───冒険の書115/セントールの滅亡───
【ケース323:中井出博光(再々)/託す者、託される者】 喋り途中の意識がレオンの飛竜……ロアによって引き戻される。 うおお、やっぱりどれだけレベルが上がろうが竜族は怖いです神様。 立ち向かおうとする思考が、怯えという感情に邪魔される。 中井出(逃げちゃだめだ……逃げちゃだめだ!……ヒィイイ!!     この言葉喋ってると逃げないとか言ってる割に     逃げまくってる少年を思い出しちまう!!) どうにもならなかった。 い、いや落ち着こう。 いくら竜だとしても、ボ・タで戦ったミストドラゴンに比べりゃまだ小さい。 中井出「大丈夫、僕なら出来る!……出来るよね?」 彰利 「なにが!?いきなり話振られても解らんよ!」 救いの神は居ないようです。 くそう、やっぱり勇気を振り絞るしかないらしい。 とりあえずあまりの迫力にガクガク震える足をラオウの如くバンバンと叩き、 無理矢理勇気を奮い立たせて前を見る! そう、いつもと同じだ!これは敵!これはモンスター!そう考えて突っ込む! 中井出「最初から全力でまいります。     出来れば早く倒して恐怖から逃れたいとか、そんなんじゃないよ?」 彰利 「口に出してるあたりで怪しいぞ、と!」 中井出「ヒィッ!?まま待ってぇ!置いてかないでぇ!!」 背中を預けていた彰利がレオンへと向かっていった。 対する俺は、コルルルル……と鋭い目つきで息を吐く飛竜様。 ひどい……ああJOJO、なんてひどい……! なんで彰利の相手は人間で、俺の相手が飛竜なのでしょう。 中井出(父さん……もっと強い気持ちをください……!) などとジジョナサンやってる場合じゃない。 まず攻撃を避ける!避けて自信を掴むんだ! ステータスはAGIとVITに注ぐ! 中井出「いざぁああああっ!!!!」 走る!そして双剣を召喚させる! 攻撃を避ける!避ける!避ける!───なぁんて思ってると大体喰らうもんですよね。 だって一歩くんだってそうだったしバゴシャア! 中井出「うわらば!!」 で、案の定俺も喰らいました。 正面からはどうだかなぁ、と思ったから横に回り込んだ途端に尾撃がクリーンヒット。 防御が間に合いやしない。 中井出「ごっ……ぬお……!」 危なかった……!飛竜というのはかくも強いものか……! AGIとVITに振り分けてなけりゃあ危なかった。 それでもVITに全て振り分けておいたほうが遙かによかったわけだが。 中井出「だが耐えた。……もしやいけるのか?」 ステータス移動を細かにおこなうことが出来れば、きっといける筈! よ、よし!シャンドラの火を灯せ!! 中井出「元素・地のモード!!」 双剣に地の属性をこめる! すると俺の体に大地のエネルギーが染み込んでいき……おお! これが藍田が使ってた大地のエネルギーを力に変換するアレか! おおお、超ためるの効果も相まって、 溜まる力に制限などないというかのように溜まってゆく! 中井出「さらにストック解除!マグニファイ!」 なんだかんだで自転車漕いでる時にマグニファイは使ってしまった。 あと少しすれば10分経ってただろうけど、それはそれ。 今必要だから使い、10分経ったらストックしとけばいい!それだけのこと! 我が体に赤い残像がついた時、俺は鳥になるのである。 中井出「オォオリャソォオーーーーッ!!!」 さあ受けよ大地のキャリバー!  ───スフォン。 中井出「ありゃっ!?」 剣を振るう!……しかしなにもでない。 何度振ろうがてんで剣閃は放たれず、 フと気づけば目の前にはズシンズシンと歩いてきた飛竜が……! 中井出「あ、あは……うぇっはっはっはっは!《ズバァン!!》ギャアーーーーーッ!!」 行き場の無い焦りを笑いに変えた途端に尾撃をくらった。 だが大丈夫!ステータス移動をまだやっていなかったお蔭で耐えられた! けどこりゃいったいどうなってんだ!?どうして地のキャリバーが放たれないの!? ……もしかして地属性付加って力を自動で引き上げるだけ!? 確かに放つばかりがキャリバーじゃないけどよう!! 中井出「くそう!だったらやってやる!」 目の前の飛竜を前に双剣を構えた。 集中しろ集中、とぶつくさ呟きながらだ。 敵の動きとステータス移動に常に細心の注意を。 中井出「いざぁ!」 まず走る! 飛竜にとっては射程距離でも、俺の場合じゃもっと近づかなくちゃ攻撃が届かん! ロア 『クオォオオオオオッ!!!』  ゴォッ───ジャコォンッ!! 中井出「うおぁっ!?」 仕掛けてきた噛みつきを避ける。 ていうか物凄い音が鳴った。 あんなの歯と歯がぶつかった音じゃない。 噛みつきは要注意だ……噛みつかれたら防御もなにも関係無い。 潰れるまで噛みつかれるだけだ。 中井出「せぇええええいっ!!!」  フフォンバギギガバッシャアァアッ!!! ロア 『グシャアアアアアオオオオオンッ!!!!』 STRとAGIにステータスを振り分け、飛竜の腹を鱗ごと斬り裂く。 オーガインパクトやアーマーキラー、 ストライクブラストの効果も上乗せされた攻撃だ。 鱗くらい斬り飛ばしてくれると信じてた。 だが未だ付き纏う恐怖が今一歩を足らさず、 人間にしてみれば皮膚を裂いただけで終わった。 当然攻撃が終わるとすぐにステータスを移動させ、 STR分を全てVITに回す。 その途端に飛竜は飛翼をはためかせ、 バックステップするかのように後ろに下がり、俺を睨む。 ……って、そうか。 俺だってモンスターハンターを知るものだ、ワイバーンの動きくらい、なんとなく解る。 飛竜は確かに強いだろうが、腹の下にもぐられると中々対処に困ると見た。 だったら───前進あるのみ! 中井出「せぇえええりゃぁああああっ!!!!」 地面を蹴る!蹴る!蹴る───!! 離れた分を削るために駆けて駆けて跳躍し、 双剣を長剣に変えて回転させ、一気に振り切る! 中井出「“黄竜剣”!!」 キィンッ───ギシャゾガゴブシャアッ!!!! 中井出「いがっ……!?」 ロア 『グギャァアアアアアォオオオオンッ!!!!!』 いや。 振り切るつもりだった黄竜剣は俺ごと飛竜に噛み潰され、 飛竜の上顎部分を大きく斬りつけるだけにおわった。 一方の俺は激痛とともに吐き出されるように地面に捨てられ、 噛みつきからは解放されたが…… 中井出「〜〜〜っ、あ、が……!くあぁあっ……!!」 ……左腕がズタズタだ。 噛みつかれた時、直撃を受けたんだろう。 俺はすぐにバックパックからグミを取り出して……くそったれ! 右手だけじゃ開けづらすぎる!! ロア 『ギシャァアアアォオオオゥウッ!!!!』 中井出「う、くあっ……!」 飛竜が傷つけられた怒りを表すように咆哮し、一直線に走ってくる。 グミは───取り出せない!ちくしょうが! もうちょっと障害者にやさしい作りにしろっての! 中井出「〜〜〜っ……」 逃げ出そうと足を動かす───が、見れば右足もズタズタだった。 当然無様に転倒し、だがその拍子にバックパックの中身が飛び出た。 その中には……くそ!回復アイテムが混ざってない!! いよいよもって殺される───そう思った時だった。 飛竜が突然倒れ、苦しそうにもがきながらも起きようとはしなくなったのだ。 中井出「……こりゃ……?」 いったい、と思った。 だがしばらくすると理解に至る。 滅多に発動しないから忘れていたが……これは“麻痺”だ。 しかもしっかりと猛毒にまでかかってる。 中井出「なんにせよ……いまのうち……!」 中身がぶちまけたバックパックの口は開いており、 梃子摺っていたさっきから比べれば片手でもアイテムが取れるくらいの状況になっていた。 俺はすぐにグミをニ三個取り出して口に放り込むと手足を回復させる。 グミなんかでグロテスク状態だった手足が治るのは異常だったが、 この際そんなこと関係無い。この世界の神秘に感謝だ。 最後にポーションをガブ飲みするとHPを完全回復させ、 散らばったアイテムを回収、バックパックを仕舞う。 そうして振り向いた時には飛竜は既に復活し、俺を見るや襲い掛かってきた───!! 中井出「勇気を……勇気を!!」 だが俺は逃げることはせず、むしろ対抗するかのように走り出す! やがて接触の頃、姿勢を低くして滑り込むようにして───飛竜の足に一閃を入れる!!  バギャゾバァッ!! ロア 『───!グアァアアアアアアアォオオオンッ!!!』 足の半分あたりを斬り裂いた。 斬り離すまでにはいかなかったものの、飛竜は勢いとともに倒れ、城の内部を破壊する。 レオン「───!ロア!」 彰利 『どぉこ見てんだタコォッ!!』 レオン「《ゾバァッ!》ぐぅっ……!!」 彰利もレオンを押しているようだ。 こっちも飛竜が倒れてるうちになんとかしないと…… 中井出「………」 でも……殺すのか? 俺は殊戸瀬の飛竜を、産まれた時から知ってる。 最初は怖がってたものの、今では懐いてることも。 聞けばこの飛竜とレオンは育った生きた時間が同じだという。 そんな、いわば兄弟みたいな存在にトドメをさしちまって、本当にゾバァンッ!! 中井出「───え?」 訳が解らない。 何が起こったのかも、何が飛んだのかも。 いや……違う、解ってはいるが、“どうして”って気持ちが強い。 けど、これは─── 中井出「彰利ぃいいいっ!!伏せろぉおおおおっ!!!」 彰利 『なにぃ!?───!』 俺の声が本気の本気だと解ったんだろう。 すぐに彰利は地面に伏せ、その正面に居たレオンはゴバァォンッ!! レオン「がっ……!?」 “ソイツ”に腹を貫かれ、宙に持ち上げられたのちに床に捨てられた。 彰利 『……!こりゃあ……!』 彰利が俺の方を見る。 そして……首が吹き飛び、やがて塵となってゆく飛竜の姿も。 ようやく頭が追いついてきても……やっぱり“どうして”って意識が強い。 なんで……こいつがここに……!生きてやがったのか……!? ジュノーン『ハハハハハ……ハァッハッハッハハッハッハ!!!』 そいつ……ジュノーンは心底おかしそうに笑うっていた。 右腕に伝う血はレオンの腹を貫いた時についたもの。 鎧の硬さをものともせずに、あんなことをして見せるなんて……。 彰利   『てめぇ……人の獲物を……!』 ジュノーン『我が軍を滅ぼされた恨みを……王国滅亡を代価として頂いただけだ……。       これだけ弱く……これだけ脆弱な分際で……       よくも王国を名乗れるもの……ククク……』 彰利   『いい加減にしろ柾樹てめぇ!体を乗っ取られたくらいなんだ!       根性でなんとかしてみせろ!』 ジュノーン『無駄だ……もはやそんな言葉は届かない……。       どんな言葉も届きはしない……もはやこの体は我が意思で動く傀儡……』 彰利   『てめっ……!』 中井出  「ちょっと待った!王国滅亡って……まさかもうレックナートも……!?」 ジュノーン『既に死んでいる……だというのに王のため王のためと。       笑わせてくれるな……騎士団の長よ……』 レオン  「げはっ……がっ……!ぐ……!!」 ジュノーン『せいぜい足掻け……ここは退いてやる……。       どの道貴様らが辿り着く末など……滅びでしかないのだからな……』  ゴボッ……ギ、ヂヂヂゥウウウウンッ……!! 彰利 『あっ───待ちやがれてめぇ!!』 耳障りな音とともに、ジュノーンの体が消えていった。 やがてそこには誰も居なくなり、レオンと俺達だけが残される。 レオン「……、あ、ぐ……」 彰利 『ちぃいっ……!おいてめぇ!     よもやこれで終わりだなんて馬鹿げたことぬかさんよな!?     まだ決着ついてねぇんだぞ!?』 レオン「っ……ふふっ……悪いが……それは叶わない……。     少しもしないうち……私は息絶えるだろう……。     ライバル視してくれていたようなのに……悪いな……」 彰利 『なっ……お、俺ゃ貴様なんぞをライバル視なんか───』 レオン「は……あ……。提督、といったか……ロアは……ロアはどうした……?」 中井出「……ジュノーンに殺された。一撃だったよ」 レオン「そう……か……。生きた時間も同じなら……死ぬ時もともに、と約束した……。     少し遅れてしまったが……約束は果たせそうだ……」 中井出「レオン……」 レオン「提督……お前は剣士だったな……。     武器を好むお前だからこそ託したい……この槍を、受け取ってくれ……」 瀕死のレオンが、傍に落ちている槍を促す。 恐らくもう武器を持ち上げる力も残っていないんだろう。 どうして俺に、なんて訊かない。 死に際の人の言葉を否定するのは悲しいことだと思うから。 中井出「……解った。使わせてもらうよ」 レオン「ふふ……合成にでもなんでも、好きに使え……。     さて……そろそろ喋るのも辛くなってきた……お迎えが来たようだな……」 中井出「……そっか。なにか言い残すことはあるか?」 レオン「……そう、だな……。藍田に……よろしく、言って……くれ……」 最後にそう言って笑むと、レオンは力を消失させたかのように頭を垂れた。 ……そして消えてゆく。 ランダーク王国に、死体が全然無かったのと同じように、レオンの姿も消えてゆく。 中井出「………」 彰利 「………」 俺の隣では彰利がオーダーを解いて、頭を乱暴に掻いていた。 行き場のない怒りを発散させているんだろうか。 戦っていた敵が敵に殺されるなんて、 こんなにもやり場の無い気持ちに渦巻かれることはそうそうないと思う。 それでも俺達は釈然としない気持ちのままで謁見の間まで行き…… 破壊された王の玉座を見ると、ああ、と納得した。 やっぱりレックナートは殺されていたんだ、と。 彰利 「……どうするよ」 中井出「……こうなったら、意地でも封印の仕方を知るしかないんじゃないか?     そのためには……もう一度巨人の里に行く必要がある」 彰利 「そか。……そーだな」 託された稀紫槍カルドグラスを握り締める。 そんなことをしても遣る瀬無い気持ちは拭えなかったが、それでもいいと思った。 楽しいばかりがゲームじゃない。 こういうことが起きるのが空界なんだと理解し、 これからのことを考えながら歩き出した。 彰利 「さてと。んーじゃあ途中で悠介たちと合流して、     とっととゼプちゃんのところに行くか」 中井出「だな。ここにもほっといたら巨人族が出現するんだろうし、     それならセントール兵だと思われないうちにとっとと逃げたほうがいい」 見つかったらまず間違い無くセントール兵だとか思われるだろう。 だって巨人族って融通利かないし。 中井出「よし!元気出していくかぁ!」 彰利 「よぉおーーーっしゃあ!!巨人の里に向けて、レッツゴーーーッ!!」 俺と彰利は謁見の間から弾けるように飛び出すと、 通路の途中に転がっていた自転車を起こしたのちに漕ぎ出した。 墓なんかは作っていかない。 もし墓があるのだとすれば、それはあの王国自体で十分だろう。 あそこが、レオンが今日まで誇りを持って生きた場所なんだから。 【ケース324:中井出博光(超再)/ファイナルファンタジー・セブンイレブン】 レオンの突然の死によって齎された暗い雰囲気は、 俺と彰利とで無邪気に無理矢理元気に振舞うことで、 いつしかそれが無理矢理を破壊し、晦たちと合流する頃には自然にまで発展していた。 合流したみんなは揃って“どうだった?”と訊いてきたが、 俺達はわざと話に脚色を織り交ぜることで、暗い雰囲気が持ち上がらないように努めた。 それよりも、と話題に出したのは巨人のことであり、 結局封印方法は聞けなかったということだけを話し、 俺達は巨人の里に向かうことになった。 レオンの遺言は───きちんと藍田にtellで届け、藍田は藍田で、“そっか”と呟くだけ。 そこにどんな感情が混ざってたのかなんてそもそも俺には解らんのだが、 それでも藍田が元気に振る舞い返事を返してくれたのは嬉しかった。 なんでも今は、マクスウェルのところで修行をさせてもらってるんだとか。 戻ってきた時、我らが如何に強くなってるかを見せ付けてやる、なんて言ってた。 案外楽しみである。 彰利 「えー、そげなわけで巨人の里についたわけでござーますけど?     きさんらアイテムはしっかり補充してきたかね?」 悠介 「お前ら以外使ってないだろ」 彰利 「あの……ハイ、ごめんなさい」 今では俺達の間に漂う空気も今まで通りだ。 時折彰利と目が合うと苦笑する程度で、それ以外はいつもと変わらない。 死にゆく人を見送るのはいつだって胸になにかが残るものなのか。 まあ、いいさ。それでも俺達は嘆くよりも楽しむことを選んだんだから。 ルナ 「わー……こんなに大きい場所なんだ」 彰利 「オウヨ。きっと愛の育みの際には各地で地震とかが《ボゴシャア!》ネオッ!     な、ななななーーーーにさらすんじゃいてめぇ!!」 悠介 「いきなりそういう方向に思考を巡らせるなって言ってるだろうが!     めぐらせたとしてもわざわざ口にするな馬鹿!!」 彰利 「バカとはなんだコノヤロウ!!」 ルナ 「あははー、ホモっち怒られた〜」 彰利 「おだまり!この空き缶フルムーン!!」 ルナ 「あっ……空き缶フルムーン〜〜〜ッ!?     空き缶だけでも許せないのにその上っ……!」 みさお「か、母さま!抑えて……!」 彰利 「ほっほっほ!カンに触ったかね!?空き缶だけにカンに触ったかね!     ほぉーーーっほっほっほっほ!!ン!?なにかね!?ン!?     悔しいかね!?エ!?悔しかったら《ズバァーーーン!!》ぶべぇーーーっ!!」 みさお「わっ!痛っ……!」 で、やっぱりこうなるのだ。 どれだけ何かが起ころうとも、振舞える限りは元気に振る舞い馬鹿をする。 さすればいずれ、その無理がある馬鹿も自然な馬鹿となりましゃう。 これぞ“作り笑いも笑いの内”の原理である。 ……いや、この言葉は適当に作ったもんだけどさ。 作り笑いでもそれを続けてればいつかはホンモノになるだろうって言葉さ。 彰利 「た、たたた叩きやがったなぁーーーっ!?言葉に対する暴力!     これは人権……人権だぞっ…………!間違い無く人権っ…………!」 ルナ 「なんの?」 彰利 「え?いや……なんのって……」 ルナ 「………」 彰利 「……………………てへっ♪《ズバァーーーン!!》ぶべぇえーーーーーーっ!!」 また痛そうなビンタが炸裂した。 首が烈海王並にグリンと回転したし。 それで平然と文句言ってるんだから相変わらず不死身だ。 ゼット「貴様らいい加減にしろ……中に入るんじゃないのか?」 彰利 「だってだってこいつがよぅ!この空き缶野郎がよぅ!     僕なんにもしてないのにズバンズバンビンタするんだよ!?     ズバンってなに!?もうコレビンタの音じゃないよぅ!」 悠介 「彰利……いいからまず鼻血を拭け」 彰利 「え?あ、ギャア!!」 中井出「ヒィイ!彰利が鼻からイカスミを!」 彰利 「違いますよ失礼な!!」 ルナ 「きゃー!ホモっち変態ー!変態イカスミ星人ー!!」 彰利 「なんでキミらそういう目でしか人のこと見れないの!?     つーか変態イカスミ星って何処にあんの!?違うよ!?俺地界人だよ!?」 悠介 「そうか……地界産まれの変態イカスミ星人か」 彰利 「違うっつっとろーが!!」 否定の言葉を発しながら鼻血をグイと拭う彰利。 しかしその血ってのが黒いんだからブラックオーダーってのは不思議だ。 彰利 「大体キミね、俺の体の全てが黒に染まってるってことくらい覚えてるっしょ?」 悠介 「すまん、からかった方が面白そうだった」 彰利 「こんな時ばっか原中魂かよ……ええい!」 悲しそうに声をもらす彰利だったが、心の中で心機一転、 むしろ心を新装開店でもさせたかのように拳を握ると、 のっしのっしと巨人の里へ向けて歩き出した。 これ以上話題にすると自分の首を絞めると悟ったんだろう。 その考えは非常に正しいと思うぞ、うん。 そんなわけで俺達は巨人の里へと踏み出し─── ───……。 ……。 巨人 「人間がここへなんの用だぁーーーーっ!!」 全員 『あれぇーーーーーっ!!?』 こんな事態に陥っていた。 なんでも巨人の里に居た人間の中に レックナートが随分前から忍び込ませていた兵が居たらしく、 そいつが斉王を操る方法がないかを探りいれていたのが最近バレたらしい。 その所為で巨人たちは人間全てを巨人の里から追い出し、こんな状況に至る、という訳だ。 巨人 「貴様らセントールの回し者か!?いいやそんなことはどうでもいい!     ここは人間は立ち入り禁止だ!失せろ!!」 彰利 「あの、オイラ死神」 巨人 「失せろ!!《ガオォオ!!》」 彰利 「ヒィイごめんなさい!!」 まるで獅子の咆哮を零距離で聞いたような怯え方だった。 悠介 「俺、精霊」 巨人 「失せろと言っている!!」 悠介 「取り付く島がないな……よしいけゼット」 ゼット「俺は竜族だ」 巨人 「死ぬぅぇえええい!!!」 中井出「オワァーーーーッ!!?」 竜族と聞くや否や、いきなり巨大な剣を振り下ろしてきましたよこのおっさん!! けどビッヂィインッ!! 巨人 「なっ……!?」 ゼット「雑魚が。巨人族は相変わらず、実力も無い分際でよく吼える」 その一撃を、あろうことか二本の指で止めちゃった友人の姿がそこにありました。 ゼット「さて?道を開ける気が無いのならこのまま物言わぬ塊となってもらうだけだが」 みさお「ゼットくん……」 ゼット「……ああいや、今のは取り消してやろう。半殺しで勘弁してやる」 全員 『………』 ゼット「な、なんだ貴様らその目は!!」 で、思い人に頭が上がらない悲しい友人の姿もそこにありました。 とまあそんなわけで、 どんなわけかも解らないがとりあえず巨人はゼットが殴り飛ばして気絶させた。 そうしてから、気をつけながらも巨人の里へと侵入すると─── 居るわ居るわ、殺気立った巨人の軍勢。 ズシーンズシーンと歩いては、人間が紛れ込んでいないかをチェックしてる。 見れば、人間用の家など既にガラクタと化していた。 こりゃあ“万屋マホーミック”も潰れたな。 彰利     「えーと、どうしようか」 中井出&ゼット『正面突破だ』 彰利     「ちーとは身を隠して行こうとか思わないの!?」 即答した俺とゼットにツッコミを入れる彰利。 しかしだな、訊いておいてそれはないんじゃなかろうか。 中井出「馬鹿お前、こうしてる間にもヤツがここにも来てるかもしれんのだ。     コソコソとなんて行けるわけがなかろうが!」 彰利 「そりゃそうですけどね!?     真正面から戦ってる方が時間食うんじゃないかって言ってるんですけどね俺!」 ゼット「構うか」 彰利 「構いますよ!!」 巨人 「そぉおおこぉおおかぁあああ……!!」 彰利 「ギャアあっさり見つかったぁーーーっ!!」 ゼット「チッ……貴様が騒ぐからだぞ」 中井出「このクズが!!」 彰利 「エエッ!?これって俺の所為なの!?違うでしょ!?     根本的な原因はこやつらで───!!」 ゼット「黙れクズが!!」 全員 『死ね!!』 彰利 「てっ……てめぇらああ《ボゴシャア!》アブロヴァーーーーーッ!!!」 中井出「キャーーーッ!!?」 騒いでるうちに彰利が巨大棍棒で殴られたぁあーーーーーっ!!! ていうか改めて見てもでっけぇえな……身長と体重いくつだよおい……。 ゼット「ククク……相手から攻撃を仕掛けた場合は正当防衛と言うんだったな。     いいぞ、存分に相手になってやる……」 死人よりは楽しめそうだと笑うゼットは、それはもう邪悪な顔をしておりましたとさ。 さて───こうなってしまってはもう周りの巨人どももただではおらず、 巨人の一人が棍棒を振り下ろしたってだけで振り向いては襲い掛かってくる始末。 悠介 「まともに相手してたらキリがない───走り抜けるぞ!」 彰利 「へっ?で、でもゼットは?」 悠介 「捨て置け」 彰利 「……俺はキミがそんな面白い性格に育ってくれて嬉しいよ」 ルナ 「そうそう、悠介はもっと自分のことばっかり考えるべきだと思う」 彰利 「お?珍しく意見が合うじゃねぇのルナっち」 ルナ 「わたしの方が先に考えてたのをホモっちが真似ただけよ、きっと」 彰利 「なんだとこの小娘!俺の方が先に考えたんだい!」 悠介 「いいから走れっての!!」 彰利 「ぎょ、御意」 彰利たちが走ってゆく。 俺もこの場に残ろうかとも思ったが─── ゼットが顎をしゃくり、俺を先へと促すのが見えた。 みさおちゃんもその傍でコクリと頷き、あくまでゼットと一緒に居ることを誇示している。 OK、ならば俺も先へと進もう。 あの二人なら巨人にも負けないだろうし、 いくら相手も強くなってるかもしれないとしても、 レベルが100に至る前にクィーンにまで辿り着けたほどだ。 なんとかなると信じよう。 中井出「そうと決まれば!」 先を走ったり飛んだりしてる三人を追って、走り出す。 向かってる先は闘技場でもなく巨人の民家でもない。 一直線……ただでさえ巨大な巨人の家を、さらに巨大化させたような城。 ゼプシオンが居るであろう巨大城だ。 さて……話だけで済めばいいんだけど。 ───……。 ……。 そうして───ドグシャアア!! 巨人 「ぐあぁあああっ!!!」 彰利 『成敗!!』 悠介 『ふう……』 ルナ 『思ったより強かったね、悠介』 中井出「うーん……」 城の内部に入るや、出るわ出るわの巨人兵。 それらを殴り飛ばしたり蹴り飛ばしたり斬り飛ばしたりし、 何処が何処かも解らないままに城の中を駆け回った。 そして───辿り着いた、豪華な装飾に飾られた扉を見るに───ここが王の間。 巨人族を蹴散らし、あとから合流したゼットとみさおちゃんとともに、 みんながその巨大な扉を見上げる。 中井出「ついに……ついにここまで来た……」 彰利 「おお……」 中井出「あれが……20年前に世界を恐怖の渦に陥れた巨人の王が眠る……     いや、復活しているのか」 みさお「え?あ、あの、中井出さん?言ってる意味がよく……」 彰利 「長かったね、提督……」 中井出「どうなのでしょう?」 俺は神妙な面持ちで考え込んだ。 彰利 「いや、訊かれても」 中井出「長かったです」 俺は頷いた。 中井出「もう一年ですか……」 彰利 「長いけど、短かった……そんな気持ちです」 再び頷く。 その隣では、彰利がしみじみ昔を思い出していた。 彰利 「というか、一年もかけてようやく区切りのボスですよ」 みさお「えぇっ!?戦う気満々ですか!?それに一年ってなんのことで……!?」 彰利 「(中の人も)待ちくたびれてるような」 中井出「レベル99にはなれなかったですね」 ルナ 「え?もう過ぎすぎてるでしょ?」 彰利 「実装されてませんから、そもそも」 悠介 「ツッコミ無視してフケってるな。おーい、どうしたー?」 中井出「区切りのボスですか……じゃあまだまだ先は続くのですね」 彰利 「でもみんな、原中のメンバーの多くが60を越えたし、     これからも進むのでしょうね。巨人の王を倒しても、まだまだ旅は続くですよ」 俺は首を振った。 悠介 「いや、振るなよ……」 彰利 「提督、提督の物語はまだまだ続くのです」 中井出「ここで終わらせてやる」 悠介 「───え?」 彰利 「!」 ルナ 「え?」 みさお「な……」 ゼット「!?」 中井出「巨人の王だかなんだか知らねぇけどよ……俺が終わらせてやるさ。     ……ひっこめればいいんだろう?」 彰利 「て、提督、まさか!」 悠介 「中井出!?」 彰利 「いや……うん、みんなでやろうよ」 中井出「いや」 ルナ 「いや……?」 中井出「みんなには黙ってたけど、俺……」 悠介 「俺……?」 中井出「強いんだ」 俺はにっこり微笑んだ。 みさお「強いって、え?」 中井出「だから一人で十分」 悠介 「ちょ、十分って……」 みさお「そんな、ちょっと!」 彰利 「無謀すぎますって提督!」 みさお「そうです!それは無茶ですよ!」 彰利 「待って!それ無理!入ったら戻れないんですよ!?」 みさお「いくらなんでも!」 中井出「巨人の王……お前のモノは俺のモノ……。     この世界は───俺のものだぁあああああああああああああああっ!!!!」 ゆっくりと進めさせてた歩を、疾駆に変える。 目指すは巨大門! そこをくぐればヘヴンがある!! 彰利 「提督ーーーーーっ!!だから一人じゃ無理だって!」 悠介 「中井出ぇええええええっ!!!」 みさお「だめですって!」 中井出「ホームバム・ビ・バァーーーーーッ!!!!」 悠介 「待てってばぁーーーーーっ!!」 彰利 「提督ーーーーーっ!!?」 みさお「ありえない!ゼットくん!止めて!」 中井出「心配するな……俺ぁ……帰ってくるぜ!」 悠介 「あっ!パーティーから抜けやがった!ちょ、待て!ほんと待て!     相手はゼプシオンだぞ!?それをお前、そんな喧嘩腰で───」 巨大門の前に辿り着くと、俺は一度だけ振り返り…… 動揺しているみんなに敬礼を送った。 悠介 「うあ……」 彰利 「提ぃ督ぅーーーーーーーーッ!!!!!」 やがてその門を力任せに開けるとすぐさま体を通らせ、すかさず閉める。 “だめだってば!”とか聞こえたが、そんなものは無視さ。 彰利は思いっきり楽しそうだったなぁ。 まあいきなりノッてくれたんだからそこんところは長年のふざけ合いの為せる業。 それよりも今は目の前のことに集中しましょ。ね? 案の定ゼプシオンはここに居て、しかも俺を見るなり玉座から降り立ったんですから。 フッ……ネタのためなら命も張ろう。 それが僕らの原ソウル。 でもちょっぴり後悔してます。 すげぇ怖ぇ。 ゼプシオン「人間か……」 ゾワワァッ!! 中井出「ヒィッ!なんか急に空気の質が変わった!変わったよね!?」 殺気!?これが殺気なの!? もはや俺が藍田と力を合わせて クィーンにまで上り詰めた人間だということも忘れてらっしゃる!? に、ににに人間みんな抹殺モードですか!? ゼプシオン「ここに何の用で訪れた……ランク・クィーンよ」 い、いや覚えてた!?さっすが英雄王! ───じゃなくて! まず指を差す! 中井出  「よし!勝負だゼプシオンよッ!       貴様が恐怖の代名詞なら……この俺は悪魔のプリンスッ!」 ゼプシオン「───!《ギラァッ!!》」 中井出  「ヒィッ!?」 ええはい、言った途端に後悔しました。 だって勝負と聞いた時のゼプシオンの眼光の変わり様ときたら、 それだけで人が殺せそうなシロモノだ。 ゼプシオン「いいだろう……単身でここまで来たのはそれなりの覚悟の現れなのだろう?       ならばそれを受け止め全力でぶつかるのが剣士としての誇り!       さあ!来い!人の子よ!生半可な力では我が猛攻を止めることは出来ぬぞ!       我が剣技、我が巨人族の誇り、思い知らせてくれる!!」 中井出  「キャーーーーッ!!?」 そして予想通り、冗談として受け取ってくれなかった英雄王サマ。 ちょっと待て!俺の話はまだ終わっちゃいねぇぜ!? くっ……さすが、20年間眠ってただけあってせっかちな野郎だぜ……! などなど、言いたいことはまだまだ残ってたんだが、 発言を許してもらえそうな雰囲気じゃなかった。 涙で視界が滲むのが解った瞬間だった。 Next Menu back