───冒険の書107/トリスタン軍殲滅作戦───
【ケース310:中井出博光(超再)/クリーンクリーン〜中井出ダイナミック〜】 ───そうして、作戦を決めた俺達は六方に分かれてそれぞれが突撃を開始した。 見える距離にはいないが、きっとみんなも走っているだろう。 作戦はいたって簡単。ただ目の前の敵を破壊していけばいいだけだ。 ただし一体残らず、だが。 地面を弾くように蹴り、疾駆する。 頭の中はやっぱりスッキリしている。 散々泣いて言いたいことも言って、案外胸の奥にあったモヤモヤも取れたのだろうか。 もっとも、そんなモヤモヤがあったかどうか自体怪しいわけだが。 中井出「えィやぁっ!!」 ヴフォフォフォンッ───ゾゴゴゴゴゴファアンッ!! ハイゾンビ『ぐぇえええぅう……』 ハイグール『うえぇえぅうう……』 六閃化させ、思う様に振るうジークムントが六閃全てからキャリバーを放ち、 眼前に群がる敵を一振りで殲滅してゆく。 光の稀紅剣と稀蒼剣の軽さは相変わらずだ。 全力で振るってもすぐに元の体勢に戻せるくらいに軽く振るえる。 だが俺は攻撃の際に発生する遠心力に身を任せるように体を回転させ、 続く六閃をジークリンデより放つ。 中井出(体が軽い……いつまでだって戦えそうだ) 12回放てば効果が切れる精霊斬。 だが、六閃化をさせれば72閃まで放てる。 反則に近いほどの裏技めいた攻撃が次々と敵を吹き飛ばし、 塵と変えてゆく光景はまさに圧巻。 やはり戦いはいい……燻るハートが狂ったように踊り出す! 中井出「ふははははは!震えるぞハート!燃え尽きるほどヒート!!     おぉおおおおおっ!!刻むぞ血液のビート!!」 七!八!九!十!十一!───十ニぃ!! 中井出「交わらざりし生命に!今齎されん刹那の奇跡!     時を経て───ここに融合せし未来への胎動!“義聖剣”(ぎしょうけん)
!!」 12回目のキャリバーを放つと同時に、 眩いくらいに輝きだした双剣を両手で持つように構える! すると二本の光の双剣が一本の緋蒼の極光剣となり、 手に持った自分でさえ目を閉じかけるくらいの炎風が吹き乱れる! 中井出「唸れ炎風!“ヴォルカニックレイザー”!!」 極光剣を肩に担ぐように戻し、その反動を思うまま力として───一気に放つ!!  キギィッシャバゴォッファァアアアンッ!!!! アンデッド軍団『るげぇえぁあああああっ!!!!』 極光剣から放たれた巨大な炎風剣閃が、 目が疲れるくらいに蠢いていた不死軍団の波をモーゼの十戒が如く屠り飛ばしてゆく! まさに壮観なり!なんて思ってると極光剣がジークムントとジークリンデに戻り、 なにも付加されていない状態へと落ち着く。 だがなんら支障無し! 中井出「よっしゃあどんどんかかってこいやぁ!!」 極光剣になったために効果が消えた六閃化を再び発動させ、敵の軍へ突撃する! やあやあ我こそは原中が提督、中井出博光である!! 中井出「ふははははは!軽い!体がとても軽いぞお!!」 敵をコロがし、軍勢を塵とし、迫る相手を次々と薙ぎ倒しながら進み行く。 目指す場所など何処にも無い。 今はただ敵の数を殺してゆくのみ! 中井出「こい……こい……!こい……!こいっ……!」 キ───キ、キキギキィイインッ!!!! 中井出「来たぁ!来た来た来た来た来たぁああああっ!!!」 カラッポになった双剣に再び属性が満ちると、 双剣が属性ごとの象徴たる色の輝きに染まり、再びキャリバーが幾重にも放たれる。 しかもこのキャリバー、蓄積した属性を放っている所為かTPがまるで消費されないのだ。 使い切っても自然に蓄積されるし、 蓄積されても光剣化させるかは持ち主の意思で任意に出来る。 これは───これはいいものだぁーーーっ!! 中井出「10!11!───12!!“義聖剣”(ぎしょうけん)!!     受けろ!炎と氷が織り成す焼熱の氷雨!“ヴォルカニックレイン”!!」 再び極光剣と化した双剣をやはり縦横無尽に振るい、弧を描く刃から爆裂する雹雨を放つ! それもやはり規模が大きく、 雹に当たったモンスターどもは次々と巨大な爆発を起こして吹き飛び塵と化す! ちと心配だったが……大丈夫だ!加護で手に入れた属性もちゃんと蓄積できる! 中井出「ふっ……ふははははは!!おぉおらどんどんかかってこいやぁ!!     はぁっ!フン!せいっ!───かぁっ!フッ!はぁああーーーーーーっ!!!」 ブフォンバオヴオビュフォングオビュフォオンッ!!! ゾガバシャゴバグシャパガシャゴバシャゾガァッフィィイインッ!!!! アンデッド軍団『うぇええええああああ……!!』 四方八方から群がるゾンビやグールやスケルトンどもを、 重さはないが重苦しく風を斬る音を放つ巨大双剣にて破壊し続けてゆく。 だが敵さんも軍勢の外側を削ってゆき、軍勢の中心へ向かえば向かうほど、 色が違うゾンビどもが現れ……それがまた随分と強くなっている。 ……よし、そろそろか。 中井出「武器はしっかり二刀流!!アァンドストック解除!“背水の陣”!!」 マグニファイと背水の陣を発動させ、既に発動している鬼靭モードとともに双剣を構える。 左の風の巨大剣で後方より前方へと風で左側の軍勢を掻き集め! 右の火の巨大剣で後方より前方へと炎で右側の軍勢を掻き集める! そして前方のみに集められた蠢く軍勢へと送る、破壊の一閃をここに! 中井出「荒廃の世の自我(エゴ)、斬り裂けり───二刀流居合い」 両腕を交差させて構える両腕での居あい抜きの構え。 そこへ、双剣を包み込むように風の鞘が発生し、 集中を一気に放つと同時に弾け飛ばすかのように双剣を発射させる!! そこから放たれる剣閃は───シュバァッキィンッ!! 鋭く綺麗な音を立てて、暗転のうちに目には見えない破壊の刃を放った。 やがてズガガガドガバゴバゴゴガドガゴゴバッガァアアッ!!! 中井出「───“羅生門”」 鋭く巨大な炎風の鎌鼬が目の前に居た軍勢を切り刻むと、 数瞬遅れて耳を劈く巨大な爆発を起こして塵と還した。 中井出「……うん、快調!まだまだいけるっ!」 これだけじゃあまだ終わらない。 滅びた町を囲むアンデッド軍団の数は、それこそ今倒した数の数倍から数十倍の数は居る。 地図を見て索敵モードをオンにしてみても、町を囲む赤い点滅の大きさは尋常じゃない。 他のやつらは大丈夫だろうか。 結局あれから話し合って、六方向から敵の数を削ってゆく作戦を選んだわけだが─── 中井出「……アホか。他のやつらに心配なんて要らねぇよなぁ」 みんなきっと頑張ってる。 だから俺ももっともっと頑張って、先へ先へと進んでいく!  ぺぺらぺっぺぺ〜♪ 中井出「おっ……レベルアップ!よっしこの調子でブホォッ!?」 そう、それは確かにレベルアップだった。 だがなんでしょうか神様、この32レベルアップってのは。 あ、あれぇおかしいナァ、500レベルからはレベルが上がりづらいんじゃなかったっけ。 中井出「───ア。戦覇王の祝福……」 戦いの巧みさによって経験値の倍率が変わる、とかいうやつだったっけ……。 つまり倒せば確実に二倍であり、 戦い方によっては3倍にも4倍にもなるって……あれってそういう意味だったのか? レベルが一気に552だよ……。 中井出「………」 神様……俺、この世界だけでなら最強目指せそうです。 中井出「ふっ……ふ、ふ───はっはっはっはっはっは!!!     シャァアンドラの火を灯せぇええええーーーーーーーっ!!!!」 さあ行こう我が愛剣───いやさ相棒!! 俺達はまだまだ頑張れる!強くなって、あんな後悔がもう無いような未来を歩くのだ!! 中井出「ぬぅううぉおおおりゃぁああああっ!!!!」 駆け、さらに駆けて見えてきたアンデッドどもに剣を振るう! 層はかなり削った。 つまり敵の強さも格段に上がってる筈だ。 だがそれでも一切怯まん!! 彰利との競争のためじゃない。レベルアップに目がくらんだからでもない。 俺はただ、己の信念とゲームを楽しむためにこの剣を振るおう!! ならば叫べよ原ソウル!!俺が原沢南中学校提督、中井出博光であるーーーーっ!!! 【ケース311:晦悠介/熱風吹き荒れプラズマ轟く僕らの戦場】 戦場を駆け回る。 手にする獲物は槍。 放つ連閃は刹那に12の軌跡を描き、次々とアンデッドどもを破壊してゆく。 しかし驚くべきはこの目の回るような敵の数だ。 倒しても倒してもキリがない。 ……っていうのに、地図から確認する一方向の群れのえぐれ様はなんなんだろうな。 この方向は……中井出だったか? こりゃ負けていられないな。 今までの俺だったら普通に真面目に戦ってたんだろうが、 今の俺は小さな賭け事でも負けたくないと思える感情を手に入れた。 だって癪だろ?全員にチョコレートパフェを奢るなんて。 ……いや、そもそもこの世界にそんなものあるのだろうか。 スーパーソンビ『ブゲェエゥウ!!』 悠介     「《ドガァッ!》ぐあぁっ───つぅ……!!         かっ……アホウか俺は……!考えるより敵に集中しよう───!」 最初の方こそ楽すぎたんだが、色が変わるにつれて敵の強さが格段に上がってゆく。 色が変わるだけで強くなれるなんて羨ましい限りだとツッコミを入れたいくらいだ。 だいたいスーパーゾンビってなんだよ。 超生きる死体?超生きてる死体?超今を生きてる死体?……ヘンな生き物だな。 悠介     「ところで思ったんだが……店とかの名前でスーパーってついてるよな。         あれってどういう意味なんだろうな」 スーパーゾンビ『モガァアアアアッ!!!』 悠介     「答えてくれるわけないよなぁ」 ヒュッ───ガギィンッ!! 悠介 「おおっ!?」 奔らせた槍が歯で噛まれて止められた! マジか!?どういう歯をしてるんだこいつ! 悠介 「うおら!」 ドボォッ! スーパーゾンビ『るぇええうう!!』 槍が止められたからって体までは止まらない。 足を跳ねらせ、脇腹目掛けてシュートを決めた。 ───が、大して効いてないご様子。 ちょっと待て、どういうゾンビなんだこいつは。 スーパーグール  『ホェエエエウウウウ……!!』 スーパースケルトン『コエキョキョキョ……!!』 ガッ!ガシガシッ!ガシィッ!! 悠介 「だわっ!?ちょ、待てコラ!!」 スーパーゾンビの在り方について思考を巡らせていた時だった。 周りに眩暈がするほどぎっしりと居たアンデッドどもが俺に纏わりついてきて、 その動きを封じにきたのだ。いや、封じに、というよりは噛みに、なんだろうけどさ。 悠介 「このっ……“神の裁き”(エル・トール)!!」 コォッ……ドシュゥウウウーーー───……ンッ…… キィンッ───バガァッシャァアアアアアン!!!! ビヂヂガガァアアアォオオオオオオンッ!!!!! アンデッドども『ルェエエエエッ!!!』 なんとか空に伸ばした手から最大出力の雷のレーザーを発射。 それを空から落として自分に当てるようにし、周りのアンデッドどもを始末する。 あぁまったく、油断だけはしないようにって決めてたのに馬鹿か俺は。 スーパースケルトン『ケァア!!』 悠介       「《ビグゥッ!!》うぉわびっくりしたぁっ!!」 ケシズミになったと思いきや、よく見れば吹き飛んだだけで全員生きてやがる!! 特に骨は元気だ……雷を伝導させる要素が少ないからか?くそ……。 悠介 「こんなろ……!こうなりゃ戦い方なんて好き勝手だ!     反則だとかなんだとか言われようが知るか!     “LuminousDestory(至光にて万物を砕かん)───Fill agains Fill. Sword of SupremeRuler(満たし、更に満たせ。その意が覇王の剣と化するまで)」 精霊の回路から式に必要な要素を引っ張り出して式を編む。 そこから弾き出した軌跡は極光の剣へと至る至高の光! 悠介 「“魔導(エクス)ッ……極光剣(カリバ)ァーーーーーッ”!!!!」 手に篭る光を振り、横薙ぎにして周囲のバケモンどもを蹴散らしてゆく! その威力は凄まじく、ほとほと空界古代魔術の威力の高さに呆れ返った。 悠介 「……そうだよな。相手はアンデッドなんだ、光属性に弱い筈。だったら───」 イメージを解放、手にベオウルフ、足にヴィーダルを創造して力を込めて疾駆した。 さて───そんなことをしてみて思い出したんだが、中井出って武器持ってたか? 腕に妙な紋章みたいなものが浮き上がってる以外、 特に目立ったものがなかった気がするんだが。 いいや、事実敵の数をあそこまで削ってるんだ、きっとなんとかなってるんだろう。 あいつは英雄なんかじゃない、凡人だ。 けど、英雄には無い“逃げる勇気”ってのをちゃんと持ってる。 危険になったら逃げるだろうし、自分に出来る範囲のことをやっていくだろう。 危険だってのに逃げないのは英雄じゃない、ただの馬鹿だ。 命が無ければなにも出来ないのだから。 悠介 「っしゃあどんどんかかってこい!!全部殲滅してくれるわ!!」 叫び、疾駆する。 ほとほと以前の自分からは考えられないくらいの高揚に笑みがこぼれる。 でも今までまったく高揚しなかったわけじゃない。 初めてのファンタジーに興奮したし、 シュバルドラインに勝てた時なんて最高に嬉しかった。 不完全だって感情は感情だ。 育てることが出来るなら、 きっとあの時に感じた感情だって今でも思い返すことが出来るだろう。 けど今はそんな複雑なことを考えるよりも、 目の前の高揚を胸いっぱいに味わってやるつもりだ。 ああ、確かにその通りなのかもしれない。 なんだかんだで近接戦闘を選んじまってる俺は、 つまるところ近接戦闘こそ男のロマンだと納得してしまっているのだろう。 まあ……それもいいよな、実際わくわくしちまってるんだ、否定のしようもない。 【ケース312:ゼット=ミルハザード/究極のパワーファイター】 ゼット『オォオオオオオオッ!!!!』 ヴオバゴォッシャァアアンッ!!! アンデッド軍団『ケギャアアア……!!』 ゼット    『ぬぅうううん!!』 ルオゾバシャァアアア!!! アンデッド軍団『ルゲェエエッ……!!』 力任せに振るう斧の一撃が敵を屠る。 一撃とともに衝撃波を出すのがこの斧の利点だ。 元々巨大な斧だが、それでも長剣に比べれば少々短くはある。 そのため己の身を刃としていた頃の射程距離とは一歩合わず、 感覚が狂っていたこともあった。 だがこの斧を手に入れてからはその面倒も無くなった。 振るえば敵は消し飛び、向かってこようが弾き飛ばす。 それが俺の戦い方だった。 晦悠介と弦月彰利によってさらに引き上げられた斧の力はさらに俺の力を増すもので、 如何なる軍勢が襲ってこようが一薙ぎで大勢を殲滅していった。 ゼット『防御も知らぬ亡者どもが……!貴様らでは役不足だ!散るがいい!!』 うろうろと蠢くばかりで速度も無い標的を次々と斬り飛ばす。 まるで歯応えがない。 防御し、凄まじい速さで攻防を繰り広げる喜びなどここにはないのだ。 チッ、晦悠介が出来すぎていたか……他のクズではやはり足らん。 闘争心は飢えを訴えるかのように喉を焦がす。 こんな雑魚ではまるで足りない、もっと、より強者をよこせと唸る。 だがセシルは俺が晦悠介と戦うことを良しとはしないだろう。 だからこそ大会とやらを狙ったが、さて…… ルールに縛られた場所で、果たして全力の戦いなど出来るのか? ゼット『チッ……我ながら判断を誤ったか。これではこの枯渇が癒されることなど……』 ……弦月彰利はどうだ? 慢心の無くなった今ならば、満足とまではいかんが遊べはするかもしれない。 だがヤツの剣は適当すぎる。 晦悠介のような、刹那の間隙さえ逃さず奔らせる究極の緊張感など与えてくれはしない。 ゼット『……無いものねだりか。腑抜けたものだな、俺も』 軽く溜め息を吐きながら、ウゴウゴと蠢くヒトガタを破壊する。 力が有り余っているのだ。 これでは大会に至る以前に爆発してしまいそうだ。 こんな雑魚では発散できはしないだろう。 ゼット『……ッチィ……なにを考えている。無闇な強襲も殺しもしないとセシルに誓った。     それを破ることは再びセシルを裏切ることになると知れ、愚か者めが……!』 苛立ちと闘争心を歯で噛み締めるようにして喰いしばる。 だが目の前でいつまでも尽きることなく蠢く物体が、苛立ちを余計に際立たせるのだ。 ゼット『〜〜〜っ……目障りだ貴様ら!ルゥオォオオオオオオオッ!!!!』 口に極光を溜め、その状態で黒竜と化して一気に放つ。 その輝きは巨大化した自分が見下ろす景色にびっしりと群がり蠢く物体を、 悉く広範囲に滅ぼしてゆき、バゴシャォオンッ!!! 黒竜王『ヌ───!?』 だが……どういうわけか、そのレーザーが途中で相殺される。 滅びた町の一部さえ削り取っていたそれは、 反対側から放たれたなにかによって殺された、ということか。 ジュノーンか?面白い。 退屈していたところだ、他の雑魚など無視して、なによりも先に塵と砕いてくれる……! 【ケース313:弦月彰利/破壊の化身】 彰利 『詰める……詰める詰める詰める詰める!!』 キュィイイイ───ヂガガガガガガガガガガォオオオオンッ!!!! アンデッド軍団『ゲアァアアアアッ!!!』 体の周囲に溜めたアルファレイドをガトリングブラストの要領で放ちまくってゆく。 もちろん地面にぶつけることのないように、だ。 地面にぶつかれば爆煙が出て視界が悪くなる。 そうなれば自ら隙を見せるようなものだ。 もう隙なんてそうそう見せてやりはしないと決めた。 俺は中井出の涙に報いるためにも、自分の力に溺れたりなんかしてやらねぇ! 彰利 『つーかさすがに数多すぎだろこれ!』 慢心はしてやらないが、他のことなら盛大にしよう。 じゃなきゃ俺じゃねぇし。 というわけでこの数に唖然とした。 やれやれだ。 中井出と殲滅数の競争を約束したはいいが、この数は異常だ。 そりゃ結構経験値もよく、数もウジャリと居るならレベルアップにはもってこいだけどさ、 さすがにこの数は……ぺぺらぺっぺぺ〜♪ 彰利 『おっ……またレベルアップ。俺以外のやつらも頑張ってるんだろうな』 なにせ俺が殺してない間でもレベルアップしたりするのだ、 他のやつらが頑張ってるとしか考えられないだろ。 彰利 『っし!俺も頑張るか!     幸い敵の動作は遅いから滅多なことじゃ攻撃なんぞ受けねぇし!』 ───などと思っていると、東側の方で巨大な爆発が発生。 視線を動かしてみれば巨大な黒竜が一体。───ゼットだ。 どうせ群がる敵に苛立ち覚えてレーザーでも……って待て? じゃあそのレーザーが途中で爆発して消えた事態はどういう意味があるんだ? まさか、ジュノーンか? 冗談だろ、黒竜のレーザー止めるほど強いってのか? 彰利 『〜〜〜……アホか俺はっ!!恐れなんか抱くなボケッ!     俺はここにトリスタン殲滅に来たんだろうが!』 だったらどの道戦わなけりゃならない相手なんだ。 エトノワールの戦い以来だが、姿も見ないうちからビビっててどうするんだ。 俺はそんな怯えのために力を得たんじゃねぇ! 彰利 『《ッパァン!!》〜〜〜っ……っしゃあ!!かっかってこいやぁ!!』 両の頬を思い切り叩き、キッと前を向く。 東側の黒竜は既に竜人状態に戻ったのか、大きな巨体は姿をくらましていた。 けどそれがどうした。 俺は俺のするべきことをするだけだ。 目の前の敵を、出来る限り殲滅する!それだけだ!!  ゾガァッフィゴバシャア!! 彰利 『うおっ!?』 決意を胸に疾駆しようとしたその時だった。 物凄い鋭さの炎風が敵の波を吹き飛ばし、大半を塵と化してしまった。 お次は鋭い剣閃。 まるで純粋なる力のみを振るったような空間断裂めいた剣閃が、 アンデッド軍団の体を上半身と下半身へと綺麗に切り裂いた。 こ……こりゃいったい……? 彰利 『……気になるんだったら周りの敵をとっとと倒して、だよな。     よし!───粉々に吹き飛ばしてやる!』 力を集中させる。 究極にまで高まった月操力をこの身に宿し、あたかも自分ごと爆発させるかのように放つ、 複合月操力の究極系───! 彰利 『塵となりやがれ!フルブレイクッ……カタストロファアアーーーッ!!!!』 ダンッ!と跳躍し、中空に至ると体から破滅の光を噴出させた。 かつてゼノを月面で滅し、慢心した俺がレオに殺される原因となった破壊技。 黒となった今だからこそ消滅することもなく全力で放てる、今の俺の最高の技だ。 その破壊力は───  ギィンッ!ドガガギバァッシャォオオオンッ!!!! 消し飛び塵となる軍勢を見るだけでも明らかだ。 黒い極光が消える頃には地面には呆れるくらいのクレーターが出来ており、 空から見下ろす景色にはごっそりと円形に消えた魔物の軍の空間が出来上がっていた。 そして……空中に浮いたままの俺がさらに見たものは─── 彰利 『な……ななななにぃいいいーーーーーーーっ!!!?』 成長したと自覚した自分でも絶叫を上げてしまうような、トンデモ劇場だった。 モウモウと立ち上る爆煙を境に、煙の中に突っ込んでは暴れ回るのは竜人状態のゼットだ。 時々煙からボファアと出てくるから間違い無い。 でも問題なのは相手だ。 なんだって……なんだってゼットのヤツ、中井出と戦ってんだ? つーか竜人状態のゼットと普通に戦えてる中井出こそナニモンですかゴッド。 いや……むしろ中井出が押してる? 彰利 『………あ』 煙の反対側から姿を現した中井出の両手には、光輝く剣が握られていた。 それが原因なのか、煙の中でゼットと武器を合わせるたびに光が弾け、 何閃もの剣閃が飛翔していく。 あー、六閃化状態での剣閃乱舞か。 しかもあの光の剣、相当強いぞ? 彰利 『む……アルティメットアイ!!』 パワ〜〜〜……中井出博光……クラス・ペシュメルガ。レベルは─── 彰利 『ぶほぉっ!?672!?なに!?なにこれ!?どんなカッパーフィールド!?』 んな馬鹿な……!ヤツの戦闘力は520だった筈……!それが何故……!? 彰利 『竜人状態のゼットを押す筈だ……!     マグニファイ使えば十分ステータスでなら追い抜ける……!』 つーかよ、ちゃんと敵と戦おうや二人とも。 や、そりゃあより町に近い二人に向かって群がる雑魚どもは、 次々と巻き添えくって死んでるわけだけどさ。  ぺぺらぺっぺぺ〜♪ 彰利 『あ……レベルアップ』 ……俺も案外、さっきからトントン拍子でレベルアップしてる。 つまり、もし中井出がなんらかの経験値上昇アイテムとか持っているんだとしたら、 あのレベルアップも頷けるものがあるが……それにしたって凄まじいだろオイ。 彰利 『675……678……すげぇ!まだまだ増えてる!』 ああJOJO……悲しすぎる! なんというハチャメチャバトル! 六人で暴れて全滅させる筈だったアンデッド軍団が、 どんどんと円を狭めて消滅していっている……! しかもおい!なんだありゃあ! 中井出のヤツさっきから剣閃撃ちまくってるってのに全然TPが枯渇する様子がねぇぞ!? しかも散々暴れてるもんだから煙もてんで晴れなくて、 ゼットと中井出まだ勘違いバトル続けたままだし……。 ああ、中井出のレベルが異常な速度で上がっていく……。 ありゃ経験値2倍どころじゃねぇ……3倍、4倍の世界だ……。 もしかしたらそれ以上かもしれねぇ……どうなってんだ一体……。 彰利 『ン───』 他のプレイヤーを確認。 悠介とみさおとルナっちだ。 煙の中での激闘に気が付いたのか、 そちらへわらわらと向かっていくゾンビどもを眺めている。 で、恐らく当の本人達は相手がそれぞれジュノーンだとでも思ってるんだろうな。 あ───中井出が吹っ飛ばされた。 力任せの一撃を思いっきり喰らったんだろうな。 でもな、ゼットよ。相手は中井出だからな……これじゃ逆に危険だぞ。 あ───案の定ゼットが弾丸のように吹き飛んでいった。 背水の陣とジェノサイドハート効果だろう。 しかも追撃として放たれた、 双剣を極光剣に変えて放った馬鹿デカい炎の剣閃が吹き飛ぶゼットをさらに吹き飛ばした。 すげぇ……ありゃ普通に強いわ。 あれが純粋にゲームを愛し、ゲームに生きた者の力か……目がさめるような強さだ。 周りに居た残りのアンデッドどもを余波で完全に吹き飛ばして、 煙さえ吹き飛ばして事態がようやく落ち着いたってのに、 悲しいかな……ゼットが炎の剣閃まともにくらって大爆発の中で見えなくなってしまった。 炎の威力が強ければ強いほど威力を増すのがボマースキルだ。 あれだけバカデカい炎の剣閃だ、さすがにひとたまりもなかっただろう。 そうして、どうしたもんかなぁと頬を掻きつつ、 浮遊して中井出の袂へと向かったのだった。 ───……。 ……。 中井出「はぁっ……はぁっ……くはっ……はぁあ……!」 そうして辿り着いた時、中井出はそれはもう疲れ果てていた。 精神的疲労だろう。 なにせゼットと戦ってたんだ、知らなかったとはいえ物凄く疲れたに違いない。 中井出「お……おぉ〜……彰利ぃ……晦ぃ……どうだ見てたかぁ……?     は、はぁああ……俺……ジュノーンを吹き飛ばしてやったぞぉ……」 などと、達成感溢れる彼に向かって、どうして“あれはゼットですよ”と囁けるだろう。 簡単だ、何故なら我らは原中だから。 悠介 「中井出よ。今のはジュノーンじゃないぞ」 中井出「な、なにぃ!?アンデッド軍にはあんな強いヤツがまだまだ居るのか!?     ちょっ…………と冗談じゃないんだが……?」 彰利 「いや、今のゼットだから」 中井出「───」 あ、固まった。 そんな彼のレベルを調べると、素の状態で701レベルのバケモンと化していた。 すげぇ、マグニファイ使えば竜人状態のゼットにだって勝てそうなレベルだ。 いや、実際アレは勝ったっていえるのか? でも本人カタカタ震え出してるし。 そりゃあこれから起きることを考えれば震えもするってもんだろう。 中井出「ボクハコノチキュウガダイスキデシタ……」 悠介 「待て待て待て!!だから待てっての!なんだってお前は首吊ろうとするんだよ!     大体ここに首吊るための引っ掛けるものなんてないだろうが!」 中井出「だだだだってよぅ!!ゼットだぞゼット!あの空界を恐怖に陥れた伝説の黒竜王!     お、俺が彼を吹き飛ばしたですって!?馬鹿も休み休みお言い!」 悠介 「落ち着けって。お前、自分のレベルいくつか気づいてるか?」 中井出「え?レベル?いや……途中から見るのが怖くなってさ……     だってまるで呪いのメールが届くみたいに上がりまくるんだぞ?     だからあっさり600に達したあたりから見てない……」 みさお「どういう原理でレベルアップしてたんですか?」 中井出「あ、いや……この武器に……って言っても今は引っ込めてるからなにもないけど、     そうだな、この紋章にさ、戦覇王の祝福ってのが刻み込まれてるわけだ」 ルナ 「せんぱおう?」 中井出「そう、戦覇王。で……敵を倒した時に、その敵からダメージを受けたか否か、     倒し方はどんな攻撃だったか、攻撃回数何回で倒したかで倍率が変わるらしくて」 悠介 「ちなみに一番いい条件ってのは?」 中井出「ダメージ受けず、通常攻撃で、一撃で仕留める。     つまりさ……仲間が居る場合、仲間が別のところで敵を倒したりすると、     自動でこの条件が揃っちゃうんだよ……。     お前ら大体が通常攻撃で、しかも一撃で仕留めてたろ?」 悠介 「……だな」 彰利 「俺はアルファレイド使ってたけど、一撃だったし……」 みさお「わたしも鍛錬のために能力は使わずに一撃で……」 ルナ 「わたしはカルミネルゼファー使ったけど、やっぱり一撃……」 悠介 「ゼットに至っては通常攻撃が必殺の一撃みたいなもんだからな……」 中井出「……ちなみにそれで手に入る経験値の倍率ってのが8倍……」 全員 『な、なんだってぇーーーーーっ!!?』 つまり好条件が揃いすぎてたというわけだ。 強い筈だ。 悠介 「あー……っと、話はここまでにしよう。そろそろ町の中に入ろう」 彰利 「い、意義無し」 みさお「……やっぱり町の中もアンデッドモンスターだらけなんでしょうか」 ルナ 「うん、きっと。     それも外に居たアンデッドよりも相当性質の悪いやつらでしょうね」 辛い事実だなっと。 だがしかしだ、ここで立ち止まるくらいなら最初から来ちゃいない。 俺達はうんと頷いたのち、 ゼット「……俺も行く」 中井出「キャーーーッ!!?」 砂埃をバシバシと荒っぽくはたき、中井出をギンと睨むゼットと合流した。 ゼット「貴様、中井出博光だったな。この戦いが終わったのちに話がある」 中井出「ヒィッ!?た、たたた体育館裏ッスカ!?さっきのはただの勘違いで……!」 ゼット「拒否は許さん」 中井出「ギャアーーーーーッ!!」 中井出が叫んだ。 目に輝くものがあるのはきっと気の所為じゃないだろう。 そりゃ、ゼットに睨まれながら話があるとか言われりゃ誰だって泣きたくもなるだろう。 とまあそんなわけで─── 俺達はカタカタと震える中井出を促しつつ、滅びの町へと歩みを進めたのだった。 Next Menu back