───冒険の書108/中井出博光の戦い───
【ケース314:中井出博光/臓物をブチマケーション】 震えていても仕方ないと覚悟を決めて、やがて俺達は滅びの町へと踏み出した。 一瞬の暗転ののちに展開される町の景色は…… およそ生きた者が存在出来るような場所じゃあなかった。 死臭……死人の森に居る時のような気持ちの悪い臭いが密集しているこの場所は、 それこそ生存者なんて居ないのだと無意識に理解できてしまう場所だった。 しかもだ。 外でさえあの数だったっていうのに、 町の中にはこれでもかってくらいにアンデッドどもが居た。 壊れた家や崩れた瓦礫の下、 果ては地面からズボズボと這い出てくる姿は、まるでホラー映画のソレだった。 悠介 「早速おでましか……」 みさお「結構数が多いですね……どうしますか?」 ゼット「決まっている。全滅だ」 中井出「い、異議無しっ!ジュノーンがどれだけの戦闘力を秘めてるのか解らない以上、     まず《ブンッ!》おわっとっ!?     ま、まず周りをブッ潰してからHP回復させたりアイテム補充しに戻ったりして、     そのあとに《ブンッ!》ひぇえいっ!ばば万全を以って挑むのが手だろっ!」 彰利 「む、なるほど」 ルナ 「んー。えっとさ、これってほんとに滅してやれば現れなくなるの?」 悠介 「解らん!解らんからやってみるしかない!」 彰利 「大雑把になったなぁ悠介……ホレ、ジュノーンバトル第一章思い出してみ?     確かアンデッド発生装置みたいなのを兵士どもが止めに入ってなかったっけ?     パウダー発生の元がどうとかって言ってた気がする」 中井出「そ、そういやそうだったな……!」 ブフォン!ゾガシャシャシャシャァアッ!!! ビュフォン!バガシャシャシャシャシャァアッ!! 悠介 「パウダーってことはゾンビパウダーあたりか?」 中井出「その線が一番濃いだろ……っと!」 フブォン!ゴパキャシャシャシャシャシャア!!! ヒュバォン!バゴシャズバシャシャシャア!! ルナ 「じゃあ、それを停止させちゃえば───」 中井出「いいから戦ってぇえええっ!!!」 つーかどうして群がる敵全部を俺だけが迎え撃ってるんだ!? そりゃ六閃化させりゃあ一振りでゴッソリと敵は削れるけどよぅ! 悠介 「それが今の中井出ブレードか……」 彰利 「どうやったん?さっきまで武器なんて持ってなかったろ」 中井出「御託はいいから戦えって言ってんだけどね俺!!」 わざとか!?わざとなのかてめぇら! 戦いの申し子のゼットでさえつまらなそうに、 アンデッドモンスターを睨んで溜め息吐いてるし! 悠介 「じゃ、中井出よ。俺達は内部のパウダー発生なんたらってのを止めてくるから。     アンデッドどもを引きつけてもらっといていいか?」 中井出「なにぃちょっと待て!!なんで俺!?他にも適材のヤツとか居るだろ!?」 悠介 「だって今一番レベル高いのお前だし」 中井出「レベル倍化能力持ってるやつらに言われたくねぇ言葉ランキング一位だよそれ!」 そうこうしてる間にも次々とアンデッドの軍勢がわらわらと地面から! ええい作物にやさしい栄養素いっぱいの大地だなぁくそ! 今の季節はアンデッドの収穫祭ですかっつーの!! 悠介 「中井出以外の全員にアンデッドの索敵感知に引っかからない膜が出ます。弾けろ」 晦の言葉を合図にしたかのように、俺を除いたみんなの体にシャランラアと綺麗な輝きが。 中井出「って待てコラ置いて行く気満々か!?     そんな創造出来るなら俺だけここに置いていく意味ねぇだろが!」 悠介 「言っただろ?これはジュノーン殲滅作戦じゃない。トリスタン殲滅作戦だ。     アンデッドどもをこう何体も残しておくわけにはいかないんだよ。     だから誰かが残って、群がる敵を始末する必要があるんだ……解ってくれ」 中井出「綺麗なこと言って、面倒だからって俺に押し付けたいだけじゃねぇだろうな……」 悠介 「……中井出の体にアンデッドを引き寄せる、まとわりつく臭いが出ます。弾けろ」 中井出「うおおサワヤカに押し付け宣言しやがったこの一等兵!!     ちと待てコラァ!!ちょ……待って!お願い待ってぇええ!!     さすがにこの軍勢を一人でって無茶じゃない!?あの……ちょ、聞いてる!?     ま、待って!音を立てないように空飛んでいかないで!     ちょ、どけゾンビども!いやあのどいてくださいお願いします!!     どいてっ……!どい───な、なにこの切ない思い!     まるで電車のラッシュアワーに巻き込まれて、     降りたい場所で降りられなかったあの頃の思い出が蘇るかのよう……!     ち、違うんです駅員さん!俺こんなところに来たかったんじゃない!     こんなところに来たかったんじゃないんで《ガブリ》ヴァアーーーーッ!!!!     し、しまった!危なかった!かなり危なかったよ今!     危うく悲しみの渦に飲み込まれて我を失うところだった!(むしろ失ってた)     くそぅ覚えてろてめぇら!お、俺は本気出すと凄いんだぞー!?ほんとだぞー!?     お、お前らがそうやって俺を置いていったことを絶対に後悔させてやる!     後悔させてやるんだからなぁーーーっ!!?うわあぁあーーーーん!!!」 もうこうなったら俺は戦いの修羅となるよ!? 戦の覇王よ……俺に凄まじき加護を齎しやがれでないかい!? 中井出「マグニファイ!!爆熱守護炎陣のモード!!」 敵が周りにうざったく居るなら話は早い。 火円を守護炎陣で強化し、この身を守りながら思う様に戦うのみ! この炎に触れたものはボマースキルの加護の下、爆裂して吹き飛ぶ! よしんば突き抜けることが出来たとしても、 このリングシールドで貴様らの攻撃を受け止めてみせよう! 中井出「いくぜ相棒───“精霊斬”(しょうれいざん)
!!」 アトリビュートキャリバー解放! 双剣に炎の属性を込め、六閃化の名の下に群れる死体どもを薙ぎコロがしてゆく! 強制火葬だ!大人しく成仏しろ亡霊ども! 中井出「だぁあああらぁあああああっ!!!!」 ヒュフォフォフォフォフォンッ!!!ヴォガガガガォオオンッ!!! アンデッド軍団『ケギャアアアアッ……!!!』 重力などほぼないといえるほどの軽さの剣が空を裂き、 炎の剣閃を放っては、追うようにして五閃の閃きが敵を破壊する。 よし……ソンビやグールはてんで脅威じゃない。 むしろ動きが遅いから攻撃さえ受けることもないだろう。 問題は─── スケルトンナイト『コアァッ!!』 ビュフォンッ! 中井出「おあゎっ!?」 長剣を用い、火円の加護外から攻撃を当てに来るスケルトンだ。 しかもこのレベルになると敵でも剣閃を放ってくるらしく、 注意してなければ手痛いダメージを受けることになる。 スケルトンナイト『ケァアッ!!』 シュガアッフィィンッ!! ───っと!早速剣閃か! 中井出「“フロート”!!」 タンッ───ブワァッ!! スケルトンナイト『ケカカッ!?』 けどそんなもん、スケルトン族にさえ注意してりゃあそうそう喰らうことなんて無い! 横一閃に放たれた剣閃をフロートを使用した跳躍で躱し、 スケルトンの頭上に来たところで 中井出「“グラビティ”!!」 一気に重力を解放し、そのまま踏み潰す! ルオッ───バゴシャァアアアンッ!!!……カラカラ……。 中井出「さあ……まだまだこれから!どんどんかかってこいやぁっ!!     おぉおおらキャリバーキャリバーキャリバーキャリバーキャリバァーーーッ!!     “義聖剣”(ぎしょうけん)!!“ヴォルカニックレイザァーーーッ”!!!」 キャリバーを放ちまくり、 それが12回目に達するとを極光剣閃を放って敵の数を一気に消す。 だがそれでも次々と敵が現れのはなんの悪夢だろう。 中井出(───悪い!) 埒が明かない。 そう思った俺は遮蔽物……つまり建物へと目を向け、 ゲームの中だろうが建てた人が居るのであろう家の軍へと渾身の一発剣閃を放ち、 それらをアンデッド軍団もろとも破壊した。 もちろん家なんてまだまだいろんなところに点在している。 けど、必要な分の広ささえそこにあれば文句なんて無いのだ。 そして見よ……これが誰しもが手に入れられるわけではない究極の一品。 バックパックから取り出した自作麦茶をおもむろに飲み下し、ニヤリと笑った。  ギキィンッ!!《技能スキル“麦茶”が発動!一定時間HPTPが減らなくなった!》 ……技能スキル麦茶の効果は実にランダム。 HPTPが完全回復って時もあれば、力がアップだとか速度がアップだとか、 実にいろいろだ。 しかし今回はその中でも特に最強を誇るであろう“一定時間HPTP減らない”だ。 中井出「乱れ鎌鼬のためにスペース作ったんだけどな……」 乱れ鎌鼬ってのは一定時間、剣から強力な鎌鼬が発生するなんともお得な麦茶能力。 だがもちろん、この能力も最強を唱えたからには実に最強である。 なぜなら─── 中井出「じゃあ……さよならだお前ら」 飽きることなくボコボコと地面から出てくるアンデッドどもを見渡す。 その数たるや、ほとほと眩暈を起こす数である。 が、それもいつまで続くことやら。 中井出「っし!いくぞ相棒!」 ジークムントとジークリンデを合体させ、ジークフリードへと変化させる。 さらにそれを両手で掴み、大きく振り被ったのちにフルスイングのまま回転! そして─── 中井出「吹き飛んじまえ!極光吼竜閃(レイジングロア)ァーーーッ”!!!!ギガァッチュゥウウウウンッ!!! ボガァアアガガガガガガォオオオオンッ!!! アンデッド軍団『…………!!』 突き出されたジークフリードから放たれる巨大な極光が、 消されても次から次へと現れるアンデッドモンスターどもを次から次へと破壊する。 そう、これこそが麦茶パワー“HPTP減らない”の最大の利点。 ジークフリード最強の破壊能力レイジングロアをどれだけ放っても、 なんのペナルティも無く好きなだけ撃ったままに出来るのだ。 しかし当然こんな有難すぎる能力だ、消えるのも早い。 視界の隅のステータスバーの中の項目の一つが点滅しているのを確認すると、 すかさずレイジングロアを解除。 マグニファイの残り効果時間を確認したのちに、 グールやゾンビどもではダメだと相手が悟ったのかどうなのか、 地面を大きく抉りながら出てきたギガースゾンビを見上げたのちに疾駆を開始。 中井出「不死戦士ね……!厄介な存在だよまったく!」 残り6秒───全力で走る。 残り5秒───ゴオオ、とギガースゾンビが咆哮を放つ。 残り4秒───敵の攻撃……速いっ!?ちょ、ちょっと待て! 残り3秒───攻撃が体を掠めるが、そんなもの知ったこっちゃねぇ!跳躍!! 残り2秒───フロートの力で大きく飛んだ俺は、剣を一回転させたのちに強く握る! 残り1秒───作戦もクソもない!あとはこの大きく振り上げた剣を───!! 中井出「“黄竜剣”!!」 一気に振り下ろす! フィンッ───ギシャゴバァアォオオオオンッ!!!! 振り切る一撃がギガースゾンビの巨体を一瞬にして塵にする。 危ないな……あと少し遅れてたらただの斬りつけになってるところだ。 高らかに技名言ったのに不発だったら恥ずかしい。 しかし……なぁ神様。  ボゴッ……ズゴゴゴゴッ……!! スケルトンギガース『ギケェエエカカカカァアアッ!!!』 ギガースグール  『ルエェエアァアアッ!!!』 ギガースゾンビ  『グェエエエエエウウウ……!!!』 現れるアンデッドエネミーの全てがランクアップしてやがるんだが、 これはいったいどんな策略でどんな陰謀な事態なんだろうか。 くそぅ!とことん俺にやさしくない世界め! いいだろう……こうなった俺はここで神になってやる!! 思い知れ……そして知るがいい!リングの上には神が居ることを!! ギガースソンビ『ウォオオオオゥ!!!』 ゴォッ!!ドッガァアアアアッ!!!! 中井出「ぎっ───〜〜〜っ……!!!」 無造作に振り落とされた拳を双剣化させ交差させた剣で受け止める。 だがその衝撃と重力たるや、さすが巨人といったところ。 足が地面に減り込むほどに軋み、激痛が走る。 ガードしてもこの痛さか……正直たまらない。 たまらないけど……まいった、なんだかんだで俺、こんな状況を楽しんでるみたいだ。 中井出「近接戦闘と空中戦は男のロマン!     まして、巨大生命体とのタイマンバトルほど心踊り緊張するものなど無いだろう!     い、今の状況はもちろんタイマンなんかじゃないが、     この挑戦───我が意思という名の誇りを賭けて受けてやる!     くっ……ぜいやぁああああっ!!!!」 ギヂッ───バガァンッ!! 受け止めたままの拳を力任せに吹き飛ばすと構え直し、周りに注意を巡らせる。 とっくに囲まれてるし、俺に気配感知の能力なんて大層なものはない。 殺気だって感じられるもんじゃないだろうし、魔法だって使えない。 でも、負けないって決めたからには絶対に負けてなどやらんのだ。 スケルトンゾンビ『ルゲェアッ!!』 ゴコッ───キュボッ!! 巨大な骨のバケモノが横から物凄い速さで剣を振り下ろしてくる。 ───律儀に受けたら吹き飛ばされる!だったら避ける!! 中井出「“フロート”!!」 浮遊石の力を使った跳躍! 鬱陶しく生える雑草を刈る草刈鎌のように振るわれた巨剣を縄跳びを飛ぶように避け、 だがバゴドガァンッ!!! 中井出「ぐがぁっ!?」 空中に避けるのはマズかった。 他のアンデッドギガースどもが宙に飛んだ俺を地面に殴り落としたのだ。 硬い地面が俺の体を受け止めると、 物凄い衝撃が体を走り抜け、願っても無いのに口から血が吐き出された。 ちぃ不覚……! 原中の提督ともあろう者が、吹き飛ばされて“ぐがぁ”としか叫べないとは……! ってそんなこと言ってる場合じゃないんだからしょうがねぇって! ギガースゾンビ『グゥォオオオオゥウ……!!』 中井出    「お、おわっ……ちょっと待っ……!だぁあああっ!!!!」 グオドッゴォオオオオオンッ!!!! 中井出「ひぇええええいっ!!!!」 風を巻き込んで持ち上げられた巨大な足が、俺を潰さんと振り下ろされた。 それをなんとか逃げ出すことで避ける俺だが…… 中井出「だ、ダメ!カッコよくなんて避けられねぇ!お行儀良くなんてしてられねぇ!」 だってオラは人間だから……! 華麗な動きも綺麗な避け方も、人間を超越したやつらに任せよう! そう、俺は凡人。どこまで行っても凡人だ。 でも凡人ならせめて凡人らしく、がむしゃらに戦う雑草魂ってのを見せてやる! 中井出「我が闘法は我流……!どんな相手も力で押し切る究極のパワーバトラー!     その戦い方はまるで黒竜王のごとく!そう!力こそ正義!」 自分でも言ってること滅茶苦茶だなぁと思いながらも、強く握った双剣を構えて疾駆した。 ガタッ……後方で物音───無視!! マウス戦法なんざ一方だけを完全に狙って、あとを無視すりゃどうとでもなるんだ! たとえ狙われた一方が逃げ出したとしても、 ボクサーのスタミナに多少鍛えただけの三つ子のスタミナが追いつくものか! だから今はまえだけを!目の前のギガースゾンビだけを狙う! 中井出「せィやぁっ!!」 六閃化させたジークムントを全力で振り切る! 弧を描く六つの軌跡はギガースゾンビの腿を切り刻み、 その度にジークムントの技能スキル“火”が切り口を焼き払い、 追うようにしてボマースキルが傷口を内部から爆裂させ、足を一閃のもとに吹き飛ばす! ギガースゾンビ『ルェァアアッ……!!』 片足を失ったギガースゾンビは支えを失い倒れゆく。 そこへジークリンデを振るい、  ヴフォフォフォフォフォンッ!!  ゾガァアシャシャシャシャシャシャシャァアアアッ!!! ギガースゾンビ『グァアアギャアアア!!!』 俺目掛けて倒れてくる巨体を鎌鼬六閃で切り刻む!! ははっ、やっぱゾンビってだけあって、巨人本来の耐久力もそう残っちゃいないみたいだ。 次いで仰け反るギガースゾンビの体へえ炎の剣閃を放ち、燃やし、爆発させて塵とする。 ギガースグール『グォオェエエエエィイイ!!!』 中井出    「───!」 一体吹き飛ばして一息つくのも束の間、 聞こえた叫び声に振り向いてみればさっきの物音の正体らしきギガースグールが、 俺へ向かって既に巨大な拳を振るっていた! 避けてるんじゃ間に合わない───だったら! 中井出「ハイパーアーマー発動!!ブッ飛べカラミティー!!!」 振り向きの動作をそのままにダメージを受けても一切無視する方向で、 巨大長剣化させたジークフリードを思い切り振り被ってフルスイング!!  ドッガゾガバガシャアッ!!!! ギガースグール『───……!!!』 俺の体を強打した拳をフルスイングでブッた斬り、 発動した会心がギガースグールを一撃の下に塵にした。 ギガースの拳のダメージも火円とリングシールドが極力殺してくれたが、 さすがにカウンターダメージは相当だ。 だが構わん!パッチョンパッチョン撃ってこいやぁ!! 俺ひとりをここに残していったヤツらの陰謀を見返すためにも、俺はここで神になる! スケルトンギガース『ルゴァアアッ!!!』 中井出      「だぁりゃあっ!」 ヴオバガァッシャアアンッ!!! スケルトンギガース『ゴアッ!?』 力任せに振るうジークフリードが振り下ろされた巨剣を破壊する。 全然平気だ。今日まで頑張って育ててきた武器は巨人の巨剣にだって負けやしない。 中井出「じゃあな!せめて綺麗な花火となれ!!     炎風解放最大出力!エクスプロードブレェエエエドッ!!!!」 ジークフリードに混ざったジークムント、 ジークリンデの火と風を最大出力のままに属性に乗せ、剣閃として放つ! テオブランドのキャリバーとしてでなく、ソードマスターの秘奥義としてだ。  ゾガァッフィバゴシャォオオオンッ!!!! スケルトンギガース『グォオオオオンン…………!!』 だがそれでも威力は十分。 物凄い速度で飛翔する剣閃はスケルトンギガースの体を斜めに切り裂き、 ボマースキルがそれを大爆発へと導いた。 中井出「はっ……はぁあ……」 これで三体。 現れた巨大アンデッドは殲滅終了。 しかしそれでもメコモコと這い出てくるアンデッドどもの軍に、 俺は遠い目をしながらも体を奮い立たせるしかなかった。 中井出「ち、ちくしょうがぁああ!!なんぼでもかかってこいやぁあああっ!!!」 もはや何も恐れるものはない。 何故ってアンデッドギガースどもを倒した時、 滞納されていたツケがようやく払われたかのようにレベルアップをした。 ギガースどもが居た時でさえ、 絶えることなくゾロゾロと這い出てきていたアンデッドどもを巻き込みつつ戦ってた。 どれほどレベルが上がったのか気になるところだけど、今はそれを見てる暇も無い。 困ったことにアンデッド軍団どものレベルが現れる度に増加しているらしく、 今まで鈍足だった動きが、 バイオハザード・コードベロニカのお医者さんゾンビより速いのだ。 けど狂った贅沢を言えば、こっちの方がまだ戦いやすい。 相手が鈍足すぎるとこっちが走らなきゃならなかったけど、 これなら知能の無い標的が無造作に突っ込んできてくれるわけだから遙かに楽! 中井出「“解放”(レリーズ)!」 ジークフリードを双剣化。 さらに再び六閃化も発動させ、グミをかじった。 六閃化はただでさえHPが減っていくっていうのに、ギガースグールの拳を受けたあとだ。 今のうちに回復しておかないと、あとあと回復の機会も無くなりそうだ。 困ったことにアンデッド相手だと回復の技能スキルが発動しないようなので、 ちゃんと回復する必要があるのだ。 せっかくだからと噛んだパイングミも合わせて、HPTPを完全回復させる。 中井出「けどこの数は流石に泣きたくなるぞ、ちくしょう……!」 HPTPを回復させたのはいいが、心が折れそうです神様。 ちくしょうあのモミアゲ一等兵め、アンデッドを寄せ付ける臭いなんて創造しおって。 中井出「───ハッ!そういえばかつてのトリスタンバトルでは───!」 思い出した! そういやどっかにアンデッドモンスターを召喚してるミイラみたいなのが居たんだった! そうだよそう、今回もきっと何処かに─── ネオゾンビ『ルゲェエエエエ!!!』 中井出  「邪魔!」 ゾバババババァッ!!───ミイラ探しを邪魔するゾンビを六閃にて屠る! しかしすぐまた新たなゾンビやグールどもが俺の体へと突貫してくる! この召喚の速度といい数といい、ミイラの数は相当なんじゃなかろうかと頭痛を覚えた。 中井出「ていうかなんだよこのネオゾンビって!名前ヘン!     新しいのか!産まれたてのベイビーなのか!この死体野郎!」 (*ネオ:ある語に冠して『新』の意を表す語) ともかく双剣を思うまま振るって、 どんどんと移動速度を増してゆくアンデッド軍団を屠ってゆく。 中井出「ていうかオォイ!!敵と遭遇してねぇんだったらもういい加減、     パウダー発生要素を破壊出来てもいいだろ!?     どういう行動とってんだよぉおお!!早くして!早くぅうううっ!!!」 斬り続け、吹き飛ばし続け、そろそろ敵の速度がヤバくなってきた。 既にこれアンデッドモンスターの動きじゃなくなってる。 しかも耐久力もついてきやがったのだ。 だが負けん!!この博光とて戦士! クラス・ペシュメルガの名の下に、おまんら───ゆるさんぜよ!!
【Side───弦月彰利】 モシャアアン…… 悠介 「……よし、ゾンビパウダーはこれで全部燃やしたな?」 彰利 「楽勝だったなぁ。敵との遭遇一切無し」 ルナ 「これで上のゾンビたち、消えるかな」 彰利 「大丈夫でないのかい?どれ、試しに清水たちにtell送ってみよ。     ン〜〜〜…………OH、YO!清水かね!?」 声  『おー、清水だけど。どしたー?全然上がってこないから心配してたんだが』 彰利 「いやいや、こっちはこっちで風に流されてからいろいろあってね。     で、ちと訊きたいことがあってね?     キミたちゾンビパウダー破壊作戦に関係してたよね?」 声  『お、懐かしいこと言うな。     おお、そのミッションには出陣したぞ。それがどうかしたか?』 彰利 「ウヌ。えっとさ、今アンデッドモンスターと戦ってんだけどね?(中井出が)     ゾンビパウダーさえ破壊すりゃあアンデッドどもは出現しなくなったりする?」 声  『へ?あ、いや。ゾンビパウダーはあくまで人をゾンビにするものであって、     アンデッドモンスターがしつこく出てくるのはミイラネクロマンサーの仕業だぞ』 彰利 「なんと!?」 全員 『………………』 その言葉を聞いた、この場に居る全員が固まりました。 声  『だから悪いことは言わないから、     ゾンビパウダー燃やすよりもまずミイラを殺すことをオススメする。     確かに経験値はもらえるけど、冗談抜きでキリがないから』 彰利 「ア、アゥワワワ……」 ヤバイです神様、中井出に任せてきちゃいました。 彼ひとりであの数を捌ききり、さらにミイラまで倒せるでしょうか。 ───ポム。 彰利 「ウ、ウィ?誰?僕の肩を叩くのは」 悠介 「……行くか」 彰利 「うわっ!めっちゃいい顔!!え!?行くの!?中井出は!?」 悠介 「捨て置け」 彰利 「うわひでぇ!!捨て置けと来たよこの人!」 悠介 「しょうがないだろ。これからあそこまで戻るのはロスタイムだし、     それに中井出は俺達の中では既に一番レベルが高い。     武器の強さも相当だし、今はあいつを信じて前に進むべきだ」 ゼット「同感だな。つまらん雑魚の始末はあいつに任せておけばいい。     これくらい乗り越えられんようでは、認めることも出来ん」 彰利 「ウィ?認めるって?」 ゼット「……さてな。どうする、行くのか行かないのか」 彰利 「ぬ、ぬう!行くさ!行くよ!?中井出はエロでマニアで幸薄いヤツだが、     ここぞって時はきちんとやってくれる男だ!     そんなアイツを信じねぇわけねーべよ!」 さあ行こう……!中井出を漢にしてやるために……! 【Side───無情にもEnd】
ズガガガガガガゾフィヴフォガゴシャバギャゴシャドガズバゴコォッフィィンッ!!! ネオアンデッド軍団『ルォオギャアアアアッ!!!』 中井出      「おぉおおぉおおおおっ!!!!!」 ようやく10分が経過した今、再び燃え盛るマグニファイが俺の魂に火をつける。 吹き飛ぶ死者どもに燃え盛る死者ども、そして爆裂する死者どもに切り刻まれる死者ども。 まとめて吹き飛ばし、なおも迫る敵を斬り、穿ち、爆破させてゆく。 中井出「“斬光烈空刃”!!だぁああららららららぁああああっ!!!!!」 シュゴォッフィゾガガガガガガガガォオオンッ!!! ネオタクシムども『クギャァアアアアッ!!!!』 10秒間双剣にこもる黄竜の力。 それを六閃化させた双剣から幾重にも放ち、その威力を以って屠り続ける!! もはや景色を埋め尽くさんとするアンデッドどもの数は圧倒的なものだ。 だがそれでも、振れば殺せるし放てば景色が見える。 この場を任された限りは限界が近づくまでは逃げ出さん!! もちろん限界来たら全力で逃げるけどね!?だって死にたくないし! かっこわるいと笑わば笑え!だがこれぞ俺の生き様だ! 挑戦してみて本当にダメだと思ったら素直に逃げる! それが人間本来の生き方ってもんだろ! 中井出「8……9……10!!」 10秒経ち、消滅するミニ黄竜斬光剣。 だが即座に発動させたアトリビュートキャリバーが再び双剣を光の剣と化させ、 振るう弧の軌跡が六閃の剣閃を放ち、場を埋めんとする死者どもを薙ぎ払う! 中井出「っかぁーーーーっ!!いったい何体居るんだよくそぉおーーーーーっ!!!     4!5!6!7!8!9!10!11!12!“義聖剣”(ぎしょうけん)
!!」 キャリバーで散々薙ぎ払おうが次々と迫り来る死者ども。 それを炎風の極光剣、ヴォルカニックレイザーで横一閃に一気薙ぎ払う!  ギガガドゴゴバァアアアアアンッ!!!! ネオアンデッド軍団『ケギャアアーーーーーーッ!!!!』 景色は随分と開けた。 塵となってゆく死者どもと、久しぶりに見た気がする広い地面。 しかしその地面からやはり現れる色違いの死者ども。 ……もう泣きたかった。 中井出「くそっ!だったら何回だってやってやる!ジークフリード!」 技能スキル、火と鎌鼬をジークフリードから発現させる。 そしてやはり、自らを回転させて炎の鎌鼬を放ち、 風で敵の群集を出来るだけ一箇所に集めると、 ジークフリードをジークムントとジークリンデに解放。 すかさず最後のストックとなった背水を解放し、素早く言を唱えて─── 中井出「二刀流居合い!“羅生門”!!」 ヂャガガガガギバァッシャォオオオンッ!!!! 一箇所に集めた死者ども目掛けて爆烈居合いを一閃! その全てを破壊し、さらにグミを噛んで次に備える! 自ら後ろの無い狭い場所へと下がり、 物凄い速度で地面から這い出てきては俺目掛けて襲い掛かる敵を睨んで双剣を長剣化! 中井出「くらえ!極光吼竜閃(レイジングロア)ァーーーーーッ”!!!!コアァアッ───バガァアアッ!! チュガァアアアオオオオォォォンッ!!!!! ネオアンデッド軍団『ギゲッ───、………………!!』 愚かしくも一直線。 愚直に真っ直ぐ襲い掛かってきた死者どもを破壊の極光で滅ぼした。 もちろんすぐにグミを噛んでHPは回復させたが───ぺぺらぺっぺぺ〜♪ 中井出「はぁ……もうステータス見るのも億劫だ……」 なにせ、敵がまだまだ出てきているのだ。 しかも今度はネオギガースゾンビって……さっきより巨大なギガースゾンビが現れる始末。 さらにいえば普通のネオソンビとかもさっきと同じ勢いでゴボゴボ出てきてる。 神様……これはいったいどういった試練なんでしょうか……。 そう思った俺は、いつか神をチェーンソーで斬殺してやると心に誓ったのだった。 中井出「ハッ!そ、そうか!ひとりで戦う者に助けが入るのはRPGの常套パターン!     きっと俺の袂にも誰かが助けに来てくれるに違いない!よし!誰かって誰だ!」 もうくだらない希望にすがるのはヤメにした。 きっと今にみんながパウダー燃やしたYO!とか言って戻って来てくれるんだ! それで一緒に戦ってくれるの!そしたらもうあっという間に戦い終わるんだよ!? ウ、ウフ、ウフフフフ……!! 中井出「ちっくしょういつになったら戻ってくんだ馬鹿ぁーーーっ!!!」 俺はもう、それこそくだらない希望にすがるのはヤメにした。 どうせみんなもうジュノーンのところに向かってるのさ。そうに違いないさ。 だったらここで敵を引き付けとくのが俺の役目で…… きっと誰も助けには来てくれないのさ。 な、泣いてないよ!?僕強い子だもんちくしょう!!神様なんて大嫌いだ!! 少し滲んでしまった視界をグイッと拭い、双剣にした武器を手に駆け出した。 後は野となれ山となれ。どうか俺に幸あれ! Next Menu back