───冒険の書117/戦いのあとに───
【ケース327:晦悠介/戦闘終了とその後】 戦いさえ終わってしまえばあとは早いもので─── 俺は自分の腕と彰利とゼプシオンの傷を癒すと、 巨大な玉座に戻るゼプシオンを見上げつつ息を吐いていた。 そうしてから唱える言葉は斉王の封印についてである。 悠介   「ゼプシオン。斉王───アハツィオンの封印のことなんだが……」 ゼプシオン「アハツィオンの封印……お前らはそれが目的でここへ来たのか」 悠介   「ああ。いつかなんとかしなきゃいけないって思ってた。       それが今日になっただけの話だが───封印の仕方を知っているか?」 ゼプシオン「………」 俺の中には、ある疑問があった。 ゼプシオンが沈黙したからこそ考えるわけじゃなく、 それ以前から気になっていることだ。 それは……もしゼプシオンが封印の方法を知っているのなら、 とっくに封印を実行していてもおかしくはないということ。 知っているのなら今まで放置する意味が無いのだ。 封印をしようともせず、封印を解いた人間のみを憎むのはどうにも違う気がする。 だとするなら、そこにはよっぽどの事情があるか─── 封印の仕方など無かったかのどちらかだ。 ゼプシオン「封印の方法は───あるにはある」 悠介   「───!……それはどうすればいいんだ?」 ゼプシオン「斉王の古墳の封印を解いた程度で、意思を失った躯が暴れると思うか?       “あれ”は既にかつての王の意思など持っていない。       暴走には理由があり、その理由というのが封印を解いたものの深層にある」 彰利   「深層?それって……復活させたヤツの心が邪悪だったら邪悪に、       善だったら善の状態で復活するってことかね?」 ゼプシオン「そういうことだ。だが、どんな者が復活させようが、       深層に邪悪さを持たぬ者など存在しないと言えるだろう」 中井出  「……なるほど」 ゼプシオン「アハツィオンの力は生前より規格外のものだった。       アハツィオンはその実力で巨人の王となり、巨人の導き手となった。       しかしその力は異常でしかなかったのだ。       産まれ付いての異常な力ゆえ、力尽きたあとも躯からその力は消えなかった。       それがアハツィオンの遺体を封印した理由だ」 ……そうだ。 ただの躯なら、王だからって封印する意味があっただろうか。 いくら時代の英雄みたいなアハツィオンだからって、そこまで特別視する理由が解らない。 けど、それはつまり─── 彰利   「けどさ、いくら死体に力が篭ってたからってさ。       それをどうすりゃ力にできるっての?」 ゼプシオン「古より存在する不死王やナーヴェルブラングは死体を操る能力を持っていた。       それだけ言えば解るだろう。死体に力が残っているということは、       生前と同じ力を以って敵の思い通りに動く英雄が完成する」 彰利   「うあ……」 ゼプシオン「しかし幸いだったのは、当時人間の中で勇者と呼ばれていた者が       死闘の末にナーヴェルブラングの封印を成功させたことだ。       その後、我々は不死王ジュノーンの動きにのみ注意をすればよくなった。       いや、むしろ自ら出撃し、不死王を幾度となく殺した。       だがジュノーンに死は無い。他のアンデッドと違い、何度殺そうが蘇る」 悠介   「………」 それも気になってたことだ。 柾樹がジュノーンになる前、 たとえば本当に鎧がジュノーンの本体だとするなら、その中身は誰だったのか。 ただの腐った人かなんかだったのかなんて解らない。 中井出  「不死王の中身って……やっぱり居たのか?」 ゼプシオン「ジュノーンは死を知らない。どれだけ破壊されようが復活する。       その理由は、部位を破壊されようが再生し、       体にボロが現れようが体を取り替えればいくらでも再生できるからだ」 中井出  「再生……じゃあ、今の中身の前は───」 ゼプシオン「かつての人間の勇者だ。不死王との戦いに破れ、体を乗っ取られたと聞く」 中井出  「………」 中井出は複雑そうな顔で、顔を俯かせた。 釈然としないんだろう……当たり前だ。 死体を自分の体にするなんて、滅茶苦茶だ。 つまり柾樹はあいつに殺されて、不死王の体にされた、と……いや、どうかな。 どうもさっきの話以上に釈然としない。 あの頃俺はまだヒロラインには降りてなかったが、 死人の森でなにが起きたのかくらい、 管理者として視覚だけを彰利のものをトレースして見ていたから知っている。 だからこそ───ジュノーンがあの高位魔法使いを肉体にしないで、 低レベルの柾樹を肉体にしたのが不思議でならない。 つまるところ…… 彰利 「そんで───結局、キミらが斉王を封印しなかった理由ってのは?」 悠介 「───、……」 彰利の言葉に、纏まった思考から意識を戻す。 ゼプシオン「アハツィオンは暴走状態だ。       やみくもに暴れるだけではかつての力の三分の一も発揮出来まい。       恐らく私でも殲滅することは出来るだろう」 彰利   「じゃあなんでそうしないん?」 ゼプシオン「解らぬか。あのような姿になろうと、生前は巨人族を導いた王なのだ。       王に刃を向ける馬鹿者など巨人族の中に存在してはならない。       許されるのは闘技場という、王も兵も関係無い場でのみだ」 彰利   「かっ……相変わらずカッテェ頭してやがる……」 ゼプシオン「故にお前らに頼みたい。どうか、アハツィオンを再び眠りにつかせてほしい」 ルナ   「んー……どうせやるって決まってるんだからいいと思うけど。方法は?」 ゼプシオン「斉王が占拠した場所はエーテルアロワノンだったな。       ならばまずそこへ行け。       行って、アハツィオンがそこを滅ぼす理由となったものを探せ」 ルナ   「滅ぼす理由……?」 みさお  「つまり、封印を解いたものの深層にあった邪悪の根源が、そこに……?」 ゼプシオン「滅ぼすまでいった理由だ。なにかあるのだろう。       そしてアハツィオンは未だエーテルアロワノンから動かない。       つまり、原因となるものはまだそこにあるということだ」 中井出  「つまりそれが人だったら───」 悠介   「まだ生きてる、ってことか」 ゼプシオン「その通りだ」 ゼプシオンが頷く。 だが思い返してみても、そんな人物像には思い当たりがない。 既に俺が管理者をやっていた頃からはバージョンアップが重なりすぎているんだ。 ……ああいや、今はまずそれは保留だ。 悠介   「ゼプシオン。そもそもただの躯だった筈のアハツィオンが       封印を解かれただけで動き出し、       解いた者の深層を受け取って動く理由はなんだ?」 ゼプシオン「当時行われていた聖魔戦争の禍根といえる代物だ。       当時……いや、今でもだが、       その頃は今よりなおそれぞれの種族の間柄は険悪なものだった。       目が合えば殺し合うといってもいいほどだ。戦争の全盛期と言えるその頃、       人間の勇者の仲間である魔術師がアハツィオンの躯に呪いをかけた。       これ以上無益な戦を続けるのなら、この躯を呼び覚ます、と」 悠介   「そうか。その時にかけた魔法ってのが───       人間である自分でもアハツィオンを武器として使うことが出来る魔法……」 ゼプシオン「そういうことだ。そしてその呪いは今も、       消えることなくアハツィオンの身に宿っていた。       もう解っただろう。その魔術師とはのちのセントール王の先祖。       文献によりその呪いのことをしったレックナートは、       その圧倒的な力に欲を覚え、己の部下にアハツィオン復活を命じた。       ご丁寧に文献には封印解除の呪文まで書かれていたそうだ」 悠介   「その話はどこから───?」 ゼプシオン「封印を解いたという男が全てを話していった。       あの男が今なにをしているかなど知らぬが、       その時の我らの怒り───誰が理解出来よう」 ギリッ……とゼプシオンは歯を噛み締めた。 当然だ、種族最大の英雄が操り人形のように弄ばれているんだ、怒りを感じない筈が無い。 ゼプシオン「封印を解いた男はレックナートに利用され、       さらに罪を被せられ殺されかけたこともあり、無罪とした。       生きていれば何処かで元気に過ごしているだろう。だがレックナートは……」 悠介   「そのことだが……       レックナートはジュノーンによって既に殺されていたらしい。……だよな?」 中井出  「あ、ああ……多分、間違い無い。レオンも一緒に殺された」 彰利   「一発であの世行きだ。どうかしてるぞあの強さは」 ゼプシオン「そうか……レオンは逝ったか。       あの男も就く者を違わなければ、まだ生きながらえることも出来たろうに」 中井出  「え……し、知ってるのか?」 ゼプシオン「……人間の勇者の子孫だ。       その血筋を持つ者は悉く英雄として祭り上げられるほどの実力者ばかり。       そう言われるほどの血筋を持つ男だったのだ」 彰利   「へ……?それがなんだって……」 ゼプシオン「全てはレックナートの差し金だったのだ。       他国で産まれたレオンを部下に攫わせ、竜の巣に捨て、最初は殺す気だった。       だが奇跡が起き、レオンは竜族に育てられ、力強く育った。       そんな野生児同然だったレオンをレックナートは自分の部下として招き入れ、       自分を親だと思えとでも言ったのだろうな。       それなりの地位を与え、利用できるだけ利用しようと企んだ。       全ての民や兵が裏切ろうと、レオンのみが残ったのはそれ故だろう」 中井出  「っ……じゃあっ!あいつはそんな王のために命まで───!」 ゼプシオン「それがレオンの誇りだったのだ。選ぶ君主は間違えただろうが、       どんなことが起ころうと君主のみを信じる在り方は立派だったと言える」 中井出  「…………けど……」 悔しそうに歯を喰いしばる中井出がそこに居た。 どんな間柄だったのかは知らない。 けど、苛立ちを隠しきれない中井出の顔は酷く悲しそうだった。 悠介   「……話を戻す。       アハツィオンがエーテルアロワノンを滅ぼすきっかけを見つけ出したら、       そのあとはどうすればいい?」 ゼプシオン「原因をどうにかすればアハツィオンは古墳へ戻る筈。       いいか、古墳の奥にある石碑に触れ、       邪心など表さずに眠りにつかせることだけを願え。       そうすればそれが願いとなり、眠りにつく筈だ。       試したことなど無い故、確信を以って言うことは出来ない。       だがこれくらいしか予想することができないのだ」 悠介   「いや、それだけ教えてくれれば十分だ。なんとかしてみる」 ゼプシオン「頼む。我らが向かったところでアハツィオンは確実に攻撃を仕掛けてくる。       そうなれば抵抗せざるを得ないだろう。だが王に剣を向ける気などない。       我らでは完遂することは出来ないのだ」 悠介   「解ってる。きっとどうにかなるさ」 それだけ言って歩きだす。 が……みんなもそれに続く中、中井出だけが一歩を踏み出してゼプシオンに質問をした。 中井出  「ちょっと待ってくれ。なにか───呪文みたいなのが必要なんじゃないのか?       マクスウェルは斉王の封印には呪文のようなものが必要だって───」 ゼプシオン「呪文?そんなものは───……いや、なるほど。それはいい提案だ」 中井出  「提案?あ、いや、俺はマクスウェルにそう聞いただけで……」 ゼプシオン「ようするにマクスウェルにとって、       お前らが私と話すことは予測済みだったのだろうよ。       その言葉自体が私にとっては助言そのものだ」 中井出  「……?」 首を捻る。 だがそれでもいいと断じたのか、中井出はゼプシオンの言葉を待った。 ゼプシオン「かけられたものが呪いならば、それを解く呪文もある筈だ。       そしてそれが為された時、今度こそアハツィオンは、       目覚めることなく古墳でやすらかに眠ることが出来る」 中井出  「あ───じゃあ呪文ってのは……」 ゼプシオン「言っただろう、それ自体が助言だと。       だが遠い古の呪文だ……既に禁呪扱いされ、       歴史には残っていないものかもしれん」 悠介   「いや、マクスウェルは       “セントール王が知ってるくらいだろう”とも言ってた。       さっきお前が言った魔術師の文献がセントールに残ってるなら、       その呪文も案外書かれてるかもしれない」 ゼプシオン「だがだ。そんな都合のいいものが書かれているなら、       何故レックナートはわざわざ我が国にスパイなど送る必要があった?       自由に操る方法など、その文献があれば解りそうなものだろう」 悠介   「じゃあ、こういう仮説はどうだ?魔術師の文献に書かれてるのは、       呪いの呪文と当時の歴史、そして───解呪だけだった」 ゼプシオン「……そうか、つまり」 悠介   「“自由に操る呪文”なんてのは書かれてなかったんだ。       そんなものは、それこそ不死王かナーヴェルブラング、だったか?       そういうやつじゃなけりゃ行使できるようなものじゃなかった。       だからこそ“意思を受け取って動く”なんていう回りくどい呪いにしたんだ」 ゼプシオン「………」 しばらく思考にふけっていたゼプシオンだったが、やがて“なるほど”と頷いた。 ゼプシオン「ではどうする。セントールに行き、文献を探すか?」 悠介   「そうするしかなさそうなんだよな……ちと面倒だが」 中井出  「───あ」 彰利   「……だとしたらヤバいぞ、おい」 みさお  「彰衛門さん?」 中井出  「ヤバいんだって!セントールにゃ巨人軍が向かってるんだ!       もうセントールには誰も居ないからって、       怒りに震える巨人たちが何もしないで帰ってくるか!?」 ゼプシオン「むぅ……恐らく王城のひとつでも破壊してくるだろう。       なるほど、そうなれば文献など一溜まりもないだろうな」 彰利   「どうするよ!俺達がセントール目指していた頃から、       巨人たちはもう向かってたんだぞ!?それ考えりゃ、今頃もう……!」 中井出  「……!───ダメだ。たった今、地図からセントールが消えた……」 みさお  「そんな……」 ……嫌なことは重なるもんだ。 どうしてこう都合が悪いことばっかりポンポンと……。 中井出「ど、どうする?やっぱ戦うことになるのか……?」 彰利 「うへぇ……正直勘弁していただきたい」 ゼット「……ふむ。だったらまずその“原因”とやらを見つけ、     エーテルアロワノンから古墳へアハツィオンを還せばどうだ。     解呪を探すのはそれからでもいいだろう。     ようは還してからのアハツィオンを起こすものが居なければいい」 中井出「あ……そっか」 彰利 「おーおー!なかなか知識回るじゃねぇの!俺、キミもっと馬鹿だと思ってた!」 ゼット「死んでみるか貴様……!」 彰利 「え!?なんで!?俺褒めたのに!」 中井出「褒めてたのかよあれで!!」 不安全開状況の中、光が見えたと思うと途端にいつもの状況に戻る仲間達。 どうしてこう切り替えが早いんだこいつらは……。 ルナ 「じゃー……これからエーテルアロワノン?」 悠介 「そうらしい」 溜め息混じりに返事を返す。 さて……このパーティでそういう細かいミッションめいたものが成功するかどうなのか。 ……失敗はちとシャレにならん。 悠介   「じゃあ、エーテルアロワノンに向かいながらいろいろ纏めよう。       いつまでもここに居るわけにもいかないだろ」 彰利   「お、そうYOねィェ。んーじゃあビッグボディ、オイラたち行くね」 中井出  「ビッグボディって……」 ゼプシオン「気をつけろ。エーテルアロワノンが滅びた原因……       それはおそらく原因そのもののついでだ。       生ける者がその場へ行けば、確実にアハツィオンは襲い掛かってくるだろう。       躯であり暴走状態だろうと、その力は確かだ」 彰利   「あ、なんだったらビッグボディも一緒に───」 ゼプシオン「……それは私のことか?生憎だが城がこんな状態だ。ほうってはおけまい。       どうすれば玉座だけを残して綺麗に吹き飛ばせるのかを訊きたいくらいだ」 彰利   「いやほら、オイラってばヒネクレてるから」 悠介   「性格がヒネクレてれば放つ波動までヒネクレるのかおのれは」 彰利   「だってホラ、放った力が黒ならオイラも黒だし、ね?」 悠介   「………」 こいつにはそもそも常識は通用しないようだ。 そうだよな……そんなことずっと昔っから解ってたことじゃないか。 “むしろこのおっちゃん倒したらオイラが座ってみたかっただけだったんだが”とか、 かなり危険なことを小さく呟いている彰利を見て、そんなことを思い出していた。 倒してたらこうして話すことは出来なかったってことを解ってるんだろうか、こいつは。 ───……。 ……。 そんなこんなで俺達は再びフィールドを走ることになったわけだが─── 空界でもこんな風なことをしていたことを思い出すと、 どうにもこれがゲームだとかいうことを忘れてしまうことがある。 だってな、誰かに頼まれごとしてそれをこなすためにあっちこっち動き回って、 ようやくそれを消化したと思ったらまた依頼って……思い出しただけでも頭が痛い。 楽しめるうちが花だよな、こういうのは。 で、実際今の俺が楽しんでいるかといえば─── 彰利 「よっしゃあ次はエーテルアロワノン!斉王のヤロウに吠え面かかせてやらぁな!」 ルナ 「骨なのに吠え面作れるの?」 彰利 「う、うるせー!ものの喩えでしょ!?いちいちツッコミ細かいのよこの空き缶!」 ルナ 「だから空き缶言うなって言ってるでしょホモっち!!」 中井出「そうだこのタコ!」 彰利 「なんでこういう時ばっか颯爽とノッて罵倒するかねキミ!     大体このパーティーってば異色要素が多すぎじゃないかね!?     空き缶とエロマニアとモミアゲと刀と鱗なんて!」 中井出「てめぇなんてホモじゃねぇかこのホモっち!!」 彰利 「なんだとこのエロっち!!」 みさお「あのっ……恥ずかしいですからっ……!     大声でホモとかエロとか叫ぶのやめてください……!     ───父さま!遠い目をして遠くを見てないで止めてください!!」 悠介 「あ、ああ……いや、うん……そうだな……」 気づけば遠い目をしている自分が居るような心境である。 今では彰利と中井出が“わ〜〜〜っ!”とわざとらしい声を上げながら殴り合い、 それが終わるとわざわざtellで“今日は……ごめんにぇ?”とか言っている。 ちなみに中井出の拳が彰利に当たった時、 ボマーが炸裂して吹き飛んだのはまた別の話だ。 なぁ〜にをしたいんだろうなぁ、こいつらは。 彰利 「というわけで確認終了しました」 中井出「サブネームだけ考えると最悪だ、このパーティー」 みさお「どちらにしても彰衛門さんと中井出さんに比べればどれもマシだと思いますが」 彰利 「ぬう……でもゼットは脳内鱗症候群だよ?頭硬ェし」 ゼット「頭の中にまで鱗を生やす馬鹿が何処に居る」 中井出「そうだこのタコ!」 彰利 「だから他の人の言葉に便乗して罵倒すんのやめろってのエロっち!」 中井出「それだったらそっちだって素でエロっちとかいうなホモっち!」 彰利 「なんだとこのエロ!エロエロエロエロ!!」 中井出「なにくそ!このホモ!ホモホモホモホモ!!」 ゼット「少しは落ち着け。仮にも死神の王たる者が───」 彰利 「キミにだけは落ち着きを説かれたくねぇわ!この尻に敷かれマン!!」 ゼット「な、なななんだと貴様ァアアアアッ!!!!」 中井出「尻に敷かれてるって意味じゃお前も一緒だろこのホモが!」 彰利 「あんですとぉーーーっ!?     オ、オオオイラはきちんと亭主としての在り方を保っておりますよ!?     それはもうOHサイコー!とか言いたくなるくらいに亭主然ですよ!?     なにを証拠にそげなこと言うのかねこのエロが!!」 中井出「いっつも篠瀬さんにボッコボコにされてるだろうがこのホモが!!」 彰利 「なんだときさーーーん!!この彰利、もう辛抱たまらん!かかってこいオラァ!」 ゼット「ブチ殺してくれるわぁーーーーーっ!!!!」 彰利 「やかましぃいいーーーーーーっ!!!」 みさお「あの……!ですからね……!?」 ルナ 「悠介、ほっといていいの?」 悠介 「すまん……早速このパーティーの中に居ること後悔してる……」 やがて始まるドンパチを横目に、早速頭を抱えてる自分が居た。 武器を使ってないだけマシにしても、あの三人の喧嘩はまるで嵐のようだ。 殴っては殴られの取っ組み合いを始め、 だが彰利は状況的に1対2を余儀なくされてボッコボコである。 彰利 「ち、ちくしょー!卑怯だぞてめぇら!よってたかって!!」 ゼット「黙れクズが!!」 中井出「死ね!!」 彰利 「お、おわぁーーーーっ!!《ドカバキ!》ギャーーーーーッ!!!」 彰利が殴られてゆく。 だってのに走ってるのはどういう器用さなんだろうなぁこいつら……。 彰利 「お、おのれこの俺がただでやられると思うなよ!?変ッ身ッ!!     《マカァーーーーン!!》……完……了《ボゴシャア!》ウベルリ!!」 彰利がロビンに変身した途端に顔面を仮面ごと殴られた。 ロビン「な、なにしやがるてめぇーーーっ!!     変身中は攻撃しちゃいけないって暗黙のルール知らんのか!?」 ゼット「それを変身と言うなら、既に終わっているだろう」 ロビン「え?あ、ギャア!《ドゴボゴドカバキゴスガスドゴォ!》ギョエェーーーッ!!」 実にボコボコである。 なんのために変身したのかも解らないまま、これでもかってくらいボコボコである。 ロビン「グ、グウウ〜〜〜ッ!!この紳士超人に向かって《ボゴシャア!》ウベルリ!!     い、いやちょ《ボゴシャア!》ウベルリ!!     まだ話とちゅ《ボゴシャア!》ウベルリ!!     ギャヤヤァアアーーーッ!!待って待ってぇえ!!」 中井出「黙れぇこのエセ紳士が!紳士超人が“てめぇ”なんて言うわけねぇだろうがぁ!」 ロビン「う、うるせーーーっ!!紳士だって人の子なんだよ!!」 中井出「ゲゲェ逆ギレしやがったこの紳士!!この最低紳士が!!」 ロビン「さ、栄えあるロビンダイナスティの紳士に向かってなんて言い草!!     てめぇ今日は家に歩いて帰れると思うなぁーーーーーっ!!!」 中井出「なにぃ!?じゃあ俺は何処に歩いて帰ればいいと!?」 ロビン「……そういえば何処だろ《バゴシャア!》ウベルリ!!     な、なにしやがんだてめぇーーーっ!!今俺キミの質問に答えてたでしょ!?     それを普通平然と殴りやがりますかてめぇ!!」 中井出「フフフ馬鹿め!彰利一等兵、我らはどんな集団だ!?そう!普通破壊の集団!     そんな普通だの平然だのを今さら言って《ボゴシャア!》ギャアーーーッ!!」 ロビン「俺は紳士超人だからそんなことは知らん!!」 中井出「し、ししし紳士超人が喋り途中の相手を殴ったぁあーーーーーーーっ!!!」 ロビン「ゲッ……う、うるせぇえーーーーーっ!!!こうなりゃこの紳士、辛抱たまらん!     紳士パンチ!紳士金的!紳士サミング!紳士首締めぇえええーーーーーっ!!!」 中井出「ギェエエエーーーーーーッ!!!」 みさお「落ち着いてください彰衛門さん!     最初のパンチ以外全てが紳士的じゃありませんよ!?」 ロビン「ロビンがやればなんでも紳士なんだよ!!」 みさお「うわぁ無茶苦茶ですーーーっ!!」 ロビン「悔い改めろ悔い改めろギギギィイーーー!《バゴシャア!》ぶべぇーーーい!!」 ゼット「紳士が聞いて呆れる。貴様の言う紳士は首を絞めるのか」 ロビン「もちろんだ!」《どーーーん!!》 中井出「げっほ……!い、言い切ったぁあああーーーーーっ!!!」 物凄い紳士が居たものである。 俺は騒ぎの渦中の横を走りながらも、やはり遠い目をしていたのだろう。 ルナに“ほんとにほっとくの?”と訊かれ、 しかし乾いた笑いを返すことしかできなかった。 俺の明日ってどっちだろうなぁ……。 などと思っていた時、ふと“くきゅる〜”という音が聞こえた。 みさお「はぅっ……!」 全員の足が止まり、みさおに視線が集中する。 どうやら空腹らしい。 そういえば走りっぱなしの動きっぱなしで食事をとってなかったな……。 みさお「い、いえあのっ!これはその、違くて……!」 ロビン「ほっほっほ、卑しいヤツよのう……そんなにメシが喰いたかったのかね?」 みさお「くっ……!いちいちイヤミったらしい紳士ですねっ……!」 ロビン「し、失礼な!!イヤミったらしいとはこの紳士超人ロビンに向けて言ったのか!」 ゼット「他に誰が居る」 ロビン「うわヒデッ!!即答だよこの人!     その言葉はこのパーティーでイヤミったらしいのは     このロビンだけだと言っているようなものだぞ!?」 ゼット「だから、そうだと言っている」 ロビン「うあ……」 中井出「あ、ロビンが落ち込んだ」 みさお「物凄く奇妙な光景ですね……」 草原に両手と両膝をついて、がっくりと項垂れるロビンは確かに奇妙だった。 まあそれはそれとしてだ。 悠介 「じゃ、ちゃっちゃと料理作っちまうか。一時ここでキャンプってことでいいか?」 中井出「意義なーし」 ロビン「い、意義あり!紳士をここまでナメくさったお子のためにキャンプなど許さん!」 悠介 「黙れアゴケツ」 ロビン「アゴッ……!?」 中井出「ああ……紳士超人がまたがっくりと……」 ルナ 「なにひとつ紳士っぽくない紳士だからいいんじゃない?」 ロビン「うっうっ……みんなが僕をイジメる……。     ロビンになった途端に扱いがハンパじゃなくヒドくなった気がしてならねぇ……」 悠介 「じゃあみさお、石、火、鍋、出汁の用意は俺がするから材料切っといてくれ」 みさお「あ、は、はい」 悠介 「中井出はゼットとそこらで食用になるモンスターコロがして肉の調達頼む」 中井出「オッケ」 ゼット「……貴様に顎で使われる覚えなどないが───セシルのためだ、いいだろう」 悠介 「草食モンスターを頼むな」 中井出「解ってるって。じゃ、行くかゼット」 ゼット「ああ」 既にフレンドリーな風情のまま、中井出とゼットが草原を駆けてゆく。 みさおは手持ちの食材(主に野菜)を月然力・水で洗ったのちに、 岩の上部を綺麗に斬った即席の俎板の上で斬ってゆく。 俺は俺で適当な岩を砕き、それを並べた中心に適当な枯れ木を炭にしたものを置いてゆく。 そして火をつけた上にバックパックから取り出した調理セットの中の鍋を置き、 水を創造して注ぐ。 あとは少し沸騰してから出汁を取り、みさおが斬った食材をゆっくりと入れてゆく。 みさお「お肉が調達出来ていないのに、入れてしまっていいのですか?」 悠介 「ゆっくり煮込んでやったほうがいい味の出る食材ばっかりだからな。     出し汁を馴染ませてやってから味付けしてやれば、外側と内側でいい味が出る。     もっとも、濃い味付けを好むヤツにしてみればあまり好みじゃないだろうけど」 なんだかんだで、料理をしている時に流れる独特のゆったりとした時間は嫌いじゃない。 このゆっくりした流れに、漂う料理の香り。 蒼空の下でするキャンプは案外無邪気な気分にもなれる。 俺や彰利はずっと昔からこんなことが出来る過程環境じゃあなかったから、 大勢でするキャンプはやっぱり何処かわくわくするのだろう。 ……まあ、一方のロビンは地面に“の”の字を描きながらしくしく泣いてるわけだが。 この姿を見ていったい誰が、彼が紳士だなどという幻覚を見るんだろうな。 ルナにつんつんと突付かれて体育座りする紳士なんて見ててイタすぎる。 中井出「おーい、ちょっといいかー?」 悠介 「お、戻ってきたか」 みさお「こっちはもう準備できて───ます?」 中井出とゼットが戻ってきた。 が、その手が引きずっているソレは…… 中井出「いやー、途中からゼットと獲物勝負始めてさ。     どっちが大きいかを競ってたんだけど」 ゼット「どちらが大きいか優劣が付けられん。晦悠介、貴様が分析して判定しろ」 悠介 「………」 俺は二人が引きずってきた巨大生物を見て、まずひとつ溜め息。 続いて火の番をみさおに任せて立ち上がり、二人の袂まで歩いてその肩をポムと叩くと…… 悠介 「誰が肉食モンスター狩れって言ったばかたれどもぉっ!!」 大声で叫んだ。 中井出「えっ!?───ぐあ!しまった!大きさに夢中で根本的な狩猟条件忘れてた!!」 ゼット「ぬっ……迂闊だ」 悠介 「今すぐ狩り直してこいたわけっ!」 中井出「や、けどさ。これどうする?」 悠介 「今すぐ捨ててこい!!とっとと行け!!」 中井出「な、なんだよー!そんな怒ることないだろ胃炎持ちー!!」 ゼット「禿げるぞ」 悠介 「大きなお世話だ馬鹿野郎!!」 中井出「くそう!だったら草食モンスターで大きさ対決だ!」 ゼット「望むところだ!」 ゾガガガガと二人が走ってゆく。 勝負とか後回しにしてまともなもん狩ってきてくれ……頼むから。 みさお「あはは……無邪気ですね……」 ルナ 「ねぇ悠介、味見していい?」 悠介 「もうちょい待て。肉はこの際度外視するにしても、まだ入れたばっかりだろ」 ルナ 「むー」 みさお「お肉は……どうしましょうか。     このままだと柔らかさや煮込みの調節が合いませんよ?」 悠介 「いいさ、肉は肉で別の料理に使う。     なによりの問題はあの二人がどんな肉持ってくるかなんだ」 みさお「……すいません、やんちゃで」 悠介 「いや、むしろ俺も驚いてる。     あのゼットがあんなにはしゃいだ風に振舞うなんてな。     ちょっと前じゃ考えられなかったことだろ」 みさお「はい。ゼットくんは……昔から友達を作ろうとはしませんでしたから。     産まれた村でも一匹狼みたいに振舞っていて、     そもそも同い年の子供も少なかったですし。     王国剣士になってからは周りがゼットくんの腕前を妬んで、     より一層に友達が出来る雰囲気でもなかったですから……」 悠介 「そうだろうなぁ」 人のことを言えた義理じゃないが、 ゼットの子供の頃は随分とささくれだった性格だったと思う。 もちろん今もだが、それでも中井出に対しての雰囲気には棘が無い。 他のやつらに対しては常に凶器を持ったような空気を発している感があるのに、 それがみさおや中井出となると感じられなくなる。 あいつの中でどんな動きがあったのかは知らないけど、 正直……あいつのあんな無邪気さを見ることが出来てよかったと思う。 辛いだけの人生じゃああんまりすぎるから。 中井出「うおーーーしゃーーーっ!!晦晦これ見ろオラァーーーッ!!」 ゼット「晦悠介!この大きさならば文句はないだろう!」 ───などとしんみり思ってた俺の思考をブチ壊す姿が遠くから疾駆してきた。 引きずる獲物はこれでもかってくらい巨大なんだが、 どう見たってジャイアントギガースにしか見えない。 悠介 「……ちょっとこっち来い貴様ら」 中井出「貴様ら!?いやちょっと待て!お前なにか誤解してないか!?     こいつちゃんと草食だぞ!?     ゲッソリでヨレヨレな姿で草もじって食ってたから間違いねぇって!」 ゼット「ああ、俺も見た」 悠介 「そりゃただの餓死寸前で草を食って飢え凌いでたギガースだばかたれ!     草食ってりゃなんでもいいわけないだろが!     大体こいつ食ったら人肉食ってるのと変わらないだろうが!!」 中井出「に、肉取ってこいって言ったのお前じゃないか!なんの文句がある!」 悠介 「じゃあお前のメシこいつな」 中井出「今すぐ別の肉取ってくる」 ゼット「チッ……注文の多いヤツだ」 悠介 「そう思うなら一度目で納得出来る肉取ってきてくれよ頼むから……」 そうして、三度目の狩猟に出かけるゼットと中井出。 短時間で巨大生命体を仕留めてくるのは見事だと思うんだが、 どうにも中身が伴わないというか……はぁ。  ……ドドドドドドドッ……!! ───っと、もう帰ってきたらしい。 いったいどれほどの速度で走っていったのか、 遠くから土煙を上げて走ってくる姿を見て今度こそはと願う。 三度目の正直って言うしさ、なぁ? 中井出「ベベベベベベベベベヒーーーィイイイモスだぁああーーーーーーーっ!!!!」 悠介 「オワァアーーーーーーーッ!!!?」 結論。願った俺が馬鹿だった。 どっから引っ張ってきたのか 巨大なベヒーモスに追われる二人は一直線にこちらへ走ってきており、 当然ベヒーモスもこちらへ一直線。 無理矢理合流を果たされた俺達は、 せっかく煮込んだ料理をひっくり返しながら死闘を繰り広げることとなり、 やがて死ぬ思いで戦闘を終了させたのち……結局は俺が肉を取りに行くこととなった。 すると探す必要もないくらいにあっさりと草食モンスターは発見され、 俺は黄昏たくなる自分を必死で押さえながらキャンプに戻ると、調理をやり直すのだった。 最初からこうすりゃよかった……。 神様……俺は本当に馬鹿なんでしょうか……。 【ケース328:晦悠介(再)/スプラッシュ(エレ)ファ〜ント】 それから命懸けの食事を終えた俺達はそれからのんびりとするわけでもなく、 やはり走ってエーテルアロワノンを目指した。 巨人の里からの距離は結構あり、中井出が“シードが居ればなぁ”とか囁いていた。 なんでもシードというあのちっこい魔王は、 死人の森にのみ転移出来る能力を持っているんだとか。 しかし結局は俺達の転移にも頼らないところを見ると、 走ることもイベントのうちだと思っているらしい。 まあ、確かに足が遅いわけでもないのだ、ぼやいても仕方ない。 ロビン「ナンバーワーーーーーン!!!《シャコシャコシャコシャコ……!》」 みさお「彰衛門さんお願いですから!     ロビン状態でナンバーワンを謳いながら自転車を漕ぐのはやめてください!」 ロビン「断る!これはロビンダイナスティに伝わるアノアロバイセコゥ!!     このロビンが乗ってなにが悪い!!」 中井出「そんなもん勝手に伝承されたらロビンダイナスティもいい迷惑だろうな……」 ロビン「し、失礼な!!このアノアロの杖があるだけで家宝と言ってもいいくらいだぞ!?     見てほらちゃんと炎出るでしょ!?ファイヤー!《ゴバァ!!》ギャアーーーッ!     おあちあじゃじゃじゃじゃじゃっ!!噴出した炎が我が体を……!!」 自転車の先に付いたアノアロの杖から炎が噴射され───た途端、燃え盛るロビン。 ルナ 「ホモっちってば馬鹿でアホゥ……」 悠介 「その速度で炎出せば自分が燃えることくらい想像出来るだろうが」 ロビン「《カァア……!》し、知ってたよ!?知ってたもん!俺わざとやっただけだよ!?     寒かったから燃やしただけだもん!事故とかじゃないよ!?ほんとだよ!?」 ルナ 「や、そんなに必死に弁解されても」 中井出「ていうか頼むからさ、ロビンの姿で“もん”とか言うなよ気持ち悪ぃ」 ロビン「ひでぇ!!そ、それが紳士に向けて言う言葉か!?」 ゼット「断言しよう。貴様は紳士ではない」 ロビン「なんで!?すげぇ紳士してるじゃん俺!!」 ルナ 「ね、ね、悠介。紳士ってこういう切り返し方するの?」 悠介 「しない」 ルナ 「あはははは!や〜いホモっちエセ紳士〜!」 ロビン「グ、グウウ〜〜〜ッ!!《ゴオオメラメラ……!!》」 悠介 「グウウじゃなくて……いいからまず炎消せお前」 中井出「燃え盛る紳士(自称)と話をしたのって俺達が世界初だろうなぁ……。     俺も燃えながら挨拶したことはあっても、そのあと藍田に殺されたし」 あるんかい。 ロビン「るろうに剣心……炎上!京都輪廻!《メラメラメラ……!》」 ゼット「燃えてるのは貴様だ」 中井出「捨て身のギャグもここまで行くと怖いんだなぁ……」 みさお「怖いですね……」 ロビン「………《ゴオオオオ……!!》」 むしろ剣心のことに関して完全に無視されたことを悲しそうにして燃えるロビン。 戦闘状態じゃなければHPが回復するからって、痛いのは変わらないと思うんだがなぁ。 やがて自転車が熱に負けて溶けると、物凄い速度の中でロビンが豪快に転倒。 燃えながら体を自転車に絡ませてバキベキと骨を折ったのちに動かなくなった。 仕方なしに立ち止まると、自転車に絡まって転がるロビンの袂へと戻る。 ゼット「何処までも進撃を邪魔する男だな……」 ロビン「グビグビ……」 みさお「あぁ……溶けた自転車と鎧がくっついちゃってますよ?どうしましょうこれ……」 ゼット「こんなものは強引にでも取ってやればいい。フンッ!!」 ロビン「《メキゴキベキャア!!》ギョアァアーーーーーッ!!!!」 中井出「うおっ!?ゼットゼット!首が420度くらい曲ってる!千切れる千切れる!」 悠介 「しっかしとことん品の無い声で叫ぶ紳士だな……」 ロビン「グビ……グ……ビ……」 仕方なしにイメージを弾けさせると、小さな黄昏から乖離剣を引きずり出す。 それでロビンと自転車を乖離すると一息───つけなかった。 ロビン「キャーーーーッ!!!?」 中井出「おわぁあーーーーーっ!!!?」 みさお「ひきゃぁあーーーーーーっ!!?」 “ロビンと自転車”を乖離してしまったためか、 すっかり自転車とくっついてしまった鎧まで乖離してしまったのだ。 ようするにロビンは仮面だけの状態で……まあその、裸だったわけで。 ロビン「キャッ……キャーーーッ!?キャーーーッ!!キャアアーーーーーッ!!!」 叫ぶロビンを眺めると、遠い目をしたまま創造を開始。 せめてこれがパフォーマンスだったのだと何気なくアピールすることで、 恥ずかしさを軽減させてやろうと思った。 つまり、ロビンの変身シーンを再現してやるのだ。 悠介 「ロビンが完全体となるにはとなるにはこいつが必要だぜ!」 わざと声を高めにそう言って、ロビンに向けて創造した篭手と具足を投げる! ロビン「!ヘアアーーーッ!!」 するとロビンが跳躍し、空中でそれらをグワキィグワキィと装着してゆく!! 次にパンツと胸当てを創造すると、 ケツを見せながら何故か横倒れ状態で空中を漂っているロビンへと投擲する! と、ロビンがケツ状態からの脱出を喜ぶかのように、 ロビン「ヒョオオ〜〜〜ッ!!」 蟹股フルチン状態で横回転したのちにパンツをバゴシャォオンッ!!! ロビン「ギョエェエーーーーーーッ!!!!《ドガァン!》うわらばっ!!」 悠介 「あ」 蟹股フルチン状態で横回転したロビンがいざパンツを履こうとした刹那、 ゼットにケツを殴られて吹き飛ぶと、 たまたま疾走していたライノス(サイ型モンスター)にドガンと撥ねられた。 ゼット「見苦しいわ!!このクズが!!」 やがて篭手と具足と仮面だけをつけた変態状態のまま、草原に落下するロビン。 ……あまりの哀れさに、さすがに目も当てられなかった。 中井出「もう少しで見苦しさから脱出できたのになぁ……」 みさお「といいますか……変身解除したほうが早かったんじゃないですか?」 悠介 「俺も今そう思ってたところだ……」 ルナ 「でもホモっちだし」 中井出「うお、一言で片付けられた」 作戦はこれ以上ないってくらい失敗に終わった。 パフォーマンスがどうとか以前の問題だ。 蟹股フルチン状態で横回転パンツ履きの神秘に激怒したゼットが パフォーマンスという逃げ道を完全に塞いでしまった。 気づけばロビンは普通にパンツと胸当てを普通に装着していて、 やはり草原に体育座りをすると“の”の字を描き始めた。 物凄い落ち込みようだ。 ゼット「先を急ぐか」 中井出「そうね」 悠介 「ほんとそう」 ロビン「無視!?グ、グウウ〜〜〜ッ!!     この紳士超人ロビンマスクを無視していくとは許せ〜〜〜〜ん!!」 悠介 「ほらロビン、さっさと立て。置いてくぞ」 ロビン「うん僕行く」 無視されなければそれはそれでいいらしい。 こいつの気持ちの全ては多分、 一生かかったって誰にも解らないんだろうなぁとしみじみ思った夏の日だった。 Next Menu back