───冒険の書114/一路、セントール王国へ───
【ケース322:中井出博光(再)/ET】 ザッザッザッザッザッザッザッザ…… 中井出「ET!!」 彰利 「ET!!」 中井出「ET!!」 彰利 「ET!!」 中井出「ET!!」 彰利 「ET!!」 中井出「ET!!」 彰利 「ET!!」 中井出「I've never been to M-78♪」 彰利 「ア〜イブネェ〜バビーントゥーエ〜ムセブンティエ〜イ♪」 中井出「Give me figures nurse and maid♪」 彰利 「ギ〜ブミ〜フィ〜ギュア〜ズナースアンドメ〜イ♪」 中井出「M78星雲には行ったことがなぁーーーーーい♪」 彰利 「M78星雲には行ったことがなぁーーーーーい♪」 中井出「オ〜レ〜にナースとメイドフィギュアをお〜くれ〜♪」 彰利 「オ〜レ〜にナースとメイドフィギュアをお〜くれ〜♪」 中井出「と〜さんに“俺はオタクだ”と伝えて〜くれ〜♪」 あの世に居る僕の家族さん、お元気でしょうか。 僕らは今、必死こいてセントール王国へと走っているところです。 え?転移能力があるならどうして使わないんだって? ええ、僕もかなり回りくどいことをしていると思います。 だけどこれはゲームで、僕らはプレイヤーなのです。 この世界じゃ精霊と魔王以外は転移魔法を行使できないという設定なのです。 というよりは覚えることが出来ないという設定です。 ならば郷に入りては郷に従えとも言いますし。 ですが安心してください、決して手抜きみたいに走ってるつもりはありません。 ルナ 「ちょ、ちょっとエロっち〜!少しは加減して走りなさいよぅーーーっ!!」 中井出「ダメだって!遅れたりしたら巨人たちがセントール滅ぼしちまうんだ!     そうなったら斉王を眠りにつかすことなんて出来やしない!     それとエロっちって言わないでお願い!!」 彰利 「ゼプシオンに訊けばいいんでないのかい?」 悠介 「あーそりゃダメだ。俺達がセントールに辿り着いて、     もし殺されたレックナートを見てがっかりとかしてみろ、     完全に敵視されて呪文がどーたらの話じゃない。     もちろんがっかりした顔しなくても、     城に居るってだけでセントール兵扱いされるだろうさ」 彰利 「うーあー、傍迷惑な話」 俺のエロっち話は無視の方向で行くらしい。 ええいだったらこっちにだって考えがある。 中井出「そんなわけだから僕らは急ぐのだ空き缶のキミよ!!」 そう、キミが僕をエロっちと呼ぶ限り、僕はキミを空き缶と呼び続けよう。 いつか斬り刻まれそうで怖いけど。 ルナ 「空き缶じゃなくて封冠!みんないつになったら覚えるの!?」 中井出(永劫無理……) 彰利 (ああ……見事な空き缶だし……) ルナ 「なんか言った!?」 彰利 「ルナっちと悠介ってお似合いの夫婦だよね!」 ルナ 「えっ!?ええっ!?」 中井出「そうそう!もう今年度のベスト夫婦賞はいただきだな!」 ルナ 「え、えへー、そうかな……」 彰利 「ンなもんねぇよダボが《ボゴシャア!!》アォウ武芸(ブゲ)
ェーーーイ!!」 中井出「む、武蔵ーーーーっ!!」 彰利が武蔵ロードになって地面を転がっていった。 流石に全力疾走中に後ろから殴られりゃああなるよな。 しかしすぐに起き上がると、 “僕を置いていかないでぇええ!”と泣き叫びながら走り出した。 しかし武蔵ロードなんて、知ってるヤツどれくらい居るんだかなぁ。 彰利 「ちくしょうなにすんのルナっち!     背中からいきなり不意打ちとは紳士のするこじゃありませんことよ!?」 ルナ 「紳士じゃないからいいの!     それに不意打ちは背中からやらないと意味ないでしょ!?」 彰利 「や、こげなところでFF11ネタ出されてもね……」 ゼット「ふむ……しかし、飛翔した方が速かったのではないか?」 みさお「ううん、ゼットくん。こうして大地を蹴ったほうが加速はつけやすいし、     それに中空に居るよりも風の抵抗はないから」 ゼット「むぐっ……セシルがそう言うならまあいいが……」 彰利 「クォックォックォッ……     早速尻に敷かれてやがるぜこのカスが《バゴシャア!》武芸ェーーーイ!!」 中井出「む、武蔵ぃいいーーーーーっ!!!!」 ゼットにすかさず殴られた彰利が再び吹っ飛んで、 全力で走る我らの視界からとっとと消えた。 しかしすぐに起き上がると“僕だけ独りなんてやだぁーーーーっ!”と叫んで追ってくる。 次いで言う言葉は“俺も行くんだよォオオーーーッ!!”系のナランチャ言葉だろう。 彰利 「ブチャラティィィィィ!行くよ!俺も行くッ!行くんだよォーーーーッ!!     俺に来るなと命令しないでくれェエーーーーッ!トリッシュは俺なんだ!俺だ!     トリッシュの腕の傷は俺のキズだ!俺も行くんだよォオーーーーーーッ!!!」 ……思いっきりだった。 当たってもてんで嬉しくもないんだけどさ。 中井出「しっかし遠いよな……かといってルルカに乗るのも今更だし」 彰利 「おー!だったら提案!一番速度の出せる中井出がひとりで乗り込んで、     セントール王を攫ってくるってのはー!?」 中井出「え?いや……本気で?」 彰利 「俺はいつだって本気だ!!」 ああそうだろうよコノヤロウ。 だが俺だけってのもなぁ。 中井出「彰利一等兵!」 彰利 「サーイェッサー!!」 中井出「俺が背負うから一緒に来るのだ!」 彰利 「断る!!」 中井出「断るなよいきなり!!これは提督としての俺の命令だ!誰にも文句は言わせん!」 彰利 「どこぞの勇者さまかテメーワ!!!俺は嫌だぜ!     巨人族なんざみ〜んな誇りだけの頭でっかちだ!     境界に突入して北の大地の次元の穴塞ぐ前、     あっさりと協力を断られてどれほどむかついたことか!     あんなの巨人じゃねぇ!あんなのは───臣人(じんじん)だ!!」 悠介 「ジンジン?なんだそりゃ」 彰利 「ほら、大臣のジンと巨人のキョって似てるじゃん?だから合わせてみました」 悠介 「物凄く意味がないな……」 彰利 「俺もそう思ってたところです……」 なんて言ってる彰利を熱血硬派くにおくんよろしく、 両腕で頭の上まで持ち上げて、俺は全速力で駆け出した。 彰利 「ギャアなにしやがるてめぇえーーーーーっ!!     た、たすけてぇ悠介!!こいつきっと俺をキャトルにミューしようってんだ!!」 悠介 「そうかー!よかったなー!」 彰利 「うんよかったー!ってアレアレェ!?     俺さっきの言葉の中のどこらへんで喜んでた!?     よかったなーなんて言われるようなこと言ったっけ!?」 中井出「隣の安東さんが溶けすぎたってねー!!」 彰利 「溶・過多(ヨカッタ)ァーーーーッ!!」 …………。 中井出「じゃ、行くか」 彰利 「そうね」 中井出「ほんとそう」 意味不明な会話をして、俺は駆け出した。 彰利は俺が持ち上げたままだ。依然変わりなく。 そんなままの状態で“うっふっふ”と怪しく笑うと、彰利が“え?”と返してくれた。 もはやこれは熱血硬派の伝統行事でしょう。 どんな伝統だかは訊かないでくれると嬉しい。 ───……。 ……。 彰利 「忍者……人にして人に非ず。その者、日に百里の道をも歩むという」 中井出「必死こいて走ってる人の上で妙なモノローグ言うのやめような!?     大体俺走ってるし忍者じゃねぇし列記とした人間だよ!!」 彰利 「目科はエロマニアンデビル種か?」 中井出「トルネードフィッシャーマンズスープレェックスゥッ!!」  ギュルルドグシャア!!! 彰利 「オギャアーーーーーッ!!」 担いでた彰利を器用に掴むと、その状態で体を横回転させながら跳躍! そしてそのまま回転しながらハイアングルキャプチュードを決めるかのように落下!! しかし彰利は平然と起き上がった。 まあ、ステータス全てAGIだし。 彰利 「しかしこう遠いと精神的に疲れるのも確か。     ならば今こそキミに見せよう。     キミがゼットに呼び出しくらって友達になってる際、     俺が悠介に創造してもらった至高の一品。     名前は“月は東に日は西に”の主人公に対抗してつけたステキネーム!     その名も───世界タービン号ならぬファイヤータービン号!!」 中井出「おお!まるでロビンのために創られたような名前の自転車!!」 彰利 「ちなみに自転車の先についているこのアノアロの杖はきちんと炎を出します。     これでマリポーサの野郎も電撃地獄だっちゃ」 中井出「そんな、マリポーサにだけ齎された差別ネタを出されてもな」 彰利 「さあ中井出!───漕げや」 中井出「お前ってどれだけ成長しても図々しいのは変わらんのな」 彰利 「それがオイラの原ソウル」 ニコリと笑う彰利を余所に、ガシャリとファイヤータービン号に跨る。 いやぁ〜、……ファンタジーに自転車って似合わねぇや。 中井出「セットイン!」 彰利 「ラジャー・ビュー!!」 中井出「レディー───ンゴォオオーーーーーッ!!!」 ギシャリ───ギシッ、ギシッ……ゴシャアアーーーーーアーーーーーッ!!!! 自転車が走り出す。 力いっぱい踏み込む足と、回転させる行動が速まれば速まるほど景色の流れも早く─── 彰利 「んごわぁ〜〜〜っ、速ウィ速ウィ〜〜〜ッ!!いけ〜、マッスルドラゴ〜ン!」 中井出「ドラゴンでもマッスルでもないよこれ!     自転車に筋肉ついてたら怖いでしょ!?怖いよね!?怖いって!!」 彰利は自転車の後ろに乗って、俺の肩に手ェ乗っけて立ってる状態。 そんな風にして流れる景色を眺めては、笑っているのだ。 ええい、笑ってる暇があったら風の抵抗でも無くしてほしいもんだ。 彰利  「サー!前方に敵機確認!いかがいたしましょうか!」 中井出 「かまわーーーん!!このまま轢く!!」 ゴブリン『フゴッ!?』 中井出 「ユニコォーーーン・ヘェーーーッド!!!」 突如前方に姿を現したゴブリン! って言っても漕ぎまくったお蔭でそう見えただけなんだが、 それでも俺はさらなる加速をしてドグルシャアアとゴブリンを撥ねた。 中井出「ファイヤァーーーッ!!」 ゴッパァアン!!!!───パラパラ…… 彰利 「うおっ、まぶしっ───つーか爆発したぞオイ!なにあれ!!」 中井出「アノアロの杖の炎にやられて、     しかも俺が駆ってる所為もあってボマーでも発動したんじゃないか?」 彰利 「……その武器って、持ってるだけでも他の道具に効果もたらすんだ……」 中井出「はっはっは、じゃなきゃマイトグローブもあんなに見事に爆発しないって」 いや実際俺も驚いたんだけどさ。 彰利 「あ〜あ、粉々だよ……」 中井出「で、えーと……セントールってどっちだったっけ」 彰利 「知らんの!?」 中井出「俺達の旅の仕方って滅茶苦茶だったからなぁ……。     ノームの洞窟から転移魔法陣に入ったあたりから方向感覚がちょっとズレてる」 彰利 「ふーむ。じゃあナビの地図でも見て───ぬおっ!?反対反対!!」 中井出「なにぃ!?俺の行動に反対するとな!?」 彰利 「そうじゃねぇだろこのタコ!!向かってる方向が逆っ……!     行動が……まるで……!逆…………!」 中井出「……なんでそこでカイジ風に喋るんだ?」 彰利 「理由なんて無いねぇ」 ともかく俺は自転車を回転させて、逆を向いたのちに再び漕ぎ出した。 今度は迷わないよう、彰利のナビつきで。 彰利 「おー、そっち左」 中井出「よっしゃーーーっ!!」 彰利 「そこの山入って」 中井出「よ、よっしゃーーーっ!!」 彰利 「悟空とベジータがポタラ合体した時の声は?」 中井出「オロナミィ〜ンシィ〜〜〜ッ!!     ───真面目に案内しろこのクズが!!」 彰利 「うるせーーっ!こちとら移動速度速すぎて案内しづらいんじゃーーーっ!!」 状況はとってもデコボコだった。 けどまあ楽しんでやってられるならそれでいいか。 中井出「じゃあ全力の全力でいくぞー!?マグニファイ!     AGIマックス自転車漕ぎィイイーーーーーッ!!!!」 カシャッ……シャガァアアラシャシャシャシャシャシャシャアアーーーーーッ!!! 彰利 「うおわ速ッ!!まるで風になったようだわ《バゴシャア!》うわらば!!     ……ゴ、ゴヘッ……!五平ッ……!!木の枝に顔面しこたま撃ちつけた……!!」 中井出「ヒィイイ!!首筋に生暖かい雫がポタポタと!!は、鼻血!?鼻血かコレ!!」 彰利 「耳汁」 中井出「怖ぇえよ!!どんな汁だよそれ!!」 彰利 「ィヤッハッハッハッハ!まあよまあよ!あ、そこ左ね」 中井出「うおお……!やたら気になる耳汁ミステリー……!!」 首筋がヤケに痒い気がするのは気の所為か? でもこの速度で片手外すと大変なことになりそうだしどうすることもできーーーーん!! 彰利 「で、そこを左行くと───」 中井出「左だな!?」 彰利 「え?あ、ギャア!左行くと崖があるから気をつけろってギャアーーーーーッ!!」 中井出「うおわ馬鹿ァアーーーーーッ!!!     ンなもん口にしなきゃこっちに行くわけギャアーーーッ!!」 こうして僕らは星になった。 ───……。 ……。 シャーーー…… 中井出「うう……ひどい目にあった……」 自転車が坂道をゆく。 崖に落ちたは落ちたが、すぐ下に大木があったお蔭で車輪がそれに引っかかり、 勢いを殺してくれたので助かったようなもんだ。 もしそうじゃなかったらと思うとゾッとする。 彰利 「貴様浮遊技とかあったんじゃねぇの?浮遊島までは飛んでいったって聞いたけど」 中井出「誰にだよ、もう。……あんな咄嗟にそんなこと出来るのは晦くらいだっての」 彰利 「あー、確かに以前の悠介ならね」 中井出「む?なんだよそりゃ。スピリットオブノートに力預けてるから出来ないっての?」 彰利 「いやいや違う違う。あいつの戦闘中の分析ってのは俺が思うに、     感情が無かったからこそ出来たもんだ。感情が戻りつつある悠介じゃ、     いざ焦りとかに呑まれたら冷静な分析なんて出来やしないと思う」 中井出「……そうなのか?その割にはお前との戦い、勝ってただろ」 彰利 「キン肉マンでいう火事場のクソ力みたいなもんさ。     ありゃそんな大層なもんじゃない。     追い詰められれば誰だって自己防衛本能で実力以上の実力を出すだろ?     あれと同じさね。追い詰められれば鼠だって猫を噛む。     弱い猫だって、犬に追い詰められれば引っ掻きもする。     ……お前なら出来たか〜?理力があるからって、     初めてドラゴンと向き合ったってのに逃げずに立ち向かう、なんてこと。     あの時……理力があるなら悠介はブラックホールでもなんでも創造して、     逃げることなんて出来た筈だった。でも逃げなかった。それは何故か?」 中井出「……感情の欠落か」 彰利 「そういうこった。恐怖って感情はあったんだろうけど、それが薄かったんだ。     俺達だって、これがゲームじゃなけりゃあ、     死んでも大丈夫って解ってなけりゃあ     巨大モンスター自体に向き合うことさえ拒否してた筈だ。当然お前も。     武器を持つことに覚悟はいるだろうけど、でもそれはこれがゲームの中だから。     実際───空界に行って、大戦に巻き込まれたらお前は人を斬れるか?」 中井出「さぁなぁ。その時になってみないと解んね。     それよりお前が真面目話をする方が怖いのが今の正直な感想だ」 彰利 「し、失礼な!!───あ、そこ右ね」 中井出「おー」 自転車は順調にセントールへ向かっている。 坂を下りてからはまた全力だ。 流れる景色の中で、俺と彰利は過去や未来、現在や……これからのことを話す。 これからのことと未来のことなんて似たようなもんだろ、ってなもんだが…… 未来って喩えるのとこれからって言うのとじゃあちょっと違う気がするのだ。 中井出「けどまあ、大戦が起きたとして、     それがこっちを脅かすものなら、出来るんじゃないか?     あくまでイメージではだけど」 彰利 「だよな。お前がそう簡単に     “人を殺す”なんて言うやつじゃないことくらい解っとるわい」 中井出「はぁそりゃあんがとさん。殴った甲斐はあったみたいだな」 彰利 「おーあれな。ヘナチョコパンチなのに芯に響いたわ」 中井出「ヘナチョコ言うな───っと見えてきたな」 彰利 「見えてきたっつーか、物凄い勢いで近づいてるな」 中井出「ていうか───この自転車ブレーキが無いんだが」 彰利 「………」 中井出「………」 彰利 「あ、足で《ボチュゥンッ!!》ギョェエエエエエァアアアアアアアアアッ!!!!     あぁああーーーーっ!!!あぁあ〜〜〜〜〜ははは〜〜〜はぁ〜〜〜っ……!!     オワァ〜〜〜ゥハァ〜〜〜ウハァ〜〜〜〜ハァ〜〜〜〜ッ……!!」 足で地面を蹴ってブレーキ掛けようとした彰利の足が、地面に弾かれて物凄い音を放った。 見れば、彰利の足は骨折したようにプラプラと揺れている。 さらに“ザ・グリード”の骨折外国人の真似をしてるところを見ると、 どうやら足が折れてるらしい。 おお怖ぇえ、何キロ出てるんだ今。 中井出「って!もう町に突入しちまったぞ!?このままじゃ城まで一直線───!!」 彰利 「───!てー!しょうがない!漕げ!思いっきり漕ぐんだ!!」 中井出「こ、この上まだ漕げというか!     よし彰利一等兵よ!貴様の男意気、確かに受け取った!     レッツゴォ!トゥ!城ォッ!!!     んでもってぇ!王をとっちめ自転車ドリィイイ〜〜〜ンムゥッ!!」 自転車を漕ぐ!漕ぐ!漕ぐ!! 長い坂道なんのその!そのままの勢いで上ってゆき、 高い位置にある城へとそのまま突っ込む! 扉は───開いてる!よしこのまま!───っと、おおっ!? 中井出「彰利!飛び降りるぞ!」 彰利 「え?なんで?」 中井出「いいからっ!早くっ!!」 彰利 「えぇ〜?今すぐかぁ〜?オラ腹減ったぞぉ〜……」 中井出「誰もてめぇの腹の状況なんざ聞いてねぇよタコ!!」 きっと俺以外の誰かも思ったであろう悟空さへの不満を今ここで叫ぶと、 彰利を担いで一気に自転車から飛び降りた!! 中井出「トルネェエーーーーイ!!」 バゴシャァアンッ!!! 中井出「てめぇっ!俺のバイクになにしやがんだぁっ!!」 さて───自転車から見事に飛び降りた俺は、 門番のように立っていたレオンが自転車に吹っ飛ばされてゆく様を見つつ叫んだ。 言っても解らんネタだろうが。 レオン「ぐっ……!急に訪れたと思えば……!なにをする……!」 中井出「なにって……トルネード」 彰利 「やあ」 中井出「むしろお前こそ、ほんとにまだこの国に居るとは思わなかったぞ」 レオン「……私の君主はレックナート様だけだ。     王の命、王の意思のみが私の進むべき道だ。     ああ、このパターンだと毎度聞かれることがあるな。     だったら王が死ねといえば死ぬのか、というのが定番か。     もちろんだ。私は王の命には逆らわない。王が死ねと命じれば喜んで死のう」 中井出「うーわー……」 彰利 「ひでぇな……“やあ”って挨拶したのに完全に無視したよこの人」 中井出「いや、そうじゃなくて」 しかし相当な忠誠っぷりだ。 まるで“楓さまに仕える篠瀬さん”を見ているような…… レオン「さて。お前らはここに何をしに来た?」 彰利 「ちわー、新聞の集金でーす」 中井出「話が進まんだろ。今ならお前に振り回されてる晦の気持ちが解るぞ」 彰利 「ノリが悪いぞキミィ」 中井出「ま、一応“イベント”だからな」 彰利 「あらら、子供みてぇな無邪気スマイル。ニカッて笑うなんて、キミも好きねぇ」 中井出「なにが!?」 レオン「……あのな。私は訊いているんだが?冷やかしなら失せろ。     これからここには巨人族が訪れる。私はその脅威から王を守らねばならない」 中井出「……っとと、そうそう、それだ。なぁ、えーと、レオンでいいんだっけか。     レックナートに目通りしたいんだけど」 レオン「だめだ」 中井出「重要な話があるんだよ、頼む」 レオン「だめだ」 中井出「頼むから、な?」 レオン「だめだ」 中井出「……調子こいてんじゃねぇぞ……ガキども」 レオン「なにっ!?」 彰利 「おお!提督がヒゲを馬鹿にされたウォルコット中佐に!!」 中井出「通さないつもりなら力ずくで通る!それでいいのかコノヤロー!!」 レオン「好きにしろ。ただし、私も全力で相手をする」 彰利 「砂かけババァーーーーッ!!」 レオン「《バサァッ!!》ぐわぁっぷ!?」 中井出「おわぁーーーーっ!!?」 何を思ったのか、彰利が突然レオンに砂をかけた! しかもしっかりと目に入るように不意をついてだ! 彰利 「クォックォックォッ……!     この俺がわざわざ貴様の相手をするなどという正攻法を選ぶと思うたか……!     生憎私は忙しいのだヨ。キミと違ってネ。つーわけでぇえええっ!!!」 ガッシィッ!! 中井出「お、おいおい彰利!?」 彰利がレオンをフィッシャーマンズスープレックスのカタチで掴む。 しかし我ら原中が使うフィッシャーマンズスープレックスは、 ただのフィッシャーマンズスープレックスじゃないんだ。 彰利 「トルネードフィッシャーマンズスープレェックスゥッ!!」 彰利がレオンを抱えたまま跳躍し、横回転しながらブリッジをしてザクゥッ! 彰利 「イギャーーーリ!!?」 レオン「くぅぁっ!!」 い、いや!レオンが彰利の脇腹を携帯用ナイフのようなもので裂き、 怯んだところで技を外して城内の床に降り立った! 彰利 「グ、グウウ〜〜〜ッ……や、やはり一筋縄ではいかんか〜〜〜っ……!」 レオン「あまり甞めないでもらおう。     これでも、国の中でヌクヌクと暮らしていた覚えはない。     日々修行を重ね、今尚この場所に居る。     誰が王を裏切ろうが、私だけは裏切らない」 彰利 「むう……どうやら本気の本気みたいだな」 中井出「道を空けてはもらえないのか」 レオン「ダメだな。通りたいなら力ずくでこい」 彰利 「いいぜ。そういや貴様とは結局決着ついてなかったもんなぁ」 レオン「面白い。私があの時とは違うように、貴様もあの時とは違うようだ」 チャキリ、とレオンが剣を構える。 すると城の出入り口を塞ぐように、僕らの背後に飛竜が! 中井出「え、えーと……《ポム》ん?」 彰利 「あっちは任せた」 中井出「なにサワヤカな顔して人の肩に手ェ置いてんのキミ!!     ぼ、僕べつに戦うなんて言ってないよ!?言ってないよね!?     むしろ険悪ムードを勝手に出したのキミだよ!?僕は」 ロア 『ルァアアアォオオオオオオン!!!!』 中井出「キャーーーーーッ!!?」 身の毛も弥立つ光景だった。 俺……生きて帰れますか? 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