───冒険の書104/弦月彰利の慢心───
【ケース304:晦悠介/google検索=『ダルシム Flash curry』を見よう】 現実世界も中々に暑かったが、 ゲームの中にまでその暑さが浸透してきているんじゃないかという暑さの中、 強い日差しに当てられたまま、俺達は村と呼ぶには妙に広い村を歩いていた。 ハッキリ言えば普通では考えられないメンバーがここに揃い、 よもやパーティーになるなどと誰が予想できただろう。 中井出「シーラーカンスはむっかっしぃ〜♪」 彰利 「シーラーカンスはむっかっしぃ〜♪」 中井出「だ〜いがっくきょ〜ぉじゅ〜にな〜りたっかぁ〜ったぁ〜♪」 彰利 「ででーんでーんでーんでーげでーでーん♪」 中井出「人っにすっがたっを見っせらっれぬっ!     けっものっの〜よぉっなそ〜のか〜らだっ!」 彰利 「早く人間になりたぁーーーーい!!」 中井出「くっらっいっさぁ〜っだめ〜をっ、ふ〜きと〜ば〜せ〜♪」 彰利 「ベルムス!」 中井出「ベルメールさん!!」 彰利 「ベン=ムーア!!」 中井出「よーうかーいにーん〜げん!!」 彰利 「じゃじゃーーーん!!」 悠介 「いつからベルムスとベルメールさんとベン=ムーアは     妖怪人間の仲間入りを果たしたんだ?」 中井出「いつって……核弾道に出会ってから?」 彰利 「思い出すなぁ……ふたりで行った、キノコ狩り」 中井出「シラタキシメジ、エノキにシイタケ」 悠介 「………」 みさお「父さま、まともに相手をしたら疲れるだけですから」 会話になってない時点以前にそんなことは解っているのだが。 はぁ……結局溜め息が口をつくのは俺の道には憑き者なのか……? 悠介 「で、その核弾道ってのはなんなんだ?」 彰利 「ダンドー」 中井出「サンデーコミックスだな。     ゴルフ漫画で、愛球のニコボールとともに風を操るゴルファー小僧だ」 彰利 「知ってっかぁニコボールゥ!」 中井出「知らん」 彰利 「この問答だけで第一話が最終話になりそうな漫画じゃないかと」 悠介 「ちょっと待て、あれの最初は野球じゃなかったか?」 彰利 「む、そういえば。じゃあゴルフ編が第一話で終わりそうな問答?」 中井出「事実的にはもう終わってるんだが。     ちなみにこのダンドー、アニメ化もしていたんだが……気づいたら終わっていた」 彰利 「あー、そういやあったね。     予備動作無しにキャラが巨人化するもんだからビビったよ」 中井出「あー、あったなぁそんな現象」 なんのこっちゃと頭を掻いた。 見てない者からしてみれば、とんだ無駄知識だ。 しかもこれから見る気が無いならなおさらだ。 どちらにしても声をかければ騒ぎに巻き込まれるのは目に見えている。 ルナと繋がり、感情が随分と浮上したことで、 そういった状況は逆に楽しいと思えるようにもなった俺だが─── 考えてもみてみろよ、今まで巻き込まれてろくな目にあったか? 結論はノーだ。誰がイエスと答えるか、このチェーンソーが天敵のラスボスめ。 などと思考の中でくだらない問答悶着騒動を繰り広げていると、 ふと道端(といっても家の横だが)に座り込んで、 ゴミめいたものを掻き集めて楽器にしたようなものを叩く少年たちを発見。 どうやら音楽のようなものを自分たちなりに作って遊んでいるらしい。 ……加えて言うが。 この時、馬鹿者ふたりの目が確かに輝いたのを俺は見逃すことが出来なかった。 見逃していたらどれだけ楽だったんだろうなと思う。 思ったところでどうせ逃げられはしなかったんだろうが。 中井出「おお少年!中々素晴らしい楽器だな!」 少年1「うぇ?な、なんだよおまえら……」 少年2「おれたちあそんでんだから、じゃますんなよぅ」 中井出「いやいやまあまあそんなこと言わずに、少しだけその楽器を貸してくれないか?」 少年1「えー?やだよ、じぶんでつくればいいじゃん」 中井出「───」 少年2「───!《ささっ》」 中井出「どうだ?」 少年2「しょーがねーなぁ。すこしだけだかんな」 中井出「ふふふ……子供は素直なのが一番さ」 悠介 「オイ。今お前なに渡した」 中井出「な、なにを人聞きの悪い!この博光が子供に賄賂を渡すとでも思うたか!!」 悠介 「渡してるんじゃねぇか!!」 中井出「当たり前だ!見縊るな!!」 どうしろっていうんだこいつは。 中井出「所詮今時の子供なんて金、金、金……。     金の重さも解らないうちはせいぜい幸せに浸っていればいい…………。     いつか気づく…………その重さに…………!     コココ……!その時こそ……後悔の時っ…………!」 悠介 「いや、コココってな」 どういう笑いなんだそれは。 そもそも気づけばツッコミ入れてる自分が悲しかった。 中井出「まあま、ちと聞いてけって。     コンガチックな音と、こっちの少年の楽器が織り成すステキな音楽……」 トンッ、トトントンッ、スットントン、トンッ、トトントンッ、スットントン♪ シャンシャカシャンシャンシャッシャッシャ、シャカシャンシャンシャン…… 悠介    「へえ……ゴミを合わせたものでも結構いい音が鳴───」 中井出   「日本を印度にィッ!!」 彰利&中井出『しィイてしまえェッ!!!』 悠介    「───へ?」 デゲデデゲデデデゲデデ〜〜〜ン♪ドォンッ!! 中井出「俺にカレーを食わせろォオオッ!!!」 彰利 「俺はいつでも!辛さにこだわぁあある〜ぜぇよっ!!」 でんでげんででん・でんでげんっ♪ 中井出「サァモッサッ!」 彰利 「俺にカレーを食わせろォオオッ!!!」 中井出「俺はいつでも!辛さにこだわぁあある〜ぜぇよっ!!」 でんでんっ、ででんっ♪ 彰利    「高円寺で見たぁああっ!ターバンの男よぉおおっ!!」 中井出   「俺をいざなえぇえっ!!        ガンヂスの流れぇにぃいいっ!!」 彰利    「far away tonight fever! natural high and trip!」 中井出   「far away tonight fever!!        natural high!!トビマス!トビマス!」 彰利    「日本を印度にィッ!!!」 中井出&彰利『しィイてしまえェッ!!!』 デンッ♪ 彰利 「俺にカレーを食わせろォッ!!」 中井出「燃える辛さが!俺をハイにするぜぇよ!!」 でんでげんででん・でんでげんっ♪ 彰利 「ラッシー!!」 中井出「俺にカレーを食わせろォッ!!」 彰利 「燃える辛さが!俺をハイにするぜぇよ!!」 でんでんっ、ででんっ♪ 中井出「吉祥寺で見たァ!!《バゴシャア!》ゲフォーーーリ!!」 彰利 「な、中井出ぇええーーーーーっ!!!!」 終わりそうになかったし近所迷惑だったので強硬手段で止めた。 まあそのつまり、殴ったわけだが。 彰利 「な、なにをするだァアアア貴様ァアアッ!!」(脱字にアラズ) 悠介 「街中で、しかも民家のすぐ横で絶叫紛いに歌うなたわけ。     少しは近所迷惑ってものを考えろ」 彰利 「いやまあそりゃそうだけどさ。なにも空飛ぶほど殴らんでも」 悠介 「半端な加減してたらやめないだろ?絶対」 ましてや口で言って聞くやつらじゃないのだ。 そんなだったら今日まで、聞き分けのないやつらに振り回されることもなかっただろう。 ゼット「貴様ら進む気はあるのか?足を止めるなら置いていくぞ」 彰利 「オッ?オッホッホ?なに?なにキミ。     もしかしてちゃんと我らンこと仲間だって思ってくれてんの?ホッホォォォォ」 ゼット「1秒以内に黙らなければ俺が黙らせる」 彰利 「え!?いや1びょ《バゴォンッ!!》ゴファーーーリ!!」 目にも留らぬ拳が彰利の頬を捉えた。 そりゃな、一秒で黙れっていったって、あの彰利が一秒で黙れるわけがない。 彰利 「ギャア首もげるかと思《ゴパァン!!》ウヴァーーッ!!」 ゼット「黙れ」 彰利 「ノー!痛くて黙れま《ドゴォン!!》セヴォリャァアーーーイ!!!!」 ゼット「黙れ」 彰利 「今ドゴォンって鳴った!つーか痛っ……!     いや!ほんと痛《ぱぐしゃあ!》イギャーーリ!!」 ゼット「黙れ」 彰利 「ギャアもう手がつけらんねぇーーーっ!!《バゴォ!》ウギョーーーリ!!     既に話ズレてるのにこの殴り続けるキラーマシンはなに考えてんですか!?     一度黙らせりゃ十分じゃ《ドボォ!》ハギョーーーリ!!     ま、ままま待ってぇ!たすけてぇえええ!!」 殴られれば殴られるほどやかましい彰利が、叫べば叫ぶほど殴られてゆく。 もはや単発では黙らないと踏んだのか、ゼットも容赦なく拳を重ねていっている。 止めようかとも考えたが、現実世界ならまだしもゲームだしな、と放置することに大決定。 死んで治らん馬鹿は死に続ければ治るだろうか。 いや、否だよな。 もしそれが合ってるなら、とっくの昔に彰利は真人間になってても良かっただろう。 悠介 (しかし、真人間の彰利ね) スーツをビシッとキメて、バサバサのツンツン頭じゃなくて完璧なオールバックにして、 営業スマイルを絶やさない姿を思い浮かべてみる。 …………オールバックってこともあってか、少しは想像できた。 じゃあそのオールバックが七三分けだったら?もしくはおかっぱだったら? 悠介 「ぼふしゅっ!!」 ルナ 「うひゃっ!?ゆ、ゆーすけ?どしたの?」 急に噴出した俺を、ルナが訝しげに覗いてくる。 しかし七三分けでインテリメガネをかけた彰利のなんと別人すぎることか。 そもそも彰利がツンツンさせてないのなんて、そうそう見たことがないな。 悠介 「ゼット、ちょっと待ってくれ」 ゼット「邪魔をするな。今この変人を黙らせているところだ」 悠介 「ちょっと待つだけでいいんだ。あとはどうしようが任せるから」 彰利 「ゲゲエ助けてくれないの!?」 悠介 「当たり前だ!見縊るな!」 彰利 「ウギャア是非とも見縊りてぇえーーーっ!!」 悠介 「おおよし好きなだけ見縊れ。どれだけそうしても助けない事実は不動のものだが」 彰利 「ギ、ギィイイーーーーーーッ!!!!」 ギリギリと歯軋りをして俺を見上げる、地面に腰を落とした状態の彰利。 殴られ続けた結果、どんどんと腰が落ちていった故の状態だろう。 ファイヤープロレスリングあたりでそんな技があったことを記憶している。 それはどうでもいいんだが。 ともあれ俺はカタカタと震える彰利の髪に触れ、それを降ろして───ミヨンッ! 悠介 「………」 彰利 「………」 降ろした髪が元に戻るように跳ねた。 これは…… 悠介 「………《ぐいっ》」 彰利 「………《みよんっ》」 降ろしても降ろしても元に戻る。 なんだこれは。 形状記憶毛髪なんぞ聞いたことがないんだが。 彰利 「えーとキミ、なにしたいの?     ───ハッ!?もしや俺の髪にモミアゲを植え付けようと!?」 悠介 「マキシマリベンジャーーーッ!!!」 彰利 「《ドゴォオン!!》はぶぉォオぉおおおおおおっ!!!!」 髪を押さえるために頭に置いたままだった手をそのまま地面に叩きつけた。 もちろん頭を押さえてるわけだから、 結果的には彰利の顔面が地面にめりこむことになったわけだが。 悠介 「なんだってお前はそういう考え方しか出来ないんだ!!     お前にとって俺といえばモミアゲか!?モミアゲだな!?モミアゲなんだな!?」 彰利 「ぬ、ぬう!当たり前だ!キミに他に特徴的な部分があるかね!?     あるのなら私にも解るように平明に答えてもらいたいものだね!!」 悠介 「ツンツン頭って呼ばれるだけのお前にモミアゲ扱いされる俺の気持ちが解るか!     喩えの段階で既に人ですらないんだぞ!?     だってのに人のことをモミアゲモミアゲとおのれおのれおのれぇえええっ!!!」 彰利 「ヒィイイ!!途中からなんだか俺とは関係ない方向に話が《ガンゴンガン!》     ぎええぇえええーーーーーーッ!!!!脳が揺れる脳が揺れる!!」 彰利の髪を掴んだままにガンゴンガンゴンと地面に叩きつける。 その感触で思い出したことは、 そういえばこいつの髪は黒で固定されてるんだったな、ということだった。 なるほど、形状記憶か。 悠介 「彰利!」 彰利 「ヒィ!な、なななにかね!?俺ゃ暴力にゃ屈しねぇぞ!?」 ルナ 「だったらヒィとか言わないほうがいいと思うけど」 彰利 「黙れ空き缶!ってそうだ!ホラホラ悠介!?     ルナっちも空き缶だから人ですらないよ!?」 ルナ 「……おいホモ」 彰利 「ホモ!?ノ、ノー!怖い怖い!ルナっち怖い!!     そして“っち”が付けられないだけで     物凄く心にズキンと来る呼ばれ方だと今さら認識!!     イ、イヤア封冠外さないで!!空き缶無しのルナっちなんてルナっちじゃねぇ!」 ルナ 「一度は封冠って言ったくせに空き缶っていい直すなぁああああっ!!!」 彰利 「ヒャッ……ヒャアアアーーーーーーーーーッ!!!!」 ザシュゴシュゾゴゾバザシュゾシュゾフィイイン!!! 彰利 「ギョアァアアアーーーーーーーーッ!!!!」 ……その日。 とある村の一角で、 デスモードになったルナが彰利をメッタメタに切り刻む事件が起こった。 カルミネルゼファー使用での攻撃だったためにそれこそボコボコで、 もちろん彰利もブラックオーダーを解放して対抗したのだが─── やはり月夜の草原の中のルナの爆発的身体能力向上状態には敵わなかったらしい。 あっさりと削られ、あえなく神父送りとなった。 ───……。 ……。 ややあって。 彰利 「あの……俺、自分が死ぬことになるまでの経緯がよく解ってないんだけど……」 戻ってきた彼は、とても悲しい目をしてそんなことを言った。 確かに不思議だ。 俺はただ彰利が髪を下ろしている姿を見てみたかっただけだというのに。 悠介 「俺はただ、お前に髪を黒から解放してみてくれと言いたかったんだが」 彰利 「あ、あ〜〜〜ん?髪を下ろせだと〜〜〜っ?」 中井出「あ、そりゃ見てみたいな。     なんでかお前、風呂に入っても水に落ちてもその髪型だし」 彰利 「………《だらだらだら……》」 みさお「あの……なんですか?その夥しい汗は」 気持ち悪いくらい汗が出てる。 まるで滝のようだ。 ルナ 「ほらホモっち、下ろしてみなさいって」 ゼット「早くしろ。でなければ先に進まない。     他の誰が道草食おうが構わんが、セシルは別だ、早くしろ」 彰利 「じ、実は……これは俺の生命維持装置で………………。     こ、ここここの髪型をやめると俺、ポックリさんでして……」 全員 『ウソつけ』 彰利 「うわひっでぇ!即答だよこのクソミソども!!死んでしまえカスどもが!!     お、俺にだってなぁ!それなりの事情が《がしがしがしぃ!》おわわちょっと!?     あの俺の話聞いてる!?俺の事情無視ですか!?イヤァたすけてぇえええ!!」 中井出「ふはは無駄無駄!!貴様は我らの中でも最低レベル!!     しかもレベル倍化したところで他のやつらの強さの強化なんぞに敵うこともなし!     このザコ!ザコが!ザコめ!ザコめ!!」 彰利 「ムキキー!真似すんなーーーっ!!!     大体てめぇ!悠介とゼットはまだしも、ルナっちとみさおには負ける気はねぇ!」 一喝。 のちにギラリと辺りを見渡すが─── 中井出「みさおちゃんの特種能力ってなに?ゲームの中ではやっぱ違うんでしょ?」 みさお「いえ、神魔月光刃ですけど。一時的に全能力が二倍になります」 中井出「うーわー、流石は刀の巫女。で……黒竜王は?」 ゼット「………」 みさお「ほら、ゼットくん」 ゼット「む……竜人化、黒竜化、魔竜化だ。それぞれ能力が2倍、3倍、4倍増える」 中井出「ゲエッ……!」 彰利 「4倍って……!」 ルナ 「でも魔竜化は効果時間30秒のラストアビリティでしょ?     そんなに怖がる必要はないと思うけど」 彰利 「馬鹿かねキミは!30秒ありゃ簡単にぶっコロがされるってもんでしょ!?     相手のステータス4倍!4倍なのよ!?     そもそも黒竜化の3倍だけでも十分厄介だよ!」 それはもちろんそうだだろう。 2倍でも厄介だってのに、そりゃないだろ。 などと思いつつも彰利を解放し、溜め息。 中井出「さて、そこまで驚愕したところで、と。ルナさんの能力は?」 ルナ 「封天眩き円月の極致。それ以前に力はあふれてるから、     発動させなくてもホモっちよりは強いわよ?」 彰利 「ゲッ……で、ででででたらめだっ!     俺はなにもやっちゃいない!!そいつはウソをついている!!」 悠介 「自分より弱いと思ってたヤツがその実強かったショックで暴走するな」 彰利 「う、うるせー!事細かに説明すんじゃねー!」 悠介 「こいつの場合、封冠取るだけでも力は増すからな。     オーダー解放しなけりゃパワーアップ出来ない貴様とは違うんだ……諦めろ」 彰利 「し、失礼な!!俺だってオーダー解放しなくたってなぁ!!……えーと……」 中井出「じゃ、先進むか」 彰利 「待ってぇえええっ!!俺が一番弱いなんてヤだぁあっ!!」 がっしぃ!!! 悠介 「だわっ……!?だ、だからっ!     なんだってお前はこういう時は絶対に俺にしがみついてくるんだっ!!」 彰利 「おなごにやったら妻達に殺されそうだからです!!」 悠介 「すぐそこにゼットも中井出も居るだろうが!そっちにしろそっちに!!」 彰利 「《ボゴォ!ドゴォ!》ぶべらはべら!!     だ、だだだってゼットじゃコロがされそうだし、     中井出の場合キン肉技で返されそうなんだもん!!     その点悠介なら安心!イッツ・ソー安心!!」 悠介 「殴られながら言う言葉か馬鹿者!!」 中井出「そもそもイッツソーってこういう時に使う言葉じゃない気もするが」 みさお「“そのようであります”でしたっけ」 中井出「…………英語知ってる昔生まれの子ってヘンな感じだ」 みさお「中井出さん、それは勘違いですよ。わたしはきちんと未来産まれです」 中井出「じゃあ言い直す。昔育ちの子が英語知ってるとヘンな感じだ」 みさお「これでも勉強はしていますから」 中井出とみさおが英語についての話をする中、ようやく離した彰利を眺めつつ溜め息。 毎度のことながら、なにがやりたいんだろうなぁこいつは。 彰利 「ヘ、ヘンッ?だったら試してやろうじゃねぇか。     ここに居る“鎌”を持ったヤツの卍解をさらに解放してやらぁ。     それで誰がナンバーワン能力者か解るってもんだろ?     みさおだってゼットだって悠介だって、能力解放しなきゃ普通なのは確かなんだ。     その上で、誰の解放が一番強いか確かめてみりゃいいのさ!」 悠介 「……あのな、彰利。思考が暴走気味だから解ってないと思うから言うけど、     どちらにしたってお前の鎌の能力はお前の力を二倍にしか───」 彰利 「ギャアそこうるせぇーーーっ!!やるって言ったらやるんだ!!     なんだかもう俺いろいろ力の事情が解ってきちゃったんだからいいでしょ!?     まずはみさお!前に出ませい!!」 みさお「は、はあ……」 言われるままに前に出るみさお。 思うんだが、みさおは彰利のことをそこまで嫌ってないんじゃないだろうか。 俺と聖の関係を思うに、あまりに態度が違いすぎる。 聖はとことん俺のこと嫌ってるからなぁ。 まあそれはそれで歓迎するけどさ。 彰利 「む。ム〜ムムムムムム……ヘイ悠介!!」 悠介 「はぁ……わぁったよ、足りない分を創造しろってんだろ?」 みさお「あ、あの……父さま?」 悠介 「いいかみさお。今からお前の鎌───     っていうより刀だな。を、もう一段階解放させる。     最初は力を持て余すだろうけど、それもすぐ慣れる。恐れず、力にしていけ」 みさお「け、けれど父さま。それは外から勝手に手に入る力であって、     わたしの力では───」 悠介 「悪い、事情が変わったんだ。アレコレ言ってられない。     だからお前には悪いけど、手に入れられる力は手に入れてもらう」 みさお「父───」 みさおの刀に触れ、力の解放を開始する。 ゲームの枷はとっくに越えている。 あとは相手の鎌の超越に必要な条件を満たしてやるだけだ。 それに必要な分析は彰利が死皇の力を以って済ませてある。 やがて───パギィンッ!! みさお『う……あっ……!?こ、これは……』 みさおの意思とは関係無く、月光の刃が解放される。 常に月明かりのような眩い光を放つその刀は、 今までの刀の姿からは考えられないほどの力を放っている。 彰利 「……強ぇえじゃねぇか《ボソリ》」 悠介 「……?今なにか言ったか?」 彰利 「んーん?なにも?」 ……今、物凄く妬ましそうに顔を歪めたように見えたんだが……。 彰利 「次!ゼットくん!!」 ゼット「……俺はそんなもの必要ない。俺は俺の力で強く《がばしぃっ!》ぬっ!?     き、貴様!晦悠介!なにを───!」 悠介 「ククク……!もはや貴様の意見など聞いちゃいねぇのよ……」 彰利 「そうそう……やるって言ったらやるのが我らのハート、原ソウル……!」 中井出「相手の都合なんぞ知ったこっちゃねぇのさ……キョホホホホ」 ゼット「ぬ、ぐっ……!は、離せ貴様ら!!」 彰利 「死皇解放!分析開始!───パワーパターン分析完了!!     頭の中までパワーでいっぱいです!     力側の死力を満たしてやりゃあ簡単に解放可能!!」 悠介 「よしきた!彰利のイメージを満たし、解放して流す!“創造せよ汝”(クリエイション)
!!」 ルナ 「暴れる相手は力ずくで押さえる!!」 中井出「マグニファイ!全力を以って黒竜王の動きを封殺する!!」 ゼット「や、やめろぉおおおおおおおっ!!!!」 マカァーーーーーン!! 彰利 「完……了…………!」 ゼットの鎌(斧)の解放が完了した。 するとゼットが装備していた稀赤斧ドラグネイルが ゼットの斧にメリメリと飲み込まれていき、やがて融合を果たす。 無意識下か、それとも彰利がそうしたのか。 おそらくこれは望月の“融合”が行使された故の合体だろう。 ゼット『きっ……貴様らぁあああ……!!』 彰利 「ホホ、どうかね?力がまるで津波のように押し寄せてくるでしょう?     さあ後悔なさい。キミは竜人になってからは強すぎたために、     危機というものにまるで慣れていない」 悠介 「だから中井出のフェニックスドライバーにも咄嗟に反応できず、     そのまま死亡なんて事態に陥った」 中井出「貴様がもっと危機感というものに慣れていれば、     こんな事態にもならなかっただろうよ……」 彰利 「故に強くなるがいい!その力はそのための枷!!     それを乗り越え自分のものに出来た時!キミはきっと今よりもっと強くなる!!」 ゼット『……言いたいことはそれだけか』 彰利 「……あれ?えーと」 ダダッ!! 彰利 「あ、あれ?悠介!?中井出!?なんで逃げるの!?どうして僕を置いてくの!?     ル、ルナっちあれ居ねぇ!!みさおやっぱ居ねぇ!!     ア、アゥワワワ……!なななんで毎度俺ばっかりこんな目にぃいいいっ!!!」 ゼット『丁度いい……!貴様の所為で覚醒したこの力……貴様自身で試してやる……!』 彰利 「は、はわわ……!!ギャワァーーーーーーーッ!!!!」 ……逃げ惑う俺達の遙か後方。 風が吹く村の中、炸裂音と彰利の絶叫だけが耳に届いた。 【ケース305:中井出博光/ガラニッパに殺虫の愛を】 ダタタタタタタタ…… 中井出「しかし、置いてきたのは良しとして、俺達はいつまで走ればいいんだ?」 悠介 「さあなあ───ハッ!!」 ザザァッ!! 熱い太陽の下、突如として晦が地面を滑るように立ち止まる。 おお、こんなもんアニメか漫画の中だけの表現だと思ってたのに。 きちんとスピードがノってれば成功するんだな。 で、問題はなにを見、何を思って晦が立ち止まったかなんだが…… 晦の視線の先には老人な村人が居た。 彼は綴じ目めいた顔のまま、静かにゆっくりと木を削り、木の仏を彫っていた。 で…… 悠介 「…………《パァアア……》」 それを、やすらぎの表情で眺める晦。 急に立ち止まったからなにかと思ったら……。 ルナ 「うー……未だに悠介のこの趣味だけは完全に理解できない……」 中井出「理解出来たら凄いだろこりゃ……」 気づけば一緒になって木を掘っている晦。 けどまあ考えてみれば、創る者にとってみれば地道に作っていくものはいい物なんだろう。 一瞬にして完成物を創るんじゃなく、コツコツと作り上げるものにこそ感心を覚える、と。 創造なんてものが出来ない俺達にとっちゃ、一瞬にして創れるほうが羨ましいもんだが。 彰利 「ヒ、ヒィイイイイ!!レンタベイビーーッ!!」 と、そこへ物凄い速さで駆けてくる彰利が。 さらに晦が彫っていた木像を奪い取ると、 彰利 「ふははははーーーっ!!     この木像を壊されたくなかったら俺の言うことを聞けぇえええい!!」 いきなり脅迫に走った。 時々思う。 こいつらは親友を唱えられる間柄でありながら、 どうしてこうも正反対の性格なのだろうかと。 悠介 「………」 彰利 「あ、あれ?やだなぁ、言うこと聞いてくれたらちゃんと無事に返すから、ね?     そそそんな身の毛も弥立つほどの形相で睨まないでよ……いやほんと怖いから」 日本好きのぶっきらぼう。 思い出すのは“天正やおよろず”のライルくんだろうか。 そういや晦もライルくん同様、ストレス性胃炎になったことがあったっけ。 しかし今の晦の形相ときたら、 まるで軽井沢行きの電車から追い出されてしまった“今日から俺は”の谷川くんのようだ。 悲しみを滲みだしつつも恨みがましいといった表情というのか。 普通の人が木彫り中の物体を奪われたからといって出来る表情ではなかった。 彰利 「今から送るイメージを俺におくれ!?     黒をキミに接続するからそこに流してくれりゃいいや!早く!ホレ早く!!」 悠介 「………」 ズゴゴゴゴゴゴゴゴ……!! 彰利 「お、おおお!そうそうその調子!では次はこのイメージを!     そーうそうそう!その調子だ!ふはははははは!!」 中井出「……?」 傍から見るとなにやってんのか解らんな。 彰利が晦の影に黒を重ねて、そっからなにかを受け取ってるんだろうけど…… そういや黒竜王はどうなった?  ドゴォン!!───パラパラパラ…… ゼット『見つけたぞ貴様……!こそこそと逃げ回りおって……!!』 彰利 「ギャア見つかったぁーーーーーっ!!!」 ……彰利が逃げてただけか。 民家の壁を破壊して現れた黒竜王は、口からモファアアと蒸気のような息を吐き、 目を真紅にして彰利をギラリと睨んでいた。 おお、こりゃ目が合わなくても怖すぎる。 今すぐとんずらしたいほどだ。 彰利 「ええいこうなったら満ちてる部分から片っ端に解放していく!!     一番解放!二番解放!三番解放!四番解放!ええい解放解放解放解放!!     ヒ、ヒィイ!!待って!もうちょっと待って!     あとちょっとで全部解放し終えるから!     つーか自分の能力が一番解放が大変ってなんですか!?イヤァ待ってぇええ!!」 ゼット『フンッ!!』 ルオギガァッシャァアアアアアンッ!!!! 彰利 「ほぎゃぁあああああっ!!!!《ばごしゃっ》」 中井出「どわぁああああっ!!!」 悠介 「───!!」 振り下ろされた斧が地面を破壊。 大地を斬り裂く破壊力と、地面が焼き焦げるほどの稀赤斧の能力。 おお……こりゃ当たったら一溜まりも無い。 もちろん老人はとっとと逃げていたから被害はまるでなかったわけだが───あ。 悠介 「………《カタカタカタカタカタ……!!》」 一番危険な被害がここにあった。 彰利が木質にしていた木像が、振り下ろされた斧の余波で砕けてしまっていたのだ。 で、それを手に取ってカタカタと振るえる晦。 みさお「離れることをお奨めします」 中井出「おお、みさおちゃん。それはもちろんだ」 無言のままにルナさんを手招いて同化する晦を見て、俺とみさおちゃんは颯爽と避難した。 彰利は─── 彰利 「ふっ……ふふふふ……ふははははは!!満ちた!満ちたぞぉ!!     見よぉ!この素晴らしい力!!真・影鎌繰り殺ぐ闇黒の秩序!!」 コォッ───ゴファァアッシャァアアアアアッ!!!! 叫びとともに物凄い力の波動が彰利から放たれる!! ぬおお、これはいったい!? 彰利 『この力、素晴らしいぞ!!』 中井出「や、神我人の真似はいいから説明しろ説明!!」 彰利 『めんどくせーからやだ』 中井出「彰利一等兵!これは提督命令である!!」 彰利 『サ、サーイェッサー!!状況を説明します!!     い、いやですね?一度“死皇鎌獄”をバラしたんですよ。元の散々たる鎌の群に。     月癒力で融合せさたものを月切力で分割して元に戻す要領でね?     鎌が黒と同化してるようなもんなら、     黒の秩序がそれを操れないのは道理じゃない。     そんなわけでバラした卍解までの鎌を、他の皆様の鎌を解放する要領で     それぞれに必要な力を悠介に創造してもらって満たし、解放。     悠介は死皇の黒状態の俺の力は創造し続けられやしないって言ったけど、     それなら個別ずつの鎌の力なら創造できるんじゃねぇかと思ったわけよ。     実際、みさおとゼットの鎌の死力は創造できたわけだしね?だからビンゴ。     つまり───今の俺こそ最強の死神王!一点を極めるなんてやっぱダメだ!     俺は悠介よりも他点を極め、その上で最強の死神を目指したい!!     そんな思いの果てに閃いたのがこの、     内包する鎌全てをさらに解放させよう作戦だぁああーーーーーっ!!』 中井出「おー、頑張れ晦ー」 みさお「どちらを応援すべきか迷いますね……」 彰利 『聞けよてめぇらブチコロがすぞこの野郎!』 中井出「え?ああすまん、あんまり長かったもんだから」 彰利 『説明求めたのキミでしょ!?キミだよね!?それなのになんてヒドイ!!』 中井出「けどさ、なにかが変わったようには見えないぞ?」 彰利 『ウン。だって以前の死皇の鎌獄が全ての鎌を圧縮させて解放したもので、     こっちはひとつずつ解放したものだもん。     結果的にゃあ悠介に創造してもらった力以外はなーも変わらんよ』 意味ねぇ。 彰利 『意味無いと思ったキミは間違ってるぜ?     いいかね?死皇の鎌獄は全ての鎌を融合させることで完成しました。     で、今俺の中にはもう一つ分解放した全ての鎌が揃ってます。     つまり、それを合わせると───』 中井出「ア、アアーーッ!そうか!単純に考えればさらなる力の解放が!!」 彰利 『その通りだ!そして見よ!これより始まる僕のロード!!』 彰利を中心に、彰利の黒から吐き出された様々な鎌が回転を始める!! やがてそれは彰利の目の前へと集まってゆくと、眩い黒い輝きに包まれ……!! 彰利 『我が黒、我が死神の回路によりてさらなる解放を約束なさい!!     “影鎌繰り殺ぐ闇黒の秩序(アンリミテッドブラックオーダー)”!!』 彰利が手にこめたありったけの黒を流し込まれるとともに、 それが黒の光の中でひとつになってゆく!! 彰利 『《ブチィッ……!》いがっ……!!』 みさお「彰衛門さん!?」 彰利 『あ、ぢぢ……!!だ、大丈夫大丈夫……!回路が焼け付いてるだけだから……!     それよりも……ホホ、嬉しいねぇ……キミが……この俺の心配かえ……?』 みさお「あっ……───今はそんなこと関係ありません。     過去になにがあろうが、心配する心に間違いはありませんから」 彰利 『お、おお……』 彰利が意外そうな、だけど嬉しそうな顔で微笑んだ。 やっぱりかつては娘的に接していた相手だ、嫌われっぱなしなのは辛かったんだろう。 彰利 『大丈夫……今、終わるから……。ぬっ……ぎぎぎがぁああああっ!!!!!』 シュゥウ……ギバァンッ!! 黒の光が弾け、やがて混ざる。 みさおちゃんと黒竜王の鎌の解放よりもよっぽど大変そうだったそれはようやく終わり、 彰利の先の虚空には、やはり黒の秩序に相応しいくらいの真っ黒な鎌が浮いていた。 彰利 『ハ……はぁ〜〜〜あぁぁ……死神王も楽じゃねぇなぁ……。     他のやつらよりも鎌の力が強すぎて、解放にも一苦労じゃぜ?ホホホ』 中井出「……お前のことで晦が慢心はやめろって言い続けてる理由が解った気がする」 彰利 『エ?何故かね?』 解放した途端にその態度じゃあ誰だってそう思うわ。 隣に居るみさおちゃんだって呆れ果ててる。 でもその顔も、どこかスッキリした顔で楽しそうだった。 彰利 『さぁ〜て?鎌を全部融合し直したからまぁた鎌の力は使えなくなったわけだけど。     それに見合って月操力はパワーアップしてっからOH最強!!』 みさお「鎌の名前は変わりましたか?」 彰利 『うんにゃ、鎌と話し合って、     やっぱり影鎌繰り殺ぐ闇黒の秩序のままになってもらった。     こっちのほうがブラックオーダーの名前が相応しいしね』 中井出「ああ、それは俺もそう思う。で、前のは?」 彰利 『死皇に至りし鎌獄の死神。黒の秩序って名称何処にも無し』 中井出「確かに影鎌繰り殺ぐ闇黒の秩序のほうがそれっぽいな」 彰利 『でがしょ?語呂もいいし。それにね、名前とは関係ねぇけどさ。     それぞれの鎌を昇華させてから融合、解放させたもんだから、     以前より効果時間と力が伸びておるのよ。OH最強!!     今なら誰にも負けやしねぇ!!悠介───じゃないな、ゼファー!ゼット!     この俺もそのバトルに混ぜるのだぁーーーーーっ!!!』 言いつつ彰利が飛翔し、二人に……いや、三人に突っ込んでいった。 晦はルナさんと一緒だから二人という数え方だ。 まあもちろんそんなことはどうでもいいわけだが、 突っ込んでいった彰利はそれはもう元気ハツラツ状態だったわけだが。 少しすると力をもてあまし、 扱いきれていないのが素人の俺から見ても一目瞭然バトルが展開され始めた。 結果はゼファーと黒竜王による集団私刑。 哀れ、強くなった筈があっさりと敗北を知り、 私の負けだと叫んだドリアン海王のように泣き崩れた。 でも……確かに月操力は一撃が兵器めいて見えるほどに強化されていたのは事実。 完全にモノに出来れば、相当強くなれるだろう。 ……慢心しなければの話だけど。 Next Menu back