───冒険の書74/俺達の聖戦(ジハード)───
【ケース248:中井出博光(再)/特攻】 中井出「イチ!ニ!サン!!───GO!!」 総員 『応ッ!!』 ザァッ!! 合図とともに同時に駆け出す! 地面を一気に蹴り弾き、今は速度のみに集中して地面を蹴る!蹴る!蹴る!! 獣人  『───!!来タゾ、敵ダ!!我ラガ同志タチヨ!!構エロォ!!』 獣人勢力『応ッ!!』 川へと続く巨大な急な坂の外回りに居た獣人たちが俺達に気づく。 だが構わねぇ、このまま突っ込む!! 生憎と立ち止まってられるほど落ち着いてなんかないんだよ!! 獣人 『ココヨリ先ハ我ラ獣人ノ領域!!タダデハ通サ───』 中井出「うるせぇ邪魔だぁああああああっ!!!」 ヴオゾバシャォオオンッ!!! 獣人 『ギッ……!!ギアアアアッ!!!!』 速度で地面を蹴ると同時に力を上げ、敵を横薙ぎに両断する。 そして蹴った足が地面に下りる前に速度を戻し、また走る。 止まってなんていられないんだ……!! 獣人  『油断スルナ!恐ラク先行部隊ダガ、カナリヤル!!マトメテカカレ!!』 獣人勢力『オォオオオオオオッ!!!!』 ここにナギーとシードが居る……!!それも連れ攫われてるんだ!! そんな場所が目の前にあるってのに……─── 中井出「それを見つめながら落ち着いてなんていられるかバカヤロウがぁあっ!!!」 獣人 『ナッ───!?』 ゾガシュドシュゾバゾフィザフィゴコォッフィィイインッ!!!! 獣人ども『ギャアアアアアアアッ!!!!!』 群がる獣人どもを双剣にした武器で斬り飛ばす。 足は止めず、そのまま前進しながら。 他の猛者どもが散り散りに移動するのを確認しながら、俺はただ真っ直ぐに進む。 中井出「トラップでもなんでも……かかってこいやぁあっ!!!」 やがて差し掛かる坂を、速度を落とさぬままに───むしろ落ちるように下ってゆく。 川は随分と深いのだろう。だがそんなことは問題としては二の次だ! 獣人 『馬鹿メ!愚直ニ下リテ来タカ!!コノ坂ハ通行止メダ!!     雨ノヨウナ矢ノ餌食ニナリタクナクバ下ガ───』 中井出「パワーポイント!!だぁりゃあっ!!《ドゥンッ───!!》」 獣人 『ナニッ!?跳躍シタ!?』 AGIはひとまずここまでだ。 STRに全てを託し、全力で地面を蹴り弾くと俺は高く高く跳躍した。 獣人 『バ、バカメ!イクラ跳躍力ガアロウト、我ラノ矢カラハ逃レラレナイ!!』 獣人 『構エェ!!』 そんなものは知らない。 元より眼中にも無い! 中井出「飛べ!ジークリンデ!!」 コォッ───ドォッファァアアアアンッ!!!! 獣人 『ナァッ……!!?』 ジークリンデから強烈な風を発生させることで、川も坂も一気に越えてゆく。 坂が急だろうが川が深かろうがそんなことはどうでもいいのだ。 ただ、出来るだけ早くあいつらの救出を!! 獣人 『坂ヲ越エラレタ!』 獣人 『スグニ坂ヲ登ッテ殺スノダ!!コチラハ弓矢ダ!     走リ去ロウトスル後姿ヲ狙ウダケデモ十分間ニ合ウ!!』 中井出「そんなことは予測済みだ!マグニファイ!!」 双剣を交差させ、10分アビリティを発動。 その余韻に浸る間も無しに、双剣を高速で振るってゆく! 中井出「10秒間の地獄をその身で感じやがれ!“黄竜斬光剣”!!」 シュゴフィフィフィフィフィフィフィィインッ!!! ゾガガガガガガガシャァアアアアッ!!!! 獣人勢力『ギャァアアアアアアアアッ!!!!!』 容赦も遠慮も一切無し─── そんなものをする暇があるなら一秒でも早く進み、一体でも多くブッ潰す!! 音が聞こえなくなった坂から目を背けると、 そのままの勢いで地面を蹴って城目掛けて走る。 途中、橋に繋がれた巨大な鎖を発見し、それを破壊する。 橋が下りるところなんて確認しない。 あとは上手くやってくれ、みんな。 【ケース249:丘野眞人/特攻2】 ゴォオオオオオ……!! 丘野 「よし!ここらでいい!     睦月、すぐに戻って綾瀬と木村の手伝いをしてやってくれ!」 殊戸瀬「うん!頑張って!」 丘野 「解ってる!じゃあなっ!そっちも頑張れぇえええっ!!!」 睦月が駆る飛竜に乗り、ウォズトロヤの城の屋上上空に来ていた俺は、 別れもそこそこに屋上目掛けて飛び降りた。 そして───着地すると同時に駆け出し、 睦月がどう動いたかなど気にせずに前へ進む! 獣人 『おぉっと!ここは通行止めだぜ!?』 丘野 「無理矢理にでも押し通る!!」 フフォンギヂィンッ!! 獣人 『つっ───』 丘野 「受け止めた!?チィッ!」 獣人 『バックステップは命取りィイイッ!!剣閃!!』 シュゴォッフィィインッ!!! 丘野 「くあっ!?」 忍者刀を受け止められ、仕切り直しをしようと後ろに下がったのがマズかった。 その隙をつかれ、剣閃を左足にまともにくらってしまった。 獣人 『この皆川───じゃなかった、     ミナゴウワに戦いを挑んだことを後悔させてくれる!     この屋上を通って下に行きたけりゃこの俺を倒してから行け!!』 丘野 「〜〜〜っ……後悔するなよその言葉……!」 獣人 『……あれ?なんでそんな熱くなってるのかな……?     え、えっとこれは僕らの楽しいバトルイベントで───あれ?』 丘野 「人の仲間を連れ去ったやつらが何を寝惚けたこと言ってやがる!     覚悟しやがれてめぇら!ブッ潰してやる!!」 獣人 『アレェーーーーッ!!!?』 丘野 「忍者モード・オン!いくでござる!!」 ジャリッ……ドファアンッ!! 獣人 『んなっ───!?その足の怪我でこの距離を一気に───!?』 丘野 「忍者刀二刀流───回転刀舞六連!!」 獣人 『くっ……!ナメんなぁあああああっ!!!!』 フフォンジャギギギギギギギィンッ!!!! 高速で回転しながらの二刀の閃きが獣人を襲う! が───その悉くが弾かれる!! 獣人 『刀の動き、狙う場所、大体予測がついている!!     これでも剣技について学んだんだ!そう簡単には───』 丘野 「甘いでござる!」 スッパァアアンッ!!! 獣人 『えっ……?』 刀の軌跡に意識が集中しすぎている獣人の足を水面蹴りで思い切り払い、 さらに空に向けて蹴り飛ばし───苦無を投擲!! 獣人 『かっ……ぐ!こんなもん!』 ギャリィンッ!!ドォッパァアアアアアンッ!!!! 獣人 『ギャアーーーーーーッ!!!』 投げた爆弾付き苦無を上手い具合に剣で弾いてくれたお蔭で、勝負はあっさりとついた。 爆風に吹き飛ばされた獣人はそのまま屋上から落下。 俺はそんなものは無視してさらに先を目指して急いだ。 ───いや。 丘野 「───鎖?」 巨大な鎖が括られている柱を発見した。 その先を辿ってみれば、そこにはこの鎖のみで橋を抑えている鎖の姿が。 ……これでござるか。 丘野 「セィイッ!!」 バギャアッキィンッ!! 武器を当てた程度じゃ切れない巨大な鎖を、 STRをマックスにすることで斬るというよりは破壊した。 それと同時に橋は一気に倒れてゆき、折りたたまれていた部分が伸びると─── 坂と坂の間に巨大な橋を作った。 丘野 「……!」 それを確認したのか、セントール兵とエトノワール兵が一気になだれ込む! 怒号のような咆哮とともに、橋を駆ける兵士たちは、動く景色のようだった。 丘野 「……っと、のんびり眺めてる場合じゃないでござる!!」 ナギー殿とシード殿が何処に居るのか解らない以上、駆け回ってでも探さなければ!! そう思うと俺は頷いて、地面を再び蹴った。 【ケース250:藍田亮/特攻3】 藍田 「“悪魔風脚─(ディアブルジャンブ)───空 軍 ・(アルメ・ド・レール)パワーシュートォッ”!!」 ジュワドッゴォオッ!!ゴガガガガガガァッ!!!! 獣人ども『ギャアアアアアッ!!!!』 灼熱する足で獣人を蹴り飛ばし、奥に居た獣人軍団を吹き飛ばす。 放たれる矢が鬱陶しかったところだ、これは丁度いい弾になる。 斜面なんかを駆け上るよりも獣人を踏みつけて、グングンと坂を上ってゆく。 獣人 『オノレッ!!《ジュワァッ!!》グワァアアアアアアッ!!!』 藍田 「俺の足は今、熱された鉄板より熱いぞっとぉっ!!“受付”(レセプション)!!」 バゴチャアッ!! 獣人 『ゲウェエッ!!』 足を掴んだ獣人を、別の獣人の肩に足を掛けてから地面に蹴り叩きつける。 それが済むとまた坂を登ってゆく。 まだ降り止まない矢の雨は弧竜閃にて発生させる衝撃波で吹き飛ばし、 さらにさらにと上を目指す。 獣人  『突進ヲ許スナ!!殺シテデモ止メロ!!』 獣人勢力『オォオオッ!!!』 藍田  「元気なこったな、ったく!ほいっ、坂攻略!」 とはいえ、このまま走って城まで行くにはちと遠い。 そうこうしてるうちに背中を射られるのも面倒だ。 なら─── 藍田 「地の宝玉よ、俺に力を!地雷震!!」 灼熱の足に大地の力を込めると一気に地面を踏み砕く!! そうすることで辺りに一時的な地震を起こし、 敵勢力が坂を上る俺達を潰すために用意しておいたらしい巨大な丸い岩が落下する!! 獣人 『ア、ウアァアアアアッ!!!』 藍田 「これでちったぁ足止めになるか!?ははっ、そんじゃあな!!」 岩が坂を上ろうとする獣人たちを襲ってるうちに駆ける。 城までの距離はそれでも随分ある。 無駄に広すぎなんだよ、くそっ!!───っとぉ!?ヒュフォンッ!! 藍田 「おわっち!?」 獣人 『ココハ通サン!!』 藍田 「くそ、次から次へと……!!お前らと遊んでる暇はないだよ!!どけ!!」 獣人 『雑魚カドウカ───貴様ノ目で確カメテミルガイイ!!』 藍田 「雑魚なんて言ってないよ!?俺!!」 言い、拳を構える獣人。 さっきの鋭い拳からして、相当な使い手だ。 だがそれでもモタモタしてる暇なんてない。 藍田 「あんまり時間かけてらんねぇんだ!道空けてもらうぜ!“三点切分(デクパージュ)”!!」 フォフォフォガガガァッ!!! 速度を重視した一瞬で三度蹴り込む攻撃!───だが。 藍田  「っ!?受け止めた!?」 獣人  『蹴リハ鋭イガ焦リガ目立ツ。ソンナコトデハコノ“エイビス”ハ潰セナイ!!』 藍田  「だったら───“腰肉(ロンジェ)”!!」 エイビス『《ガカァッ!!》無駄ダ!!』 藍田  「チッ……!」 蹴り込もうとする場所を先に防御してやがる……! 先読み……?いや、こいつのスピードが俺を上回ってるんだ。 つーことは少なくとも170以上はレベルがあるってこと……!! 獣人がどんなきっかけで己を高めようなんて思ったのかは知らないが、 こりゃちと厄介だぞ……!!  ゴコッ───ドッゴォオオオンッ!!! 藍田  「───!?なんだぁっ!?」 エイビス『!!橋ガ!馬鹿ナ、アノ橋ハ地上ト屋上ノ二ツノ鎖ヲ破壊シナケレバ……!!』 藍田  「………」 なに……なに弱気になってやがる。 他のやつらはちゃんと頑張ってるじゃねぇか。 こいつの速さがなんだってんだ……こいつが速いってんなら、 速さだけじゃ受け止めきれない攻撃をすればいいだけのことだろうが!! 藍田 「肩ロース(バースコート)腰肉(ロンジェ)後バラ肉(タンドロン)腹肉(フランシェ)上部腿肉(カジ)尾肉(クー)腿肉(キュイソー)脛肉(ジャレ)!」 こうなったら当たるまで攻撃する!! 九頭竜闘気を込め、隙を穿つ一撃にのみ闘気を上乗せして連撃を連ねる!! 蹴って蹴って蹴りまくって、ガードが飛んだ時がてめぇの……!!  ズガガガガガガガッ!!!! エイビス『ヌッ!クッ!次カラ次ヘト!!無駄ダトユウノガ───』 藍田  「───!その隙、貰ったァッ!!“子牛肉(ヴォー)ショットォッ”!!」 エイビス『!!』 連撃に次から次へと狙い目の変わる攻撃に痺れを切らした獣人めがけ、 力を込めた蹴りを───ガキィッ!! エイビス『無駄ダ!!コンナ攻撃デハ我ガ闘法ハ───』 っ……防がれた! けどそんなことは予測済みだバカヤロウが!! 受け止められた足を軸に、さらに力を込めてぇえええええっ!!!! 藍田 『“悪魔風脚!(ディアブルジャンブ)画竜点睛(フランバージュ)ショットォッ”!!!』 身を捻る。 灼熱をともす具足はその蹴りを受け止めた獣人の手を焦がし、 俺はそれに怯んだ獣人の顔面へと最強の一撃を!!  ドゴギシャァアォオオオオンッ!!!! エイビス『グアガアアアアアアッ!!!!』  ドゴォッッガァアォオオオオンッ!!!! 残った闘気全てを込め、画竜点睛を弾けさせる。 闘気の篭った灼熱色の具足は獣人の身体を破壊し、すぐ下の地面をえぐり爆発させた。 しかし勝利の余韻も喜びも出さず、着地と同時に地面を蹴って駆け出した。 急げ急げ急げ───!遅れた分を取り戻す! あんなレベルの獣人がまだ他にも腐るほど居るかもしれない。 だがそれでも立ち止まれない理由がある! 藍田 「ストックには……九頭竜闘気5つか。よし、まだまだいける!!」 誰だろうがかかってきやがれ!全部ブッ潰してやる!! 【ケース251:綾瀬麻衣香/特攻4】 ザァッ!! 殊戸瀬「ありがとう、エル!     ここからはわたしたちで行くから、空から単独の獣人を狙って!」 エル 『グオゥッ!』 バサッ、バサァッ!! 睦月を運んだエルは、睦月が下りるのを確認すると空高く飛んでゆく。 他より時間は食ったけど、それでもこの道を進む計画に変わりはない。 麻衣香「じゃ……準備はいい?」 夏子 「いつでも」 殊戸瀬「槍の腕を上げるにはいい機会だから───いざ!」 既に越えた坂を見下ろしたのち、城への道を駆ける。 魔法があれば弓矢の攻撃もなにも関係ない。 矢よりも速い魔法で相手を潰せばいいだけだ。 それに─── ランサー  『敵の数が随分と多いなぁおい───ハァッ!』 七夜    『蹴り穿つ!!』 バーサーカー『ウォオオオーーーゥウウッ!!!』 彼らが居るかぎり、大体の敵は攻撃を実行する前に死滅してしまうのだ。 特にバーサーカー。 矢を喰らっても弾いてたしダメージも無しとくると、バケモノすぎてものも言えない。 けど時間が経つにつれ冥哭の泉の効果が薄れてゆき、その力も弱まってくる。 それなら出来る限り前に進むしかない。 夏子 「敵はサーヴァントたちに任せて!冥哭の泉が続く限りは三人に戦わせるから!」 麻衣香「解ってる!」 長い道を駆ける。 そうしてようやく辿り着いた城は唖然とするほど大きく、 さらに入り組んでいることが予測される。 それでも止まらない。 走って走って、いけるところまで───否!!必ずナギちゃんたちを救うのだ!! 夏子 「〜〜っ……ランサー、アサシン、バーサーカー、戻りなさい!」 バジュウンッ!! ───効果が切れる寸前だったのか、 夏子は三人のサーヴァントを己の中に戻すと息を吐いた。 強化すれば確かに強い三人も、実際は冥哭の泉無しではクーフーリン以外は役に立たない。 故に殺されることを恐れ、夏子は三人が元の姿に戻る前に回収したのだ。 でも城の前には来れたのだ、あとは内部に侵入して───  ドゴォオオオオオオンッ!!!! 兵士たち『うわぁあああああああっ!!!!』 殊戸瀬 「───!?」 夏子  「えっ!?なにっ!?」 遠くで、下りた橋を渡ってこちら側まで辿り着いた兵士たちが吹き飛ばされていた。 なにに吹き飛ばされたかは……振り向いた時点で理解できていたつもりだ。 獣人  『イイゾ!ヤッテシマエ“ゴリアテ”!!侵入者ドモナゾ滅ボシテシマエ!!』 ゴリアテ「ルヴォアァアアアアアアッ!!!!」 麻衣香 「〜〜〜っ……!なんて声……!!」 大気が震動したのを感じた。 肌にまで届く咆哮の波と、鼓膜を破りかねない絶叫。 さらに遠くからでも解る巨大さが、セントールとエトノワール兵の苦戦を先読みさせた。 殊戸瀬「どうするの?加勢しにいく?見捨てる?」 麻衣香「レオンさんは裏側に回ったし───多分こっちの騒動には気づいてない。     このままじゃ正面側の兵士たちが全滅して───」 夏子 「……先に行ってて。あの巨人はわたしがなんとかするか」 麻衣香「え───そんなっ……───……ううん、任せた!!」 殊戸瀬「我ら原中、送り出す者の意思を無駄にはしない!」 夏子 「そーゆーこと!こっちは任せてくれていいから突撃して!!」 麻衣香「───うん!無事でいて!」 夏子を置いて駆け出す。 いや、夏子ももう走り出していた。 ただ向かう先が違うだけで、わたしたちは別々の場所へと駆け出す。 そうだ、わたしたちはわたしたちに出来ることをやってゆくだけ。 そこに躊躇も戸惑いの時間もあっちゃならないんだ。 【ケース252:木村夏子/特攻5】 ワァアアアアアアッ!!!! 夏子 「〜〜……うひゃあああ、すごい声の波……っ」 城の正面、正門前では巨人と兵士との戦いが繰り広げられていた。 いや、これは戦いなんて呼べるものじゃない。 兵士たちが一方的にやられて、巨人が高らかに笑うだけだ。 ……明らかに基本となる力も防御力も速さも違いすぎる。 多分目の前で暴れる巨人は、巨人の中でも相当な使い手なんだろう。 でも……悪いけど負ける気はしない。 夏子 「みんな下がって!!ここはわたしに任せてくれればいいから!!」 ワァアアアアアアッ!!!! 夏子 「〜〜〜っ……あぁだめだ……声が大きすぎてこっちの声が届かない」 だったらいい。 躊躇する時間なんて必要ないんだ。 一応わたしは言ったわけだし、文句言われても知ったことじゃない。 さて……それじゃあ。 夏子 「秘奥義───“亜空召喚”」 ゴコォッキィイイインッ!!!! 兵士  「……?な、なんだ……?辺りが急に暗く……?」 ゴリアテ「あぁ……?なんだぁこりゃあ……」 その場に居る様々な人々がどよめく。 そんな中でわたしは秘奥義を完全に発動させ、最後に召喚の言を唱える。 夏子 「我、召喚師木村夏子の名の下に命じる!!出でよ、リビングアーマー!!」 ピキイイィインッ!! ……ォオオオオオ───ドォッゴォオオオオンッ!!!! リビングアーマー『グゥォオオオオオゥウウウッ!!!』 秘奥義の発動を完了する。 それと同時に空から雲を裂いて降り立つは頭の無い巨人のフルアーマー。 肉体こそもたないものの、 その意思、その誇りにかけて戦う最強のアンデッドウォリアーである。 兵士 「な、ななななんだありゃぁあああああっ!!!!」 夏子 「さあ……リビングアーマー。わたしがあなたに送る命令はひとつだけ。     ───やっつけちゃいなさい、全力で。一切遠慮せず」 下りてきたまま動こうとしないリビングアーマーに、たった一つの命令を届ける。 するとその篭手の平に鉄製の巨剣が現れ、造型を飾った。 ゴリアテ    「巨人族のバケモンか!面白ぇ、ぶっ潰してやるぜぇええっ!!」 リビングアーマー『いザ……誇りアる戦いヲォオオオ!!ドッガァアアアアアッ!!!! 二体の巨体が衝突する。 途端に発生する衝撃波と、地面に転がった石や砂を浮き上がらせるほどの剣気。 頭の無い鎧と、鎧を持たない巨人が巨斧と巨剣を弾き合わせたのだ。 力は───バゴシャォォンッ!!! ゴリアテ「───!?俺の斧が……砕けただと!?」 リビングアーマーの方が上! ───かと思った次の瞬間、リビングアーマーの巨剣までもが砕けた。 わたしは下唇を噛む。 もしリビングアーマーの持つ巨剣が、 ゼプシオンと同じくオリハルコンの剣だったなら、剣が砕けることなんて無かったのにと。 ああ、けどそれでも。 リビングアーマー『グゥォオオオオオッ!!!ドッガァアッ!!! ゴリアテ「ぶげぇっ!!」 リビングアーマーは止まらない。 剣を失ったなら拳でと、驚愕に染まる巨人を容赦なく殴りつけたのだ。 ゴリアテ「べっ!……いいぜ、戦士の誇りなんてものは捨てたつもりだったがな。      どうあっても戦おうとするその姿勢は誇り高き戦士のもんだ。      この戦いの中でだけ誇りを以っててめぇを潰してやる!!」 けど敵の巨人も止まらない。 獲物を前にした狼のように目をギラつかせ、 咆哮とともにリビングアーマーの鎧を殴りつけた。 リビングアーマー『ルググォオオオオオオッ!!!』 ゴリアテ    「うぅらぁああああああっ!!!!ドゴォン!!ガゴォッ!バギャアッ!!! 振るう巨腕同士が互いを殴りつける。 その震動はまるで地震だ。 一挙一動が地面や大気に震動を送るほどの攻撃と攻撃のぶつかり合い。 わたしは正直……そんな戦いに目を奪われていた。 技と呼べるものが繰り出されるわけでもないし、 魔法が放たれてバチバチと景色を彩っているわけでもない。 それでもその一撃、その行動が……わたしの目を奪った。  ドッゴォオオオンッ!!!! リビングアーマー『ウォオオオオゥウウウッ!!!』 っ……!!リビングアーマーが殴り飛ばされて大木に激突した! 信じられない!あのリビングアーマーが……!! あ……う、ううん、その認識は多分正しくない。 強かったリビングアーマーは晦くんが戦った空界のリビングアーマーで、 この世界のリビングアーマーがあれと同様に強いわけじゃ─── リビングアーマー『ルォオオオオオオゥウウッ!!!!ドゴバッガァアアンッ!!!! ゴリアテ「ぶげぇえぁあああああっ!!!!」 ……!! 倒れてたリビングアーマーが、 地面を強く蹴り弾くと同時に屈んでいた状態から一気に疾駆。 地面を爆発させるほどの力を以って相手の巨人との間合いを一気に詰めて、 その勢いのままに巨人を殴り飛ばした。  バッゴォオオオンッ!!! ゴリアテ「げはっ……!!〜〜〜……てぇえめぇええ……!!やるじゃねぇか……!!」 巨人は城の一部を己の体で破壊。 それほどの勢いで衝突したにもかかわらず起き上がり、 目の前のリビングアーマーを睨んだ。 ……本当に強い巨人だったんだ、この人。 なのになんで獣人になんて力を貸して……? 夏子  「ねぇっ!巨人としての誇りがあるのに、      どうして獣人になんか力を貸してるの!?」 ゴリアテ「あぁ……?そんなの簡単だ、そこに戦いがあるからよ!!      巨人として産まれ、他のやつらより強い力を持って産まれた俺は、      日々強者を求めて戦いに明け暮れていたのさ!!      だが巨人族はそんな俺を野蛮だのイカレているだの言って追放だ!      何故だ!?確かに俺は戦いに明け暮れていた!      だが巨人の誇りを汚すような戦い方だけはしてこなかったつもりだ!      その結果がこれだ!だから俺はな、誇りなんて捨ててやろうと思ったのさ!      本能のままに強者を探す者だけになろうと誓った!だからここに居る!!」 ゴォッ───バガシャァアアアンッ!!! リビングアーマー『グォオオッ……!!』 ゴリアテ    「そして会えた……!!強者に会えた!!          存分に力を出し切り、存分に戦える強者と!!          今では追放されてよかったと思ってるぜ……!後悔は無い!!」 リビングアーマー『ゴガァアアアアッ!!!』 ゴリアテ    「ウオォオオオオオオッ!!!!ドガァッシィィインッ!!!! 殴り、掴み合う一対の巨体。 力では圧倒的にリビングアーマーが上だ。 けれど相手の巨人はその分知的に動き、リビングアーマーを翻弄する。 それはそうだ、リビングアーマーは戦のみを続ける死者であり、 小難しいことを考えずに本能のままに暴れる亡者。 けれど相手の巨人は確かに今を生きていて、思考もすれば臨機応変に立ち回れる。 でも─── 夏子 「みんな今のうちに城の中へ!!     こんなところでグズグズしてる場合じゃないでしょ!?」 兵士 「だ、だが、女ひとりにこの場を任せるだなどと───」 夏子 「っ───!!」 ッパァンッ!!! 兵士 「いっ……!?な、なにを……!!」 夏子 「キミはいったいいつの時代のファンタジー兵士だコノヤロー!!     女だから!?任せられない!?ふざっけんじゃないわよ!!     国に居座るだけでろくにレベルアップも出来てない凡兵が何様!?     報われない努力に意味なんてない!つまり努力もしない存在に意味なんてないの!     そしてわたしたちは努力の数だけ苦労もしたからここに立ってる!!     努力をするのに性別が必要!?女が強くなりたいって思うのはいけないこと!?     それは人に対して面白さを探求するなって言ってるのと同じ意味合いよ!!     そしてその言葉は我ら原中に対する喧嘩の売り込み!!」 兵士 「あ、あわ……あわわ……!?」 夏子 「ブッコロがされたくなかったらさっさと城に突入しなさい!!     まったく、なにが勝利を確実のものにしたいよ!     こんな兵士を連れて突撃するんじゃ結果が見えてるわ!!」 兵士 「な、なんだとぉ!?」 夏子 「この木村夏子には絶対に許せないものが3つある!!     ひとつ、男女差別をしてカッコつけたがるバカヤロウ!!     ひとつ、他人に文句ばっか言ってるくせ自分はなにもしないバカヤロウ!!     ひとつ、自分の価値観を優先させて他人の価値観にケチつけるバカヤロウ!!     だからわたしは何事にも全力で、     ツッコミやどつき合いに躊躇も男女差別もない原中を愛してる!!     そしてそれ以外の男がこんなていたらくな事実に憤慨する!!     下がれ雑兵!もはや貴様らに任せておけることなど何ひとつとして無し!!」 兵士 「〜〜〜……馬鹿にするな!     心配してやったのになんでここまで言われなけりゃ───」 夏子 「戦に立つ者が心配されて喜ぶかバカモーーーン!!     わたしは原中がひとり、木村夏子!!     戦場に立つのなら、ここに来る前に既にそれ相応の覚悟など出来ておるわ!!」 兵士 「お、漢らしぃいーーーーーーっ!!!!」 もういい、埒も無い。 わたしはストックを解除すると冥哭の泉を発動させる。 そもそもぐずぐずとしている時間などないのだ。 時限爆弾を仕掛けてあるわけじゃない。 でも、もしナギちゃんたちが拷問にかけられていたりでもしたらと考えると、 どうにもいてもたってもいられなくなる。 それならこんな気分を一刻も早く払拭するために、ナギちゃんを助け出すんだ。 そのためにはこんなところでぐずぐずしている暇はない!! 夏子  「アビリティ発動!!冥哭の泉!!リビングアーマ−を一時的に強化させる!!」 ゴリアテ「なにぃ!?」 夏子  「さらにTP半分を託して特種攻撃を発動!!      一撃で決めなさいリビングアーマー!!“ゴッドハンドクラッシャー”!!」 シュゴォッッキィインッ!!! リビングアーマー『グォオオゥアァアアアアッ!!!!』 リビングアーマーの両腕に極光が燈る。 やがてそれが極に至ると無造作に拳を突き出し、極光を放つリビングアーマー。 ゴリアテ「なっ……ぐ、ガァアアアアアアッ!!!!ギガガドガァッシャァアアアアンッ!!!! ……ガラッ……ゴコッ、ゴシャ…… 夏子 「っ……」 ゴクリ、と喉が鳴った。 物凄い破壊力だった。 それはそうだ、使役する使い魔の潜在能力はどれもが破壊的だった。 ランサーのゲイボルグも、アサシンの直死の魔眼も、バーサーカーの暴走も。 だから、城の一部を破壊して消えたその破壊力も十分に予想できた。 でも……じゃあ、この予想外の展開はどうしたらいいのだろう。 ゴリアテ「驚かせてくれるぜ……!」 巨人はゴッドハンドクラッシャーを躱していた。 巨人の瞬発力の為せる業───あんな一瞬で大地を蹴って、避けて見せたのだ。 加えてリビングアーマーは秘奥義の効果時間が切れると同時に虚空へと消える。 しぶっていた兵士たちは既に城の中だ。 お蔭でここにはわたしと巨人だけ。 夏子  「すぅ……はぁ」 ゴリアテ「おい嬢ちゃん……さっきの鎧のバケモンをもう一度出せ。今度は俺が───」 夏子  「……悪いけどね、もうなんにも召喚しない。戦うのはわたしだから」 ゴリアテ「なに……?がっはっはっはっは!悪い冗談だ嬢ちゃん!      そして俺は───そういう相手をナメた冗談が大嫌いなんだよ!!」 ドゴォッ───ヴオォンッ!! 岩盤を破壊するほどの踏み込みからなる疾駆。 そして、瞬時に間合いを詰めてから全体重を乗せた拳がわたし目掛けて落とされる。 でもそんなものは関係ない。 わたしはわたしの出来ることをやって、 どれだけボロボロになっても前へ進むだけなのだから。 夏子 (時間稼ぎくらいにはなると思うから。     だから、ナギちゃんたちをよろしくね、みんな……) 覚悟はここに。 ゆっくりと深呼吸をして、できることをやる覚悟を決める。 それが決まってから、ただゆっくりと一言のみを唱えよう。 夏子 「“解除(レリーズ)”」 たったそれだけだ。 けど唱えられた言はわたしを覆う、かつては呪い装備だった全てを輝かせる。 夏子 「弾きなさい!“英雄の盾”!!」 ゴオッガギィインッ!!! 夏子  「〜〜〜っ……づっ……!!」 ゴリアテ「あぁっ!?な、なんだこりゃ……!!」 輝く盾で振り下ろされた拳も、襲い掛かる体重も弾く。 だけど衝撃波確かにわたしを襲い、わたしの足は脛まで地面に埋まっていた。 ───カオティックロードには特殊な能力がある。 それは呪い装備を持ったままレベルアップすると、その呪い装備が進化するというものだ。 英雄の盾などの装備は、わたしがカオティックロードになった瞬間に進化した。 そして今は、持っている装備品さえも変化させるまでに至った。 当然───全ての呪い装備を合成させたこの錫杖さえも。 カオティックロードの特種能力はネクロードになった今でも継承されている。 だから───わたしはそう簡単には負けてやらない。 ゴリアテ「……へっ、どうあれ足が埋まってりゃあ身動きできねぇだろ。      なんだったらこのまま全身埋めて埋葬してやろうか!」 確かにそうかもしれない。 それでも───もし負けることがあっても、その時は一人で死んだりはしない。 そのつもりで、命続くかぎりいつまでだって足掻いてやるんだ───!! 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