───冒険の書/斉王封印作戦───
【ケース331:晦悠介(再暴愚)/面倒くさいこと(ましら)
の様に】 ザクッ、ザクッ、ザクッ…… 彰利 「グゥウ〜〜〜ム」 踏みしめる床部分に随分と埃が溜まっているらしい。 さらには妙な……灰、か? ともかく砂利のようなものが多く積もるように存在し、 踏みしめるたびにザクザクと音が鳴っていた。 みさお「随分と暗いですね……」 彰利 「ならばここは俺が。───俺、今とっても輝いてる!!《ギシャアアア!!》」 彰利の顔から眩い光が放たれる! が─── ルナ 「余計に暗くなったね」 悠介 「光自体が黒だからな」 みさお「暗い場所ではとことん意味のないものですね」 ゼット「役に立たんヤツだ」 彰利 「ひでぇ……なにもそこまでボロクソに言わんでも……」 ブラックオーダーの能力も考え物だ。 無理をすればちゃんと白い光も出せるんだろうが、 自分がダメージを受けるのでは意味が無い。 悠介 「辺りを照らす光が出ます。弾けろ」 彰利 「ギャアーーーーーーッ!!!《ボチュゥウウン!!!》」 悠介 「お前が弾けてどうする!!」 彰利 「え?いや、一度やってみたかったんで」 砕けた体をとっとと直す彰利だが……本当に異様な友人を持ったもんだと呆れる。 俺も人のことを言えた義理じゃないわけだが。 いつから(まが)ったんだろうかな、俺達の道は。 彰利 「お?悠介悠介!あそこにジャガー目潰しやってる何者かがおるよ!?」 悠介 「ジャガー目潰しって……」 見れば、光に当てられた広い空間の奥の奥の隅に、 足を抱えるようにして座っている男が居た。 アレがアルギーか……? アルギー?「……誰……だ……」 彰利   「うおっ、すげぇ掠れ声……とりあえずお水をお飲み?       急いで飲んではだめだぞ。       どこぞのアッパーが好きなお姫様もどきと同じように死んでしまう」 言いつつコサ、とバックパックから水を取り出す彰利。 男はそれを受け取ると、 ゆっくりと口の中になじませるようにしてから水を少しずつ飲んでいった。 アルギー?「……ふう。食料が尽きて今や一週間……久しぶりに喉にモノを通した……。       助かった、感謝する」 彰利   「まあよ。で……キミこげなところでなにしとんの?」 アルギー?「バケモンから逃げてんのさ。ここにあのバケモンが来るのは知っていた。       だから非常食や保存食をこの地下に置いてずっと耐えてたんだけどな。       やっぱ俺を狙ってるだけあって、てんで去ろうともしやがらねぇ」 彰利   「狙ってるって……知っとったん?」 アルギー?「俺を誰だと思ってる、情報屋のアルギーっつったらこの世界じゃ有名だぞ。       っと、紹介が遅れたな。俺はアルギー=ベガノサーク。情報屋をやってる」 どうやら彼がアルギー本人で間違いないらしい。 彰利  「で、そのドボルザークがなんでこんな目に?」 アルギー「ベガノサークだ。……ノイってやつ、知ってるか?      かつてはセントールの兵をやってた男なんだが」 悠介  「ああ、ノイなら知ってる」 彰利  「そやつがどうかしたん?」 アルギー「あいつはセントールの王に頼まれて斉王……      まあ、アハツィオン=イルザーグの封印を解いたわけだが───      そのあまりの力の強さ、あまりの暴走っぷりに恐怖したセントール王は、      多分“操ることなど出来ない”って判断したんだろうな。      さっさと全てをノイの責任、独断でやったことという事実を捏造して、      ノイを殺そうとした。そこまでは知ってるか?裏の方では結構有名な話だが」 彰利  「オウヨ、まあ知ってるとして先に進もう。で?」 アルギー「その話にはもちろん続きも裏もいろいろある。セントール王はな、      ノイに封印の解き方や意思の向け方が書かれた本を見せたことがあった。      それはセントールの王しか見ることの出来ないものだったんだが、      それでも見せて、封印を解いて力とする作戦をノイに任せた。      斉王の封印が解かれたってくらいじゃ普通なら咎められることはしない。      もちろん巨人族には狙われるだろうけど、人から憎まれる理由なんてなかった。      ……セントール王が、“ノイが勝手に王の書物を読んだ”なんて言わなければ」 悠介  「……それが、ノイがセントールから逃げ出した理由か。      いや、それ以前に気になることがある。      国家的犯罪者になったノイが、単身で王国から逃げ出すなんてまず不可能だ。      それを手引きしたのは───」 アルギー「察しが早いな、俺だ。ノイの逃走を手伝って、      モンスターに殺されたって情報を流して事無きを得たのさ。      これでも友人同士だったんでね」 友人同士か……いや、“友人同士だった”か。 つまり今は違うということだ。 アルギー「ノイは結構したたかなヤツでな。物覚えがいいっていうのか、      目的のためなら自分の能力を最大限生かせるヤツだった。      たとえば───普段頭は悪いくせに、      そういう好機が訪れると“王の書物”に書かれたことを全て覚える、とかな。      まあ、死んだってことも生きてるってこともごっちゃになった噂の中、      セントール王もいい加減諦めたのか、      ノイのことはいつからか忘れられてったんだろうな」 悠介  「なあ。お前に向けてノイが斉王をよこした理由ってのはなんだ?」 アルギー「ノイは野心家だ。生まれが田舎の貧民街だった所為もあってか、      雑草魂よりも性質の悪いドス黒い野心を抱いてた。      俺もまあ、同じような生まれだったんで気が合ったんだが───      あいつは自分を殺そうとしたセントール王に復習したかったのさ。      斉王を操って、国を支配する力が欲しかった。ただそれだけだろうさ。      けどそこで困ったことが起こった。ノイは操り方を理解出来ている。      いや、操り方なんざ載っちゃいなかったな。      ありゃあただ目覚めさせた者の意思を受け取って動くバケモンだ。      王もその件もあってか書物を封印した。      一度見せた程度じゃ全てを理解出来てるなんて思わなかったんだろうさ。      解呪方法も封印の方法もノイと一緒に闇に葬るつもりでいたんだ。      やがて人はそれを忘れ、それで全ては闇に葬られる筈だったんだが───」 悠介  「……お前が書物の写本を持っていた、か?」 アルギー「───!お前さん……どうして」 悠介  「情報屋ってくらいだ、写本とまではいかないまでも、      それがどういう書物だったかくらい調べはついてたんだろ?」 アルギー「………」 アルギーは困ったような呆れたような顔で頭を掻くと、苦笑した。 アルギー「ああ、その通りだ。      いつだったか城の兵士に成りすまして潜入して書き写したことがある。      それを不覚にもノイに見られちまってな。まったく迂闊だったよ。      あいつ、この世の支配者になるのは俺だけだって顔つきで俺を睨みやがった。      斉王っていう武器を取られることを恐れたのか、      それとも呪いを解呪されて斉王が使い物にならなくなるのを恐れたのか。      ともかくその時の殺気が本物だったからかな。      俺はあいつと縁を切ってこんなところに逃げ込んだ。      あいつが斉王を使ってここ……いや、俺を襲うことは解っていたし、      俺を殺すまで斉王が引かないことも解ってた。      ……逃げられる相手でも、戦って勝てる相手でもないさ。      だからこうやって隠れて、誰かが来てくれるのを待つしかなかった」 彰利  「ふむ?じゃけんどキミ、写本持ってるんでしょ?      だったら呪いを解除して、とっとと鎮めさせちまえば……」 アルギー「お前らがどうやって斉王復活の情報を得たのかは知らない。      が、斉王を操る方法ってのは全て、      古墳にある石版を操作する以外に方法は無いのさ。      だから現時点で俺が出来ることなんて、      誰かがここに訪れるのを待つことだけだった」 みさお 「え……では」 アルギー「ああ、すまねぇ。この写本をお前らに渡す。      これを持って古墳に行って、斉王を鎮めてくれないか。      斉王は復活させた者の深層意識を受け取って動く呪いをかけれてるっていう。      けどそれも、石版をいじくれば修正することが可能だってことが解ったんだ。      そもそも呪いを解いちまえばどうってこともなくなるだろう。      その情報をこの写本に記してある。あとは……お前ら次第だ」 コシャンッ♪《“アルギーの写本”を手に入れた!》 アルギー「頼む……陽の光が見れないのがこんなに辛いなんて思わなかった。      もう光のある世界に行きたいんだ……なんとかしてあいつを止めてくれ」 彰利  「それは構わんが……な?ホレ、なにか出すもんあるだろ?ン?」 悠介  「いきなり恐喝するやつがあるか。……解った、この本は受け取っていく。      古墳の石版を操ればいいんだな?」 アルギー「ああ。なるべく心が澄んだヤツが操作してくれ。      石版は人の黒さを読み取るっていう。      それが些細なことでも、実行するのが斉王なら町が滅びかねない」 彰利  「うーあー、迷惑な話ですねィェ〜」 悠介  「自分で解ってリゃ十分だな」 彰利  「なにが!?」 悠介  「さてと……じゃあ、水と食料を置いていく。もうしばらく耐えてくれ」 アルギー「あ、あ……ああ……助かる……!」 部屋の隅にあった机に食料を置くと、 アルギーは本当にすまなそうに礼を言うと、喉を鳴らした。 やはり随分と長い間、食事など食べていなかったんだろう。 彰利 「じゃあ俺も。俺が調理で作った頭脳パンを置いていこう」 どさどさどさどさどさっ!! 彰利  「OHグレート」 悠介  「いったい幾つ持ってたんだよ……」 彰利  「まあ……なんてーの?調理を大分極めた俺でも調理スキル上がるかなー、って。      で、試しまくってたら……こんなことになってしまったがね……」 アルギー「ああ……すまない。これだけあれば随分と保たすことができそうだ……」 彰利  「ホレみろ喜んでるじゃねぇか!!」 悠介  「……解った、解ったから。とっとと斉王の古墳に行こう」 アルギー「気をつけろよ。斉王の復活とともに、      アンデッドモンスターたちが強くなっているかもしれない。      それに……そんな王の復活を、あのジュノーンが見過ごすわけがない」 悠介  「ジュノーンか……」 思い出したくもないヤツだ。 出来ればもう会いたくはない。 彰利 「ま〜たあいつかぁ……俺もうあいつと関わるの嫌だよ?     強いくせに富士見なんてもうファンタジア文庫って感じじゃん」 悠介 「なんの話をしてるんだお前は」 彰利 「いや、気にしないでくだせ」 ……うん。彰利のよく解らない言葉は確かに気にしない方向でいくとして。 次は斉王の古墳か……いやまいった、まぁたアンデッドの香りがぷんぷんだ。 悠介  「じゃ……行くか」 ルナ  「斉王の古墳はここから南東に進んだところだって。      一応炎の円の中側にあるみたい」 彰利  「ウヒョオ、じゃあやっぱりあの炎の円って斉王が出してたものなんかね。      アルギーを逃がさんために」 アルギー「外じゃそんなものまで出てるのか。      今じゃここに釘付けにされてる俺が情報屋だなんて、なんとも情けない限りだ」 彰利  「まったくだこのクズが」 アルギー「少しは否定してくれよ!」 悠介  「あーきとし、ほら、早く行くぞ」 彰利  「む。御意」 ここでやることは一応終わった。 あとは斉王の古墳に行って石版と呪いと封印の関係をどうにかするだけだ。 連鎖イベントってのは相変わらず長いから大変だ。 ともあれ、俺達は裏路地の地下小部屋を出て、エーテルアロワノンを後にした。 途中、なにか忘れてるな〜とか勝手なことを思いつつも、 それを敢えて放置して進んだのは……いや、正直すまんかった。 ───……。 ……。 ───フィールドを駆け抜けること数分、 俺達は草原に囲まれた窪みの下の洞穴ような場所にある、斉王の古墳へと辿り着いていた。 窪みといっても恐らく斉王が復活した時に破壊されたのであろう、 洞窟の入り口にしては大きすぎる巨大な穴が点在していたりする。 俺達はそれぞれに視線を移し、やがて頷くと……地下へと下り始めた。 が───途端に臭うのは物凄い死臭と瘴気。 彰利 「うーおっ……ものすげぇ瘴気……!」 ルナ 「陰気は食べれるけどこういうのはちょっと苦手……」 ゼット「こんなもの、普通だ」 彰利 「おお……さすが思念漂う世界で生き続けた男……」 とてもじゃないが普通の人間が入って、無事で帰ってこれるような場所じゃない。 こんなものを浴び続けていたら正気を保っていられなくなるだろう。 彰利 「瘴気だけに正気を失う?ブフゥ!     キミの頭のレベルってクレスくんとチェスターくん並み?」 悠介 「普通に人の心を読んだ上に妙なツッコミを入れるなたわけ」 彰利 「むう。とはいえ、確かにこの瘴気の密度は異常やね。     これを抑制したりするアイテムがどっかで手に入るとイベントが無けりゃ、     とてもじゃないが普通の人じゃ入れんよ」 まったくその通りだ。 それでも平然と先に進んだりしてる俺達は、つまるところ普通ではないということだろう。 ゼット「さて、御託はそこまでだ。───来たぞ」 悠介 「ン───ああ」 ゼットに促されて振り向けば、 そこかしこからゾルゾルと現れるアンデッドモンスターの衆。 低い呻き声を上げながら歩き、一直線にこちらへと進んでくる。 歩くのが辛いなら来なくてもいいぞーとツッコんでやりたいんだが、 そんなことを言ったところで聞き入れやしないだろう。 彰利 「ほんじゃまあ〜〜っ」 悠介 「やるか」 彰利 「あーいやよいよい、キミら先に行ってなさい。     こんなヤツらぁよ、分解したダークイーター一本あれば十分じゃけぇ」 悠介 「………」 ルナ 「………」 みさお「あの。それならなにも中井出さんがあそこに残る理由なんてなかったのでは……」 彰利 「え?……………………おお」 ポムと手を重ねる彰利。 ……すまん中井出、かなりイタイ結果になっちまった。 と、今も俺達がエーテルアロワノンに居るであろうことを信じ、 いつまでも戦っていると思われる中井出に、心の底から詫びを送った。 どうせ届きやしないだろうが。 彰利 「そもそもアンデッド相手なら月醒力あれば十分だと思うけどね。     ど〜にもレベルが高いヤツ相手だとそれじゃ間に合わんのですわ。     そこで役立つのがこのダークイーター!     密集させた鎌からデスティニーブレイカーを引き出した要領で取り出したコレに、     他の鎌の力も密集させて振るう!これでもう安心!     闇属性のモンスターなどイチコロYO!」 悠介 「じゃ、行くか」 ルナ 「うん、行コ」 彰利 「無視ですか!?」 悠介 「無視っていうかな……ここ、任せていいんだろ?」 彰利 「む。そりゃそうでガンスがね」 みさお「父さまは彰衛門さんを信頼してるから特になにも言わないんですよ」 彰利 「そうなん!?じゃ、じゃあホレ!その言葉を頬染めながら言ってみ!?     きっとカワイ《ベゴシャア!!》ウジュップス!!」 悠介 「じゃ、頑張れよ〜」 彰利 「うごご……!ナイス激励ナックル……!     よっしゃ行ってこい!行って、斉王のヤロウを鎮めるのだ!     つーか人のこと殴っといて走り去ろうとするまでのタメが少なすぎやしません!?     もうちょっと人にやさしくなろうよ!否!俺にやさしくなろうよ!     感情取り戻したんならボクらもう親友に戻ってもいい筈だろ!?」 悠介 「青春ドラマみたいに叫ぶな!大体それはお前が勝手に決めたことだろうが!」 彰利 「グ、グムーーーッ!!」 悠介 「それに俺の感情はまだ完全なんかじゃない。妙な話だけどな、     今まで感情が無かった分、“何かが足りない”ってのが解るんだ」 彰利 「ぬう……じゃあつまり?」 悠介 「親友を謳えるのはまだまだ先になりそうだ。悪い」 彰利 「グ、グウウ〜〜〜ッ!!」 唸る彰利から視線を外し、今度こそ先を急ぐ。 何故って、既に彰利の姿がアンデッドモンスターどもに囲まれていっているからだ。 だってのにここに残ってたら俺達まで巻き込まれ、 彰利がここを請け負うって言った気持ちが無駄になる。 彰利 「フフフ……行ってこい!そして早く斉王のヤロウを鎮めてこい!」 ゾンビ『ジアァアアア……!!』 ゾンビ『ン゙ン゙ン゙ン゙オォオオオ……!!』 彰利 「《ヒタッ、ヒタリ……》ウギャア腐った手で触んじゃねィェーーーーッ!!     ヒィイ妙にひんやりしてる!!     だってのに夏場の熱気には丁度いい冷たさなのがなんともまた許せねぇーーっ!!     うおっ!?な、なにしやがる!噛むな触るな近づくな!     う、うおおおお!!お前ら人間じゃねぇえーーーーーーっ!!!」 ……と。 せがた三四郎の真似をする彰利にこの場を任せ、 俺達はさっさと先を急ぐことにしたのだった。 ───……。 ……。 ゴッ!ゴゴッ……!ゴゴゴ……ゴコォンッ……! 悠介 「ふうっ……」 思い石型の扉を押し開け、辿り着いたのは天井に巨大な大穴が空いた空洞だった。 そこにはこれまた巨大な石版と、巨大な棺が点在している。 ……どうやらここが目的の場所で間違い無いらしい。 みさお「わぁあ……」 悠介 「さすが巨人の墓だな……大きさが異常だ……」 ルナ 「ねぇ悠介、悠介。     あそこに穴があるなら、あそこから来た方が早かったんじゃない?」 悠介 「……敢えて気にしない方向で行ってたんだから、触れてくれるな」 ゼット「大方復活したアハツィオンは天井を破壊して外へと出たんだろう。     入り口に巨大な穴が空いていたが、恐らくそれがこの穴と通じているものだ」 ルナ 「だから、それをわたしが今そう言ってたんだけど」 ゼット「確認しただけだ」 悠介 「……よし、じゃあ景色に意識を奪われるのもこれくらいにして、     さっさと解呪をしてしまおう」 みさお「賛成です。とはいったものの……」 悠介 「……ああ、やっぱり気づいていたか?」 みさお「ええ、それは。気づかないほうがおかしいです」 ゼット「敵か……ガーディアンといったところか?」  ゴッ……ドッゴォオオオンッ!!! ゼットが確かめる風に口にした途端、地面から現れる巨大ゴーレム。 その数は……二体か。 ゼット「が。ガーディアンと呼ぶには力不足だな。     差し詰め、木偶の坊と言ったところだろう」 彰利 「ヌームム……でもさ、つーことはだよ?      ノイの野郎はどうやって斉王復活させたんだろね?こいつぶっ倒したの?」 悠介 「ツッコみどころは満載だが、なにかしらの仕掛けがあったんだろ。     それこそセントール王が持ってたっていう書物に     ガーディアン除けの呪文も載ってたとかな」 彰利 「あ、な〜る」 みさお「あの……何故こういう局面でどこまでも冷静なんですかあなたたちは」 彰利 「いやぁ、だって今さらだし」 悠介 「ゴーレムくらいで今さらどうのこうの言ってどうするんだ。     空界には溢れるほど居るぞ、こんなやつ」 ルナ 「わー、既にこんなやつ扱い」 彰利 「しゃーないじゃないの、ほんにそれくらいの強さしか持ち合わせてないだろうし」 ルナ 「そうなの?えっと、“調べる”」 ルナが敵の強さを調べる。 と、『確かにそうかも』と呟いた。 どうしてこんなヤツがガーディアンなのかは知らないが、人選……人か? 岩選ミスだな、うん。 ゴーレム『ゴォオガァアアアアアッ!!!!』 彰利  「キャア怒った!めっちゃ怒ってる!」 ルナ  「そりゃああそこまで貶されれば誰だって怒るわよ」 まったくだった。 しかしそんなことを思ってる間にゴーレムは振り被り、 俺達に向けてその巨大な拳を一気に振り下ろしてきた! ゼット「無為だな。大人しく眠っていろ」 フオバガガォオオンッ!!! ゴーレム『ゴォオオオオオオッ!!!』 ゼット 「……ただし、微塵と化してな」 振り下ろされた拳を逆に殴り返し、一撃でゴーレムを砂に変えてしまうゼット。 相変わらずの馬鹿力……相手が可哀相なくらいだ。 しかしそんな思考も束の間、崩れたゴーレムは再び体を構築させると蘇った。 彰利 「うーひゃー……ほんっっっとに、コロがしても蘇るヤツに縁があるのぅ」 ゼット「フン?壊せば蘇るのだろう?ならばこうすればいい」 トンッ───ドッゴォンッ!! ゴーレム『ゴォッ!?』 ゼットが軽く跳躍し、ゴーレムの硬い腹部を蹴り上げ空へと吹き飛ばす。 その先には天井に空いた大穴があり、 そこへと飛んでゆくゴーレムを着地してから見上げると、 口を大きく開けて眩いばかりの巨大な極光レーザーを解き放つ!! ゼット「消えろ」 ギガァッ!!チュゥウウウウンッ!!! ゴバァガォオオオオオンッ───……!! それで終わった。 レーザーに身を撃たれ、塵と化してもまだ放たれ続けた極光の中、 ゴーレムはそれこそ跡形も無く屠り去られた。 彰利 「ウヒョオ……やるねィェ〜〜」 ゼット「造作も無いな。歯応えがなくてはまるでつまらない」 ルナ 「確かにガーディアンとしてはあまりにも力不足だったかも……」 悠介 「多分人間用のガーディアンだったんだろうさ。     噂を聞いて征服欲に目が眩んだ馬鹿が斉王の力を利用しないように、って」 みさお「なるほど……確かに普通の人間相手ならば、あのゴーレムくらいでも十分です」 悠介 「ああ。……と、それじゃあ解呪を開始しようか」 彰利 「カイジ?」 悠介 「解呪だ!か・い・じゅ!ボケ倒すのも大概にしろ!」 彰利 「グ、グウウ……」 ルナ 「……前から気になってたんだけどさ。     どうしてホモっちって言いよどむ時とかって『グウウ』とか言うの?」 彰利 「グ、グムーーー……こればっかりはいつの間にか染み付いておってな……。     気づけばもう無意識に使うようになっておったよ。一言で言えばキン肉マン効果」 ルナ 「ホモっちってほんとにキン肉マンが好きなのね……」 彰利 「いや……そんなしみじみ言われるほど好きなのかと言われると疑問だけど……」 みさお「初めて出会った頃からダニエルさんの夢に魘されていたような人ですからね」 彰利 「ほっときんさい!」 さて、話が広がる前に俺は解呪をしてしまおう。 えー……写本によると……? ゼット「空界文字か。これくらい貴様でも読めるだろう」 悠介 「そりゃ、勉強したからな」 けどこれ、読めないヤツがアルギーに託されたりしたらどうする気だったんだ? もしかして訳してくれるヤツを探さなけりゃならなかったのか?……だろうな。 読めてよかった。正直、サマルトリア名物“盥回し(たらいまわし)”は御免だ。 そう、心底安心しながらも言を唱えてゆく。 一度ざっと読んで、解呪の方法と注意事項を読むと一気に読んでゆく感じだ。 イメージを主とする自分にとって、想像力と記憶力は最大の武器。 一度読んだり見たりしたことはそうそう忘れたりはしないつもりだ。 悠介 「Je le preconise.     Dans le sommet de la terre noire devenir enceinte avec moi et ainsi de suite.     Par exemple, comme une epee bariolee. C'est loin de l'oeil du soleil.     Il est invite au cote de rivage de la mort───……」 つらつらと唱えてゆく。 と、こんな時になんだが……よく魔導書を読みながら手を翳しているヤツが居たりするが、 あれはいったいどんな意味があるんだろうか。 ……どうでもいいか、そんなこと。 悠介 「……っと。どうだ?」 唱え終えると書物から視線を石碑に移動させ、様子を見る。 すると石碑に刻まれている文字が光を帯びる。 悠介 「光を帯びれば成功、と。次は……斉王が来るまで待てばいいのか」 ゼット「俺が言うのもなんだが、晦悠介よ。邪念を捨てて試みたか?」 悠介 「へ?あ、あー……すまん、ちと邪念が入ったかも」 ゼット「……まあいい、それで暴れるのなら実力でなんとかするだけだ」 悠介 「しかないか。しかしお前が俺に普通に話し掛けてくるのって違和感が大きいな」 ゼット「どうでもいいことだ。俺は俺が思うように生きる。     その先の前提としてセシルの意思があるだけだ」 なるほど、つまりあまり喧嘩しないでくださいとか言われてるわけだ、お前は。 考えれば考えるほど奇妙な関係だ。 彰利 「お?終わったン?」 悠介 「一応は。ただ邪念が入ったからどうなるかが解らない」 彰利 「邪念って?」 悠介 「言ってもいいけど……大丈夫か?気になりだしたらキリがない」 彰利 「ホッホッホ、今さら疑問がどうとかで気が散るような俺じゃあねぇぜ?     ホレ、ン?言ってみ?そげな疑問、オイラが解決に導いちゃうよ?」 悠介 「そうか?じゃあ……魔導書を読む魔術師が、     たとえば魔法陣に向けて手を翳しながら呪文を唱える意味はなんなのか」 彰利 「───……」 ポカン、と彰利が妙な顔をした。 次いでしかめっ面になり、頭を抱え出し、 その状態で屈みこみ、地面をコツコツと人差し指で突付き始めた。 悠介 「お前なぁ……」 彰利 「ギャアもう!話し掛けるんじゃねィェーーーッ!!今考えてるから!ね!?」 ルナ 「カッコつけたいだけじゃないの?」 彰利 「ノー!そんな単純な答えなんてダメのまたダメ!ダメ中のダメ!キングオブダメ!     きっとなにか理由がある筈だぜ!?コンビーフの缶のカタチくらいに!」 悠介 「コンビーフの缶は空気が入らないようにああいう形にしているって聞いたが」 彰利 「そうなん!?……謎は……謎は解けたぜ……」 解決した。 いい具合に魔術師云々のことを忘れているみたいだし、今のうちに話を進めようか。 悠介 「で、話を戻すが……あとは斉王が戻ってくるのを待つだけなんだが、     それまでどうするかだ。戻ってきたら自動で眠りにつくのかどうなのか」 彰利 「ナルホロ、そりゃ確かに重要だ。     このまま無視して移動しちまったらここで起きたままになるってのも問題だし、     かといって戻ってくるまでここで待ってたら、急に戦闘になるってのも問題だ。     さて、どうしたもんかねぇ……」 悠介 「俺は待っていたほうがいいと思うんだが───みんなはどうだ?」 ルナ 「悠介が待ってるならわたしも待ってる」 みさお「わたしも賛成です」 ゼット「セシルを置いて去るわけにはいかないな」 彰利 「俺はいやだぜ!!」 悠介 「じゃあ彰利はここで解散、と」 彰利 「ギャア嘘です!!俺だけ仲間外れなんて───…………俺だけじゃねぇか……」 悠介 「………」 中井出のことでも思い出したんだろうか。 彰利がひどく申し訳無さそうな顔で押し黙った。 今頃どうしてるんだろうかな、中井出は。 彰利 「…………あのー、ところでさ。さっきからずっと別のツッコミ待ってるんだけど」 悠介 「うん?ああ、お前ゾンビとかどうしたんだ?」 彰利 「冷めたツッコミありがとう……。     一箇所に集めたあとにその周囲に月聖力の聖域作って、とんずらしてきました」 悠介 「そか」 彰利 「………」 悠介 「………」 彰利 「ボケの放置ってものすごく寂しいよね……」 悠介 「俺に言われてもな」 ゼット「───ぬ?」 彰利 「オウ?」 と、彰利と静かな会話をしていた時だった。 ふとゼットが耳に手を当ててなにかを……tellか? ゼット「誰だ?」 声  『聞こえるかー!?今何処に居るのか知らんが、     この放送は屍の中心で愛を叫ぶ中井出!中井出博光の提供でお送りします!!』 ゼット「貴様か。どうした?」 声  『斉王封印作戦中止!今すぐ逃げるぞ!』 悠介 「へ───?」 彰利 「逃げるって……」 声  『全部無駄になっちまったんだよ!いいから逃げろ!死人の森跡地で落ち合おう!』 彰利 「ど、どうした!腹でも下したのか!?ビッグか!?スモールか!?」 声  『どうして真っ先に思い浮かぶのがビッグなの!?     違うよ!?僕もよおしてなんかいないよ!?───じゃなくて!!     斉王が破壊されちまったんだ!だからもうなにやっても無駄だ!』 ゼット「なに───!?」 彰利 「はか───破壊!?あの斉王を!?誰!?誰の仕業!?……よもや貴様が!?」 声  『ンなわけあるか!……あ、いや、そりゃちょっとは戦ってみたけど。でも違う!     あいつだよ!ジュノーン!またあいつが現れやがったんだよ!!』 彰利 「うへぇっ……!!」 悠介 「……!」 彰利が心底嫌そうな顔をした。 もちろん俺もだ。 あいつとは出来れば会いたくなかった。 けど、どうしてだ……? なんだってジュノーンは斉王を……? 声  『あいつバケモンだ!     あの斉王をまるで赤子でも相手にするみたいに破壊しやがった!』 彰利 「バカモーン!貴様それでも提督か!     以前貴様がジュノーンを退けたんでしょう!?だったら───」 声  『ええいこっちの状況も察しろ一等兵!!ありゃもう前のジュノーンじゃねぇ!     強さの桁が違うにも程がある!戦えば10秒も保たねぇよ!!     とにかく!俺先に行ってるからな!?お前らも早くこいよ!?』 彰利 「ホッホッホ、悪いがねぇ提督?俺達ゃ既に町の外よ。     町でギャースカ喚いてるのはキミだけなのさ。解る?」 声  『───エ?』 全員 『うあ……』 今の『え?』という声が物凄く切ない声で聞こえた。 まるで軽井沢行きの電車から突き出されて置いていかれた谷川を喩えるくらいの切ない声。 言ってみた彰利でさえ、うあ……と言ってしまうほどだ。 声  『え……え?だ、だって僕、     キミたちが町の外に出るだなんてこと、聞いてないよ……?』 彰利 「いや、あの……ね?その……」 その所為だろうか。 あの彰利が、言葉の続きを言うのを物凄くためらっている。 さすがにシャレにならないくらいショックだったらしい。 彰利 「やべぇ……悠介、あと任せた……。     今の中井出の声、どうしてもおいてけぼりくらった谷川の顔か、     仲間外れにされたドロロ兵長の顔しか思い出せねぇ……」 悠介 「なっ!ちょ、ちょっと待て!俺だって同じ気持ちだったんだぞ!?     言い出したお前が言え!     大体あのままなにも言わなけりゃ死人の森で落ち合えたんじゃねぇか!」 彰利 「ウグッ……!い、いや……!今回ばっかりは物凄く反省してる!     申し訳なかった!心の底から謝る!!すこぶる申し訳ない!!だから言え!」 悠介 「お前が言えっての!」 彰利 「やだいやだい!キミが言ってくれなきゃやだい!」 悠介 「俺だって嫌だよ!」 みさお「あ、あのー!?そういう言葉も筒抜けだってこと解ってます!?」 悠介 「あ」 彰利 「ぬお……」 声  『………』 悠介 「あ、あー……中井出ー?」 声  『…………ボクハコノチキュウガダイスキデシタ』 ブツッ…… その言葉を最後に、中井出との通信は切れてしまった。 悠介&彰利『早まるなぁあーーーーーーーっ!!!!!』 当然俺と彰利は大狂乱。 いくらゲームの中とはいえ、俺達が原因で自殺なんてシャレになってない。 その悪夢が実行される前になんとしても落ち合わなければ───!
【Side───中井出博光/ソドム】 ヒュオォオオオ…… 中井出「喜び〜に〜胸〜を張〜り〜♪キミを泣かせていたっけな〜♪     新し〜い〜服〜を裂〜き〜♪泣かせちゃった〜あのォ日〜♪     明ぁる〜い〜教〜室〜で〜♪キミを泣かせていたっけな〜♪     駆け回った〜広〜い庭で〜♪泣かせちゃった〜あのォ日〜♪     やさしかった〜先〜生〜と〜♪キミを泣かせていたっけな〜♪     友達〜と〜喧〜嘩をして〜♪泣かせちゃった〜あのォ日〜♪     思い出〜の〜校舎と〜も〜♪キミを泣かせていたっけな〜♪     古い校舎に叩〜きつ〜け〜♪泣かせちゃった〜あのォ日〜♪     古い校舎に叩〜きつ〜け〜♪泣かせちゃった〜あのォ日〜♪」 気づけばたった一人だった僕は、 死人の森の先の先を歩きながら誰一人幸せになれない門出の歌を歌っていた。 ……旅に出よう。 もはやこの博光、辛抱たまらん。 責任だとか使命だとかなんてのはもううんざりだぜ! 俺は俺の道を尊びたいと思います。 などと思いつつ歩いていた俺の目に、小さな花が映った。 中井出「おお……こんな荒地に一輪の花が……」 だが見たところ、養分が足り無すぎて枯れる一歩手前の様子。 ……そういや、ばーさんがこれと似たような花を育ててたっけ。 結局、花は枯れちまったけど。 仕方ないよな、育てる人が居なくなっちまったんだ。 中井出「………」 べつに、だからどうしたって訳でもなかったのかもしれない。 けど、気づけば俺は地面をやさしく掘ると花を根っ子から土ごと持ち上げて、 緑の多い場所へと埋め直していた。 そうだ、べつに花が好きだとかそんなことはなかった。 気紛れだったし、それ以上の理由なんてなかった筈だ。 だってのに─── 『……アリガトウ……』 中井出「誰!?」 俺の耳に届いたのは誰とも知らぬ声。 周りを見渡したけど誰も居ない。 代わりに花が風に揺らされて、サワサワと揺れ動いていた。 中井出「……?」 なんだったのか。 まあ……気の所為かな? よし、そういうことにしとこう。 というわけで俺は新たなる一歩を踏み出し───キィイイイン…… 中井出「おや?」 謎の光に包まれて、どこかへ転移させられようとしていた。 中井出「ば、馬鹿な!ば……馬鹿な!!この光───この光!     こ、これは───これはぁあああああっ!!こ、こここれはぁあああああっ!!」 …………なんだろ? しかし体が浮いてゆく! これが転移なのはまず間違いない!と思う! だがしかしだよ!?転移っていったって、いったい何処に!? 中井出「フ……フフフ……いや、これはきっとなにかのイベントの始まりに違いない。     受けてやるぞ神よ!こりゃきっとオーデイーン様が     グーングニルを奪うために俺を転移させてるに違いない!」 オーデイーンって誰?というツッコミは無しの方向で。 オーディンが俺に用があるわけないし、そもそも俺グングニルなんて持ってない。 しかしこうなればもうなるようになれだ。 転移した先で新たな冒険がきっと僕を待っている。 そう信じることで、俺は心を癒すことにした。 【Side───End】
ザッ…… 彰利 「中井出ー!?中井出ー!……お、おらん!」 悠介 「死人の森でいいんだよな……?」 みさお「まさかもう首を吊って……!?」 悠介 「縁起でもないこと言わないでくれ……頼むから」 みさお「す、すいません……」 彰利 「む!?あれは───アルティメット・アイ!!」 パワ〜〜〜…………彰利が目を輝かせ、遠くを見つめた。 なにを見ているのかと、俺もイーグルアイを発動させてみるが───あ。 中井出───が、消えた。 彰利 「ややっ!?消えた!?何処行くんだ貴様ァーーーッ!!」 悠介 「それは流石に俺達が言える言葉じゃないだろ……」 彰利 「あ、いや……ソウデスネ」 中井出が消えた。 なにが原因かは解らないが───とりあえずその消えた場所まで走ってみると、 そこではただ、一輪の花が風に揺らされているだけだった。 Next Menu back