───冒険の書87/ドラゴンVS藍田くん───
【ケース276:中井出博光(山本幻柳再重國)/アラブレイドブラッゲンシュード】 バァンガァアアアアアッ!!!!! 総員 『うぼろぎゃああああああああっ!!!!』 飛び掛った俺達にぶちかまし一閃。 しかし我らを甘く見てもらっては困る! 一応ここまで来る過程では、我流ながらも戦闘経験だけは豊富!だと思う! 藍田 「肩ロース(バースコート)
腰肉(ロンジェ)後バラ肉(タンドロン)腹肉(フランシェ)上部腿肉(カジ)尾肉(クー)腿肉(キュイソー)脛肉(ジャレ)!」 藍田がミストドラゴンの体を駆け上り、 落下とともに次々と赫足(あかあし)を叩き込んでゆく。 その全てが全力で放たれているのか、確かに反動でミストドラゴンの体が揺れる。 けどどういうこった?あの藍田の攻撃がそう効いてるように見えないってのは。 藍田 「な、なんつー硬い皮膚してやがる!!     気をつけろ提督!丘野!こいつの皮膚硬す《ドゴォンッ!!》ぎあっ!?」 ヒュゴドォッガァアンッ!!! 蹴り込む攻撃をものともせずに繰り出された尾撃が藍田の腹を打ちつけ、 吹き飛んだ藍田を巨竜の顎が地面へと叩き落す。 中井出「藍田ぁっ!!」 藍田 「いっ……ぐお……!!だ、だい、じょうぶ……!!」 ナギー『待っておるのじゃ!すぐ回復をする!ぬしらは戦いに集中するのじゃ!』 中井出「お、お……おー」 ナギー『シャキっとするのじゃヒロミツ!!』 中井出「だ、だってよぅ!こいつこんなにデカいんだもん!!」 丘野 「どれだけ強くなっても根本は凡人でござるなぁ、拙者たち」 中井出「ウ、ウググー……お、丘野二等!」 丘野 「イェッサァ!!なんでござるか提督殿!!」 中井出「こんな弱気では我らの野望は夢のまた夢!!     つい最近出来たばっかだけど、こうなりゃその野望を見事果たしたいと俺は思う!     ……ついてきて───くれるか?」 丘野 「サーイェッサー!!もちろんでござるマス!!」 シード『僕もです!父上!父上の願う覇道ならば、僕もともに!』 ナギー『乗りかかった船なのじゃ!わしも何処までも付き合うのじゃー!!     もっとも、嫌だと言ってもついてゆくがの!!』 中井出「よっしゃ決まり!!命を賭してバトれよ原中ゥッ!!!!」 ザザァッ!! 総員 『Sir(サー)!!YesSir(イェッサー)!!』 さあいこう!! 僕らの力をこのバカデカいドラゴンに見せ付けて……やれたらいいね? 中井出「フルスウィイイイイイング黄竜剣!!」 ギシャゴバギッヂィイインッ!!!! 中井出「〜〜〜っ……かってぇええーーーーーーーーーっ!!!!」 STRマックス黄竜剣(火、ボマー、会心スキル付属)が見事に弾き返された!! 皮膚は裂けるどころか、巨大で強靭な鱗に守られて傷つくことすらしない。 あの、これは夢デスカ? ミストドラゴン『クォアアッ!!』 ゴコォッ───ゴヂィインッッ!! 中井出「とぉわぁあっ!!?」 何気ない動作から繰り出される、迫力あるぶちかまし。 それをなんとか剣の腹で防ぐ───が、 それでも吹き飛ばされる馬鹿げたパワーがそこにあった。 丘野×100『動作の後には隙が出るものでござるな!!百身貫殺飛び苦無!!』 しかしぶちかましから体勢を立て直すための間隙を丘野が詰める! 見てみれば鬱陶しく思うほどの同じ姿、 同じ顔の人物が森のあちらこちらを駆け、飛び回り、様々な方向から苦無を飛ばす!! が───しかし!!  スボボヒュヒュヒュヒュヒュヒュウウウウンッ!!!!! 丘野×100『なっ……』 中井出   「にぃいいいっ!!?」 その全てが、霧となったドラゴンを穿つ結果に終わる。 一撃たりとも当たることはなく、苦無は地面や木に突き刺さるのみに終わった。 シード『霧……霧か。だったら最大火力で全て蒸発させてやれば───!!』 中井出「あっ……シード!ストォーーーーーップ!!」 シード『え?《チリッ……》』 遅かった。 シードは火炎魔法を発動させてしまい、しかもそれがかなりの高威力だったのだ。 荒れ狂う炎は霧を蒸発させようと蠢くが、 逆に霧によってあっさりと掻き消されてしまった。 シード『そんな!』 中井出「ボケっとすんなシード!!」 シード『え?父上?』 丘野 「このミストドラゴンが拙者たちの知識から構成された魔物なら、     霧状態の時に攻撃をすれば必ずあれがくるでござる!!」 ナギー『な、なんじゃというのじゃ!?』 説明してる暇はない。 なにせ喋ってるうちにミストドラゴンは霧から竜の姿に戻り、 大きく息を吸っていたのだから。  ゴバァァアッ!!シャギィイイインッ!!! 中井出「オギャーーーーーーッ!!!」 ナギー『わぷっ!?な、なんなのじゃー!!』 シード『《ピキィッ……!》あぐっ!?手が凍った……!?こ、これは……!』 丘野 「高密度の輝く息、ミストブレスでござる!!     ミストドラゴンは霧状態の時に攻撃を加えられると、     反撃として大気中に存在する水分を吸収して凍てつく息吹を吐くのでござる!」 シード『滅茶苦茶だ!じゃあどう戦ったらいいんだ!!』 中井出「そりゃ至って簡単!竜の形を保ってる状態の時に攻撃する!それしかない!!」 シード『しかしあの硬さです!どうやっても攻撃なんて通用するとは───!!』 中井出「皮膚がダメなら口の中!!これ、バトルモンのセオリー!!」 藍田 「常識外れを目指す我らだが、それが通用しないのなら意地でもブッ潰すのみ!!」 丘野 「おお!復活したでござるか藍田殿!」 藍田 「おおともよ!ナギ助の回復術は流石だぜ〜〜〜っ!!」 中井出「ともかく防御だけではいつまで経っても勝てはせん!!     なにがなんでもブッ潰すんだぁーーーーっ!!」 総員 『サーイェッサー!!』 丘野 「ではまず拙者が参るでござる!!百身無月散水!!」 チュインッ!───百人もの丘野くんが大地を蹴り、 一気にミストドラゴンの周囲へと移動する! あの素早さは何度見ても流石の一言である。 やがて開始される連斬閃舞は、 ミストドラゴンの強靭な鱗と忍者刀の撃との間に鋭い火花を散らし始める。 中井出「うおっ……!硬いにも程があるだろ!」 ナギー『ほんに倒せるのかの……流石に不安になってきたのじゃ』 中井出「なんとかなる!否!なんとかするのが原ソウル!!」 藍田 「その通りだぜ提督!っと、そうだナギ助、シード。     ミストドラゴンに弱体化の魔法ってかけられるか?」 ナギー『お、おお!その手があったのじゃ!』 シード『任せてくれ!そんな魔法なら軽い!』 ナギーとシードが同時に早口の詠唱を始める。 正直なんて言ってるのかはまったくの謎だったが。 ナギー&シード『“ウェアケリステス”!!』 詠唱とともに高速回転していた魔法陣が弾ける。 それとともに光となって放たれた弱体化の魔法(多分)は、ミストドラゴンの眉間に衝突。 と同時に───! 丘野 「唸れ龍虎の牙!!龍虎滅牙斬!!」 ミストドラゴンを散々と斬りつけていた丘野が跳躍とともに忍者刀を極光剣へと変え、 ミストドラゴンの眉間へと振り下ろす! さらに他99体の丘野が、 自身を風の刃に変えて風塵封縛殺の時のように敵へと飛翔してゆく! 丘野 「これぞ我流秘奥義!“竜靭風縛殺”!!死ねやぁあああああっ!!!」 キィンッ!!バゴゴゴガガギバァッシャァアアアッ!!! ミストドラゴン『クギャアアアアアアアッ!!!!』 中井出    「オッ───」 藍田     「悲鳴!?効いたのか!?」 ナギー    『額に集中して弱体魔法をかけたのじゃ!         そして丘野が攻撃した場所も額!申し分無い一撃だった筈なのじゃ!』 中井出    「嫌な予感がするからこのまま続行!」 藍田     「オーケーそうこなくちゃ!」 ナギー    『な、なんじゃと!?きっと今ので終わるのじゃ!』 中井出    「いーや断言する!!」 藍田     「貴様もいつか晦バトルを見れば納得するだろう!!         強敵ってのは中々倒れないから強敵なんだ!!」 走る、走る、走る!! 丘野は究極の一撃のために隙だらけだ。 もしミストドラゴンが生きてたら恰好の餌食だろう。 だからヤツが反撃に移る前に、丘野が体勢を立て直すまでは俺達が食い止める!! 中井出「“解除”(レリーズ)!!アーンド“烈風”!!」 ゴォッファァアアアアンッ!!! 長剣解除からジークリンデの鎌鼬によって飛翔するまでを一度のモーションで完了させる! さらにそのまま風を放ち続け、飛翔する我が身を完全に弾丸へと変化させる! それが終わると、 やはり大口を開けて丘野二等を攻撃しようとするミストドラゴンへとロックオン! そのままの速度で風に乗ったまま、 双剣を再び長剣に変え、両手で持って突きの型で構える! 中井出「炎よ!俺に力をぉおおっ!!!“重閃爆剣(メテオザッパ)ァーーーーッ”!!!」 受けてみよ!火とボマーと会心とガンランスを込めたこの突きの一撃!! とっくに鬼人化の効果は切れてるが、 ガンランスの効果は攻撃を加えない限り消えはしない! ミストドラゴン『───!!ボガガヂィイイイインッ!!!! 中井出「いっ……!?」 だが。 風を利用した飛翔からの高速突きはしかし、 瞬時に閉じられたミストドラゴンの牙によって受け止められた。 しかも歯を砕くどころかヒビを入れることさえ出来ず、  バガァンッ!! 中井出「げほっ……!?」 空中停止を強制された俺は、重力の法則によって落下を始める前に長い角で叩き落された。 これは困った、本気で強いぞこいつは。 どこかでいい気になってた自分が酷く滑稽に思えてくるくらいに強い。 中井出(なにをいい気になってたんだ俺は!思い上がるな!!     ここまでこれたのは俺の力じゃなく、武器の力じゃないか!) 叩き落された落下の勢いをレリーズしたジークリンデの風で抑える。 そして、着地とともにゆっくりと深呼吸を始めた。 中井出(ここまでをそれで駆け抜けることが出来たなら、     次は俺が強くならなきゃいけないんだ!) 我流、我流ばっかでなにも学ぼうとはしなかった。 武器さえ強くすれば、経験なんてごり押しで潰せると思ってた。 実際それはその通りだったし、今まではそれでここまで来れた。 でもここからは違うんだ。 強くなる必要がある。 この剣を思う様に扱えるくらいに、器用に。 藍田 「“悪魔風脚”(ディアブルジャンブ)」 ガンゴンドゴガゴバガァッ!!! 強さに対して思考を巡らせる中、藍田が赫足の状態のままミストドラゴンに蹴り込み、 どんどんとその体を駆け上がってゆく。 藍田 「“粗砕”(コンカッセ)!!」 ギュルバゴォンッ!!! ミストドラゴン『ギッ……!!』 駆け上がり、頂点に達した姿が回転すると同時に放つソレは鋭い踵落とし。 弱体化させられたその場所への攻撃はえらくこたえただろう。 だが否だ。 それだけでは終わらない。 落とした踵に力を込め、 反動で自身の体をさらに高い位置へと跳躍させた藍田はさらに回転を加える。 しかしその回転は先ほどとは違い、縦の回転ではなく身を捻るような“横の回転”だった。 藍田 「ストック全解除。“四五竜闘気”」 その回転の速度は異常だ。 人間が身を捻り、反動で回転する勢いなどとうに超越している。 だがそれも当然だ。 藍田は身を回転させると同時に足を鋭く振り、その反動をも利用して回転しているのだ。 極限まで鍛えられた足は風さえ巻き起こし、 それが彼の体をあんなにも回転させる───!! 藍田 「疾風の───ごとく!!」  ギシッ……チュゴォンッ!! さらに、跳躍することで辿り着いた大木の天井をその足で蹴り弾くことで、 異常なまでの落下速度を発現させてみせる! 藍田 「いくぜミストドラゴン!!耐えられるもんなら耐えてみろ!!」 言葉とともに鋭い刃物のように伸ばされた足に四十五個の闘気が集束してゆく。 そこから繰り出されるのは横の回転、螺旋を描く鋭い突きのような蹴り!! 藍田 「“悪魔風脚画竜点睛串焼き(ディアブルジャンブフランバージュブロシェット)ォオオオーーーッ”!!!」 チュゴォッッ!!! バゴシャドッゴォオンッ!!! ミストドラゴン『ルギャァアアォオオオンッッ!!!』 藍田を見上げたミストドラゴンの長身が、 頭から地面に潰されるかのように一瞬にしてぐしゃあと潰れた。 何かが砕ける音や木々が折れる音、 そして鱗を穿つ破壊音が耳に響き渡る景色はまるで悪夢。 地面を破壊し、緑だらけの場所で土煙を起こすほどの蹴りは、 あれほど硬かった巨竜を確かに地面に串刺しにしていた。 中井出「おっ……わっ……!!」 ナギー『わわっ……!』 地面がミストドラゴンを中心に、まるでグランドダッシャーでも使ったかのように波立つ。 そういや藍田の宝玉は地属性だ。 もしかしたらそれまでも利用したのかもしれない。 けどこれでようやく終わった。 時間的には短かったんだろうけど、えらく疲れる戦いだった。 晦は毎度毎度、こんな気分でバカデカい敵ばっかと戦ってたんだろうか。 そんなことを、塵になってゆくミストドラゴンを眺めながら─── シード『───!油断するな藍田!!まだだ!!』 藍田 「おおっ!?初めて名前呼ばれた!?」 シード『そんなこと言ってる場合じゃない!!それは塵じゃない!霧だ!!』 藍田 「なんと!?」 ───否、まだだった。 潰れて塵になったと思われたミストドラゴンはその実霧となり、 藍田の下から逃げ出してみせたのだ。 中井出「お、おいおい!!今の確実に決まってただろ!!」 丘野 「ハッ───!そういうことでござるか!!」 中井出「な、なにかに気づいたのか雷電」 丘野 「う、うむ。ピンとくるモノがあった。あれは……実体曖昧現象……」 中井出「じ、実体曖昧現象……?」  ◆実体曖昧現象───じったいあいまいげんしょう  上級モンスターや精霊などが行使する幻術めいた擬態。  普段は実体として姿を象ってみせているが、それが実体とは限らないというもの。  つまり蜘蛛の子が外敵から身を守るために密集し、  大きな蜘蛛のカタチを象り敵を寄せ付けないのと同じ擬態である。  この場合、ミストドラゴンの実体には“霧が使用されている”と考えるのが普通だろう。  ミストドラゴンが霧になっているのではなく、  霧がミストドラゴンになっている、という考えである。  *神冥書房刊:『霊峰山には大体霧がかかってる法則』より ナギー『なるほどの、よく気づいたのじゃ丘野。つまりあれは幻術なのじゃ。     それも相当に密度の高いものじゃ。     おそらく加えた攻撃を弾いたものは鱗ではないのじゃろうの。     中身はいったいどんな魔物なのか』 中井出「…………」 ハテ?なにやら違和感が。 それだと何かがおかしい。 中井出「なぁナギー。あいつはミストドラゴンじゃないっていうのか?」 ナギー『そうだと思うのじゃ』 中井出「ん……じゃあさ、あいつは常霧の山ガジェロマウンテンでなにをしてたんだ?」 ナギー『それは簡単なのじゃ。卵を───……あ』 中井出「だろ?」 ナギー『そうなのじゃ。ならばアレはなんじゃ?』 中井出「多分ミストドラゴン。     でも実体曖昧現象ってのも間違いじゃないし、攻撃を弾いたのも鱗じゃない。     あれは多分───」 シード『ええ父上、僕も今気づきました。あれは確かにミストドラゴンです。     けれど実体はあそこまで大きくない。“輝く息”を吐く時点で気づくべきでした』 ナギー『輝く息───それに霧。なるほど、そういうことなのじゃな!?』 丘野 「な、なんでござる!?拙者にも教えるでござるよ!!」 藍田 「どうでもいいけどてめぇら戦ギャアーーーーーッ!!!!」 藍田が霧に囲まれて大変なことになっている。 だが僕らは敢えて助けに向かわず、真実の究明を急いだ。 何故ってそれが原ソウル。常識だけでは語れない。 ナギー『丘野。霧が光を弱まらせるのは知っておるか?』 丘野 「それくらいは知っているでござるよ」 ナギー『そうか。ならば話は早いのじゃ。     つまりヤツは常時自分の周りに霧を纏い、     そこに輝く息を放って反射させることで姿を曖昧にしておるのじゃ。     鱗が銀色なのも光の反射を高めるためじゃな。擬態能力が格段に増すのじゃ』 丘野 「むむむ、なるほど。     しかし藍田殿の猛攻を弾くほどの防御力はどう説明するでござる?」 ナギー『藍田が攻撃を加えるたびにミストドラゴンの体が妙に揺れておったじゃろ。     それが種明かしじゃ。ヤツは濃度を高めた霧に輝く息を吐き、     攻撃予測ポイントの部分だけを強固に固めたのじゃ。     あれでかなりの上位モンスターじゃ、     藍田の攻撃を弾く密度の氷くらいは作れるじゃろ』 中井出「つまり藍田のブロシェットの際に聞こえた何かが砕ける音ってのは───」 ナギー『その高密度の氷が砕かれた音じゃろ。     それによって巨竜を象った霧が余計に曖昧になって、潰れたように見えたのじゃ。     しかしその実、ミストドラゴン自体は逃げ出しておった、ということじゃな』 丘野 「つまり、実体を確実に暴き出すには……?」 シード『魔力そのものごと霧を吹き飛ばすくらいの風が必要だ』 なるほど。 霧の弱点ってなにかなーって考えてたけど、やっぱ風になるのか。 火力で蒸発って手も確かにあるんだろうけど、火にとっても霧は弱点だからなぁ。 けど、そこまで解ってるならどうしてさっきのシードは火炎魔法を?って、まさか。 中井出「シード。まさかとは思うけど、お前って風魔法苦手?」 シード『へぁぅっ!?あ、い、いえそのっ……!あ、うー……は、はいぃ……』 図星だったらしい。 本人自身は真っ直ぐな性格だが、そこは魔王の息子。 魔力系統はやっぱり派手な火力重視系に回ってしまっているんだろう。 なにせあのナーヴェルブラングの息子だもんなぁ。 いかにも力任せの馬鹿魔王って感じがしたし。 中井出「ナギーはどうだ?」 ナギー『わしは元々争いなぞ好かん。     必要最低限の自然干渉攻撃魔術くらいしか行使できぬのじゃ』 中井出「じゃあ……あ」 ナギー『む?……おお』 シード『……ああ』 丘野 「ウィ?な、なんでござるかその期待の眼差しは……」 ───……。 ……。 丘野 「い、いやでござるーーーっ!!!またあんな目に遭うのはイヤァアーーーッ!!」 シード『喚くな!それでも男かお前は!!』 丘野 「うるせーでござる!!怖いモンは怖いんだコノヤローでござる!!」 中井出「落ち着け!喋り方が異様になってるぞ丘野二等!!」 勝利条件を見い出した俺達は早速方法を説明。 しかしそれを実行出来る丘野くんはあっさりとそれを拒否。 そらそうかもしれん。俺だってやだ。 丘野 「そんな芸当、提督殿がやるべきでござるよ!     提督殿なら拙者の倍のステータスを鬼人化で得られるでござる!」 中井出「残念だがな、丘野よ。俺には分身スキルなどないのだ」 丘野 「そうじゃねぇでござる!提督殿には風を巻き起こす武器があるでござろう!     拙者の倍の速度で走り、風を巻き起こせば竜巻くらい発生させられるでござる!」 中井出「バカヤロー!!それを言うなら貴様だって風の宝玉のお蔭で風が出せるだろ!」 ナギー『二人でやればよかろ?分身なぞせずに』 中井出「………」 丘野 「………」 中井出「僕らは原中!」 丘野 「みんなでやれば怖くない!!」 戦闘方法確認!! さあ!レッツビギンだーーっ!! ナギー『単純じゃのう……』 シード『お前ほどじゃないと思うが』 ナギー『む?おぬしに言われたくないのじゃ』 原中に染まる者はその代価として、大体が単純になるから気にしないほうがいいと思う。 単純じゃないヤツがこの世界に蔓延ってるから、常識ってのが産まれたわけだし。 そのルールから外れないように、ってね。 その常識を破るには単純じゃなけりゃいけないってことさ。 さあ、考え事や御託はここまでにして、どーんとやったるでい!! 中井出「はーあ、まったく……おかしいと思ったんだよ。     いくらなんでもあの大きさは反則だ」 丘野 「言っていても始まらんでござる!ゆくでござるぜ提督!」 中井出「おー。つーか藍田すげぇな。     よく一人であのバケモン相手に持ちこたえてるよ……」 丘野 「信じられんポテンシャルでござるな。っと、知ってるでござるか提督殿。     藍田殿は毎日毎日我らが寝静まってから、一人で格闘の練習をしてるでござるよ」 中井出「おお、知ってる知ってる。夜ビッグをもよおした時に発見した。     我流なりに整ってるんだよな、驚きだ」 拳法や格闘の型の整いなんてよく知らんけど、そう見えたのだ。 藍田 「だぁああああ硬ぇえええええっ!!どんな鱗なんだよコノヤロー!!」 今は思いっきりがむしゃらに戦ってるだけのようだが。 中井出「じゃ、いくか!」 丘野 「了解でござる!ストック解除!生分身&分身!それと吹き飛び防止用に握手(アクセス)!」 中井出「“解除”(レリーズ)!ストック解除!マグニファイ!!」 百人もの丘野くんが手を繋ぐ様を見届けつつ、剣を解放してマグニファイ。 さらにストックを解除して背水の陣と鬼靭モードも解除。 これでもう怖いものは……無いと言えないのが所詮凡人だが、 場面的なノリとして怖いものは無いと言っておく!! 中井出「いくぞぉ丘野二等兵!!」 丘野 「サーイェッサー!!」 ダンッ!!───地面を強く蹴って高速疾駆! さあごらんください!凡人が織り成すステキ劇場!! 中井出「疾きこと風のごとく!!」 まず第一弾!丘野と手を繋いだ状態でドラゴンの周囲を限界速度で駆け回り、 さらにジークリンデと丘野の宝玉から風を巻き起こすことで竜巻を発生させる!! ミストドラゴン『……!?ルグォオウッ!!?』 しまった気づかれた!───って、気づいたところで遅いわ!! 我らの予感は見事に的中し、 吹き飛ばされてゆく霧の下からやがて、一体の竜の姿が確認される! しかしあの巨竜が幻術だったとはいえ、さすがはドラゴン!こっちも普通にデケェ!! だがそれでもX-(メン)は挫けない!! 丘野×100『静かなること林の如く!!』 続いて第二段!丘野が霧から現れたドラゴンを掴み、竜巻を利用して上空へと昇ってゆく! そこで、一緒に飛んでいた俺が上空から下方目掛けて最大の一撃を! 中井出「侵略すること火の如く!!ギガァッチュウウウウンッ!!! 飛んで来た竜を地面に向けて吹き飛ばすのはレイジングロア。 HPとTPがスッカラカンになる嫌な技だが、 今のところこれ以上の技は持ち合わせちゃいない。 あとはトドメだ。 俺はグミを噛むと、アイコンタクトで状況を知り、 同じく跳躍してきた藍田の後方へと巨双剣を振るう。 もちろんただ振るうだけじゃない。 あいつを潰すには、あの硬さを破壊するための力が出来る限り必要なのだ。 だから発生させた。火円のカタパルトを。 そうしてから俺のもとに辿り着いた藍田を巨剣の腹で受け止め、全力を以って弾き返す!! 藍田 「疾風の───《ギリィッ……!!》」 中井出「いったれ藍田ァーーーッ!!!動かざること……山の如し!!」 藍田 「如く!!《ドゴォオオンッ!!!!》」 剣を振り抜き弾く力と、藍田が剣を秘奥義で弾く力とが相乗効果を生む。 さらに火円カタパルトがその姿を弾丸とし、かつてない速度と回転が藍田の体を包み込む! 藍田 「さっきは防がれたけど今度どうだ!!     グミ食ってTPも回復したし、ナギ助からの力の汲々も十分!!徹しも追加!!     そんじゃくたばれ!九頭竜闘気×2!!“(ブロ)───」 ミスト『ク……オ、ォオオオオオッ!!!!』 藍田 「───焼き(シェット)ォオオオッ”!!」 バゴシャドッガァアアアアアンッ!!!! バキベキドゴガゴドゴォッ!!───ガラッ……ベキバキッ……!! 竜巻に巻き込まれてきた木々や枝、破壊された土の塊もろとも、 ミストドラゴンは大地にクレーターを作るほどの威力を以って今度こそ地面に激突した。 藍田 「ハイ、おそまつさんでした、っと」 中井出「うーわー……」 すげぇの一言に付す。 相変わらずのバケモン級の蹴りだ。 中井出「いっ……生きてるかー……?」 藍田の下で顔を踏み潰されているドラゴンを突付く。 って、待て?塵にならずに残ってるってことは、 ミストドラゴン『グバァシャアアアアアアアッ!!!』 藍田     「お……あっ……!?」 中井出    「おわぁあああっ!!やっぱ生きてたぁあああっ!!」 幻影巨竜状態よりは遙かに小さいものの、 普通のドラゴンほどにはデカいミストドラゴンが起き上がる! くっ、このままではいかん!弱ってるのは解るけど、それでもあの防御力は健在なのだ! ヤツに霧と輝く息がある限り、こっちの攻撃は悉く回避される! 声  『フフフ……お困りのようね』 中井出「うおっ!?幻聴が聞こえた!!」 声  『聞こえてるんだったら幻聴なわけがないでしょ!?     ていうかそこって普通は“ハッ!?誰だ!”くらい言うところでしょうが!』 中井出「バカモーーーン!!そんな当たり前のことやって何が楽しいコノヤロー!!」 声  『ぐっ……正論……!!』 ナギー『麻衣香、殊戸瀬、木村、なにやってるのじゃー?』 声  『わぁああいきなりバラしちゃダメヨーーーッ!!!』 何故エセ中国語なのか。 後ろを見ずに考えていると、ヤケッパチになった女三人がズシャアと眼前に躍り出た。 麻衣香「バ、バレちゃあしょうがない!」 夏子 「わたしたちが来たからにはもう大丈夫!!」 殊戸瀬「むしろ道に迷ってたところに提督さんたちが居てくれて助かった」 麻衣香「バラしちゃダメヨーーッ!!     と、とにかく!わたしたちが来たからには敵の思うようにはさせない!」 中井出「そうか!じゃああとは任せた!!」 女性陣『ホキャーーーーーーッ!!?』 麻衣香「ちょちょちょちょっとは手伝おうとか思わないのかな!!     わたしたちか弱い乙女だよ!?」 丘野 「我らは原中。男女差別などせん」 麻衣香「くっ……!まさに正論……!」 ナギー『そこで納得するおぬしも相当じゃの』 原中ですから。 ……さて、再び一人でミストドラゴンと戦っている藍田を余所に、 俺達は合流した女性陣たちに状況説明をした。 中井出「とまあそんなわけで。甘々シスターズのみなさんの健闘を祈るばかりだ」 麻衣香「それってどうあってもダメージ与えられないんじゃないかな。     それと甘々シスターズって言わないで」 中井出「大丈夫。藍田はたった一人であのドラゴン相手に立ち回ってるぞ」 麻衣香「……ヒロちゃん。今レベルいくつ?」 中井出「350」 我が一言で、女性陣全員が肩を落とした。 麻衣香「蜂蜜が……甘さの誘惑が30レベルの差を……」 夏子 「い、いったいどんな戦い方を……?」 中井出「草原走り回って、見つけた敵は斬鉄剣で悪即斬。     群ればっか居たからあっという間にこのレベル」 それでもあの竜には梃子摺ってるんだから大変だ。 つまりそんなドラゴンと一人で渡り合ってる彼は相当だということで。 藍田 「“羊肉(ムートン)ショット”!!」 ガゴオォオオオンッ!!! 藍田 「〜〜〜ッ……ッカーーーーーッ!!!小賢しい霧の盾だなコノヤロー!!」 それでも徹しを使って少しずつダメージを与えるのも忘れてないらしい。 さすがだ。 藍田 「これだけ熱せられた赫足でも溶けない氷なんて冗談じゃねぇ〜〜〜っ!!     こうなったらやっぱ疾風の如くと九頭竜闘気を合わせて───!!     ゲゲエ!既にオレンジグミもレモングミも底を尽きてる!!     誰か!誰かぁああ!!グミを!僕にグミを《ドゴォン!!》オギャーーーリ!!」 中井出「お、おお!!オリバンマン!!新しいグミYO!!     STRマックス!!フルスイングスロー!!」 メギャアッ!!シュゴォオッチュゥウウウンッ!!!!! 藍田 「速ェエエーーーーーーッ!!!ヒィッ!!」 シュゴォッ!!バゴチャアッ!! ミストドラゴン『クギャアアアアアッ!!!』 藍田     「ヒィイッ!!?グミがミストドラゴンの目を潰したぁああっ!!         提督てめぇ!!あんなもん食えるわけねぇだろうが!!」 中井出    「かぁるいジョーク」 藍田     「口に入れてたら喉貫通してたよ!!重いだろそれ!!」 すまん、正直未だに背水と鬼靭モードが継続中だったの忘れてた。 藍田 「けどこれで突破口は出来たぜ!!“目”(ウイユ)!!」 ボギョオッ!! ミストドラゴン『ギアァアアアアアッ!!!』 潰れた目へと、藍田の灼熱の蹴りが突き刺さる。 当然目の奥は赫足に焦がされ、痛みに悶える竜。 こうなったらもう防御どころじゃないのだろう。 それを狙ったのか、藍田が大きいバックステップを幾度がおこなったのちに、 再び地面を強く蹴り弾く!! 藍田 「疾風の如く!!アーーーンドッ!!“羊肉(ムートン)ショォットォオオオッ”!!!!」 ドォッゴォオオオオンッ!!!! ミストドラゴン『ルギャァアアアオオオオオッ!!!!』 ゴォッ───バゴシャバキベキドゴゴゴバッガァアアアアアンッ!!!! バキッ……ゴシャッ……!! ナギー『お……おおお……!!』 秘奥義を助走代わりに放った蹴りはミストドラゴンの腹を強烈に打ち抜き、 少なくとも巨人以上にはデカいドラゴンを軽く数十メートル飛ばし、完全に黙らせた。 それを見るや、俺達は全員が全員駆け出したッッ!! 中井出    「剥ぎ取りタイムだッッ!!全部剥ぎ取ってしまえッッ!!」 丘野     「ワーーーッ!!」 藍田     「ウオーーーーーッ!!!         って、お前らなんにもやらなかったくせにそれヒドくない!?」 中井出    「グミをあげたじゃないか!!」 藍田     「食ったら死ぬとこだったよ!!」 麻衣香    「一番のりーーーっ!!」 ミストドラゴン『ク……ガアアアゥッ!!』 麻衣香    「あれぇぇっ!?《バゴチャアッ!!》ホキャーーーーッ!!?」 ミストドラゴンの断末魔奥義・超ぶちかまし!! 麻衣香は弾丸となって木々を貫通しつつ見えなくなった!! ミストドラゴン『グ……クゥウウ……!!』 ズズウゥウンッ……!! やはり今のが最後の力だったのか、それ以降ミストドラゴンは動くことなく倒れ伏した。 ぺぺらぺっぺぺー♪《それぞれのレベルが上がった!!》 中井出「あ〜あ……欲張るから……」 丘野 「見事に星になったでござるな……」 夏子 「あれっ?わたしたち経験値もらえてないよ?」 藍田 「駆けつけてきて結局なにもしてなかっただろ」 中井出「しかもまだパーティー参加もしてないし」 夏子 「うあ……最大的にミスった……」 殊戸瀬「提督さん、上がったレベルの数は?」 中井出「む?えーと……10。つまり今360だな」 藍田 「え?俺370いってるけど」 中井出「トドメボーナスと善戦ボーナスか」 丘野 「結局藍田殿一人で倒したようなものでござるからなぁ」 藍田 「いやま、限界超越クエストとか無くてよかったよ。     俺ゃてっきり、255レベルで一度レベルが止まるとか思ってたし。     しかしレベルはどんどんと上昇。今や300台だ。     おかげで戦いも随分楽になったよ。蹴りスキルも順調に上がってるし」 ショリッ……ショリショリ……シャコッ!ショリッ……シャコッ!! 言いつつも剥ぎ取りを開始する僕ら。 やっぱね、強いヤツからはしっかり素材を奪っておきたいだろ? その点で言うなら、こいつが力尽きるカタチで死んでくれたのはありがたい。 そうじゃなきゃ、藍田の羊肉ショットでとっとと塵になってただろうし。 夏子 「ところで麻衣香、助けにいかないの?」 中井出「大丈夫だろ。しっかりガードポイントは高めてたように見えたし。     っと、言ってる傍から戻ってきた」 麻衣香「ちょっとは心配しようよね!?誰も探しにこないなんてあんまりじゃない!!」 中井出「剥ぎ取りで忙しかったんだ」 麻衣香「あ、そか。じゃあしょうがないね」 ナギー『それは……なんというか、しょうがないことなのかの?』 中井出「ナギーよ……原中とはそういう場所なのだ。     遠慮などしてたら後悔しきり大決定の異常空間なのだよ」 我らはその中でもかなり色濃い原中ナリ。 特に濃いのは彰利だろうけど。 そもそもあいつが居なけりゃ原沢南中学校迷惑部は始動しなかったわけだし。 中井出「よし!剥ぎ取り終了!この調子でレベルを400まで上げて、     それからは我らの覇道を叶える時だ〜〜〜っ!!!」 総員 『サーイェッサー!!』 麻衣香「って叫んだはいいけど、覇道って?」 中井出「それはまだ秘密さ」 中々楽しくなって参りました。 さあ、さらなる冒険を目指してレッツバトル!! 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