───冒険の書84/ロードオブブラックドラゴン───
【ケース273:弦月彰利(再ンポスト)/隣のグラシャラボラス】 常霧の町ガランディア。 今では“元”が頭についてしまう腐敗都市だ。 人と呼べるものは一切おらず、ただ死者の魂や使いどもがうろつく町だ。 霧を抜け、そんな場所に至るに、俺は一体のグールの前に立ち、 グール『ボンゲェエエーーーーーーッ!!!!』 彰利 「やあどうも。     ちょっと道具屋が何処にあるのか知りたいんですけど《ボグシャア!》ギャア!」 問答無用で殴られた。 どうやら話は通じないらしい。 そもそも腐敗都市に来てアンデッドに道案内を頼むほうがどうかしてるのか? 否!断じて否!猛者な人達なら絶対やるぜ!? 今の場合、グールの拳に対してカウンターをキメられたなら二重丸だったに違いねぇ。 くそぅ、この彰利も鈍ったものよ。 ともかく殴ってくれたお礼にグールを破壊しつつ、 彰利 「思ったんだけどさ。     こいつら滅ぼしたらここって誰も居ない幽霊都市になるんかな」 粉雪 「なるんじゃない?」 彰利 「ふむ」 だったらここを第三のオルクヴィレッジにしちまう計画でも立てるかい? クォックォックォッ。 彰利 「じゃ、いっちょブッ潰すか!」 ストレイツォじゃなくても容赦しません。 その意を以って、みんなが散り散りと町を疾駆し敵を殲滅。 時折自分が敵を倒したわけでもないのにレベルアップする様は面白いものである。 俺は俺でボスランクの敵が居そうな場所へと真っ先に駆け、 ボスを見つけるや否やスキルを上げるために速度と防御のみに重点をおいて、 時間をかけてゆったり攻撃。 ゆったりという表現はあっても、攻撃自体はとても速いものですよ? グールロード『アグォオオオオン……!!』 彰利    「ダグオン!?」 でも考えてみようぜ俺よ。 相手はグールで、体がちょっぴり腐ってるんだ。 素手での攻撃の度にズルリぐしゃりと肉が削げて、腐った汁がびちゃびちゃとギャアア!! 彰利 「キャアア!臭ェ!!この人(?)すげぇ臭ェYO!!」 だってのに忌々しいことにスキルが軽快に上がってゆくのだ。 俺はどうやら我慢の男を貫かねばならんらしい。 これも強くなるため。耐えるのだ、俺!! 彰利 「ぶあっ!やっぱ臭ェ!物凄い刺激臭だ!思わず吐いてしまいそうだ!!」 ダメ!僕耐えられない!強くなれないよトニー!助けてぇえええ!! よぅしこうなったらドーピングだ!試合中か試合前にこれを食べれば超最強! ケロッグコーンフロストを食べて、今日からキミもタイガーだ!! ちなみに俺は幼少の頃、 覇気が無かったのが原因で雪子さんの陰謀によって近所の少年サッカー団に入れられ、 試合中にケロッグコーンフロスト食って“サッカーナメとんのか”と言われ、退場。 その次は試合前に食って、元気に走り回ってたら脇腹が痛くなって退場。 碌な結果にならなかったね。ケロッグベストユー!! 彰利    「グゥウウウッレイトォッ!!!」 グールロード『《バゴォッ!!》ルゥウウェエエゥウウ……!!』 しかしなんだろうね。 こいつ、殴っても全然怯みやしない。 ところで僕はかなり前から気になっていたんだが、グールってのは死人だろ? それがどうして強さに上下があるんだろうな、と。 肉も皮も骨も腐ってるだろうに、不思議だなぁ。 だが僕は閃いた!きっと魔力によって体が強化させられているのだ! だから強さに上下があり、死人をグール化した魔術師の力によって強さは変わる、とか? 閃いても自信なんて持てませんよトニー。 そんなときこそベスツユー!! ケロッグコーンフレークを食べれば今日からキミもタイガーだ! 彰利 「黒を操り体を黒い虎とする!!変化!トニーザタイガー!!」 ブラックオーダーを発動!黒になった体で虎を象り、その獰猛さをトレース! さあ一気にキメるぜ!?タイガー・オン・トゥース!! 彰利 『いただきまんもすーーーーっ!!!!』 がぶりんちょ♪ゲボハァッ!!! 彰利 『ぶぅうううぅぅぅウエェッ!!!!刺激臭ッ!!くっせぇええええええっ!!!!     しかも不味い!当然のことながら不味い!!オゲェッ!!ブエェエエッ!!!』 虎よ。俺はナマモノは生涯食わんことをここに宣言しよう。 腐りモノも喰いません。もう勘弁していただきたい。 彰利    『コノヤロー!!水に濡れたアンパンマンでももうちょっと美味いぞ!?        てめぇ許さん!散々スキル上げてから血祭りに上げてやる!!        ……しまった!死人だから血らしい血なんて出ねぇや!!』 グールロード『ルルゥウウェエエエ……!!!』 それでも突貫! 殴って蹴ってどつきまわす!! 手が汚れようがもう構わん!死ね!つーかしまった!既に死んでる!! などという、生き物に対してのみ有効な罵倒文句を展開しつつもバトった。 戦いの神様はきっと呆れ果ててることでしょう。 ───……。 ……。 ややあって、腐敗都市の沈黙は叶った。 なにをするでもなく、 グールロードを葬った時点で他のアンデッドモンスターが塵と化したらしい。 俺はその場に居合わせなかったからなんとも言えないが、妻の皆様がそう言うのだ。 粉雪 「それで……こうして鎮圧というか、とにかく滅ぼせたわけだけど。     ここ、どうするの?このまま放置?」 彰利 「ウィ。今は完全放置でさぁ。     いつかまた来ると思うが、その時は己の力に少なからず納得が出来た時よ」 これから始まるのだ、この彰利の覇道が。 曹操さん、俺、やるぜ? 春菜 「でもさ、レベルは上がったけど。こうして滅ぼす意味はあったのかな」 彰利 「おおありますぞ?何故ならこうして無人くんにすることで、     他の敵が住居しやすくなったのだ。     で、敵さんどもがここに住まうようになってから再び叩いて経験値を、と。     そういう寸法さぁ!ありがとうトニー!グレイト!!」 真穂 「どうしていきなりトニーかな」 彰利 「いやだって、考えてもみてくれ。     ケロッグコーンフロストって何故か突然喰いたくなるっしょ?     そのくせ中途半端に値段が高いから買わないこともしばしば」 仁美 「アキちゃんっ!!」 ガッシィッ!! 彰利 「ヒィッ!ごめんなさいごめんなさい!よく解らんけどごめんなさい!」 仁美 「解るよアキちゃん!わたしもケロッグコーンフロストは大好きだから!」 彰利 「エ?」 叫びとともに掴まれた手が暖かこうございます。 つーかマジで怒られるかと思った。 どうしてだろうね?ベイビーの頃のボコリーナ効果かね? 子供の頃の戒めってすげぇ強いんですね。 その割りに宗次のことを思い出しても全然怖いって感じないんだよね。 そう考えるとキリュっちってすごいね、この彰利をこれほどまでに震え上がらせるとは。 彰利 「お、おお……解ってくれるか坊や《ズパァアンッ!!》ブベェーーーイ!!!」 仁美 「坊やじゃないでしょ!?キリュっちって呼ばなきゃダメ!!」 彰利 「呼び方云々でビンタするなんてあんまりな気がするんですが……?」 まるでモミンゲリオンにモミアゲと呼んだ瞬間と酷似した緊張感ですネ。 おお痛ェ、内側頬肉噛んじまったい。 しばらくほっぽりっぱなしだったから、イジケ度も半端じゃない気もする。 その威力は口からドチュウと出続ける血が物語っている。 彰利 「俺の血がァ!!」 粉雪 「意味も無くグルガの真似しなくていいから。これからどうするの?     清水くんたちみたいにこの山で経験値溜める?」 彰利 「おお、そりゃいいデスネェ〜。是非そうしましょうデスネェ〜」 春菜 「どうせならパーティー組んじゃった方が早いかもね。     レベルを上げるって行動だけなら」 彰利 「せやね。そんじゃ……って夜華さんは?」 仁美 「武士ちゃん?武士ちゃんならもう山を下って敵に向かっていったけど」 彰利 「物凄ぇ血気盛んですね」 粉雪 「うーん……まあ、彰利のためになにかしてあげたかったんでしょ。     旅が始まって以来、ず〜っと彰利のこと探してたんだから」 彰利 「あらそうなん?」 そこんところは素直にありがとう。 でも見つかったら見つかったで、 それがどれだけ早い段階であろうと正座はさせられてた気がする。 だって夜華さんだし。 彰利 「ウヌ!では皆様、僕らも頑張って敵をコロがし、経験値を溜めましょう!!     目標200レベル!!レッツハバナーウ!!」 ともあれ僕らは駆け出した。 妻勢力の戦い慣れは随分とステキなもので、オラとってもおどれーたが、 中でも雷神を巧みに操って敵をコロがす真穂さんの姿は妙に笑えました。 もちろん原ソウルを擽られた俺は“面白そうだ”という理由で錫杖を借りてみたんだが、 残念ながら既にラストクラスに至っている僕には雷神召喚は出来なかった。 ええい口惜しい。 なんてことをしていると、霧の果てからなにかがこう、 敵を蹴散らしながら近寄ってくるのだ。 その力強さといったら、一撃で巨大な敵が肉塊になるほどのもののようだ。 何奴!? ゼット「───うん?誰かと思えば死神か」 彰利 「ありゃ!?ゼット!?」 ゼットだった。 なにやら紅蓮の如く赤い斧を片手に、 敵をバッタバッタと破壊するソイツは僕を見てぶっきらぼうというか、 愛想の無い顔で小さく息を吐きました。見下すように、鼻から。 彰利 「なにかねキミ……こげなところで俺と会ったのがそげに気に入らんかね?」 ゼット「そう感じたのならそうなのだろうよ。否定はしてやれないな」 彰利 「むう。で、みさおは?」 ゼット「………」 あ、黙った。 彰利 「クォックォックォッ、解ったぜ〜〜〜っ!!     どうせ以前のように何かの状態異常に蝕まれてるんだろ〜〜〜っ!!     えぇ〜〜〜〜〜〜〜っ!?《ボゴシャア!!》つぶつぶーーーっ!!!」 ゼット「黙れ」 彰利 「うきっ!うきっ!!うきぃいいいーーーーーっ!!!!」 ナックル一閃。 俺は随分と久しぶりに顎を砕かれ、激痛のあまり地面を転がりまわった。 一撃で顎を砕くこのパワー、まさに国宝級である。 彰利 「お、おのれてめぇ……!!なんつーパンチ力してやがる……!!     てめぇのレベルは……いかほどだぁーーーーっ!!!」 ゼット「328だが、それがどうした」 彰利 「鬼強ぇええーーーーーーーーっ!!!!」 神様ここにバケモンが居ます!! 今までてんで姿見せねぇと思ったら、いったい何処でどんな戦いしてたんだ!? で、でも僕だって闇黒の影を発動させりゃあ300いくよ!?そんなに負けてねぇよ!? 彰利 「と、ところであのー。キミって竜人状態になるとどれくらい強くなるん?」 ゼット「説明書きなど知らん。俺は俺の意思のままに行動するのみだ。     それがどれほどの力になろうが、     俺はそれが己の力として機能するなら受け入れるだけだ」 彰利 「………」 力を自分の力として扱うことが出来るなら、それを疑ることはないらしい。 そらそうか、俺も似たようなもんだし。 でも魔竜化したら、レベル300じゃ追いつかないくらいに強いんだろうね。 考えたくもねぇや。 彰利 「して、この前はやまびこ草だったね。今回はなんだい?」 ゼット「貴様に教える筋合いは無い」 彰利 「なんだとてめぇ!!いいから教えろ!気になるだろうがこの野郎!!」 仁美 「アキちゃ〜ん、置いてくよ〜?」 粉雪 「ちゃんと戦ってよ彰利!」 彰利 「キミたちも!目の前に黒竜王が居るんだからちったぁ緊張感持とうよ!!     っと、これ!!話ぐらい聞かせろゼットこの野郎!!」 妻の皆様に注意が行った途端にこれである。 ゼットは俺の横を通り過ぎると、さっさと頂上へ向けて駆けて行ってしまった。 ……気になるじゃねぇかこの野郎。 でも確かにちゃんと戦わなきゃダメだよね、みんな戦ってるんだもの。 強者への道を目指すと言ったのだ僕なのですから、きちんと戦います。 ───……。 ……。 そんなこんなでいつしかゼットのことも忘れ、一心不乱にバトりまくってた時。 ふと、パーティーとなってもらった清水軍が壁際に背を預けて武器を納めた。 ハテ? 彰利 「オウコラハゲデブアブラムシ、なに戦闘放棄してんだこの野郎」 清水 「誰がハゲデブアブラムシだっ……!いいから早くこうしろ……!!」 彰利 「理由を話せ!じゃなければ俺は嫌だぜ!!」 清水 「ここらは経験値稼ぎにゃ丁度いいんだが、     一定時間経つとバカデケェ竜が飛んでくるんだよ……!!     こちとら一度見つかってコロがされてんだ……!二度と会いたくねぇ……!!」 彰利 「なんと!?」 飛竜だけかと思ったら、きっちりドラゴンも居るのか! 清水 「お前らは頂上に町がある、とか言ってたけどな……!     この上には浮遊島ってのがあって、そこにそのドラゴンが巣ぅ作ってんだよ……!     だからドラゴンが戻ってる時に騒いだりしたら、襲い掛かってくるんだ……!」 彰利 「よし!オイラ戦ってくる!!」 清水 「ばっ……バカかてめぇ!!」 彰利 「なんだと清水この野郎!!バカって言われたヤツは確かにバカだが、     それを素直に指摘するヤツは親切者でも善人でもなく、     常識も解らんというより一層のバカなんだぞ!?」 清水 「どっちみちバカなんじゃねぇか!」 彰利 「そうだ!すげぇだろ!!」 清水 「ヤケクソになって胸張るなよ!いいからここはやりすごしてだな……!!」 彰利 「俺は嫌だぜ!!」 清水 「だったら今すぐパーティー編成解除しろっ!     こっちまで巻き込まれるのは御免だ!」 彰利 「清水……俺達同じ原中生だろ?     僕がキミならきっと同じ行動を取った筈さ……!!」 清水 「……お前さ、あのドラゴンを前に同じコト言えたら本気ですげぇぞ?」 彰利 「言えるね!何故なら僕はかつての僕じゃあねぇからだ!!」 ゼットみたいに全てのイベント無視して レベル上げのみに精を出してたほどにレベルはねぇが、 それでも300レベルまでレベルは引き上げられるのだ!! 今さら飛竜やドラゴンには負けねぇ!と思いたい。 彰利 「さーあドラゴンよ!俺はここだーーっ!!かかってぇええっ───こいやぁ!!」 清水 「逃げんべ」 岡田 「んだ」 田辺 「そうすっべ」 ザカカカカカ!!《清水たちはパーティー編成を解除して逃げ出した!!》 彰利 「ほっほっほ、臆病なことよ。だがこの彰利は違う!!     高みを目指すからこそ逃げるわけにはいかんのだ!!     僕のハニーたち、キミ達は離れていなさい!ドラゴンなんぞ僕だけで十分!!」 粉雪 「そりゃね、わたしたちよりレベルの高い清水くんたちが逃げ出すんだから、     わたしたちも素直に逃げるけど……ほんとにいいの?」 彰利 「余裕だぜ〜〜〜っ!!」 力への過信は危険だということはよ〜く解ってます! だが俺が信じなければ誰が信じる! 彰利 「さぁ来いィ!!」 見よこの勇ましさ!まるでグルガのよう!! 別にフンドシ一丁のゴリモリマッスルってわけじゃないよ!? 彰利 「ヘルゲリアー!!モルゲリアー!!エンバッハジュリアーーノォーーーウ!!!」 去ってゆくハニーたちを横目に、僕ァとにかく叫びまくった!! するとどうでしょう!ふと霧に影のようなものが差すではないか!! クォックォックォッ、これが噂のドラゴンかネ!! 彰利 「エネルギー全開!!マキシマム!!     ブラックオーダー!俺のレベルを二倍にしろ〜〜〜っ!!」 早速ブラックーダーを発動。 体に力が漲るのを感じながら、 濃い霧を影で黒く塗り潰してゆく巨大な影を前に胸を張った。 さあ来てみやがれ。貴様のその強さ、俺が越えてゆく。 彰利 『ヘイカモンカモンカモンカモンカモーーーン!!!』 霧を埋め尽くす面積が大きくなってゆく。 しかしここまでだろう。 空界の竜族の大きさがせいぜいでこのくらいだった。 故にそろそろ霧を裂いて体が現れる。 彰利 『カモンカモンカモ……………………えっと』 だがその影がさらにさらにと大きくなる。 さてここで問題だ。 ここに居るモンスターどもは他の場所とは違ってどげな感じだったでしょうか。 えーと。 などといった不安を掻き消すように、ようやくドラゴンが姿を見せる。 彰利 『な、なんだ、やっぱ空界の竜族と同じくらいの大きさ……』 だったらよかったんだろう。 しかしながら現実は酷く残酷だった。 そのドラゴンは、空界のドラゴンたちよりも二周り以上はデカかったのだ。 なにせ全体図だと思っていた現れた竜の部位は、“顔だけ”だったのだ。 つまり体はまだ下のほうにデカデカとあるわけで。 彰利 『ギャ……ヤヤ……!!』 心底震えたね。 銀色の竜の目が俺を鋭く見据え、牙をギシリと揺らしたのだ。 如何に“普通”から外れているとはいえ、 幻想種族に対する強い思いは他とそう変わらない。 いや、知っている分、他よりも強いと言ってもいいだろう。 だからこそ震えたのだ。 戦って勝つ?無理だね、見掛け倒しじゃない限り、これは勝てない。 瞬時に悟ったさ、そんな風に。 だがここで逃げるようでは、目指す強者になんて辿り着けやしないのだ。 彰利 『くっ……!くそったれぇえーーーーーーっ!!!!』 だから駆けるッッ!! 見事受け止めてみせよ、我が全力!! ───……。 ……。 …………ヒョォオオオ〜〜〜〜〜───ドグシャアッ!!! 彰利 「ゲファーーーリ!!!」 粉雪 「うひゃあっ!!?」 夢は夢だから夢っていうんですよ? ああ、10と続かずにボッコボコだったさ。 レーザー撃たれたわけでもブレス吐かれたわけでもなく、 ぶちかましと顎で殴られただけで瀕死のダメージだ。 あっさりと力尽きた俺は落下して、先に降りていた妻たちの傍に落ちたってわけだ。 彰利 「う……ぐぐ……!こ、ここは何処だ……?」 真穂 「地球よ。よく来たわね」 彰利 「いや真穂さん、そういう話でなくて……」 俺は宇宙と書いて“そら”と読むところから降ってきた知的生命体ですか? というか真穂さんにこげなこと言われるなんて貴重体験だね、うん。 彰利 「そんなわけで逃げんべ」 清水 「無理だったろ?」 彰利 「やあ清水くん。僕はキミを誤解していたよ。だから逃げよ?」 岡田 「意義無し」 田辺 「意義無しだな」 こうして僕らは逃げ出した。 ありゃ無理だ、今の僕では歯が立たない。 真穂 「でもさ、黒竜王さんそのままになっちゃうけど。いいのかな」 彰利 「殺したって死ぬようなヤツじゃねぇっしょ」 なにせマグマの中で生き続けた究極生物だし。 カーズって呼んであげようかね、これから。 なんて思ってた時だった。 ギガガゴバシャォオオオゥウウンッ!!!!! ヴァアッガァアアアアッ!!!! 男衆 『どぉおわぁああああああっ!!!?』 女衆 『きゃぁあああああっ!!?』 耳を劈き大気を破壊するかと思うほどの強烈な轟音。 そののちに景色が白く塗り潰され、何事かと振り向いた時には高い高い山の大半は削れ、 俺達がさっきまで立っていた場所の巨大な範囲がクレーターと化していた。 さらに見上げれば、あれほど濃く立ち込めていた霧が完全に消滅し、 巨大な山とその上にある浮遊島、そして蒼空を見せ付けていた。 彰利 「う……お……!!」 突然差し込んだ眩しい光に目を細める───普通ならそうしたのだろう。 だが日差しなんてものは一体の竜によって遮られていた。 誰が瞬時に現実を直視できただろう。 あれほど巨大だった竜は上半身を完全に削られ、落下する過程で塵と化し。 その遙か上空には漆黒の飛翼をはためかせる、巨竜に比べれば小さいと思える黒竜が居た。 清水 「おっ……おいおいおい……!!」 “ジョブ”の範疇なんざ最初っから超越していた。 ジョブじゃなく種族だ、当然だろう。 しかし俺達は忘れていたのかもしれない。 あいつが人間ではなく、かつての空界の絶対の王であったことを。 蒼空の下に浮かぶ漆黒の竜の姿はまるで誇りを失っておらず、 見上げるだけで、初見の頃の緊張を俺に思い出させた。 岡田 「もしかして……今の……黒竜王が……?」 田辺 「じょっ……!冗談じゃねぇぞ!?     あんなのくらったら一撃でパーティー全滅じゃねぇか!」 そうだろうか。 確かに威力からすれば一撃で死ぬだろうが、それでもあいつがあの姿に至ったのなら。 少なくともいたずらに人の命を奪うようなことはしない筈なのだ。 もちろん敵対してるならどうしようもないわけだが。 恐らく俺は今、獣人勢力であることに初めて恐怖したんだと思う。 彰利 「…………」 でも、いいさ。 いつか俺がレベル300くらいまで行けば、きっとあれくらいの力は出せる。 そう信じて突き進むのみだ。 俺にゃあサイヤ人みたいに強敵と会うことでワクワクしたりすることは出来ないが、 それでもいたずらに強くなるよりも目標があるほうがいい。 見る間に人の姿へと戻り、頂上付近に着地した影を見送り、強くなろうと誓った。 もっと、もっとだ。 彰利 「よしてめぇら!もっと、より早く強くなろう!!     僕らは強くならなければならない!!せめて竜族と戦えるくらいまで!!」 清水 「お……お、おお!みすみすコロがされたくはねぇ!!」 岡田 「それに人間の底力ってのを見せ付けてやりてぇさ!!     最近のゲームの主人公の中に純正ヒューマンは居やしねぇが、     過去のRPGの勇者さまは普通の人間だったことを思い出させてやる!!」 夜華 「次の目的地は何処だ?貴様が願うなら、わたしは助力を惜しまない」 彰利 「うし!あそこの浮遊島に行こう!!」 総員 『断る!!』 彰利 「なんで!?」 岡田 「バカヤロウてめぇこのクズが!あそこにはあのドラゴンが行き来してたんだぞ!?     普通に考えりゃああそこにはあのドラゴン子供が居るってことだろうが!!」 彰利 「で、でも僕は早く強くなりたいのだ!!     あそこまで力の差を見せ付けられたままで黙ってなどいられない!!」 田辺 「だったら博打まがいの戦いより地道に稼ぐほうがいいだろうが!!」 彰利 「グ、グムーーーーッ!!!!」 そりゃ確かにそうなのだが、あんなもん見せられりゃ焦りもする。 くそ、せめて魔人冥黒結界が使えりゃあ……っていかんいかん! すぐアレに頼ろうとするのは俺の悪い癖だ! 彰利 「よ、よし!だったら普通に、しかし迅速にレベルアップだ!!     あのヘビトカゲ野郎に僕らの強さを見せ付けてやるのだ!!」 真穂 「ヘビトカゲって……黒竜王さん?」 彰利 「竜族ってそれっぽくない?だからヘビトカゲで十分!!     いつか僕はヤツを越えるぜ!?     そりゃ魔人冥黒結界があって、持久戦に持ち込めばなんとかいけそうだが……     しかし一撃の威力ではヤツにゃあ到底敵わん。     ハイパーストレングスで、しかも防御力も高いからね……ブロリーですよあいつ」 清水 「マグマの中でも平気なところとか、何年越しかに再戦してくるところとか、     力と防御が高いくせに決して動きが鈍いわけじゃないとことか、     単純に力が半端じゃなく高いところとか、確かにそっくりだな」 彰利 「宝玉のエキストラスキルには“神魔”があるんだろうなぁ。     俺は思いっきり“死神”って文字しか無いのに」 粉雪 「宝玉……持ってるかなぁ」 彰利 「多分強くなるための戦いの中で適当な精霊ブッ潰して宝玉持ってるだろうね。     で、恐らくだがエキストラスキルにも“力向上系”ばっかが充実してるんだ」 総員 『ああ……ありそう……』 でも悠介に負けて以降、悠介をブッ潰すことしか頭になさそうだからね。 そもそも俺って眼中に入って無い気がする。 だからこそ強くなって、今度は俺がブッ潰してやりたいのだ。 それに精霊になってからの悠介って、なにやら物事への興味が随分と減った気がする。 ちょっと前までは日本的なブツには未だに弱かったんだが、 今では随分と落ち着きすぎちまってまあ。 やっぱあれかね。見ちまったっていう未来のことが引っかかってんのかね。 まあ、今はいい。いつか時が来たら話してくれるだろう。 それよりも今は強くなることだけを考えよう。 力に溺れない程度にね。 Next Menu back