───阿笠博士の名言/JOJOは名作だと思うのですよ───
【ケース359:弦月彰利/月詠街の面々の場合】 彰利 「フンフンフンフンフンフンフンフン!!!!」 ゾバババシャゴシャバシャ!! ゼノ 「ぬうっ……!」 ライン「さすがにやるっ……!」 素晴らしきかな競泳! 今やゼノもシュバルドラインも後方! 彰利 「ホハハハハハ!!この俺のスッポン泳法を見よ!!どうです!?速いでしょう!!     存分に後悔なさい!この私に勝負を挑んだことを!!     今から十数えるだけあなたがたに後悔の時間をゲェッホゴホッ!!水飲んだっ!」 バッシアア!! 彰利 「うっしゃあ一着!!どーだ見たかわりゃわりゃーーーっ!!     この俺様は強ぇえだろーが!!」 ゼノ 「ぬっ……忌々しいが確かに負けは負けだ……!」 ライン「死神も強くなったものだな……忌々しい」 彰利 「口々に忌々しいって言うのやめましょーよ!!」 じゃけんどやっぱり泳ぐってのはEもんです。 散々とゴバッシャゴバッシャ泳ぐと体の芯からホッコラしようぜホーコラびっくり。 しかしハタと気づくと悠介の姿もルナっちの姿も無い。 グーム、あのヤロウめ、隠れてルナっちとラヴラヴドキューンなことを? ……想像出来ねぇや。 彰利 「グオッフォッフォ、さあ次はどんな勝負をする?」 ゼノ 「フンッ……では正々堂々力で勝負しよう」 彰利 「なんでいきなり暴力方向に話が向くの!?」 ライン「もう一度だ。もう一度泳ぐぞ。今までのは軽い準備運動だ。     なにせ泳いだことなど無かったのだからな」 彰利 「ほっほっほ、しょぉおおがねぇなぁああ〜〜〜〜〜っ!!!     そんな言い訳されちゃあカワイソすぎて受けてやるしかねぇなぁああ〜〜〜っ!」 ライン「……ゼノよ。必ず打ち下すぞ」 ゼノ 「当たり前だ」 彰利 「……あの、競泳ッスよね?」 なにやらモシャアアアと殺気が溢れてきているお二方を見て少々寒気が……。 競泳に殺気はいらんと思うんですがね。 彰利 「よーしでは行くぞ野郎ども!     より早く向こう側に着き、ターンして戻ってこれた者の勝ちとする!」 ゼノ 「いいだろう」 ライン「では始めよう。合図は貴様がするがいい」 彰利 「何処までも偉そうだねキミ!」 ライン「貴様にだけは言われたくない」 ひでぇ……。 彰利 「フッ……まあいい。貴様らにはこれでもかというくらいに吠え面かかせてやる!     オンユアマーク!!ゲットセット!ンGOォオオーーーーーッ!!!」 我が魅惑のボイスが始まりを合図する! それとともに我らは水に体を委ねゴシャァーーーーーッ!!! 彰利 「速ェエーーーーーーーッ!!!」 ゼノがごしゃー!と水の中を素っ飛んでいった! え!?なにあれ!!潜水であんな速度を!? 彰利 「っててめぇ浮遊と壁抜け使って水無視してるだろ卑怯だぞコラ!!     こうなったら俺も」 ズバァン!! 彰利 「───ホエ?」 バシィンッ! ライン「……終わりだ」 腕だけを竜化させた黄竜王さんがニヤリと笑っていた。 そんな彼は巨大化した腕を正面の壁につけ、 腕を元に戻すと振り向いてすぐ後ろの壁にタッチ。 彰利 「最初から泳ぐ気ゼロですか!?お、大人気ないにも程がある!!     そっちがその気なら俺転移しちゃうよ!?してもいいのかコノヤロー!!」 ゼノ 「語るに落ちたな、死神王」 ライン「そうまでして勝ちたいのかクズめが」 彰利 「てめぇらつい今やった自分の行動振り返ってからもう一度その言葉を言ってみろ!     俺正々堂々泳いでたっしょ!?」 ていうか腕の竜化、誰にも見られなかったっしょうね!? 民  『ざわ……!』 彰利 「思いっきり見られてるーーーーーっ!!」 大驚愕! 周りを見渡してみると、ざわざわヒソヒソヒッソォと囁いている民達が! ここは─── 彰利 「特撮じゃよーーーっ!!」 民  『なんだ特撮か……』 民は途端に興味を無くした。 ……ありがとう阿笠博士。 あなたはこんなにも素晴らしい解決方法を編み出してくれた。 ああ、人ってとってもいい加減。 彰利 「キミたちね!人前であげな力を使うなど何事!」 ゼノ 「戦いにいちいち手段を選んでいてどうする」 彰利 「だから!キミさっき言ってた言葉思い出してからもう一度それ言ってみろって!     転移は卑怯でクズなのに手段選んじゃダメって、どうしろっつーのもう!!」 ライン「やれやれ、常識の囚われた男はこれだから困る」 彰利 「バッケヤラァ!この俺以上に常識外れなヤツなどおるもんかい!     人は俺をこう呼ぶ!ミスター常識外れ!キングオヴ常識外れと!!     ただいろいろあったしあまり悠介に迷惑かけらんねぇなぁと思ったから、     ちょっとだけ真面目になろうと決めただけだい!     ……彼にはかなり前から面倒ごと押し付けっぱなしじゃったけぇのぉ……」 ゼノ 「フン、なるほど?友情というやつか」 ライン「青臭いな、反吐が出る」 彰利 「うーーーっひゃーーーーっ!!辛辣ーーーーーーっ!!」 ひどいですよこの黄色野郎!! ええい今ここで修正の拳を解き放ち、 “押忍!ありがとうございました!”と言わせてくれようかッッ!!! ライン「だが───」 彰利 「おぉりゃ死───オウ?」 ライン「だが、貴様らはやはりその方がいい。     友情がどうとかなど竜族にとってはつまらん感情だ。     人間の友情など危機においてはまったく薄っぺらなものだろう。     だが貴様らの友情は重くもなく軽くもない。時々それが、ひどく羨ましく思える」 彰利 「………」 コリ、と頬を掻いた。 よもやシュバちゃんにこげなことを言われる時が来るとは。 ……だよな。 大人になってから、家庭を持ってから、俺達は案外落ち着いたんだと思う。 確かにそれより前の俺達からすると考えられないくらいに落ち着いた。 学生時代から空界での戦いまで、思えば無茶をしたもんだって呆れる。 そんな中でも無茶をし続けた馬鹿者が……俺の親友なわけだ。 一度は親友という関係を剥奪……というか取りやめたくらいの関係だったが、 それでも、なんだろな。 やってることはまるっきり一緒だったわけだ。 口ではどうとでも言えるってのはこういうことなんかね、まったく。 ライン「貴様は王をどう思う」 彰利 「なんでぇ藪から棒に。悠介?悠介は俺の友じゃよ。     あいつが“友達は一人でいい”って言う前からの友達だ。     俺にとっては悠介が竜の王だろうが滅茶苦茶な存在だろうが友人なんだ。     誰が裏切ろうが、俺だけはそれをやめないつもりだ」 互いが居たから救われた過去がある。 その過去が無ければ見ることさえきっと無かった現在と未来がある。 だから俺は、俺達は、一生かかってでも互いに恩返しをしたいと思って生きてきた。 理屈がどうとか唱えるつもりなんてない。 美談を唱えたいわけでもない。 ただ───“こんな俺の友達で居てくれてありがとう”と、 何度でも言いたいくらいの感謝だけがそこにある。 彰利 (……だから) 英雄の方の悠介があんな風になっちまったのが酷く悲しい。 少なくとも“晦悠介”っていう存在は、 自分の世界が壊れたからって誰かの世界を壊したりするようなヤツじゃなかった筈なのに。 ……未来にはそれほどの絶望しかなかったのか? 守りたいって思って、それを美しいって感じたあいつの感情は、 全部幻想に消えることになるっていうのか? ……そんなの─── 彰利 (そんなの、認めねぇ) 誰だってなにかを守りたいって思ってる。 そんな中で、 誰かを守りたいって意志がこんなにまで辛い未来しか生まないなんて信じない。 あいつだって、至りたくて至ったわけじゃない。 だったら俺が、悠介が間違った方向に行ってしまわないように支えなけりゃいけない。 そのための親友だ……そうだろ?俺。 彰利 「うん、よしっ!もういっちょ泳ぐべー!」 声  「いいや駄目だな」 彰利 「なにぃ!?……おや夜華さん」 聞こえた声に振り向けば夜華さん。……と、僕のハニー達。 彰利 「なんだい僕のハニー達ぃ。     僕が恋しくて、せっかく全力で撒いたのにもう嗅ぎつけてきたのかぁいベィビィ」 春菜 「ちびまる子ちゃんの花輪くんの真似はいいから」 彰利 「俺、今じゃ花輪くんの声聞いても刃牙しか思い出さねぇんだよね」 以前は蛍一くんだったのに。 まあいいコテ、ここであーだこーだ声優話に花を咲かせてても意味はねー、多分。 彰利 「して、なにかね夜華さん。プールに来たのに水着じゃなくて袴姿の夜華さん。     武士なのに胸が発達してていっつもサラシを巻いてる夜華さん。     乳パンツを買ってあげようとしても断固拒否する夜華さん」 夜華 「うぁわわわわっ!?な、ななななにを言い出す貴様っ!!」 彰利 「だってキミが急にダメ出しするから」 なにか仕返ししたくなるってもんじゃろ、ね? この原中が一等兵弦月彰利、貴様の弱点なぞ既に知り尽くしておるわ。 仁美 「でも、そうだよね。やっちゃんって凄くスタイルいいのに、     どうして武士なんてやってるの?」 彰利 「ヤっちゃん?」 真穂 「弦月くん、今の言い方思いっきりヤクザを連想した言い方に聞こえた」 うん、そのつもりで言ったし。 だがこの彰利は既に色々学んでいるのだよ。 ここでうっかり声に出していえば、夜華さんにメッタ刺しの刑……って、OH? 彰利 「あら夜華さん?刀は?」 春菜 「全力で持ち込み禁止にしてきたよ」 粉雪 「さすがに堂々と持ち歩かせるわけにはいかないからね」 彰利 「……ロッカーに入ったん?」 春菜 「悠介くんの中にいる精霊、シルフに預かってもらってるの。     さすがにあんなのはロッカーに入れられないし、そもそも入らなかったし」 夜華 「あっ……あんなのとはなんだあんなのとは!!あの刀、炎紅諡はなっ!!」 仁美 「やっちゃん、ちょ〜〜っと黙ってようね」 夜華 「あ、うあっ!ななななにをするのです!わたしはっ……!!」 真穂 「話がややこしくなるから、ね?」 夜華 「離せ女!母と流派の名誉のため、これだけは言っておかねばならんのだ!!」 真穂 「あの……ほんと、名前覚えてよね?」 女、と呼ばれた真穂さんは少々悲しそうだった。 彰利 「グゥ〜〜ム……しかしそりゃあ苦労したっしょ」 春菜 「うん、苦労しっぱなしだったよ。“貴様ら何をするー!”とか、     “わたしは武士として刀を手放すわけにはー!”とか叫んで」 粉雪 「他のお客さんとかにジロジロ見られるし、     係員の人まで騒ぎのことを聞きつけて来るし」 彰利 「……よくここまで来れたね」 春菜 「そこはアレだよ。そんなに武士でいたいなら、     アッくんと離婚してずっと武士やってれば、って言ったら一発で」 彰利 「………」 なんかもう流石夜華さんだって感じでした。 しかしそうか……俺も誰かの脅しとして使われるくらい、人に愛されるようになったか。 フッ……俺も成長したもんだ。 彰利 「して、話を戻すけどさ。なして夜華さん水着じゃないの?     ただでさえ私服でうろついてると目立つのに、袴姿じゃ余計に……」 夜華 「だ、黙れっ!こんな大衆の面前で肌など晒せるものかっ!     大体っ……そんなことをしたら貴様以外に肌を見せることに……!」 彰利 「ウィ?あとの方が全然聞こえんかったんじゃけど」 夜華 「なんでもない忘れろっ!」 彰利 「?」 グウウウウ〜〜〜〜〜ムムム、 そういや夜華さんってやたらと声がちっちぇええ時があるんだよね。 この彰利、夜華さんのいろんなことは知っているが、 そういう時にはなんとおっしゃっているのか知らなかったりする。 ……そうなると気になるのがヒューマニズム。人間じゃないけど。 じゃあデスニズム?……なんのこっちゃって感じのネーミングですな。 よし、これからは夜華さんの言葉には極力耳を傾けよう。 デビルイヤーは地獄耳とはよく言ったもんだが、 ほんとの地獄耳ってのはデスイヤーだってことを思い知らせてやるのよ。 彰利 「それで夜華さん、根本的な話に戻りたいんだけどさ。     なしてオイラたち競泳しちゃいかんの?」 夜華 「な、何故って貴様……勝手にあちこちに飛び回られては、     わたし───……たちが退屈してしまうだろう」 真穂 「篠瀬さん、今の間、なに?」 夜華 「間など無い」 真穂 「え?でも」 夜華 「ない」 真穂 「うう……」 彰利 「はいはい真穂さんを睨むのはやめようね夜華さん。しかしだね夜華さん?     キミが退屈するといっても、キミってば水着じゃないじゃん。     そげな方とプールでどう遊べと?」 夜華 「当然鍛錬だっ!」 彰利 「プールですることじゃないよそれ!!そんなの他の何処でも出来るでしょうが!」 夜華 「いいや違うな。ここでしか出来ない鍛錬というものがきっとある筈だ。     まずはそれを探すというのはどうだっ、きっと有意義だぞ」 彰利 「………」 春菜 「なんだろ……」 粉雪 「今、夜華が物凄くパンプキンシザーズの少尉さんに見える……」 鍛錬だっ、と言って拳を握るその様が、 オーランド伍長に戦災復興を促する少尉さんに見えた。 彰利 「いえあの……結構です。オイラ泳ぎたいし……」 夜華 「な、なにっ!?水浴びのなにが楽しいんだっ!」 彰利 「いや、水浴びって……」 春菜 「あのー、夜華?敢えて今までツッコまなかったけど……」 粉雪 「もしかして、泳げない?」 夜華 「〜〜〜〜っ……!!《かぁああっ……!!》」 ……ビンゴらしい。 夜華さんの顔がみるみるうちに赤くなっていった。 彰利 「夜華さんたらもう……泳げないから水着を着なかったのかね?」 夜華 「だだ黙れっ!そんなことはないっ!!」 彰利 「だったらほれ、着替えておいで?泳法ならオイラが教えてやるけぇ。     そうよねィェ〜〜〜ッ、     夜華さんたら川とかに縁の無い生活送ってたからねェ〜〜〜ィェ。     そういやいつか筏で海に繰り出した時にもそげなこと言っておったよね。     だが泳ぎならば俺に任せろ!何を隠そう、俺は泳法の達人だ!!」 夜華 「〜〜〜っ……そういう問題ではない!わわわ解っているのか彰衛門っ!!     みっ……水着になるということはっ!人前で肌を晒すということなんだぞっ!!」 彰利 「ンなもん当たり前だろうが!     キミはなにかね!?私をそこまで馬鹿だと思っていたのかね!!」 夜華 「ばばばばかっ!そうじゃない!わたしが言いたいのはっ……だな……!」 彰利 「むっ!?」 声が小さくなり始めた!ここだ! 彰利 (デスイヤー───発動!!) 説明しよう!デスイヤーとは、俯いた上にか細い夜華さんの声を聞き取るべく、 耳を夜華さんの影からぞぶりと出現、集音する奥義である!! しかも耳自体は黒になっているため、影との区別など不可能!! さ、さあ!夜華さん!貴様が今までボソボソと言ってきた言葉の全貌、 今こそ暴いてくれるぜ〜〜〜っ!! 夜華 「水着なぞ着ようものなら……っ……貴様以外の男に肌を見られるということっ……だろう……!」 彰利 「───……」 …………あれ? あ、あれ?あ、いや……やだな、あれ? 予想してたのと全然違う。 あたしゃてっきりアタイの陰口でもヒッソォと呟いているのかと思ったのにアレェ!? ヤバイ、ヤバイよ夜華さんたら! 俯きながら顔真っ赤にしてソレはヤバイ! 不覚にもこの彰利、トクンと来ちゃったじゃない! ば、馬鹿な……ば、馬鹿な……! 絶対に“こんのトンガリ野郎めが”とか、 “足が長いんだよ文平が”とか言われてるものかと思ってたのに……! 彰利 「ギャアもう可愛いなちくしょう!!ラヴリィイイイイイッ!!!」 夜華 「《ゾリュンッ!!》うわぁあっ!!!?」 夜華さんを夜華さんの影自体から我が影へと引きずり込む!! もちろんオイラはプールの中だったわけだから、 夜華さんは突然水の中に出てきてびっくり。 しかしそげな夜華さんをしっかり抱き締めて水面に顔を出させてやると、 それはもう今現在の僕のハートに溢れる愛を思い切りぶつけました。 彰利 「タワッシワッシワッシワッシワッシワッシ!!!!」 夜華 「《ゴリゴリスリスリマッチュモッチュ!!》うわわわわわぁあああああっ!!?」 頭頂に顎を擦り付け、次の頬に頬擦り、 次に両の頬にキスをして最後に唇に熱烈キッスの嵐。 夜華 「待っ……な、ななななにをするんだ貴様!ここっ……こんな大衆の面前でっ!!」 彰利 「馬鹿野郎!!この気持ちは今この瞬間のみに爆発するもんだろが!!     そんな爆発を今ぶつけずに何処でぶつける!?よく考えてみるんだ!     話の途中で口を突っ込むなという言葉をよく耳にするな!?     だが口を挟む言葉ってのはその時じゃなければ意味が無い言葉が大半だ!     だからこそ言おう!無茶を言うなと!!     ただでさえ物覚えの悪いガキャアや若僧や大人達が増えている昨今!     後で言えなんて言われても言おうとしてた内容覚えてるわけねーだろ!!」 仁美 「自信たっぷりに言う言葉じゃないよ」 彰利 「言うね!絶対!俺は!」 真穂 「倒置法なんて懐かしいことやってないで、離してあげたら?     あんまりスリスリやってると篠瀬さん幸せすぎて目、回しちゃうよ?」 彰利 「むっ!?」 ハタ、と気づけば、話してる最中だろうがスリスリマッチュモッチュと 頬擦り&キスしてた夜華さんが、顔をこれでもかってくらい赤くさせてくたりとしていた。 彰利 「ややっ!?夜華さんっ!?おのれいったい誰がこんなことを……!!」 俺の知らねぇところでテロリストが動いてやがる……!! きっと腕利きのハンターが俺達を狙っているに違いねぇ!! だ……だが気配が感じられん! 殺気も出さずに夜華さんをこんなにもあっさり仕留めるとは……! まさか姿を隠せる能力者!? 彰利 「で、出てこいセバスチャァーーーーーーーン!!!」 真穂 「……あのね、弦月くん。篠瀬さんはただ、嬉しすぎて目を回してるだけだから」 彰利 「何故!?───ハッ!もしや夜華さんは口内が江戸っ子な代わりに、     体が水に浸ると幸せに至れる特異体質なのか!?     それともやっぱりセバスチャンがプールの中に入ってて、     溺れさせるのではなく幸せ光線を放つという意外性に走った!?」 粉雪 「彰利、ひとまずセバスチャンは忘れていいから」 彰利 「あ、あれ?そうなん?」 なんとまあ……セバスチャンはおらんと申すか。 役者がベーコンっていうステキな名前なのに。 ……関係ないけどね。 彰利 「グーム、しかし夜華さんがゴロネコ状態になってしまうくらいの幸せ状況とは?     あたしゃ今まで、このタワッシで喜ばれたことなど一度として無かったのですが」 あ、一度だけあったかな。 相手は聖だったけど。 粉雪 「解らなくもないけど、言っちゃうのはなんだか気が引けるかな」 春菜 「わたしもだよ」 彰利 「そうなん?……まあいいコテ、んだば───オウ?」 ハタと気が付く。 濡れて張り付いた夜華さんの袴着……その下にはサラシではない別の布が。 これってば───あらまあ!! 彰利 「クッハァアアア!!もう夜華さんったら影ながらなんと素晴らしい!!     もう愛してる!大好きだ!!」 夜華 「《ゴリゴリスリスリマッチュモッチュ!!》うぁああああぅうう……!!」 夜華さんの胴着のような袴着の下にあったもの……それは水着だった。 しかもオイラが店で“これがE!!”と強引に決めて押し付けたもの。 ビキニタイプの黒です。 何故黒かって?俺が黒が大好きだからです。 でも強引に押し付けたものをこうして着てくれてるって! しかも俺以外には肌を見せたくなかったからって! 嗚呼なんでしょうこの溢れる思い!ヤバイ僕今夜華さんのこととっても愛してる!! 信じられますか!?ただでさえ肌を晒すのが嫌だと言っている夜華さんが、 嫌々ながらも俺にだけ見せるためにビキニを着てくれたのです! ああ……今なら信じられる。愛ってステキ。 こんな感情もあったのね……今まで生きてきた中で、こんな気持ちは初めてさ……。 だから僕はそれはもう我を忘れるかのように夜華さんに愛のキッスをかましまくりました。 周りが見てようが無視して、それはもうマッチュモッチュと。 だがやがてヒクヒクと顔を引き攣らせた僕のハニー達が爆発。 彰利 「あ、あれ?なしてみんな顔引き攣らせてんの?しかも段々近づいてきて───     あ!こ、これ!なして夜華さん取り上げんの!返しなされ!まだ愛し足らんのに!     ───あの、春菜?無言で、しかも水に沈めた手から     閃光弓・熾天を向けるのはどうかと思うな、僕。     み、みんなもさ、そげに殺気立たないで───これ!!     この隙にと夜華さんを水から上げるんでねぇ!!他の男どもが見るでしょうが!     夜華さんの肌を見ていいのは俺だけだ!───ヒィッ!!     なにやらハニー達の戦闘力が格段にアップした!ちょちょちょちょっと待って!     なにキミたちセット唱えてんの!?公共の場でヒロラインパワー解放はヤバイよ!     ちょ、やめ───ヴァーーーーーーッ!!!」 嫉妬の炎を力に変えた彼女たちは、僕をこれでもかというくらいにボッコボコにしました。 ───……。 ……。 仁美 「アキちゃん正座!」 彰利 「え?結跏趺坐(けっかふざ)
!」 仁美 「そうじゃなくて正座!」 彰利 「───……!大熊座!!」 仁美 「そうじゃなくて!」 春菜 「どうして敢えて北斗七星があるのを選ぶかな……」 彰利 「…………せーざ?他にせーざなんてあったっけ」 仁美 「座るの!今すぐ!」 彰利 「なんとそうなのか!ならばさっさと言えこのタコ!!     《ボゴシャア!》ぶべっしぇえええい!!!」 仁美 「目上の人にそんな暴力的な言葉言っちゃだめでしょ!!」 彰利 「馬鹿野郎!!今は同じ年代の背格好だろうが!」 仁美 「馬鹿じゃないもん!!」 真穂 「……弦月くん、お母さんの場合、今のその姿でも素で通用するくらいの人だから」 彰利 「…………」 あー、そういやそうだった。 昔ッから童顔な上に成長の遅い人だったっけ。 なんの冗談ですかと言いたくなるくらいだった。 とまあそんなわけで……散々ボッコボコにされたのち、 僕は復活してからハニーたちに捕まって座るように命じられたわけです。 でも妻たちはハァ、と苦笑するように溜め息を吐くと、 せっかくだからとプールの中で遊び始めた。 今では夜華さんも一緒だ。 かなり恥ずかしがっていたが、真正面から真剣に“見せてくれ!”と言ったら、 やっぱりかなり恥ずかしがりつつも見せてくれた。 そんなわけで、顔を真っ赤にしながら決して首から下……じゃないな。 鼻から下辺りを決して水面に上げようとしないブラックビキニ魔人が誕生した。 顔なんて本当に真っ赤だ。 しかしその様はなんだか河童を連想させる。 顔半分だけを水面から覗かせる姿がなんとなく……ねぇ? 彰利 「まあ、ここから離れるなって条件付きで解放されたわけだし……」 ひとまず俺は近くにあったベンチ型のちょっぴり丸っこい椅子に座ることにした。 少し離れているけど、十分に見える範囲だ、ハニーたちもコクコクと納得してる。 そんなわけで───スッ、クイッ、シュタッ!! まず左足を右足の膝以上の高さにまで上げ、次に顎に拳を添える。 そして優雅にシュタッと座る!これぞシーザー=ツェペリ流ノーブル座り!! と、そんな僕の頭をグワシィと掴む誰かがおりました。 タレ?と見上げてみれば…… 葉香 「………《む〜〜〜〜〜ん》」 彰利 「キャーーーーーッ!!?」 僕の嫌いな彼女が、若い姿のままで僕の頭を掴んでおりました。 彰利 「な、ななななにアンタ……ななななにアンタなにアンタァアーーーーーッ!!!     なんでなんでここに居るのなんでぇーーーーっ!!?」 葉香 「仕事だ。ここで臨時のパン屋をやっている。     お前らこそこんなところでなにをしている」 彰利 「泳ぎに来てんだ。すげぇだろ」 葉香 「……当たり前すぎてつまらないな」 彰利 「実はここに埋蔵金があるって聞いてYO!!」 葉香 「嘘臭すぎるのもそれはそれで腹が立つな」 彰利 「どうしろっつーのアータ!!」 迂闊じゃったわ……!よもやこげなところでこやつに会うとは……!! つーかなんで俺の頭掴んでんの!? 葉香 「やれやれ、休憩時間だから少し泳ごうかと思えば見覚えのあるトンガリ頭だ。     まさかとは思ったが、まさかとはな……」 彰利 「あの……説明してくださったのは嬉しいんですが、     なにもそこまであからさまにブルスコファーと溜め息吐かんでも……」 そんなヨウカンだったが、ふとキリュっち……仁美さんを見ると、 どこか優しい顔で笑った。 葉香 「あいつとよろしくやってるのか?」 彰利 「あいつ?仁美さんのことかね?」 葉香 「おかしなことを聞くな。お前はわたしの目線を追っていたように見えたが?」 彰利 「……気づいてたのね。まあ、一応求愛されて受け止めた仲、というか」 葉香 「……そうか」 ヨウカンはそう言うと、俺の頭をポムンと叩いた。 葉香 「幸せにしてやってくれ。     拠り所が無いあいつには、お前はもう無くちゃならない存在だ」 彰利 「ホエ?なにそれ」 葉香 「お前、あいつの過去を見たことがあるだろう?」 彰利 「ゲッ……何処まで知っとんのキミ!」 葉香 「お前が見たあいつの記憶は、わたしが全部でっちあげたものだよ」 彰利 「……へ?」 葉香 「生きることを放棄したあいつを、わたしがそうなるようにでっちあげた。     あいつには両親なんてものは居ないし、そもそも家族も居ない。     真穂を拾ってきたって話も全部が全部嘘っぱちだ」 彰利 「…………なんでそんなこと」 葉香 「こっちにもこっちの事情があったんだ。仕方ないだろ、頼まれたんだ」 彰利 「……誰に?」 葉香 「悪いけど言えないな。     そんなの知らなくても、受け入れたあいつをお前は裏切らないだろ」 彰利 「………」 なんだか面白くないですぞこの野郎。 でも……なんつーのかね、疑問が少し晴れた。 成長が異様に遅く、やけに子供っぽい仁美さん。 その裏にはどんな真実が─── 葉香 「別に止めないけどな。本人も忘れてる記憶の扉を開くっていうのは、     お前自身にもとても辛いことだぞ」 彰利 「……煙いから近くでマルボロ吸わんで、お願い」 そげなことは解ってる。 だが俺はもう受け入れると誓ったのだ。 今さら仁美さんの過去がどうだろうと、俺は全部受け止める。 そんな覚悟を胸に、俺は月視力を誰にも気づかれないように発動させた。 そして───過去の記憶のさらに奥にある朽ちた記憶を発見する。 月視力はその名の通り、視覚で過去を覗いたり未来を見たり出来る。 今の俺の目にはもちろん仁美さんの内側が見えている。 それは少し前の記憶だったりかなり前の記憶だったり、様々だ。 でもこの記憶は他の記憶に潰されるかのように朽ち、もう断片的にしか残っていない。 そんなカケラの記憶の中で見たものは─── 彰利 「───!…………」 なるほど、と頷いてしまうような思い出だった。 こんなものは辛すぎる。 でもこれが確かなら、あの時のアレは─── 葉香 「ピースは繋がったか?」 彰利 「……ん」 頷いた。 仁美さんには辛い思い出だけど、その先にはちゃんと幸せな未来が残っていた。 絶望するばかりじゃなかったんだ。 ただそれだけが、酷く嬉しく思える自分が居た。 彰利 「じゃあ真穂さんは?」 葉香 「真穂は身寄りを無くし、記憶さえ無くした孤児だ。     知り合いに孤児院をやっている人が居てな。お前もよく知っている筈だが」 彰利 「……ああ!シズノおばちゃんか!」 葉香 「そういうことだ。生きる希望を失っているヤツが居る、     力を貸してやりたいって言ったら助言をしてくれた。     丁度その時、記憶を失った状態のまま捨てられてたっていう子供が居てな。     それが真穂だ。わたしは真穂にも過去を植えつけるようなことをして、     自分があいつの子供であるということを認識させた。     それからは───お前も知っての通りだ。     あいつは娘のために頑張って働いて、苦労しながら真穂を育てていった。     義理とはいえ、娘だって記憶は過去をいじくって植えつけておいたからだ。     まあ言ってしまえば、実際にはあいつはお前と出会った時、     小学の教師なんてものになれる年齢じゃあなかったわけだけど」 彰利 「……ナルホロ。どうりで幼すぎると」 葉香 「お前が初めて真穂とあった時、酷くビクついてたろ?     あれの理由もまあ、記憶の方にある。植えつけたとはいえ、完全じゃない。     完全じゃないからこそ自分が実の娘じゃないってことに気づいたし、     いろいろな物事に違和感を持つようになった。     あいつの方はもう完全に忘れたみたいだけどな」 彰利 「キミっていちいち口調が男らし《ゴキィッ!》はごぉっ!!」 葉香 「話の腰を折るな」 彰利 「ソ、ソーリー……でも暗い話は苦手でして……」 今、首がゴキッていったよゴキって……。 彰利 「しかし……キミってばなんだってこんなこと俺に教えてくれたん?」 葉香 「全てを知った上で幸せにしてやってほしかった。それだけだよ。     面倒くさいことなんて極力避けたいわたしだけどな、     こういうことだけは無視しちゃいけないってことくらいは知ってる。     だから、頼んでおく。不幸にしたらそれなりの罰を受けてもらうぞ」 彰利 「大丈夫!俺の意思から誰かを不幸にしようなんて思いが産まれるわけがねー!!     何を隠そう、自分のことはからっきしだが俺は他人を幸せにする達人だ!!」 葉香 「……ああ、確かにお前は不幸を背負うのが上手いらしい」 彰利 「否定してよこの野郎!!」 あっさり納得されちまったい……うう、ちくしょう。 でも、そうでゲスな。 今さらなにがどう解ろうが、過去は過去じゃけぇ。 俺っちが受け入れたのは現在の仁美さんと真穂さん。 つまりそげな過去があったからこそあげな娘ッ子に成長した二人なのです。 その過去を今さらどうのこうの言っても実際しゃあないことです。 だから俺は、二人を幸せにしてゆくのです。 それを放棄することなど絶対にせんとここに誓おう。 葉香 「話はこれくらいにするか。残り少ない休憩時間、せめて有意義に過ごすさ」 彰利 「へ?ちょ、ヨウカン?これは?」 葉香 「わたしからの餞別だ。ありがたくいただけ」 それだけ言うと、ヨウカンは手をひらひらとさせて去っていった。 その後ろをのろのろと見知らぬ男が追いかけては、声をかけて玉砕。 なんだか奇妙な空間が彼女の周囲にだけ展開されていた。 とはいえ…… 彰利 「餞別、ねぇ……」 俺は頭の上に乗せられたものを手にして、名前を見てみた。  “ビッグバンキャベツパン! 〜新鮮キャベツをふんだんに練り込みました〜” 彰利 「……祝福されてんのか?ほんとに」 俺に死ねと言いたいらしい。 こんなん食ったら俺本気で死んじまうって……。 いっそ投げ捨ててしまおうかとも思ったが、 しかし食べ物を粗末にすると物凄く怖い夜華さんが、 じーーーーっと俺を見ているのに気がついた。 ……捨てるというコマンドが、俺のアビリティから捨てられた瞬間だった。 フッ……いいだろう、俺も男だ。 いつまでも弱点を克服出来ないでいるわけにゃあいくめぇよ。 よぅ見とくんやで夜華さん!これが浪速の商人の生き様やぁ!! 彰利 「丸ごと食ってやるちょーーーーーーっ!!!」 袋をおもむろに破った途端、ムハァとこぼれるキャベツ臭に気絶しそうになるのを堪え、 俺はカッと目を見開くと一気に───齧り付いた!! 彰利 「───《ブヅンッ……》」 き……切れた……。 ぼくの体の中でなにかが切れた……決定的ななにかが……。 ディオ……君の言うように、ぼくらはやはりふたりでひとりだったのかもしれないな……。 奇妙な友情すら感じるよ……。 そして今、ふたりの偶然は完全にひとつとなった……。 俺の中でジョナサンが最後の時を迎えていた。 最後の言葉が運命ではなく偶然だったのは、俺の脳内が勝手に変換した所為だろう。 あっはっは……なんだか視界が遠退いていくな……。 浮遊なんてしてるつもりはないのに、何故だか俺が空へと飛んでゆく。 しかもなんだか体が白い。真っ白だ。 そんな俺を夜華さんが見上げてる。 彰利 『これ……から……     これから……DIOが下にあるわしの体になにをしようと……決して……     ……逆上して冷静さを失ってはいけないぞ……承太郎。     わしのことは気にするな……なるべくしてなったことなんじゃ……』 夜華 「あ、彰衛門!?」 彰利 『花京院はDIOのスタンドの謎を解いた……わしはそれをおまえに伝えた……。     なるべくしてなったことなんじゃ……。     もし、みんなが一緒にDIOと戦っていたなら、一気に我々は全滅していた』 夜華 「か、かきょーいん?でぃお?なんのことだ……?」 彰利 『お前は時の中で少しは動けるようになっている……。     2秒か3秒か……その時間を大切に使え。     これからDIOがなにをしようと決して怒ってはならん……。     怒っておまえの方からの攻撃は、自分をまずい事に追い込むぞ……』 夜華 「おい彰衛門っ!少しはわたしの質問に───!」 彰利 『承太郎……この旅行は……実に楽しかったなあ……いろんなことがあった……。     まったく、フフフフフ……本当に……楽しかった……50日間じゃったよ……』 体が光に包まれる。 その光が、どこかやさしい。 俺はゆっくりと目を閉じて、 握った拳を夜華さんに見せるといつの間にやら被っていたテンガロンハットを正し、 小さく微笑んでから天へと昇っていったのでした。 そんな俺を、妻たちに押し退けられてから適当に泳ぎというものを堪能、 練習していたゼノとシュバちゃんが見送っていた。 【ケース360:晦悠介/それは、ジョセフが空に消えてゆくような……エジプトの物語】 田辺 「乙女はお(ボク)さまに恋してるって知ってるか?」 清水 「ああ、あのアニメのタイトル文字の中で、     “ボク”ってルビが“姉”の上にだけあったから勘違いされたオボクサマだろ?」 田辺 「そう、検索ページで“おぼくさま”と検索すると、     原作ページに飛ぶあのオボクサマだ。当時でも話題にあがったが、     なんと最近それがネタアニメとして近日公開予定とか」 清水 「今さらすぎるだろ……あれから何年経ったと思ってんだ?アニメスタッフは」 田辺 「さぁなぁ……あ、ところで永田の調子はどうだ?」 岡田 「ああ、飛び込み台で突風に煽られて石の地面に激突した永田ね。     平均台に脇腹強打させて血反吐を吐いてた     浦安鉄筋家族の中田ちゃんばりに血ィ吐いてたけど、今はもう持ち直したぞ」 佐野 「おお、さすがやな」 泳ぐこともせず、 流れるプールに逆らいながら歩いていた俺の耳に届いてきたのは猛者どもの会話だった。 何故泳がないのかといえば……ルナが俺に憑いて回っているからである。 泳いだ先に女が居ようものなら噛み付いてくるのだ。 これだけ人が居れば何処を向いても男女は居るってのに……はぁ、ついてない。 俺に何処を泳げっていうんだ、このたわけ死神は。 悠介 「……なぁ。たまのプールくらい、楽しみたいんだが」 ルナ 「楽しむななんて言ってないけど」 言ってるようなもんだろ、と言ってやりたいけどどうせスルーするんだろうな。 ああ解ってる。 俺はもうこいつの性格ってものを嫌ってくらい解ってる。 そんな言葉が無駄だってことくらい解りそうなもんだ。 それならどうするかなんだが…… 噛まれても無視して泳いでると高確率でイジケて、 話し掛けても無駄なくらい拗ねるんだよな。 さて、どうしたもんか。 悠介 「なぁルナ。お前さ、ずっと俺の首に抱き付いてて疲れないか?」 というか暇じゃないか?という意味を込めて言ってみる。 と、ルナはただ幸せそうな顔でにこー、と笑うだけだ。 てんで暇じゃないらしい。むしろ満足してるって顔だ。 しかしそんな顔を俺が見つめ、適当に進んでいたからだろう。 つい泳いできた女にドン、とぶつかってしまった。 その途端にルナの目つきが……というか目が、 キュンッと音が鳴ってもおかしくないくらいの速度で猫目に変貌。 黒目が縦に細いものとなり、猫ならば毛のひとつでも逆立てよう勢いで、 ルナ 「ふかーーーーーっ!!!」 と吼えた。 吼えた、じゃないなこれは。 えーと、猫が叫ぶ時はなんて言うんだろうかな。 ともあれ─── 女  「へあっ!?あわわなんでわたしが怒られるのーーーーっ!!?」 哀れ。 急に、しかも訳も解らず威嚇された女は、俺の横を通り過ぎるように慌てて泳いでいった。 悠介 「お前なぁ……」 ルナ 「うー……!」 ああ……まいったな。 せっかく少し落ち着いてきてたのに、ま〜た周りを警戒し始めたよ……。 しかしこればっかりはどうのこうの言ってもやめようとはしないのは解ってる。 仕方なしに意味もなく流れに逆らい歩く。 ……うん、この程度ならもう全然苦にならないくらいには体が馴染んできたな。 なんて頷いてた時だった。 前方からざばざばと怒り顔の男が進んできたのだ。 しかも、俺目掛けて真っ直ぐ。 男  「はぁあ〜〜〜ん?なるほどぉ?     女連れでモミアゲがセクシー……てめぇに違い《ヂパァンッ!!》OUCH!」 女  「きゃあっ!圭くん!」 正面から失礼なヤツをとりあえず殴った。 男  「なっ……なにしやがるてめぇっ!」 悠介 「人をモミアゲで判断するなたわけっ!!」 男  「うるせえ!美佐がそう言ってたんだからしょうがねぇだろうが!」 悠介 「美佐?……ああ」 見れば、男の後ろにはさっきぶつかった女が居た。 どうやらわざわざ急いで一周してきたらしい。 男  「俺の女に随分な挨拶してくれたそうじゃねぇかオォ?     そっちはそっちで随分と綺麗な女連れてるくせによお……………………     あの、こいつと交換してくれません?」 女  「圭くん!?」 男  「一目でホレました!俺と」 悠介 「………」 男  「《ポム》あ?ン〜だよ、男は引っ込んで───」 悠介 「今すぐ失せろ。いいな?」 男  「ひ───っ!?すんませんっしたぁーーーーーーっ!!!」 ゾボラシャシャシャシャシャシャシャアアーーーーーーッ!!!! 女  「ああんっ!待ってよ圭くん!」 男  「助けてぇええーーーーーっ!!」 男と女が走っていった。 脇目も振らずに水から上がり、全力疾走で。 ん……まずいな、ちょっとばかり殺気が漏れたかもしれない。 じゃなきゃいきなり“すんませんっした”はないだろう。邪神でも見ない限り。 ……こんな馬鹿なことしてないで、彰利のところに戻るか。 先輩や日余や篠瀬たちに会えば、少しはルナも離れてくれるかもしれない。 その隙に逃げることを俺は心に誓いたい。 だってな、今までの人生が人生だったために、 こんな場所で泳ぐなんてことはしたことなんてなかったのだ。 むしろ最後に泳いだ、というか漂流した記憶を、泳ぐことで忘れたい。 しかもゲームの世界の出来事だ。 そう思うと物悲しいだろ。 悠介 「さてと、彰利は何処かな……」 てっきり猛者どもと一緒になって遊んでるかと思ったが、そうでもなかったわけだ。 となると……ゼノに捕まったままか、もしくは他のことか。 悠介 「どちらにしろルヴォアァアーーーーーッ!!!?」 はぁ、と溜め息を吐くように見上げた空に、 白くなった状態で握った拳をこちらに見せつつ、 やたらやさしい笑顔のままで空へと昇ってゆく彰利を発見。 周りのやつらにはそれが見えていないのか、 しきりに俺の目線の先の空を見ては、“なんだなんだ”と騒いでいる。 彰利 『気にするなジョルノ……そうなるべきだったところに……戻るだけなんだ……     元に戻るだけ………ただ元に……     ジョルノ……オレは……生き返ったんだ……     故郷……ネアポリスで、おまえと出会った時……     組織を裏切った時……にな……     ゆっくりと死んでいくだけだった……オレの心は……     生き返ったんだ……おまえのおかげでな…………     幸福というのは、こういうことだ…………     これでいい、気にするな…………     みんなによろしくと言っておいてくれ…………     ジョルノ……それでいい…………気にするな…………それで……     ジョルノ……オレたちがここまで到達したことが……完全なる勝利なのだ……     これでいいんだ全ては……運命とは“眠れる奴隷”だ…………     オレたちはそれを解き放つことができた……それが勝利なんだ…………』 ていうか思い切り俺の方を見て、随分とまた懐かしいことを喋ってるんだが。 悠介 「ああもうあの馬鹿っ……!」 ほっとけばいい、という選択肢と、 むしろこのまま見守っていたらどうなるんだろう、という選択肢が渦巻いた。 当然どっちも却下だ。 あいつの場合、このままほうっておいたら本当に昇天しそうだからだ。 だから走った。 あの馬鹿者をとりあえず下ろすために。 はぁ……頼むから体から抜け出たからって、馬鹿正直に天に向かわないでくれ……。 大体お前死神だろが、どうせ飛ぶなら下に向かって飛んでいけよ……はぁ。 Next Menu back