───冒険の書82/エロスの戦士───
【ケース268:清水国明/M78星雲には行ったことがない】 さて。 穂岸から全てを聞いた俺達は、それはもう呆れ果てていた。 当のタダメシ女が何処に潜伏しているのかは謎の極みではあるが、 どうやら他の女性陣は上の階で既にご就寝なんだそうな。 穂岸は一人で責任を受け止め、こうして働いてるんだとか。 蒼木とかいうやつも居るらしいんだが姿が見えない。 まあその、なんだ。 人がいいっつーかお人よしっつーか、他人から見れば悪いことじゃないよな。 損気としか思えないけど、 こういうヤツほどのちのち周りから幸福を分けてもらえるのだと信じたい。 清水 「で。蒼木とかいうやつは?」 遥一郎「蒼木ならホレ、あそこ」 ひょいと指差す穂岸くん。 そこには───えらい美人のウェイトレスが居た。 が、 清水 「もしかして?」 遥一郎「もしかする。店長の趣味なんだそうだ」 帰っていいかな俺。 でも悔しいがメシが美味い。 なにかの間違いじゃなかろうか。 清水 「で、店長ってのは?」 遥一郎「それは。ああ、出てきた。あの人が店長だ」 ノソリと、デカい人が現れた。 そして俺はその顔を知っている!!いや、この凛々しくも優しげな顔を知っている!! ダニエル『OO〜〜H、久しぶりィネボォ〜〜〜ゥイ』 清水  「ダギャアーーーーーーーッ!!!!」 腕に錨のイレズミをしたマッスルがそこに居た!! 俺は自分でも怖いくらいの悲鳴を喉から振り絞ると、 腰が抜けたホラードラマの少女のごとく床を這って逃げ出した。 遥一郎 「ああ、やっぱこいつがダニエルなのか。どっかで見たことあると思ったが」 清水  「ななななんでこんなところで店長やってんのアンタァーーーッ!!!」 ダニエル「OH、ワタシ提督ボーイと出会ってから色々なところ回ってマシター!      そしたらココ着きましたヨー!!OHママサンヤサシーデース!!      ワタシ今ここで色々勉強させてもらってマース!!」 遥一郎 「思いっきり外国人男性なのに、妙に言葉がエセっぽいのな」 清水  「ダニエルだからな」 理由になっていないのは百も承知だが、そうとしか言いようがないのである。 だってダニエルだぞ?ほかにどう説明したらいい。 この、ジェイソン尾妻みたいな声で喋るムキムキマッチョな男性相手に なにをどう説明しろと。 清水  「で、泊まった男性客を襲ってるとか」 ダニエル「………」 清水  「だっ、黙るなぁあーーーーーーーーーっ!!!!」 ダニエル「フッホッホッホッホ、今日は若いオニーサンタップリデース!!      ワタシ夜が楽しみヨー!!コノヤロー!!」 清水  「すまん、俺もう帰る」 遥一郎 「俺も不足分は働いたから帰ろうと思う。おーい、蒼木ー」 澄音  「うん、解った」 ひらひらと穏やかに手を揺らす女装した彼は、 なんというかあまりに似合いすぎてて恐ろしいくらいだった。 ヘタな女より美人に見えるのが恐ろしい。 というわけで俺は岡田と田辺を起こすと、 着替えてきた穂岸と蒼木とともにシヌラウマをあとにしたのでした。 【ケース269:穂岸遥一郎/ヴィルヘルミナさんの名前はすげぇと思う】 世の中、わからないことのほうが多いという知識がある。 それは実際その通りであり、俺はまずこの状況が解らないままだったりする。 レイラ「宿泊料は払ってあったのですから、     もう少しゆっくりしてもよろしかったのでは?」 ノア 「マスター、無理はお体に障ります」 サクラ「…………眠いです」 呼んでもいないのになぜ彼女らは起きだしてきたんだろうなぁ。 まあそこのところは、シヌラウマから響き渡る男性の悲鳴とともに抹消するとして。 さて……こうなると我らが炸裂馬鹿の所在が気になるところだが…… って、何処までお人好しなんだ俺は。 あそこまで尻拭いさせられたんなら一度くらい忘却に帰してもいいだろう。 むしろこのまま旅に出るのも悪く無いと思うのだが、いかがなものか。 清水 「大剣を装備するメイドさんってのは……案外怖いもんだな」 岡田 「主人以外には案外厳しいもんだろ、メイドさんってのは」 田辺 「現実を見ろよ、清水。     弦月の言葉なんて、理想と幻想をごっちゃにしたようなフィクションだ。     現実はきっと厳しいぞ?そりゃもう、弦月が狂気に狂うほどに」 ザシャア…… 清水    「ム?」 遥一郎   「お?」 リザードマン『ギ?』 ───リザードマンが現れた。 妙な会話の途中だったから丁度いいといえば丁度いい。 清水 「リ、リザードマン!晦の記憶からするに、中々の剣豪と見る!!」 岡田 「相手にとって不足はねぇ!!いざ尋常に勝負!!」 リザー『………』《プイッ》 総員 『ややっ!?』 無視された。 というより、相手などしてられないといったふうに顔を背けられたのだ。 そんなだからなんとなくそれをしてみようと思うに至り、 まるで睨むかのように調べるを実行してみたのだが…… 驚くことに、相手の強さは計り知れなかった。 つまりノートリアスモンスターだった。 名前はリザードマンレイジス。 しかしそれに気づいていないのか、 猛者集団はしきりにリザードマンにからみ───ドカバキ!! 猛者ども『ギャアーーーーーーーッ!!!!』 一瞬にしてボコボコにされていた。 しかしそれでも諦めないのが原中という組織なんだろうな。 いい加減俺も学習してきた。 吹き飛ばされた彼らは恐らくなけなしのグミであろうそれを噛むと立ち上がり、 武器をギラリと輝かせた。 もちろん仕込み杖は輝きようが無いには無いんだが、 ここはそう喩えておかないとあまりにも不恰好だ。 だってな、爛々と輝く目でリザードマンを囲む三羽烏はそれはもう、 どんな卑劣に手を染めようとも勝ってみせるって臭いがプンプンしたのだ。 これから起こることを想定したなら、 少しでも好印象を残しておいたほうが後味がいいんじゃないだろうかと 溜め息を吐く俺の気持ちも解るだろ? 猛者集団『そりゃあーーーーーーっ!!!!』 やがて一斉に襲い掛かる三影を、俺は黙って見送った。 べつに何処へ出かける姿を見送ろうというわけでもないが、 この場合は見送るのほうが喩えとしていいと思う。 これは我らの獲物だと言い張らんがごとき猛者たちの表情や雰囲気を思い、 既に他連中は戦いを猛者たちに任せて自分たちの旅を再開している。 ようするにこの場は彼らに任せて進む作戦というやつだ。 緊迫した雰囲気以外で実行するケースなど稀だが、 それでも実行するのだから結果的には見送りになるだろう。 さらば猛者ども。 いつの日か、また何処かで会おう。 俺達は再び聞こえてきた炸裂音と猛者たちの絶叫を耳に留めつつ、歩を進めた。 【ケース270:清水国明/ミミズとオケラとアメンボの法則】 タンッ─── 田辺 「連撃いくぜ!抜刀連技!!」 リザー『ケキャア!!』 ヒュオズガガガガガガガギィインッ!!! 田辺 「ホォオオオオオーーーーーーーーーッ!!!!?」 岡田 「うおすげぇ!!抜刀連技全部受け止めやがった!!」 清水 「しかも反撃無し!?紳士だぁーーーっ!!紳士の誕生だぁーーーーっ!!!」 閃く連撃全てがリザードマンの剣によって弾かれる。 その剣さばきは流石の一言に尽きる。 俄仕込みの素人剣技では追いつけないものを僕らは見た気がした。 こんなトカゲ野郎の何処にこれほどのポテンシャルがあるのか訊ねてみたいところだが、 生憎とトカゲ語は話せない俺達である。 ナギー『ほれ、もっと頑張るのじゃー!』 シード『父上たちのように倒してみせろ』 田辺 「無茶言うねキミたち!!だったらキミらやってみなさいよ!強いよコイツ!!」 シード『僕らにやれと?なんだ、やっていいなら最初からそう言えばいい。     父上たちには瞑想力を高めてからだと言われていたが、だったら話は早い。     La feuille jaune de lumiere filer.“フリジットランス”!!』 魔王さまがブルボカルボバルボを翳す。 その傘の先端に光が篭り、輝くイチョウの葉のようなものが舞ったと思うや、 リザードマンに向かって幾数枚の光の槍となって飛翔する。 その魔力は相当だ。 魔力探知など出来ない俺達だが、 それがどれほど強大な力を持つかくらい雰囲気で解るってもんだ。 それなのにジャギギガガガガガギギギギギィインッ!!!! 猛者ども『ゲェエエーーーーーーーーッ!!!!!』 やはりリザードマンはその全てを目にも留まらぬ早業で叩き落した。 おいおい、これは夢かなにかか? いや、夢でも笑えない部類に入りそうだが。 夢ならば今すぐ覚めてほしい。 なにが夢で嬉しいかって、魔王さまの身体能力も含めた目の前の光景がだ。 リザー『ギッ!?』 シード『La lumiere du tonnerre est tomber dans le desordre,     et obscurite de la coupe avec un couteau, et le dechire.』 横に居た筈の魔王の坊やは既にリザードマンの後方の上空に居て、 ブルボカルボバルボの傘先を輝かせていたのだ。 どういう身体能力だ、ってツッコミたくなったね。 無駄だろうし応えないだろうから言わないが。 だがこのリザードマンもやはりただものではなかったのだ。 普通は虚を突かれて動揺するところなのだろうが、 あのトカゲ野郎は虚を突かれてもそれを予備動作にしたかのような反応を見せ、 物凄い速度で剣を後方に振るった。 それは魔王坊やの腹を容赦なく裂き、 シード『それも囮だ』 リザー『ギギィッ!?』 元から爆煙の中に潜めていたのであろう姿を一気に現し、 己の後方の幻影に惑わされたリザードマンへと光を放った。 驚いたもんだ、このちっこさで既にこうまで戦いってのを知っているなんて。 魔王の血ってのは怖いもんだ。 おまけに、魔物の血や本能ってのも。 リザー『クガァアアアアアッ!!!!』 なにせ振るった剣と体位をそのまま回転させ、魔王坊やが放った光を撃墜しやがったのだ。 それこそ呆れたね、人じゃないからってこうまで反射速度が変わってくるものか。 もはや仲間にしたいとさえ思う体捌きである。 さて、どう出るのかね、魔王坊やは。 追い詰められた顔でもしてやがるんだろうか。 などと思いつつ、 臆病ながらも少し離れた位置からリザードマンの前に居る魔王坊やの顔を覗き見ると、 なんと“遠慮なく戦える”って顔で笑っていやがった。 清水 「えーと」 戦ってくれるっていうなら別に構わんのだが、 どうにも手持ち無沙汰の予感が襲い掛かってきた。 まあ、ほんとに構わないんだが。 ややあってガギンゴギン、 チュゴンチュドンと暴れまわる二人(と数えてよいのだろうか)を横目に、 俺達は地面(草原)に腰を下ろしておもむろに水分補給を始めた。 ナギー『なんじゃ?わしにも飲ませるのじゃ』 清水 「間接チッスになるが」 ナギー『ばかかおぬしは。そんなものを気にする歳ではないのじゃ』 おお、ちっこいのに言ってくれる。 背後からひょいと俺の手から蒼色一号入りのアレを奪ったドリアードが それを飲んでいるのを節目に見て、せっかくだからと質問してみることにした。 だったら何歳なんだ?と。簡単だろ?遠回しに訊くよりよっぽどいい。 しかし急に怒りやがった。女に歳を訊くとはなにごとじゃ、とか。 そういうことは気にするんだな。女の感性ってよく解んねぇ。 ナギー『うむ?妙な味のする飲み物じゃの。なんなのじゃこれは』 清水 「なにって、蒼色一号入りのアレ」 一言で言えば、ポーションを飲みやすくした飲み物だ。 味はまあその、リポビタンに似ちゃいるが別物と考えていいだろう。 しかしながらこうしていると、妙にピクニック気分になるのはどうしてなんだろうな。 視界のあちらこちらではリザードマンと魔王が戦ってるっていうのに。 でもどうしてだろうか、負けるイメージがまったく見えない。 リザードマンは滅茶苦茶強い。 なにが強さに繋がってるかって、それはもちろんあの剣捌きだ。 見ていると晦を連想させるような、隙を巧みに潰すその狡猾さ。 それらを全て計算しておこなっているのなら、あいつは真実剣士なんだろう。 ナギー『ふむ』 清水 「んあ?どしたー?ドリッ子」 ナギー『この際呼び方云々などどうでもよいがの。妙なのじゃ』 清水 「妙って?」 ナギー『シードならば、既に決着なぞ着きようものなのじゃが。遊んでおるのか?』 遊んでいる?それはちと違うように思うが。 傘を片手に攻防を繰り返すちっこい魔王は、 相手から学ぶべきことを学んでいるように見える。 この場合、剣の技の吸収、または記憶だろうか。 あのちっこい体にラーニング能力があるようには見えないんだけど、 魔王坊やがあるといえばあるんだろう。 もちろん聞いたわけでもないのだが。 シード(太刀筋に一定の法則を確認した。次は、こう!) リザー『キキャア!!』 シード『あれっ?うわっ!!』 やっぱり気の所為だったらしい。 なにやら確信を以って捌いたらしい体が、見事に剣を掠められることとなった。 見ていて危なっかしいとは思うものの、邪魔するともっと怒られそうなので無視しといた。 頑張ってくれ、ちっこいの。 俺達はせいぜい観客を気取っていよう。 シード(法則が変異した?いや、見切られてる?そんな筈はない、見切ったのは僕だ!) リザー『ケアァッ!!』 シード(上段斬りから斜め振り上げ斬り、     こう来たあとは横一閃が───来た!やっぱり僕の方が一枚上だ!) おおっ?明らかに“見ィイ切ったァッ!”ってな感じで坊やが詰める! 集中してなんとか見える横一閃を屈むことで避け、 立ち上がりと同時に、ああダメだこりゃ。 リザー『ギッ!!』 シード『なっ!?《ドボォッ!!》うわぁっ!!』 剣ばっかりに気を取られすぎていたからだろう。 すぐに仕掛けられた蹴りを躱すことも防御することもできず、まともにくらった。 けどそれは相手を吹き飛ばすためのものではなく、 一瞬でも動きを止めるための牽制的な蹴りだったんだろう。 リザードマンは横一線の予備動作のままに剣を斜めに落とし、坊やの首を狙った!! シード『詰みか。ちぇっ』 けどそれじゃあ終わらなかった。 駆けつけたって間に合うわけがないっていうのに、 思わず体が動きそうになった俺の視線の先。 そこには傘を持っている右手ではなく左手だけで剣を受け止めている魔王の姿があった。 リザー『ギ……!?』 シード『この力を使うのはまだ早いと思ってたのに。     残念だなぁ、最初に見せるのは父上にって決めていたんだけど。     でも傷つけられるのは僕のプライドが許さない』 魔王の左手はまるで悪魔のように巨大な手と化していた。 それこそ“魔王”と呼ぶに相応しい造型だ。 肘関節から先がささくれ立った巨大な丸太を連想させるほどの、 黒いオーラを放つ腕に変形していた。 それだけで攻撃を受け止めたのだ。 シード『悪いけどお遊びは終わりだ。正直まだ完全に制御できるわけじゃない』 リザー『ギ───《ザボシャォォンッ!!》───!!』 清水 「あ……」 一振りだった。 受け止めた剣をそのまま押し返すように左手を振るい、 まるで巨大な削岩機を振り回したかのようにリザードマンの上半身を削り取った。 それで終わりだ。 残った下半身はさっさと塵と化して、 その場には魔王さまが敵を潰す際に手に引っかかったリザードソードだけが残った。 シード『うん?なんだこれ』 清水 「まずはお毒見つかまつる!!」 岡田 「いやいやなんの某が!!」 田辺 「いやいや順番は守ってもらわんと!!!」 シード『うわっ!?な、なななんだ貴様ら!さっきまで黙って傍観していたくせに!!』 ぺぺらぺっぺぺー、というレベルアップの音とともに魔王さまに襲い掛かる俺達。 もちろん目的はリザードマンが遺した剣であり、 それの取り合いをしてわやわやとした騒動が始まる。 人々はそれをロマンチックだのとは言わず、ハイエナチックと呼ぶ。 だが我らは原中は神心会にも負けないくらいの戦闘集団である。 ハイエナと言われようが我らは自分のため、ひいては原中のために己が道を突き進む! OHこれぞ人生是スパイラルドライバー!!我が道突き進みまくってます!最強!! 清水 「うっしゃあいただきぃいい!!」 岡田 「あっ!て、てめぇ!!」 田辺 「返せ!それは僕のだぞ!!」 清水 「貴様らは刀と曲刀だろうが!普通の剣は僕に任せたまえ!」 岡田 「合成しちまえばそんなの関係ねー!!」 シード『醜いぞ、お前たち』 清水 「醜くねぇ人間なぞ皆無!!」 ナギー『おお……言い切りおったの』 岡田 「ぬうう、ならば曲刀が出た場合は容赦無く俺が貰うぜよ?」 田辺 「刀の場合は俺、と。それで本当にいいんだな?」 清水 「わたしは一向に構わんッッ!!!」 ぺっぺけぺー!《清水はレイジングリズィーを手に入れた!!》 フオオ、この名前、この程好い煌き、たまらねぇYO!! レアアイテムってのはいいねぇ、心擽られるよ! 岡田 「さて。問題は内容だが?」 田辺 「清水よ。解ってるな?」 清水 「わ、解ってる、解ってるって」 ギラリと怪しい笑みで睨む猛者どもにゃあ勝てん。 そもそも勝ち負けがどうとかの問題でもないのだが、 ともかく、俺はナビを利用して詳細を虚空に映した。  ◆レイジングリズィー  リザードマン種に伝わる宝剣。ハイレアウェポンの一種。  酷く軽く、酷く切れ味のいい武器。岩を豆腐のように斬れるという恐ろしい切れ味。  ロックブレイカーのスキルが込められており、  石、岩系のモンスターに大ダメージを与えられる。  さらに疾風剣のスキルもあり、剣として振るう場合のみ攻撃速度が上昇。  *スキル:ロックブレイカー★★★★★ 疾風剣★★★★★  固有秘技:剣舞 清水 「ウホッ!いいスキル……!」 岡田 「レアウェポンっていたれりつくせりのものばっかだよな……」 田辺 「なぁ、やっぱそれ俺に譲ってくれない?     それがあれば虚空飛燕殺が上手く出来そうな気がする……」 清水 「……だな。スキルの有効利用は必要だ。ホレ」 田辺 「サ〜ンキュ」 ガシャリ、と剣を放り投げると、それを受け取る田辺。 ちと名残惜しい気もするが、効率を考えればこっちのほうがいい。 燕返しの完成形を見たいって本音もあるにはあるんだけどさ。 田辺 「さて、それじゃあ」 総員 『金が無い』 田辺 「わ、解ってますよ失礼な!!」 何故丁寧語なのかはあえてツッコまないほうがいいのかもしれない。 まあいい。 今はとっとと先に進もう。 ここで言う先ってのが何処だって限定は無いんだが。 さて、何処に行こうかね。 田辺 「んじゃ、どうするんだ?」 岡田 「んー?その武器の合成なら金貸してやってもいいけど」 田辺 「なに!?マジかてめぇ!!」 清水 「ワリカンだけどなー」 田辺 「よしじゃあ早速最寄の町へゴー!!」 清水 「最寄の町って」 チラリと後方にあるシヌラウマを見る。 冗談じゃないぞ、あそこには未だコックリーニョさんが居るんだ。 好奇心で戻ってみろ、地獄を見るぞ? もっとも、その意を唱えるまでもなく田辺は首を思いっきり横に振ってたが。 田辺 「こっから近いのはソロマニアって場所だな」 岡田 「ルーマニアみたいな名前だな」 おおまったくだ。 清水 「そこに行くのでいいのか?」 シード『何処にもなにもない。父上のもとに戻るんだ』 清水 「戻っても起きてるかどうか解らんぞ?それなら俺達としばらく行動しないか?」 シード『───命令は受けないぞ』 清水 「命令なんぞしないしない。     ついてくるかも任せるし───ああ、届けたお礼とか貰えるんかな」 シード『あまり調子に乗るな、人間。     本来、父上より命をうけられただけでも幸福だというのに。     ……そうだ。父上は何故僕にではなく、こんな人間などに……』 こんなとは失礼だな。 人間だって生きてるんだぞ、オケラだってオケラだってオケラだって生きてるんだ。 あら?オケラと、なんだったっけ?思い出せん。 どうでもいいか、そんなこと。 清水 「それはな、俺達のほうが提督との付き合いが長いからに他ならないんだよ!!」 総員 『な、なんだってーーーーっ!!!』 清水 「そう、そして裏で暗躍する黒幕こそ───ノストラダムス!!」 岡田 「またしても───またしても俺達の前に立ちはだかるのか!!」 シード『話を戻していいか?』 総員 『あ、どうぞどうぞ』 とことん締まらない俺達であった。 だってその方がいいだろ?堅苦しいよりよっぽど楽しい。 狙ってやっているんじゃなくて、むしろ素なところを評価してもらいたいね。 褒められたもんじゃないところを無理矢理にでも。 清水 「で、仕事を頼まれた俺達に坊やが嫉妬するところまで話したんだっけ」 シード『そうだ』 うおっ、否定しないよこの子ったら。 ものごっつい正直者だ、嫌な意味で将来が楽しみだよお母さんは。 シード『もういいか?お前らが父上の袂に報告にも戻らないというなら、     役に立たないお前の代わりに僕が仕事をしてきたと報告しても』 岡田 「フッ……そんなことをしてみろ、提督は貴様を見下げた野郎だと罵るぜ?」 ナギー『そうかの?逆によくやった、それでこそ魔王だ、とか言いそうじゃがの』 なっ、こ、こいつ解ってやがる!! さすがはこのヒロラインで唯一、提督軍と一番長く旅をしているだけはありやがる。 そうなのだ、提督、というよりは原中は姑息な手を姑息な手と受け取らない。 自分の都合のいいように捻じ曲げ受け入れる。 何故ってそれが原ソウル。常識だけでは語れない。 それもまた、相手を選んでのことだけど。 清水 「おのれ貴様、原中でもないというのに原中に関してのその知識。いったい……?」 ナギー『わしは二代目ドリアードのアレイシアスじゃ。     それ以上でもそれ以下でもないわ。いったいもなにも、     ヒロミツや他の連中が旅の中でその身を以って教えてくれたのじゃ』 岡田 「その身を以って……」 総員 (ああ……なるほど) 提督軍と一緒に居りゃあ、そりゃ理解していくか。 なにせ原中だもんなぁ。 俺も随分速い段階で飲まれたもんだし。 正常だった自分が少々懐かしい気分だ。 そうは言うが、俺は原中としての自分が大好きだがね。 お蔭で普通に生きてちゃ一生経験出来ない世界に俺は立っている。 こんなに楽しいことってないだろう。 みんなと一緒に仕事して暮らしていた時間がつまらなかったわけじゃない。 でも、税金だとか生活費とか。正直、金でしか動けない世界に嫌気がさしていた。 だからこの世界にさよならするためのこの第一歩であるこの世界が輝いて見える。 今はそれでいいって、そう思えた。 この世界と、弦月と晦と。そして、提督に感謝を。 お前らのお蔭で、こんなにも“楽しい”の中に居られてる。 清水 「よっし!だったらもっと原中のこと教えてやるよ!だから一緒に来いっ!」 シード『お前の命令は受けない』 清水 「なにぃ、じゃあ提督に直接連絡とってくれるわ!!岡田ゴー!!」 岡田 「威勢よく言ったんだから自分でやれよ!!場のノリの読めんヤツめ!!」 清水 「空気に流されるようでは一流の原中生は目指せません!というわけでゴー!!」 岡田 「はぁ、何に対してそう熱くなってんのか知らんし、まあいいけど。     あー……お、提督かー?俺だぁ、岡田だぁ」 ぶつくさ言いながらも既にテルシステムを飛ばしていたらしい。 準備がいいのか口が悪いのか、どっちにかしてもらいたい気もするけど。 まあ、岡田らしいや。 声    『……夜にテルかけてくるとは中々見上げた根性……。       貴様、命が惜しくないと見える……』 岡田   「うーお、いきなり不機嫌だな。まあそう怒るな提督。実はさー……。       つーか見下げたヤツとか言わないところは提督だよな、話が解る」 声    『あ、あのね?僕ね?今とっても眠たいの。       話早く切り上げたいんだけど、なにかな』 岡田   「おお実はさ、───お宅の子供二人は預かった。       返してほしくば身代金50000$を用意しろ」 清水&田辺『ホゲェエーーーーーーーーッ!!!!?』 清水   (ばばばばかっ!!提督に身代金要求してどうすんだよ!!) 田辺   (そうだ!どうせもう武器鍛錬で金なんざ残っちゃいねー!!) 清水   (そうじゃねぇだろボケ!!) 田辺   (ボケとな!?) 清水   (これでもし提督が勢い巻いて突撃でもしてきたらど〜〜する!!) 岡田   (大丈夫さ!なにせ我らが提督!これくらいの冗談は───) 声    『それは挑戦と受け取っていいんだな……?』 総員   『通じてねぇえーーーーーーーっ!!!!』 清水   「ド、ドドドドリッ子!今すぐ提督に安心の言葉を投げかけてくれ!今すぐ!」 ナギー  『うん?まあよいじゃろ。ヒロミツー、聞こえるかー?……これでいいのか?』 清水   「そ、そう!そのまま!」 ナギー  『大変じゃぞヒロミツ。       わしはどうやらこのまま再び攫われてしまうらしいのじゃ』 声    『なんとな!?』 清水   「火に油注いじゃダメヨォーーーーーッ!!!!」 ナギー  『大丈夫なのじゃー。       こう言えば再び、ヒロミツが凛々しい顔で助けに来てくれるのじゃー』 それって俺達に死ねってことですよね!? うおおこの自然の精霊、平和を愛すどころか善良な、 いや善良かどうかは疑問に思うところだが、僕らに死ねと通告しやがりましたよ!? 岡田 「あ、ああー!?えーと!?てて提督!?今の冗談!冗談だぞ!?     本気になるな!?これで本気にされるとこっちが困る!」 声  『おー、ナギーの手前、あんなこと言っただけだー。     そいつらとは飽きる程度に遊んでやってくれ』 岡田 「おお、さすが提督。エロビデオと話の通りやすさだけは一級だな」 声  『うむ。まあそれなりの誇りを持ってエロを愛していたのは事実だ。     それまでを否定するつもりはない』 なぁ提督よ。 その言葉がこっちにだだもれだっての、気づいてるか? シード『エロとはなんだ?』 清水 「提督の固有スキルだ。今では誰にも真似出来ないほどの伝説を持っている」 田辺 「そうだ。かの有名なゼプシオン=イルザーグだろうと、あのエロさには勝てん」 シード『そ、それほどまでにすごいのか!流石は父上だ……!』 声  『アノ……全部聞コエテルンデスケド……。僕、キミタチ滅ボシテイイ?』 清水 「はっはっはぁ、余裕が無いのはダメだぞぅ提督〜」 頼むからマジでやめてくれ、ホント。 声  『ああ、まあいい。事実は事実だ。本音を言えば我が深層は未だエロスよ。     ビデオ一式、DVD、カメラなどは差し押さえられたが、     中には忘れられぬ思い出のメモリーもあったのだ』 言い回しは格好いいのに素直にカッコイイと言えないのは何故だろうか。 やっぱ内容がエロだからか。 “我が深層は未だエロスよ”って、んなこと胸を張って言えるのはやっぱ提督だけだよな。 岡田 「綾瀬たちは?まだ寝てるのか?」 声  『んや?寝たフリしながら聞き耳立ててる。     男と女で部屋別なのになぁ、わざわざドアの先でひっそりと、な。     んなもんこのヒロミツの気配察知能力を以ってすれば楽に感知できるわ!!』 清水 「そかそか。でもさ、だってのに未だエロスなことを公言して大丈夫なのか?」 声  『今さらなに言ったところで、あいつら俺をエロスだと信じて疑わないから……』 清水 「えっ……あ、いや……そ、そっか……」 なにやら妙な核心を突いてしまったらしかった。 これもさすがって言っていいのやら。 提督らしいな、妙なところに信頼感がある。 かくいう俺も、提督と言えばエロスって認識を持っていたわけだし。 すまん提督、正直貴様からエロスを抜くと提督って感じがしない。 嗚呼懐かしきかな、青春時代。 とまあそんなわけで、悲しみに暮れる提督がテルを切ったことで、 その場の会話は終わりを告げた。 魔王やドリッ子は仕方なし、といった感じで俺達との行動に同意したし、 俺達も俺達でそれに同意して歩き出す。 さてと、まずは何処に行こうかね。 出来れば景色のいい場所がいいな。 それと、ホモマッチョが居ない場所、だな。 Next Menu back