───冒険の書102/飛べない鳥は性質の悪い不死鳥(フェニックス)───
【ケース301:弦月彰利(再)/クラウツ端の破壊王】 ───覚悟を胸に戻ってきた俺の目の前にあったのは、 なんとまあそれはもう見るも無惨な地獄絵図だった。 どうやら俺との一件で燻るハートの中にある巴里に火がついてしまったらしく、 いままで数々の強敵へと挑んでいった時の変異眼になりつつ槍を閃かせまくっていた。 突く動作はコンパクトに、刹那に放つは十二閃。 その全てが必殺の威力を誇っており、力で捻じ伏せようとする者を突き穿ち、 耐えて隙をうかがう者へは容赦なく全力を込めてこれを滅する。 プレイヤーをコロがしまくり、既に彼ら彼女らのレベルを超えてしまったのか、 捌く動きは先程よりも冴え渡っていた。 中井出「や、やっと来たか彰利一等兵!     ジークフリード返してくれ!これではなにも出来ない!」 彰利 「おうさ!そりゃあ!」 借りていた武器を中井出に投げ渡す。 武器を受け取った中井出はそれこそ “こっから反撃してやる”といった眼差しで剣を構えた。 が、今の悠介相手にはそんな心構えの準備すら隙となったのだろう。 閃かせた槍は喉を貫き───いや。 貫かれると思われたそれは中井出の体捌きにより肩を貫くだけに終わり、 命を落とすことはなかった。 しかしそれでも左肩を潰された状態では満足に戦えやしないだろう。 俺もすぐさま戦闘体勢を取るが、悠介は既に本気で反則王と化していた。 それは自ら飛翔してプレイヤーを襲うストームブリンガーを見れば一目瞭然だろう。 困ったことに、これぞモンスターキングというか、 さすがボスって感じの卑劣さに至っていた。 一時の馬鹿っぷりが相手をここまで強くしちまうんだってことを身に染みて理解した。 覚えておこう、軽率な行動がこんな事態さえ招いてしまうのだということを。 岡田  「すぉおおりゃぁああっ!!」 ゼファー『遅い!』 ドンッ!ゾガガガガガガガブシャアッ!! 猛者ども『ギャアーーーーッ!!!』 襲い掛かる岡田を槍で串刺しにし、後方へと振り回す要領で放り投げる。 その際、振り回す岡田で群がるプレイヤーどもさえ吹き飛ばし、 槍から放たれた岡田が弾丸となって、詠唱中の魔術師を襲う。 っかあ……!この乱戦の中よく見てやがる……! しかも怯んだ相手に追い討ちをかけるのも忘れちゃいない。 こりゃ……勝てるのか?───じゃない!勝たなきゃここまで来た意味がねぇんだ! 彰利 「中井出!アレいくぞ!」 中井出「お!?お、おお!!」 アレですぐに解るほど追い詰められているんだろう。 双剣十二閃化させていたジークムントとジークリンデをジークフリードに戻すと、 中井出はグミを噛んでジークフリードを突き出すように構えた。 俺もブラックオーダーを解放。 “出来ない”なんて理を越えてゆく磐石たる意思のもと、八翼を広げた。 藍田 「よっしゃ!俺も混ぜろ!」 そこにさらに現れたのが藍田。 物凄い熱を発して紅蓮となった、 蒸気を立ち上らせる武具を両手両足に構え、俺達の横に立った。 彰利 『闇黒パワー全開!!アルファレイドッ……カタストロファーーーッ!!!』 中井出「“極光吼竜閃(レイジングロア)
ァーーーッ”!!!!」 藍田 「四五竜闘気!“空軍・画竜点睛シ(アルメ・ド・レールフランバージュ)ョォオオットォオオッ”!!!!」 ドガァッチュウゥウウウウンッ!!!! 三つの力強き波動が合わさり、ゼファー目掛けて飛翔する! 受けてみやがれこの野郎! こればっかりはいくらレベルが高かろうがドゴシャシャシャア!!! プレイヤーども『ギャアアアアーーーーース!!!!』 ……あ。 やべー、退避報告もな〜んもしてなかったからいろんなプレイヤーが塵と化して……。 それでも悠介へと向かう極光はまるで勢いを失くさない! ゼファー『イメージ、凌駕にて解放……!《ボゴォンッ!!!》』 総員  『オワッ!?』 対してゼファーはなにをするのかと思いきや、 なんと突き出した左腕を皇竜の頭へと変換。 そこから信じられないくらいの極光レーザーを放ち、 大気さえ破壊させながら俺達の波動砲の勢いを殺しやがったのだ。 それさえも忘れてた。 あいつの回路や体は、元がそういったもので形成されているのだ。 今でこそ精霊なあいつだが、かつては神になったり竜になったりと、 およそ人間が通る道じゃない道を通った真実バケモノ的な存在。  ───だが、その勢いもこれで終わる。 彰利  『かかったな悠介……!波動砲は囮だ!』 ゼファー『───!』 麻衣香 「チェーンスペル!MNDマックスメテオスウォーム!!」 そう。 戦いにおいてどんなものがフェイントになるかと問われれば、 それは奥義、または切り札めいたものこそがフェイントとなる。 俺達が放った全力の攻撃は事実、悠介の意識をこちらに釘付けにしていた。 故に気づかなかった。 麻衣香ネーサンが稀緑杖グルグリーズを用いてのチェーンスペルを発動させていたことに。 それを気づかれないために、 “流星群”(メテオスウォーム)にまで至る魔法の全てを永田くんに受けてもらったほどなのだ。 倒せないまでも、HPを1にまで下げることが出来るこの大魔法こそがある意味切り札だ!  ゴォッ───!!  ドガンドガドガンドガァン!ドゴゴゴゴガゴォオ!!! ゼファー『〜〜〜っ!!』 さすがのゼファーもこれには怯む! いける……!これならいけるぞ!いけ───ドゴンドゴンドゴォ!!! 彰利 『だっ!おっ!オワァーーーーッ!!!!』 中井出「ヒィイイ!!あ、相変わらず見境なしかぁあああっ!!」 総員 『助けてぇええええ!!!!』 むしろ俺達も逝けそうだった。 麻衣香 「さらに!《ピキィーーーン♪》シューティングスタァーーーーッ!!!!」 ゼファー『ぐっ……!』 メテオが止む前に大魔法のチェーンスペル第二弾が発動。 さしものゼファーもこのメテオの中を掻い潜ることは困難らしく、 ひたすら防御に徹し、避けられるものは避けるといった風に耐えていた。 が、麻衣香ネーサンを中心に放たれる無数の小さな流星は躱しようが無い。 一粒一粒のダメージが異常なほど高いそれは、トドメにこそならないものの、 こちらの行動をとことんまでに殺してくる。 ゼファー『イメージ、凌駕にて解放!“絶氷膜”(フェンリル)!!』 キィンッ…… ヂャガァアアガガガガギィイインッ!!!! 彰利 『んなっ……!ウソだろ!?』 考えやがった! 相手がMNDマックスで魔法を仕掛けてくるのなら、 逆に魔法防御に全てを注いだ無数の盾を創造すれば、 全てとまではいかずとも大半を防げる……! ゼファー『ぐっ……!?《ビキキッ……!》』 だが流石は大魔法。 ダイヤモンドダストカーテンの盾を執拗に叩いては、結晶を砕いてゆく! やがて全ての結晶が潰えようとしたその時! 麻衣香「さらに!《ピキィーーーン♪》ビッグバンッ!!」 大魔法チェーンスペル最強のトドメ、ビッグバンが発動される!! これは発動からダメージ判定発生まで時間がかかるため、 ゼファーもその隙を狙って飛翔する! が、他のプレイヤーたちが麻衣香ネーサンの盾となるようにゼファーを押さえた!! ゼファー『なっ……お前ら!!』 清水  「させるかよ……!」 閏璃  「へっ……チンケな命だが……くれてやる!!」 ゼファー『どけぇえええっ!!!!』 月夜の黄昏の虚空に無数の武具が創造される! それは雨のようにプレイヤーたちを突き穿ち、だが─── そんなことになってもプレイヤーたちは己の命が尽きるまでゼファーから離れず、 一人死ねばもう一人がと、殺されては駆け付けを繰り返して押さえ続ける!! それはなんと素晴らしい光景だろう……。 一人のボスを倒さんがために、プレイヤーの大半の心が今ひとつに───! 佐東 「弦月てめぇ!なに呆然と見てやがんだ!」 藤堂 「てめぇ一人だけ高見の見物か!?」 総員 『このクズが!!』 彰利 『アレェ!?心の一致が嫌な方向に流れ始めた!?     ち、違うよ?俺今かなりの感動を胸に、涙さえ流さんくらいに……』 中井出「黙れクズが!」 総員 『死ね!!』 感動は微塵と砕けました。 そりゃそうだよな……だって大半が原中だし。 いつの間にか身を呈した麻衣香ネーサンシールドの仲間入りを果たしていた中井出と藍田を ボーゼンと眺めつつ、感動の涙の行方を悲しみのままに見送った。 ───やがて。  ゴッ……ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!  ゴゴゴギバァッシャァアアアアンッ!!!! ゼファー『ぐぁああああああっ!!!!』 総員  『ほぎゃあああああーーーーーーっ!!!!』 ビッグバンは炸裂し、月夜の黄昏とゼファーの合体、 そして総員全てを吹き飛ばして消え去った。 パーティーメンバー以外を吹き飛ばすとされる大魔法の威力は凄まじい。 パーティーメンバーにはダメージはないとはいえ、風圧だけで吹き飛んでしまうだろう。  ───そして。 悠介 「はっ……あ……───づっ……!!」 ルナ 「ん……う……」 ここに、恐らく最後の勝機が訪れた。 ……もう、迷うなよ。 これは俺だけの力で導き出した勝機なんかじゃない。 みんなで導き出した勝機だ。 それを、俺の勝手な慢心なんかで潰すわけにはいかない。 彰利 『はぁっ……!』 両手にアルファレイドを込める。 終わりにしよう、この成長を願った故の騒動を。 彰利 『じゃあな……これで終わりだ!アルファレイドカタストロファー!!』 ドゴォッチュゥウウウウンッ!!!! 両手から一つずつ、レーザーめいた黒い光が放たれる。 右手から放たれた光が悠介へ、左手から放たれた光がルナっちへと飛翔する。 その数瞬の間隙……悠介の口が小さく動き、 最後まで諦めずに抵抗しようとしたその体を光が消し去った。 ルナっちも同様に消え去り、 これでようやく……ラスボスバトルめいた戦いは幕を下ろしドゴォン!! 彰利 『オッ?』 麻衣香「えっ?」 様々な人々が爆風で吹き飛び、 様々な場所に激突した反動で死んでしまい、俺と麻衣香ネーサンしか生きてない現状。 突如としてモンスターユニオンは地震に見舞われ、揺らぎ始めた。 何事かと慌てているうちに俺のブラックオーダーも効果が消え、 俺と麻衣香ネーサンはそれはもう狼狽えた。 しかし妙だと思うのは、ボスが倒れた途端にこんなことが起きるという事実。 俺の予想が間違ってなけりゃあ、これは─── 彰利 「えーと、麻衣香ネーサン?これってもしかしなくてもルガール?」 麻衣香「間違いなくそうだと思うけど」 ぺぺらぺっぺぺ〜♪というレベルアップの音を耳にしながら辺りを見渡す。 だが地震に揺れる大陸があるのみで、脱出ポッドだとかは─── 中井出「彰利一等兵!とっととここから逃げるぞ!     どうやら晦のヤツが最後に大陸浮遊の魔力吸収回路を爆破したらしい!     最後までボスらしく振舞った彼奴を称えたいところだが、今は一刻を争う!」 彰利 「おや提督でねが!もう復活してきたんか!?」 中井出「AGIマックスにすりゃこんくらいの距離埋められるわ!     それよりもだ!あっちにパラシュートみたいなのがあった!とっとと降りるぞ!」 彰利 「パラシュート!?何故にそげなもんが!?」 麻衣香「あ……もしかして晦くんが?」 彰利 「ぬ……」 もしや最初っからこうやって、用が済んだら再びボ・タを地面に降ろす気で……? ああいや、そんなことを考えてる暇はねぇな! そんなこんなで俺達はパラシュート(恐らく創造されたもの)があるという場所まで走り、 それぞれがパラシュートを着けたところですぐさま飛び降りた。 それとほぼ時を同じくして、急速に落下してゆくボ・タ。 危うくバランスを保てないままに地面に激突するところだった。 彰利 「聖地ボ・タが……」 中井出「落ちた……な。粉々だ」 藍田 「そりゃそうだよな。ここ、海の上じゃなかったし……」 麻衣香「モンスターたちはどうなるんだろうね……」 解らない疑問は残っている。 まだやれることは残っているだろうか。 ……いや、無くても構わない。 楽しめることは楽しんでおくべきだと思うから。 彰利 「よっしゃ!そんじゃあパラシュートオォーーーン!!!」 グイッ……しゅるるるるバサァッ!! 彰利 「グェエエップ!!」 急激に伸びたパラシュートが風を受けて広がり、俺の体を急速の落下から守ってくれる。 見れば様々な人々がパラシュートを開いてゆき、やがて提督が。 中井出「よっしゃ俺も!そぅれ開けチューリップ!!《ずぼんっ!》ややっ!?」 肩越しに背負った物体から引っ張った紐はいとも簡単に抜け落ち、 パラシュートではなく水筒として姿を見せると、 そのままの勢いで中井出を空の旅に誘った。 中井出「だーーーっ!こりゃパラシュートじゃなくてリュックサックじゃねぇかーーーっ!     誰だぁピクニック気分でこんなもんパラシュートに混ぜたヤツはぁああ!!     死んだぁあーーーーーっ!!!!」 ナギー『ヒロミツー!!ジークフリードで空を飛ぶのじゃー!!』 中井出「そ、そうだ!私にはそれがあったーーーっ!!って!くぬっ!ふおっ!?     ウギャアリュックサックが邪魔で剣が抜けねぇええ!!助けてぇえええ!!!」 やがて雲を突っ切って見えなくなってゆく僕らの提督。 さよなら僕らのヒーロー、僕らはキミのことを忘れない。 シード『父上……何故こんなことに……』 彰利 「よぅくお聞き……?提督はあんなことを叫んでいたけれど、     ほんとはアレがパラシュートじゃないことなんて知っていたのさ……。     他の誰かが死んでしまわないように、ああして自分を犠牲にしたんだよ(大嘘)」 シード『なっ……なんと器の大きい人だ……!!』 ナギー『ヒロミツ……さすがはヒロミツなのじゃ……』 麻衣香「感動してるところ悪いんだけどさ。博光、完全に見えなくなっちゃったよ?」 総員 『女房思いのいいやつだった……』 麻衣香「そんな、輝く季節の乙女を思い出させるようなことを言われても」 しかしなんとまあ激動の一瞬がまさに一瞬に過ぎたもんだ。 中井出は……ダメだな、きっと助からん。 それに悠介はどうなったんだろう。 モンスターキングとして倒されたとなると、復活できるのかどうか。 モンスターを復活させる聖地は砕けたわけだし、こればっかりは解らない。 閏璃 「ところでパーシモンよ。フォルネウスはどうなった?」 柿崎 「フォルネリアだって。天からネックレス貰えたから大事には至らなかった」 閏璃 「ネックレス?ああ、ナビネックレスか」 フォル『死んでしまっても復活できるなんて、なんて素晴らしい……。     これは稔さまの力なのですか?』 柿崎 「えっ!?あ、いや、これは……!」 閏璃 「中井出博光提督の力だ」 フォル『中井出……?あの、わたしを倒した輩の……?』 来流美(あんたってほんと、適当なことがぽんぽん口から出るわよね……) 閏璃 (いいだろべつに。“博光の野望オンライン”なんだから、ある意味合ってるだろ) ナギー『そーじゃそーじゃすごいじゃろ!ヒロミツはそこいらの人間とは違うのじゃー!』 シード『そうだそうだ凄いだろ!父上は最高の提督なんだぞ!!』 総員 (水筒飛び出させて落ちてったけどな……) ある意味凄まじく最高な提督であることには変わりないけどさ。 さて……このまま俺達はどこまで飛ばされるんだろうな。 風が出てきた所為で、これこそ風任せって感じになってら。 彰利 「降りたらどうすっかねぇ」 藍田 「あ、俺に提案アリ。実はさ、モンスターユニオン探してる時にさ。     興味深い浮遊大陸を見つけちゃったわけよ」 彰利 「興味深い大陸?どれくらい興味深かった?」 藍田 「そうだな……“赤毛のアンは鼻毛も赤いのか否か”くらい興味深かったな」 彰利 「おお……そりゃ興味深いな……」 遥一郎「……興味深いか?」 彰利 「興味深いさ!だって考えても見ろ、     ゲームとかで赤い髪のキャラとか緑髪のキャラとか居るだろ?     あいつらも実際、鼻毛は赤かったり緑だったりすると思われる。     でもさすがにそんなことをシナリオに書くライターなど居ないだろ?     そんな常識を突いてみるのが僕らのハート、原ソウル」 遥一郎「ええいどこからツッコんでいいやら……。     お前はそれを解明したとして、なにか得るものがあったりするのか?」 彰利 「得るもの?………………」 無いなぁ。 だって赤毛のアンの鼻毛が赤かろうがどうしようがどうでもいいし。 トリビアにはなるかもしれんけど。 核弾道「知ってっかぁニコボールゥ!     赤毛のアンは鼻毛も赤いんだぜぇ?一緒に……見に行こうな!」(イメージ映像) いや見に行ってどうすんだよ。 そもそも何処に行けっていうんだ。 彰利 「話戻そうか。赤毛のアンの鼻毛は置いておくとして」 閏璃 「じゃあ柿崎の鼻毛の話をしよう。それはある晴れた昼下がり、     柿崎が日課の朝の鼻毛の手入れをしている時だった。     ふと毛抜きで抜いた鼻毛が、なんと白髪だったのだ」 遥一郎「だから!ツッコミ入れる箇所に困るようなことを言うなって!     鼻毛の話が終わったと思ったのになんでまた鼻毛で!     しかも昼下がりって言ったのに朝の鼻毛の手入れで!     なんだって鼻毛が白髪として抜けるんだよ!!」 閏璃 「それなんだがな。恐らく柿崎は……」 遥一郎「か……柿崎は?」 閏璃 「鼻の穴から老いてゆくタイプの生命体だと俺は睨んだ」 遥一郎「だからどうした!睨まれてもどうにもならんだろ!」 閏璃 「まったくだ!」 ホギッちゃんもホギッちゃんで苦労してるらしい。 こういう時ってまともな知識の下に頭のいい人は苦労する。 我らはツッコミどころ満載生命体だからね。 柿崎 「人の鼻毛のことで盛り上がってるところ悪いんだが……」 閏璃 「どうした鼻毛の(おきな)」 柿崎 「鼻毛の翁言うな!!お前ら人生初のパラシュートで空飛んで、     語らうことが鼻毛の話題だってどういうことだよ!!」 閏璃 「鼻毛鼻毛やかましいなぁ……だからお前は鼻毛の翁なんだよ」 柿崎 「鼻毛鼻毛言ってるのはお前らだろうが!!     大体なんだってお前はまず話題にする話が俺のことなんだよ!     自分のこと話せばいいだろうが!!」 閏璃 「俺は翁のような白髪鼻毛並にインパクトのある鼻毛話がなくてな……」 柿崎 「普通に翁って言うな!それに鼻毛の話題じゃなくてもいいだろうが!!」 閏璃 「なんだとー、コノヤロー!     お前の鼻毛がどれだけ稀少だったかを公表してみたんじゃねぇか!!     お前の白髪鼻毛はそれほど珍しいものだったんだよ!!     鼻毛から老いていく人間なんて俺見たことねーもん!!」 柿崎 「世界中探せば絶対いるよ!三人に一人の確率で居るね!!     大体白髪が出たからって老いるって考え方が間違ってんだよ!!」 遥一郎「お前らさ……空中で、しかも初パラシュートで、大声で鼻毛鼻毛言うなよ……。     他に話すことくらいあるだろ……」 閏璃 「じゃあ金髪美女は鼻毛も金色なのか否か」 遥一郎「鼻毛から離れろって言ってんだよ!!」 閏璃 「いやだわこの人ったら……こんな大声で鼻毛鼻毛って……」 柿崎 「奥さん奥さん、知り合いだとか思われたらたまりませんわ。知らん振りしましょ」 遥一郎「ワタシイマトテモアナタヲコロシタイネー……!」 鼻毛話が殺意に変わった瞬間だった。 彰利 「ほんで?興味深い大陸ってどんなんだったん?」 藍田 「闘技場だよ闘技場。浮遊島の中にグラウベフェイトー山ってのがあってさ。     その頂上に闘技場があった」 彰利 「グラウベ=フェイトーザ?」 藍田 「違うって。フェイトー山。     なんでも100年に一度、世界のつわものが集まって大会を開く場所なんだとさ。     なんだって100年に一度かっつーと、     賞品である武器が100年に一度だけ自然精製される結晶石で作られたもので、     当然100年にしか作れないからなんだそうだ」 彰利 「へー……で、その武器の名前は?」 藍田 「霊双剣テオブランド。間違いなく双剣では世界最強の武器だそうだ。     話では元素の精霊が精製する武器らしいんだけど、     持ち主の命とともに消滅するんだとか。     あ、だからもちろん俺達ならいくら死んでも消えやしないってことだ。     持ち主だと決めたものの命と同化するもんだから、     手に入れた者にしか扱えない。さらに持ち主が死ねば消滅。     そんなもんだから、100年経ってもそれ欲しさに集まる輩は後を絶たない。     殺して奪っても消滅しちまうもんだから、     大会で優勝して手に入れるしかないのさ」 彰利 「ほへー……なるほどね」 藍田 「で、なんと明日が前大会から100年目の今!!     つまり明日、百年に一度の世界大会が開催されるわけだ!!」 彰利 「なに!?マジかてめぇ!!」 藍田 「マジだ!あ、でも世界大会っていっても、     原則として巨人やモンスターは参加不可能。     優勝してもテオブランド装備できないからな。     つまりこの戦いは、主に我ら人間同士の戦いとなるわけである!!」 総員 『ざわっ……!!』 おお……なんとステキな。 そうかそうか、スッピーが言ってた “まだ俺達が見つけてない人対人の闘技場”ってのはそこのことか。 彰利 「ちなみにさ。その闘技場って普段は使われとるの?」 藍田 「ああ。魔導で動かされた魔具が試合を取り仕切ってるらしいから、     半永久的に、人さえ居ればいつでも始められるらしい。     それでも元素の精霊が試合を取り仕切るのは100年に一度のみ。     ……ちなみにこの精霊、宝玉くれたり戦えたりはしないらしいから」 彰利 「ぬう……そりゃつまらんな」 藍田 「でも無の精霊とは戦えるらしいぞ?     新情報だけどさ、この世界のどっかに無の精霊が居るらしい。     もちろんスピリットオブノートの姿をしてるわけじゃないらしいけど」 彰利 「そうなんか」 そいつぁあ楽しみだ。 強くなったオイラの力、その無の精霊とやらで試してやりたい。 ……と言っても、悠介を倒した時に上がったレベルはたった1レベルだったわけだけど。 現在421レベル。 はてさて……これからどうなってゆくのやら。 【ケース302:中井出博光/愛・宇宙博】 ゴォオオオオオッ!!! 中井出「おぅわあわわわほわぎゃああああああっ!!!!!」 リュックが取れない!妙にジャストフィットしてやがるこのリュック! 呪われてんじゃねぇだろうなこれ!! 中井出「ああもう構わん!STRマックス!引き裂きリュック!!」 切り裂きジャックを唱えるかのように強引にリュックを引き裂く!! そうしてからジークフリードをドゴォンッ!! 中井出「ほぐあっ!?」 ゼット「ぐっ!?」 ───さて、ここでよい子のみんなやよい子じゃない人にも質問だ。 たとえばこのまま落下してれば死んでただろうけど…… よりにもよって空中でクッションになってくれた相手が、 空を飛んでいた空界を恐怖に陥れた伝説の黒竜王だったらキミはどうする? 俺なら…… ゼット「貴様……!この俺の上に落ちてくるとはいい度胸だ……!」 中井出「キャーーーーーッ!!!!」 とりあえず叫ぶかな。 だって睨みで人殺せそうなくらいの眼光で見てくるんだよ?怖いって。 それでもしっかりと黒竜王に掴まって落下を防いだ自分を褒め称えてやりたい。 ゼット「離せ貴様……殺されたいか」 中井出「死にたくねぇえーーーーーっ!!!」 ギシリ、と頭に物凄い握力の手が置かれた。 おお、この頭蓋を破壊せんばかりの握力、まさに国宝級である。 離せば死んで離さなくても死ぬなんてどうかしてるんじゃないかこの現状! 選択肢無しッスか!そこまで無情ッスか!! 中井出「って、あ、あれ?みさおちゃんは?」 ゼット「……呪いをかけられたからそれを解くものを探しているところだ!」 中井出「《メキメキメキメキ》しぎゃああーーーーーーーーーーーっ!!!!」 魔のショーグンクロ〜が俺の頭蓋に減り込むように圧っせられる! 痛い!これ痛い!いたたたた!!あ、ああっ!出るっ!なにか出ちゃう! 生きるために大切ななにかがちゅるりと出ちゃいそう! く、くおお負けるか! 理解するがいい黒竜王!このゲームの世界ではレベルこそが正義!! 中井出「めめめ目覚めろジークフリード!マグニファイ!!」 ゴシャァッキィイインッ!!! ゼット「ぬっ!?」 俺の体に力が篭る! その全力を以ってショーグンクロ〜を外し、黒竜王の体を引っ固める!! 中井出「不死鳥落とし(フェニックスドライバー)”!!!!」 ゼット「ぬぐっ!?くあっ!馬鹿な……!身動きが取れん!!」 中井出「見よ!これぞ力!これぞ漢意気!     伝説の黒竜王にフェニックスドライバーを仕掛ける者など全世界初と言えよう!」 ゼット「ぐああああ!!離せ!離せぇえええっ!!!」 ───恐らく。 黒竜王が本気になれば逃れることくらい出来たのだろう。 しかし投げ技なんぞ喰らったことがないであろう黒竜王は突然のことに驚き、 黒竜化さえすることもなくやがてひとつの村へと落下した。 もちろん俺も一緒にプリンスオブペルシャの若者のように潰れたわけだが。 ……さて。 最寄の町の教会で目を覚ました俺は、 同じくそこで復活した黒竜王と改めて対面。 みさおちゃんを救うべく飛翔していた彼の逆鱗に触れ、 黒竜と化した彼にボコボコにされた。 Next Menu back