───冒険の書118/エーテルアロワノンへ───
【ケース329:晦悠介(超再)/ヴィルヘルムヨーゼフ・フォンヘルマン伯爵に愛を】 エーテルアロワノンに辿り着くための道を進む。 走り続け、時にキャンプを張ったりして寝ては、また飽きるまで駆け、 時に旅の行商人に会ったり吟遊詩人に会ったりなどして、なかなか楽しんでいたりした。 彰利と中井出が吟遊詩人にサブリガを勧めた時はもちろん全力で止めたもんだが、 そこへの興味が失せると今度は吟遊詩人とともに謳い始める始末。 どうして吟遊詩人と謳う詩が“日本印度化計画”だったのかは知らんが、 それを聞くなり俺は彰利と中井出を殴り倒してでも引っ張り、旅を再会させ、現在に至る。 長い道のりを走り、やがて辿り着いたその先にあったものは─── 町への道ではなく、青白い炎に包まれた場所だった。 場所、というよりは……エーテルアロワノンを囲む一帯が青白い炎に包まれてる。 炎……と呼べるものだというのにそれは草を燃やさず、 ただどこまでも高く燃え広がっている。 中井出「祭りじゃーーーっ!!」 彰利 「祭りじゃーーーっ!!」 中井出「ドンツクドンツク!」 彰利 「YO!YO!」 中井出「ドンツクドンツク!」 彰利 「アハァーッ!?」 中井出「ドンツクドンツク!」 彰利 「マイクチェックワンツー!」 中井出「ドンツクドンツク!ヒゥィゴーッ!!」 彰利 「悠介どんは〜ネボスケどん!モーニン目覚ましスイッチオン!!」 悠介 「一番起きるのが遅かったお前らにネボスケ呼ばわりされる覚えはないし、     高く上る炎を見て、まず第一声がそれなのか」 炎を見上げる。 恐らく空の真上の果てまで燃え盛っているであろう炎を。 空を飛んだとしても乗り越えられないだろう。 悠介 「地面でも掘るか?」 ルナ 「んむー。地面壁抜けして見てきたけど、下にも炎があるよ」 悠介 「ふむ……」 じゃあどうしろっていうんだ。 と思ったが、ひとつ思い出したことがあった。 悠介 「死人の森……か?」 彰利 「ゲェ……またあそこ通るん?」 中井出「オー、つまりこれは強制イベントってやつか?     死人の森を通らなきゃエーテルアロワノンには行けねぇぜって感じの」 彰利 「むむ……つーことは死人の森でなにかが待ってるってことか?     正直ジュノーンだったら勘弁していただきたい」 ルナ 「わたしも……」 悠介 「この中で一度、こっちに戻ってきたヤツって居るか?」 中井出「あ、俺。でも前にここに来た時はこんな炎無かったぞ」 じゃあ、やっぱり強制イベントってやつか? 実際こうまで言っても、 死人の森からエーテルアロワノンに出れる保証なんて何処にもないわけだが─── それでも用があるのがエーテルアロワノンなら行くしかないんだろうな。 彰利 「ホホホ、なぁにこんなもん転移で向こう側に飛んじまえばいいのよ」 キィッ───ビジュンッ!! 彰利の姿が消える。 月空力の力による転移は既に彰利やみさおなどといった、 上級の月操力使いにとっては当然のものみたいになっている。 当然今さら転移場所を間違えるなんてことも無いものだろうが───ジュゴォンッ!! 彰利 「ギャアーーーーーッ!!!」 中井出「ゲゲェ!彰利がストリートファイター2あたりで燃やされたキャラみたいに、     メラメラ燃えて飛んできた!!」 姿を見せた彰利は青白い炎に焼かれ、本当にストリートファイター2で…… たとえばダルシムあたりの炎で焼かれたキャラみたいに燃えながら吹っ飛んできた。 彰利    「あじゃじゃじゃじゃじゃじゃ!!        うわぁーーーちゃちゃちゃちゃあーーーっ!!」 中井出   「はっ……こ、これは!日本を印度にィッ!!」 彰利&中井出『しィイてしまえェッ!!』 デゲデデゲデゲデゲデデ〜〜ン♪ドォン! 彰利 「俺にカレーを食わせろォッ!!《ゴオオメラメラ……!!》」 中井出「俺はいつでも!辛さにこだわぁるぅぜぇよ!!」 悠介 「歌もカレーもいいからまず炎を消せ」 彰利 「サモサ!?《ゴオオオオ……!!》」 驚いた顔をしつつ、草原を転がって炎を消す彰利。 少し火傷をしていたが、それもすぐに治るんだから珍妙だ。 ……ああいや、この世界が、という意味で。 言ってしまえば確かに彰利も珍妙ではあるが。 中井出「ちなみに俺はそうやって人間魚雷やってる最中に、     イフリートの目の前で藍田にカミソリパスで蹴られて昇天した」 彰利 「精霊の前で面白いことやってんねぇ。さすが原中の提督」 中井出「いや……べつにやりたくてやったわけじゃないんだけど」 彰利 「まぁたまたぁ、謙遜すんなって」 中井出「いや、だから、ね?」 ……さて、この際だから既に人の話も聞く気はないであろう二人は放っておいてと。 死人の森か……なにがあるのか解らないが、行くしかなさそうだ。 ルナ 「行くの?」 悠介 「しかないだろ、こんな状況じゃあ」 言って、改めて炎の壁を見上げる。 まずはエーテルアロワノンに辿り着けなきゃ意味がないのだ。 この炎だってゲーム上で考えれば斉王が獲物を逃がさないために張った、 とかいうものかもしれない。 傍迷惑な話だが、俺達が今立ってる世界はそういう世界なのだ。 郷に入りては郷に従え、ね。 まったく、確かにその通りだろうけど、いったい誰が言い出した言葉なんだか。 ───……。 ……。 そんなわけで死人の森である。 彰利 「わあ、死人がいっぱい」 最初の頃から完全放置していた死人の森は、 今やエーテルアロワノンからか斉王の古墳から溢れている瘴気の所為か死人だらけである。 にしたってこの数は異常ではないだろうか。 彰利 「解説のエロマニアさん、状況をどうぞ」 中井出「どうも、中継のホモマニアさん。     えー、以前私が来た時はこんなにも死人は居なかった筈なのですが」 彰利 「誰がホモマニアだコノヤロウ!!言うにことかいてマニアとは!」 中井出「うるへー!貴様もちょっとはマニアを付けられる気持ちを味わってみやがれ!!」 ゼット「騒ぐな、感づかれる。雑魚屠りなど面倒でやってられるか」 彰利 「お黙り!このみさおマニアでセシルマニアめ!!語呂合わせでセシマニア!!」 ゼット「なっ……なんだと貴様ァアアアアアッ!!!」 ルナ 「また言い合い始めちゃったけど。ほっとくの?」 悠介 「いや……むしろどうしてお前がまず俺にそういう言葉を振ってくるのかが謎だ」 ルナ 「え?悠介だから」 悠介 「………」 神様……生きた軌跡が至福に遠いんだ、助けてくれ。 彰利 「大体セシルなんて“暗黒”が使えなけりゃ役に立たねぇんだよタコ!!     セシルは断然暗黒騎士のほうがよかったねっ!     パラディンになってからローザと特種能力かぶってるから使えないのさっ!!     キミもセシルは暗黒騎士のほうがめがっさ良いって思うっしょっ!どうにょろ?」 中井出「とりあえず殴る」 ゼット「同感だ」 彰利 「なぜぇええ!!」  ドゴゴシャボゴドゴ……! 彰利が中井出とゼットにボコボコにされる様を横目に、 俺は生きた人の臭いを嗅ぎつけて近寄ってくる亡者どもを見てうんざりした。 騒ぎすぎだ、そりゃ見つかる。 というかどうしてこいつらはそうまでして面倒ごとを巻き込むんだろうか。 お前らもしかしてわざとか?わざとやってるのか? 悠介   「彰利、中井出、ゼット、敵が来たが……」 マニア×3『それどころじゃない!!黙ってろ!!』 悠介   「………」 何故か俺が怒鳴られた。 何故だ……理不尽だろ、どう考えても。 グール『モォオオルェエエエエ……』 悠介 「………」 やがてのたのたと目の前に来るグールやゾンビやスケルトン。 俺はそんな腐敗人たちを前にニコリと笑い─── ルナ 「みさっち、離れて」 みさお「え?ですが」  ボゴルシャア!! スケルトン『コケェエーーーーーーッ!!!?』 スケルトンの顔面を殴り飛ばし、頭部だけを森の奥へと輝かせた。 みさお「あ……」 悠介 「……どいつもこいつも好き勝手言いやがって……。     散々騒いでヤバくなったら俺任せ……?く、くくくはははは……」 みさお「う……あ、あの、父さま……?」 悠介 「いい加減にしろたわけがぁあああっ!!!」  ドォオオオッゴォオオオオンッ!!!! 不死軍団『ギョェエエエーーーーーーーッ!!!!』 俺の体から放たれたドームの光に飲まれ、アンデッドモンスターどもが掻き消える。 やがて光が消え去った頃には森の大半が吹き飛んでおり、 残っている木の影からチラホラとゾンビどもが覗いている。 俺は髪を金、目を真紅に染めながら飛翼と角を伸ばした状態でそれらを睨みつけると、 この世界がどんなものだろうが関係ないと断じて……まあその、ぶっ放した。 ゾンビども『る、るぇええげぇええええ……!!』 ガオォオオン!と、ドドリアさんのように口から吐き出した 竜族謹製極光レーザーにて掻き消える先の森とアンデッドども。 そうして雑魚処理が終わると俺は後ろに向き直り、 唖然とした表情のままの彰利、中井出、ゼットの顔を見て一言。 悠介 「先……進むぞ」 彰利 「ヒィッ!ハ、ハハハイィ!!だから落ち着きましょ!?」 中井出「そうそう!話せば解る!」 ゼット「そうだ、落ち着け」 落ち着きがないお前らに言われたくない。 けど納得してくれたようだから状態を元に戻して歩き始めた。 みさお「……?あの、父さまは既に神魔霊竜人ではないのでは……?」 ルナ 「ああそっか、みさっちは旅の中では別行動だったから知らないんだっけ。     あれはただの怒りの具現だから気にしないでいいの。     キレると見た目だけああなるだけだから」 みさお「そうなんですか?」 ルナ 「旅の途中で“嘆きの洞窟”っていう場所に入ってさ。     そこが人の冷静さを欠かせる仕掛けがいっぱいある場所でね?     一歩足を踏み入れた途端にモミアゲ〜モミアゲ〜とか聞こえてくるものだから、     悠介ってば怒っちゃって。それでも耐えてたんだけど、     そこがまた足音も息の音もモミアゲって音に鳴る場所でね?     そんなだから一度キレたことがあるの。     多分地図の中で一つ削れたままの場所があると思うけど」 みさお「え……と……うあ、本当です……。     解りました……覚えておきます……でも───」 彰利 (おお怖ぇえ……) 中井出(目が合っただけで殺されるかと思った……) ゼット(チィ……俺としたことが動けなかった……) みさお「効果は抜群だったようですね……」 ルナ 「あれだけ騒いでた三人が、叱られた子供みたいだもんねー」 彰利 「誰がお子様だ空き缶フルムーン!」 中井出「確かに我らの心の巴里には童心がたくさん詰まっているが!     叱られた子供のようだと言われるのは心外!!」 ゼット「千年も生きていない死神風情に子供呼ばわりされる覚えなどないわ!!」 悠介 「…………《ギロリ》」 彰利 「ヒィッ!?……───ハイ僕子供デス」 中井出「さ、早く先に進もうかぁ……あ、あははははは!!」 ゼット「ぬ……今日のところは見逃しておいてやる」 ルナ 「……うん、ほんとに効果があったみたい」 彰利 「お、覚えてろくそぅ!───ヒィッ!だ、大丈夫!僕なにもしないよ!?     だから睨まなくて平気だから!ね!?」 俺の目を見るや、中井出と抱き合うようにしてカタカタ震える彰利が居た。 べつに取って食いやしないんだから、そう怯えられても困るんだが。 悠介 「さてと。予期せぬ事態のお蔭で森も吹き飛んだし、アンデッドも消滅した。     ……じゃ、とっとと先進むか」 彰利 (ぐっ…………!この男っ…………よくもぬけしゃーしゃーと…………!) 中井出(いやでも……キレただけでこれだぞ?神魔の加護も竜人の加護も無しに) 彰利 (キレてパワーアップなんて、ゲームの中でしてもらいたくないものだねぇ……) 悠介 「?行かないのか?」 彰利 「ああっ!待ってよぅ!」 中井出「や、ここでアニメ・地獄先生ぬ〜べ〜の人体模型の真似せんでも」 彰利 「意味はない」 すっかり蒼空に照らされるがままの森を歩く。 森といったって、ところどころ吹き飛んで、ただの雑木林のようにしか見えないが。 いやそれ以下だな、木がほとんど無くなってしまった。 彰利 「ひどい……あんなに立派な森だったのに……」 中井出「いったい誰がこんなことを……」 悠介 「あぁはいはい……やりすぎたのは解ってるから。     喋りながらチラチラとこっち見るなよ……」 ルナ 「大体腐敗した森に立派もなにもないでしょ」 彰利 「グ……グウムッ」 ルナの言葉にぐぅの音も出ないらしい彰利。 そんな彰利を豪快に笑ってみせる中井出や、中井出とともに彰利を罵倒しまくるゼット。 さらにそんな騒ぐ人々を見ておろおろするみさお。 そんな中で俺は…… 悠介 「頭痛ぇ……」 結局収まりのつかない喧噪に、頭を痛めるのであった。 もういい、歩いてるだけマシだと思おう。それがいい。 彰利 「頭痛とな!?そりゃいかん!頭痛にヴァファリン!」 中井出「殊戸瀬が非合理に調合したヴァファリンがある!死ね!じゃなくて飲め!!」 悠介 「ちょっと待て今本音が出ただろオイ!どんな毒薬だそりゃ!!」 中井出「どうって……まず飲ませます」 ゼット「《がぼっ!》むごっ!?《ドンッ!》ぐっ!?《ゴクリ》」 中井出「エーハイ、方法と致しましてはキャップを外して口に突っ込み、     上を向かせて背中辺りを強打してやりゃ大体飲むから。すると」  ゲボハァッ!!……どしゃっ。 中井出「このように血を吐いて即死します」 彰利 「マア!これで頭痛ともオサラバね!!」 みさお「あわわぁーーーっ!!ゼットくんが一撃で死んだぁーーーーっ!!」 ルナ 「あ、大丈夫大丈夫、生きてる生きてる」 中井出「そんなわけで一家に一本!頭痛薬!」 悠介 「そりゃ頭痛薬じゃなくて普通に毒薬って言うんだよ!!」 中井出「大丈夫!毒反応一切無し!飲ませて殺しても証拠が残らない一級品だ!!」 悠介 「殺す気満々じゃねぇか!!今すぐ捨ててしまえそんなもん!!」 中井出「ククク……ちなみに捨てるとその辺一帯が、草木も生えぬ死の大地に……!」 悠介 「……あー、ノートか?     今すぐシステムいじって殊戸瀬から調合スキル剥奪してくれ。     いいから、頼むから……理由は訊かないでくれ」 中井出「ちなみにジョーク《ボグルシャ!》モゲベァアーーーーーーッ!!」 悠介 「紛らわしいことぬかすな馬鹿者!!     ───ノート!やっぱり今の無しだ!勘違いだった!     え?相変わらず周りに振り回されてるって?大きなお世話だ!」 彰利 「おーい、電波飛ばしてるとこ悪いんだけど、     中井出が倒れた拍子に頭痛薬の残りをブチ撒けて飲んじまったみたいで、     紫色の肌になりながら泡吹いて痙攣してるぞ」 悠介 「そんなパピィはほっとけ!血でも吐けば動かなくなるわ!」 彰利 「いや、痙攣が治まりゃなんでもいいってこと言ってんじゃなくて……     まあいいや、これはこれで面白いし」 悠介 「……それもそうだな」 こうして俺達は、どんな珍道中の折なのか。 どんどんと濃い紫色に変色してゆく中井出を見ては、 今までの旅のことを吹き飛んだ死人の森の中心で話し合った。 ああちなみに、炎は森だけは避けていたようだった。 森とはもう呼べない場所だけど、まあ結果オーライだ。ちと意味が違う気がするが。 ───……。 さて、そんなこんなで時は過ぎ─── 中井出がパピィのように血を吐いて白目剥いたあたりで 中井出ウォッチングをやめた俺達は、早々に中井出とゼットを回復させて立ち上がった。 そうだった。 俺達は紫色の中井出がやがて血を吐く様を見るために、 こんな辺境くんだりまで来たわけじゃあなかった。 中井出「おぉおお……パピィの気持ちがすげぇよく解った……」 彰利 「詳しくは『ポピーザぱフォーマー』をどうぞ。     DVDは全3巻、2004年にはレンタルもされ……た筈。     1巻4935円(税別)となっております。この機会に是非どうぞ」 中井出「こんなところで宣伝すんなって。     大体俺も知ってるし、全話見たからDVDも要らん」 彰利 「あ、あらそう」 悠介 「それはいいから。もうここからでも見えるぞ。エーテルアロワノンだ」 彰利 「オ……」 他のやつらを促し、自分自身も眺める。 凶々しい気配に包まれた、かつての花舞う町を。 中井出「……戻ってきたんだな」 彰利 「ああ……ティル=マクドールになった気分だぜ……」 ルナ 「?誰?」 彰利 「お?おお、まあ大体の人は知らんのだろうね。     ティル=マクドールってのは幻想水滸伝の主人公の名前さね。     ゲームの方だと名前なんざ無いんだが、小説版だとティルって名前がある。     住んでた場所を追われ、いろんな物語をして最後に向かうのが故郷なのさ」 ルナ 「へ〜……」 中井出「グレッグミンスターか。懐かしいなぁ。     レックナートの所為でこんなところに戻ることになるなんて、     本気でなにかの陰謀か?」 ルナ 「……あれ?レックナートっていうのもそれで居たの?」 彰利 「そうそう、レックナートも幻想水滸伝で居るのよ。占い師、だったかね。     ちなみにレオンとジュノーンとレイナートはみ〜んな、     ドラゴンフォースのキャラの名前だ。サイナートは……なんだったかなぁ」 ルナ 「ふ〜ん、じゃあホモっちたちにしてみれば結構知ってる名前が多いんだ」 彰利 「だぁね。ところで幻想水滸伝内に居る弓使いで“クインシー”ってやつが居るが、     どうにもブリーチの弓使い集団の名前に由来してるんじゃないかと思ってしまう」 みさお「あの……話もいいですけど、     このままだと父さまだけでエーテルアロワノンに乗り込んでしまいますよ?」 彰利 「なんと!?───ゲゲエもうあんなに遠く!まったくせっかちねィェ〜!     ダメですことよ?ホラよく言うじゃない?     速い男は嫌われ《バッゴォッ!!》ぶるっふぇえ!!」 中井出「は、速ぇえ!!ガードする間もなく一回転!!」 みさお「すごい……!全然見えませんでした……!」 瞬速で殴り、ごしゃーんと倒れ伏す彰利の襟首を持って歩き出す。 こいつだめだ。 ほっといたらいつまで経っても歩きやしない。 中井出「お、おーい、だいじょぶかー?」 彰利 「ちとイイのが決まった……の、脳震盪……?世界が揺れてる……」 中井出「そりゃ縦に一回転するほどだしなぁ……」 悠介 「いーから、さっさと行こう。ここでこうしてても埒があかないだろ」 中井出「おおまったくだ」 ゼット「アハツィオンか……フン。     かつて皇竜王レヴァルグリードと唯一渡り合えた“伝説”がこの先に居る……。     所詮仮初、真には至らんだろうが十分だ。この手で破壊し尽してくれる……!」 悠介 「死にたいなら止めないが、ゼプシオンに勝てなかったお前がなんとか出来るか?」 ゼット「相手は躯だ。暴走するだけの相手になにを恐れることがある」 彰利 「ブフゥ!かつては自分も暴走してみさおを食《バゴォ!》ハゴロモフーズ!!」 ゼット「黙れ。そして忘れろ」 彰利 「うげっぴうげっぴ……《どくどく……》」 鼻っ柱を強打された彰利が鼻血を出しながらぐったりと項垂れる。 俺はやはりそんな彰利の襟首を掴んだまま壊れた森を通り抜け─── 悠介 「……到着、と」 ルナ 「うわぁ……いやな方の陰気がいっぱい……」 彰利 「よしルナっち!全部食うんだ!」 ルナ 「やーよこんな陰気。食あたり起こしたらどうするの?」 彰利 「悠介が口直しに大根おろし醤油を創造してくれるそうな」 ルナ 「《ハタタッ……》そ、そんなウソに騙されると思ってるの?」 彰利 (……髪が動いた……) 中井出(空き缶に通した髪が……ハタハタッて動いた……) 彰利 (前から思ってたんだが、こりゃいったいどういったカッパーフィールドで……?) 悠介 「……?」 彰利と中井出の目が、ルナが封冠に通した髪に集中する。 ルナの感情の起伏によって、まるで犬の尻尾のように動くそれはいつ見ても奇妙だ。 けどあれって───がしぃっ!! ルナ 「ふかーーーっ!!」 中井出「うおわっ!?ギャアーーーーーーーーッ!!!!」  ザゴシャゾシュズバゴシャメシャグシャッ……!! ……ルナにとっての、逆鱗なんだよな……。 ああ、中井出がボッコボコに殴られ引っ掻かれ斬り刻まれてゆく……。 好奇心を押さえられずに握った途端にアレだ。 でも中井出よ、女の髪を急に掴むのは正直どうかと思うぞ。 ルナが手ぇ出してなかったら俺が出してた。 ……やっぱり俺って独占欲強いのか?いやでもな、ルナは俺の……まあその、妻なわけだ。 妻にちょっかい出す男が居たら、誰だって怒るだろ?怒るよな? え?怒らない?いい、構わん、俺は怒る。 彰利 「猫って尻尾触られんの嫌がるっていうけど……」 悠介 「特に封冠に通した髪の付け根部分に触れるのは危険だぞ。     俺でも噛みつかれたことがあったくらいだ」 彰利 「か、噛み付くん!?」 悠介 「ああ……あれは今思い出しても恐ろしい……。     思いっきり噛み付いてきたあと、     しばらくすると急に噛んだ部分を舐め始めるんだ。     その時の感触といったら……!ぬおお、思い出しただけで鳥肌が……!!」 彰利 「……あのさー、それって急に噛んだお詫びに傷口舐めてるだけなんじゃ……」 悠介 「そんな、猫や犬じゃあるまいし」 彰利 「いやでもルナっちって奔放さが猫チックだし」 ……ただ封冠を抜き取られてフレイアを目覚めさせたくないだけじゃないだろうか。 攻撃はその防衛本能というか。触れる者皆成敗のような感覚で。 とまあそんなことを考えていると、 一通り中井出を血祭りにあげたらしいルナが俺の袂に来て首に抱きつく。 浮いた状態で抱きつくのはもはやクセだろう。 少し息が荒いところを見るに、やっぱり急に髪を掴まれて驚いたらしい。 俺はそんなルナを落ち着かせるために頭を撫で─── 悠介 「……、」 彰利 「……?……《ニコ……ニコ……ボゴシャア!!》うぎょぱぁーーーーっ!!!」 撫でようとした時、 彰利がカイジでいう石田さんのような笑顔を振りまいたので殴っておいた。 彰利 「あの……いきなり殴られた意味が解らんのですが……」 悠介 「悪かったな……どうせ撫で癖は直ってない」 彰利 「あ、やっぱり?だからこそ生暖かい目で見守ってたんだけノー!     殴らないで殴らないで!殴るダメネ!ノー殴る!ノー!!」 悠介 「人の行動をニコニコ笑みながら見るのはやめろ……!     茶化されてるみたいでいい気がしないだろうが……!」 彰利 「え?そ、そう?意地っ張りな人を懐柔した時って思わず顔が緩まない?」 悠介 「……誰を喩えて言ってるのか解らんが、話聞く限りじゃ怪しいからやめとけ」 言いながらルナの頭を撫でる。 と、自ら位置を変えて頬やら顎やらを撫でさせるルナ。 …………ああ、確かに猫かも。 そんなことを思い、思わず苦笑してしまった。 そんな俺を見てルナが首を傾げる……そんな情景が、今はたまらなく大切に思えた。 悠介 「じゃ、行くか。中に入っても回復アイテムなんて置いてないだろうから、     一応アイテムの確認をしとこう。回復アイテムは買ったよな?」 彰利 「オウヨ。そりゃキミも見てたっしょ?」 悠介 「まあ、そりゃそうだが」 アイテムは旅の行商人から買った。 もちろんそれは覚えているが、なにせこいつらである。 また無意味なものを人知れず買っていて、 代わりに大事なものを買い忘れてたなんてことは有り得そうなのだ。 でもどうやらそれも無用な危惧だったらしい。 悠介 「じゃあ……いいな?」 彰利 「いつでもこい!」 中井出「祭りの準備はバッチリだぜ〜〜〜っ!!」 ルナ 「あれ?お祭りするの?」 悠介 「断じて違う」 先のことを考えた頭が頭痛を抱えてもなお突き進む。 だってしょうがないだろ、こんなのは本当に毎度のことなんだから。 Next Menu back