───冒険の書79/清水国明の一日───
【ケース263:清水国明(再)/仮面ライダーブラックジャックハンマーアーチ】 カランカラーン♪ 合成屋「へいらっしゃい!」 岡田 「魚屋かよ」 さて───訪れた合成屋にて威勢のいい主人に対して、 あたかも悪の華の店員がツッコミマシーンにツッコまれるかのごとく、岡田がツッコむ。 そんな出だしで俺達は店内へと侵入を果たした。 清水 「すまーん、ちと武器の合成を頼みたいんだが」 合成屋「おお。武器の合成か。どんな武器を合成したいんだい?」 清水 「俺はこのマスカレイドに今まで使ってきたワルーンソード+32を」 岡田 「俺はこのカムシーンに今まで使ってきたカタール+41を」 田辺 「で、俺がこの仕込み杖に、愛刀の胴田貫(どうたぬき)
+59を」 合成屋「あいよ。なにか混ぜたいものとかはあるかい?」 清水 「ンー……残念ながらそういう素材系アイテムはとんと持ってないんだ」 岡田 「同じく」 田辺 「こっちもだ」 合成屋「そうかい。んじゃあちっとばかし待ってな、すぐ出来るから」 合成屋にアイテムを預け、待つこと数分。 合成屋「へいお待ち!」 ガシャガシャチンッ♪《合成武器を手に入れた!!》 随分と早く戻ってきた武器に思わず笑みを浮かべつつ、手に取った。 おお美しい……つーかこんな細い剣がどうすりゃ大剣に変わるのか、とっても不思議。 早速ナビを利用して詳細を見てみると───  ◆宝剣マスカレイド+32───ほうけんますかれいど  エトノワール王国に伝わる小剣。  レイピアに分類されるものであり、とても鋭い。  特種能力として“ウェイクアップ”があり、実行すると小剣から大剣へと変異する。  ウェイクアップ実行には特にペナルティはなく、念じさえすれば即座に変異してくれる。  大剣と小剣の二つを行使できる、一口で二度美味しい武器。  大剣に変化すると刀身が紅蓮に染まり切れ味が上昇。  小剣時には読めないが、大剣に変異した際、  刀身に“ロアーヌ”と彫られていることが確認できる。  *固有技:小剣/ウェイクアップ 大剣/ムーランルージュ(大剣時永続) ……とのこと。 おお、男のくせにムーランルージュとはまたステキな。 だがそれもよし。 こういうことに関しても男女差別などしないのが原中のステキなところ。 女専用武器?固有技?喜んでやりましょう。 それが原中クオリティ。 岡田 「それが清水ウェポンの詳細か。ではこれを見よ!」 清水 「おお!?」 岡田が虚空に己の武器の詳細を表示する!  ◆カムシーン+41  ゲッシア王朝に伝わる伝説の曲刀。  トルネードの異名を持つ男、エル・ヌールの愛刀であり、  その刀身から放たれる剣閃は敵に衝突すると跳ね返り、別の敵を襲うという。  エル・ヌール(ハリード)が諸王の都から拝借していったもので、  現在はエトノワールに安置されていた。  *固有技:デミルーン、デミルーエコー その詳細は……なんとも憧れてしまうステキなものであった。 いいなぁ、俺こっちにしときゃよかったかも。 田辺 「なんの!俺も負けねー!!これを見よ!」 田辺は張り切って杖を見せた!  ◆仕込み杖+59───しこみづえ  エルフの森の神木を削って作った杖に、名刀を納めたステキ武器。  杖といってもいかにもな杖ではなく、抜刀に適した造型になっている。  ちなみにこんな杖が何故宝物殿にあったのかといえば、  実はこの杖に仕込まれている刀が相当な名刀である故。  大変貴重な武器であり、固有技、固有秘技、固有奥義、固有秘奥義が揃っている。  固有技から秘奥義まで繋げて放つことが出来る。が、とんでもない集中力が必要。  抜刀初撃で居合い抜き、戻す刀で斬ることで抜刀燕返し、  続く、頭上から股下までを断つ一閃目、  返すニ閃で一閃目を回避する対象の逃げ道を塞ぐ円を描くように斬りつけ、  次に左右への離脱を阻む払いでトドメとする。  この三動を同時に繰り出す破壊空間が敵の逃げ道を完全に塞ぎ、  尚且つ確実に斬りつける秘剣燕返しとなる。  さらに斜上弦弧斬、回転斜下弦弧斬、横一閃、  真上からの斬り降ろし、トドメに突きで飛燕虚空殺。  相手を九つの円とトドメの突きで同時に断ち切る絶技。  完全習得には相当な鍛錬が必要。  *固有技:居合い抜き  *固有秘技:抜刀燕返し  *固有奥義:秘剣燕返し  *固有秘奥義:飛燕虚空殺 ざわっ……! 清水 「す、すげぇ……!」 岡田 「こいつぁあただの仕込み杖じゃあ……ねぇぜ!!」 田辺 「だろ!?だろ!?固有技が豊富なんだよコレ!     え、えーとまず抜刀……居合い抜き、     それから返す刀で抜刀燕返し、と。フンアッ!!」 シュバショフィンッ!! 振り上げ、戻しをする田辺。 その刀は美しく、見ていると惹きこまれような惹きこまれんような。 続いて田辺は、おそらく武器に教わっているのだろう、 戸惑いつつ特種な構えで刀を構える。 そこから───フォフォフォンッ!! 上から振り降ろす円、一撃目からそのまま身を回転させて繋ぐ袈裟の円、 さらに横一閃に薙ぎ払う円。 三つの円を同時に放ち、太刀筋の檻で相手を閉じ込め殺すのが秘剣燕返し。 しかしそこまでいって体がズキーンと痛んだらしく、その場で悶え苦しんでいた。 しかも三閃を同時に放つどころか、俺達が見ても十分に見切れそうな太刀筋だった。 こりゃダメだ。 田辺 「い、いぢぢぢぢ……!!これ体の筋おかしくするぞオイ……!!」 高速を越えた神速の域に体がついてこなかったらしい。 清水 「ダメなのか?」 田辺 「ダ、ダメもなにも……!     ナビによるところじゃあ、これでも速度が間に合ってないんだって……!     それこそ、人が一撃を放つうちの一瞬に、     全撃を出すくらいにやらなきゃならんらしい……!」 岡田 「よし田辺!AGIに全てを注いでやってみるんだ!」 田辺 「まだやれと!?ち、ちくしょー!!」 田辺が構えた!───田辺はやる気だ!! 田辺 「集中、集中……!!よ、よしいくぞ!!抜刀連技───!!」 田辺が動く! まず抜刀一閃!戻す刀で二閃! 続いて振り下ろし、回転斬り、横一閃で五閃! さらに右斜めから左斜めへの斬り降ろし、 その反動のまま回転して右斜めから左斜めへの斬り上げ! 続いて横一閃、真上から真下へ斬り降ろし、トドメの突きでズキィーーーン!!! 田辺 「ギャオォーーーーーーッ!!!!」 ドシャーーーーン!! 田辺は倒れた!! どうやら身体機能に限界が訪れたらしい。 田辺 「む……無理です……ホント無理です……勘弁してくださいごめんなさい……」 あ〜……やっぱ無理? 十閃ほぼ同時なんて、普通は無理だよなぁ。 某燕返しの一人者でさえ三連なんだし。 清水 「提督が存分に暴れてくれたお蔭で120に達したこのレベルでも、     まだまだ剣戟の極みにゃ達しないか」 田辺 「ただ刀を振り回すだけなのに体に激痛走るなんて前代未聞だと思うんだが」 清水 「まあまあ。んじゃ次は俺な。ウェイクアーーップ!!」 ゴシャーーーン!! 構えたマスカレイドが光に包まれる! そして光が消えた時───なんと小剣が大剣に!! 総員 『イッ……イッツマジック!!』 すげぇ!タネも仕掛けも解らねぇ!! これってこれだけでカッパーフィールドとしてメシ食っていけるんじゃないですか!? 清水 「で……ムーランルージュって永続だったよね?」 岡田 「そう書いてあったな。     何故大人しめに訊いてくるのかは疑問の範疇から度外するとして。     どれ、じゃあ俺はデミルーンでも───フンッ!!」 キィンッ───シャキィンシャキィンッ!!ゾブシャゾブシャア!! 清水&田辺『ギャアーーーーーーーーーッ!!!!』 岡田   「あ」 なんと!岡田の野郎が我らに向けてデミルーンを発動!! 俺に向かって飛んで来た蒼い剣閃は俺を切り刻むと、少し離れた場所に居た田辺を襲撃!! 清水 「て、てめぇ〜〜〜っ!!まさか俺達の命を狙っていやがったのか〜〜〜っ!!」 岡田 「ご、誤解だ誤解っ!!発動させたらお前らに向かって飛んでいっただけだよ!     多分あれだ、敵が居ないからお前たちに向かって───!!」 田辺 「うるせーーーっ!!一発は一発だ!!抜刀連技───!!」 岡田 「ちょっと待て!それ全然一発じゃキャーーーーーッ!!!?」 キキィンッ!!シュフォフォザシャシャシャシャシャアッ!!!! 岡田 「ギャアーーーーーーッ!!!!」 嗚呼……岡田が切り刻まれてゆく。 痛む体に鞭うって、 通常より遅くてもしっかりと最後の飛燕虚空殺までやった田辺は勇者である。 しっかりとその後、身体機能の限界を迎えた彼はドシャアと倒れて動かなくなったし。 清水 「ふむふむ……ハァッ!!」 シュフォフォフォフォフォンッ!! 清水 「───おお!!」 なんと!赤い大剣を振るったら、そこから回転する斬撃が放たれた!! これが───これがムーランルージュ!! 通常、わざわざウェイクアップを使ってからじゃなきゃ使えない上に、 1ターンを浪費してるくせに大して強くもない固有技だった───そう、 クソの役にも立たない固有技!という代名詞をしっかりと受け止めた技だったのだが─── しかしそこんところは修正されているらしく、 永続にさせることでその信頼をガッチリ吸収。 もちろんリアルタイムバトルであるから? ウェイクアップで1ターン浪費、なんてことにはならない。 HPもTPも減らないというお特さ抜群のご奉仕であった。 奥さん、お買い得ですよ。 しかしもちろん敵が目の前に居るわけでもない現状。 ムーランルージュの効果はとっとと消え、大剣も小剣に戻った。 岡田 「そして俺も元に戻っていた」 清水 「もう回復したのか」 岡田 「フフフ、我らはHPを回復させるためにゲームやってるんじゃないんでね」 田辺 「やはり我らはいつまで経っても、     一回の戦闘よりもHP回復のほうが時間がかかるゲームに文句を飛ばしたい。     それでも育てたキャラを消すのは忍びないので、     1000の台をゆく月々の基本使用料金を払う自分も忍びない。     そんな人々が可哀相だとは思わんか、有料オンラインゲームの製作スタッフよ」 岡田 「敵に囲まれてる時はHPなぞ回復せんでよろしい。     だが敵とバトってない時くらい、自然治癒でドギャアと回復してくれ」 切に願わずにはいられないものだな。 俺もそう思う。 事実、一回の戦闘よりもHP回復に専念する時間のほうが長いゲームはどうかと思う。 待ってるこちらが退屈なのだ。 かといって目を離すとアクティブモンスターにボコボコである。 正直やってられん。 岡田 「───『何故オンラインゲームを始めたのか?』なんてことは、他愛もない世間話     しにもならないくらいのどうでもいい話だが。それでも、何故俺があとになれば     なるほど誰かと結託しなければ洞窟にも入れないような、回復ばかりに時間を取ら     れるオンラインゲームを始めたのかというと……これは確信を以って言えるが、最     初は楽しそうだったからとしか言いようがない。オンラインになる以前のそのシリ     ーズが面白いことはプレイして知っていたし?オンラインになったからといってそ     こらの機能性が怠惰することなどないだろうと勝手に決め付けては、内心ちょっと     疑ったりしていた賢しい俺なのだが───はてさて、単独で進めぬ悲しさやHP回     復の遅さやその退屈さや敵の強すぎさや、プレイヤーの移動速度……一定レベルに     達しなければ武器も持てない軟弱野郎がプレイヤーの分身なのだということに気づ     いたのは、相当後になってからだった。……いや、本当は気づいていたんだが。た     だ気づきたくなかっただけなのだ。俺は心の底から、単独で進めぬ悲しさやHP回     復の遅さやその退屈さや敵の強すぎさや、プレイヤーの移動速度や一定レベルに達     しなければ武器も持てない軟弱野郎の存在の改善を望んでいたのだ……。しかし、     現実ってのは意外と厳しい!世界の物理法則がよくできていることに感心しつつ、     いつしか俺は、オンラインゲームの情報番組や、それらに関する情報誌をそう熱心     に見なくなっていた。敵が強すぎる現状?移動速度?HPの回復の速度?そんなの     改善されるわけねぇ!でも、ちょっとは改善されてほしい、みたいな……最大公約     数的なことを考えるくらいにまで俺も成長したのさ。高校を卒業する頃には、俺は     そんなガキな夢を見ることからも卒業して、オンラインゲームのあまりの不自由さ     にも慣れていた。俺は大した感慨もなく自由人になり……この世界に出会った」 清水 「オンラインゲーム製作会社を敵に回すような発言は控えろよ……」 岡田 「うるせー!!そりゃ製作者本人の前では文句も言えねぇチキンな俺達だが、     それでもここでだけは言わせてもらうぞコノヤロー!!」 田辺 「オンラインゲームは全てにおいて不自由すぎる!!     HPMPの回復速度!TPの向上率!移動速度!単独で進む雄々しさの無さ!!     なんだありゃあ!!オンラインゲームには漢の浪漫が足りなすぎるのだ!!     レベルさえ上げればどんな敵でもひとりで倒せる雄々しさがなけりゃあ、     それがどれだけの完成度を納めて周りから評価されようが知らねー!!」 岡田 「メタルマックスリターンズや真・女神転生2やスターオーシャン2を思い出せ!!     あれらはきっちり主人公ひとりでラスボス撃破ができただろう!!     そういうやりこみ度がオンラインゲームには必要なんだよ!!     下手に低いレベルで最大レベル決めちまうからこんな事態になる!     レベルなぞ255以上に設定しときゃあやりこみ度もあがるってもんだい!!」 清水 「その前に飽きないか?」 田辺 「バカヤロコノヤロォ!!んじゃなにか!?     貴様はレベルがそれ以上上がらない所為で一人では倒せない敵がうじゃうじゃ居る     ために攻略出来ない場所がそのままでもいいってーのかコノヤロー!!」 おお一息だ。 よく噛まなかったもんだ。 岡田 「キャラクターの力不足で攻略出来ない場所が多すぎるほうが逆に飽きる!!     そしてなにより漢ならば一人で攻略したいと誰しもが思う!!     その度に強者に挑み、力不足に泣くのだ!!そんなことが許されていいのか!?     否ァ!!断じて否ァ!!協力プレイに微笑む時代は終わった!!     何故ってくだらん中傷暴言を行うクサレ馬鹿が多すぎるからである!!」 清水 「いやぁ……日々遠慮なく暴言吐きまくってる我ら原中じゃ説得力ってもんが……」 岡田 「う、うるせー!!だから協力プレイの時代は終わったんだー!コノヤロー!!」 清水 「あのさ、合成屋で問答繰り広げてる暇があったら外に繰り出さないか?     冒険してりゃあ気も晴れるだろ」 田辺 「おおそりゃ名案。今となってはオンラインゲームもどうにもならんだろうし」 岡田 「そもそも空界に行くと、もうゲームとか出来ないんだよな」 清水 「寂しくなるなぁ」 などということをぶつくさとぼやきつつ。 俺達は外に───行く前に、宿に寄ることにした。 恐らく提督たちが居るであろうそこで何が起きているのか、ちと気になったからである。 ───……。 ……。 で───ドゴォオンッ!!! 中井出「重ォオオオオオオオっ!!!」 重かったらしい。 どうやら既に合成を済ませた彼らがそこでなにをしていたかといえば、 早速装備してみて状況を楽しんでいたのだ。 で、その中で一人、額に汗して武器を持ち上げているのは。 我らが提督中井出博光その人である。 中井出「馬鹿げた重さだな、このっ……!!パワーポイント!!」 ゴゥンッ!! 中井出「ムフゥウウン!!おおよし、力にポイント振り分けてりゃ持ち上がるな。     能力平均状態じゃあ持ち上げるのに多少難儀しそうだ」 殊戸瀬「……つまり、防御に回ったら提督はクソの役にも立たないわけね……」 中井出「アノ……殊戸瀬サン?キミが眼鏡かけると用意周到モードになるのは解ったから、     今すぐそれ外してもらえません?」 殊戸瀬「お断りするわ」 中井出「ウウ……」 いろいろあるらしい。 なんのこっちゃよく解らんが。 と、ふと俺の目に映るのは提督が手に持つ剣ではなく、 その腰に納められている綺麗な蒼色の刀だった。 清水 「ありゃ?提督、その刀……」 中井出「ム?おお清水二等。───これか?猫に鍛え直してもらった稀蒼刀マグナスだ。     これがまた素晴らしい造型!素晴らしい切れ味を約束してくれます!!なのだが、     残念ながら刀士以外じゃ力を引き出せない武器らしいのだ」 田辺 「そうなん?だったら俺にギブミー。俺、こう見えても今刀士やってんのさー!」 中井出「いや、これは我らがアイドル、篠瀬さんに渡そうと思っている」 田辺 「おおなるほど、確かに彼女ならば我らなどよりも数倍使いこなしてくれそうだ。     つーかキミら寝なくて大丈夫なんか?目がかなり怖くなってるぞ?」 中井出「大丈夫だ!ただ眠さより武器合成に対する愛が勝っただけのこと!     つーわけで貴様らヒヨッ子どもに依頼をしたい!」 清水 「依頼?」 中井出「この刀を篠瀬さんに届けてくれ!tellで聞いたポイントは209872!     地図からすると、丁度漁業都市シヌラウマという場所に居る!!」 清水 「シヌラウマね……結構離れてるな」 中井出「届けるまでこの刀使用していいから、頼む」 田辺 「任せとけっ……!!」 総員 『うわっ!めっちゃいい顔っ!!』 藍田 「……先に言っとくけどさ、田辺よ。     口では渡してきたYOとか言いつつ、     その手に持ってる仕込み杖に合成させるなんてことはなしだからな?」 田辺 「……ッ……!!《ドパァア!!》……ウ、ウウン?ボクソンナコトシナイヨ?」 総員 『気味悪ぃくらい汗出してるゥウーーーーーッ!!!!』 藍田 「田辺てめぇ!!釘刺されなきゃマジでやるつもりだったな!?」 田辺 「ばっ……ばっか!ちっげぇえ〜〜よ!!ンなことするわけねーべよォ!!」 清水 「今時の高校生男子世代の口調で誤魔化したって無駄だ!     つーか聞いてて気持ち悪ィし恥ずかしいから今すぐ黙れてめぇ!!」 岡田 「てめぇなんて田辺じゃねぇ!大村拓男だ!このオムタクめ!!」 田辺 「そんな誰も解らねぇネタで罵倒するなよぅ!!     聞いてるこっちがサムイじゃないかぁ!!」 ……ちなみに。 オムタクとは、“ドラえもん”世界のキムタクに位置する人物のことである。 キムタクと言ったが、キムチと沢庵をごっちゃにした寿司のことでは断じてない。 田辺 「だが任せろ。この刀は俺が責任以って僕らのアイドル篠瀬さんに届ける」 中井出「命“賭ける”か!?」 田辺 「馬鹿にすんな提督コノヤロー!!命くらい“書ける”わ!」 中井出「おおよく言った!!じゃあお前の命を担保に、     ウォズトロヤで拾った邪術儀式用血判状を用いて     邪術覚えるための儀式をスタンバってるから!!安心して行ってこい!!」 田辺 「OH任せオワァアーーーーーーーーッ!!!!?     ちょっ……なんでそんな大変なことになってんの!?     俺ただ“書ける”って言っただけだよ!?」 中井出「大丈夫だ!約束が果たされなかった場合は貴様の命が魔界に捧げられ、     木村夏子二等が邪術を覚えるだけだ!!」 田辺 「だけだじゃねぇよちょっと待てコノヤロー!!」 丘野 「大丈夫!大丈夫でござるよ!約束が果たされなかった時の話でござる!!     もし合成したり売ったり捨てたりした時には即座に死ぬだけでござる!!     期日は今日1日だけでござるがねぇ……ククク」 田辺 「ウヒョォオオオーーーーーッ!!?」 丘野の“死の宣告”が発動!! 田辺は驚き竦みあがった!! そして突如駆け出した!! 清水 「お、おいおいちょっと待て田辺!落ち着け!!」 田辺 「オレヨリツヨイヤツニアイニイク!!オレヨリツヨイヤツニアイニイク!!」 岡田 「落ち着け田辺!そんなの目の前にごっさり居る!!」 丘野 「余裕無い男は女に嫌われるでござるよ?」 田辺 「余裕無くさせた元凶に言われたくねぇわぁーーーーーーっ!!!!」 清水 「よ、よし。じゃあとっとと行こう!そんじゃあな提督!我らは行く!!」 中井出「おー、頼んだぞー」 提督に見送られつつ、我らは走り出した! そう、全ては田辺の命のため!! ───……。 ……。 バタァーーーーム!!! 田辺 「うおぉ危ねぇ!!刀忘れてた!!」 総員 『チッ……』 田辺 「え!?ちょっ……なに今の『チッ』っていうの!     キミたち!?今の反応の意味説明しなさい!───目ェ逸らさないで!!」 清水 「いいから行くぞ田辺!時間が無い!」 田辺 「お、お───おお!!」 そして再び駆け出す僕ら。 もちろん今度はきっちりと刀を手に取って─── 田辺 「ゲゲエ!!こりゃあ───刀は刀でも秋刀魚!     “われらホビーズファミコンゼミナール”に出てきたあの秋刀魚ブレード!!     しかも絶妙に腐って呪いの秋刀魚ブレードになってやがる!!     ───って!だから今さらこんなネタやって誰が解るんだよ!!」 中井出「バカモーーーン!!我らが解ればそれで十分だろう!!」 田辺 「時間がねぇ時にこんなことすんな!!さっさと稀蒼刀貸してくれ頼むから!!」 中井出「よし。それじゃあ今度こそ頼んだぞ?」 ガシャンッ……《田辺は稀蒼刀マグナスを受け取った!!》 中井出「それから、旅にナギーとシードを同行させてもらう」 ナギー『何故なのじゃ!?』 中井出「可愛い子には旅をさせろ……という言葉がある。     俺達はまだここを動くことが出来ない。     だから、俺達の代わりに広い世界をその目で見てきてほしいのだ……。     解るな……?お前らにしか頼めないことなんだ、これは……」 ナギー『ヒ、ヒロミツ……!よし任せるのじゃー!!     わしにかかればこの世界を見て回ることなぞ造作もないのじゃ!』 ……さて。 目を閉じて胸を張り踏ん反り返ってるドリアードから隠れるように親指を立て、 安寧なる安眠の時を約束されたことで喜ぶ提督たちはこの際無視するとして。 清水 「なぁ提督。でも俺達ルルカで移動することになるぞ?     そんな余分に金を出せるほど金があるわけでもないし───」 岡田 「そりゃ俺達にゃ無料ルルカパスがあるけどさ。それでも……なぁ?」 殊戸瀬「……お子様たちにはロドを貸す。     だからなにも気にすることなくシヌラウマに向かって」 ルルカ『ゴエッ』 清水 「おお、ブラックルルカ」 岡田 「いいのか?」 殊戸瀬「貸すのはお子様たちにであって貴方達じゃないから」 岡田 「そういう詳細情報は敢えて言わないほうがステキだと思うな、僕」 殊戸瀬「……今日が終わるまで、残り7時間」 岡田 「ち、ちくしょー!!行くよ!行きゃいいんだろコノヤロー!!     田辺の時間を盾にとりやがってぇーーーっ!!     そんなことばっかやってるといつか天罰が下るんだかんなーーーっ!!?     覚えてろぅくそぉーーーっ!!」 殊戸瀬「……もう下ってる」 岡田 「へ?《ドバァーーン!!》ヘギューーーーリ!!!」 ドシャアァアアン……。 逃げ出すように駆け出した岡田が、 殊戸瀬の言葉に振り向いた───次の瞬間、壁に激突して倒れた。 ああ、今のは痛いな。 物凄い音が鳴ってたし。 丘野 「睦月?天罰が下ってるって、どういうことでござるか?」 殊戸瀬「……“睦月”が自分の足で、自分の意思でちゃんと立とうと心から誓った。     そうなれば眼鏡の有無に関わらず、近い内に“わたし”という人格は消える」 中井出「なっ……!!」 殊戸瀬「わたしは元々“睦月”によって造られた補助輪のようなものだから。     それが必要なくなれば、     そんなものはそれを使用しなくなった人には忘れられるものなの。     それが、今までわたしが勝手気ままに振舞ってきたことに対する天罰。     わたしは死んで、やがてそれが普通になって───」 中井出「〜〜っ……馬鹿野郎!!」 殊戸瀬「……提督?」 中井出「今を確かに生きてるヤツが簡単に消えるとか死ぬとか言うな!!     お前は“人格”なんだろ!?だったらお前もちゃんとした殊戸瀬睦月だろうが!!     ちゃんと生きてんだろ!?勝手気ままに生きてなにが悪いんだ!     生きてられるんだったらそれだけで十分じゃねぇか!!     そりゃあ“生きてるだけで幸せだ”なんて言葉は偽善的かもしれねぇけど!     俺はここでそれを言わせてもらうぞ!!生きることに喜びを感じて何が悪い!!」 藍田 「お、おいおい提督?」 中井出「俺はばーさんやじーさんが居たから今ここで生きてる!     助けてもらった事実もそうだし、俺が生きたいって思うから生きてる!!     自分は助かったのに助けてくれた人は助からなかったなんて事実、     きっといろんな人が重荷だとか思うだろうさ!それでも俺は今が愛しい!     助けてくれた人の分まで人生を楽しまなければ嘘だって思った!!     でもそれはくだらない使命感だとか強制される感覚でやってるわけじゃない!」 麻衣香「ヒロちゃん……」 中井出「助けてもらえて嬉しかった!助からなかった命が悲しかった!!     でも、だからこそ生きてることがどれだけ素晴らしいかを、     冷たくなったばーさんを見て理解することが出来たんだよ!!     止まらなかった涙も、止まらなかった嗚咽も、     みんなみんな噛み締めて生きていこうって、じーさんと誓うことが出来た!!     だから!そんな風に自分を粗末にするヤツは俺は許せねぇ!!」 殊戸瀬「提督……」 中井出「俺達を……!原中を仲間だと思ってくれるんだったら……!     もう二度と、さっきみたいなこと言うな……!!     ゲームみたいに蘇る命ならいい……けど。一度失くしたら戻らないものを、     ゲームの中で言うみたいに軽く扱わないでくれ……」 殊戸瀬「提督…………───M?」 中井出「だぁくそ!!そうだよ!お前はそういうやつだよコノヤロー!!     人がせっかく心の中に秘めた過去とともに心を改めさせようとしたらこれだよ!!     俺べつにキミにイジメられ足りないからって消えてほしくないって言ってる微妙な     位置にあるマニアじゃないよ!?ほんとだよ!?」 麻衣香「まぁまぁヒロちゃん。ほら」 中井出「なんだね!!僕は今それどころじゃ───……あー……。     まったく、なんだってんだかね。……んじゃ、一言贈るぞー、コノヤロー。     消えちまうのが泣くほど悲しいなら、     最初っから人生諦めてますみたいなこと言ってんな、馬鹿者」 殊戸瀬「え───……あ……」 ふと気づくと───無意識にだろう、涙が出ていた、って感じだった。 殊戸瀬は自分が泣いていることに初めて気づくと、その涙に触れて驚いているようだった。 殊戸瀬「泣いてなんかいない。これはただ目にカメムシが入っただけ」 中井出「とことん素直じゃないねキミ!!」 麻衣香「真っ直ぐに叱ってくれたのが嬉しかったんだよね、睦月」 殊戸瀬「ち、ちがう……カメムシが……」 夏子 「そっかそっか、強がってはいたけど本気で叱ってほしいとは思ってたんだ」 殊戸瀬「だから、カメムシが……!」 丘野 「ニンともカンとも、これにて一件落着でござるよ」 殊戸瀬「カメムシ……!」 藍田 「なぁ……なんでカメムシに拘るんだ?」 それについては俺もさっきから気になっていたところである。 が、言うつもりはないらしく、顔を真っ赤にしたまま俯いたままになってしまった。 と思ったら、顔を真っ赤にしたまま涙目でジトリと田辺を睨むようにして─── 殊戸瀬「……8分経過……」 とだけ呟いた。 その言葉の意味するところを─── 田辺 「8分ってなんのキャーーーーッ!!?」 ───彼は思い出したらしい。 田辺 「しまった忘れてた!おのれ提督!これも貴様の陰謀か!!」 中井出「え───あ、いや……あのさ、麻衣香?     俺……さっきかなりいいこと言ったよね?……言ったよね?」 麻衣香「価値観の問題かなぁ。     でも、少なくともこの場で言うには間違ってはいなかったと思うよ?」 中井出「とのことだ!陰謀ではないわ!!」 田辺 「自分でも確信持てなかった事実を胸張って言うな!!」 中井出「う、うるせー!そんなの僕の勝手だい!     それよりさっさと行った行った!!     早くナギーとシードに外の世界の素晴らしさを見せつけつつ、     俺達を安眠に導きやがれコノヤロー!!」 清水 「後半に本音が見え隠れしているが、確かに請け負った!     ここからの距離考えると、確かに時間が難しいかもしれんし」 そうと決まればレッツビギンだー! 俺と田辺はウムと頷き合うと、───岡田が気絶していることを思い出し、揺すり始めた。 そうこうしているうちに時間は刻一刻とすぎてゆくわけで。 田辺 「ジョー起きて!ジョーーーーッ!!!!」 いよいよ余裕が無くなってきた田辺は暴走気味だった。 仕方なく我らは、 気絶中の岡田くんの肋骨の下層を抉って心の臓をえぐるかのように貫手をゾブシャアと 岡田 「ギャアーーーーーーッ!!!!!」 おお起きた!! やはりキツケには貫手でしょう!! 岡田 「ゲッホ……!なにしやがるっ……!!」 田辺 「貫手!さあ起きろコノヤロー!時間がねぇんだ!」 岡田 「時間?───おお!あれか!よし今すぐ行こう!!」 清水 「よっしゃーーーっ!!ゴー!ニコガクゴー!!」 ナギー『仕方ないから付いていってやるのじゃ。ありがたく思うのじゃ』 シード『そうだ。僕らが父上以外の、それも人間についていくなんてこと。     普通はありえないこなのだからな』 総員 『………父上以外の、“それも人間に”ついていくなんてこと……だって』 中井出「なにその魔物を見るような目!!ち、違うよ!?僕、にん───」 シード『……父上?』 中井出「げ……!!に、にんげ……ニンゲン(さい)!!」 麻衣香「ああっ!無理がある!!」 清水 「ものめっさ無理がある!!」 シード『ニンゲン菜……?それは食材かなにかなのですか?』 中井出「……!!ッ……!!」 丘野 (ああっ!提督が子供に赤子の作り方を訊かれて困る純朴パパみたいな顔に!!) 藍田 (きっと、人間だと認めればシードとは本当の親子じゃないことがバレ、     しかし認めなければ“外道・エロマニア”として見られると思ってるんだ!!     あの顔はその葛藤の賜物に違いねぇ!!) シード『しかしそうなると話の前後が繋がらない……父上、ニンゲン菜とは……?』 中井出「ニ、ニニニニンゲン菜っていうのはなぁ!!ハハハ!?     人間の形をした野菜のことを言うんだぁ!!パパそれが大好きでなぁ!!     立派な魔王になるといつか食べることになる野菜なんだ!     アハハ、ハ……ハーハハハハハハハ!!!!     ウフッ!エフッ……!ウワーハハハハハハーーーーン!!!!」 岡田 (ああっ!泣いてる!) 田辺 (提督が大笑いしながら泣いてる!!あまりの無理さに泣けてきたんだ!!) シード『そうだったのですか……!     僕も一日も早くそのニンゲン菜というものを食べられるよう、頑張ります!!』 総員 (ゲエエ信じてるーーーーーっ!!!!) 提督は既にヤケクソの塊と化していた。 それはもう一目でヤケクソだー、って解るくらいに。 だってまだ泣きながら大笑いしてるし。 ナギー『ではいくのじゃ!ヒロミツ、そこで待っておるのじゃ!     わしはこの旅で、また一つ成長してくるのじゃー!』 中井出「うふうふ……ウフフフフウハハハハ……     いってらっしゃい……いって……ウフフフフ……     寝よう……寝て全てを忘れるんだ……」 清水 「提督……まあその、あんまり気負わないようにな……」 と。 そんなわけで、我らは遙かなる旅路へと駆け出したのだった。 ……もちろん、お子様たちは黒ルルカに乗って、だが。 ───……。 さて─── 総員 『たのもぉーーーーっ!!!!』 こうして俺達はルルカ牧場へと辿り着き─── 牧場主「すまんね。ルルカが戦争の移動用に使われて、疲れてて動けないんだよ」 総員 『ゲェエエーーーーーーーッ!!!』 田辺の命をかけた、熱き大激走地獄が幕を開けたのである。 Next Menu back