───冒険の書101/成長を望めばこそ───
【ケース300:弦月彰利/トゥワイライトフルムーン】 広い空間の地面を踏みしめ、蹴り弾くように疾駆する。 構える武器は拳。 向かう対象はかつての親友。 現実世界でのバトルはかなり苦戦したが、この世界ではレベルが全て。 そして、モンスターキングとなった悠介にはそこまでのレベルなんて無い筈だ。 そう、まずは小手調べ! なにも発動させず、拳だけで挑む!! 彰利 「セィイッ!!」 悠介 「───」  ギャリィッ!ズパァ!! 彰利 「いづっ!?」 相手が持つのは煌く炎の剣と氷の剣。 突き出した右拳が左の氷剣に逸らされるとともに、右の炎剣が逸らされた右腕の肘を斬る。 だがそれでも怯まない。 他のプレイヤー達は明らかに俺を生贄に悠介の戦闘力分析をしてるが、 それならそれでこっちもやりやすいってもんだ。 彰利 「ストック解除!常にためると錬気を解放!受けてみろ!烈破掌!!」 踏み込んだ右足を勢いとして、左手に込めた力を存分に悠介へと振り抜く! が───突き出した掌は手首をノックされるかのように軽くいなされるや、 体を旋回させた悠介によって一本背負いで投げられ、地面に叩きつけられた。 彰利 「げはっ……!このっ!」 悠介 「死ね」  ヒュオバゴシャォオオオンッ!!!! 彰利 「〜〜〜〜っ……!!」 背中に徹った衝撃に、一瞬動きを止めた刹那。 倒れた俺の顔面めがけて理力の込められた拳が落とされた。 それは軽々と地面を破壊するほどの威力で、 もう数瞬AGIに能力を注ぐのが遅れたらと思うとゾッとする。 幸い全力で避けたために掠りもしなかったが、 もう小手調べはやめておいたほうがよさそうだ。 さっきまでの表情がウソのように、悠介の目は本気すぎる目になっている。 しかも今、“死ね”とハッキリおっしゃった。 こりゃ相当本気だ。 アイコンタクトでも解ったように、本気で俺達を容赦なくブッ潰す気だ。 けど、どこが防御に専念する、だよ。 いきなり殺しに来といて……ったく。 彰利 「これキミたち!もう戦力分析は済んだっしょ!?戦え!一緒に!     じゃねぇと俺一人で《ブォゥンッ!!》おぉわっ!?     ちょっ……悠介!?俺今喋り途中───!!」 悠介 「ドラクエ以外の何処のボスが戦いの最中に待ってくれるっていうんだ?」 彰利 「うお正論……!!《ブフォンッ!》とわっ……!!」 目の前を掠めてゆく拳。 今気づいたが、武器が双剣じゃなくてナックルに変わっている。 けどどうせ何かをエンチャントされたものなのだろう。 じゃなきゃあんな破壊力を我ら以下のレベルで出せる筈が無い。 エンチャンターね……他のジョブよりゃ圧倒的に弱いって聞いてたんだけどな。 って、そりゃジョブシステムが単純になる前の話か、くそう。 岡田 「素晴らしき晦倒し!!この岡田が先んじる!!」 とか思っているうちに原中が二等兵、岡田くんが曲刀を武器に飛び掛る! しかもその速度が異様に速い! 恐らくステータスの全てをAGIに託しているのだろう。 悠介 「───!《シュパァッ!》つぅっ……!」 岡田 「オッ……当たった」 彰利 「ぬお!?馬鹿!当たったからってホウケるな!!」 岡田 「なんだとぅ!?一等兵だからって《バゴシャォンッ!!》ぶげはぁああっ!!!」 彰利 「うぉあぁあーーーーっ!!!」 目の前で岡田が爆裂した。 間隙を穿つ悠介の拳は容赦なく岡田の顔面を捉え、 物凄い爆発を見せると岡田を遠くの景色まで吹っ飛ばした。 彰利 「う、うおお《ヒュバァッ!》どわぁっ!!!     あああ危ねぇ!だめだ!他に意識を取られちゃダメだ!!」 危ういところで爆裂拳を躱す。 そうだ……どれだけ隙をついたとか卑怯だとか言われようが、 最後に立ってなくちゃ意味がない。 そういう意味ではキミは立派なファイターだ。 だが如何せん……レベルが足りてないのだヨ。 佐東 「よっしゃ!こうなったら全力でぶつかったほうが遙かにいいと見た!     やったろうぜみんなぁーーーーーーっ!!!」 総員 『おぉおおーーーーーっ!!!』 彰利 「なにっ!?」 なんと!岡田くんが悠介に一撃を当てたことから妙な自信を持ってしまったらしく、 猛者どもや他のプレイヤーの皆様が一気に動きだした! 彰利 「ま、待てぇええ!!乱戦は悠介の思う壺っ───」 藤堂 「うるせー!一等兵だからって仕切るな!」 彰利 「別に好きで一等兵やってるわけじゃねぇっての!」 佐東 「ようは晦の攻撃を喰らわなきゃいいんだろが!だったらAGIに全てを託して、     攻撃当てて逃げるヒット&ウェイ戦法で仕留めりゃいい!!」 そりゃそうですが……! 中井出「ふははは!では受けてみよ!棒人間からヒントを得た我らの攻撃!!」 ザザァッ!! 猛者どもが悠介を中心に駆け回る!……これってアレ? 田辺 「円の動き」 清水 「円の動き」 やっぱりだった。 円を描くようにズタタタと走り始める猛者どもと、 しかし動じることなく意識を集中させてるように見える悠介。 どこから攻撃が来ても反応出来るようにか……? 佐東 「ソイヤァーーーーッ!!!」 総員 『トリャサァーーーッ!!』 やがて円を狭めて攻撃を仕掛ける猛者ども! しかし悠介は───ズバドシュザクズシャアッ!!! 悠介 「づっ……!」 彰利 「───ありゃ!?」 どう反応するかが気になった───のだが、為すすべなく攻撃を喰らった。 やはり反応出来なかったのか? そうか……そうか!やはりレベル不足は否めん! 悠介 「シィッ───!!」 佐東 「《ブンッ!》おっとぉっ!!」 悠介の攻撃!しかし佐東は躱してみせた! 佐東 「お……おおお!躱せる!晦の攻撃を躱せるぞぉ!!」 藤堂 「僕らの戦いは無駄じゃあなかった!     レベルアップは確かに俺達を強くしてくれていたのだ!」 悠介 「フッ───!」 藤堂 「《ブンッ!》おぉっと!ふはははは!無駄!無駄無駄無駄!     晦よ!とうとう貴様が敗北する時が訪れたのだ!     そしてこの瞬間、俺達全員が貴様に勝つ!」 豆村 「悠介さん!今日はあんたを越えさせてもらうぜ!!」 佐古田「ふはははは!今の貴様はザコッス!モミアゲでザコ!モミアゲザコッス!!」 剣や槍が四方八方から悠介を斬り、突き、裂く。 その光景が思いっきり多勢に無勢というか醜く映るのはどうせいだろうなぁ。 でも……そのために止まった。 調子に乗った彼ら彼女らは足を動かすのをやめ、行動を攻撃だけに絞ってしまったのだ。 佐古田「ザコッスザコ!死ねぇえええ《ガシィ!!》おぶぅ!?」 様々なプレイヤーに串刺し状態にされたまま、悠介が掴んだのは佐古田の顔面。 佐古田はもちろん斧で反撃しようとしたが、 次の瞬間には圧縮された爆裂魔法で顔面を爆発されまくって塵と化した。 総員 『ざわっ……!』 もちろんそんな様を見せられれば普通のやつらは怯むってもんだろう。 慌てて一歩下がろうとしたが、逆に悠介に武器を掴まれ、 それに怯んだ隙に顔面を爆発させられて藤堂が倒れる。 死んではいないのはレベルの高さからか? とはいえ防御にステータスを振り分けてなかったしっぺ返しは相当だ。 藤堂 「く、くそ……!油断した!まだだ!みんなやっちめぇ!!」 総員 『お、おぉーーーーっ!!』 でも悠介のダメージもやはり相当なのだ。 そりゃあ、あれほどの人数に切り刻まれまくればダメージも蓄積されるだろう。 しかし……悠介の行動に違和感を感じるのは俺だけか? それになにかを忘れている気がしてならない。 でも悠介が攻撃を受け続け、反撃をしても躱されているのが現状だ。 彰利 (囲まれてるなら干将莫耶を出してブレイドワークスすりゃいいのに……     なんだって能力をとことんまでに使わずに戦ってんだ?) 解らない。 解らないが、このまま終わるだなんて思えない。 第一、ブレイドワークスじゃなくても黄昏を行使することもしないなんて。 ……待てよ?力量測らせてもらうだけ、とか言ってたか? けどよ、悠介。このままじゃお前、死ぬだけだぞ? 田辺 「殺ったぁーーーーっ!!抜刀連技!!」 悠介 「っ───チィッ!!」 スフィン!ズバシャシャシャシャシャシャドシュゥッ!!! 悠介 「〜〜っ……がっ……!!」 彰利 「あ」 それがトドメになったのか。 田辺の連撃が決まると同時に、悠介の体が崩れて片膝をつく。 田辺 「お、おおっ……!俺様がっ!チャンピォオーーーーン!!」 夜華 「や……敗れた……!あの悠介殿が……!」 佐古田「無様ッスねぇモミアゲ……今の貴様は負け犬ではなく負けモミアゲッス」 凍弥 「戻ってたのか佐古田……」 これが現実ってところか。 思うようにはいかないのが世界だ。 レベルが低いヤツはレベルが高いヤツに負けるのが常識。 これはどうやっても覆せるようなものじゃあ─── 総員 『ざわ……!』 彰利 「お?」 どこか冷めた気持ちで人垣を眺めていた俺は、 その人垣から発せられた動揺の声に首を傾けた。 悠介 「不本意だけどさ。     ボスってのは一度倒しても変身だかなんだかしてもう一戦やるのがセオリーだろ?     じゃあ───力量計りも終わったし、本気でかからせてもらう」 佐東 「な、なにー!?ふかしこいてんじゃねーぞコノヤロー!!」 悠介 「ふかしかどうかは戦ってから決めるとしよう。降りろ、ルナ」 総員 『ざわ……!』 悠介がそう言うのと同時に、空から舞い降りるのはルナっち。 空からその場を照らす円状の陽の中をゆっくりと舞い降りたルナっちは、 悠介を背中から抱き締めてその姿と重なり合う。 悠介&ルナ『全てが終わり───』 すると二人の体がブラックホールのような紫色の歪みに飲まれるように、歪んで混ざる。 ゼファー『───そして、始まる』 やがて、歪みが消えてゆく。 が、消える歪みと反比例して広がるのは黄昏と漆黒。 エルメテウスの景色が黄昏の草原となり、しかしそれをさらに月夜の暗さが覆う。 空に浮かぶのは、遠いの景色の果てに見える夕焼けの陽と見上げる空に見える満月。 清水 「こっ……これは……!?」 彰利 「ア、アゥワワワ……!!」 やっぱ隠し種もってやがった。 月夜の黄昏なんて滅茶苦茶なことしやがって。 しかもありゃあ……悠介とルナっち、同化してるんじゃねぇか? ラグを持った悠介と、その少し上を浮遊するルナっち…… こりゃあスターオーシャン2ndのガブリエルを思い出させる形態だ。 頭の上にある名前も悠介やルナっちって名前じゃなくて“ゼファー”になってるし。 灯村 「な、なんでぃ!!ただ合体しただけじゃねぇか!     こんなもん不死鳥合体くらい意味がねぇものに違いねぇ!!     みんなぁ!いくぞぉおおおおおっ!!」 総員 『おぉおおおおおおっ!!』 灯村 「なぁに!また速度で翻弄してやりゃあ───」  ゾンッ───!! 灯村 「いっ───!?速《ザゴォンッ!!》───」 彰利 「へ……?」 横に居た灯村が一瞬にして塵と化した。 疾駆も無い。 浮き、飛翔してきた悠介……いや、ゼファーの槍の一撃で絶命したのだ。 けど、ちょっと待て。 剣を槍に変える過程すら見えなかったぞ……? こりゃあ……!!こりゃヤバイ!!まともに戦ったって勝てる相手じゃねぇ!! 清水  「ひ、灯村がやられたぁああっ!!」 ゼファー『デリートする』 清水  「え!?俺!?」 中井出 「な、なんてこったって状況だが怯むな!迎え撃つぞ戦士達!      シャンドラの火を灯せぇえええええっ!!!!」 総員  『おっ……おぉおおおおっ!!!!』 彰利  「待て……!やめるんだぁっ……!敵いっこない……!      ヤツは……ヤツは伝説の超モミアゲ人なんだぞ……!」 などと言っても誰も止まりやしない。 みんながみんな駆け出し、たった一人目掛けて武器を振るいまくったのだ。 だがその悉くが弾かれ、そこらじゅうに居る猛者や他の皆様それぞれを襲う結果となる。 田辺 「《ザクッ!》いでぇっ!な、なにしやがる!」 下田 「弾かれて逸れたん《ザフィン!》いってぇ!!」 麻衣香「みんな固まらないで!     一斉に攻撃を仕掛けたらこうなるのは目に見えてるでしょ!」 総員 『そ、そうか〜〜〜っ!!』 遥一郎「ちょっと考えれば解りそうなことだろ!?」 麻衣香「みんな離れて!───全てを灰燼と化せ!“エクスプロード”!!」 中井出「ぬおっ!?総員退避ぃーーーーっ!!ってあれ居ねぇ!!」 総員 『とんずらぁあーーーーーっ!!』 中井出「なんだっててめぇら逃げ足だけはそんなに速ぇんだよ!!     イ、イヤァ待って!待ってぇええええっ!!!」 魔力に比例してか、とんでもなくバカデケェマグマの塊のようなものが空から落ちてくる! 地面と接触すると同時に大爆発を起こすあれこそがレベルの高い魔法の中でも威力も高く、 詠唱も短いとされるエクスプロード! あれを受ければどんなヤツだろうがただでは済まない筈だ! しかしゼファーは無言のままに槍を剣に変えて徐に振り上げると、 ゼファー『“支力付加(エンチャント)
”』 ガカァッキィインッ!! とんでもないことに、巨大なエクスプロードをラグにエンチャントしやがったのだ。 麻衣香「えっ……えぇええっ!!?うそぉっ!!」 しまった……そうか、悠介にはあれがあった。 バハムートのメガフレアでさえ付力とする悠介の皇竜剣(ラグナロク)。 これは困った。 黄昏“だけ”ならまだしも、ラグまで出されると……。 蒲田  「あ、あああ当たらなけりゃ意味なんてねぇ!みんな!剣閃乱舞だ!」 ゼファー『楽しませてくれる───“Chant(チャント)”!』 ギキィイイイシュカァンッ!! 唱えに応じるように剣が緋い槍へと変異する! あのカタチは───やべぇ!“緋竜槍(ゲイボルグ)”だ!! 彰利  「剣閃なんて後回しだ!!みんなVITを限界まで上げろ!!」 凍弥  「彰衛門!?」 彰利  「説明の暇なんてねぇ!早く!!」 ゼファー『“緋竜槍(ゲイボルグ)”!!』 満月の夜空へと緋い槍が投擲される。 もちろんただ投げただけじゃない。 緋い槍が重力に引かれかける頃、 一本の槍が無数の(やじり)へと変異して雨のように襲い掛かる! 蒲田 「ホォオアアア!!!こんな鏃ごとき素早さで避けてや《ザゴォッ!》えはっ!?     きっ……軌道が……変わって……!?」 彰利 「だからVIT上げろっつったろ!なにがなんでも心臓を穿つのがゲイボルグだ!     降って終わるくらいなら避けろって言うわ!」 蒲田 「〜〜っ……ち、くしょうがぁああっ……!!」  ギヂィン!!ボガァアアガガガガガドッガァア!!! 心臓に突き刺さった緋竜槍が、エンチャントしたエクスプロードの効果を発動させる。 外側からではなく内側から心臓を爆発させられた、 防御ではなく避けようとした者全てが塵と化す。 すぐ近くに神父が居るっていったって、 それでもこうまであっさりコロがされると恐ろしささえ感じる。 中井出「ええい不甲斐ない……!あれほど晦のバトル映像を見ておいて、     唱えを聞いていながらどういうものが来るかも予測出来ないとは!」 彰利 「そっちは無事か!?」 麻衣香「うう……いわゆるナギちゃんとシーちゃんを除く     わたしたち提督軍六人以外全滅したぁ……」 遥一郎「こっちも俺以外全滅だぁ……」 AGIをMAXにした所為でVITが0になっていたんだろう。 一撃───心臓穿ちとエクスプロードでニ撃か。 たったそれだけでこの状況だ。 多勢に無勢もなにもあったもんじゃない。 中井出   「こんな滅茶苦茶が許されていいのか!?否!!        よもやこんな短時間でこの有様など!あってはならんだろ!」 藍田    「あとでいくらでも復活してくるだろ!次弾が来る前にブッ潰す!」 彰利    「ちょっと待て!!作戦立てた方がいい!        このまま突っ込んでいいだなんて思ってるならそりゃ大間違いだぞ!!」 丘野    「そんなことはないでござる!        足りない数は拙者が増やしてなんとかするでござる!        生分身&分身!100身分身!!さらに“無月散水”!!」 彰利    「やめろ丘野!今突っ込むのは───!」 ゼファー  『“支力解除(アンエンチャント)”。───今、全てが終わる』 丘野×100『えっ───と、止まるでござ───!』 丘野が百身無月散水を実行するために閃速でゼファーに向かっていった時だった。 ゼファーがエンチャントしたエクスプロードを解放したのだ。 しかも物怖じすることもせず自分の足元に投げ捨てるように。 気づけたとしてももう遅い。 勢いづいてしまった丘野たちは速度を殺せず、そのまま巻き起こった爆発に巻き込まれた。  ギガゴバァッシャォオオオンッ!!!!! 中井出「〜〜っ……!!ぬあぁああっ!!」 彰利 「うっ……お……!すげぇ爆発だっ……!」 ゼファーを中心に大爆発を起こしたエクスプロードは容赦なく丘野さえも巻き込み、 辺りを爆煙でいっぱいにさせた。 しかしこんな時でも油断はしちゃならない。 視界が悪い時こそあいつはボファァン!! 彰利 「───!やっぱ来た!!」 爆煙を裂くようにして人影が現れる。 それは迷わず殊戸瀬へと襲い掛かり、 殊戸瀬は急な出来事に驚きつつも槍を構えて迎え撃つ!! 殊戸瀬「くっ!たぁあああっ!!!!」 ゾブシャア!! 丘野 「ギャアーーーーーーッ!!」 丘野だった。 殊戸瀬「きゃあっ!?ま、眞人!?」 中井出「丘野二等!?丘野二等ーーーーッ!!」 藍田 「む、むごい!高松くんに槍で刺された生徒みたいだ!」 彰利 「だから!そういうやりとりは相手倒してからにしろっての!来るぞ!」 丘野 「いだだだだ……!し、しかしでござるな……!     あの爆発の中心に居て助かるとはとてもとても……」 ……ィ…… 彰利 「───!木村っち!後ろだ!」 夏子 「え───あっ!?」 木村っちの後ろに現れたもの。 それはブラックホールだった。 あの野郎、あの一瞬でブラックホールを創造して転移してやがったのだ。 藍田 「夏子!?夏子ぉっ!!」 木村っちは突然の出来事に対処しきれなかった。 当然、怯んだまま行動を起こさない相手を見逃す馬鹿はおらず、 ゼファーが鋭い剣を木村っちへと落とそうとするまさにその時! AGIに全てを注いだのだろう藍田が地面を蹴り、 疾風の如くにて一気に木村っちの袂へと駆けつけた! ゼファー『木村を狙えばそう来ると思ってた』 藍田  「───!なっ───」 ゼファー『消え失せろ!“吼竜剣”(エクスカリバー)!!』 ゾガァッッフィィイインッ!!!! 藍田 「げはっ……あ、ぐあぁああああっ!!!!」 夏子 「あ……───あっ!亮!?亮!!」 ……無惨にも、木村っちの前で木村っちの盾となった藍田は斬りコロがされた。 駆けつけるのに夢中でステータスを防御に回しきれなかったんだろう。 加えて…… 丘野 「ど、どうなってるでござる!?晦殿のレベルは我々より遙か下の筈……!」 遥一郎「───そうか!解ったぞ!」 丘野 「むっ!?穂岸殿!?」 遥一郎「今の晦は“モンスターキング”だ。     モンスターをいくら殺してもレベルアップはしない。     けど、それは逆にプレイヤーを殺せば経験値も貰えるしレベルも上がるってこと。     で……俺達はここでどれほどレベルを上げて、どれだけの人数が晦に殺された?」 丘野 「ぐっ……!?で、では───!!」 そうだ。 加えて、ゼファーは俺達をコロがすたびに経験値を得るのだ。 ここに来てこの場で散々レベルを上げたことが裏目に出た。 今じゃもう、俺達とはそうレベルは離れてない筈だ。 悠介も、そしてルナっちもだ。 彰利 「だがしかぁし!こっちはいくら死んでも神父が居る!何度だってバトれるし、     何度でも戦ってりゃあHP削っていけていずれ倒せる!!」 中井出「おお!これこそゲームシステムを利用した環境利用闘法!!」 彰利 「そして俺と中井出には究極といって差し支えない能力がある!」 中井出「そう!長い時間とはいかんが自身の能力を倍化するステキ能力!」 彰利 「まだ使わんけどね。さあ行け他の者ども!!」 殊戸瀬「言われるまでも!」 夏子 「ないわっ!!」 麻衣香「魔法で動きを止めておくから!そのうちに!」 殊戸瀬「飛竜槍発動!」 夏子 「亜空召喚!リビングアーマー召喚!」 麻衣香「この重力の中で悶え苦しむがいい!“グラビティ”!!」 おなごたちが一気に力を解放し、ゼファーへと向かう! 発動された能力は全て頼り甲斐のあるものだろう。 けど、なんだろう。 なにか決定的な間違いがある気がしてならない。 それは───? 遥一郎「馬鹿違う!!晦を押さえつけるなら“重力”は間違いだぁーーーーっ!!」 麻衣香「───!あっ!」 彰利 「そうか!」 そうだった。 悠介は己の修行の中でうんざりするくらいの重力修行をこなしていた。 故に悠介の足止めをするなら、重力魔法だけは使っちゃならなかった。 ゼファー『《ドゴォオンッ!!》っ……!』 彰利  「えっ……?」 ───が。 ゼファーは半球体の重力場の中で動けなくなり、行動を停止させられていた。 なんの冗談だ、と思ったが、もしやとも思った。 そうだ。 いくら悠介がこの世界の理さえ超越して能力行使出来るようになったとはいえ、 全てを越えたままで行動出来るわけがなかったのだ。 麻衣香     「え……と、止められ……た?」 夏子      「チャンス!リビングアーマー!ソウルエナジー吸収!」 リビングアーマー『オォオオオオオンンン!!!!』 木村っちの言葉とともに、 リビングアーマーの両拳に木村っちのTPが力に変換されて蓄積されてゆく! さらにその横では殊戸瀬が己の武器である槍に力の全てを流し込み、 投擲の構えをとっていた。 夏子 「麻衣香!MNDマックスでやっちゃって!     完全に動きを止めるのと一緒にゴッドハンドクラッシャー撃つから!」 麻衣香「解った!MNDマックス!“グラビティ”!!」 ゴォッ───ゴガガガガガガガァアアッ!!! 重力場が範囲をそのままに、威力のみを爆発的に高める! 高めるが───こりゃあ! 麻衣香「えっ……かっ……くぁあああああっ!!!!」 重力に襲われたのは発動させた筈の麻衣香ネーサンだった。 どうなってんだ、なんて思うのは無駄なことだろう。 まるでMNDをマックスにさせる瞬間を待っていたかのような鏡面盾(イージス)の発動。 そしてゴッドハンドクラッシャーを構えるリビングアーマーと、 飛竜槍を放たんとする殊戸瀬へと砲門を開くゼファー。 ゼファー『我が命によりて、開け、冥府の門。“神槍、是総てを無限と穿つ(グングニル)”』 その言がドドドドドドドドドンッ!と、虚空に物凄い数の歪みを創る。 次の瞬間には物凄い大きさの波動砲が幾重にも放たれる! 夏子 「わっ!?ちょっと!」 殊戸瀬「あっ……わぁっ!?」 夏子 「こ、のぉおおおっ!!構わない!リビングアーマー、わたしのHPも使いなさい!     この命、全てくれてやるわぁああーーーーーーっ!!!!」 うおお漢らしい!! なんて思った次の瞬間には木村っちの体が塵と化し、 リビングアーマーの拳がさらに輝く! 殊戸瀬も全てを込めるとともに槍を投擲! 同時にその体も塵と化したが、 唸りを上げて飛翔する槍はグングニルの嵐を掻い潜るように突貫する! やがてゾガァアアンッ!!! ゼファー『───、』 一筋の光がゼファーの肩を穿ち、血飛沫を舞わせた。 それでも表情のひとつも変えないあいつはなにもんだ、と歯を噛み締めた。 リビングアーマー『ルゥウォオオオオオッ!!!!』 さらに次弾!主を失ったことで体を消してゆくリビングアーマーが渾身を込め、 ゴッドハンドクラッシャーを昇華させたゴッドハンドインパクトを放つ!!  ドガァッチュゥウウウウウウン!!!!  ボガガガガガォオオオンッ!!! 轟音を立てて空を裂く極光がグングニルを破壊し飛翔する! 驚くべき威力だ……よもやグングニルを破壊しながら飛ぶとは。 やはりレベルの高さと命を賭した一撃ってのは何者よりも強いってこったか……? ゼファー『“伎装弓術(レンジ/アロー)雷神槍(ヴィジャヤ)”』 ギリィッ!ピシュンッ─── ヴォガガガガガドッパァアンッ!!! リビングアーマー『グォギャァアアアアアッ!!!!!』 彰利      「いっ───!?」 中井出     「あ……」 遥一郎     「おあっ……!」 ……結論から言おう。 放たれたゴッドハンドクラッシャーの強化版、 ゴッドハンドインパクトはラグから放たれたヴィジャヤによって完全に破壊され、 さらに消えかけていたリビングアーマーも貫かれ、塵と化す。 中井出「お……お、おおお……!!な、なななかなかややややるではないか〜〜っ……!」 彰利 「へ……へっ?あ、そ、そそそそうだ、ななな……!!」 遥一郎「すまん、情けなくてもいいから俺逃げていいか?」 彰利 「待て回復役!他の者たちが復活して戻るまで耐えるんだ!」 遥一郎「けどな……!お前、あれでゲームの中ってことで枷がついてるって解ってるか!?     もし完全にあいつがゲーム世界の規制を超越してみろ!     それこそ考えもつかないくらいの惨たらしい殺されかたをするかもしれんのだ!」 彰利 「エエ?だって悠介だよ?そげなこと……」 遥一郎「お前のよく知る晦悠介は平然とエネルの真似をやってのける男だったか!?」 彰利 「いえ全然」 そうかしまった、 今の悠介ってば感情が完璧に近いから奇妙に原ソウルも持ち合わせてるんだ……! だから我らが相手だと一切の遠慮も無しに……あわわわわ……! ゼファー『あんまり早く壊れないでもらいたいものだな』 彰利  「今度はルシフェルの真似かよこの野郎!」 ゼファーの後方の虚空に無数の武具が創造される。 “無限を紡ぐ剣槍の瞬き”(インフェニティ・バレット・アームズ)か。 だったらこっちだってぇえええ!! 彰利 『ブラックオーダー発動!アァーーンド!サウザンドアームズ!!』 俺の黒内に内包され、記憶された武具全てをHPの続く限り解き放つ!! どこまで叩き落せるか解らんが、やる前に諦めるなんてことはもうしねぇ!! 中井出「おお彰利一等兵!貴様そんな技を温存していたのか!」 彰利 『オーダー発動で840のレベル状態まで引き伸ばされた俺に敵は無し!     さぁ行け!サウザンドアームズ!!』  ズガガガォンガガガォンガォオオオオオンッ!!!!  ヂガガギギガガガガガギィン!ガヂィン!ゴギィインッ!!! 放たれる剣や槍が黒の武具と衝突を始める! 武具と武具がぶつかり弾ける音が耳を劈き、虚空に凄まじい衝突風を巻き起こし、 地面の砂や塵を吹き飛ばしてゆく。 それほどの速度、それほどの威力を以ってぶつかっては破壊されを続ける。 ゼファー『っ……!ぐっ……!』 彰利  『ふははははは!!どうだどうだ悠介ぇ!この世界ではレベルが全て!      そして今の俺は一時的とはいえ840レベル!      つまり貴様が勝てる可能性など皆無ってことだ!!』 ゼファー『可能性……?皆無……?───寝言は寝て言え。      能力が上がるのがお前だけだと最初から決め付けたりするから、      お前はいつまで経っても慢心が体から抜けないんだよ』 彰利  『あぁ〜〜〜ん!?なんと言おうが今押してのは俺───ぬぐっ!?』 あっ……やべ……!調子に乗って武器を放ちすぎた……! HPがそろそろ底を付き……ってちょっと待て、 それならゼファーのHPも底を尽きてもいい筈……う、あっ……! しまった何考えてんだ俺! 黄昏ン中じゃ創造し放題だしルナっちの力の補助や、 さらにはどこぞの精霊からの力の補助も……! なにもかも忘れすぎてた! 能力発動させて力が倍化したりするのは俺と中井出だけじゃねぇんだった! ああ俺の馬鹿!何度慢心して後悔すりゃ気が済むんだよ!! 彰利  『だったら───』 ゼファー『転移で背後へ、だろ?』 彰利  『ぎっ……!?』 読まれてる!?やべ───もう発動させちまった! このままじゃ殺される!! 馬鹿か俺ゃあ!千里眼での未来視さえ忘れるとは!  キィッ───ビジュンッ!! ゼファー『───詰めだ。消えろ』 声   「詰めるにはまだ早い上に消えはせん!!すぅりゃあっ!!」 ドゴォンッ! 彰利 『ゲブゥッ!!?』 転移し、ゼファーの背後に出現した俺は、 レンジ/ブレイクによって剣と化した剣を喉元に突きつけられた瞬間、 何者かによって突き飛ばされた。 さらにそいつが俺の闇の宝玉に触れ、何かの能力を流し込むのを俺は見逃さなかった。 その何者かってのは─── 彰利 『なっ……中井出!?』 中井出「フッ……後を───頼んだぜ!!」 その言葉、その笑みとともに中井出が俺目掛けて投げてよこしたもの─── それはなんと、中井出にとっては至宝である稀紅蒼剣ジークフリード! 反射的に何故、と訊こうとした次の瞬間、  ゾガァッフィゾブシャォオンッ!!! 中井出「ぐあぁああああああっ!!!!!」 中井出は、ゼファーが放った吼竜剣によって微塵と化してしまった。 彰利 『……ッ!』 ……本気、なんだな、悠介。 一切の躊躇もせずにかつての級友をこうも簡単にコロがすなど。 かつての悠介じゃあやれなかったことだ。 いくらゲームの中とはいえ、今のこいつの目はあまりに本気だ。 彰利 (中井出……お前の漢意気、確かに受け取った) 確かにな。 中井出の判断はきっと正しい。 少なくとも中井出よりは、 実戦経験と死と隣り合わせの視線を潜り抜けた回数なら俺の方が上だ。 さらに俺はブラックオーダーでレベルを倍化出来る。 けど中井出の場合はステータスのみを倍化させるのみ。 つまり俺が劣勢に至る相手ならば、中井出じゃあ勝てる見込みが無いってことだ。 しかし仮にそうだとしても、中井出は自分で闘うことだって選んだだろう。 負けることが恥なのではなく、立ち向かいもせずに諦めるのが恥とする原中の提督だ。 “やらずに恥とするよりも、やって恥せよ原ソウル”。それが原中魂というものだ。 しかし、その中井出が俺に武器を預けた。 その意味が解らない俺じゃあねぇぜ、中井出! 彰利 『来やがれ悠介!ルナっち!この剣に懸けて、てめぇら纏めて越えてやる!!』 剣を構える。 鞘ごと渡されたそれを抜き、煌く刀身を翻しながら。 ゼファー『………』 ゼファーも解ってやがる。 この武器が己を脅かす最大の武器だってことに。 けどボスとして立ったからには逃げることなんて許さねぇ。 この武器には、破れていった猛者たちの意思が込められているのだ!! 彰利  『いくぜ悠介……この一撃で全てが終わる』 ストックを解除する。 解放するのはもちろんブラックオーダー。 あと数秒で効果が切れるそれを上乗せするように時間を延ばし、 同じくそうしているであろう相手を睨みつける。 どんなスキルがこの武器に封入されているのかも見ておく。 そのために預けられた武器だ。 中井出の思いを無駄になどしない。 彰利 『さあ!お山の大将が地面に降りる時だぜ!ストック解除!マグニファイ!!』 ギィンッ!!ゴコォッキィイインッ!!! 彰利  『おぉおおおおおっ!!』 ゼファー『……!』 中井出が宝玉に流し込み、ストックしていった能力……それはマグニファイだ。 中井出がどんな相手とも無理矢理渡り合う能力の全てがこのマグニファイにあり、 ステータス倍化などの滅茶苦茶な力を秘めている。 そして今ここに措いて、このマグニファイの鬼人化ほど俺の力を引き上げる能力など無い。 レベルを840に倍化させ、 一時的とはいえ爆発的に上がったステータスをさらに倍化させるという最強コンボ。 それがこれだ。 彰利 『この力を以って───悠介!俺はお前を越えていく!!』 言葉とともに皇竜の八翼を解放。 込める力は渾身に。 八枚の飛翼を以って風を叩き、爆発的に飛翔───!! 速度はこれで十分!全てをSTRに託し、 俺の体にあるHPTP、そして力の全てを剣に託す!! それにより発動する背水の陣とジェノサイドハート、さらにフルスイングを込めて!! 彰利  『消し飛べモンスターキング!!おぉおおおらぁあああああっ!!!!』 ゼファー『“支力付加(エンチャント)”』 ゴガガガァアアアッキィイイインッ!!!! 彰利 『───!』 寒気───今この刹那の感情を唱えるとするなら、それを寒気と唱えよう。 飛翔し、全てを友の剣に託した俺は、きっと勝利を確信していた筈だった。 しかし目の前で起きた状況は俺の予想なんて置いてけぼりにしていたのだ。 けど全てを覚えていれば予想くらい出来た筈だった。 月夜の草原も黄昏も無くなったこの世界で。 異常なまでに光り輝く、太陽のような剣を前に。 ゼファー『“吼竜(ラグ)───』 それを見たのはいつだろう。 思い出そうとしても、慌てて思い出そうとした時ってのは必ず失敗をするもんだ。 けれども俺の頭はこんな時ばっかりさっさと思い出しやがった。 あれはそう、境界の北の大地で逝屠と戦っていた時───! ゼファー『───斬光剣(ナロク)”!!』 こいつは黄昏を自分の身に埋め込むことで、 爆発的なパワーアップをギシャバゴォンッ!!! ヂガァアアガガガガガギヂャァアアッ!!!! 彰利  『ぬぐあっ!?ぐぅあぁああああっ!!!!』 ゼファー『っ……おぉおおあぁああああっ!!!』 閃光と火花が剣と剣の間から咲き乱れるように巻き起こる。 衝突した力と力は空気さえ捻り穿ち、全てを込めた渾身さえも噛み砕かんと荒れ狂う。 ───だが。  ボゴォッ!! ゼファー『───!?なっ……に……!?足が埋まる……!?』 彰利  『ただ振るっただけのお前と違ってこっちは飛翼での加速があるんでね!      同等だと思ったら大間違いだぜ!』 優位にたったのは俺だった。 全ての力を武器に込め、黄竜剣とともに放った一撃はなによりも重く、 上から圧するという条件ではギガノタウロスの斧のペナルティスキルでさえ好条件を生む。 彰利  『黄昏を引っ込めたのは迂闊だったな!      ここはお前の想像通りにコトが運ぶ世界じゃない!      小さなな力でも簡単に壊れる大地だ!』 ゼファー『ぐっ……《ボゴォンッ!》───くぁっ!?』 ゼファーの足元が崩れた───今だ!! 意識が一瞬でも足元に移った今こそ!! 彰利  『くたばれぇええええええっ!!!!!』 ギャリンッ!ヒュオゾガァッシャアアッ!!! ゼファー『っ〜〜〜……!げはぁあっ……!!』 ラグを弾くとともに軌道を翻し、そのまま心臓へと向けて振るわれたジークフリードが、 ゼファーの鎖骨と胸骨を砕き、やがて心臓を切り刻む。 ……徹った。 これで生きていられたら本当にバケモノだ。 ゼファー『ぐ……っ!』 キィ───バジュンッ!! 異変はその時起こった。 フラついたゼファーが地面に膝を着くと同時、その体が輝き出したのだ。 次の瞬間にはゼファーは悠介とルナっちへと戻り、 片膝をついている悠介は倒れゆくルナっちを抱き止めて俺を見上げた。 彰利 『どうだ……これが原中の友情パワーだ!!』 対する俺は悠介を見下ろし、打ち勝てた喜びを口にしていた。 勝った……そう、ガチンコ勝負で悠介に勝ったのだ。 過程や方法などどうでもいいのだ。 これが喜びにならずになにになるというのだ。 遥一郎「油断するなよ。相手は晦だ」 こっちが消費したHPもホギッちゃんによって回復。 その頃にはブラックオーダーの効果も切れたが、 今の悠介なら俺でも余裕で勝てると確信した。 彰利 「愚かなことよ……。確かに“月夜の黄昏”を体に流し込んだのには驚いたが、     それをすれば後が無くなるってもんだ。     悠介……貴様は最後の最後で戦法を誤った。それが敗因だ。     ホレ、猛者どもや他の皆様ももう見え始めている。     貴様がどれだけ現実世界で活躍した英雄だろうとも、     この世界でもそれが通用すると思ったら大間違いだ。     お前は負けたんだ!お前は!このクズ!クズが!クズめ!クズめ!!」 ここぞとばかりに罵る!罵る!罵る! こんな出来事、滅多なことでは体感出来ません! 悠介 「……御託はいい。殺せ」 彰利 「ホホッ!?そうはいかん!この俺の悲願達成はこんなものでは終わらんのだ!     そうだ写真を撮ろう!一応オンラインゲームなんだから、     スクリーンショット機能くらいあるっしょ!?     ホレホレ悔しいか!?悔しかろ!えぇーーーっ!?」 悠介 「ッ……何度言わせればっ……!このたわけがぁあああっ!!!」 彰利 「ウヒョオ!?」 悠介の体が光り輝く! それに伴いルナっちも目を覚まし、完全回復状態で復活───ってアレレェ!? 何故なにどうしてホワイ!? ゼファー『トドメも刺さないうちから勝利した気分で居る馬鹿野郎が……。      目ェ覚まさせてやるからとっとと構えろ』 彰利  「エ?え?な、なにがどうなって《バゴシャォンッ!!》げぶはぁっ!!?」 鋭い拳が顔面を捉えた。 意識が飛びそうになるその威力と、 どういうわけか腸煮えくり返っている悠介に俺は頭が混乱していた。 ゼファー『本当に呆れたヤツだよお前は……!      俺がなんのストックも持ってないと思ってたのか……?そうじゃなくても、      アイテムを持ってるかもしれないってことくらい考えられなかったのか!!』 彰利  「ア、アゥワワワワ……!!」 やべぇ……物凄ぇ怒ってる……なんで? トドメ刺さなかったのがそんなに怒りを呼び起こすことに繋がってたの? もしやS!? 彰利  「す……《ゴクリ》……すげぇ……まさか貴様にそんな趣味が……!」 ゼファー『慢心なんてものを捨てろって言ってんだ馬鹿たれがぁあああああああっ!!!』 ガゴシャギバァアアアォオオオンッ!!!! 彰利 「ウオァギャアアアアアアアッ!!!!!」 月夜の黄昏が視界を埋める頃、 再びその手に現れたラグには太陽のような輝きがこもったままだった。 やがて、そのとてつもない威力に滅ぼされる中で俺はようやく理解した。 悠介はいつまで経っても詰めの甘い俺を成長させるために、 わざわざこんな舞台を用意したのだと。 最初から解ってたのだきっと。 じゃなきゃ一番厄介な能力を持った俺を最後まで残しておく意味が無かったのだ。 ……そうだよな。 俺も変わるって決めたんだ、 いくらゲームの中だからっていつまでもふざけたままでなんていられないんだ。 世界を守るためだなんて大層なことを考える故じゃない。 俺は俺として、自分が守りたいって思ったものを守るために、 こんな詰めの甘い自分は封印してやらなけりゃいけないのだ。 Next Menu back