───冒険の書103/珍妙パーティー結成絵巻───
【ケース303:中井出博光/ヒロミチュード・プラネットバーストエディション】 復活の時、なにやら神父に話し掛けて解呪方法などを聞きだそうとしていた黒竜王は、 機嫌を怒りから激怒に変えて、神父と血で血を洗う激闘を繰り広げていた。 俺はといえば、 その反作用で押し出されたトランスペアランス色をバトンタッチされたかのような、 説教も聞かず相手にもされずの帰る場所をなくした子供の如く鬱々真っ盛りだ。 俺の後方の長椅子では?最初からこの場に残されていたのであろうみさおちゃんが、 呪いを受けて体を重そうに庇っていた。 残念だが解呪アイテムなんぞに興味の無い俺はそんなアイテムは持っておらず、 さらに言えば猛者たちからもはぐれてしまったばかりにどうしていいかもよく解らん状態。 忌々しい。ああ忌々しい、忌々しい。 などと言ってても始まらないのは確かであり。 巨大な教会の扉をゴギギと開けて中に入ってきた新たな参拝者を眺めては小さく息を吐く。 ───さて。 その参拝者がさっきまで死闘を繰り広げていたボスだったら、キミならどうするだろう。 しかも顔を合わせるなり、今まで見たこともないような笑みで『よっ』とか言うのだ。 俺ならとりあえず─── 中井出「うぬらそこでなにやってんだ」 天堂くんの真似かなぁ。 今や知っている人の方が少ないかもしれんが。 彼もあんな事件を巻き起こさなけりゃ人気漫画家として連載続けられてただろうに。 悠介 「なにって。参拝だが」 中井出「ウソだ!日本好きのお前がこんなところに好き好んでくるわけないだろ!」 悠介 「なっ……なんだその彰利みたいな理屈は!そりゃ確かに俺は日本が好きだ!     だが他の国の伝統や在り方を否定したいとまでは思わんぞ!     むしろ俺は古くから続く伝統のものが好きなんだ!」 中井出「中でも日本のものが好きと」 悠介 「日本人なんだから当然だろ?」 中井出「現代における流行をどう思いますか?」 悠介 「まず何故に丁寧な言葉なのかとツッコミたいが、ひとまず流そう。     流行は嫌いだ。自分が好きで手に入れたものを、     他のやつらも買っていってるからって流行の一言で括られるのが好きじゃない。     自分が好きで買ったものを、     他のやつらが“これ流行ってるんだぜ”とか言って買っていく姿は無様の一言。     買い物に他人の目など関係ない!自分が好きだと思ったものを買っていけ!     流行に流されて買い物!?そんなもの金の無駄だろうが!!」 中井出「おおっ!?落ち着け晦!声がどんどん大きくなっていってるぞ!?」 悠介 「落ち着け!?俺は落ち着いてるさ!!」 中井出「うーひゃー!!酔っ払いが酔ってないって言うくらい信憑性がねぇーーーっ!!」 ルナ 「エロっちってば愚かね。悠介に日本のことを訪ねてすぐに終わるわけないのに」 中井出「いやそりゃそうなんだけど───エロっち!?」 何気ない一言が胸を抉る時ってあるよね。 しかしこれは今までの何気ない一言の中でも相当なインパクトが……!! 中井出「あ、あの……俺の名前、中井出博光なんだけど……。     せめて“なかっち”か“ひろっち”に……」 ルナ 「エロっち」 中井出「あ、あのね?俺もうエロマニアから足を洗って……」 ルナ 「手を洗わなきゃダメ。だからエロっち」 中井出「こんなとこである日の猫が閃くような豆知識ひけらかしても誰にも解らねぇよ!」 しかもエロっちに確定してしまったらしい。 晦は晦で旧時代の日本の素晴らしさを延々と説教するわ、 空き缶さんは俺のことをエロっちとして認識してしまうわ……。 ああ、彰利よ……俺、お前がホモっちって呼ばれ続けてる悲しみがかなり理解できたよ。 中井出「ちょちょちょちょーーーっと待て晦!実はだな、みさおちゃんが大変なことに!」 悠介 「ム。みさおがどうしたって?」 中井出「(ハフゥ、止まってくれた……)     実はさ、黒竜王と旅してたら呪いをかけられたらしくてな」 悠介 「ゼットと?へえ……」 晦が神父と激闘を繰り広げている黒竜王を見る。 そしてまた無茶な戦いを……と呟く。 だよな、いくら黒竜王でもあの神父にゃ勝てんと思う。 中井出「あの神父の強さってどうなってんだろうな」 悠介 「うん?ああ、そりゃ強いさ。相手は精霊だ」 中井出「ぶほぉ!?精……えぇっ!?神父が!?」 悠介 「ちなみにどの町に居る神父も同一人物だ。     人が死ぬ度に転移して、そこで説教してる」 中井出「………………」 同一人物か……なるほど? そういや死んだわけでもないときに教会を訪ねたら、神父が居なかったことがあったっけ。 これがその答えってか。 中井出「けどな。ナギーもシードも相手が精霊だって解らなかったみたいだが」 悠介 「あれで一応無の精霊なんだよ。精霊の気配を無にすることくらい簡単だ」 ……やられた。 なにがやられたって、いっちゃん最初から散々こちらをボコボコにして、 いらん説教を延々と繰り返してきてた相手がまさか精霊だったとは。 中井出「相手が精霊だって知ったのはいつだ?」 悠介 「ん……ラインゲート強化のために精霊探しの旅をしてた時だな。     あらかたの精霊と力を結んだあと、神父に話し掛けたらイベントが発生した」 中井出「それで解ったわけか」 悠介 「ん。しっかし、ゼットも随分粘るな、あの神父相手に」 中井出「力だけは超一級と聞く。そういや俺、驚いたことがひとつあるんだ。     モンスターユニオンってものを浮上させて、     映像まで出してモンスターキングを演出したってのにさ、     あの黒竜王がお前に挑んでこないなんて」 悠介 「最初っから解ってたんだろうさ、     あの騒動が彰利の精神を成長させるためのものだって。     俺も一番の心配がゼットが真っ先に素っ飛んでくることだったんだけどな。     それについて言うなら、ある意味助かった」 中井出「なるほど。あ、死んだ」 悠介 「……人が散々苦労してようやく打倒出来た相手を、     ああも簡単に倒されると物凄く複雑な気分になるもんだな」 中井出「そりゃしょうがないだろ、ゲームの中の話だ」 そうじゃなけりゃそもそも俺達凡人がこうまで強くなることは出来なかった。 結果的には俺も、道連れとはいえ黒竜王を倒した者の中に入るわけだし。 それを考えりゃ、現実とごっちゃにするのはあまりに虚しいものだろう。 とか考えていると、晦が震えるみさおちゃんに歩み寄って手を翳した。 それから、 悠介 「解呪のハトが出ます。弾けろ」 と言って、久しぶりに指で作った輪からハトを創造。 輪から創造なんて、映像でしか見たことがない気もする。 ある意味レアである。 やがて創造されたハトがみさおちゃんの肩に乗り、 その側頭部を啄木鳥(キツツキ)
のようにスコーン!と突くと、 みさお「痛ぁっ!?あ、あれ?」 震えているだけだったみさおちゃんは回復! どういう原理だこりゃあとかツッコミを入れる前に、 そのハトの動きのステキさに惚れ込んでいた。 何故って、回復した今でもみさおちゃんの頭を突きまくっているからだ。 みさお「いたっ!いたたっ!なななんですかこのハトは!!」 悠介 「呪いを解くハトだが」 みさお「はっ……と、父さま!!《ビッシィ!!》」 ハトに啄木鳥突きをされまくって狼狽えていたみさおちゃんだったが、 目の前に晦が居ると知るや、姿勢を正して顔をキリっとさせた。 おお物凄い変わり身だ。側頭部が未だに突かれてなければ余計に見事だったことだろう。 と、俺がそんなことを考えている時には晦は既に歩き出し、 黒竜王の近くに辿り着く前に竜人状態で今が暴れ頃な黒竜王に話し掛けていた。 悠介 「おーいゼットー」 ゼット『ぬっ……晦悠介!?貴様いつからそこに!!』 悠介 「フルネームはやめろっての。みさおの呪いは解いたから、あまり無茶するな」 ゼット『なに……?セシル、大丈夫なのか?』 みさお「あ、うん。呪いのほうはもう大丈夫だけど……」 このハトがね、と、突き続ける鳩をムンズと掴み、肩から剥がすと溜め息を吐いた。 このため息の吐きっぷりは妙に似ている晦とみさおちゃんである。 本当の家族じゃないのがおかしいくらいの巻き込まれっぷりなのにな。 中井出「思えば、晦もいろんな物事に巻き込まれたりしなけりゃ、     竜になったりも強くなったりもしなかったんだよな」 悠介 「言うな……物事に巻き込まれてた頃のことは出来るだけ忘れたい……」 中井出「忘れようにも忘れられるもんじゃないだろ。特にイメージを力とする創造者は」 悠介 「………」 晦が頭を抱えて落ち込みだした。 その様はさっきまでのボス然としたものではなく、 洗脳に苦しみ頭を抱えるクロマティ高校の前田くんのようだった。 やっぱ晦はこうでなくちゃな。 バトルの時の引き締まった顔も強さも、男としては憧れる部分もあるが─── 結局のところ、俺と晦は同級なのだ。 普通で言えば同い年の相手に贈るのは、そりゃあ尊敬の念もあるが、 まず最初に贈るのは仲間意識のようなもの。 その仲間意識の中の晦は英雄でも皇竜王でも精霊王でも空界王でもなく、 こうして細かいことで頭を抱えて前田くんチックになる、 万能巻き込まれ型モミアゲセクシー生命体なのである。 悠介 「なにやら嫌な空気を感じ取ったんだが……     とりあえずお前が動かなくなるまで殴っていいか?」 中井出「どういう察知能力してんだよお前!!ダ、ダメダメ!ダメだよ!?」 なんにせよ、以前よりも表情豊かなことは変わりない。 そこは喜ぶべきところなんだろう、原中としても仲間としても。 戦いの中ではわざと陰湿な攻撃をしていた感も見受けられたが、 どうせ何かに巻き込まないためとかで遠ざけようとでもしてるんだろう。 こいつは感情が乏しいくせに、そういった思いやりだけは奇妙にこなすヤツだから、 周りが理解してやらないとそれこそ一瞬で孤独を背負うモミアゲに成り下がるだろう。 だから、どんなことが起きようが嫌ったりする気などサラサラ無い。 それに、今さら嫌うのもな。 嫌うんだったら、 晦や彰利の正体を知ったロディエル事件の時にとっくに嫌ってるってなもんだろう。 でも俺達はそれを受け入れたんだ、今さら嫌う道理もない。 それにどうなろうが、こっちの世界の方が楽しいってことを知っちまったのだ。 今さらどうにかなるわけでもない。 中井出「さて、ところで晦一等兵。貴様何故こんな場所に?     そしてモンスターユニオンがブッ壊れた今、貴様はどんな生命体なのだ?」 悠介 「どこの勢力かは悪いが言えん。     で、どうしてこんな場所に居るのかって質問だが……     ひとつの村にフェニックスドライバーで落ちていくふたりを見たから、     じゃあ理由にならないか?むしろ面白そうだったからだが」 中井出「最高の理由だ」 もう文句無しだ。 我ら原中、面白そうならば誰より先に駆けつける修羅。 人が死ぬような出来事ではもちろん笑えんし、救出活動の邪魔もしない。 事件などには面白さなど願ってはならんからである。 誰かの不幸が誰かの幸せなんて、そんなことは笑い話の中だけで十分である。 実際、ばーさんが俺を庇って死んじまった時、俺は泣くことしか出来なかったのだ。 あんな苦しい嗚咽と感情が、誰かの幸せになるだなんて考えられないし寒気がする。 悠介 「それで?誰が当たり引いた?」 中井出「当たりって?」 悠介 「パラシュートの中からリュックサック当てたヤツ」 中井出「やっ……やっぱ貴様が犯人か晦一等兵!!     貴様の所為でこの提督博光!死ぬ思いだったんだぞ!むしろ死んだ!!」 悠介 「……か。じゃなきゃ誰よりも先に落っこちたりなんかしないよな。     それで気になったんだが───なんだってゼットと一緒に落ちてきたんだ?」 中井出「空中で彼が俺のクッションになってくれたのが出会いのきっかけだった。     そんな衝撃的な出会い方をした俺は彼の手を取り、     恩返しに極楽浄土にご案内して一緒にミンチになったわけだ」 悠介 「すまん、訳が解らん」 即答だった。 中井出「落下した俺は見事に黒竜王の上に落ちて急死に一生。     しかし黒竜王は俺なんぞに構ってる暇無しと、     しがみついた俺にアイアンクローをかけてきたわけだ。     で、そんな五無体な行動に怒りを燃やした俺はマグニファイを発動。     STRをマックスにして、動揺して力を発揮できなかった彼を     フェニックスドライバーで教会送りにしたわけだ。     もちろんその後、黒竜と化した彼にボコボコにコロがされたが」 悠介 「お前って本当にその一瞬さえ楽しければいいんだな」 当たり前だ。 見縊らないでもらいたい。 悠介 「事情を説明して無事に降りるとか、ゼットから離れてジークフリードを使うとか、     そういうことは考えられなかったのか?」 中井出「あ」 悠介 「まさか……考えもつかなかったとか……言わないよな?」 中井出「いや……その……事情を説明して降りるってのはともかくとして、     ジークフリードは確かに使えた……。     しかし悶着を始めたあたりから相手の意表をつくことしか考えられなくなって、     さらに飛翼にしがみついてたこともあって落下してたから……     落下してたら頭に浮かんだのがフェニックスドライバーだけで……」 悠介 「……一度、お前の脳内意識を鑑定してみたいもんだな……。     自分が助かるより敵にネタ技かける方を優先するなんて、     提督だからってお前、いくらなんでも原中に染まりすぎだと思うぞ?」 中井出「正直僕も無茶が過ぎたなぁと思います。でも後悔はしてません」 悠介 「どうしてそこで丁寧語なんだ?」 世界不思議発見。 そんなものは彰利との付き合いが長い晦の方が解っていそうなもんだが。 そう、理由などないのだ。 中井出「さて話を根本的なものへ戻そうか。晦一等兵、貴様の次の行動は?」 悠介 「……天!!《ビッシィイ!!》……ってオイ、何故泣く」 中井出「いやっ……いやっ…………!晦も成長したもんだなぁって……!」 俺は貴様がそこまで思いっきりな性格になってくれて嬉しい。 いつも仏頂面で物事にあまり関心を持たなかった晦一等兵が、 よもや漫画の真似を誰に言われるでもなくやってくれるとは……! 中井出「で、天ってあれか?100年に一度の闘技場の」 悠介 「ああ、それだ。     ボ・タのモンスターに聞いたんだけどな、その大会に出るつもりだ」 中井出「ほほう。では我らは敵同士となるわけか」 みさお「それならわたしたちも参加するつもりでしたよ?」 悠介 「ありゃ、そうなのか?」 みさお「はい。ゼットくんが“これならば弦月彰利のことなどお構いなしだろう”って、     父さまと戦うことだけを目的にエントリーする気満々で」 ゼット「そういうことだ。晦悠介……今度こそ俺が貴様を潰す時だ」 悠介 「それはべつにいいんだが……お前、今のレベルは?」 ゼット「600だが?」 悠介 「ぶはっ!?」 中井出「ろろろ600!?     どういうカッパーフィールドが展開されりゃあそんなレベルに!?」 ゼット「どうということはない。竜族とだけ戦い続けた結果だ。     そこいらのクズどもの経験値など、竜族に比べればそれこそクズだ」 みさお「リヴァイヴァルドラゴンという竜族が居たんです。     その竜族は自らが死ぬと     同じ種族の竜に自分の力を託して卵になるという珍しい竜族で、     当然力を託された竜はその前に倒した竜よりも経験値が倍近く高く、     さらに力を託された竜はその倍、といった感じでして……     それを何度も何度も倒した結果が……まあその、このレベルです」 みさおちゃんがナビネックレスをいじくってレベルを見せてくれた。 そこには574の数字が。 OH神よ、これはどんな夏のマボロシですか? いや〜〜〜ぁぁあ……よくフェニックスドライバーが通用したもんだ。 やっぱステータス二倍のSTRマックスが有効打となったのか。 中井出「けどさ、大丈夫か?空にばっかり気ィ取られてると、     下の方のイベントが随分とおろそかになるんじゃ───」 みさお「そのことなんですけどね。トリスタンを名乗る不死軍隊が村や町を襲って、     次々と領土を広めていってるんです。     一日やそこらで町の一つ二つに攻め込むなんて無茶だと思うかもしれませんが、     なにせ相手は不死ですから、疲れることをまるで知らないんです。     恐らく、今もどこかに攻め入っているのでは、と」 悠介 「……もしかしてお前にかけられた呪いは───」 みさお「……はい。ジュノーンにつけられたものです。     あまりの破壊行動に我慢出来なくなって止めに入ったのですが……」 悠介 「勝てなかった、か」 みさお「〜〜〜……はい。強いです、とても……」 うおう。 まさか刀の巫女である神魔代表のみさおちゃんでも勝てないとは。 550超えてるんだよな、レベル。 それでも勝てないなんて、ちと問題だぞこれは。 悠介 「ゼットは?戦ってみたのか?」 ゼット「忌々しいことだがな、勝てなかった。どれだけ斬りつけようが怯みもしない。     半身が粉々になろうが再生し、向かってくる。     あれはな、晦悠介。戦いになるような相手ではない。     まともに戦うだけ無駄だ、相手にするな」 悠介 「………」 中井出「………」 驚いた。 黒竜王に戦闘放棄宣言させるなんて。 晦も同じ気持ちだったのか、呆然としたまま黒竜王を見ていた。 中井出「……んじゃ、どうするか」 悠介 「大会は明日だったよな?だったら……中井出、ゼット、みさお、ルナ、いいか?」 中井出「おう」 ゼット「……フン、確かにな。戦うだけ無駄、なんて言葉は言いすぎだと自身で思った」 みさお「破壊活動をこのままほうっておけませんしね」 ルナ 「うん、それじゃあこの即興パーティーで、     あの黒き死仮面をブチノメしちゃうってことで」 声  「ちょぉっと待ったぁーーーーっ!!!」 広い教会に、聞き覚えのある声が轟く。 開けっ放しだった教会のドアを開け、やがて姿を見せたそいつは─── 彰利 「やあ」 ルナ 「ホモっち?」 彰利 「あのねルナっち……本気でそろそろホモっちやめない?」 今ならば僕とかなりの共感が持てそうな、原中が誇る伝説の黒野郎、弦月彰利だった!! 中井出「彰利貴様……他の者達はどうした!?」 彰利 「とっとと浮遊島に向かったけど。     闘技場がある場所で、時が来るまで休んでるって。     で、俺は悠介を探しにこんな田舎町くんだりまで来たワケよ」 みさお「へえ……そうですか。ところで教会の前にある家の煙突に引っかかったままの、     あのパラシュートはなんなんでしょうかね」 彰利 「えっ……し、知らんよ?     別に俺だけ風に流されてあんなところに引っかかったなんて、そげなこと」 ウソが苦手なヤツだった。 むしろ自分でバラしてるようなもんか? 彰利 「と、とにかく!行くよッ!俺も行くッ!行くんだよォーーーーッ!!!!」 悠介 「べつにナランチャの真似せんでも来るヤツを拒んだりはしないっての。     なんだってそんなに行きたがってるんだよ」 彰利 「だってジュノーンが女かどうか気になるじゃん?     設定としては女じゃないってことになってるらしいけどさ。     まーさ、どうでもいいから俺を連れてけコノヤロー」 中井出「俺はOKだけど。彰利なら慢心しまけりゃ貴重な戦力だし」 彰利 「きっちり慢心についてツッコミ入れんのね……解っておりますよもう。     もう慢心はせん!……多分。そう信じたいね、ほんともう。     敵を追い詰めるとついつい調子に乗っちまうんだよね、俺」 悠介 「そーいうのはちゃんと勝ってからにしろって何度も言ってるのにな。     そしたらちゃんと調子に乗った言葉でもなんでも聞いてやるってのに」 彰利 「なに!?マジかテメー!」 中井出「いいのか?それって」 悠介 「考えてもみろ。こいつが慢心しない誠実にして堅実な努力家だったらどうだ?」 どうって…… 真・彰利「今回は僕の勝ちですね。いや、勝負は時の運とも言いますから。      また勝負をしましょう。その時はお互いベストな状態で。      これも日々の修行の成果です。努力をすれば叶わないことなどないのです。      そう……努力こそが人の道!」(イメージ映像) どうって…… 中井出「彰利……じゃねぇなぁ」 悠介 「だろ?」 彰利 「あの……キミらいったいどんな想像したん?」 中井出「あのな、お前がサワヤカな顔してこう、微笑んでるんだ。     倒れた敵に手を差し伸べる感じで」 彰利 「む……こんな感じかね?《ク……クワッ!!》」 悠介 「怖ぇえよ!!お前そういうのは笑みじゃなくて睨みっていうんだ!!     なんだよその鮫が口開いたような顔は!」 彰利 「む、むう……ではこんな感じか!《カッ!!》」 中井出「極上ガイアスマイルじゃねぇか!!     お前ほんと普通に笑うことが出来ねぇやつだよな!」 彰利 「な、なにおう!?いくら俺だってそこの黒竜王よりゃ笑えるぜ!?」 ゼット「む───それは挑戦と受け取ったぞ弦月彰利。     なにを言うかと思えばそんな低レベルな争いか。     この俺に微笑ごときが出来ないと思ったか?」 彰利 「ぐっ……!」 ゼット「教えてやる、笑みというものを。こうだ!《……ニヤリ》」 ゾワワァ!! 総員 『怖ぇえーーーーーーっ!!!!』 ゼット「そうだ。時に笑みとは敵を恐怖させる。     これくらいの笑みも出来なければ、強者としては底のまた底だ」 彰利 「笑みの意味違うって解ってる!?ねぇ解ってる!?」 ゼット「笑みは愚民愚集を怯えさせるための武器だろう。他になんの用途がある」 彰利 「うーわー、このタコ脳内にまで鱗生えてんじゃねぇだろうなこのタコ」 ゼット「おい待て貴様今なんて言った」 中井出(二回“このタコ”って言った……) 悠介 (ああ……二回言ったな……) みさお「あのねゼットくん、人間だった頃のこと思い出してみて。     その頃、人を怯えさせるためなんかに笑ってた?」 ゼット「そんな昔のことは忘れたな。俺の笑みの意味は全て、人間どもに奪われた。     その時から俺の中では笑みは武器にしかならなくなっていた。     それを今さら、何故思い出すことが出来るという」 みさお「ゼットくん……」 彰利 「そりゃ記憶があるからでは?」 中井出「おお、根本的なツッコミ。様々なロマンチストには嫌われるが、     様々な通常人にはなるほどと頷いてもらえる答えだな」 悠介 「ロマンチストにも通常人にも謝れお前ら」 そうはいかん。 これは我らの感性からすれば敵対する答えだ。 中井出「まあいいや、どちらにしても笑みを忘れた野郎にゃ笑みを思い出させるまで。     では黒竜王よ。えーと、セシル《シュゴゥンッ!》ヒィッ!?」 ゼット「……その名を口にしていいのは俺だけだ」 中井出「わ、解った、解ったからその物騒なデケェ斧しまって!     み、みさおちゃん!前世のみさおちゃんとの思い出を思い出してみて!ホラ!」 ゼット「………………」 中井出「ど、どうだ?こう、心が妙に暖かくなって、自然と笑みが───」 ゼット「……誰だ?貴様」 中井出「そっから説明しなきゃなんねぇのかよ!!     ええいしかし訊ねられれば答えるのが原ソウル!!     耳はかっぽじらなくていいからご清聴願います!     わぁーれこそは原沢南中学校提督!中井出博光であるーーーーっ!!!!」 ゼット「………………ああ、思い出したぞ。     垣間見た晦悠介の記憶の中、エロマニアと呼ばれていた男だ」 中井出「ボクハコノチキュウガダイスキデシタ……」 悠介 「だわわ待て待て!!予備動作無しに首吊ろうとするなばかっ!!」 彰利 「悠介ひっでぇ〜……記憶の中じゃそんな風に思ってたのか」 悠介 「ここぞとばかりに話を変な方向に持っていくなたわけ!!」 彰利 「たわっ……!!」 ルナ 「そーよそーよホモっちうっさい!」 彰利 「なんだとこの空き缶女!!」 ルナ 「あきっ……!!空き缶言うなぁああっ!!」 彰利 「ほっほ!?怒った!?怒ったかね!!ほほほそれみたことか!!     所詮誰しも気にしていることを言われれば《ベゴシャア!》ねぎぃいーーーっ!!     ななな殴ったァーーーッ!!     ルナっちが鎌で斬るんじゃなくて殴ったァーーーッ!!     や、やりやがったわねー!?オヤウカムイにも殴られたことないのにー!!」 悠介 「それを言うなら親にも、だが……まあ、なるほど。だからオヤウカムイか」 みさお「……結局こうなるんですよね……どうして騒がずにはいられないんでしょうか」 悠介 「原中だからだ!!」 みさお「父さま……お願いですから父さまだけはその台詞は言わないでください……」 悠介 「断固拒否する」 みさお「うう……」 みさおちゃんが苦労人な顔でハフゥと溜め息を吐いていた。 その横では俺が教会に吊ったロープで首を絞め、あの世へ旅立とうと─── ああっ!やっぱダメ!絞殺刑ってものすごくキツい!! 頭に血が残るもんだから絶命の瞬間まで意識が残る!! やっぱり降りる!降り─── 彰利 「ゆ〜うこっときっかなぁいわ〜るいっこはっ♪《ひらりっ》     よなっかむっかえぇ〜にくぅ〜るん〜だよっ♪」 中井出「ゴゲッ!?」 なんという悪夢! 彰利一等兵が踏み台にしていた長椅子を、 “ゲゲゲの鬼野郎”の歌とともにどかしたのである!! お蔭で俺は降りることが出来なくなり─── 彰利 「さあ……頑張れオヤジ」 中井出「ゥんがァァアアアーーーーーーッ!!!!」 首が絞まる!喉に舌が絡まるようになって圧迫され、息が出来ん!! おまけに顔の内側がジンジンと言い表せないような感覚に包まれ、 思考はまともに働いてくれやしないのに意識だけは遠退いてくれない!! ───そ、そうだジークフリード!あれでロープを切って─── 彰利 「ハーイよく見ろキサマラー!今からワタシがカッパーフィールド見せるネー!!」 悠介 「どうでもいいがそのカッパーフィールドってなんなんだ」 彰利 「オーウそんなことも解らねぇのかこの山ザル!!     カッパーフィールドってのはマジシャンヨー!!     つまりカッパーフィールドって言ったらマジックって覚えるのが利口な生き方!」 悠介 「山ザル……」 彰利 「いいからゴロウジロだタコ!ハーイワタシの手に今布が置いてありますネー!?     これに手を乗せてワーンヌゥートリィー唱えるとアーラ不思議!!」 スカッ…… 中井出「ウゴゲッ!?」 背に回した手に手応えが無い……ジークフリードの柄が無い!? 彰利 「アラ不思議ー!世にも美しい武器がワタシの手元にー!」 中井出「ゴゲガギィイ!ゲベェエエーーーーーッ!!!」 彰利 「アー!?ナーニ言ってっかまァるで解んねぇよこのオクトパスー!!     キサマそこで死ぬヨロシ!だからこの武器ワタシノモノー!!」 中井出「ゴギィッ!!」 彰利 「《ガバシッ!》ウヒョオ!?ば、馬鹿な!三角絞め!?     キサマいったい何処にこんな力が」 中井出「ンングググ……ンガァアアーーーーーーッ!!!」 彰利 「《ベゴキャア!》ウギャアアーーーーーーリ!!!」 死ぬ直前、彰利の首を足で引っ掴み、足の力と腕の力の渾身を以って首をヘシ折る。 ジョースターさん……受け取ってください……最後の……精一杯の……(にえ)です……。 そんなことを思いながら、俺はやがて口から血を吐きつつ死亡した。 首を絞められてるのに口から血を吐いて死ぬ奇跡を、 よもや自分でやる時が来るとは思わなかった。 ああ……このパーティー、物凄く不安要素満載だ。 俺の胃、パーティー解散のその時まで保つかなぁ。 頑張ってくれよ、マイストマック……。 むしろ胃を痛めるのは晦の役だと思うのであっちに頑張ってもらおう。 うん、それがいい。 Next Menu back