『鬼人化はステータス二倍。     真・ブラックオーダーはレベルが二倍。そう言えば解るかネ?』 悠介 『レベル───ってそうか。ステータス二倍はステータス分しか上がらない。     レベルはそのままだし、ステータスが50なら100になるだけだ。     けどレベルが二倍ってことは───     レベルアップボーナスもそれに含まれるってわけだ。     レベルアップによって上がるステータスはたったの1じゃない。     それが現在のレベルの倍分入るってことは───』 彰利 『そういうことナリよ。最強最大の卑劣技、それが真・ブラックオーダー。     100ちょいのレベルの俺でも、     これでちょっとの時間だけ200レベルに達するわけだ』 悠介 『なるほどな。強気になるわけだ』 彰利 『で、キミのほうに秘策は?俺ゃ限界を超えることが出来たが、キミは?』 悠介 『さあ、どうだろうな』 彰利 『なっ……テメー!俺のだけ聞いておいて種明かし無しかコノヤロー!!』 悠介 『明かせるほどのタネがないって言ってくれ。     悪いけど俺はそんなに成長出来たわけじゃない』 彰利 『グムッ……』 なんとまあ……当てが外れたか? だがきっと貴重な戦力にはなるでしょう。 どれ、レベルは───……うおう、何気に100に達してるじゃねぇの。 なにが戦おうと思った時以外はだ、 ここまでレベルがあるってことは、相当場数を踏んでるってことじゃないかネ? 聖  『パパッ!?』 椛  『おとうさん!?』 彰利 『キャーーーッ!!?』 しまった!こやつらまで来るとは計算外!! でもアレ!?なんでこんな凄まじいタイミングでこの子らが来るの!? もしやエスパー!? 悠介 『ああスマン、俺が呼んでおいた』 彰利 『悠介ぇええっ!!てめぇえええええっ!!!』 悠介 『がーんばれ、親父さん。俺ゃ適当にやるから』 聖  『……パパの居場所を教えてくれたことには感謝しますが───』 悠介 『───黙れよ』 聖  『っ───!?』 悠介 『知らせる以外の干渉なんかこっちから願い下げだ、クソガキ。     こっちから話し掛けてもいないのに、     俺を嫌ってるヤツが俺に話し掛けるな、たわけ』 聖  『なっ……なんですかその言い方!わたしはお礼を───!!』 悠介 『それが余計なことだって言ってるんだ。     俺は誰に礼を言われたくて行動してるわけじゃない』 椛  『あ、あの……おじいさま……?』 悠介 『お前もだ、椛。俺のことなんぞ今のうちから嫌っておけ』 椛  『嫌う……?何故ですか……?』 悠介 『その方が気が楽だぞ。お前らはなーんも気にしないで幸せの中に居ればいい』 む……? 彰利 『悠介?それってどういう───』 悠介 『解りっこないから精霊としての自覚の表れとでも思っててくれ。     近いうちに確実に解る時が来るから』 彰利 『待てコラコノヤロウ。     “思っててくれ”ってことは、本当はそうじゃないってこったろ?     俺にも言えねーのかコノヤロー』 悠介 『悪いな、“親友”じゃないお前にゃ話せない』 彰利 『じゃあ今から僕らは───』 悠介 『あーきとし。決めたことをそんな簡単に曲げんな。お前の悪い癖だ。     それにな、解ったところでどうしようもないことってのはあるもんなんだよ。     俺は今のうちに嫌われといたほうがいい。     いや、どっちかっていうと“俺が”みんなに嫌われたいんだよ。     そのほうが気が楽でいい。そのほうが楽に行動出来る』 彰利 『悠介……』 訳が解らん。 でも悠介はなにかを知っていて、 それのために築き上げてきた信頼っつーものを無かったことにしたがっている。 いや、違うか。 自分を少しでも嫌うヤツを視界や思考から追い出したがっている。 それが家族であってもだ。 けど───元々人付き合いが好きでもなければ上手くもなかった悠介だ。 そうすることにまるで躊躇が無い。 聖  『な……なにを考えてるんですか?もしかして同情でも引こうと───』 悠介 『干渉するなって───言ったよな?《ギンッ……!!》』 聖  『ひっ……!?』 悠介 『三度はねぇぞガキ……。気安く俺の領域に入ってくんじゃねぇ』 聖  『……っ……』 椛  『───!』 領域。 その言葉を聞いた時、一番ハッとしたのは椛だった。 そらそうだ、鮮明な話は知らんが、 かつての椛は領域がどうので随分と小僧や、近づく者を遠ざけていた。 加えて今の悠介の顔……ありゃあ、かつての不良時代だった頃に、 俺と若葉ちゃんと木葉ちゃんと春菜以外に使ってた目つきと態度だ。 踏み込んでこない限りは普通なのに、一歩踏み込むとアレだ。 いきなりやられたら誰だってビビる。 彰利 『のぅ悠介?“近いうちに確実に解る”って、なにかが起こるのかね?     そしてキミはなにが起こるのか知っとるのかね?』 悠介 『知ってる。精霊として確立した時、その未来を見た。     そんでもって、それが避けられない未来だってこともだ。     残念ながらここまでの過程の全てがそこに至る糧になっちまってる。     ……気が変わってくれりゃあ嬉しいんだけどな。     どうやらヒロラインが始まった時点で歴史が他とは違うらしい。     んーでもって───ああいや、話したってしょうがない。やっぱ秘密だ』 彰利 『っておいおいおい!そこまで話したんだから続きを───』 悠介 『んじゃ、ひとつだけ。近い将来、お前は俺を殺すことになるよ』 彰利 『───へ?』 殺すって……ああそっか、ヒロラインでって意味かね? 悠介 『ゲームの中で殺すなんてものじゃないぞ?』 彰利 『っ……じょ、冗談だろ!?俺がお前を!?』 悠介 『言うのはそれだけだ。考えろなんて言わない、ぜーんぶ忘れちまえ。     そのほうが楽だぞ。お前は幸せの中に居て、ずっとずっと笑っててくれ』 彰利 『───』 ……感じたのはなんだっただろう。 寒気?……そう、寒気だ。 どうしてそんなものを感じたのか解らない。 いや……違うか。 “言ってることが本当だと解るから”、寒気がするんだ。 俺が、悠介を殺す。 それが真実なら…… 彰利 『───ちょっと待て!じゃあ約束はどうなる!?     ジジイになったら約束の木の下で───』 悠介 『喧嘩はちゃんと出来る。考えるなって言ったろ?忘れちまえ』 彰利 『───アレ?俺が悠介を殺すのに、喧嘩は出来る?ナニソレ。     ってコラ待てっての!話はまだ終わってねー!!     もしかして一人での冒険を選んだのもそれが理由か!?     自分を殺すヤツとは一緒に居たくねーってのか!!     そんな未来はまた俺が破壊して───』 悠介 『だーから。この未来は覆らねーんだっての』 彰利 『大丈夫!僕なら出来る!』 悠介 『じゃあ訊くが。お前、ノートに勝てるか?』 彰利 『無理。つーか誰だって無理だろ』 悠介 『だったら諦めろ。この未来はそういったレベルの未来だ。     べつに俺はお前を恨んだり嫌ったりなんて微塵もしないし、     お前が気に病むことは微塵もない』 彰利 『無茶言うな!そんなこと聞かされて……!』 悠介 『知りたがったのはお前だろうが、馬鹿者』 彰利 『グムッ……!そうですがねキミ……!!』 悠介 『俺から言えるのはこれだけだ。“聞いたことの全ては忘れろ”。     お前なら出来るって信じてるし、     それが嫌だからって強くなることを放棄したって俺はお前を責めないよ』 彰利 『………』 やっぱり訳わかんねぇよ……。 なんの話をしてんだっけ、俺達……。 俺が悠介を殺すって……しかも悠介はそれを望んでて……ああ、なんなんだよ……。 あ───で、でも確かに俺が強くならなけりゃ悠介を殺すなんてこと、出来ないんだよな? だったら─── 悠介 『責めないけどな。その時は世界崩壊を覚悟しろ。     冗談なんかじゃないぞ?お前が強くならないと、この世界───     少なくとも地界は消滅する』 彰利 『───!?ふっざけんな!なんだよそれ!!なんで俺の肩なんかに世界が───』 悠介 『言っただろ。これから訪れる未来を根本から捻じ曲げたいなら、     ノートを余裕で殺せるくらいの力が無けりゃ無理なんだよ。     そして、ノートは既存超越によって相手がどんなヤツでも勝っちまう。     0パーセントに賭けられるほど馬鹿じゃないだろ。     そもそも望みがないにも程がある。そんなの、北斗の伝承者でも解ってることだ』 彰利 『………』 そりゃそうだ、スッピーには勝てない。 つまりこれから起こる未来は“それが当然”ってくらいに変えることが困難で…… けれどその未来を辿ると俺は悠介を殺して…… じゃあ……じゃあ─── 悠介 『なぁ彰利。……この世界、好きか?』 彰利 『え……あ、ああ。じゃなきゃここまで生きようなんて思わなかった』 悠介 『だよな。……俺もだ。俺も、この世界が大好きだ』 彰利 『悠介……』 悠介 『強制はしない。でも、出来れば自分を鍛えてくれ。     俺の命と世界中の人達の命なんて天秤にかけるなよ?』 ……そんなの、かけるに決まってんじゃねぇか。 俺が誰のために無限地獄を生き抜いて、誰の未来を望んでここまで来たと─── 悠介 『……俺も同じだから』 彰利 『へっ?』 悠介 『俺も、そもそもお前が幸せに笑っていられる未来以外に興味なんてない。     その先で他の知り合いも笑ってくれたらそれでいい。それだけなんだ、俺は』 彰利 『けどそれじゃあ、俺はお前を殺した罪をずっと背負っていくことに───』 悠介 『大丈夫。お前は罪なんて感じない。そこんところは俺が保証する。     その時お前は、俺を晦悠介だとは絶対に認めない。だから殺せる。     ちっとは引きずるかもしれないが、きっと笑えるから気にすんな』 彰利 『………』 ますます解らなかった。 答えが欲しいのに教えてもらえず、考えても答えには辿り着けない。 元々考えるのは得意じゃないのに、まったく……。 悠介 『……さて。そろそろいい頃合だ。敵軍を迎え撃とうぜ、彰利』 彰利 『だ、だからまだ話が───』 悠介 『話すことは全部話した。あとは自分の目で全てを確かめろ。     実はな、俺も断片的なことしか知らないんだ。     でも───立ってた場所はヒロラインじゃない。地界だ。     だからヒロラインに居る最中は普通に楽しめ。     元々ここは、楽しむために作られた世界だ。     途中から俺と精霊たちの中では事情が変わっちまったけどさ』 彰利 『事情……?』 悠介 『じゃーな。俺は東側を守る。お前も適当に、けど全力で守れよー。     ルナを待たせてるんだ、あまり遅れると聞き耳たてにくる』 彰利 『いやちょっ……ああもう!!』 悠介は言いたいことだけいうととっとと去ってしまった。 事情が事情名だけに追おうともしたが、 追ったところでこれ以上は話してくれないのだという確信があった。 ここに居たのは頃合がどうとかなんて関係なく、話すことがあったから。 俺に話すべきことが無くなり、用が無くなったからこそここを去った。 それだけのことなんだ。 彰利 『忘れろ、考えるな、楽しめ……か』 はは、やっぱ訳解らん。 でもヒロラインの中では殺すがどうとかの心配がないのなら─── 確かにここに居る時は思い切り楽しむべきなのだ。 ……うん、よし。 今は考えないようにしよう。 今は己の勢力のために全力を出す! 彰利 『───よし!行くぞ聖、椛!!向かってくる敵など全て滅ぼす!!』 聖&椛『うんっ!!』 さあ行こう! 頭を支配しようとしてることなど全て忘れる!! そのためには全力でバトって別のなにかに夢中になるしかねー!! そう決めるや否や、俺は西側目掛けて走りだした。 誰だか知らんが、今日の俺はちょいと荒れてるぜ……!!後悔させてくれる!! 【ケース247:中井出博光/ブロッケン・シニア】 ザッ…… 中井出「そんなわけで……武器が完成したから来たわけだが」 レオン「ああ、よく来てくれた」 藍田 「現状はどんな感じだ?」 レオン「……なにかおかしい。     城へ続く橋が上げられていて、まるで来る者を拒んでいるようだ。     まさかとは思うが───攻められることを知っていたのではないだろうか」 丘野 「つまり?」 殊戸瀬「城まで行くには坂を下りて川をざぶざぶ進んで坂を上るしかない、というわけ」 丘野 「面倒でござるな……」 レオン「そうしているうちに弓矢で射抜かれるだけだろうな。これでは攻めようがない」 ウヌウ、いきなり行き詰まりか? 攻め込んでからならまだしも、攻め込む前にこんなことではどうにもならんにも程がある。 殊戸瀬「……ようは橋を降ろせばいいわけね?わたしが空から行くわ」 レオン「だめだ。飛竜に怪我をさせる気か。     獣人たちにも魔術を使う者が居ることを忘れるな」 藍田 「……ふむ」 中井出「おお?なにぞ策でもあるのか、藍田二等」 藍田 「イェッサー!やはりここはあれしかないかと!!」 中井出「あれ?あれって……あれ?」 藍田 「イェッサー!!一気に、かつ特攻に向く潜入行動といえばあれしか!!」 レオン「なんの話だ?」 藍田 「アルメ・ド・レール・パワーシュートの話」 中井出「いやあの……そんなことしなくても、     普通に突貫して川飛び越えて橋落としてくるよ?」 藍田 「いや、やっぱ轟音が高鳴ったほうがそっちに注意が行くだろ?」 中井出「壁に激突することを第一条件として話進めるなよ!!」 アレ痛いからマジで勘弁だ。 それよりどういう結果になろうとも、 まず突っ込んで相手の強さを知るとか───だめだな。 王国兵士たちってのはどうにもそういうコツコツしたことを嫌う感があるし。 中井出「あー解った。橋のほうは我ら原中がなんとかするから。     お前ら王国軍どもは落とした橋から侵入を開始してくれ」 レオン「……?どうする気だ?」 中井出「藍田は東から侵入、俺は正面から、丘野は殊戸瀬の飛竜に乗って城の屋上から。     で、女性陣たちは殊戸瀬が戻るのを待ってから西から侵入してくれ」 レオン「なに?それでは───」 中井出「ここまで来て小難しい策なんてしたら、兵たちが自由に動けないだろ。     むしろここまで来たら特攻あるのみ!!そんなわけで行くぞヒヨッ子ども!!」 ザザッ!! 総員 『Sir(サー)!!YesSir(イェッサー)!!』 さあ始めよう……後悔のお時間を!! 待ってろよ、ナギー、シード!! 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