───冒険の書122/巨人の里へ行こう!───
【ケース334:中井出博光/妖精世界の冒険者】 中井出「ハイディーハイディーリッチューラスコー♪     ライッダーウィンドゥーリッチューラスコー♪     ハイディーハイディーマイフェンラスコー♪     カ−ミッフィーオーリッチューラスコーハイディー♪ヒューラスコー♪」 ほんとは違う。 ハイディ・ハイディ・リトル・ラスカル、ライク・ザ・ウィンド・リトル・ラスカル、 ハイディ・ハイディ・マイフレンド・ラスカル、 カム・ウィズミー・オー・リトル・ラスカル・ハイディ、ヒア・ラスカル。 意味なんて知らんがリズムが好きなラスカルソングである。 エィネ『なんの歌ですか?』 中井出「洗浄熊ラスコー」 ラスコーの発音はマイケルがマイコーと呼ばれるのと同じ原理だと推測する。 とまあそんなことより。 僕らはまだ妖精界に居るのだ。 何故って、レアズ将軍より承った……というか、一度試してみたらどうだと言われた 勇者の武具の装備を試してみようと歩き回っているからである。 なんでもそれは、勇気ある者にしか装着することの出来ない伝説の武具とかで、 レベルに関係なく、勇者の武具に勇気を認められた者だけが装着できるらしい。 ともなれば、試してみる手はねぇってもんだぜ〜〜〜っ!! とまあこんな感じで心擽られた俺はエィネさんの案内のもと、 かつての勇者が装備していたという、 エルフ、ドワーフ、妖精、精霊などが協力して作ったとされる 伝説の武具を求めて歩いているわけだ。 いやはや、勇者の試練みたいな感じでこの博光の心の巴里も猛っておるわ。 中井出「しかし、やっぱり広いなぁ」 エィネ『一人で歩くと最悪、一生出られなくなるので注意してくださいね』 中井出「りょ、了解」 それは勘弁だ。 ていうかそれってエィネさんとかも危険ってことじゃないのか? ……考えないようにしよう。 今は同じ妖精でも、きっと純正の妖精じゃなきゃ解らないことがきっとあるんだ。 え、えーと……帰巣本能ってやつ? って、犬じゃあるまいし。 そんなことを考えながら歩くこと……しばらく。 エィネ『見えてきました。あそこがそうです』 やがて見えてきた祭壇のような場所の、段差の上にソレはあった。 中井出「ここが完全無比超人になれるトロフィー球根(バルブ)
のある黄金の国ジパングか〜〜〜っ!     どおれ明日は大暴れしてやるとするか〜〜〜っ!」 エィネ『……あの?』 中井出「いや……うん、なんでもありません」 この言葉、やっぱり二人居ないとどうにもしっくり来ないよな……。 ええまあ、語尾を延ばしているので解る通り、キン肉マンネタであるが。 ともあれ俺はエィネさんに促されるままに祭壇の石段を上り、 やがて勇者の武具らしきものの前に立つ。 中井出「こ、こりゃすげぇ〜〜〜っ!     随分前のものだというのに錆び一つついてねぇ〜〜〜っ!」 エィネ『普通の金属で作られたものではありませんから、     錆びるということはありません。ただし───』 中井出「認められないと装備できないというわけか〜〜〜っ!」 ジョワジョワジョワ、腕が鳴るぜ〜〜〜っ! 中井出「………」 ジョワジョワも、藍田が居ないとどうも寂しいなぁ。 まあ、仕方ないよな? 自己鍛錬で忙しいらしいし。 木村夏子二等でさえ自己鍛錬の忙しさに、私物をあっさりと渡すくらいなのだ。 きっと藍田二等も忙しいに違いねぇ。 な、ならばここはこの博光が悪い竜たちを退治するしかねぇぜ〜〜〜っ! 中井出「グ、グウゥ〜〜〜ッ」 しかし気分は紙コップをぶつけられて怒るテリー・ザ・キッドだった。 竜退治って……あ、いや、退治しなくても宝玉さえ破壊すりゃいいんだよな? ……いやいやダメだダメだ、こんなことでは武具に勇気を認めてもらうどころじゃない。 コンセントレーションコンセントレーション。 中井出「……よし。それでエィネさん。これってなにをどうすればいいんだ?」 エィネ『手前にある石碑に手形があると思います。そこに手を置いてください』 中井出「手形?……お、おお、これかぁ〜〜〜っ」 丁度人の腰程度までの高さに創られた細長く小さな石碑の頂点に、 確かに人の手形らしき窪みを確認した。 これが旅人の勇気を測るという石碑か〜〜〜っ! ……などとブキャナンの真似してる場合じゃないんだってばさ。 中井出「……《ごくり》」 息を飲みつつ、ゆっくりと窪みに手を置いた。 すると手形から光が溢れ、俺の手を光で包む! 中井出「オ、オワァーーーーッ!!」 エィネ『お、落ち着いてくださいっ、べつに危険なものではありませんからっ』 中井出「いや、とりあえず驚いておこうかと」 エィネ『……案外こういった物事に慣れてるんですね』 伊達に晦や彰利の過去の映像を見ちゃいないから。 やつらの過去はそれはもう刺激がありすぎて困るくらいだ。 でも内心はとんでもなく驚いていたりした。 だってそうだろ?見るのと実際に目の前で起こるのとじゃあ見解ってのは違うもんだ。 などとドッキリマイハートの沈静に意識を努めさせている頃、やがて光は収まりを見せ…… それを確認すると俺は自然と手をどかし、 認められるか認められないかをドキドキワクワクしながら待っていた。 ……すると、ふと石碑が赤く光り、 なんというか“あぁこりゃ30点以下じゃな”と断ずるが如くすぐさまに光を消す。 これってつまり─── エィネ『駄目でしたか……』 中井出「あ……やっぱり?」 “駄目”の見本みたいな赤い光の点滅だったし。 なにを以ってそう言うのかはまあ置いておくとして。 でもホラ、テストとかでも赤点って不吉言葉の一つだろ? それが解るだけでも喩えとして妥当なんじゃないかなぁと。 中井出「勇気を認められるって、どうしたらいいんだろうか」 エィネ『さあ……そればかりは』 それもそうだった。 解るなら苦労しないよなぁ。 うーむ、晦なら案外あっさりと認められたりするんだろうか。 中井出「この勇者の武具って、ずっと前に人の勇者が装備してたものなんだよな」 エィネ『はい、そうです』 中井出「……ここが妖精界だとすると、     なんだって妖精サイズの俺達と同じサイズなんだ?」 エィネ『人の住まう場所では醜い思念などに影響され、     第二の“憎しみの武具”になりかねないからです。     ジュノーンとなった鎧も、元は精霊などとの合作で誕生したものだったのです。     けれど長い時の中を潜り抜け、幾多の血を浴び、     憎しみや怨念や思念を受け続けてきた鎧はやがて本来の在り方より反転。     それでも伝説の鎧だと信じた者が身に付けた時、     とうとうそれは不死王の鎧と化しました』 中井出「……なるほど」 結局のところ、どれだけ素晴らしき鎧でも怨念や人の汚さには耐えられなかったわけだ。 エィネ『人々は伝説の武具だ伝説の武具だと頼るばかりで、     それをめぐっては醜い争いをしたといいます。     勇者となり、富と名声を手に入れようとする者。     武具を手に入れ、世界を支配しようとした者。     もちろん世界平和を求めた人も居たそうです。     かつての武具は勇気を試されることなどなく装備することが出来たから。     けれどそれが血で血を洗うような惨劇を展開させました。     もちろん武具製作に携わった者達は怒りもしたし嘆きもしました。     そんなことを望んだわけではなかったのですから、当然ですよね』 中井出「まあ……それは」 エィネ『身に付けた者は確かに力を得るに至ったと聞きます。     けれどそれは武具に頼りきりの力のみで、     扱う者が弱すぎてはなににもならなかったのです。     故に魔物の前に倒れ、     自分が死ぬのもこの武具が中途半端な所為だと呪いながら息絶えます。     そうしたことが幾度も続き、呪いや怨念が蓄積されていった時───』 武具は、憎しみという名の意思を持った、と。 やってられないな……装備ってのは扱うべき者が扱いきれて、 初めて心を委ねられるものだろうに。 ……かく言う俺も、扱い切れてるのかちょっぴり不安ではあるのだけれど。 それでも一緒に強くなっていく中で、絶大な信頼は持っているつもりだ。 中井出「解呪とかは出来ないのか?」 エィネ『あそこまで意思を持ってしまっては、既に武具どころの存在ではないのです。     解呪程度で止まるくらいならば、古の頃より魔術師がどうにかしているでしょう』 中井出「あ……そっか」 あれだけの存在だ、解呪とかが出来る魔術師がほっとくわけないよな。 中井出「この武具は大丈夫なのか?意思を持ったりとかは───」 エィネ『この武具は人を選びます。     勇気ある者こそを選び、己に害為す邪念を持たぬ者しか選ばないと聞きますから。     恐らくそんなことになることは無いと思います』 中井出「………」 アノ。 ソレジャアボク、邪念アル、イイマスカ? ……しこたま傷ついた瞬間だった。 そりゃ猛者どもからはエロマニアとか言われ続けてる 邪念の塊みたいな僕かもしれないけどさ。 それでもこのファンタジーにかける心はとってもピュアなつもりだよ? ずっとこんな冒険に憧れてたんだ。 こんな世界に憧れない男なんて男じゃあ───ねぇぜ!? 中井出「ま……いいか。確かに俺にゃあ勇気ってもんが足りてないかもしれんし」 いざとなるとヘタレみたいな俺だもんな。 デカい敵を見ればヒィとか平気で口から出るし。 なんとかしないとな、ほんと。 中井出「それじゃ、えーと」 エィネ『そろそろ外に出ますか?』 中井出「あ、いや。もし村とかあるなら、もし店とかあるなら、行ってみたいなぁと」 エィネ『あ……そうですね。なにかと準備は必要かもしれません。では案内しますね』 それ以前あるんですか、というツッコミはまあ……無しにしとこう。 あるならあるで、ここでしか手に入らないレアアイテムとかも売ってるかもしれないし。 ───……。 ……。 で……訪れた集落のような場所で、俺は品物を見てひとまず驚愕、というより唖然。 何故かって、うまティーが売っていたからだ。 ハテ……これはどういったカッパーフィールドなんだろう。 とか思いつつ、既に買って飲んでいる自分が不思議だった。 しかもやっぱり美味い。 エィネ『これは旅好きの妖精がノースノーランドという場所で発見した特産品らしいです』 特産品というか名物というか。 でもいいや、美味しいし。 エィネ『そこで姿を消してレシピを盗み見たらしいんですけどね』 それは犯罪なんじゃないでしょうか。 ……まあいいか、妖精のすることだし。 わざわざ通報する理由が俺には無い。 中井出「………」 さて、集落のお買い物店……というか物々交換所には、 うまティー以外にはこれといったものはなかった。 何故物々交換かといえば、妖精には金の概念とかが無いかららしい。 だからなんでも物々交換。 このうまティーはオレンジグミとの交換で手に入れたものだし。 驚いたね、アイテムまでもがしっかりと妖精サイズに変換されてるんだもんな。 中井出「しっかし何処に行っても草花の絶えない場所だよな」 エィネ『わたし達妖精が住むには、これくらいの自然が必要になるということです。     それだけ、綺麗な空気が無ければ生きてはいけないのですよ』 中井出「そか……じゃあ西の大陸には綺麗な空気があったってことか?」 エィネ『マナの大樹がありましたから。それだけで、わたしたちには十分だったんです』 中井出「マナの大樹か……大陸沈んでもマナの大樹って大丈夫なのか?」 エィネ『大樹は聖地ボ・タが空中にあった頃───     つまり、大陸が沈んでいた頃より既に存在したとされています。     大樹自体が神聖ななにかに包まれ、海水に浸ることを許さないのだそうです』 中井出「空気の層かなにかで守られてるとか、そんな感じか?」 エィネ『そうですね、そうかもしれません。     精霊たちが守っているという話も聞きますが』 中井出「なぁ。そもそも聖地ボ・タと西の大陸が浮き沈みしてた理由ってなんなんだ?     俺、まだそこんところがまるで解ってない」 エィネ『そう、ですね。こんな説があります。     かつてこの世界には魔物が溢れかえっていました。     それは人の勇者が誕生するよりもずっと前。     まだ人々が怯えて暮らすしか術を持たなかった時代です。     そんな世界のバランスを悲しく思った精霊たちが力を合わせ、     魔物を魔物が生まれる地へと追い遣り、その大陸ごと空に浮かせたといいます。     しかしそんなことをするには何か代償が必要だった。     故に西の大陸……詳しくいえばマナの大樹は海に沈み、     代わりに聖地は空へと浮いた。精霊達はその間に人々に力を持つよう伝え、     それとともに武具を製作して人々に贈った。     そうして人々が魔物に対抗できるくらいの力をつけてきた頃に     大陸の在り方は現在に戻り、空に浮かんだ大陸は下り、魔物が蔓延りだした』 中井出「でも人は闘う術を手に入れていたから、現在の状況に至るまで頑張れた?」 エィネ『仮説らしいのですけれど。     それでも“ああ”と納得出来るなら、悪くないと思いませんか?』 中井出「そだな」 仮説はいろいろなわけだ。 真実の程は解らんけど、納得出来る情報があれば今はそれでいいか。 中井出「でもさ、結局ボ・タ───昔で言う“エルメテウス”か?     あれは壊れちまったわけだけど───西の大陸は浮上してるのか?」 エィネ『恐らくまだです。沈んでしまった大陸を浮上させるには、     既に精霊たちの力が追いつかないところまできてしまっているのでしょう。     聖地ボ・タを浮上させた者が誰なのかは解りませんが、     それと同等、またはそれ以上の力が無ければ浮上させることは出来ないかと……』 中井出「そうなのか?」 エィネ『これも仮説ですけどね。ですが、たとえそういった力があるにせよ、     沈んだ大地を浮上させるには海底に潜り、     マナの大樹自体に力を送らなければならないと思います。     この世界に潜水技術というものはありませんから、     そうなるといろいろと難しくなってきますが』 中井出「そっか」 潜水技術ね……。 ウンディーネの力があればなんとかなりそうだけど、力を貸してくれるかどうか。 なにせオリバに首を折られた経験があるらしいし。 あの時俺はコケで滑ったり突然の津波に飲まれたりでなにがなんだか解らなかったけどさ。 けど───精霊の力の解放か。 考えてみりゃこれから大変なことになるかもしれないんだよな。 いつかナギーが言ってたっけ。 高位精霊の宝玉は人の手には余るって。 宝玉を精製するのは“元素”の列に居る精霊だけ。 土、水、火、風、雷、光、闇がそれにあたり、 然、死、元、無、氷、時はそれに含まれないと。 人は真には至ってはいけないが故に、 それこそ真に近しい高位精霊の宝玉を持つことは許されない。 『よほど元素に近いわしらが宝玉ではなく加護を齎すのは、  それが死に至るものにさせないためじゃ。解るな?宝玉だと力が強すぎるのじゃ。  それは人の手にあまるものじゃ。  普通の精霊の宝玉だけでも手に余るくらいだというのに、もし───  それこそ無の宝玉なぞ手に入れたら、この世界は凶ってしまう』 ナギーはそう言った。 けど……俺はこうして“元素”の宝玉を持っている。 真に近しい力に溺れた者はいつしか身を滅ぼし、やがて死に至るだろう。 そらそうだよな、人が扱い切れる力ってのはほんの些細なものまでだ。 まして、これからその“力”自体を解放しに行くってんだから─── ただの属性の宝玉でもかなりのパワーアップをするに違いないっていうのに、 それが思い切り元素の宝玉だってんなら……俺、どうなるんだろうね? やっぱり力に耐え切れずに、 体が経絡秘孔を突かれた北斗の拳のザコのようにボチュウウンってなことに……? 中井出「………《ゴクリ》」 知らず、喉が鳴った。 怖いな……それは勘弁だ。 でも解放された力を見てみたいとも思ってるわけだ。 やっぱりさ、そこは……さ?ほら、心擽られるってもんだろ?男の子だもの。 中井出(……なるようにしかならんよな) 体が爆発するような事態になったらそれまで、ということで。 俺はむしろこのままで突き進み続けるさ。 中井出「よっし!それじゃあ行こうかエィネさん!」 エィネ『はい』 俺とエィネさんは下ろしていた腰を持ち上げ、草原の上に立った。 さて……そういやここから外に出るのってどうしたらいいんだっけ。 中井出「えーと」 エィネ『くすくすくす……こちらですよ』 中井出「も、申し訳ない」 俺の困惑した態度で気が付いたのか、エィネさんが先を促す。 ウヌウ、こういう時ってやっぱり恥ずかしいものだ。 ……なんて恥ずかしがってる暇があったら進もうか。 コリコリと頭を掻いて恥ずかしさを紛らわしつつ、 エィネさんの案内の下に妖精界から抜け出したのだった。 ───……。 ……。 そうして元の世界に戻ってくると───俺の体は人間のサイズに戻り、 エィネさんはやはりそのままのサイズで現世した。 中井出「おお……うん」 やっぱりこっちの方がしっくりくる。 とはいえ、妖精になってみるのもそう悪くない。 でも流石に妖精のままで竜族と戦えはしないだろ。 そんなことしたら命がいくつあっても足りはしない。 中井出「じゃあ、まず何処に行けばいいのかな」 エィネ『はい、少々お待ちくださいね』 ニコリと笑み、目を閉じると集中を開始するエィネさん。 おお、きっと戒めの宝玉の在り処を探ってるんだ。 しばらくするとピキーンとピピピ電波を受信して、 すぐさまに何処に行けばいいのかを教えてくれるに違いねぇ〜〜〜っ! ジョワジョワジョワ、そうなったらそれからはこの博光の出番だぜ〜〜〜っ! エィネ『───反応、ありました。微弱ですが、西側から精霊の力を感じます』 中井出「おお!西か!───って、宝玉の力を感じ取るんじゃなくて、     精霊の力を感じ取るんだ」 エィネ『はい。ですが宝玉から感じ取れる力は精霊のそれとは少し違うんですよ?     ですから宝玉の力と精霊の力を間違えることはありません』 中井出「そ、そっか。それ聞いて安心した」 これで行ってみたら、鞭打ちになったウンディーネとかが居たら目も当てられないし。 むしろ“おのれおのれ筋肉人間めギギギィーーーッ!!”とか言って襲ってきそうだ。 中井出「じゃ……西か。よし」 向かう場所は決まった。 あとは……うむ、全速力だ。 中井出「エィネさん、俺にしっかと掴まっといて。肩でも何処でもいいや」 エィネ『え?あ、はい』 エィネさんが俺の肩にしっかと捕まる。 肩といっても服の部分だが。 ウフフ、半袖とスカーフの戦士なんてそうそうお目にかかれやしねぇぜ? それでもこれがリングシールドを手に入れてからの俺の装備、 その名も“テイルズオブドラゴンバスターのフル装備”。 パッと見れば村人と見間違えるくらいの平凡な装備だが、防御力はしっかりとしたもの。 特にリングシールドの防御力は結構なものだ。 まあそれはそれとして。 中井出「ステータス移動───AGIマックススーパーダァーーーッシュ!!」 エィネ『《ゴォッ!!》ひあっ!?』 走り出した途端、風が壁のように体に圧し掛かる。 だが構わん!突っ切る! さあ見よ我が走り!置いてけぼりくらって一人でアンデッドと戦い続け、 ついには1700まで上がった我がレベルから弾き出される速度!! 中井出「あぁそうだ!反応があったら随時知らせてくれるとありがたい!」 エィネ『は、はははいー!!』 砂漠を駆け、草原を駆け、山を登り、景色という景色を駆ける駆ける駆ける!! 我が後ろに巻き起こるは砂煙!だが駆ける!さらに駆ける! で─── 中井出「………」 ここは何処なんだろうな。 ……気づけば道に迷っていた。 地図を出したいところだが、どうせならエィネさんの導に頼りたい気分である。 さてはて……西には随分進んだ気がするんだが? エィネ『あの……行き過ぎです……東に戻ってください』 中井出「あ……やっぱり?」 調子に乗って走りすぎた。 乱暴な走りだったためにエィネさんの言葉が全然耳に届かなかったし。 じゃあ……ちょっと戻ろうか? 中井出「いやいやしかし、やっぱり疲れないっていいなぁ」 この短時間でどれほど走ったとお思いか。 およそオンラインゲームなどじゃあ一時間かけても越えられん距離を、 ほんの僅かで走りぬいたぞ。 おお、ゲームの神秘よここに。 中井出「しかしこう無鉄砲に走るとどうにも……お?」 ハタ、と気づく。 あそこに見えるは……巨人の里? ……おお、ここは巨人の里周辺か。 中井出「───……あ」 そうだ、ちと思い立ったことが一つ。 中井出「エィネさん、ちょっと寄り道いいかな」 エィネ『え、あ、はい、それはもちろん。出来れば急いで欲しい事態ですが、     それでも強制までをする気はありませんから』 中井出「そりゃよかった。     えっと、妖精って巨人の里への入国許可とかって必要じゃないよね?」 エィネ『ええ、必要ありません』 そりゃなにより。 入った途端に“ここは妖精立ち入り禁止だ”とか言われたら困るし。 巨人って偉大な人達が多いには多いんだけど、とにかく頭が固いから。 エィネ『なにかお買い物ですか?     ですが巨人の里は人間は立ち入りが禁止になったのでは……』 中井出「確認しておきたいことがあるだけだから。     ダメだって言われたら───強引にでも侵入する」 エィネ『えぇっ!?そんな、無茶ですよ!』 中井出「無茶でも苦茶でもやってみなければ解らーーーん!!     ともかく俺は可能性というものを即座に捨てる男にだけはなりたくねぇ〜〜っ!」 さあ行こう! 我らの未来はきっと光り輝いている!! 故にこの先に待っているのは───! ─── 巨人 「人間!!死ねぇええええーーーーーーーーっ!!!!!」 中井出「ヒイイ!!問答無用にも程があるーーーーーーーっ!!!!!」 待っていたのは───容赦の無い戦斧での攻撃だった。 中井出「エィネさん掴まってて!つーかスカーフの中でも何処でもいいから潜っといて!」 エィネ『は、はい!!』 中井出「ぜぃやぁっ!!」 ルオゴヴァッギィンッ!!! 中井出「ギャーーース!!」 巨人 「ヌウ!?」 中井出「い、いぢぢ……!!巨人の一撃って体重乗ってるから痛いこと痛いこと……!」 俺の意思に反応して霊章輪から弾き出された双剣が、振り下ろされた戦斧を受け止めた。 しかしレベルがどれだけ上がっても、これはきっと味わい続けられることなのだろう。 受け止めた腕がジンジンと痺れるのだ。 巨人 「クク……人間の分際でよくやる……!うん?よぉく見りゃあてめぇえ、     コロシアムでランク:クィーンにのし上がった人間じゃあねぇか〜〜〜っ!」 中井出「お、覚えててくれてなにより……!     というわけで通してくれるとありがたいんだけどさぁっ……!?」 グリグリとさらに体重をかけながら言ってくる巨人を前に、 ギリギリとさらに耐えている俺は返した。 が、しかし巨人はハンと鼻で笑い、 巨人 「だめだなぁ」 そう言うと笑いやがったのだ。 ぬう!なんというヒネクレ根性! 巨人 「人間は人間らしくちっぽけな人生を歩んでればいいのよぉ!     それが巨人の戦いに首を突っ込み、クィーンだぁ!?俺は認めねぇぜぇ!!」 中井出「───《ムカッ》ちょっと待てハゲ!」 巨人 「《ブチィッ!》……人の身体的欠点に触れるとは……愚かな人間だ!死ね!!」 中井出「ところがどっこい……っ!死にませんっ……!」 さらなる体重をかけてきた巨人が、まるで自分ごと武器で俺を潰すように仕掛けてくる。 だが俺はその体重ごとを左手で構えるジークリンデで受け止めると、 キィン、とジークムントを回転させた。 巨人 「なっ───なにぃいっ!?」 驚愕は巨人のものだった。 バカみたいにデカいのが自慢だったのだろう。 しかし人間の片手に持ち上げられるような形となる自分の姿は、 そいつの目にはどう映ったのか。 まあ、どうあれ─── 中井出「貴様は懸命に戦った闘士を侮辱した!!───認めない、と言ったな!     それは我ら原中と戦い敗れていった者たちに対する侮辱だと受け取った!!     ブッ飛べカラミティィーーーーッ!!!!」 巨人 「ア、アワ《ブワゴォッチャァアッ!!》ウギャアーーーーッ!!!」 巨体がごしゃー!と飛翔する。 全力で振るわれたジークムントはインパクトと同時に爆発を起こし、 斬り刻むというよりは爆発させて吹き飛ばす風に巨人を黙らせた。 中井出「この博光が言うのもなんだが!     その程度の実力で努力する者に文句を言うなど10年早いわ!!」 戦士の魂とは!誇りとは!もっと昂きものだ! それを、相手が人だとかなんだとかでナメてかかるとは不届き千万! でもまず落ち着こうね。 目的を違えるわけにゃあいかないのだ。 エィネ『あんな大きな巨人を一撃で……』 中井出「ノー……これは僕の力だけじゃない。     僕の力が2とするならば、あとの全てがこの武器のものさ」 僕は武器を愛してます。 やはりファンタジーといえば武器であり防具である。 強き武器、珍しき武器に憧れるのはファンタジー好きの男としては当然のこと。 そして武器防具無くして、冒険は出来んのだ! おおファンタジー万歳! 中井出「よぅし!この調子で通してくれなかったら強引に突き進む方向で行こう!     レッツハバナァーーーーウ!!」 エィネ『……なんだかんだで結構豪気な人だったのですね……』 中井出「男じゃけぇのぅ!!」 叫ぶと同時に走りだす。 目的地は───どうしたらいいのやら。 ゼプシオンのところへ行けばいいのか、はたまた……? 中井出「やっぱここは近いところから虱潰しにって方向でいくぜ〜〜〜っ!!」 実際自分にソレが齎されるかなんてのはまるで謎であり、 かなり都合のいいことを考えてるのは解ってるんだけどさ。 それでもやっぱりね?忘れたままや放置したままってのはもったいないって思うのさ。 だから走った!ラグビーで戦場を駆け抜ける、 ヒュー・ハドソン校のジョナサン=ジョースターのように走った!  そしたら─── 巨人×35『人間ンンンンン!!!!』 中井出  「キャーーーーーッ!!!!」 こんなことになってしまったがね……。 巨人1「貴様人間!我が里に何の用だァ!!」 巨人2「今すぐ死滅したいのか小僧ォ!!」 中井出「ヒィ!だ、誰もそんなの望んでないよ!?僕そんなこと言ってないよ!?     ていうかどうして死滅決定なの!?掴まったら滅殺ですか!?無情すぎる!」 駆ける俺を見た巨人が走りだし、その巨人を見た巨人が走り出し、 やがてはこんな数に追われることとなっていた。 お、おかしい……!なにがどう曲ればこんな事態に……!? 中井出  「まままままままま待ってぇええええっ!!!       僕ァただ斉王消滅の報告とちょっとした用事で寄っただけでぇええっ!!」 巨人×35『嘘をつけ!!』 中井出  「うわひっでぇ!!なにも一斉にウソツキ呼ばわりしなくても!!」 あんまりだった。 く、くそうこの解らず屋さんたちめ! こうなったらやれるとこまで暴れてくれようか!? 巨人1「あ〜〜〜ん?立ち止まってどうする気だぁ〜?」 中井出「この博光、もう辛抱たまらん!     というわけであのー、英雄王ゼプシオンさんに目通りしたいんですけど」 巨人2「だめだ」 即答だった。 巨人6「うん……?てめぇ、あの時のランククィーンの人間か?」 中井出「ぬう!俺だけの力じゃなかったが、その通り!」 巨人6「それじゃあ今てめぇを始末すれば、     自動的に俺がランククィーンになるってことか」 中井出「ヒィ!目が据わってらっしゃる!ほ、誇りは!?誇りさん何処に旅立ったの!?     大勢で人一人をブチノメーションしてランクアップを計るなんて───!     しまった俺達も三人がかりだった!!」 お恥ずかしい限りです。 でも俺達もあの時は必死だったのだ! 少なくともたった一人で巨人と立ち回れる力など無かった! だが、今は───? 中井出「……ウ、ウフフフフ……!     そ、そんなにこの博光を倒したいというのか……!ならば……!」 巨人5「この人数相手にやるというのか?」 中井出「ブチコロがしてくれるわぁーーーっ!!!」 総巨人『やかましぃいいーーーーーーーっ!!!』 覚悟完了!さあ参りましょう! 考えてみればこの状況を打破できない俺が、 各地に住まうという守護竜(勝手に命名)を倒せるわけがなかろーモン!! ならばやる!やってやる!! 願わくば戦いの神よ! この誇りを失った巨体どもの目を醒まさせる力を僕にお与えください! 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