───冒険の書112/元素大会本選編2───
【ケース320:晦悠介/ホーリーオーダーVSブラックオーダー(再)】 疾駆し、激突するふたつの意思。 手に持つ武具は互いに剣。 黒の剣と皇竜剣を手に、片時も目を離さずに互いが互いの急所を躊躇なく貫きにいく。 悠介 『疾ッ!』 ヒュオパギィンッ!!ヂギィンガギィンガギィンパギィンッ!! 彰利 『つっ……おぉらぁっ!!』 ルフォンギヂィンッ!!ガッ……ガキィンッ!! 弧が弧を弾き、点を虚空を裂き、時に肉を削ぐ。 連ねる連撃は刹那に5を越え、だがそれでも互いを仕留めるには至らない。 悠介 『せいっ!!』 バッガァッ!! 彰利 『くはっ……!』 放たれる弧をくぐり、そのまま肩からぶつかって彰利を吹き飛ばす。 そして一時のみ崩れる体勢に現れる間隙を逃さず拳を振るい、 さらに間合いを話してラグに力を込める! 悠介 『“緋竜槍”(ゲイボルグ)
!!』 緋い槍へと変異させたラグを彰利目掛けて投擲する! だがカタチと色で効果が理解できたのか、彰利も黒から30もの武具を引きずり出し、 やがて散開する鏃へとそれを合わせて相殺……! 彰利 『───詰める!!』 悠介 『おおっ!?』 以前の彰利だったらここで爆煙を裂いてまで追撃してくることなんてなかった。 それが妙に嬉しかったのか、俺の体がドクンとうずく。 悠介 『ラグ!』 すぐさま緋竜槍を手元に戻し、皇竜剣に変異させる。 だが目の前の彰利は既に剣を振り下ろしてる───構うか!!  ザブシャア!! 悠介 『づっ───ぅうううぁああああっ!!!!』 肩に激痛───だが無視する!! 勢いをそのままに、鎖骨がギヂリと音を鳴らそうが振り切る!! 彰利 『んなっ《ザゴォンッ!!》ぎっ!』 彰利の腹を裂く。 だが当然一撃で終わるなんて思ってない! 一歩を踏み込んで、切り裂いた腹へと手刀を! 彰利 (カリバーンエクスプロージョンか!?     けどこっちだって一撃で終わるなんて思っちゃいねぇ!!) ズ───ゾリュンッ!! 悠介 『───!?』 突き出した手刀に手応えがまるでない! が、構うか!黒に埋まってるならそれは彰利の内部だ! 悠介 『カリバーン───《ビジュンッ!》───にっ!?』 消えた───転移!? くっそ馬鹿か!全力で戦える喜びで相手の能力もなにもかも忘れるなんて馬鹿だ!! 眼前から消えたってことは背後!だったら絶氷膜でガードを!! 悠介 『くっ!フェン《ゾフィィンッ!!》ッ…………リル!!』 間に合わずに背中を斬られた───が!  ヂギッ───ギャリリリリリィイインッ!!!! 声  『うぉわっ……!?』 追撃は阻止する!! 即座に振り向いた景色にはさらに黒剣を振っていたであろう彰利が、 ラグを変換したダイヤモンドダストカーテンによって剣を弾かれていた。 俺はその隙に完全に彰利に向き直ると、虚空に武具を創造して一気に放つ!!  キィイ───ガガガォンガォンガォンガォオオンッ!!!! インフィニティ・バレット・アームズ! 容赦せず突撃するなら手数で押して強力な一撃を決める! 彰利 『へっ!だったらぁ───ぜいやぁっ!!』  ギャギィイイイイリリリリィイイイイイッ───ギヂィンッ!!! なにを思ったのか、彰利が乱暴に絶氷膜を斬り散らし、虚空に舞わせる。 いや───なにを思ったのか、じゃない!  ヂガガガガガガガァアアォオオオオンッ!!!! 悠介 『───!チィイッ!!』 散らした絶氷膜を自分の盾にしやがった! 普通に光の武具として創造するものならまだしも、ラグを変換させたフェンリルだ……! そう簡単に貫ける筈もない───! 悠介 『手に戻れ!ラグ!』 彰利 『───!待ってたぜそいつを!』 変換したラグが手元に戻る様を見て、彰利がそれを追うように疾駆する! 〜〜……よく考えてやがる! 広げられたラグが手元に戻る間、それは盾のままで俺のところにまで戻る……! しかもラグが手元に戻る瞬間、武器を持たない俺は恰好の的だ……! 手元に戻ったラグを武器に変換する僅かな間隙を狙われたら───! 悠介 『だったら新たに創造するまでだ!“剣槍雨”(バレットアームズ)!!』 彰利 『んなっ!?』 そう、だったら手元に戻す前に変換して放てばいい! 絶氷の膜を無数の光の武具に変換した俺は、それを強い意思の下に放つ!! 当然勢いがつきすぎた彰利は急には止まれない! 彰利 『だったら転移だ!』 しかし彰利は即座に疾駆を転移に変え、再び俺の背後に現れる! けど───残念ながらこの一手はしっかりと視ていた!! 転移は遠い距離も近い距離も一瞬にして飛べるが、 その分遠くても近くても転移と出現に僅かな時間がかかる。 その僅かな時間のうちにラグを手元に戻して、 俺の行動に気づいて再び転移しようとする彰利目掛けて───一気に振るう!! 悠介 『“乖離剣”(エア)!!』  ガカァアアッフィィイインッ!!! 彰利 『げはっ……!?い、がぁああああっ!!!』 乖離の剣にて斬り分かつは、転移空間と彰利の乖離!! 転移する筈だった未来を斬り滅ぼすが如く、亜空から彰利を弾き飛ばす! 彰利 『こっ……!んなっ……!なんて無茶苦茶なことしやがる……!!』 悠介 『無茶はお互いさまだたわけ!!───疾!!』 地面を踏み砕き、一気に詰める!! ラグに力の全てを託し、黄昏さえもエンチャントさせて解放する───! その輝きを前に、その名を叫べ!! 悠介 『“吼竜剣”!!』 フィンッ───ギシャゾガァッフィィイインッ!!!! 彰利 『あっ、ぐ───がぁああああっ!!!!』 虚空から弾き出され、無防備となっていた彰利に最高の一撃を見舞う! だが咄嗟に体を完全に黒に染め、体を曖昧に分割しやがった……! お蔭で半身は吹き飛んだが、もう半身が体を復活させる……! 彰利 『突進力も威力もかなり高い───けど、一撃でキメられなけりゃ隙だらけだ!』 やがて、隙だらけな俺へと、体を実体化させた彰利がドガァンッ!! 彰利 『げはぁっ!?』 後方に待機させておいたロンギヌスに肩を貫かれて一時怯む。 俺はその隙に大地に足を着き、勢いのあまり滑る体を強引に立て直してラグを変換させる! 彰利 『チッ───そう何度も喰うか!』 と、俺が振り向き様に攻撃を決めると月視力で詠んだのか、 彰利が再び体を黒にして実態を曖昧にさせる。 だが知れ、暗黒の死神王よ。 お前のその能力こそが、最大の弱点であることを!! 悠介 『“黒殺剣”(ブルトガング)!!』 ラグに叩き込むイメージは暗黒殺し! 体を曖昧にしようがどうしようが、これは黒を殺す光の剣! 避けられるもんなら───避けてみろ! 彰利 『だからっ……喰うかっつってんだよ!!』 ズボォァアッ!! 悠介 『っ───!?』 消えた……!?いや、潜りやがった!俺の影に! 当然弧は空を裂き、思い切りそれを振るった俺はバランスを崩し─── 彰利 『隙ありだ───フルブレイクカタストロファーーーーッ!!!』 その状態のまま、俺の影を固定して俺の動きさえ封じた彰利が、 地面から巨大な極光を───爆発させるのではなく、レーザーとして放つ!! ───!やべっ……避けられ───ギゴバシャァアォオオンッ!!! ズガァアアガガガゴバァアアンッ!!!! 悠介 『がぁあああああああああああっ!!!!』 大気震動どころじゃない。 空気さえ破壊するくらいの黒光の粒子の塊が大砲となり、俺の体を破壊する。 まともに喰らった……!ヤバイ───!体が耐えきれねぇっ……!! 悠介 『がっ……!ラ───グ!!』 ギヂィンッ!!ガカァアアアッ!! 一時的───ラグにバカデカい黒い極光をエンチャントさせ、即座に解放させる! だが当然勢いも行き先も無くなった力はその場で爆発し、 体こそ消滅しなかったものの、俺は武舞台へと叩きつけられた。 悠介 『がはっ……ぐ、ぎ……!!』 彰利 『悪ぃな───俺の勝ちだ!!』 立とうとするが───体が思うように動かない。 さらに彰利が一気に詰めに入り、疾駆し、俺目掛けてルナカオスを振り落とす!! 終わる……これで終わるのか? せっかくこいつが慢心を捨てて、全力でぶつかってきてくれてるのにか? 過去の空界でこいつと戦ったのなんて茶番でしかない。 蒼空院邸で本気の戦いした時も、結局決着らしい決着なんてつかなかった。 俺は全部出し切ったか? もうやれることなど無いって言い切れるのか……? 悠介 『───まだだ!!《ザゴォッ!!ビシャッ……!》』 彰利 『なっ……!?』 振るわれた剣に合わせた左腕が斬り飛び、頬が血に染まる。 だが腕を劣りにすることで体を斬られることは防いだ。 だったら次だ。斬り飛んだ腕を創造して、ラグを構える! そうだ───リタイアしない限り、いつまでだって戦える! 悠介 『覚醒しろ!“万象担う創世の法鍵(スピリッツオブラインゲート)”!!』 彰利 『懲りずに世界創造か!そりゃ世界はお前に力を齎し続けるだろうがさ!     それに頼りすぎるのは絶対に隙になるぜ!!』 悠介 『おっ……お前にそんなこと言われたくねぇ!!“皇竜剣(ラグナロク)”!!』 汲々される力をラグに流す。 生半可な力じゃ霧散されるか無効化されちまう───! 連撃の全てを一撃必殺のつもりで、力が続く限り何度だって放つ!! 悠介 『おぉおおあああああああああっ!!!』 彰利 『ハッ……実は一度やってみたかったことがあってね。     今の俺ならきっと出来る───そう信じてる。     だから……その既存、破壊させてもらう!!』 悠介 『───!?』 彰利がブラックオーダーを解除し、完全に生身に戻る。 しかしそれはただ戻っただけではなく、 散々高めた鎌をまた様々な鎌に戻し、構えるといった戻り方。 いったい何考えて─── 彰利 『発動しろ!“運命破壊せし漆黒の鎌(デスティニーブレイカー)”!!』 悠介 『なっ───《ガッシャァアアアアンッ!!》くっ……あ……!?」 いざ斬りつけんと疾駆した体が、急に破壊された世界の反動をもろに喰らいよろめく。 姿は精霊の法衣から普通の装備へと変わり、持っていたラグまでもが消滅する。 彰利 『破壊するものの存在力が大きければ大きいほど効果時間が短いコレだが───     散々力を高めた今の自分なら、絶対に成功するって信じてた!     やっぱりせいぜいで数秒程度の効果時間だけど……』 トンッ───彰利の右手が、俺の心臓部分へと触れる。 彰利 『それだけあれば十分だ!!』 次いでゾバァン!と彰利の背に漆黒の八翼が出現し、 そこから流れる力が右手へと流れ───! 彰利 『“皇竜闇光砲”(レヴァリアントブラスター)!!』 ギシャオボゴォオッフィィイインッ!!! 悠介 「───、がっ……」 俺の心臓を、放たれた黒い極光が破壊し、観客席を破壊した。 悠介 「……、───」 血が溢れる。 ドクンドクンと鳴っていた心臓の鼓動は、そのカタチごと俺の中から消え─── ただ、辿り着くべき心臓を目指す血だけが、地面を真っ赤に染めていた。 だってのに思考を埋め尽くす思いは“喜び”ときたもんだ。 だってしょうがないだろう、あの彰利が真面目に俺とぶつかってくれたのだ。 しかも勝負が決するまでは手を抜かず、 まだ意識がある俺を見てルナカオスを構えているんだ。 大丈夫だ……今創造する。 自分の分析なんてとっくにできている。 無くなった心臓もなにもかも、全部創造してまた戦うから…… 悠介 「あ、……」 ……イメージがまとまらない。 思考が混濁していく。 ……濁る。 思考も、視界も、なにもかもが。 ああ……そっか、なんだ……負けるのか。 まいったな……彰利の野郎、 “俺が創造の理力を使える”って決まりごとまで破壊してやがる。 いくらイメージを弾かせてもなにも出ない。 だめか……くそ。 悠介 「………」 彰利 『……、……』 ははっ……肩で息してら……。 それだけ本気出してくれたってことか……? だったら─── 悠介 「……っ……、かっ……えはっ……!」 彰利 『……!?』 だったら……!体が動く限りは、応えなきゃならねぇ……!! バックパックに入ってる、使い古した武器でもいい……! 武器をとって、こいつと───、…… いつ、まで……も──────ドサァッ。 彰利    『───え?』 中井出   「倒れ……た?」 マクスウェル『うむ……心臓を破壊されては続行は無理じゃろうな。この勝負───』 彰利    『……よっしゃあ!俺の勝ち───《ザゴォンッ!!》げはっ!?』 マクスウェル『むおぉっ!?』 中井出   「うぇえっ!?」 ───待って……いた……! お前が……勝利を前に油断するのを……! 彰利 『げはっ……!がはっ……!悠……介ぇええ……!!』 気力を振り絞り、投げた剣が彰利の喉を貫通した。 その突然のダメージに驚愕した彰利が全ての意識を自らの回復に専念した時、 俺の心臓の創造、体の修復も完了していた。 ───そして走る。 思考は濁ったままだ、イメージを纏めて創造するなんてことは出来ない。 だから走った。 走って───彰利の喉に突き刺さった剣を強く握り、貫いた喉を強引に───引き裂く! 彰利 『チッ───!ほんと呆れたしぶとさだなお前!!』 だが彰利は体を黒で埋め尽くし、斬り裂く筈だった首の実体をぼやかして攻撃を避ける! 悠介 「っ……!くっそ……!」 思考がぼやける。 血を流しすぎた……! 心臓のイメージは濁る前にとうに出来てたから大丈夫だったが……! 彰利 『“サウザンドアームズ”!!』 コォオッ……ゾボボボボボボボォッ!!! しかも彰利は最後の詰めに入ったのか、それとももう一切の油断もしないと踏んだのか、 サウザンドアームズを解放させ、黒から無数の武具を作り出した。 くそ……こっちは思考が全然回復しない。 目の前で起こっている出来事は確認できるのに、 それをどうすればいいかがパッと浮かんでこない。 い、いや……避けるんだ……そう、避けなきゃいけない。 くそっ……もっと回転しろ!こんなんじゃ続けられても意味がないだろう! なにか方法を───この場を乗り切る力を───……! くそ!だめだ、思いつかない! いくらゲームの中だから死んだりしないからって、 モンスターにやられて死ぬのと真剣勝負で負けて死ぬのとじゃあ訳が違う! 俺は─── 悠介 (───!?そうか!!) やがて黒い武具が幾重にも放たれる。 もちろん俺のみを標的にし、何度も、何度も。 それが武舞台の石床を破壊し、砕き、土煙を巻き起こすほどに何度も何度も放たれ、 躱すのもやっとなくらいにフラフラになりながら、 幾度も身に受けらながらも……それでも、耐えた先にはきっと勝機が待っていると信じる! 彰利 『……どうだ?───!?』 そしてとうとう、視界が砂煙で埋まる頃、黒い武具の雨は止んだ。 やがて風によって砂煙が張れる頃───その景色を、黄昏の草原が埋め尽くしてゆく! 悠介 『ストック解除……!!“黄昏”(ノスタルジア)!!』 その正体は随分前にストックした黄昏だ。 そう、この世界はゲームで……ストックしたものは、まだここに残っていた。 ゲームの在り方なんか勝手に乗り越えて、そんな状態で戦ってた俺は…… こんな能力の使い方もあったってこと自体忘れてた。 相変わらず思考はボロボロだ。 でも……策が無いわけじゃないんだ。 悠介 『超越……解放』 ゲームの中の能力に、詳しい思考なんて必要じゃない。 ましてそれがアビリティなら尚更だ。 俺はストックで解放した黄昏に、超越者の能力である超越を上乗せ。 すると黄昏に力が篭り、黄昏の世界が万象担う創世の法鍵へと姿を変える。 彰利 『んな馬鹿な……冗談だろ!?あんだけ血が出たってのに……!     意識朦朧でフラフラのヤツがイメージなんて出来るわけが───!』 悠介 『ハハ……寝言は寝て言え馬鹿野郎……っ……!     そういう……決まりごとめいたものを越えていくのが超越者で……!     破壊していくのが……運命破壊の死神だろうが……!!』 手の中に出現したラグを握る。 体の傷がラインゲートの力で少しずつ癒されていくと、 思考の濁りも少しずつだが回復していく。 けど作戦なんてものはない。 ただ、全力でぶつかるのみだ。 ゲーム方面の能力だから光の武具の創造は出来ない。 けど、ラグがあれば……まだ戦える! 彰利 『……上等!!だったらこっちも全力以上の全力でいかせてもらう!!』 闇  『覚悟はいいかぁ!?荊棘を踏んだぞぉ!!』 影  『邪魔者は全て滅ぼす!!』 悠介 『……ラグ』 八翼に闇と影が宿る様を眺め、俺はただラグを強く握っていた。 仕掛けは簡単だ。 ようはイメージ───自分を深淵ごとラグに託し、 使えない濁りなんかも全部捨ててしまう。 悠介 『“魂源反転(オルタネイト)”!!』 魂の交換をする。 もちろんこの言を唱えたからといって、悠黄奈と交代するわけじゃない。 俺の中に悠黄奈は居ないし、居るのは俺の中じゃあそもそもない。 ラグ 『───了解した、我が主』 交代するのはラグとだ。 俺の思考は未だ濁りが混ざっている。 だが、剣の意思であるラグと交代すれば濁りなんてものは無くなる筈だ。 何故なら逆に剣に引っ込んだ俺の意思が混濁したままだからだ。 彰利 『んなっ……そんな奥の手残してやがったのか!     まあいい、こっちは俺の武器も合わせて九刀流だ!     どちらにしろ突進力では負けやしねぇっ!!』 彰利が俺目掛けて疾駆する。 対してラグは俺の体で静かに息を整え、地面を蹴り弾くと彰利に向かって疾駆。 俺みたいに躊躇することなく、加護を得た精霊からの力の汲々を全力で受け、 体を輝かせるとゾガァッフィィインッ!!! 彰利 『───!え……!?』 振り抜く一撃で、意思を持つ彰利の飛翼のうちの一頭を斬り飛ばした。 さらに彰利が驚愕に染まる間隙に追撃を放ち二頭目、 彰利が振るうルナカオスを跳躍で避けるついでに体を回転させて三頭目を斬り、 その跳躍で離れた虚空の間合いからレンジ/アローで変換させた皇竜剣から光の弓を発射。 四頭目を破壊し、着地する前にレンジ/ブレイクを唱え、 すぐ後ろに転移してきた彰利の行動の一手を予測し攻撃を躱して五頭目を破壊。 ……物凄い体捌きだ。 予測の仕方や隙の殺し方も相当だ。 ラグ 『戯言を。主よ、これは本来貴公が持つ身体能力だ』 俺の思考を受け、言葉を返しながら剣を振るうラグ。 その数閃が残りの三頭を悉く破壊し、驚愕に染まる彰利へと一撃を振り下ろす!!  ザゴフィィンッ!! 彰利 『がぁあっ!!ぐっ……!!』 疾駆から跳躍の上昇中に奔らせた一閃で三頭を破壊したラグは、 落下と同時に彰利の肩へと剣を一気に落とした。 それにより裂ける肉と砕ける骨。 やがて彰利が武舞台に膝をついて崩れると、 ラグは間合いを取って息のひとつも乱さないままに言う。 ラグ 『主、貴公はまだやさしすぎるくらいやさしい。     私を完全に扱いたいのなら、非情になるくらいが丁度いい。     貴公と精霊は馴れ合いのために契約を結んだのではないだろう。     守りたいものを守れるなら人間じゃなくてもいい。     それほどのことを言った貴公の覚悟は何処へいったのだ』 む…………。 ラグ 『精霊からの力の汲々───それこそが貴公のラインゲートの真の力だ。     それを行使しないのは主の甘さとやさしさからくるもの。     だがそれは───先ほどのあの男が言った言葉を裏切る意思に繋がる』 な……そりゃどういうことだ。 ラグ 『武器を持つ時、覚悟を決めたとあの男は言っていた。     そう、なにかを殺す力を持つということには覚悟が必要だ。     あの男はそれなりの覚悟の上で今日までを生きてきただろう。     貴公はそれに同意し、更待春菜に忠告までした』 そ、それがどした? ラグ 『ならば問おう。     貴公は、貴公の力となるために契約してくれた精霊たちの意思を裏切る気か?』 ───、あっちゃあ……そこを突いてきたか……。 ラグ 『理解出来ていたんだろう。     だが精霊たちも守りたいもののうちだから出来なかった。     しかし結果はどうだ。貴公が負ければ精霊がどうとかなど問題ではなくなる。     貴公は守りたいものを守りたいと思うのであれば、絶対に負けてはならないのだ』 …………。 ラグ 『故に前を向け。     レヴァルグリードが完全に覚醒していない今の弦月彰利にならまだ勝てる』 ……なんだ、お前も解ってたのか。 ラグ 『当然だ。どれだけの付き合いだと思っている。     あまり情けないようではいい加減に見限るぞ……“魂源反転(オルタネイト)”』 ラグが目を閉じ、溜め息を吐くように言を唱える。 すると俺とラグの意識が交代され、俺の体に俺の意識が戻る。 悠介 『───はぁ……!』 整える呼吸は一度。 あれだけ動いたってのに呼吸のひとつも乱れてないなんて、どういう動きだ。 とはいえ……解ったことは確かにある。 散々な修行、散々な特訓、散々な練習…… 今までやってきたことは全て出し切ってたつもりだったけど、 その実俺はてんで出し切れてなんていなかったんだ。 それをラグは知ってて、あれだけの動きを見せてくれた。 悠介 『俺に必要なのは過信しすぎるくらいの自信……か』 ラインゲート解放のきっかけとなった意味を思い出す。 慢心と自信は違う。 自信は行動に必要なものだけど、慢心は行動を妨げるものだ。 故に必要なのは、自分はこれが出来るって信じる心。 修行も特訓も練習も、出来ることはなんだってしてきた。 それなのに何が足らずに情けない自分を晒し、 体を痛めつけ、周りに迷惑をかけていたのか。 そんなの、自分の力の在り方に自信がなかったからに決まってる。 悠介 『……イメージしろ……もっと、もっと、強く、強く……!』 自分の体は自由なのだと。 我が意思と同じく自由であり、不自由な部分などないと信じろ。 もし体が追いつかないのだというのなら、 追いつかない部分を理力で繋げて意思のもとにでっちあげろ。 出来ると思うことが成功に繋がる───それが想像する者の力になるんだから。 悠介 (───よし!!全力でやるって決めたら最後まで全力で、だ!) 覚悟は決まった。 俺はラグを振るい、それこそ力の全てを奪うかのように精霊から力を吸収する!! 悠介 『いくぜ彰利ぃいいっ!!!』 彰利 『〜〜っ……おお上等だ!!いくぜぇええええっ!!!』 肩の傷と内部の骨を治していた彰利が立ち上がりざまに疾駆! 既に疾駆していた俺へと飛翔するかのように駆け、ルナカオスを強く握る!! 動作は一呼吸の内───無駄な動きは一切切除する!! 蹴り弾く石床が壊れるほどの真横への跳躍と、 剣に込める力を殺さずに確実に相手に叩き込む! 避けの動作なんて知らない!全ては───こいつの全力に応えるために!! 悠介 『だぁああああっ!!!!』 彰利 『ッ───ツガァアアアアアッ!!!!』 やがて衝突する精霊と死神。 一合では終わらず、火花が文字通り火の花を咲かせるくらいの速度で二合三合を繰り出し、 それでもなお止まらず、互いが互いの破壊をこの一時のみ真に穿たんとする。 弾ききれなくとも体を捌き、肉は殺がせるが骨までは至らせない。 舞い散る火花と血飛沫が俺と彰利、 二人の周囲を紅蓮に彩る世界はまるで闇に裂く花を連想させる景色のようだった。 闇は緋を飲み込まんと我が腕を裂き、緋は闇を光で掻き消さんと頬を裂く。 だがこの剣戟もやがて終わりが訪れる。 幾重にも連ねる連撃に果てなどないと見えるのは幻。 いくら死力を振り絞ろうが、限界の無い能力など存在しないのだから。 悠介&彰利『せいぃっ!!』  ガギィッ!───ヂィインッ!!! 既に何合に至ったのか。 俺と彰利は互いを斬り飛ばすようにして間合いを取ると、 かける言葉も休む間もなく再び真っ直ぐに跳躍した。 それこそ己を弾丸にでもするかのように、敵目掛けて真っ直ぐに。 そして、これが最後の合となることを互いに理解し、 渾身を以って最後の一撃となる弧を描く。  ギッ───パァンッ!!! ───! 発せられたのは誰の驚愕……いや、或いは互いの驚愕の声だったのかもしれない。 振るわれた一閃は互いが振り切られ、舞う血は石の地面を濡らしてゆく。 彰利 「……かっ……!くそっ……!」 ドサ、と彰利が前のめりに倒れた。 その横に回転し、突き刺さるのは───ルナカオスの剣先。 それはやがて黒に戻ると、彰利の影へと沈んでいった。 悠介 「かっ……はぁ……!!」 紙一重にも程がある。 勝てた理由はたったひとつだろう。 彰利の剣が黒で、俺の剣が実体を持った剣だった。 ただそれだけだ。 どれだけ密度を高めようと黒は黒。 彰利が消耗すれば密度は低くなるし、光の属性が込められれば壊れやすくなる。 もちろん俺はそんな属性なんてもってないし、創造出来るほど混濁は回復してなかった。 黒の剣が砕けた理由は……ラインゲートから流れてきた光の精霊の力によるものだ。 マクスウェル『……うむ。気絶を確認した。この勝負、晦悠介の勝利とする』 悠介    「はっ……はぁっ……はぁ……」 一勝するのも楽じゃない。 いきなり彰利に当たるなんてツイてない証拠だ、まったく。 マクスウェル『本来ならば意思のある黒の行使、意思のある剣との交代などにより、        “己自身が戦うこと”を破ったぬしらは失格なのじゃがの。        まあ、カタイことは言いっこなしじゃな』 ナギー   『なっ……ちょっと待つのじゃじいや!        それはわしに対する挑戦かーーーっ!!』 マクスウェル『うーん……おじいちゃん耳が遠くて聞こえんわい』 ナギー   『こらぁああーーーーーっ!!!』 悠介    「………」 ……少し休もう、じゃないと次まで保たない。 そりゃすぐ回復するだろうけど、 ゼットが俺に向けて殺気込めまくってる所為で戦闘体勢解けやしない。 つまりHPTPが回復してくれないってことで……くそう、 なにか恨みでもあるのかゼットの野郎……。 グミでなんとかするしかないか……はぁ。 Next Menu back