───冒険の書130/雄山と真実と───
【ケース348:晦悠介(再)/とある朝、雄山とともに】 ややあって─── 男1 「オッ……こりゃ美味ぇ!」 男2 「変わった味付けだがまたなんとも……!」 男3 「主人!味付けを変えたのか!?」 主人 「そうだ《どーーーん!》」 男4 「おお!どうりで!」 迷いもせず自分が作ったと言い張るような態度で胸を張る宿屋主人を称えるように、 それぞれの客がガツガツモグモグと朝食をむさぼってゆく。 客の食いっぷりも見事だが、主人のあの態度はまるでどこぞの黒い馬鹿者だ。 しかしながら黒の波動もなにも感じず、あれはあの主人の素であることが発覚。 ……居るもんなんだな、彰利みたいな態度の太いヤツって。 などと思いつつ自分が作った料理に箸をつけた瞬間だった。 雄山 「………」 悠介 「ぶふぅっ!?」 なんの気無しに、口に料理を運んで噛み締めながら辺りを見渡すとヤツが居た。 ファンタジー感溢れる装備をする冒険者たちの中、 何故かそんな客に混じって和服を着たデカいヤツが俺の料理に手をつけている。 雄山 「主人を呼べ!!」 いや、手をつける以前に料理を見た途端に叫んだ。 ……もちろん嫌な予感しかしなかった俺は、 完全無視の方向で行こうと心に誓ったわけだが。 主人 「おうなんでい。なにかマズイ点でもあったってか」 雄山 「なんだこれは!何故剣と魔法の世界で日本料理が出てくるのだ!!」 主人 「へ?へぇっ!?に、にほん……?」 雄山 「日本料理は日本で食べるもの!食材が手に入りにくいファンタジーの世界で     わざわざ作っては鮮度も味も落ちるというもの!そんなことも解らんのか!!」 主人 「な、なに言ってやがる!みんな美味い美味いって食ってるじゃねぇか!」 雄山 「黙れ!私が誰か解らぬわけではあるまいなっ!!」 主人 「……誰でぃ」 雄山 「………」 あ、悲しい顔した。 雄山 「ああ、いい、さっさとこの皿を下げろ。そして次を持て」 主人 「〜〜〜……なんだってんでい」 主人がブスッとした顔で料理皿を手に取ろうと手を伸ばす。 が、その時だ。 雄山 「む……?いや待て、この香りは……」 主人 「ああっ?なんだってんでい」 てめぇ勝手に主人を止めて、料理から立ち込める香りを嗅ぐ雄山。 主人は滅法迷惑そうな顔をしている。 いや、主人よ。 そいつ元々宿泊なんて絶対してないだろうから追い出していいぞ。 そもそもなんでここに居るのかさえ謎なんだからさ。 なんて思ってるうちに既に箸をつけていたりするんだからちゃっかりしてやがる。 雄山 「おお、この香りはどうだ。     いい鰹節と昆布を使い、素材が素材の持ち味を殺さぬ程度の味付け。     だが味の配合は完璧だ。塩も余分な量は入れず、     感じるか感じないかのギリギリのところ」 主人 「……?なに言ってんでい」 雄山 「これは驚いたな。こんな辺境に出汁の取り方を心得ている者が居るとは。     お蔭で煮魚の味が調っている。しかし献立の組み方が少々雑だ。     焼き物が多い上に、皿にあるのはどれも脂っこいもの。     献立の組み立て方のイロハも知らぬ者が私の店の調理場に居るのか……」 主人 「オイ、いつからここはおめぇさんの店になったんでい」 主人が唱えるが───雄山、完全無視で次の皿に手をつける。 雄山 「……ほほう?皮がこんなに柔らかいとは……。     ふっふっふ、最初に軽く焼いてから蒸して脂を抜き、     それをもう一度軽くあぶって香ばしさを出している。     “かま”をこれだけ上品に仕上げるとは生意気な奴だ。     わざと焼き物を続けて、私に肩透かしを食わせおったか」 主人 「いや……聞けよ」 雄山 「さて、次はこの椀だが……む?これは……」 やはり主人の話など完全無視で次々と朝食に手をつけてゆく雄山。 いい加減ツッコんでやらないといつまで経ってもやりそうだが…… 雄山バージョンの彰利って苦手なんだよな、俺。 話を聞かない上に料理にとことん罵倒を飛ばす微食倶楽部の代表だからな……。 代表って言ってもあいつ一人しか居ないわけだが。 それなのに“貴様はクビだ!出て行け!”もなにもないと思うんだ。 雄山 「この私に、随分粗末なものを出すではないか……」 と、ここで雄山が椀を手に取ってニヤリと笑った。 中身は吸い物だ。 さて、どんな反応を見せるやら。 ルナ 「食べないの?」 悠介 「ああ、食べる食べる」 とかいいつつ、やはり気になる調理者心。 朝食をかっこみながらも雄山と主人の様子を見ている俺は、 既に有言実行からは程遠い人と化していた。 雄山 「ふむ……鯛の中骨をあぶって香りを立て、その上に出汁を張る……。     塩味はやはり、感じるか感じないかのギリギリのところ……。     中骨の周りの肉は徹底的に削り取ってあるので、     骨髄から出る旨味だけを純粋に味わうことが出来る……」 主人 「お、おう……?なに言ってんのかさっぱり解らん」 雄山 「ヒラメの縁側、鯛の“かま”、そして鯛の中骨───全て魚のあらではないか。     あらだけを使ってこれだけ食わせるとはな……。     解ったぞ、今日の朝食を整えたのは良三だな?」 主人 「誰!?」 雄山 「ふむ……良三のやつめ、こしゃくなことを……。     この雄山を唸らせるとは生意気な奴だ。     日本料理のなんたるかを知っていなければこうはいくまい。     だがそれも、今の日本料理だけを知っているようでは高が知れる。     現在は過去より学ぶもの。     これは間違い無く無農薬のものや、綺麗な海で取れる食材を使っている。     過去のものを現代に持ってこれる者などこの世界には一人しかおるまいよ」 ……やっぱ解るか。 あの材料は全て、後悔の旅の中で手に入れた新鮮なもののイメージを創造したものだ。 過去の大地は少し栄養が足りなかったが、 あの時作った野菜は大地の栄養を上げた土で作った野菜だ。 さらに魚は、まだ海が汚れてしまう前の綺麗な海の中で逞しく成長した魚。 雄山 「だが……あの野菜炒めはなんだ?」 主人 「あん?ああ、これはこの宿の名物料理さ。     これ目当てで宿泊するヤツも居るんでね、     今日料理してくれたヤツに頼み込んで追加してもらったってことさ」 雄山 「うーぬ……!この馬鹿者め!!」 主人 「うおっと!?」 雄山 「少し感心すれば馬脚を現しおって!貴様はクビだ!出て行けぇっ!!」 主人 「なにぃ!?……え!?あ、いや……ここ俺の店だし……」 雄山 「黙れ!献立の組み立て方も解らんとは!どこまで私の店を侮辱する気だ!」 主人 「いや、だからここ俺の店……」 雄山 「まったく、このようなものを……!───むう?いや待て、これは……」 主人 「な、なんだってんだ!まだ言い足りないってのかい!」 雄山 「一見油っこそうなものではあるが、極力油を押さえてある。     ほう、この香りはサラダ油のようなものからくる香りではないな。     ふむ……《シャクッ……》ほほう、野菜の味が生きている。     それにこの仕掛けはどうだ、口に含んでも油っぽさをまるで感じさせない。     野菜がグシャグシャになるのと火が通るのとを絶妙なタイミングで分けている。     そしてこのツユだ。野菜それぞれの持ち味を生かすこのツユこそが問題だ」 主人 「な、なんなんだよアンタ……文句言っては食いやがって……」 雄山 「これだけの野菜に囲まれながらも香りを違わぬこの香り。     そして口にすれば香る野菜の香り。ふっふ、これはとんだ肩透かしを……。     ……だがなんだ?まだなにかを感じる。塩ではない。     微かだが、感じるか感じないかのギリギリの香りが───     おのれっ!この雄山の味覚と嗅覚を試そうというのか!!!」 あ、キレた。 雄山 「これを作ったのは誰だ!!」 主人 「お、俺じゃあねぇぞ!?あいつだ!あいつが作らせろって!」 悠介 「ばかっ!いきなりバラすヤツがあるかっ!」 雄山 「貴様か!この雄山を試すような生意気なことをしたのはっ!!」 ドスドスドスドスドス!! およそ靴で歩く音とは思えない音を鳴らし、肩を怒らせながら足早に雄山が迫ってくる! って、普通に考えて靴───じゃないな、草履でもドスドスは無いだろおい!! 雄山 「問題はこの香りだ!木の実だ……木の実をもいで酒に漬けておいて、     木の実の色と香りのついたその酒をツユの中に入れた!!そうだなっ!!」 悠介 「野菜炒めにそんなの入れるわけないだろうが!!余計にベシャベシャになるわ!」 雄山 「問題は木の実だ。木苺ではない、スグリでもない、サクランボでもない……     コケモモでもない……」 悠介 「話し掛けといて無視かよ……」 雄山 「桑の実だ!そうだろうっ!!」 悠介 「断じて違う」 雄山 「ふっふっ……この雄山を試しおって、生意気な小僧だ」 悠介 「頼むから一言くらい人の話を聞こうな?」 雄山 「しかし雄山を唸らせるとは感心だ、次の料理を作れ!」 悠介 「……あのなぁ」 無視できなかった俺の負けである。 もういいや、今から無視すればどうとでもなる。 悠介 「メシ、食うか」 ルナ 「ん」 もう静かに食うことにした。 周りは依然としてガヤガヤガツガツとメシを食ってるが、それならせめて俺達だけでもと。 しかししばらくそうしているとツッコミが無いのを悲しんでか、 なにやらやたらと雄山の視線が俺へと向かってきていることに気づいた。 ええい鬱陶しい、用が済んだなら帰れ馬鹿者。 それと雄山のままでジロジロ見るな。 しかも微動だにせずずっと見てるもんだから、 呪いの日本人形に背中から凝視されてるような気分だ。 だがやはり無視だ、今度こそ完全無視。 あー美味いなー、やっぱ料理っていえば日本料理だよなー。 はっはっはっは。 ───……。 ……。 食事が終わると、俺達はさっさとチェックアウトを済ませて町を出た。 宿が欲しかっただけで、あの町自体に用は無かったからだ。 武具が必要だとかそんな心配をする必要がないってのは、創造者ってジョブに感謝だな。 で…… 雄山 「…………《む〜〜〜ん》」 さっきから後ろをついてくるこいつはなんとかならんのだろうか。 ルナ 「ねぇ悠介……なんだかずっと付いてくるんだけど……」 悠介 「あれが世に言うストーカーだ。よく見ておけ」 雄山 「なっ……この愚か者め!私をスト《バゴシャア!!》ルヴォアァーーーッ!!!」 悠介 「憑いてくるな微食家」 雄山 「ぐっ……!“ついて”の部分に霊的なものを感じた……!」 悠介 「で?なんの用があってここに来たんだ?今なら素直に聞くが」 雄山 「ふっ……」 悠介 「彰利としてならな」 雄山 「ゲッ……!あ、あのー、負かりません?」 悠介 「負からんっ」 雄山 「グ、グーヴ……」 ゾリュンッ、という奇妙な音とともに黒が弾け、彰利になる。 まったく、こんな手の込んだ変装までしてなにがしたかったんだろうな、こいつは。 彰利 「やあ。実は雄山は俺だったのでしたー!」 悠介 「ンなもん遙か前から知ってる。それより用件言え用件」 彰利 「グ、グウウ……じ、実はですね?マクスウェルのじっちゃんが……」 悠介 「マクスウェルが?」 彰利 「まず力の底上げをするために、闇の精霊の力を解放してこいって……」 悠介 「……なるほど」 彰利の力の源は闇と影と黒だったな。 そういった意味では“死”もあればいいんだろうけど、 あの適当でカタブツっていう滅茶苦茶な死の精霊が、 自分の属性の精霊を果たして配置するかどうか。 彰利 「そげなわけで俺もこの旅に混ぜれ」 ルナ 「ダメ」 彰利 「即答!?そげなこと言わないで!俺頑張るから!」 悠介 「登場の仕方からして不真面目だったお前が何に対して頑張るってんだよ……」 彰利 「ふ、不真面目って……ただ雄山として登場しただけなのになんて言われ様……」 誰だっていきなり雄山が現れれば驚くと思うが。 そしてあそこまで騒がれれば誰だってツッコミも入れるってもんだろう。 悠介 「別に来るなら来てもいいぞ」 彰利 「ウヒャッホウマジで!?」 悠介 「そのかわり、ドラゴン退治だ。本当に真面目に頼むぞ?」 彰利 「オーライ僕の友!俺、やっちゃうぜ!?」 ルナ 「ぶー……」 悠介 「腐るな腐るな。考えてもみろ、ここで断ってもどうせこいつのことだ。     こっちが了承するまで雄山の格好で付回してくるぞ」 ルナ 「うわぁ……」 彰利 「あの……いくら俺でもそこまでは……。だからお願いルナっち。     そんなにまで、そんなにまで絶望と嫌気に包まれた表情しないで……」 悠介 「いや、お前なら普通でやりそうだが」 彰利 「もちろんだ!相手にウムと言わせるためには手段を選ばん!」 悠介 「否定した次の瞬間肯定するなよオイ!!」 彰利 「ハッハッハ、それが僕のいいところさ悠介。そんなわけで!」 ジャッチャーカチャーチャーチャチャーン♪《黒いナイスガイが仲間に加わった!!》 彰利 「よろしく!」 悠介 「ああよろしく、ナイスガイ」 彰利 「効果をそのまま受け入れる必要ねぇべよ!アイム弦月彰利!     まあそんなことは置いといて、で?で?何処行くん?     オイラドラゴン退治なんて初めてだからウヒョオドキドキするぜ」 悠介 「何処って言われてもな。     場所は解るものの、どの宝玉が何処にあるかまでは解らないんだ」 彰利 「ありゃそうなん?同じ精霊なんだし、なんとかならんの?     ホラ、微弱な属性系統を感じ取ってなんたらかんたらとか」 悠介 「ん……ちと待ってろ」 中々いい提案だ。 そうと決まればと目を閉じて集中を開始する。 一応大体の精霊とはゲートを繋げてある。 あとはそれを頼りに属性の糸を辿れればいいわけだが…… 悠介 「……………」 集中を高める。 すると瞼を閉じてるにも関わらず景色が意識に叩き込まれ、 それが“構造”として表示される。 賢者の石から流れる力だろう。 大分この世界の壁も破壊出来てきた証拠だ。 現実世界で首にかけたままの賢者の石の力を引っ張ってこれているんだろう。 そうした構造の中、空気や草原、無視の構造までもが視覚として映し出される。 ズキリ、と頭が痛むがそれでも構わない。 感じ、そして視覚し、闇の諸力を手繰り寄せろ。 悠介 「───…………!」 あった! 力強い闇の諸力の反応が───…… 彰利 「はおおおおおお……!!《モリモリモリモリ……!!》」 悠介 「…………おいそこの馬鹿。なにやってやがる」 彰利 「馬鹿!?あ、えーと。闇の力のパターンを探すなら、     サンプルがあった方が解りやすいかなぁと。力を解放しておりました」 悠介 「……頼む、何もしないでくれ」 彰利 「え?でもいきなり頼み込んできたのになんにもしないのって失礼じゃん?」 悠介 「た・の・む。な・に・も・し・な・い・で・く・れ」 彰利 「ぎょっ……御意……」 はぁ……!すまん、俺が間違ってた。 雄山じゃなくても疲れる。 ああいい、もういい。集中だ集中。 悠介 「ん───……」 声  「マア!アタイの目の前で目を閉じるなんて!これってアレ!?OKってこと!?」 声  「ふかぁーーーーっ!!」 声  「オワッ!?景色が急に満月の草原に!?ア、アォアーーーーッ!!     冗談!ほんの冗談ですルナっち!だから極致は!極致はぁあーーーーっ!!!     ギャオォオオーーーーーーーッ!!!!ザゴフィンゾガゾシャズバゴシャザクゾシュ……!! …………。 音が消えた。 なんだか目を開くのが怖いくらいだったから、 なんていうかもうそのまま続けることにした。 あぁ……頭痛ぇ……。 【ケース349:晦悠介(茶流再々)/とある朝、頭痛とともに】 ───さて。 経緯はどうあれ大変な頭痛とともに諸力探索をしてみたわけだが─── 結局のところ知覚は出来なかった。 場所が遠いのか、そもそも知覚できるものじゃないのかのどっちかなわけだが、 そんな状況であるなら自分で探すしかないわけだ。 幸い、宝玉の在り処は訊いてあるわけだし、探してるうちに行き着くだろう。 彰利 「しかしキミも物好きだねぇ。自ら進んで竜族と戦おうなんざ正気じゃねぇや」 悠介 「物好きなのは認めるぞ?正気でファンタジーなんてやってられないだろ」 彰利 「お?随分とやる気のある発言じゃねぇの。いったいどういう風の吹き回し?」 悠介 「風の吹き回しって……普段からそんな態度とってないみたいに言うなよ」 彰利 「とってねぇでねぇの」 悠介 「………」 ああそうだよ、そうだろうさ。 自分だって驚くくらいに高揚してるさ。 だってファンタジーだぞ? いざあの頃の気持ちを思い出し、尚且つ感情まで手に入れたとあれば、 表面では平静を装っても中身はわくわくするってもんじゃないか。 悠介 「彰利……」 彰利 「お、お?なにかね?」 悠介 「俺……男に生まれてきたことを今物凄く喜んでる……」 彰利 「………」 悠介 「……オイ、なんだよこの手は」 彰利 「いや……熱は無いかね、って」 彰利がヒタリと俺の額に手を当ててきた。 続いて自分の額も触るが、首を傾げるだけだった。 ああいや、それだけじゃ終われなかったな。 ルナに“わたしがしたかったのに”と怒号くらって切り刻まれてら。 やれやれ、たった一人が加わっただけで、どうしてこうも賑やかになれるのか。 悠介 「ジャミル、精霊の諸力を感じ取ることは出来るか?」 溜め息を吐きつつジャミルを小さな姿で召喚して訊いてみる。 が、ちっこいジャミルは “可能ですが、ここでは知覚することが出来ないようです”と返してきた。 仕方なしにもひとつ溜め息を吐いて、ジャミルに引っ込んでもらうと歩き出す。 さて……まず何処に行ったもんかな。 と、そこまで考えてから足を止めて、 ギャアギャアと悲鳴を上げている彰利に声をかけることにした。 悠介 「なぁー!彰利ー!?」 彰利 「お!?お、おー!?なんぞねー!?ってギャア痛い!ルナっち痛い!!」 ルナ 「どーしていっつもいっつも邪魔ばっかするのさホモっちのアホー!!」 彰利 「あ、あほーって!ストレートになんてヒドイ!!     俺ただ闇の諸力解放を目論んだだけで誰もルナっちの邪魔なぞしとらんわー!     と、っととっと!んで、なにかね?《ゾブシャア!!》ギャアーーーーッ!!」 悠介 「マクスウェルからなにか訊かなかったか?」 彰利 「あのねキミ!友が目の前で斬られてんだからもっと動揺とかしようよ!!」 悠介 「すまん、見慣れすぎてて今さらどう動揺しろっていうのか逆に教えてほしい」 彰利 「………」 彼は遠い目をして空を見上げると、 ルナに切り刻まれながらも“俺も若かったな……”と呟き、ホロリと涙を流すのであった。 とりあえずやめてやれ、ルナ。 彰利 「で、マクスウェルのじっちゃんから何か聞いてなかったのかーってことだったね。     ンマー、一言で言えば聞いたからこそここに来たんだけどね。     手っ取り早く強くなるにはまず精霊の力の解放が一番なんだそうな。     何故って、教授するマクスウェルのじっちゃんの力も解放されることになるから、     そうすりゃもっと効率よく鍛えることも、     もう一段階上の修行も出来るんだそうじゃよ?」 悠介 「……なるほどな」 彰利 「ドラゴン退治ってことで、そりゃもうオイラビビリまくりだったんだけどね。     あの中井出までもがやる気になってるんじゃあ、     ここで俺が出ねぇわけにはいかねぇだろ?」 悠介 「中井出って……中井出?」 彰利 「おう。我ら原中が提督、中井出博光である」 悠介 「………」 あいつ、どっかに消えたと思ったら……なんだってそんな事態になってるんだ? 彰利 「最初は中井出ンとこに行こうと思ったんだけどね。     でもヤツと一緒に居ると悲しくなってきそうだったんでやめた」 悠介 「悲しくなるって、なんでさ」 彰利 「いやぁ実は……あいつ今1721レベルなのね」 悠介 「ブホォーーーーーーッ!!?」 1700台!?すげぇ!いつの間に……って、エーテルアロワノンに置いていったときか。 それこそこれでもかってくらいに アンデッドモンスターどもをコロがしまくったんだろうなぁ。 ……って、なにを頷いてるんだこいつは。 彰利 「ンムンム、キミが俺と同じ反応してくれて嬉しいよ。そうだよなぁ、驚くよなぁ」 悠介 「あ、ああ……素直に驚いた」 彰利 「なんでも今は妖精に助力を請われて、     戒めの宝玉ってーのを破壊する旅をしとるらしいんだけどね。     なんっつーか……一緒に冒険してると     どんどんレベルが離れていきそうで悲しくなってきそうでさ」 悠介 「なるほど……」 よく解った。 そらそうだわ。 彰利 「んで?やっぱ闇の宝玉探しするんよね?ね?ギャッフェーーイ!楽しみだぜ〜!」 どういう喜び方なんだそれは。 悠介 「んー……でも、そうだな。なぁ彰利、“全て”を知る覚悟は出来たか?」 彰利 「へ?……いや、え?またアレ?」 悠介 「同じこと訊くのもなんだと思ったけどな。     知っといた方が気の持ちようが変わると思う。     それに、それが訪れるのにはもうあまり時間が残ってないんだ。     いきなり来訪されるよりよっぽど楽だと思うけどな」 彰利 「………」 彰利は困ったような顔で考え始める。 ……ああ、どうせならたくさん悩んでほしい。 こればっかりは、出来れば教えたくない方向のものだ。 知らないほうがいいものってのは確かにあるんだ。 けど、彰利には知ってもらいたいって気持ちも、ちゃんと俺の中に存在してる。 だから─── 彰利 「……よっしゃ。聞くぜ、未来で待ってる物語を」 悠介 「……そか」 だから俺はきっと、今の彰利なら頷くと思って切り出したんだろう。 どうしてそう思ったのかなんて解らない。 ただ極自然に、そうしなければいけない思いに駆られたのだ。 ……なぁ、これもお前の筋書き通りなのか? それとも───…… 悠介 「ディル、飛んでもらっていいか」 ディル『応。何処にだ』 悠介 「ポイントRT-27334───トリスタン王国だ」 彰利 「へ?ソレって……」 覚悟は得た。 だったら───今こそ全てを教えよう。 俺の未来と、その先にあった遙か最果ての“後悔”の歴史を。 Next Menu back