───弾けて騒げ!/恋と落下と悲鳴がいっぱい───
【ケース357:霧波川柾樹/愛とは時に地獄と書く】 八月の終盤、やがて涼しくなってゆくだろう気候を前にしながら、この暑さ故だろう。 案外人はいっぱい居て、暑い日差しの下のプールは賑わっていた。 彰利 「夏だ!」 悠介 「プールだ!」 そんな賑わいの中を裂くように、あの年齢ではありえないくらいのうっすらと、 しかし確かについた筋肉をもった二人が駆けてゆく。 一応走りには加減が入っているみたいだけど、それでも常人にしてみれば十分早い。 そんな彼らはプールサイドに辿り着くと相手の首根っこを掴むようにして 彰利&悠介『ソォオオゥレェエエエーーーーィィィイッ!!!!』 ブルドッキングヘッドロックのような体勢で、 二人してざっぱーーーんとプールの中に飛び込んだ。 彰利 「ウヒョオ気持ちええーーーっ!!でも塩素臭いねこりゃ」 悠介 「うむ。俺の中の精霊や獣たちも猛っておるわ」 彰利 「ルナっちは?どうしたん?」 悠介 「ああ、ルナなら」 ルナ 「ゆーすけーーーっ!!」 悠介 「《がばしぃっ!》おぐわがごぶぶぼばぁあーーーっ!!!」 彰利 「……一応分離したわけね」 遠目で見ても解るくらいの賑わいがそこにある。 ルナさんにプールサイドから飛びつかれた悠介さんはルナさんとともに沈み、 そんな二人を見ていた彰利さんは自分の妻である人達に捕まり、 ギャアギャアと叫んでいた。 で……俺はといえば。 柾樹 「プールなんてどれくらいぶりだろ……」 刹那 「俺達の場合、プールなんぞに来るよりも適当に遊ぶ方を選んでたからな」 豆村 「だがしかし!来たからには騒がねばウソ!!     そしてプールといえば男子が喜ぶ女体の半裸のオンパレードプレイス!     ああ!ワイは……ワイはもう!」 柾樹 「豆が悶えてるんだけど」 刹那 「今から変態という名のもやしが発芽するんだ。ほっとこう」 豆村 「名前の文句は親に言え!俺はもう気にしないことにした!     人間、ふっきればいろいろなものが見えると思うんだ!     だから俺は女体を拝む!女に目がいってしまうのは仕方の無いことだと思わん?」 柾樹 「そうか?俺は別に」 刹那 「俺も好きなヤツ以外には興味無いし」 豆村 「ッカァーーーッ!これだからええ子ちゃんたちは!貴様らそれでも男か!?」 柾樹 「生物学上では間違い無く」 刹那 「聞くまでもないだろうに。だからお前は豆なんだ」 豆村 「苗字のことはほっとけ!いいか!やはりここは俺達の友情パワーを確かめる時!     だから俺と一緒に魅惑いっぱいのパラダイスへ───」 紗弥香「パラダイスって?」 豆村 「うおわひゃおぉぇえぁあああああっ!!!!」 ビーンが飛んだ。 といっても物凄く驚いたって意味で、 飛び跳ねてから俺達の方に駆けると振り向いた、な感じ。 豆村 「さ、さささ紗弥香さんっ……」 紗弥香「お待たせ……って、お父さんたちは?」 柾樹 「我先にと飛び込み台に全力疾走していったけど」 紗弥香「う、うーん……そうなんだ……」 悠季美「元気ですね、相変わらず……」 深冬 「〜〜〜……《かああ……》」 言うまでもないんだが、三人とも水着だった。 そんな三人を見て、こちらの二人の挙動は随分と変わった。 ……二人にしてみれば、紗弥香さんは眼中にはないみたいだけど。 刹那 (神様っ……俺、今日まで生きてきてよかった……!) 豆村 (ぐっ……!深冬の水着姿が見れるなんてっ……!) 柾樹 「………」 二人の心の声がありありと聞こえるようだった。 俺は……目のやりどころに困るってくらいで、照れにも似た感情以外は沸いてこない。 いや……これだけでも十分なんだけどさ。 以前はそんなことさえなかったんだから。 紗弥香「あ、新鮮な反応」 悠季美「へえ。柾樹さんでも照れるみたいなことあるんですね」 柾樹 「あ、当たり前だろ。ほら、立ってるのもなんだし、行こう」 ぶっきらぼうにそう言うと、 俺は───無難に紗弥香さんの手を引いて、プールへと歩き出した。 悠季美「………」 その時、なにやら背中に殺気のようなものを突きつけられた気がした。 だってしょうがないじゃないか。 悠季美の手を引けば刹那が凝視してくるだろうし、 深冬ちゃんの手を引けばビーンが睨んでくる。 かといって誰も引かなきゃきっと動こうとしなかっただろうし。 その点、紗弥香さんなら─── 紗弥香「うー、前が見づらい……」 柾樹 「気を付けて」 今さら俺に手を引かれたくらいじゃどーのこーのってのは無いわけだ。 はぁ……俺ってヘタレ。 こんな無難一辺倒じゃあ恋心ってやつも発達しないだろうに。 柾樹 「紗弥香さん、目が悪いのに泳ごうとする精神はお見事だけどさ。     そんな無理して泳ごうとしなくてもよかったんじゃない?」 紗弥香「うー、随分な言い草だね柾樹くん。     わたしだって荷物番してたほうがよかったかもって思ってるけど、     それってなんだか保護者みたいでいやだと思わない?」 柾樹 「……なるほど」 じゃあアレに見える穂岸さんは保護者なのか? 本(小説)を読んでいるところを観咲さんに腕を引っ張られ、 ガヤガヤと文句を連ねている彼が。 紗弥香「それはね、柾樹くんたち学生だけの保護者扱いだったらまだ頷いてたけど、     流石にお父さんや、そのお友達さんまで燥いてる時に保護者扱いは嫌だよ」 なるほど確かに。 柾樹 「そうかも。っと、じゃあ紗弥香さん、ここから段差あるから」 紗弥香「う、うん」 目を細めて眉に力を入れて、必死に段差を探す紗弥香さん。 普段眼鏡をつけているだけあって、この人は随分な目の悪さを持つ。 だからって急にプールに突き飛ばすような意地悪はしない。 目が悪い人にとって、それはあんまりにもひどいだろう。 ……しかし階段付きの普通のプールなんて、あまり考えられたもんじゃないが。 紗弥香「あ、冷たっ……」 柾樹 「残念だけどここは温水プールじゃないんだよ紗弥香さん」 紗弥香「……解ってるよ、そんなこと」 少しムッとした風情で、ゆっくりと段差からプールに入ってゆく紗弥香さん。 もちろん手を引いていた俺はそれよりも先にプールに入ったわけだけど、 言うほどプールは冷たくない。 むしろこの激しい陽光か、それとも経営者の仕業か、 気持ちがいい程度の冷たさになっていた。 柾樹 「ところで紗弥香さんって……」 紗弥香「うー。どうせ目が悪いから泳げないよ……」 柾樹 「べつに責めてるわけじゃないって。じゃあ練習してみよっか」 紗弥香「うー……」 柾樹 「うーうー唸ってないでさ。大丈夫、手はちゃんと繋いでおくから」 紗弥香「……離したらひどいよ?」 柾樹 「はいはい。肝に銘じておきます」 こうして俺は紗弥香さんの泳ぎの練習を開始。 顔に水をつけるところから始めなければいけないほどに水嫌いだった紗弥香さんに、 泳ぎとはなんぞやを説いて教えるのはそれはもう大変な作業だったことを追記したい。 というよりも……今日中に覚えられるってことはないだろう。 気長にいこう、気長に。 なんて思っていると、突然背中に何かがばしゃあと飛びつくような感触。 それが……なんというか、重いというよりは柔らかい。 悠季美「……紗弥香さん、泳げないんですか?」 柾樹 「あ、あ、ああ……うん」 悠季美だった。 何故か顔を真っ赤にして口をヘの字にした悠季美が、 俺の背中から肩越しに紗弥香さんを覗いていた。 柾樹 「……あのさ。どうして背中に張り付いてんのさ」 悠季美「べ、べつに深い意味はないですよ?」 柾樹 「だったら離れてくれよ、これじゃあ練習出来ないだろ」 悠季美「───」 柾樹 「《ぎゅぎゅうっ!!》うわわわっ!ちょ、なんでさらに抱きついてくるんだよ!」 悠季美「知りませんっ!この鈍感魔人!!」 柾樹 「へ、へぇっ!?鈍感ってなにがさ!───うぉわぁああああああっ!!?」 ハッと気づけば、広い長方形型のプールの隅。 そこで顔の上部だけを水面から覗かせて、おどろおどろしい顔で俺を睨む刹那が居た。 さらには…… 深冬 「あ、あのっ、わ、わー……ううっ……わ、わたしにも泳ぎを教えてくださいっ」 いつの間にか俺の傍に来ていた深冬ちゃんがそう言うと、 半顔の羅刹の隣からトプン、ともう一つ修羅が顔を半分覗かせた。 深冬ちゃんの肩越しに見えるその姿がまた恐ろしい。 柾樹 「え、えーと……お、俺は紗弥香さんに教えてるわけだし、     深冬ちゃんはビーンと……」 そう言うと、豆修羅の顔がパアアと明るくなる。 柾樹 「ゆ、悠季美もさ、せっかくのプールなんだし、     紗弥香さんに教えてる俺と一緒に至ってつまんないだろ?だからさ……」 悠季美「嫌です」 即答だった。 そして羅刹の顔は余計に凶々しいものへと変化してゆくのだった。 深冬 「だ、大丈夫ですっ、わたし待ちますからっ」 ……で。 豆修羅の顔も、 最初の頃よりもいっそ逃げ出したくなるくらいに恐ろしいものへと変化するのだった。 俺か?俺が悪いのか? 柾樹 「じゃ、じゃあ刹那とビーンも呼んでみんなで───」 三人 『───《ギロリ》』 柾樹 「あー……さ、紗弥香さん?次はバタ足の練習でもしようか……。     そ、そう、顔を沈めて、体浮かせて……はは……」 ああ、神様……俺はどうしたらいいんでしょうか……。 神  『三人とも頂いちまえ』 そんな神の言葉は却下します。 大体好きって言われたわけでもないのに、そんな自惚れみたいなことが出来るもんか。 俺はまだ恋心っていうのがなんなのか解らないから俺から告白するのはウソになる。 だったらこの時点で俺に出来ることなんて─── 柾樹 「あるもんかぁああーーーーーっ!!!」 ざばばばばばっ!!───《柾樹は逃げ出した!!》 刹那 「ヒョハァーーーッ!!」 豆村 「ニュフーーーーッ!!」 ゾバババババババガシィッ!!《しかし回り込まれて捕まった!!》 柾樹 「うわわちょっと待った!どうして捕まえるんだよっ!」 刹那 「やかましゃぁああーーーーーっ!!!     おのれおのれ羨ましい状況に陥りやがってぇええっ!!」 豆村 「キイイイイイイ!!くそっ!このっ!反省しろ反省!!」 柾樹 「お前ら言ってることとやってることが滅茶苦茶だぁーーーっ!!     人に恋心を知れって言ったり羨ましいって言ったり、なんなんだよっ!」 悠季美「あの。ちょっといいですか?」 刹那 「えっ!?俺と一緒に泳いでくれるの!?」 悠季美「耳が腐ってるんですかそんなこと言ってません黙っててください」 刹那 「ハイ……すんませんっした……」 豆村 「いや……なにもそこまで落ち込まんでも……」 柾樹 「どうかしたのか?」 悠季美「……紗弥香さん、沈んでますけど」 男衆 『オワァアアーーーーーーーッ!!!!』 自分の危機に、ついうっかりしてた! 紗弥香さんをバタ足状態で離して逃走してしまった! ていうか逆にそのまま鎮めるほうが凄いと思うのは気の所為だろうか!? 気の所為じゃないと思う方はこちらの宛先までご連絡を!───って落ち着け俺!! ───……。 ……。 慌てて紗弥香さんをプールサイドに上げた俺は、 ぐったりとして動かない姿にさすがに身震いした。 柾樹 (ああくそっ……なにやってるんだ俺はっ……!) 言い訳よりも自分の愚かさが頭にくる。 信じて手を掴んでくれてたんだろうに、急に離されて驚いたんだろう。 どうやら水を大量に飲んでしまっているらしく、本当に動かない。 刹那 「え、ええとこういう時ってどうすんだっけ!?」 豆村 「て、ててて店長ォーーーッ!!店長を呼べェーーーーッ!!」 悠季美「まずは落ち着いてください!」 刹那 「そ、そそそうだそうだ!落ち着くんだ!     落ち着く時はー……手に人と書いてぇ〜……一気に食う!!     《ゴリィッ!!》いってぇええーーーーーーっ!!!」 豆村 「うおうっ!?刹那が自分の手を噛んで絶叫した!頭は大丈夫か友よ!」 刹那 「だ、大丈夫だ!今の激痛でかなり落ち着いた!よし柾樹よ!     こんな時は心臓マッサージ&人工呼吸!!それっきゃねぇ!!」 柾樹 「解った!!」 悠季美「えぇっ!?ちょ、待ってください!人工呼吸って───!」 迷わず行動した。 もはや一刻の猶予もないと断じて、気道確保したのちに鼻を摘み、 唇をしっかり合わせて息を吹き込んだ。 刹那&豆村『躊躇することなくやったぁあーーーーっ!!!』 なんだか周りがざわざわとうるさい。 でも続ける。 空気を十分に送ったら、次は心臓マッサージ。 胸に触れることになるが、そんなことは全然気にならなかった。 刹那&豆村『ア、アワワ……!!』 マッサージが終わると再び人工呼吸。 それを何度か繰り返し、もう一度、と唇を合わせた時─── コプンッ、と口の中に水が溢れた。 紗弥香「けほっ!こほっ!」 立て続けに二度三度と吐かれる水。 それが呼吸が戻った証だと確信して離れると、 紗弥香さんは苦しそうに涙を流して咽るとようやく目を開けて、自分の状況の確認をした。 紗弥香「あ……れ……?わたし……」 柾樹 「ヨカッタ……大丈夫?紗弥香サン……」 紗弥香「柾樹くん……───!そうだ!わたし───……ねぇ。     どうして柾樹くん、悠季美ちゃんにスリーパーされてるの?」 柾樹 「それが全然見当つかなくて……」 悠季美(もっと躊躇するなりなにかあるでしょうっ……!     それなのに迷うことなくキスして、む、む、胸までぇええっ……!!) 柾樹 (……あのさ、それでどうして怒ってるのか知らないけど。     今のはキスなんかじゃないし、いやらしい気持ちなんかも持ってなかったぞ) 悠季美(じゃあわたしが溺れたら同じようにしてくれるんですか……) 柾樹 (当たり前だろ。そんなの、見捨てておけない) 悠季美(〜〜っ……嬉しいですけどこの見境無しぃいいいいっ!!!) 柾樹 (《ギゥウウウ……!!》あがぁあああーーーーーーっ!!!) 自業自得とはいえ、溺れさせたなら自分に責任がある。 だからああしたし、 そもそも見知らぬ人に人工呼吸されるのは嫌だろうと思ったからやったんだけど…… それは失敗だったんだろうか。 刹那 「紗弥香さん、俺の指、何本に見えます?」 紗弥香「5億」 刹那 「怖ッ!!」 豆村 「意識はハッキリしてるか……はぁ、一安心一安心……」 紗弥香「わたし、溺れたんだよね……」 深冬 「はい……」 紗弥香「……え?あれ?っていうことは……」 刹那 「ククク、ええ、紗弥香さんのファーストチッスは儚く消えました」 豆村 「おまけに胸もモ〜ミモミ」 刹那 「お前最低な」 豆村 「俺だけ悪いのかよ!!」 紗弥香「や、やだっ……!誰!?やったの誰なの!?」 薄れゆく景色の中、紗弥香さんが胸を両手で隠すようにして赤くなった。 あの……悠季美さん?そろそろヘヴンズドアーを開いてしまいそうなんですが…… 刹那&豆村『そこで青白く変色していってる優男』 紗弥香  「───っ!……え?柾樹くん?」 キッと振り向いた先には、意識が朦朧としている俺。 そんな俺は紗弥香さんの目にはどう映ったんでしょうね……。 紗弥香  「な、なんだ……よかった……」 刹那&豆村『いいのっ!?』 豆村   「だってキッスでしかも胸モミモミって!」 刹那   「お前最悪な」 豆村   「うっせ!他にどう表現しろってんだよ!」 刹那   「普通に胸に触れたとかでいいだろ。揉んではいないわけだし」 豆村   「いやそれは、あの幸せ者に紗弥香さんを嗾けようとわざとだな」 刹那   「この最低最悪な変態ヤロウは置いといてと。紗弥香さん、ほんとにいいの?       柾樹のこと、べつに好きなわけじゃないんでしょ?」 紗弥香  「うん……だったんだけど。なんだろ……全然嫌じゃない……かも。       それどころか……あれ?わ、わたし……今嬉しい……?」 豆村   「ウワー、顔真っ赤で、しかも嬉しさが滲み出てて緩みまくってる」 刹那   「あのー、紗弥香さん?       もしかして紗弥香さんってきちんとした面では由未絵さんに似てるけど、       恋愛面に関しては“伝説の鈍チン”の凍弥さんの血を受け継いでる?」 紗弥香  「……そんなの調べようがないよ。でも───」 ウフフフフ……蝶々だー……蝶々が飛んでるよー……。 一緒に髪の毛の薄い町長までもが飛んでるー……ウワーイ、ウフフフフ……。 ……あ、あれ?蝶々と町長の間を裂くようにして紗弥香さんの顔が…… どんどん近くに……くちゅっ。 近づいて、俺の口に自分の口を押し付けた。 ……あれ?もしかして俺、溺れた? それとも呼吸停止で大変なことに? だったら助かるまでは無駄に動かないほうが……いいのか悪いのか解らない…… 悠季美「うひゃあっ!?さ、さささ紗弥香さんっ!?     ちょっといったいなにやってるんですかっ!!」 観衆 『おぉーーーーっ!!』 深冬 「あ、あわっ……あうぅっ……!!」 刹那 「な、なにぃーーーーーーっ!!!こ、今度は自ら接吻したぁーーーーっ!!!」 豆村 「人工呼吸で目覚める愛って初めて見たぁーーーーーーっ!!!!」 周りがうるさい。 俺は今そんなにも大変な状況なんだろうか。 ……あれ?口の中でなにか動いてる。 なんだろこれ……溺れたんなら水かな……頭が働かない。 それどころか余計に呼吸が詰まって、息が…… 紗弥香「ん……ん、ちゅっ……」 刹那 「ゲゲエ!しかもディープなキスだ!いやあああ助けておかあさーーーん!!!」 豆村 「友人のこんなアハーーンな状況見たくなかったぁーーーーーっ!!!!     助けてぇええおかあさぁーーーーーーん!!!」 悠季美「な、なななななな……!!」 深冬 「あ、う、あ……!!《しゅかぁあああっ……!!》」 口の中にあった何かが出ていった。 すると気道が躍動し、呼吸が戻ると、それはもう俺は咽返った。 そして思い出す。 俺は悠季美にスリーパーされて、危うく天国の扉を開けようとしてたんだ。 けどその悠季美を見ても、あわあわと震えるだけで、 なにかショックなことが起きた拍子に俺を離したんだろうと推測できた。 で……そのショックなことっていったいなんだったんだろう。 悠季美「───ッ!!柾樹さんっ!」 柾樹 「げほっ……!な、なに《んちゅうっ!》ふぐぅっ!?」 刹那 「ぎゃああああーーーーーーーっ!!!!」 なにが起こったのか理解できなかった。 ただ突然に悠季美に顔を掴まれ、 まだ完全に復活してない意識の中で真っ赤になった悠季美の顔が近づいてきて…… やがて唇に暖かい感触が。 しかも───うわっ!? 柾樹 「むっ!?むぐぅうぉおっ!!?」 しかも舌!舌入れてきてる! なんだこの状況!何が起きてるんだ!? 刹那!血涙流しながら頭抱えて絶叫してないで教えてくれ! ていうかむしろ助けてほしい!! なんだか体がシビレて上手く動かせない! ええいいっそ舌を噛んでくれようか!───無理!そんなの出来っこない! 男1 「おいおいどうしたんだよこの人だかり」 男2 「それがよ、一人の男をめぐって、三人の女たちが……!」 なんだか周りの誤解もヒートアップしてきているようだ。 俺、もう泣いていいだろうか。 必死に手を動かしてみても力が入らず離すことが出来ない。 代わりに目で助けを訴えても、ビーンは合掌するだけ。 俺はなんだか間近の幼馴染の顔と甘い香りにくらくらしてきて─── と、そんな時になってようやく悠季美は離してくれた。 するとキッと紗弥香さんを睨むが、これでようやく逃げられそうだ。 チャンスはきっと一度きり。 こんなところに居たらどうかしてしまう。 だから俺は気力を振り絞って立ち上がった。 立ち上がって───立ち眩みで再びダウン。 コンクリートで固められた地面に激突するのだけは防いだが、 中腰になっても頭が異常なくらいに重く、立ってられない。 仕方なく紗弥香さんと悠季美が睨み合っている間に休もうと決めて、 その場で仰向けに寝転がった。 柾樹 (……世界が揺れてる……) ぐわんぐわんと揺れている。 耳の奥では妙な音が鳴りっぱなしで、もうなにがなんだか解らない。 そんな俺の肩を屈み込んだビーンがペチペチと叩き、 “おめぇ……苦労するぜ”という視線を向けてきた。 ───それだけならどんなによかったことか。 そんなビーンと、先に見える蒼空の景色を覆うようにして影が舞い降りたのだ。 ソレは影ごしにでも解るくらいな真っ赤な顔で、 きゅっと目を閉じた───え?深冬ちゃ───ちゅっ。 声  「はぐうぉかごわかぁあーーーーーーっ!!!!?」 塞がれた口と視界。 見える世界が深冬ちゃんでいっぱいになると、 かなり近いところから豆の絶叫が響き渡った。 そして溢れかえる殺気、殺気、殺気。 男3 「ヤロウ……あんな綺麗でカワイイ子たちにキスしてもらって……!」 男4 「モテ男くんか……!?モテ男くんなのかアノヤロウ……!!」 断じて言いたいけど、俺は動けやしない。 つまり俺が望んでやったわけでも、されたわけでもないのだ。 そこのところをよく踏まえてくれると嬉しいな〜、とか……ううっ……勘弁してくれ……。 って! 柾樹 「むぐっ!?ふぐぐっ!?」 心底驚愕した! 口になにか違和感を感じたと思ったら、これは……!  ブチリ。 あ、ヤバい。 彼の糸が切れた。 で、でも待ってくれ!あの深冬ちゃんが俺にキスを! しかもおずおずとだけど、舌を入れてくるなんて誰が予想出来る! ていうか俺動けないんだってば!ちょっ、待って!! 殺気が!殺気が確かに近づいてきてる! 深冬 「ん……ふ、はっ……」 そんな折、ようやく深冬ちゃんが離れてくれた。 俺はここしかないと体に力を込め───! 深冬 「ん……」 ───またキスされた。 そうなると突き飛ばすわけにもいかず、込めた力は殺すしかなかったわけで…… しかしそれとは真逆にさらに増加する殺気。 ああ……死ぬ……死ぬな……こりゃ……。 【ケース358:閏璃凍弥/蒼い空、白い……なんだろ】 声  「ぎゃああああああーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」 閏璃 「ん……んお?」 何処かで誰かの断末魔を聞いた気がした。 なにやら遠くの方が騒がしいが、まあ……無視しよう。 どうせここに来た俺達の中の誰かが騒いでいるんだろう。 柿崎 「今の、柾樹の声じゃないか?」 鷹志 「まず間違いないと思う」 来流美「………」 閏璃 「どうしたコエンザイマー」 来流美「うるさいわね、妙なあだ名をつけるんじゃないの。     ただあんな風に叫べるくらいにまでなってくれて嬉しいって思ってるのよ」 閏璃 「おお、なるほどな」 由未絵「よかったね、来流美ちゃん」 真由美「以前は叫ぶにしても、あんな風に心の底からのものじゃなかった気がするもんね」 ひとまずはなにより、ということなのか。 どちらにしたってこれからどんどんとあいつも変わっていけるだろう。 御手洗「彼はそんなに感情が乏しかったのかい?」 閏璃 「もちろんだ友よ。それはもう“なんだこのもやしっ子は”と、     擦れ違う人々に必ず言われていたほどの男だった」 来流美「ウソだから気にしないでいいわ」 御手洗「はは、だと思った。そんな子が居るなら見てみたいとは思ったけど」 鷹志 「柾樹の常時もやしっ子姿か……」 閏璃 「うぅう〜〜ん見てみたぁあ〜〜〜い!!」 来流美「ネジが外れてるだけだから他人のフリしてていいわ」 閏璃 「さらりとひどいよな、お前」 柿崎 「ネジが外れてるのは事実だろ」 フォル『ええ、稔さまの言うとおりですわ』 閏璃 「なぁパーシモン」 柿崎 「毒はもういいっての!!     だ、だいたいお前らだって結婚した時は甘酸っぱい新婚生活送ってたんだろ!?     俺の時だって笑って見逃せコノヤロー!!」 閏璃 「いやしかしなパーシモン。こうまで目の前イチャイチャされるとな……」 来流美「そう言いつつアンタさっきから由未絵を後ろから抱き締めたままじゃないの」 閏璃 「馬鹿お前、これが俺達のデフォルトスタイルなんだ」 来流美「どういう理屈よ」 そんなものは知らん。 だがこうしていると酷く落ち着くのも事実だ。 由未絵なんて見ろ、“我幸せに至り”って顔で、頭を撫でられるがままになっている。 俺たちはこうしているだけで幸せなんだ。 ……というメッセージを、瞳に込めて来流美に送ってみた。 来流美「……?なにガンくれてんのよ」 全く届いちゃいなかった。 しかも喧嘩売ってるように見えたらしい。 そりゃちょっと剥き歯になって眉間にシワ寄せてメッセージ送ってたが、 それでもこうまで見事に誤解するとは……いや、誤解されて当然か。 閏璃 「しかしな来流美。鷹志を見ろ。     俺達なんて鷹志と郭鷺のラブラブっぷりの前ではじゃれ合いにすぎんぞ」 来流美「え?って……うーわー……」 くるりと振り返ると、大衆の目の前で堂々と接吻をする鷹志。 しかしまあ視線に気が付くとすぐに離れてそっぽ向くあたり、まだまだ初々しい。 ……というかこれだけ長い時間を連れ添ってもまだ初々しいのはどうなんだろう。 こればっかりは俺も人のこと言えたもんじゃないが。 閏璃 「しかしなんとも時代は進んだもんだな。     俺達が学生の頃なんて、カップルなんて稀少種族だったのに」 周りを見渡すと、家族2割にカップル8割といった感じだ。 もちろん友人同士ってのもあるんだろうが、大体はそんな風に見える。 来流美「そりゃアンタの目が節穴だっただけでしょ。     結構居たわよ?カップルとかって」 閏璃 「なにぃ、そうなのか?……それでどうして」 来流美「わたしに恋人が出来なかったんだって話なら殴るわよ」 閏璃 「暴力はいかん」 鷹志 「まあまあ、でも確かにカップルなら居たぞ?結構な量だと思う」 閏璃 「なにぃ、あんな真冬にプールで騒ぐカップルが居たというのか」 鷹志 「自分が支左見谷と恋仲になったのが冬だからって冬季限定で考えるなよ!!」 閏璃 「俺は最初からそういうつもりで言ってたんだが」 柿崎 「はぁ……なんつーか……凍弥だなぁ」 妙な納得のされ方をされてしまった。 まあ、なんだ、気にしない方向でいこう。 それはつまり俺らしいってことなんだろうし。 閏璃 「よし、じゃあそろそろ移動を開始するか」 由未絵「何処に行くの?」 閏璃 「飛び込み台!───あ」 ビッシィ!と指差した飛び込み台から人影が落ちていった。 何故かキン肉バスターの格好で。 まず間違い無く原中の猛者どもだろう。 結構な数の人垣が飛び込み台の上に立っていて、そこからボロボロと落ちてゆく。 遠目に見るとそんな風にしか見えやしなかった。 来流美「あんなに矢継ぎ早に飛び降りたら、     下の方が大変なことになってるんじゃないの……?」 鷹志 「いや……なんつーかもう原中のことで、     いちいち大変がどうとか言っても無意味な気さえしてきた」 声  「飛び込み台から降りた一人が強風にあおられて地面に激突したぞぉーーーっ!!」 全員 『大変だぁあーーーーーーーっ!!!!』 無意味どころじゃなかった。 鷹志 「ど、どうする!?行くか!?」 閏璃 「い、いや……様子を見よう」 柿崎 「様子ったって……」 声  「ヒィイ!なんか“特撮じゃよー!”とか叫んで     平然と起き上がったぞぉーーーーっ!!」 …………。 鷹志 「やっぱりもう大変とかそういう次元じゃないんだよあいつら……」 閏璃 「そうだな……」 今の俺達なら確かに同じようなことが出来るんだろうが、 わざわざ地面に激突したいとは思わないぞ。 閏璃 「……泳ぐか、普通に」 鷹志 「うお、信じられん。凍弥が普通に泳ぐなどと……」 閏璃 「失礼だなこの。     俺はただ普段通りに柿崎を一番下にした多段トーテムポール泳法をしようとだな」 柿崎 「どんな泳法だよ!!」 閏璃 「俺達全員が肩車をし合って、一番下のパーシモンが根性で泳ぐ泳法だが」 柿崎 「物理的に不可能だろそれ!!」 閏璃 「大丈夫!お前が溺れたら搾乳機で水を吸い出してやるから!」 柿崎 「よ、よりにもよって搾乳機!!おのれこのゴクツブシがぁーーーっ!!」 閏璃 「うおおっ!?何故かゴクツブシ扱い!」 しかもパーシモンが襲い掛かってきた!! これは相手をしなければなるまい! 柿崎 「ウオォオオオオオオッ!!」 閏璃 「ディエエーーーーーーーッ!!!」 柿崎 「ズオリャァアーーーーッ!!!!」 閏璃 「ディエエーーーーーーーッ!!!」 こうして俺達の投げ技バトルが始まった。 普通ならば出来ないような技も、水の中ならば安全にできるというもの。 俺とパーシモンはそれはもうぶつかり合い、 取っ組み合っては投げたり投げ返したり祭りを開催した。 閏璃 「ブレーンバスター!!」 柿崎 「なんの!月の輪蹴りィーーーッ!!」 閏璃 「甘い!支え崩し!」 柿崎 「《ズリャア!!》おわ《ドッパァアーーーンッ!!》ガボバァーーーッ!!」 ブレーンバスターを仕掛け、丁度俺とパーシモンの長身が縦に並んだ頃。 パーシモンは俺の両肩に手を付き、そこを重点に俺の顔面目掛けて膝蹴りをしようとした! だが俺は咄嗟に両肩に置かれた手をベシィと弾き、パーシモンを水中へと落とした! 来流美「ほんっとに……いつまで経っても子供なんだから……」 鷹志 「ふーむ。で、その子供の話なんだが」 来流美「うん?なに?」 鷹志 「霧波川はどう思う?宅の悠季美はあの事件以来、     なんだかんだで柾樹が気になってしょうがないみたいだが」 来流美「相模事件ね……柾樹は結局愛だ恋だなんてまるで解らないみたいよ」 鷹志 「む……そか。じゃあ深冬ちゃんとかはどうなんだ?」 真由美「豆村くんから聞いたけど、深冬ちゃんは柾樹くんのことが好きみたい」 鷹志 「うわっ、贅沢だなあいつ。二人に想われてるのか」 来流美「んー……わたしの見た限りじゃ、紗弥香も危ないのよね」 真由美「紗弥香ちゃん?……うん、確かにね。     お姉ちゃんぶってるだけみたいに見えるけど、     それはただ紗弥香ちゃんがそう思ってるだけなのかもしれないし」 来流美「そうそう。ああいうタイプは自分の気持ちに気づいてからが怖いわよ。     まず最初は多分、誰にも取られたくないみたいな感じで迫ると思うけど、     それから徐々に自分の気持ちに気づいていくタイプだとわたしは見た」 鷹志 「そうなのか。俺はちょっと女の気持ちには鈍いからな……」 来流美「そ?真由美の気持ちには物凄く敏感じゃない」 鷹志 「もちろんだ!何を隠そう俺は真由美の全てに対する達人だ!!」 来流美「……聞いてて恥ずかしいわねそれ」 様々な喧噪を耳にしつつ、 やがて俺がパーシモンをロングホーントレインの形に極めた時だった。 いざ来流美目掛けてタックルをしようと進み始めると、 刹那 「た、大変だぁーーーーっ!!」 どこからともなく刹那が飛び込んできた。 鷹志 「普通に登場出来ないのかお前は!」 刹那 「そそそそれどころじゃないんだぁーーーっ!!来流美さん!あなたに一言物申す!     息子にどんな教育しとんのじゃあーーーーーーっ!!!《バゴォ!》はごっ!」 来流美「とりあえず偉そうだからナックル」 ナイスナックル。 来流美「それで?うちの柾樹がどうしたって?」 刹那 「あ、あの……ハイ……じ、実は今大変なことになってまして……」 それから彼は重い口をまるで腹を空かせた猛禽類のようにニチャアアアと開け、 ゆっくりと語りだしたのだった。 由未絵「ふ、ふええぇえーーーーーっ!!?」 閏璃 「紗弥香が愛に目覚め、大衆の面前で柾樹にディープキスーーーッ!!?」 真由美「えぇーーーーっ!!?」 鷹志 「な、なにぃいーーーっ!!?悠季美が柾樹にディープキスーーーッ!!?」 ルナ 「へー。深冬がそんなことに」 悠介 「そうか」 総員 『テンション低ッ!!驚かないの!?』 悠介 「いやべつに……通りかかったら捕まっただけだし。     ていうかお前らな、大衆の面前でディープキスとか叫ぶのはどうかと思うぞ」 総員 『〜〜……!!《カァアアッ……!!》』 ルナ 「順調に育てば色恋も知ってくるでしょ?     そんなのいちいちわたしたちが口出しすることじゃないし」 こざっぱりとした性格の死神さんがそこに居た。 抱きつかれている晦はそれはもう烈火の如き灼熱顔だった。 平静を保っているつもりなんだろうが、どうみても真っ赤だ。 刹那 「あ、あれ?悠介さん、彰利さんは?」 悠介 「途中でゼノに捕まった。ゼノのヤツ、シュバルドラインも連れてきてたみたいで、     三人……いや、人と数えていいのかは判断に迷うが、     向うのプールで泳ぎの競争してるぞ」 刹那 「ちなみにシュバルドラインさんの水着は……」 悠介 「それぐらいならな。一応俺が創造した」 刹那 「………」 悠介 「ご苦労さまでしたって顔はやめろ」 海パンなんてイメージしたくなっただろうな。 刹那も恐らく俺と同じ気持ちだと思う。 来流美「はぁ〜……でも、いつ見てもルナさんってスタイルいいわね……」 ルナ 「ふかーーーっ!!」 来流美「わわっと!?」 悠介 「悪い……さっきからこの調子なんだ。     女が近づいてきたり女に近づいたりするとすぐにこうやって威嚇するもんだから、     伸び伸びと泳ぐことも出来ん……」 来流美「………」 悠介 「ご愁傷様って顔もやめてくれ」 やっぱり苦労しているらしい。 もうなんと声をかけていいやら。 悠介 「まあ、あれだ。深冬には好きなヤツが出来たなら、     全力で獲得しろって言っといてくれ。俺たちはべつに文句は言わん」 ルナ 「あの娘が好きになったかどうかが問題だもの。     そういうわけだから、じゃーねー。ほら悠介、こっちこっち」 悠介 「ダメだ。そっちには男が居る。こっちだ」 ルナ 「ダメ。そっちには女が居る。こっち」 悠介 「ばかお前、男が大勢居る場所に行ったりしたら     お前がいやらしい目で見られるだろうが」 ルナ 「女が大勢居るところに行ったら悠介に言い寄る女が居るかもしれないでしょ」 などと言いつつ、二人は俺達の前から遠ざかっていった。 ……なるほど、あれじゃあ本当に泳げん。 鷹志 「……あいつらなんのためにプールに来たんだろうな」 閏璃 「さあ……」 とりあえず俺はパーシモンを水に降ろし、今ある状況に少し悩んだりしてみるのであった。 しかし紗弥香がねぇ……どうなることやら。 俺としてはもう後悔が残らないように全力でぶつかれって応援するところだが。 柾樹とも気心知れてるし、言ってしまえば自分の子供みたいに接してる。 来流美だって紗弥香のことはそんな風に考えてるだろう。 なんだかんだで悠季美も深冬ちゃんもそんな感じだ。 だから誰が誰とくっつこうが文句は飛ばないだろう。 いっそ全員とくっついてしまうのはどうか、と思ったりもするくらいだ。 その時点での柾樹の苦労は、なんというかいい例が身近に居るから読める気もする。 今現在は競泳をしているしているらしいが、それが終わればまた妻たちに捕まるんだろう。 そういうところだけは流石に同情する。 そんなことをしみじみと思う、夏の日の昼下がりだった。 Next Menu back