───バルバロイ馬鹿ども/そうだ、プール、行こう───
【ケース356:穂岸遥一郎/スマイリー】 中井出「探し出してよマーキュリー!!」 総員 『GO!!』 中井出「大事だった宝物ー!!」 総員 『Ye(イェイ)!!』 中井出「見っつっけったぁ〜ら〜♪あ〜ま〜が〜み〜よ〜♪」 でんてけてけててんててんてん♪ でんてけてけててんててんてん♪ 中井出「その口から垂れるウンウンの前と後にサーをつけろぉーーーっ!!」 総員 『Sir(サー)!!YesSir(イェッサー)!!』 原中の提督たる男にメッタメタにやられた俺達はその後、 のそのそと起き出してなんとか持ち直した。 というよりは俺と蒼木とで漢神の祝福使って全員回復させたわけだが。 遥一郎「元気だよな、ほんと」 澄音 「キミは元気じゃないのかい?」 遥一郎「正直少し静かにしたいかな」 今やある意味理解者たる晦までが渦中で騒いでる始末だ。 弦月は吹き飛んだまま戻ってきてないが。 澄音 「それならきっと、すぐに静かな状態になれるよ。     すぐに、って言っても今すぐってわけじゃないんだけどね」 遥一郎「蒼木?」 中井出「というわけでそろそろ     スーパーウルトラジャイアントジャンボプールに向かいたいと思う!」 総員 『オォーーーーーッ!!!』 中井出「総員!行く前に水着を購入するように!」 総員 『サーイェッサー!!』 丘野 「お買い物は我が殊戸瀬エレクトロニクスでどうぞでござる!     電化製品から食べ物、着物、もちろん水着も揃えてあるでござる!!」 蒲田 「おおっ!抜け目ねぇな社長!」 下田 「さすが社長だ!」 丘野 「社長言うなでござるー!!」 岡田 「シャチョ〜!」 中村 「シャァアアチョ〜〜〜〜!!」 丘野 「見ろ……人がブルンさんのようだ……」 ちょっとした宣伝が奇妙な事態を招いたらしい。 しかしいちいち細かいことを覚えているやつらだな、原中って集団は。 雪音 「水着かぁ……プールなんてここ何年も行ってないよね。     でも、この歳格好なら……《チラリ》」 遥一郎「ん?どした?」 雪音 「うん!わたし頑張っちゃうよー!大胆な水着選ぶから見ててねホギッちゃん!」 遥一郎「晦に言わせれば、寝言は寝てから言うもんらしいぞ」 雪音 「うわひどい!ホギッちゃんヒドイ!     オンナノコの水着姿見たくないってゆーの!?」 遥一郎「そんなのはいいから俺に平穏をくれ」 許されるのならば、ただそれのみを切実に願おう。 凍弥 「おっさんってなにかっつーと悠介さんに似てるところがあるんだよな。なんで?」 遥一郎「おっさん言うなっつーのに……べつに、周りがそうさせてるだけだろうさ」 凍弥 「周りって?」 遥一郎「育った過程はどうあれ、     やかましいやつらに囲まれてるって意味では俺と晦は同じだってことだよ。     からかわれてばっかりで、からかう側には至れない可哀相な人種なんだ」 雪音 「ほえ?からかいたいの?ていうかわたし、     結構ホギッちゃんにからかわれてる気がするんだけど」 閏璃 「それは貴様が馬鹿なだけだ」 雪音 「ムギー!!なんでウルチョンが来るのさー!!」 閏璃 「フフフ……昂風街に伝わる伝説を教えてやろう……。     “閏璃現るところ乱あり”……───ウルチョン!?」 遥一郎「あー、気にしてると身が保たないぞ。     こいつ人にヘンなあだ名つけるの好きな上に、     一度コレと決めると絶対に変えようとしないから」 閏璃 「なるほど。つまり馬鹿だから一度覚えた名前以外じゃ覚えられないと」 遥一郎「……概ね間違ってないよな、うん」 雪音 「ホギッちゃんそこは否定するところだよ!」 遥一郎「なんで俺が否定せにゃならんのだ。そーいうのは自分でやれ自分で」 雪音 「うぐー!!」 ノア 「……わたしとしては、何故そこの愚者がマスターを見て     水着がどうのと張り切るのかが気になりますが」 遥一郎「ん……言われてみればそうだな。どうしてだ?」 雪音 「え?だってわたしの周りってオトコノコっていったらホギッちゃんしか居ないし。     頭もいいし結構カッコイイし、落ち着きがあるし面倒見もいいし。     ホラ、こんなにいいオトコノコって他にはそうそう居ないと思うよ?」 凍弥 「……そういや与一ってどうして未だにフリーなんだ?     誰かと結婚するとかは《ごすっ!》いってぇっ!!?」 シンジラレナイことを言い出す凍弥の頭をゲンコツで殴り、 その首に腕を絡めて引き寄せた。 凍弥 「どわっと!?」 遥一郎「馬鹿かお前はっ……!そんなことしてみろ、     ノアは特にだが、サクラとかが暴走するだろうがっ……!」 凍弥 「へ……?じゃ、じゃあたったそれだけが怖くて今まで……?」 遥一郎「……そんなわけあるか、ばか。     そもそも俺は、男と女が揃えば結婚だとか、そういう考えは嫌いなんだよ」 俺の場合特に、親があんなだったんだ。 家庭を持つってのがどれほど大変なことかくらい知ってる。 遥一郎「周りがどう言おうが想ってくれようが、俺は周りとは違うさ。結婚はしない」 凍弥 「……本気か?」 遥一郎「本気だ。お前も一度精霊になってみれば、なにかを悟れるんじゃないか?」 凍弥 「え、遠慮しとく……」 凍弥は俺のネックロックからバタバタと逃げ出すと、 そこを椛嬢に捕まって慌てふためいていた。 ……つくづく思うが、男って弱いな。 浩介 「………」 浩之 「……なぁブラザー」 浩介 「どうしたブラザー」 浩之 「つくづく思うのだが、アレが来流美ばーさんか?」 浩介 「うむ、どうやらそうらしい。     あれがコエンザイムの悪魔と呼ばれた来流美ばーさんだ」 浩之 「ふむ……若いな、ブラザー」 浩介 「そうだな、ブラザー」 遥一郎「何処見て何を言ってるんだよお前らは……」 浩介 「む?おお、おっさんではないか」 浩之 「いや、見てくれおっさん。今我らの前に伝説のコエンザイムマスターが」 ヒロラインで散々と顔合わせしてたと思うんだが? それ以前にもだが。 浩介 「以前に会ったかどうかなど問題ではないのだ。     やはりこうじっくり見ると……」 浩之 「歳はとりたくないものだとしみじみ思うわけだ」 遥一郎「お前ら本当に変わらないな……。というか、霧波川の話はそんなに有名か?」 浩介 「おおもちろんだおっさん。今の未来の時代を知らぬ貴様では解らんかもしれんが、     我らの時代の来流美ばーさんはそれはもうコエンザイムQ10の鬼である」 浩之 「片時もコエンザイムを離さず、時が来れば毎度必要量を摂取する。     ……どうやらそれはこの時代でも変わらんようだと安心しているところだ」 遥一郎「………」 見れば、確かに短い筒状のサプリメントの蓋を開け、なにかを飲んでいる霧波川。 だからってコエンザイムマスターはないと思うんだが。 そういえば、何年か前にきっかけになるようなハプニングがあったっけ。 あれは確か、晦が後悔の旅に出る前の話だったな。 雪音 「ほあっ!ホギッちゃん新発見!わたしのウエスト、少し細くなってる!」 ……で。 なんでこいつはこう、人の思考を打ち破るのが好きなのか。 遥一郎「……馬鹿、もとい、観咲よ……」 雪音 「馬鹿!?ホギッちゃん今馬鹿って言った!?     それも名前と間違えた風に言った!?」 遥一郎「いや、お前が馬鹿なのは既に周知の事実だった。     お前を馬鹿と呼んだことに一切の後悔はない。そこでだ馬鹿……観咲」 雪音 「また馬鹿って言った!言ったよね!?言ったよねー!?」 澄音 「言ってないよ」 雪音 「言ったよ!?言ったもん!!」 遥一郎「落ち着くんだ観咲、話が進まんだろう」 雪音 「ややこしくしてるのはホギッちゃんだよう!」 遥一郎「じゃあ率直に話を進めよう。     頼むから女として人の目が多いところでウエストのサイズを測るのはやめてくれ」 雪音 「え?なんで?減るもんじゃないよ?」 遥一郎「………」 いったい…… 遥一郎「いったい……こいつは何処で産まれる過程を間違えたのだろう……。     産まれて来た性別が違えば、きっといい友になれただろうに……」 雪音 「ホギッちゃんヒドイ!声に出てる上にわたし友達じゃないっていうの!?」 遥一郎「いや、お前は友達っていうか……」 ……触覚? 遥一郎「いやいや、友達……かもしれない」 雪音 「かも!?うぁああ〜〜〜ん!澄ちゃんホギッちゃんがヒドイんだよ〜〜っ!」 澄音 「え、えぇと……僕はここでなにかアイテムを出したほうがいいのかな」 雪音 「澄ちゃんわたしのび太じゃないよ!!ってほらほらほらー!     ホギッちゃんわたしのことからかってるじゃないの!」 閏璃 「それは貴様が馬鹿だからそう感じるだけだ」 雪音 「ウルチョンは首突っ込まないで!」 閏璃 「なにぃ、俺はただ貴様の思考の導となろうと───ウルチョン!?」 観咲の意識が俺から閏璃に移った。 首を突っ込まないでとはよく言ったものだ。 澄音 「ふふっ、雪音は元気だね」 遥一郎「元気すぎにも程がある……俺はもっと静かに暮らしたいんだが」 澄音 「あはははは、なるほどね。確かにキミは晦くんによく似ているかもしれない」 遥一郎「そうか?よほどの馬鹿じゃない限り、     守りたいものを守るだなんてこと、言い出さないと思うし、     俺はそんなことをしたいなんて思っちゃいないよ」 澄音 「そうかい?だったらもし雪音が危機に陥った時、キミはどうする?」 遥一郎「その時決める。無責任なことは言いたくないんだ。     ここで“助ける”なんて言って、助けられなかったらウソだ。     助けようとした気持ちが大事なんだ、なんてのは気休めだろ?     俺はそんなのは嫌だ。助けると決めた以上は助けたいし、     助けられないと解った時点で俺に出来ることなんてひとつもない。     足掻くって言葉は足掻ける状況が揃って初めて足掻けるものだろ?     助けられないって気づいちまったら、     もうその時点で自分に出来ることなんて無いんだ」 澄音 「うん、そうだね。でも……僕は、     キミはどれだけ絶望的な状況になっても助けようとすると思うよ。     たとえ自分が傷ついても。けどそれは自己犠牲なんかじゃない。     キミが助けようとした結果、傷ついてしまったってだけなんだ」 遥一郎「………」 カリ、と頭を掻いた。 俺はそんなに人が良いわけじゃない。 でも、人を平気で見捨てられるわけでもないのだ。 だから無責任なことは言わない。 命なんてものは人の手には重過ぎる。 遥一郎「どっちにしたって、俺はその時その時の考えに従うだけだよ。     最初から最後まで“守る”なんて意志を持ってたら疲れるだろ」 澄音 「そうかもしれないね」 現に今の晦は、なにか疲れているような雰囲気さえ感じる。 だけど他に生き方を知らないから、 ああやって人を助けることでしか自分の世界を構築出来ない。 人を助けることは確かに美しい。 だけどそれは、誰も犠牲にならない助けであればこそだ。 助けた自分が辛い目に合って喜ぶのは他人だけだ。 よくある九死に一生の場面だって感動物語と言われているものだって、 誰かが誰かを守り、その代わりに助けたヤツが死ぬ、なんてざらにある。 実際俺も凍弥に奇跡を分けて消滅した馬鹿者のひとりだ。 だからこそ解ることがある。 自己犠牲の先にある幸せも確かにある。 けど、そんなものは一握りだ。 凍弥は幸せになった。 椛嬢と一緒になって、確かに今を生きている。 だが幸せになれないヤツだってきっと居る。 そんなものは感動にすら位置しない。 遥一郎「………」 はぁ、と息を吐いてこの話の内容を打ち切ることを提案した。 蒼木もそんな俺を察してか、それ以上のことは言ってはこなかった。 ……べつに凍弥を自分の命を張ってまで助けたことを後悔してるとか、そんなのじゃない。 あの時俺はあれが一番いいと判断したからああしたし、 その記憶が、教訓が、今も俺の身にあるのは…… 遥一郎「ノア、サクラ、庭に出ようか」 ノア 「はい、マスター」 サクラ「はいです」 澄音 「僕もいいかな」 遥一郎「はは、当たり前だろ」 レイラ「澄音さんが行くのでしたら、わたしも」 雪音 「あー!わたしのこと仲間外れにしようとしてるー!……で、どこ行くの?」 閏璃 「お前の行き先は馬鹿街道のみさっ!」 雪音 「ムキー!!屈辱ー!!」 忘れちゃいけないことだ。 俺と蒼木だけが覚えている、懐かしい記憶。 この馬鹿みたいな日常が続く限り、俺はきっと覚えていられる。 どれだけの月日が、年月が経とうが、 たとえ一時忘れてしまおうが、きっと思い出せると信じてる。 ……俺はきっと、知り合いが窮地に陥ったら助けに入るのだろう。 蒼木の言う通りだ、それきっと合っている。 誰かを見捨てたままで生きていられるほど、自分は強くなんかないのだから。 それでも救えなかった時はどうしたらいいのか。 きっとそんなことを、いつだって考えているだろう男の顔を遠目に見た。 悠介 「……、……」 そいつは周りの仲間たちにもみくちゃにされながら、 けれど今までで一番素直な顔で笑っていた。 誰だって未来に不安が無いわけじゃないのだ。 でも、楽しめるうちは楽しんでおかないときっと後悔する。 だからせめて、あいつが努力に身を費やしている時くらいは俺が祈ろうか。 いろんな強さや弱さを持ったそいつが、 いつか幸せに辿り着けるようにとドバァン!! 彰利 「プール行くべー!!」 ……で、そんな静かな思考は、 向かっていった先のドアをブチ破って入ってきた トゲトゲしい頭をしたヤツに打ち破られたわけだ。 ……何度でも言おう。平穏が欲しい。 ───……。 ……。 プールに行くための準備が出来たのは昼も間近という頃だった。 その頃になるとみんな仕度を終え、弁当も持ち、準備万端といった雰囲気をもっていた。 柾樹やその仲間たちは弦月が異翔転移で無理矢理呼び戻し、 何故かぐったりと動かない柾樹や豆人間についてのことを裕希ボーイから聞くことで落着。 いよいよプール(の前に水着を買うんだそうだが)に行く準備が完全となった。 そんな中、 晦が“ようするに授業がどうとかはどうでもいいわけだ、お前は”と呟いていたが…… なんのことだかはよく解らなかった。 豆村 「親父、金」 彰利 「伝説破壊鐘(でんせつはかいしょう)
〜〜〜〜っ”!!!」《ゴワゴワゴワ》 豆村 「オギャア親父の腕がデッケェ鐘にぃいーーーーっ!!!     って!鐘じゃなくて金!マネー!!水着買う金!」 彰利 「…………《ソッ》」 豆村 「なに真顔でウポポ族のチンコケースをソッと手渡ししとんのじゃあーーーっ!!」 彰利 「子の成長を願わない父など居ないんだ……」 豆村 「そんな成長願ってほしくもねぇよ!!     大体親父の親父は親父の成長を《ガゴシィッ!!》ふごっ!?」 彰利 「……俺の前であのクズの話はするな。OK?」 豆村 「……!!《こくこくこく!!》」 彰利 「う〜んいい子だ!タワッシワッシワッシワッシワッシワッシ!!!!」 豆村 「《ゴリゴリスリスリマッチュモッチュ》ギョェエエァアアアーーーーーッ!!!」 豆人間が弦月に頬擦りされるわスリスリされるわ頬にキスされるわで地獄の悲鳴を上げた。 その一方で─── 柾樹 「ビーン……いいヤツだったな……」 刹那 「女房思いのいいヤツだった……」 柾樹と裕希が遠い目で、友の最後を看取っていた。 やがて豆人間は苦痛に耐え切れずにオチた。 心なし、涙を流しながら泡を吹いているようにも見える。 彰利 「はふぅ、これだけ地獄を見せれば二度とあげなことを話題には出来まい……」 悠介 「お前の拷問はやりすぎなんだよ……。実の子にキスって、さすがにひどいぞ」 彰利 「ひどくなくては躾けにならんでしょう!!俺に親など居ねぇ!!     人を散々利用するだけし尽くした外道どもが親などであるなど認めん!!」 悠介 「じゃ、弦月の名も捨てたらどうだ?」 彰利 「え?……そうじゃのう、じゃったらワシのことはランポスと呼んでくれ」 悠介 「全力で断る」 即答だった。 彰利 「じゃあドスランポス彰利」 悠介 「待て待て待てっ、まずどうしてランポスなのかまず説明してほしいんだが……」 彰利 「え?いい名前だから」 悠介 「……呼ばれた時のことは考えてないわけだな」 彰利 「だって考えてもみろよ悠介……ゲネポスとイーオスじゃあダサすぎるだろ?」 悠介 「その自信はどっから来るんだよ……」 彰利 「アタイの美しいコスモから!おおそうだ!     俺のことはコスメティック彰利と呼んでくれ!」 悠介 「……先に言っておくけど、コスモとコスメティックは無関係だぞ」 彰利 「え!?マジで!?」 中井出「ルネッサンス!!」 総員 『ルネッサァーーーンス!!』 彰利 「ギャアうるせぇーーーっ!!!今の無し!コスメティック違う!コスモ彰利で!」 中井出「ルネェ〜〜ッサァ〜〜ンス♪」 閏璃 「情熱〜〜っ♪」 雪音 「僕のこの手〜は〜♪」 総員 『いつも〜なにか〜探し〜♪も〜え〜てる〜〜♪』 彰利 「ギャアもう違うっつーてんでしょ聞きなさい!!     ミスター味ッ子歌ってんじゃねィェーーーッ!!」 悠介 「ど、どうしたルネッサンス!!」 俊也 「腹でも下したのかルネッサンス!!」 彰利 「ルネッサンスじゃねぇっつーとるでしょ!?     つーかどうしてまず第一に腹下しの方向で考えますか!?     腹下してると名前間違えるの!?初耳だよそんな症状!!」 閏璃 「ひいい!!ルネッサンスがお怒りになられた!」 鷹志 「逃げろ!お肌をツヤツヤの厚化粧(ケバイノー)にされるぞ!!」 柿崎 「おのれノエビアの手先め!!」 彰利 「聞きなさいキミたち!聞いて!お願い聞いて!!」 中井出「惑わされるなみんな!化粧品売りは口先が上手いんだ!悪霊退散!!」 彰利 「退散するのはオメェエーーーだ!!」 中井出「《バゴシャア!》だっとさーーーん!!」 コスメティック・ルネッサンスと言いたかったんだろうか。 とりあえずジャンピングニーパッドまでやられた中井出提督に見事の一言を。 悠介 「中井出にかかればノエビアも悪霊扱いか」 彰利 「ただ単に遊びたかっただけっしょ……ホレ行きますよ!無駄口厳禁!!」 シンッ…… 弦月がそう言うと、何故か一斉に沈黙する原中の猛者や友の里陣営、さらには他の人々。 彰利 「あ、あれ?《バゴシャア!》ウベルリ!ちょ、ちょっとなにすんのー!!     急に殴るなんて紳士のすることじゃ《バゴシャア!》アウチー!!」 悠介 「無駄口厳禁だって自分で言ったんだろが《バゴシャア!》いてぇっ!!     ちょ、ちょっと待て!今説明しただけだぞ俺は《バゴシャア!》いてぇっ!!」 原中生『………』 友の里『………』 人外 『………』 ……こうして、奇妙な沈黙祭りが開催されたのだった。 どうしてこう極端な話が好きなんだろうか、俺の周りの連中は……。 ───……。 で……なんとか殊戸瀬エレクトロニクスの……何号店かは解らんが、 ともかく巨大なデパートに来た俺達だったが。 総員 『…………《む〜〜〜〜ん》』 まだ沈黙祭りは続いていた。 誰か助けてくれ、そりゃ静かなほうがいいとは思ったが、 こんな息苦しい静けさなんて欲しくない。 店員 「いらっしゃいませー」 ああ……なにも知らない店員がいっそ羨ましい。 なんて思いつつ店の中を進もうとした時だった。 店内の冷房にあてられたのだろう、 永田 「ふぇっ……ふぇっきしょい!《ドゴゴシャバキベキガンゴンガン!!》     ギョァアアアーーーーーーーーーーーッ!!!!!」 店員 「ひぃっ!?お、お客様!?店内での乱暴はご遠慮願います!!」 永田、だったか?が、くしゃみをした途端に血だるまになった。 まさに酷い……というか非道いに部類する扱い。 その傷は一応……綾瀬、だったか?が治していたが、 どちらにしろくしゃみさえ許されない状況らしい。 しかし……なんと言えばいいのか。 それぞれがゾルゾルと他方へ散っていく中で、 店員や客もその雰囲気を体で感じ取ったのか、急に店内が静かになった。 今では店内に流れるBGMだけが、この空間の唯一の音であるかのようだ。 これだけ広いというのにざわめきのひとつもない。 遥一郎(……こういう状況なんだろうな、晦が頭を痛める状況っていうのは) 少し痛む頭に手を添え、声の無い溜め息を吐いた。 さて、いったいどんなことになるのやら……。 【ケース357:晦悠介/サテリコン】 さて……どうしてこんなことになったのやら。 彰利 (………) 俺の隣で親指を立てている親友は、かなり楽しそうだった。 かくいう俺もまあ、楽しくはあるわけだが。 彰利 (プールにアロハパンツはマズイかね) 悠介 (お前なら似合うだろ) 彰利 (すげぇだろ) 悠介 (褒めたわけじゃないんだが) 会話は全て、原中奥義“眼混拓渡(アイコンタクト)”で済ませる。 口を開き、声を出した途端に何処から狙われるか解らないからだ。 ったく……なんだってただの買い物がこんな殺伐としたコンバットじみたものになるんだ。 悠介 (他の連中はどうだ?) 彰利 (クォックォックォッ、黒できちんと監視しておるよ?     どいつもこいつも水着を前に、無言ではしゃいどうぜ。     声をあげないのは流石と言っておこうかね、ホホホ) 悠介 (お前の妻たちはどうだ?) 彰利 (夜華さんがヤケに気配を配らせておるね。     オイラを探しているか、それとも攻撃を回避するために身を緊張させてるのか。     他の皆様は……水着選びでキャイキャイモードですな。無言なのがいっそ怖い) そりゃ……怖いな。 無言で(はしゃ)ぐ人など、およそ想像できるものじゃないが。 などと考えていた時だ。 声  「……、」 遠くから何かしらの声を聞いた。 その途端、静寂を守っていた周りの雰囲気が一気に殺気へと変わる!! 悠介 (彰利!) 彰利 (オウヨ!) 目配せだけで十分だった。 俺と彰利はその場から全力疾走し、声が聞こえた方向へと走り出したッッ!! すると他の方向からも、そこへと全力疾走を開始した男や女の姿が! さながら、オーガストリートでジョナサン=ジョースターへと全力疾走する スピードワゴンとその仲間達のように!  ドドドドドドドドドドドッ!!!! 声  「ひえっ!?うわっ!来たッスーーーーーッ!!!」 走り続ける先に居たのは───予想通りというか、佐古田好恵だった。 だが相手が女でも容赦無し。 それが我らの原ソウル!! ドゴゴシャドゴバゴゴシャベキャモゴシャア!!! 佐古田「ふぎゃああああーーーーーーーーっ!!!!!」 のちに……その惨状を語る者は居なかった。 ただ殴る蹴るどつく、投げる叩きつける振り回すの中でも、 佐古田以外に喋る者など居なかったのだ。 たとえトルネードフィッシャーマンズスープレックスをしようが、 フェニックスドライバーをやろうがだ。 やがて佐古田がぐったりと動かなくなると綾瀬が治療をし、 佐古田は文句を言いながら起き上がり、再びボコボコにされた。 ただ一言も喋ってはいけないため、綾瀬の魔法も無詠唱となっている。 そのために効力は小さいが、きっちりと回復出来ているのは彼女の頑張りの結果だ。 俺はなんだかそれが嬉しかった。 “周りだって頑張っている”。たったそれだけの、当たり前のことなのに嬉しかった。 ……まあその、一人が多数にボッコボコにされている時に 考えるようなことじゃないとは解っているけど。 ───……。 ややあってドゴゴシャバキゴキガンガンガン!!! 彰利 「ジェーーーン!!!」 次は彰利が犠牲になった。 何故って、アロハパンツを試着した際についうっかり“美しい……”と、 妙なポージングとともに漏らしてしまったのだ。 結果、第一に殴った俺を含めた大勢にボッコボコにされる破目に。 みんな水着を選ぶ気はあるのかとツッコミたいが、それでも楽しいから無視した。 彰利 「ギャアちょっと待ってぇえ!!美しいって言葉すらダメなのですか!?     だったら撤回!無駄口禁止を撤回するからやめてぇええ!!!」 佐古田「うるせーッス!それじゃあアチキの気が済ま《バゴシャア!!》あいたーッス!」 浩介 「ふはははは!喋ったな愚か者め《バゴシャア!》ラブリィイーーーーッ!!!」 浩之 「ふはははは!それはこちらのセリフだブラザ《バゴシャア!》ラブリィイッ!!     お、おのれ同志!横から攻撃とは卑怯な!」 凍弥 「喋ったお前が悪───あ、やば《ドボォッ!》げほぉっ!!」 彰利 「フヒャホフヒャホヒャウヒャヒャヒャヒャヒャ!!!     隙ありだ小僧ォーー《ドボォッ!!》ブゥッホォッ!!」 悠介 「隙ありなのはお前の───うわしまった!!《ドゴォッ!》ぶはぁっ!!」 藍田 「殺ったぁーーーーっ!!《バゴシャアッ!!》ゲフォーーーリ!!」 丘野 「ママーーーッ!!《ボゴシャア!!》ガフォーーーリ!!」 蒲田 「イクちゃーーーん!!《ベゴシャア!!》ヴフォーーーリ!!」 下田 「フフフ《ブゴルシャア!!》ヘンリーーーッ!!」 ……やがてその場は乱闘の場となった。 誰もが敵で誰もが味方というヘンテコ異常空間の中で、 俺達は店員への迷惑も考えずに暴れまわり─── ポリス「警察だ!動くなっ!!」 総員 『ゲェエエーーーーーーーッ!!!!』 警察に通報された。 中井出「やべぇサツだ!!総員、ただちに逃走せよ!!ここは俺が食い止めて───」 総員 『とんずらぁああーーーーーーっ!!!!』 中井出「速ェエエーーーーーーッ!!!ってちょっと待て!     少しは躊躇することくらい───あっ!いやっ!違うんです!     食い止めるって言ったのは冗談で───え!?俺が首謀者!?ち、違うよ!?     僕そんなのじゃないよ!?なんでそんなことになってんの違うよ全然違う!!     ちょっ、待って!無言で手錠かけないで!話は署で聞くって───だから違う!     ま、待って!待ってぇええーーーっ!!     誰でもいいからこのポリスさんたちが納得出来る説明を───     いやちょっ……なに人が不利になること言ってんの殊戸瀬!     なんで俺前科98犯の超極悪人になってるの!?     そんな大袈裟な数を誰が信じるって───え?こ、この悪党め?違う!     なにあんな言葉に騙されてんの!?98犯なんて普通に考えても無理でしょ!?     大体それだけ犯行繰り返せば顔ぐらい知られてて当然でしょ!?     ───違うよ!整形なんてしてないよ!!天然でこういう顔してるんだよ!     なんでみんな人の話を───覆面だって被ってないよ!ちょっと待って貴様ら!     なんか意地でも俺のこと犯人にしようとしてない!?     いいからまず人の話を落ち着いて聞こうよ!!離せ!まず離せったらこのっ!     ───え!?公務執行妨害!?ち、違うよ!?たまたま手がぶつかっただけで!     え?え?な、なんで警棒と銃構えて近寄ってくるの!?じょ、冗談だよね!?     わ、わわ悪い冗談はよそうよ!や、やめヴァアアーーーーーーーッ!!!!」 俺達は中井出の絶叫を耳に残しながら逃走したのだった。 一応なんだかんだで金勘定は済ませておいたから安心だ。 安らかに眠れ、我らが提督……。 ───……。 ……。 またまたややあって…… 中井出「おめぇら鬼だよ……」 ボロボロになった中井出が俺達に追いついた。 閏璃 「大丈夫だ!俺達は全然まったく無事だ!」 中井出「ワタシイマトテモアナタヲコロシタイネー」 モシャアアアアと中井出から鬱オーラが放たれるのを俺は確かに見た。 悠介 「よく平気だったな」 中井出「いやあの……キミらが手伝ってくれればもっと平気でいられたと思うんだけど」 彰利 「サー!提督殿ならば乗り切れると信じていたから見捨てました!!」 中井出「見捨てた時点で信じてねぇだろうがコノヤロー!!」 彰利 「え?あ、ギャア!つい本音が!!」 閏璃 「隠していた本音……ポロリとこぼれる本音……。     それを聞いた提督は、ついホロリと涙を」 中井出「流さないよ!!     見捨てられて喜ぶヤツが居るなら見せてみろコノヤロー!!」 閏璃 「ちょっと待て、今手鏡を」 中井出「出さなくていいし喜ばないよ!!」 彰利 「ありゃ?隠していた本音が聞けると大体感動物語に発展しなかったっけ」 悠介 「それは別の隠し事での話だろ……誕生日だとかなにかの祝いだとか」 彰利 「なるほど。じゃあ中井出の誕生日には、     中井出の部屋を盗んできたランジェリーでいっぱいにしてやろう」 中井出「どうしてそうなるんだよこの野郎!!」 彰利 「どうしてって」 総員 『それは提督殿がエロマニアだからであります!!』 中井出「てめぇらぁあああーーーーーーーーっ!!!!」 あ、キレた。 彰利 「すまん提督……貴様がそんなにエロマニアから脱出したかったとは……」 中井出「お、おおっ……?彰利一等兵……?いや、解ってくれれば───」 彰利 「よし!だったら誕生日にはランジェリーが宅配されるように手配するよ!」 中井出「なにが“よし!”じゃああーーーーーっ!!!     全力でいらん!つーかお前祝わなくていい!!」 彰利 「なんと!人の厚意を───」 中井出「迷惑与えてる時点で厚意じゃねぇよそれ!!」 彰利 「大丈夫!なにを隠そう俺は誕生日祝いの達人だ!!」 中井出「うーーーっひゃああーーーーーーーっ!!!ウソくせぇえーーーーーーっ!!!」 結局はこうなるわけだ。 まあ原中が居て静かになるとは思ってないが、もう無言状態は終わっていた。 それはそれでありがたいことだが、静かな時間も捨てがたかったことは本音である。 見れば、穂岸もそんな顔をしていた。 ヤケに疲れた顔だった。 ───……。 そんなこんなで騒ぎに騒いで到着したのがここである。 中井出「おお〜〜〜っ!なかなか巨大な建築物ではないか〜〜〜っ!」 藍田 「ジョワジョワジョワ、これは遊び甲斐がありそうだぜ〜〜〜っ!!」 丘野 「ヌワッヌワッヌワッ、少しは楽しめそうだ〜〜〜っ!」 藍田 「少しは慎めサンダージョワジョワ」 丘野 「自分だって……」 猛者どもが我先に と騒ぎ出した。 もちろん他のみんなもだが─── 遥一郎「……俺は荷物番でもしてるかな」 穂岸だけは、この広い建物を見ても心ウキウキとは行かなかったらしい。 ……まあ、気持ちは解る。 中井出「では各自!着替えを終えたらもう形振り構わず遊ぶこと!     イェア・ゲッドラァック!ライク・ファイクミー!!」 ザザッ!! 総員 『Sir(サー)!!YesSir(イェッサー)!!』 中井出「その口から垂れるウンウンの前と後にサーをつけろぉっ!!」 総員 『Sir(サー)!!YesSir(イェッサー)!!』 中井出「うっしゃあ塩素入りの水が我らを待ってるぜーーーっ!!!」 彰利 「地味に嫌な表現だねそれ!!」 ゼノ 「ふむ……プールとは体を鍛える一環の意味か?」 彰利 「ってなんでキミが居んの!?」 ゼノ 「我は呼ばれたから来てやっただけだが?」 彰利 「呼んだ、って……悠介?」 悠介 「違うが」 豆村 「まさか……」 彰利 「貴様かぁーーーーーっ!!!」 豆村 「え?あ、いや俺じゃな《ボゴシャア!》ヤブゥアァアーーーーッ!!!」 そうして───今日という休憩時間は、豆が空を飛ぶことで始まったのだった。 もちろんただで終わるなんて思ってはいないんだが。 Next Menu back