───冒険の書85/妖精の里での別れ───
【ケース274:中井出博光/Sheik it up baby】 妖精に憧れたことがある、なんて。 道端に咲く花を見てウフフと笑う夢見がちな少年じゃあるまいし、 いったい何処の誰がそんな幻想を抱くというのか。 答えよう。俺が妖精を愛してる。 旅を再開してから約六日間、俺達は新天地を目指してそれはもう世界を練り歩いた。 地図を見ずに旅をするのも楽しいんじゃないかという、 目的意識と迷子への緊張感が心臓を賑やかにさせる作戦だ。 人体にはあまりよろしくなかったことを結果として残そう。誰も真似すんな。 そんなこんなで世界を巡り(といっても極一部だが)、 カヌーを譲り受けて沈没したり筏を貰って沈没したり、 乗せてもらった船がクラーケンに襲われたりと、 まるで水の精霊が俺達を執拗に襲っているような状況の中、 ようやく辿り着いたのが西の大陸“ホライエグニム”。 なんでも東の大陸(俺達が冒険してた大陸だな)とは乖離されたような場所らしく、 通貨は同じものの、手に入る素材や現れるモンスターがまるで違うのだ。 こっちはどうやら空界で言う“狭界側”に位置するものであるらしく、 その証拠に“マナの樹”があって“癒しの樹”が無かった。 しかし、ここで俺はツッコミたい。 こっち方面でまで神父が同じヤツなのはどういうカッパーフィールドなんだ。 ともかくいろいろあった六日間の果てに俺達は妖精の里に居る。 いろいろってのがガジェロマウンテンに昇ったり常霧の町ガランディアに行ったり、 そこいらで飽きるほどレベル上げに励んだり時にはコロがされたり、 湖の中心にある祠ってのに行くためにカヌー貰って沈没し、 川を下ってしか行けないっていうキノコの山って場所に行くために筏に乗って沈没し、 ここに来るためにシヌラウマから船を出してもらったらクラーケンに襲われたりと、 そんなとてつもない水難の相地獄を乗り越えた六日間がまさに“いろいろ”だったわけだ。 ともかく妖精のペンダントは俺達を妖精の姿へと変異させ、 その姿でなければ見えもしないし入れもしない場所に、俺達は辿り着いたのだ。 しかしここでも早速イベントが発生。 話を聞くに、妖精の里の近くに妖精が最も嫌うモンスターが居て、 しかもそいつが妖精を生贄に出せ、とか言っているのだそうだ。 妖精の里の妖精は数を減らすばかりで、今や絶滅の危機に瀕しているらしい。 そんなことを言われたらこの博光、妖精好きの漢として黙ってなどいられん。 いられんのだが、問題点としては“妖精の姿じゃなければ戦えない”ということ。 なにせ妖精の里の周囲で起きている出来事。 この姿でなくては敵自体が現れないのだ。 中井出「これは異常事態だよキミィ!!」 藍田 「提督、鼻血」 中井出「おわっと、こりゃ失礼。《フキフキ……》これは異常事態だよキミィ!!」 丘野 「提督殿、顔が真っ赤でござる」 中井出「ほっとけ!!」 殊戸瀬「妖精を見るや、鼻血を出して倒れるなんて……」 中井出「感動したんだからしゃーないだろ!?」 麻衣香「へー。ヒロちゃんって感動すると鼻血出すんだ」 夏子 「さすが提督さん……エロス」 中井出「ぐっ……そ、そうだよ!?僕エロスだもん!!     なに言ったってエロマニアの称号からは逃げられないエロスさチクショー!!」 藍田 「おお!ついに認めたぞ!!」 丘野 「男でござるな提督殿!!」 藍田 「おっとっこぉっ!!おっとっこぉっ!!」 総員 『エッロマッニアッ!エッロマッニアッ!!』 中井出「“男”の掛け声から少しは間を置いてから言おうよ!     いややっぱ言わないで!ここぞとばかりにエロマニアとか言うなぁあ!!」 僕ら以外の旅人たちよ、如何お過ごしでしょうか。 僕は今日も元気なヒヨッ子どもに囲まれて、涙涙の日常です。 エィネ『でも、驚きました。わたしたち以外に妖精が居ただなんて』 ナギー『うむ。わしらは東の大陸から来た妖精じゃからの。知らなくて当然なのじゃ』 シード『父上が来たからには、下賎な魔物など一網打尽だ。     大船に乗ったつもりで構えているがいいさ』 総員 『喩えだとしても船関連は沈没するからもういい』 シード『……それもそうですね、父上』 ちなみに今、我らと席をともにしている彼女はホンモノの妖精で、名をエィネ。 僕が一番最初に出会った妖精であり、まあその、彼女は行水中だったもんだからね? 伝説の裸のフェアリーをナマで見てしまった僕は、 不覚にも感動と衝撃に鼻血を出して気絶してしまったわけです。 しかしエィネさんには恥ずかしがる様子もなく、 どうやら妖精にはそういった羞恥心が備わっていないらしいのだ。 良かったのやら悲しむべきやら。 だがきちんと服というか羽衣は着てるので、深層意識下には羞恥心はあるのだと思いたい。 ていうか俺と目が合うと真っ赤になって顔を俯けるあたり、 あれは俺を気遣ってついた嘘なのではないかと思う次第である。 つーか普通そうだろう。 エィネ『ですが……魔物、ギリエルスパイダーはとても凶暴です。     せっかく訪れてくれた同族を、みすみす死なせてしまうわけには……』 殊戸瀬「……余裕」 エィネ『え……?ですが……』 殊戸瀬「提督が囮になってる間に準備をして、食事に夢中の蜘蛛を倒すから」 中井出「それって戦闘準備が整った頃には、     俺って喋る蜘蛛にムシャムシャ食われてるってことだよね!?     ねぇ!?ちょっ……殊戸瀬!?こっち向きなさい!!なんで目を逸らすの!!     やましいことが無いならママの目をちゃんと見てごらんなさい!?     まっすぐ!きちんと《ブスッ》マぉガぁああァアあアあああっ!!!!     な、なに!?なんで急にサミングするの!?     見えない!景色が真っ赤でなにも見えないよぅ!!」 エィネ『あの……』 殊戸瀬「とにかく、平気」 中井出「あ、あれ!?目が回復しないよ!?     ちょ、殊戸瀬!?いつまで戦闘体勢で居るの!?このままじゃ僕失明しちゃうよ!     みんな何処!?助けてぇえええ!!!」 エィネ『た、大変です、早く治してあげないと!』 藍田 「場を賑やかにするための演出です」 エィネ『そうなんですか……?』 中井出「違うよ!?目からマジモンの血ィながして場が賑やかになるわけないでしょ!?     麻衣香!?麻衣香ぁああ!!目ェ治して!!俺に心眼剣なんて無理だぁあ!!」 丘野 「さすがの提督殿も剣桃太郎のように心眼を開くことは出来なかったでござるか」 中井出「人を目を斬られても翌週にはすっかり治ってるムキムキ学生と一緒にすんな!!」 赤い感動が止まらない。 この激動、どうしてくれようか。 今この場で悪鬼羅漢なフェアリービーストと変化して、 暴れるに暴れまくって炎のフェアリー伝説を築いてくれようか。 はたまた……、と実行するまでもなく、少しすると目は治った。 景色が真っ赤じゃないって、なんてステキなんだろう。 中井出「綺麗な白さスズランの香り〜♪ニュー……ビーンズ!!」 藍田 「いかん!提督が混乱してる!!」 中井出「してないよ!!」 この感動は誰にも届かなかったらしい。 所詮そんなものだった。むしろみんな解っててそういう対応をしているんだろうが。 中井出「じゃあ、目も治ったところで早速ギリエルスパイダー、だっけ?     そいつをコロがしに行こう」 麻衣香「作戦は?」 中井出「そりゃ……やっぱり囮大作戦だろ」 殊戸瀬「提督がムシャムシャ食べられてるところを大魔法で木っ端微塵に」 中井出「しないでいいよ!!そうじゃないでしょ!?     みんなで生贄の祭壇とかに行って戦うの!!解るでしょ!?」 藍田 「そうか!キングオブファイターズを利用したな!?」 中井出「違う!俺べつにオロチ復活なんて望んでないよ!!     エィネさん!このままじゃ埒あかないから場所教えて!?」 エィネ『え、あ、はい』 こうして僕らは(主に俺が)半ば逃げるように、 ギリエルスパイダーが訪れる祭壇とやらへ向かったのだった。 しみじみ思う。 俺、ほんとに提督って思われてるンかな、と。 ───……。 生贄を贈る行事には付き物がある。 例えば供え物とか、飾りとかが一般的にそうと言えるだろう。 しかし忘れちゃいけないのがもう一つある。 他にあったら教えてほしいが、生憎と思いつかなかった。 いや、むしろこの“もう一つ”に気を取られすぎていたんだろう。 で、その“もう一つ”ってのがなにかというと、 これがまた随分とみすぼらしい、即興で作ったいわゆる“神輿(みこし)
”である。 生贄ってのは祭壇まで徒歩でゆくものじゃない。 やはり、質素な神輿もどきで祭壇まで運ばれるべきだろう。 しかしそこは原中。 質素に静かに厳かになんて認めない。 中井出「アーユーレディ!?」 総員 『オゥケェーーーイ!!』 中井出「シェッケナベイベェッ!!」 総員 『シェッケナベイベェッ!!』 中井出「シェッケナベイベェエイ!!」 総員 『シェッケナベイベェエイ!!』 中井出「シェッケナベイベェッ!!」 総員 『シェッケナベイベェッ!!』 中井出「シェッケナベイベェッ!?」 総員 『シェッケナベイベェッ!?』 見る者全てがこれは“生贄の儀式か?”と疑問に思うことだろう。 断言するが、これは生贄の儀式である。 即興で作った神輿にナギーとシードを乗せ、我ら猛者どもで担いでゆく。 シェッケナベイベーと叫ぶとともに神輿を揺らし、ゆっくりと前に進んでゆくのだ。 中井出「シェッケナベイベェッ!!」 総員 『シェッケナベイベェッ!!』 ナギー『うぅう……揺れるのは嫌いなのじゃー……』 シード『僕はこれくらいどうってこと……うぷっ……』 中井出「シェッケナベイベェッ!?」 総員 『シェッケナベイベェッ!?』 ナギー『こ、これヒロミツッ!故意に揺さぶるでないぃっ!!』 中井出「シェッケナベイベェッ!!」 総員 『シェッケナベイベェッ!!』 中井出「シェッケナベイベェッ!?」 総員 『シェッケナベイベェッ!?』 それはダメだ。 何故なら質素に静かに厳かに、なんて闇を照らすために我ら原中が居るのだ。 その我らが常識に囚われすぎるわけにはいくまいよ。 さあ揺らそう!元気に!明るく!優雅に!そして力強く!! 中井出「シェッケナベイベェッ!!」 総員 『シェッケナベイベェッ!!』 中井出「シェッケナベイベェエイ!!」 総員 『シェッケナベイベェエイ!!』 中井出「シェッケナベイベェッ!!」 総員 『シェッケナベイベェッ!!』 中井出「シェッケナベイベェッ!?」 総員 『シェッケナベイベェッ!?』 ナギー『や、やめるのじゃーーーーっ!!!』 僕らは元気に騒ぎまくった。 こんなんじゃ敵が逃げるんじゃないかと思うくらい騒いだ。 現に、道案内のために神輿の前をあるくエィネさんも妙にハラハラしてる。 そらそうだ。 とまあそんなこんなで長い長い森の中を賑やかに通り抜け、 ゴゾォ、と音を立てて訪れたのは、なんとも味気ない、だがしっかりとした祭壇だった。 毎度のこと、というよりはゲームをやる度に思っていたことがあるんだが。 どうして生贄にされる側はわざわざ生贄の祭壇なんぞを作っているのだろうか。 知っている人が居たら是非教えてほしい。 エィネ『ここ、です』 中井出「おお〜〜っ、こ、ここがそうかぁ〜〜〜っ!!」 藍田 「す、すげぇ〜〜〜っ!!そこらじゅう蜘蛛の糸だらけだぜ〜〜〜っ!!」 よほどの回数、生贄が差し出されたんだろう。 もっと早く来ていればもっと助けられただろうか。 いや、それは言ったらキリのないことだよな。 それよりもだ。 ナギー『えぅうぇえぇぇ…………っ……』 ナギーが吐いた。 揺られっぱなしだったからな、どうにもならなかったんだろう。 藍田 「すげぇ……自然の精霊が自然に向けてヘドぶちまけた……」 丘野 「楽しさのあまり、揺らしすぎたでござるなぁ……」 藍田 「ここはひとつ、元気づけてやらねば〜〜〜っ!!     だ、大丈夫か〜〜〜、ナギ助〜〜〜〜っ!!!」 ナギー『は……はなしかけるでない……頭に響くぅ……』 丘野 「うおう、言葉に覇気がまるでないでござるな。     そんな時にはこの丸薬でござる。ささ、ぐっと飲むでござるよ。水ならここに」 ナギー『話し掛けるなというに……ん、んぐっ……』 ぶつくさ言いながらもきちんと飲むのはナギーのいいところだと言える。 これで妙にイジケられたりするよりはよっぽどありがたいわけでゲボハァッ!! ナギー『ににに苦いのじゃーーーーっ!!!!これ丘野!何を飲ませたのじゃーっ!!』 藍田 「マアステキ!元気になったワ!!」 丘野 「拙者の丸薬にかかればこんなものでござるよ!!」 ナギー『元気になったのではない!!怒っておるのじゃぁーーーーーっ!!!』 藍田 「ちなみに丘野、お前って調合スキルいくつだっけ」 丘野 「0でござる」  ドシャア。 藍田 「ヒィッ!?ナギ助が!ナギ助が予備動作無しに崩れ落ちたァーーーッ!!」 丘野 「ナギー殿!?ナギー殿ォオオーーーーーーッ!!!!」 まあその、向こうは無視しておこうか。 そろそろエィネさんも顔を引き攣らせてるし。 中井出「ここで待ってれば来るか?」 エィネ『は、はい……あの、やはりやめたほうが……』 総員 『ダメね!!断るね!!』 エィネ『えぇ……っ!?』 妖精さんを喰らうとはいい度胸! どうせ喰らうならメルヘン食え! それなら絶対に誰も文句言わないし、むしろ逆にコロがされるだろう!! 中井出「それじゃ、エィネさんは里の方に」 まだなにも来ちゃいないのに、庇うようにしてエィネさんを促した。 その時だ。 風を切るような音が耳に届くか届かないかという刹那、 背後でドサア、となにかが落ちる音がした。 振り向かなくても解る。 何故って、俺の背後を見るエィネさんの顔が凍りついているからだ。 おまけに、 藍田 「てめぇがギリ……なんだっけ?なんたらスパイダーか〜〜〜っ!!」 丘野 「な、なかなかデケェじゃねぇか〜〜〜っ!!」 ヒヨッ子どもも好き勝手に騒ぎ始めてるし。 これで気づくなってのは無理があるだろ。なぁ? 中井出「どらどら、どれだけデカイのかデケェエーーーーーッ!!!!」 物凄くデカかった。 どれくらいかって? 恐らく俺達が最初に飛竜に遭遇した時と同じくらいの大きさだ。 長い脚をギシギシと揺らしながら、ネバネバした唾液付きの牙を蠢かせている。 これだけでスプラッタだな。存在自体に禁制が入りそうな不気味さだ。 特に腹の下についてる歪んだ人間の顔とか、特にな。 ギリエル『イケニエ……イケニエヲ……ヨコセ……』 夏子  「わー、これアンデッドスパイダーだよ?      わたしのネクロマンサーセンサーがピピンと反応を」 殊戸瀬 「強さは計り知れない、だって」 麻衣香 「どうしよっか。まず様子見る?」 中井出 「否だ!いつでも我らは全力投球!!      ならばこれより原中名物“先手必殺”を開始する!!」  ざわっ……!! 丘野 「せ、先手必殺でありますか提督殿……!!」 藍田 「こ、このデケェモンスター相手に……!」 中井出「怖気づいたかヒヨッ子ども!!」 藍田 「ノォサー!!望むところであります!!」 丘野 「ドンとこいであります!!開始の合図はいつでもどうぞ!!」 中井出「うむよし!     ならばまずルールを知らないであろうナギーとシードにルールを説明する!!     耳をかっぽじってよぉーーーく聞けぇい!!」 ナギー『サ、サーイェッサー!!』 シード『サーイェッサー!!』 藍田 「おお、起きてたのかナギ助」 ナギー『あ、あれしきのことでわしは気絶などしないのじゃ。     あれは寝ておっただけじゃぞ?本当じゃぞ?』 藍田 「そ、そか」 中井出「いいか!原中名物先手必殺とは!!」  ◆先手必殺───せんてひっさつ  原中における芸夢の一。  一対一で正面に向き合い、すぐ横にある机かテーブルにスリッパを用意しておく。  それを、合図が出されたのちに手に取り、相手を全力でブッ叩くというもの。  用意されるスリッパはひとつではないので、  如何に相手に先手を取られようともスリッパで殴り返すことも可能。  ようするにどっちが先に叩けるかを競うわけだが、そこは原中式アルティメットルール。  叩かれようがどうしようが、仕返しありだから全力を出す必要がある。  *神冥書房刊:『原中遊戯大百科』より ナギー『スリッパとモンスターがどう関係あるのじゃ?』 中井出「馬鹿者このヒヨッ子めが!!     つまりだな!あのバケモノを誰がコロがせるかが問題なのだ!!     原中時代には優勝者にはバーガーが進呈されたものだが、     此度のバトルの豪華賞品は───」 総員 『賞品は!?』 中井出「残り一本!“うまティー”を進呈する!!」  ざわっ……!! 藍田 「て、提督てめぇ!まだ持ってやがったのか!?」 中井出「持ってたとも!で!?     このミッションに参加する者は!?または脱落するものは!?」 総員 『イェッサァ!!全力で参加します!!』 中井出「うむよし!ではこれより原中名物先手必殺を開始するものとする!!     戦闘準備は済んだか!?」 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「歯ァ磨いてきたか!?」 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「蜘蛛を全力で無視しているか!?」 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「時々少し気の毒だなぁとか思っているか!?」 総員 『サーノォサー!!』 中井出「よし!それでこそ原中だ!!それでは原中名物先手必殺!始めェエエエイ!!!」 ザザァッ!! 総員 『Sir(サー)!!YesSir(イェッサー)!!』 開始の敬礼が終わるや否や、総員が鬼神が如く形相で蜘蛛へ向かって疾駆する!! かくいう俺もみすみすファイナルうまティーを手放す気は皆無!! 中井出「武器はしっかり二刀流!!」 藍田 「死ぬぅうううぇええええい!!!」  ドゴォッッチュゥウウウウウウウッ!!!! 中井出「ホォオオオオーーーーーーッ!!!?」 重い武器を持っての疾駆。 だがステータスが二倍な俺が速度で負けることなどとは確かに思っていたさ。 けど、だからってこれはドゴォオオオオオンッ!!!! 中井出「ギャアーーーーーーーッ!!!!」 後方で何かが輝いたんです、ハイ。 気づけば螺旋を描く竜の波動が俺を吹き飛ばしていましたね。 藍田 「フハハハハハ!!!うまティーは俺のもんだぁーーーーっ!!!」 どうやら久しく見なかった原ソウルが、 “賭け事”がプラスされたことで暴走を起こしたらしい。 我ら原中、普通の遊びでももちろん加減などせん。 だがしかし、賭けるものがあるのならその気迫も自ずと変わってくるというもの。 中井出「だからって竜撃砲を人に向かって撃つか普通!!」 藍田 「フッ……提督。我ら原中の間に遠慮なぞ無用の愚物。     それを教えてくれたのは他でもない、提督だ!!」 中井出「よく言った!そして死ねぇえーーーーーーーっ!!!!!」 おもむろにフルスイングで振るうジークフリードからエクスプロードブレードを放つ!! だが予測されていたのだろう。 藍田二等兵はそれをあっさりと避けてみせゴバシャォオオンッ!!!! 殊戸瀬「キャーーーーッ!!?」 後方を走っていた殊戸瀬が吹き飛んだ。 丘野 「睦月!?」 ナギー『すきありなのじゃーーーっ!!!』 ヴオドッゴォオオオオオオオンッ!!!!! 丘野 「おぶえぁあああああっ!!!!」 ほんの小さな油断が命取り。 吹き飛んだ殊戸瀬を案じた彼は、 ナギーが振るう激槌ピコピコハンマーによって大木の高いところまでホームランされた。 ちなみにあのハンマーはただのピコピコハンマーではなく、 ギザギザした層の数だけ衝撃が徹るようになっている。 るろうに剣心の二重の極みの要領だ。 最初の一段目が相手に当たってヘコんだ次の瞬間にはもうひとつの空気層が敵に直撃。 それを何度か繰り返すわけであり、しかもその威力は魔力に正比例するわけだ。 案の定丘野くんは大木に穴を穿ったまま、ぐったりと動かなくなった。 と思ったら、なんと吹き飛んだ丘野くんが消え去った!! 丘野 「フフフ……擬態さ」 ガシィ!! ナギー『ひゃっ!?な、なにをするのじゃー!!』 中井出「な、なんとまあ!貴様、あの瞬間に分身を!?と言いつつマイトナックル!!」 バンガァッ!! 藍田 「ウギャーーーリ!!や、やりやがったなコノヤロー!!」 中井出「一番に攻撃仕掛けてきた貴様に言われたくないわぁーーーっ!!」 殊戸瀬「エル、ブラスト」 エル 『キュアァアアアアアアアゥウウウウウ!!!!』 中井出「ぬおお!?もう復活しやがったのか殊戸瀬!!」 藍田 「させっかぁあああああっ!!!     レーザーごときこの俺が相殺してくれる《ガシィ!》わぁっ!?     うおっ!?ちょっ……な、なにしやがる提督!!」 中井出「や、やれーーーー!!ピッコローーーッ!!!オラに構わずーーーーっ!!!」 なにってそりゃあ、悟空さの秘奥義、道連れの羽交い絞めである。 藍田 「わっ!ばかっ!提督これシャレにならオアァーーーーッ!!!」 ドチュゥウンッ!ドゴガォオオオオオオンッ!!!! 藍田 「ギョェエアァアアーーーーーーーーーーッ!!!!」 そうして彼は、極光レーザー(弱)の前に星になった。 いや、まあ、ここでコゲたような状態のままで俺の盾になったんだけどね? 中井出「ピ、ピッコロさん……」 藍田 「ピッコロ大魔王ともあろうものが、ガキをかばっちまうなんて……最低だ……。     きさまら親子のせいだぞ……甘さが伝染っちまった……。     だが……悟飯……俺とまともにしゃべってくれたのはお前だけだった……」 中井出「寂しい青春だったんだな……」 藍田 「貴様と居た数ヶ月……わ、悪くなかったぜ……」 コトッ。 中井出「ど、独眼鉄ーーーーーっ!!!!」 藍田 「さっき俺のことピッコロさんって言ってだろうがてめぇ!!」 生き返った。 さすが男塾魂。 麻衣香「あのさー」 中井出「おお麻衣香か!どうした!?     俺はちと暴走した藍田二等の沈静化に大忙しなんだが!」 麻衣香「うん、その。スパイダー、もう夏子がコロがしちゃったけど」 総員 『な、なんですってぇえーーーーーーーっ!!?』 声を揃えた僕らは振り向いた! そこには見るも無惨に……どころか、既に蜘蛛自体残ってやしなかった。 既に塵と砕かれたようだ。 夏子 「ん」 やがて、僕の前に来てズイと手を差し伸べる木村夏子二等。 中井出「ウ、ウググー」 観念した俺は、 バックパックからファイナルうまティーを取り出すと彼女の手にソッと乗せた。 中井出「ではあの……いつの間にか終わってたんだけど、     これで原中名物先手必殺を終了します……」 藍田 「あ、ああ……うん……」 丘野 「そうね……」 藍田 「ほんとそう……」 結局足の引っ張り合いだけで終わった我ら男衆は、それはもうがっくり来たもんだ。 とばっちりくったのは殊戸瀬だけかも。 ああいや、見上げればそこに、 丘野の忍法によって蜘蛛の糸でがんじがらめにされたナギーが居た。 丘野 「アレでござるか?忍法蜘蛛糸絡みでござる。     蜘蛛の糸が無いと実行出来ない、クソの役にも立たない忍法でござるよ」 中井出「で、どうすれば取れるんだ?あのままじゃ苦しいだろ」 丘野 「そうでござるか?むしろ───」 ナギー『楽しいのじゃー!!』 中井出「………」 ナギーは体に巻かれた蜘蛛の糸を利用し、 ビヨーームビヨ〜〜〜ムとバンジージャンプもどきのようなことを繰り返していた。 でもな、ああいうのやってる大概ドグシャアッ!! ナギー『ふぎゅうっ!!』 総員 『ああ……やっぱり』 皆様予想がついていたように一斉に言った。 そりゃな、あんな風に遊んでりゃあ途中で千切れて落下するわ。 シード『まったく、なにをやっているんだあいつは……!』 中井出「お?」 そんなときにちょっとした変化を発見。 初見の頃なんていがみ合ってたふたりが、 攫われて以降だろうか、妙に仲のいいところを見せる。 顔面を地面にぶつけたままフルフルと痙攣していたナギーを、 シードがぼやきながらも助けたのだ。 ふむ、こりゃあもしかするともしかするか? いや、なんでも色恋に関連付けるのはよくないな。 生暖かく見守ろうじゃないか。 まあそれはそれとして、だ。 中井出「じゃ、戻るか」 ナギー『そうじゃの。こんなところにはもう居たくないのじゃ。     体がベタベタする、水浴びでもしたいの《ポム》……じゃ?』 藍田 「……《ニコリ》」 歩き出したナギーの肩を、極上のスマイルを見せ付ける藍田が掴んだ。 困惑気味に振り向くナギーと、 ニコリと笑顔のまま、背後にある神輿を肩越しに親指で指す藍田くん。 ああ、見る間に真っ青になったね。 絶対断るだろうと予想できたが、そこは藍田。 藍田 「よもや……気持ち悪いから乗りたくないなどと言うまいね?」 ナギー『な、なにを言っているのじゃ?     わしは気持ち悪いなどとは一言も言ってないのじゃ!     じゃ、じゃがその、じゃな。おぬしらが疲れるであろ?』 藍田 「大丈夫!敵から逃げ出さん限りは疲れない仕様です!!」 ナギー『じゃ、じゃがじゃの!!』 藍田 「乗れ!乗るんだ!ナギ助!!」 ナギー『う、うぐぐ……!!』 丘野 「もしかして……やっぱり気持ち悪いでござるか?」 ナギー『そんなことはないのじゃー!!よ、よし、よいのじゃ!     わしがそんなものに恐怖しているなどと誤解されたままではたまらんからの!!     特別に乗ってやるのじゃ!自分の誤解に気づいて恥をかくがよいわ!!』 総員 『イエーーーッ!!ナギ助イエーーーッ!!!』 ナギー『じゃ、じゃからの?気づくなら早く気づいたほうが恥も少なく……』 総員 『さあ乗れ!!』 ナギー『そ、そうじゃなくて、じゃな?』 総員 『さあ!!』 ナギー『う、うううーーーっ!!』 総員 『さあ!!』 ナギー『わわわ解らぬやつらよの!!     今気づけばそう責めることもせぬと言っておるのじゃぞ!?この機を逃せば、』 総員 『ええいもうじれったい!!シェッケナベイベェーーーッ!!』 ナギー『《がばしぃっ!》ひきゃあああーーーッ!!!いやじゃあああーーーっ!!!!』 泣いて逃げようとするナギーを、藍田二等がしっかりキャッチ!! 何気に逃げようとしていたシードも既に俺が捕獲済み! やがて俺と藍田はコクリと頷き、 他の猛者どもが持ち上げている神輿の上へと二人を乗せた! 中井出「アーユゥウォケェイッ!?」 総員 『オゥケェーーイ!!』 ナギー『や、やめっ……』 中井出「シェッケナベイベェッ!!」 総員 『シェッケナベイベェッ!!』 中井出「シェッケナベイベェエイ!!」 総員 『シェッケナベイベェエイ!!』 中井出「シェッケナベイベェッ!!」 総員 『シェッケナベイベェッ!!』 中井出「シェッケナベイベェッ!?」 総員 『シェッケナベイベェッ!?』 ナギー『うあぁああうぅうう!!     や、やぁああめぇええるぅううのぉおおじゃぁああ〜〜〜……っ!!!』 ちなみに。 彼女はこの2分後に盛大に吐きました。 ───……。 ……。 とっとと終わった生贄ゴトのあと、我らは再び妖精の里に訪れていた。 べつにもう用らしい用など無いのだが、エィネさんがどうしてもとおっしゃる。 そんなわけだから結局こうして戻ってきて、特性の蜂蜜ドリンクをご馳走されてるわけだ。 デッカード『ありがたい、本当にありがたい。おぬしたちは我ら妖精族の誇りだ』 中井出  (デッカードだ……) 藍田   (妖精王だ……) 丘野   (デッカード……) いきなり宴もたけなわというわけにもいかないらしく、 俺達はしばらくそうして晒し者気分で宴会の中心に立たされていた。 いや、座ってたけどさ。 しかし正直居心地が悪い。 やっぱ真面目に戦わなかったからだろうか? でも後悔はしてないよ? 我ら原中、どんな時でも楽しむことを忘れない。 むう、ならばここで楽しまないのはウソか? 中井出「オ、オペラツィオン:カーニバル!!」 総員 『イェッサァーーーーーッ!!!!!』 損するのは誰だって嫌だよね?僕だってそうさベイビィ。 だから楽しめる時には全力で楽しもう。 たとえそれが真面目ではなかったのちの結果であろうとも。 いいじゃない、これは生贄地獄から救ってくれてありがとうな心遣いなんだから。 まあその、あれだ、結果オーライってやつ。 中井出「モグモグゥ、オーダンゴッテェ、オイシイナー」 藍田 「言葉の割りにあんまり美味そうじゃないな……」 夏子 「なんていうの……?鬼塚先生が頭脳パン食べてるような顔だけど……」 中井出「ソンナコトナイヨ」 パクッ……モグモグ。 ゴメンナサイ、正直ヘンな味します。 大部分が蜂蜜で構成されてるみたいにとんでもなく甘い。 それに加えて飲みものまで蜂蜜。 中井出「ウオッ……!むっちゃ胃がムカムカする……!!」 藍田 「頑張れ提督!」 丘野 「提督だけが頼りなんだ!」 中井出「いきなり食うの放棄してんじゃねぇよてめぇら!!」 無茶苦茶キツいですこれ。 甘すぎだ。腹というか胸に響く。 油モノでもないのに胸焼けとは、これ如何に。 しかしそんな僕の様子を気にもしないでドカドカと追加を持ってくる妖精さんたち。 エィネ『どうぞ、たくさん食べてくださいね』 藍田 (おおっ……なにやら急に親密度が増したかのような振る舞い!?) 丘野 (どう出るでござるか提督殿……!) 中井出「断る!!」《どーーん!!》 総員 『なにぃいいーーーーーーっ!!!?』 藍田 「す、すげぇや!さっすが天下の中井出さんだ!!」 丘野 「よもやここで断るとくるとは!!」 エィネ『な、何故ですか?全て妖精の好物を揃えたのに……』 中井出「何故!?何故ってそれはきっと僕らが東の妖精だからなのだ!!」 エィネ『そ、そうなのですか?では東の妖精はいったいなにを食べて……?』 中井出「こんがり肉G」 総員 『脂っこォッッ!!』 エィネ『に、肉……ですか。肉を食べる妖精なんて聞いたことが……』 俺も初耳である。 アウターゾーンあたりならありそうだが。 中井出「ともかく我らはここらでおいとまする!」 藍田 「ウオッ!?まさか提督の口からここから去るという言葉を聞くとは!」 中井出「あの……藍田クン?キミは俺をなんだと……」 藍田 「や、提督のことだからここにずっと住もう、とか」 中井出「この中井出博光が妖精にチヤホヤされるために     冒険をしていたと思っていたのかァーーーーッ!!!!」 藍田 「正直思ってました!サー!!」 中井出「僕は『楽しむため』に旅をしている!“楽しむだけ”!ただそれだけのためだ!!     単純なただひとつの理由だがそれ以外はどうでもいいのだ!!」 藍田 「言い切ったな」 丘野 「その全てを女性陣が聞いてないのがまたステキでござる」 麻衣香「あ〜♪甘い甘いあま〜い♪」 夏子 「久しぶりの甘い食べ物〜!幸せ〜!」 殊戸瀬「おかわり……おかわり……おかわり……おかわり……」 妖精 『おお!このお嬢さん物凄ェ速さで飲み食いしてるぞ!?     ブツが足りないな、すぐ作ってくるぜ!』 男衆 『………』 まあ、いいけどさ。 でも実際、妖精は憧れてただけだ。 心のどこかで“見れればそれでいい”ってのがあった。 そんなもんだろ?有名人に憧れるファンを気取りたいわけじゃない。 出会えて話も出来て救うことも出来た。 他になにを望む?英雄気取りでずっとここに滞在なんて、冗談じゃない。 それより俺はもっと楽しみたい。 だって、せっかくの自由人だろ? だから、これよりマジでかかります。 中井出「麻衣香ァーーーッ!!木村夏子!殊戸瀬ェーーーッ!!     これより我らは妖精の里を出て、旅を続けるものとする!依存は!?」 麻衣香「ウフフフフ〜〜〜……え?なに〜?なにか言った〜?」 夏子 「どっかに行くってぇ〜……?わたしたち、まだここに居たいよ〜」 殊戸瀬「……至極道理……おかわり」 中井出「───!《ギンッ!》」 藍田 「───!《コクリ》」 丘野 「───!《コクリ》」 ナギー『?』 シード『?』 中井出「そうか!ならばここでパーティーは解散!各自、好きに行動せよ!」 男衆 『サーイェッサー!!』 女衆 『……え?』 中井出「イチ!ニ!」 男衆 『散ッ!!』 バシュウッ!! 妖精 『お、おおっ……!?恩人が消えた!?』 麻衣香「……あれれぇ……?なにか言ってたような……」 夏子 「うう……ダメ……眠い……」 殊戸瀬「アルコールが含まれている。でもこのくらいなら平気……おかわり」 妖精 『どんな胃袋してんだアンタ!!』 それが、我らが別々の行動を取るこに至った経緯だった。 俺達は男衆と女衆とに別れ、ここより新たな旅路が始まったのだ。 まあその、何故かしっかりとナギーは俺達に付いてきたが。 シード『なんだ、アレイシアス。     このパターンからすると、お前は彼女たちと一緒に残るところだろう』 ナギー『パターンなぞ知らぬわ。     そんなものに左右されないよう振舞うのが“ハラチュー”じゃろ?』 男衆 『うむっ!そのっとぉーーーーーり!!!』 さらばだ猛者どもよ!僕らは旅に出る!! 我らは食に溺れるよりも楽しさを探求、及び追求したい!! この感動、この激動、この激情は完全に染まりきっていない女性陣には解らんだろう!! 中井出「冒険とはロマァン!!」 藍田 「旅路とは男道ィイイ!!」 丘野 「青春とはファンタジーーッ!!」 中井出「おお!この燃え盛る心の巴里が我らを名も無き修羅にする!!     原中ゥウウーーーーーーッ!!!ファイ!!」 総員 『オウ!!』 中井出「ファイ!」 総員 『オウ!!』 中井出「ファイ!」 総員 『オウ!!』 フフフ、久々に我らの心がソウルフル……!! この熱き思いを胸に秘めたまま、熱き男道を突き進もう!! 中井出「ところでナギーよ。我らについてきた理由の中のひとつには、     甘ったるい食べ物飲み物に嫌気がさしたってこともあるんだろ?」 ナギー『なっ……なななにを言っているのじゃ?わしに苦手なものなどないのじゃー!!』 中井出「シェッケナベイベー!?」 ナギー『いやなのじゃあーーーーーーっ!!!!!』 藍田 「シェケナベイベーって言われただけで拒否反応起こすヤツが見栄張るなって」 ナギー『〜〜〜……な、なんのことじゃ?わしは見栄など張っておらんのじゃ』 藍田 「……お前、とことんナギ助だな」 神輿を置いてきたから担ぐこともそもそも出来ないしなぁ。 いやともかくだ。 俺達はそれぞれ、妻たちとの別れを深層で悲しみながらも前に突き進んだのです。 滞在よりもさらなる旅を。それが男だ任侠だ!! 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